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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B08B
管理番号 1228945
審判番号 不服2008-32812  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-26 
確定日 2010-12-16 
事件の表示 特願2002- 70072「噴射形超音波洗浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月24日出願公開、特開2003-266034〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成14年3月14日の特許出願であって、同19年11月22日付けで拒絶の理由が通知され、同20年2月4日に手続補正がなされ、同年8月27日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年10月31日に手続補正がなされ、同年11月21日付けで同年10月31日の手続補正を却下するとともに拒絶をすべき旨の査定がされ、同年12月26日に本件審判の請求とともに手続補正がなされ、当審において同22年7月8日付けで拒絶理由が通知され、同年9月9日に意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年12月26日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりと認められる。

「洗浄液を溜め該洗浄液を噴出させる噴出口を有する洗浄液溜と、
該洗浄液溜に該洗浄液を供給するための洗浄液供給装置と、
該洗浄液溜内に溜められた前記洗浄液中に超音波を発出するための超音波出力面が平面の振動板と、
該振動板を超音波駆動する超音波振動素子と
を備え、
前記洗浄液溜内の該洗浄液中で該超音波が集束された洗浄液を前記噴出口から噴出させるために、前記超音波振動素子の直径を(2d)、前記振動板から前記噴射口までの距離を(L)、該洗浄液中を伝搬する超音波の波長を(λ)としたとき、
L=0.1×(d^(2) /λ)?1.0×(d^(2) /λ)
なる範囲内のピークの1つにLが設定されていることを特徴とする超音波洗浄装置。」

3.刊行物記載の発明
(1)刊行物1
これに対し、本願出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された特開平7-283183号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.段落0001
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体関連のシリコンウェハ,化合物半導体ウェハ,ガラスマスク,液晶用のガラス基板等の精密洗浄に用いられる500kHz以上の高周波超音波洗浄装置に関するものである。」

イ.段落0012
「【0012】
・・・、前記振動板に固着された長方形の平板状超音波圧電振動子の短辺の長さを(2d)とし、前記洗浄液中の超音波振動の波長をλとしたとき、前記所定の間隔(L)が、L=0.4×(d^(2) /λ)?2×(d^(2) /λ)なる範囲に設定されたことを特徴とする噴射型超音波洗浄装置である。」

ウ.段落0017?0019
「【0017】
【実施例】図1は、本発明による噴射型超音波洗浄装置の実施例を示す斜視図であり、(a)は全体斜視図、(b)は断面斜視図である。半導体材料としてのシリコンウェハ,化合物半導体ウェハ,ガラスマスク,液晶のガラス基板等の枚葉処理方式の洗浄用として、これらの被洗浄物7をべルトコンベア上に載せて1枚ずつ移動させる装置に取付けて、洗浄液を上方から被洗浄物7に噴射させて洗浄する。図において、1は本体ケース、2は供給口、3は噴射口、4は振動源ケース、5は振動板、6は圧電振動子である。純水その他の洗浄液を供給口2から加圧注入し、下端に設けたスリット状噴出口3から被洗浄物7に対して噴射し、この噴射する洗浄液を媒体として超音波を被洗浄物7に伝達させ、常に新しい洗浄液で洗浄する。
【0018】振動源は、平板状圧電振動子6が金属振動板5の内側に固着され、振動源ケース4を覆って洗浄液が入り込まないように密封した構造であり、本体ケース1の側面に固定されている。・・・。
【0019】図1(b)の圧電振動子6の幅を2dとしたとき、振動板5の放射面から噴出口3までの距離Lは、振動エネルギが噴射口3に集束される距離0.4(d^(2) /λ)?2×(d^(2) /λ)の範囲に設定されている。超音波振動子6と振動板5は平板状で、厚味振動によって振動面から放射される超音波エネルギは集束してスリット状噴出口3を通過する。・・・。」

