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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60S
管理番号 1228971
審判番号 不服2009-8029  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-14 
確定日 2010-12-16 
事件の表示 特願2004-513391号「フロントガラスワイパー用ワイパーブレードおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月24日国際公開、WO03/106575、平成17年10月 6日国内公表、特表2005-529791号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2003年5月5日(パリ条約による優先権主張 2002年6月14日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成21年1月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成21年4月14日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。

2.平成21年4月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年4月14日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
少なくとも部分的に摩擦を減少する被膜が備えられ、前記被膜が滑り塗料により形成され、滑り塗料がポリウレタンおよびシロキサンを有する、フロントガラスワイパー用ワイパーブレードにおいて、
前記被膜が乾燥減摩剤としてグラファイト、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよび/または二硫化モリブデンを含有し、
滑り塗料および乾燥減摩剤をワイパーブレードに押出の直後に被覆し、その後滑り塗料および乾燥減摩剤を備えたワイパーブレードを加硫することを特徴とするフロントガラスワイパー用ワイパーブレード。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ワイパーブレード」について、「フロントガラスワイパー用」との限定を付すものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物とその記載事項
(ア)本願の優先日前に頒布された特開昭58-171936号公報(拒絶査定時に引用されたもの。以下「引用例1」いう。)には、摺動抵抗の小さいワイパーブレードゴムの製造方法に関する発明について、図面とともに次の技術事項が記載されている。
(a)「本発明は・・・成形素材の表面に滑材を含む被膜層を形成した後、型加圧加硫成形することにより、耐摩耗、剥離に強い表面層が得られること・・・を発見し、本発明を完成したものである。」(公報第2頁右上欄第4?11行目)
(b)「この被膜層の形成は、滑材および必要により架橋剤を含んだ未架橋のエラストマ製分散媒を溶媒中に混合分散させた分散液を調整し、この分散液を成形素材の表面に塗布し、溶媒を飛散させることによりなされる。
滑材としては、粒径0.01?100μmのグラファイト、二硫化モリブデン、フッ素樹脂微粉末等を用いる。
分散媒は、成形素材と接着性を有するエラストマならどんなものでもよく、通常成形素材と同材質のものが好ましい。エラストマに他のPE、PP等のポリマ添付してもよい。また、分散媒には、成形素材と同様、カーボンブラック、酸化亜鉛等の配合剤を添加してもよい。」 (公報第3頁左上欄第8?同頁右上欄第1行目)
(c)「この分散液を・・・成形素材の全面にデッピング、刷毛塗布、スプレイ塗布等の方法により塗布する。被覆層の厚さは成形後の表面層の厚さで5μ?30μになるようにする。なお、成形素材の材料は加熱架橋するエラストマならどんなものでもよく、・・・EPDMを使用すると耐候性の高いワイパーブレードゴムが得られる。」(公報第3頁右上欄第17行目?同頁左下欄第9行目)
(d)「エラストマ配合物を・・・混合し、その後押出成型機で・・・長尺状の成形素材を調整した。・・・次に表面層形成材料として、分散媒にEPDM100部に対し、粉末イオウ0.3部、パーオキサイド6部を配合したゴム素材を用い、表に示す滑材/分散媒の滑材を用い、さらに溶媒としてトリクロロエチレンを使用し、十分混合して表に示す・・・6種類の分散液を調整した。これら6種類の分散液を用い、それぞれ刷毛塗布で上記した成形素材の表面に塗布し、その後十分に乾燥させ、・・・被覆層4を有する成形素材を得た。・・・この成形素材を・・・油圧プレスで押圧し、型加圧加硫成型した。」(公報第3頁左下欄第18行目?第4頁左上欄第13行目)

ここで、上記記載事項および表、図面の記載を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に開示されているものと認められる。
「成形素材の表面に滑材を含む被覆層を有し、前記被覆層が滑材を混合分散させた分散液を塗布して形成され、ワイパーブレードにおいて、
前記被覆層が滑材としてグラファイト、二硫化モリブデン、フッ素樹脂微粉末等を用い、分散液および滑材をワイパーブレードに押出の直後に被覆して被覆層を形成し、その後被覆層を備えたワイパーブレードを加圧加硫することを特徴とするワイパーブレード。」

