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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1229030
審判番号 不服2009-17435  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-16 
確定日 2010-12-16 
事件の表示 特願2008-286258「自動はんだ付け装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月19日出願公開、特開2009- 38401〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成15年3月13日に出願した特願2003-68083号の一部を平成20年11月7日に新たな特許出願としたものであって、平成21年2月4日付けの拒絶理由の通知に対して、同年4月10日付けで手続補正がされたが、同年6月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月16日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

II.平成21年9月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年9月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成21年9月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)のうち、請求項1についてする補正は、補正前に、
「プリント基板の入口側から出口側にかけて高くなる傾斜が付され、プリヒーター、噴流はんだ槽、冷却装置をチャンバーで覆い、プリント基板の出入口以外からは気体が流出入できないようにシールするとともに、前記噴流はんだ槽上には前記チャンバー内を不活性雰囲気にするための不活性ガス流入口が設けられたプリント基板のはんだ付けを行う自動はんだ付け装置において、
前記プリヒーター側に吊設された多数の入口側ラビリンス用テープと、
前記冷却装置側に吊設された多数の出口側ラビリンス用テープと、
前記出口側ラビリンス用テープの噴流はんだ槽付近に設けられた冷却装置に設置された低温の不活性ガスをプリント基板のはんだ付け面に吹き付ける吹き出し口と、
前記入口側ラビリンス用テープ側の前記プリント基板の入口近傍の前記チャンバー外に設置された排気装置とを有し、
前記チャンバー内の不活性ガスの流入を前記不活性ガス流入口と前記吹き出し口から行うとともに、プリント基板の入口近辺の気体および前記チャンバー内に流入した不活性ガスを前記排気装置で吸引するようにしたことを特徴とする自動はんだ付け装置。」
であったものを、補正後に、
「プリント基板の入口側から出口側にかけて高くなる傾斜が付され、プリヒーター、噴流はんだ槽、冷却装置をチャンバーで覆い、プリント基板の出入口以外からは気体が流出入できないようにシールするとともに、前記噴流はんだ槽上には前記チャンバー内を不活性雰囲気にするための不活性ガス流入口が設けられたプリント基板のはんだ付けを行う自動はんだ付け装置において、
前記プリヒーター側に吊設された多数の入口側ラビリンス用テープと、
前記冷却装置側に吊設された多数の出口側ラビリンス用テープと、
前記出口側ラビリンス用テープの噴流はんだ槽付近に設けられた冷却装置に設置された低温の不活性ガスをプリント基板のはんだ付け面に吹き付ける吹き出し口と、
前記入口側ラビリンス用テープ側の前記プリント基板の入口近傍の前記チャンバー外に設置された排気装置とを有し、
前記チャンバー内の不活性ガスの流入を前記不活性ガス流入口と前記吹き出し口から行うとともに、プリント基板の入口近辺の気体および前記プリント基板の入口側から出口側にかけて高くなる傾斜方向とは逆方向に前記チャンバー内に流入した不活性ガスを前記排気装置で吸引するようにしたことを特徴とする自動はんだ付け装置。」(以下、「本願補正発明1」という。)
とするものである。

すなわち、上記補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「プリント基板の入口近辺の気体および前記チャンバー内に流入した不活性ガスを前記排気装置で吸引する」ことを、「プリント基板の入口近辺の気体および前記プリント基板の入口側から出口側にかけて高くなる傾斜方向とは逆方向に前記チャンバー内に流入した不活性ガスを前記排気装置で吸引する」ように、更に具体的に限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当するといえる。

そこで、本願補正発明1が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かを、以下において更に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-188464号公報(以下、「刊行物1」という。)、特開平5-192766号公報(以下、「刊行物2」という。)、及び、特開2000-208924号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。