上記記載を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「洗浄液を溜め該洗浄液を噴出させるスリット状噴出口3を有する本体ケース1と、
該本体ケース1に該洗浄液を供給するための洗浄液供給口2と、
該本体ケース1内に溜められた前記洗浄液中に超音波を発出するための超音波出力面が平板状の振動板5と、
該振動板5を超音波駆動する長方形の圧電振動子6と
を備え、
前記本体ケース1内の該洗浄液中で該超音波が集束された洗浄液を前記噴出口3から噴出させるために、前記圧電振動子6の幅を(2d)、前記振動板5から前記噴射口3までの距離を(L)、該洗浄液中を伝搬する超音波の波長を(λ)としたとき、
L=0.4×(d^(2) /λ)?2.0×(d^(2) /λ)
なる範囲内にLが設定されている超音波洗浄装置。」

(2)刊行物2
同じく、当審で通知した拒絶理由に引用された特開平8-299927号公報(以下「刊行物2」という。)には、次のように記載されている。

ア.段落0007
「【0007】
【実施例】以下、図面を基に、本発明の実施例について説明する。図2は本発明の一実施例の説明図である。ここで超音波洗浄装置1は、超音波振動子ユニット2を備えた超音波発生装置3と、先端に吐出口4を備えたノズル装置5とから成り、両装置3・5は同心に接合連結され外形略円柱状に形成されている。超音波振動子ユニット2の振動子面Sと、吐出口4との距離は、超音波振動の音圧が最高となる位置になるように設けられる。」

イ.段落0016
「【0016】なお、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の設計変更が可能である。例えば、実施例では横断面が円である円柱状のものを前提としたが、広い面積の洗浄を必要とすれば横断面を長円または長方形として細長い吐出口を形成する必要があるであろうし、その場合でも超音波振動の指向性や音圧分布に従って、音圧の最高点に吐出口を設けるように設計すると良い。」

上記記載を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ整理すると、刊行物2には、以下の事項(以下「刊行物2事項」という。)が記載されていると認める。

「超音波振動子ユニット2を備えた超音波発生装置3と、先端に吐出口4を備えたノズル装置5とから成り、両装置3・5は同心に接合連結され外形略円柱状に形成され、
超音波振動子ユニット2の振動子面Sと、吐出口4との距離は、超音波振動の音圧が最高となる位置になるように設けられ、
広い面積の洗浄が必要なら、横断面が円である円柱状の吐出口4に変え、横断面を長円または長方形として細長い吐出口とすることが可能な超音波洗浄装置1。」

4.対比・判断
刊行物1発明の「本体ケース1」は本願発明の「洗浄液溜」に相当し、同様に、「洗浄液供給口2」は「洗浄液供給装置」に、「平板状」は「平面」に、「圧電振動子6」は「超音波振動素子」に、それぞれ相当する。
刊行物1発明の「スリット状噴出口3」と本願発明の「噴出口」は、「噴出口」である限りにおいて一致し、同様に、「圧電振動子6の幅」と「超音波振動素子の直径」は「超音波振動素子の大きさ」である限りにおいて、一致する。
刊行物1発明の「L=0.4×(d^(2) /λ)?2.0×(d^(2) /λ)」のうち「L=0.4×(d^(2) /λ)?1.0×(d^(2) /λ)」の範囲は、本願発明の「L=0.1×(d^(2) /λ)?1.0×(d^(2) /λ)」に含まれる。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「洗浄液を溜め該洗浄液を噴出させる噴出口を有する洗浄液溜と、
該洗浄液溜に該洗浄液を供給するための洗浄液供給装置と、
該洗浄液溜内に溜められた前記洗浄液中に超音波を発出するための超音波出力面が平面の振動板と、
該振動板を超音波駆動する超音波振動素子と
を備え、
前記洗浄液溜内の該洗浄液中で該超音波が集束された洗浄液を前記噴出口から噴出させるために、前記超音波振動素子の大きさを(2d)、前記振動板から前記噴射口までの距離を(L)、該洗浄液中を伝搬する超音波の波長を(λ)としたとき、
L=0.4×(d^(2) /λ)?1.0×(d^(2) /λ)
なる範囲内にLが設定されている超音波洗浄装置。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:「噴出口」、超音波振動素子の「大きさ」について、本願発明では「噴出口」であり超音波振動素子の「直径」であるが、刊行物1発明では「スリット状の噴出口」であり「長方形」の超音波振動素子の「幅」である点。
相違点2:距離Lについて、本願発明は「Lの範囲のピークの1つ」に設定されるが、刊行物1発明は明らかでない点。