(イ)本願の優先日前に頒布された特開昭63-317514号公報(拒絶理由通知時に引用されたもの。以下「引用例2」いう。)には、ゴムやプラスチックなどの材料に塗布する高いすべり特性及び耐摩耗性を有するコポリマーを主体とするコーティング(塗料)に関し、公報第7頁左下欄第7行目?同頁右下欄第1行目には次の事項が記載されている。
「本発明は更にコーティングもしくは塗料組成物にかかわり、この組成物は、ポリジアルキシシロキサン-ポリウレタンコポリマーを含む。・・・(中略)・・・このコーティング組成物は更に、添加剤、調整剤、充填剤等、例えば補足的なウレタン、ハロゲン化ポリオレフィン、塩素化天然エラストマー、カーボンブラック、テフロン粉末、ポリエチレン粉末、タルカム粉末、グラファイト、湿化剤、表面活性剤、硬化剤、浮揚防止剤、及びこれらの組合せ、等を含んでもよい。」(以下「引用例2の記載事項」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較すると、次のことが明らかである。
・ワイパーブレードは、通常、車両のフロントガラスワイパー用を指すものが主であるから、引用発明の「ワイパーブレード」は、本願補正発明の「フロントガラスワイパー用ワイパーブレード」に相当するといえる。
・引用発明の「被覆層」、「グラファイト、二硫化モリブデン、フッ素樹脂微粉末等を用いた滑材」、「滑材を混合分散させた分散液」、「加圧加硫する」は、本願補正発明の「被膜」、「乾燥減摩剤としてグラファイト、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよび/または二硫化モリブデンを含有し」、「滑り塗料」、「加硫する」にそれぞれ相当する。
・引用発明の「滑材」は、摩擦を減少するものであるから、引用発明の「成形素材の表面に滑材を含む被覆層を有し」と本願補正発明の「少なくとも部分的に摩擦を減少する被膜が備えられ」とは同義である。

すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「少なくとも部分的に摩擦を減少する被膜が備えられ、前記被膜が滑り塗料により形成されたフロントガラスワイパー用ワイパーブレードにおいて、
前記被膜が乾燥減摩剤としてグラファイト、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよび/または二硫化モリブデンを含有し、
滑り塗料および乾燥減摩剤をワイパーブレードに押出の直後に被覆し、その後滑り塗料および乾燥減摩剤を備えたワイパーブレードを加硫することを特徴とするフロントガラスワイパー用ワイパーブレード。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
(相違点)
本願補正発明では「滑り塗料がポリウレタンおよびシロキサンを有する」ものであるのに対して、引用発明では「滑材を混合分散させた分散液」がポリウレタンおよびシロキサンを有していない点。

(4)相違点についての判断
上記引用例2には「本発明は更にコーティングもしくは塗料組成物にかかわり、この組成物は、ポリジアルキシシロキサン-ポリウレタンコポリマーを含む。・・・(中略)・・・このコーティング組成物は更に、添加剤、調整剤、充填剤等、例えば補足的なウレタン、ハロゲン化ポリオレフィン、塩素化天然エラストマー、カーボンブラック、テフロン粉末、ポリエチレン粉末、タルカム粉末、グラファイト、湿化剤、表面活性剤、硬化剤、浮揚防止剤、及びこれらの組合せ、等を含んでもよい。」(上記「引用例2の記載事項」を参照)と記載されている。
一般に、ゴム等のコーティングにおいて、高い滑り性を備えさせるべく、塗料組成物にポリウレタン及びシロキサンを含有させることは周知の技術である。

そうすると、引用発明において、本願補正発明の滑り塗料にあたる「滑材を混合分散させた分散液」に上記周知の技術を適用して、本願補正発明の相違点に係る構成、すなわち「滑り塗料がポリウレタンおよびシロキサンを有する」ものとすることは当業者にとって容易想到の範囲ということができる。

そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明及び周知の技術から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成21年4月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年12月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも部分的に摩擦を減少する被膜が備えられ、前記被膜が滑り塗料により形成され、滑り塗料がポリウレタンおよびシロキサンを有する、フロントガラスワイパー用ワイパーブレードにおいて、
前記被膜が乾燥減摩剤としてグラファイト、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよび/または二硫化モリブデンを含有し、
滑り塗料および乾燥減摩剤をワイパーブレードに押出の直後に被覆し、その後滑り塗料および乾燥減摩剤を備えたワイパーブレードを加硫することを特徴とするワイパーブレード。」

(1)引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は次のとおりである。
刊行物1.特開平8-48800号公報
刊行物2.特開昭63-317514号公報
刊行物3.特開平5-77690号公報
刊行物4.特表2000-511832号公報