刊行物1:特開2000-188464号公報
(1a)「【請求項2】溶融はんだ槽の前方に冷却装置が設置された自動はんだ付け装置において、冷却装置はパネルであり、該パネルには冷媒体の循環路が形成されており、さらにパネルには気体流通路が形成されていて、該気体流通路には多数の気体吹き出し孔が穿設されていることを特徴とする自動はんだ付け装置。」(【特許請求の範囲】)

(1b)「つまり、はんだ付着後の冷却速度があまりにもゆっくりであると、搬送装置で搬送中に振動が加わったり、未だ完全に凝固していないはんだがプリント基板の近くの部分と離れた部分での冷却速度に差を生じたりすると、はんだの凝固途中でヒビ割れしたり剥離したりするという重大問題を起こすことになる。」(【0004】)

(1c)「一般的には冷却速度は、なるべく早い方がはんだ付け部の品質としては良好である。なぜならば、はんだ付け後に冷却を早くすると、前述のように自動はんだ付け装置の搬送装置での振動やプリント基板の部分的な冷却速度の差によるヒビ割れや剥離がなくなるばかりでなく、溶融はんだが急冷されて凝固すると、はんだの組織が微細となってはんだ自体の機械的強度が向上するからである。」(【0007】)

(1d)「また一般に鉛フリーはんだは、Sn-Pbはんだよりもはんだ付け性に劣るものであるが、大気中ではプリント基板の銅箔が酸化しやすくなるため、はんだ付け性に劣る鉛フリーはんだはさらにはんだ付けが良好に行われない。そこで鉛フリーはんだを使用する場合は、窒素ガスを充填した不活性雰囲気の自動はんだ付け装置の使用が好ましいものである。」(【0011】)

(1e)「また鉛フリーはんだのはんだ付け性を良好にする不活性雰囲気の自動はんだ付け装置では、ファンの冷却装置を使用すると、不活性雰囲気を保持するチャンバー内の雰囲気が乱されて、外部から空気が流入して酸素濃度を高めてしまうものであった。」(【0013】)

(1f)「【実施例】以下、図面に基づいて本発明を説明する。本発明の説明は、はんだ付け部の酸素濃度を安定させる必要のある不活性雰囲気の自動はんだ付け装置で行う。図1は第1発明の自動はんだ付け装置の正面断面図、図2は第1発明の自動はんだ付け装置に使用する冷却装置の平面図、図3は第2発明の自動はんだ付け装置の正面断面図、図3は第2発明の自動はんだ付け装置に使用する冷却装置の平面図である。
先ず、第1発明について説明する。自動はんだ付け装置1は、プリヒーター2、溶融はんだ槽3、冷却装置4等の処理装置が順次設置されている。これらの処理装置の上方を搬送装置5(一点鎖線)が走行していて、図示しないプリント基板を矢印A方向に搬送するようになっている。
プリヒーター2、溶融はんだ槽3、冷却装置4はトンネル状のチャンバー6内に収容されているが、図示しないフラクサーは自動はんだ付け装置とは別途設置されており、インラインでプリント基板が連続搬送されるようになっている。チャンバー6内には、内部を不活性雰囲気にするために多数の窒素ガス供給管7・・・が取り付けられている。
溶融はんだ槽3には、荒れた波を噴流する一次噴流ノズル8と穏やかな波を噴流する二次噴流ノズル9が設置されている。また溶融はんだ槽3の中の溶融はんだ10中にはチャンバー6のスカートが浸漬されている。チャンバーのスカートを溶融はんだ中に浸漬したのは、チャンバーを上下動させたときに溶融はんだでチャンバー内をエアータイトにするためである。」(【0021】-【0024】)