相違点1について検討する。
噴出口の形状については、刊行物2事項にみられるごとく、洗浄対象との関係で考慮すべき設計的事項である。
超音波振動素子の形状と噴出口の形状とは、刊行物1発明では「長方形」と「スリット状」であり、刊行物2事項では「超音波発生装置3とノズル装置5は同心に接合連結され外形略円柱状」であることから「円」と「円」であり、当審で通知した拒絶理由に刊行物7として引用された特開昭62-159800号公報では「超音波振動子3と液体噴出口7bは円錐台カバー7に設けられる」ことから「円」と「円」である。
このように、超音波振動素子の形状と噴出口の形状とは、整合させることが一般的であるから、洗浄対象との関係で、噴出口の形状を「円」とし、超音波振動素子の形状を「円」とすることに困難性は認められない。
そして、超音波振動素子の形状が「円」であれば、「幅」に変えて、「直径」を考慮することとなる。
よって、相違点1は、格別なものではない。

相違点2について検討する。
洗浄効率の向上は当然の課題であるから、洗浄すべき部位においてその効果を大きくすること、すなわち音圧の高い部分を利用することは、当然考慮すべき事項にすぎない。
このことは、刊行物2事項の「音圧が最高となる」旨の記載、当審で通知した拒絶理由に刊行物3として引用された特開平9-136412号公報の段落0054の記載にみられるごとく、当然のことである。

また、相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

請求人は、意見書で、刊行物1発明の技術分野は「超音波洗浄装置」であり、その課題は洗浄効率を向上させることであるが、刊行物3記載発明の技術分野は「インクジェット記録装置」であり、その課題はノズル詰まりを起こすことなく高画質で高速度の記録を可能にすることにあるから、両者は技術分野と課題をまったく異にしており、両者を組み合わせる動機付けがない旨、主張する。
しかし、上記のとおり、相違点2は、刊行物3を考慮しないとしても、そもそも当然考慮すべき事項にすぎない。
念のため、検討するに、両者は「超音波振動を利用した流体噴射装置」という点で技術分野は共通している。
刊行物3は「時間が短縮され、記録スピードが向上する」(段落0081)ものであるから、刊行物1発明と「効率の向上」という点で、課題も共通する。
よって、請求人の主張は、採用できない。

5.むすび
本願発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-13 
結審通知日 2010-10-19 
審決日 2010-11-01 
出願番号 特願2002-70072(P2002-70072)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早房 長隆  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 千葉 成就
遠藤 秀明
発明の名称 噴射形超音波洗浄装置  
代理人 峰 隆司  
代理人 山下 元  
代理人 野河 信久  
代理人 白根 俊郎  
代理人 市原 卓三  
代理人 河井 将次  
代理人 岡田 貴志  
代理人 竹内 将訓  
代理人 竹内 将訓  
代理人 勝村 紘  
代理人 砂川 克  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 白根 俊郎  
代理人 中村 誠  
代理人 山下 元  
代理人 堀内 美保子  
代理人 河野 哲  
代理人 野河 信久  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 風間 鉄也  
代理人 堀内 美保子  
代理人 勝村 紘  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 河野 直樹  
代理人 砂川 克  
代理人 河野 哲  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 村松 貞男  
代理人 峰 隆司  
代理人 市原 卓三  
代理人 福原 淑弘  
代理人 風間 鉄也  
代理人 佐藤 立志  
代理人 中村 誠  
代理人 福原 淑弘  
代理人 岡田 貴志  
代理人 村松 貞男  
代理人 佐藤 立志  
代理人 河野 直樹  
代理人 河井 将次  

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