(1-1)刊行物1に記載された事項
本願の出願よりも前に頒布された刊行物である特開平8-48800号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリコーンゴムおよび固体潤滑剤を含有することを特徴とす るゴム、プラスチックの低摩擦、高耐摩耗用樹脂被覆材。
【請求項2】 固体潤滑剤が鉱物MoS2であることを特徴とするゴム、プ ラスチックの低摩擦、高耐摩耗用樹脂被覆材。
【請求項3】 固体潤滑剤がポリテトラフルオロエチレンであることを特徴 とするゴム、プラスチックの低摩擦、高耐摩耗用樹脂被覆材。
【請求項4】 固体潤滑剤がグラファイトであることを特徴とするゴム、プ ラスチックの低摩擦、高耐摩耗用樹脂被覆材。」

(イ)「【0006】この出願発明で用いられる固体潤滑剤としては、鉱物MoS2、ポリテトラフルオロエチレン、グラファイト、窒化ホウ素等があげられ、ポリテトラフルオロエチレンがとくに好ましい。樹脂としては、ポリウレタン樹脂、水酸基含有フッ素樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ジグリシジルエステル、シリコーン樹脂等があげられ、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂が好ましく、ゴムに対する密着性、ゴムの伸びに対する追随性に優れる。配合量は、樹脂100重量部に対して、50?300重量部が使用され、80?240重量部が好ましい。
【0007】この出願発明の樹脂被覆材は、樹脂を溶剤で希釈し、その溶液中にシリコーンゴムおよび固体潤滑剤を混合し、分散させることにより製造する。
【0008】この出願発明の樹脂被覆材を使用する場合には、予め混合しておいた固体潤滑剤に硬化剤を加えた後、ゴムにスプレー、ディッピング、刷毛塗り等によりコーティング後、加熱硬化する。コーティングは、膜厚が5?50μmが好ましく、10?15μmがとくに好ましい。加熱硬化は、50?150℃で30?60分が好ましく、80?100℃で30分がとくに好ましい。」

(ウ)「【0021】
【発明の効果】この出願発明は、シリコーンゴムおよび固体潤滑剤を含有することによりゴム、プラスチックの低摩擦、高耐摩耗性を向上するための樹脂被覆材を提供するものであり、とくにガラスなどの場合の、異音の発生、スティックスリップの発生を防止し、さらには耐久性の面でも優れた樹脂被覆材を提供することができウェザーストリップ、グラスラン、オイルシール、パッキン、ワイパーブレード等に利用される。」

(1-2)引用発明2
すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が開示されているということができる。
「低摩擦、高耐摩耗性を向上するために、ゴムにグラファイト、ポリテトラフルオロエチレンからなる固体潤滑剤を含むポリウレタン樹脂からなる樹脂被覆材を刷毛塗り等でコーティングすることにより膜厚5?50μmの被膜が備えられ、コーティング後、加熱硬化したワイパーブレード。」

(1-3)刊行物2に記載された事項
刊行物2は前記2.(2)で挙げた引用例2であるから、その記載された事項は2.(2)(イ)の「引用例2の記載事項」のとおりである。
刊行物2(特に第7頁右上欄第14行目-右下欄第5行目を参照。)には、滑り塗料がポリウレタンおよびシロキサンを有し、被膜が付加的にポリエチレンを含有する発明が記載されている。
「本発明は更にコーティングもしくは塗料組成物にかかわり、この組成物は、ポリジアルキシシロキサン-ポリウレタンコポリマーを含む。・・・(中略)・・・このコーティング組成物は更に、添加剤、調整剤、充填剤等、例えば補足的なウレタン、ハロゲン化ポリオレフィン、塩素化天然エラストマー、カーボンブラック、テフロン粉末、ポリエチレン粉末、タルカム粉末、グラファイト、湿化剤、表面活性剤、硬化剤、浮揚防止剤、及びこれらの組合せ、等を含んでもよい。」

(2)対比
本願発明と引用発明2とを対比すると、
・ワイパーブレードは、通常、車両のフロントガラスワイパー用を指すものが主であるから、引用発明2の「ワイパーブレード」は、本願発明の「フロントガラスワイパー用ワイパーブレード」に相当するといえる。
・引用発明2の「被膜」、「グラファイト、ポリテトラフルオロエチレンからなる固体潤滑剤を含む」は、本願発明の「被膜」、「乾燥減摩剤としてグラファイト、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよび/または二硫化モリブデンを含有し」、にそれぞれ相当する。
・引用発明2の「樹脂被覆材」は、低摩擦性を向上するものであるから、引用発明2の「低摩擦、高耐摩耗性を向上するために、膜厚5?50μmの被膜が備えられ」と本願発明の「少なくとも部分的に摩擦を減少する被膜が備えられ」とは同義である。
・本願発明の「加硫する」は、ゴムを加熱硬化させるためにおこなわれるものであるから、引用発明2の「加熱硬化した」は本願発明の「加硫する」に相当しているといえる。
・引用発明2の「ポリウレタン樹脂からなる樹脂被覆材」と本願発明の「滑り塗料」とは「被覆材がポリウレタンを有する」という点で共通する。
してみると、本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は以下の通りである。

<一致点>
「少なくとも部分的に摩擦を減少する被膜が備えられ、前記被膜が滑り塗料により形成され、被覆材がポリウレタンを有する、フロントガラスワイパー用ワイパーブレードにおいて、
前記被膜が乾燥減摩剤としてグラファイト、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよび/または二硫化モリブデンを含有し、
滑り塗料および乾燥減摩剤をワイパーブレードに被覆し、その後滑り塗料および乾燥減摩剤を備えたワイパーブレードを加硫することを特徴とするワイパーブレード。」

<相違点1>
本願発明では「滑り塗料がポリウレタンおよびシロキサンを有する」のに対して、引用発明では「ポリウレタン樹脂からなる樹脂被覆材」である点。
<相違点2>
本願発明では、ワイパーブレードの被覆は「押出の直後に被覆し、その後加硫する」のに対して、引用発明ではワイパーブレードの「コーティング」が押出の直後であって加熱硬化する前なのかどうか不明である点。

(3)相違点についての判断
上記各相違点について検討する。
(3-1)上記<相違点1>について
前記2.(2)で挙げた引用例2には「本発明は更にコーティングもしくは塗料組成物にかかわり、この組成物は、ポリジアルキシシロキサン-ポリウレタンコポリマーを含む。・・・(中略)・・・このコーティング組成物は更に、添加剤、調整剤、充填剤等、例えば補足的なウレタン、ハロゲン化ポリオレフィン、塩素化天然エラストマー、カーボンブラック、テフロン粉末、ポリエチレン粉末、タルカム粉末、グラファイト、湿化剤、表面活性剤、硬化剤、浮揚防止剤、及びこれらの組合せ、等を含んでもよい。」(上記「引用例2の記載事項」を参照)と記載されている。
一般に、ゴム等のコーティングにおいて、高い滑り性を備えさせるべく、塗料組成物にポリウレタン及びシロキサンを含有させることは周知の技術である。
そうすると、引用発明2において、本願発明の滑り塗料にあたる「ポリウレタン樹脂からなる樹脂被覆材」に上記周知の技術を適用して、本願発明の相違点1に係る構成、すなわち「滑り塗料がポリウレタンおよびシロキサンを有する」ものとすることは当業者にとって容易想到の範囲ということができる。

(3-2)上記<相違点2>について
上記刊行物4には「図1には押出し装置1が示されている(上部左)。この押出し装置1において、押出し装置1から無限に連続的に放出される生ゴム2がブレードゴム部のストランド3を形成するために押出される。」(公報第7頁第4?6行目)と開示されているように、ワイパーブレードを押出形成することは一般的に行われていることである。
そして、引用発明2は、ワイパーブレードを樹脂被覆材でコーティング(被覆)し、その後、加熱硬化するものであるが、ワイパーブレードを樹脂被覆材でコーティング(被覆)するのは技術的にみて、押出形成後で加熱硬化する前であることは明らかである。
そうすると、ワイパーブレードのコーティング(被覆)を押出形成の直後とすることに何ら困難性はなく、引用発明2において、ワイパーブレードの「コーティング」を押出の直後であって加熱硬化する前とすることにより、本願発明の相違点2に係る構成とすることは当業者にとって容易になし得たものである。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明2、上記刊行物2、刊行物4に記載された技術及び上記周知技術から、当業者であれば予測できる範囲のものにすぎない。

したがって、本願発明は、引用発明2、上記刊行物2、刊行物4に記載された技術及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。。 よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-15 
結審通知日 2010-07-21 
審決日 2010-08-03 
出願番号 特願2004-513391(P2004-513391)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60S)
P 1 8・ 575- Z (B60S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本庄 亮太郎上尾 敬彦  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 金丸 治之
小関 峰夫
発明の名称 フロントガラスワイパー用ワイパーブレードおよびその製造方法  
代理人 山崎 利臣  
代理人 二宮 浩康  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  
代理人 杉本 博司  
代理人 星 公弘  

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