(1g)「次に上記自動はんだ付け装置におけるプリント基板のはんだ付けについて説明する。
先ず、溶融はんだ槽3内の溶融はんだ10を所定の温度に加熱し、一次噴流ノズル8と二次噴流ノズル9から溶融はんだを噴流させる。そして窒素ガスを窒素ガス供給パイプ7からチャンバー6内に供給してチャンバー内を所定の酸素濃度まで下げる。このようにして溶融はんだ槽3の溶融はんだの温度とチャンバー6内の酸素濃度が所定の値になったならば、図示しないフラクサーでやはり図示しないプリント基板にフラックスを塗布した後、自動はんだ付け装置の搬送装置5でプリント基板を矢印A方向に搬送する。プリント基板は、プリヒーター2で予備加熱され、溶融はんだ槽3の一次噴流ノズル8で溶融はんだが付着させられる。」(【0026】-【0027】)

(1h)「続いて第2発明の自動はんだ付け装置について説明する。第1発明と同一部分は同一符号を付してその説明は省略する。
第2発明の自動はんだ付け装置もプリヒーター2、溶融はんだ槽3、冷却装置4等の処理装置が順次設置されており、これらの処理装置の上方を搬送装置5(一点鎖線)が走行していて、図示しないプリント基板を矢印A方向に搬送するようになっている。
第2発明に使用する冷却装置4は、図4に示すように矩形のパネル11であり、パネル11の内部には冷媒体の循環路12が迷路状に形成されている。実施例に示す循環路は、パネル11の中に長い穴を穿設したもので、循環路12のそれぞれの端部には、循環路内に冷媒体を流入させる流入口13と循環路内の冷媒体を外部に流出させる流出口14が形成されており、流入口13から流入した冷媒体は循環路12内を矢印のように流動して流出口から流出するものである。これらの流入口13と流出口14は図示しない熱交換装置にパイプで接続されている。流出口から出た冷媒体は、熱交換装置で熱を奪われて温度が下がる。この温度が下がった冷媒体は、冷却装置の流入口14から循環路12内を流動し、パネル11を冷やす。
多数の循環路12・・・の間に挟まれるようにして多数の気体流通路15が形成されている。該気体流通路には、気体流入口16が形成されており、該気体流入口は図示しない窒素ガス発生装置(PSA)や窒素ガスボンベ等に接続されている。また気体流通路15にはプリント基板の通過する方向に多数の気体吹き出し孔17・・・が穿設されている。従って、パネル11は冷媒体で冷やされ、気体流通路はパネルで冷やされるため、気体流通路内を流通する窒素ガスも効率よく冷却されるようになる。
第2発明の自動はんだ付け装置におけるプリント基板のはんだ付けは、前述のようにフラクサーでフラックス塗布、溶融はんだ槽で溶融はんだの付着、そして冷却装置で冷却が行われる。第2発明に使用する冷却装置は、低温となったパネルによる雰囲気の冷却と、低温となった窒素ガスを直接プリント基板に吹き付けるという二重の冷却作用によりプリント基板の冷却を行うため、冷却効果は第1発明における冷却よりも優れているものである。」(【0029】-【0033】)

(1i)「【発明の効果】以上説明したように、第1発明の自動はんだ付け装置は、冷却装置として全体が低温となるパネルを用いてあるため、冷却装置近傍の雰囲気を低温にして冷却効果を上げることができる。また第2発明の自動はんだ付け装置は、冷却装置が低温となったパネルから低温の気体を吹き出させるようにしたため、パネルの低温雰囲気に加えて低温気体を吹き付けるという二重の冷却作用により、さらに冷却効果を上げることができるものである。従って本発明は、はんだ付け温度を高温にしなければならなかったり、凝固範囲が広かったりする鉛フリーはんだを用いても、急冷が可能となるため、プリント基板に搭載された電子部品に対する熱影響を少なくできるばかりでなく、搬送中の振動ではんだにヒビ割れや剥離を起こさせないという信頼性に優れたはんだ付けが行えるものであり、また不活性ガスを使用した場合でも外部から空気を流入させることがないため内部の酸素濃度を安定した低い値に保持できるという従来にない優れた効果を奏するものである。」(【0035】)

(1j)図3は、刊行物1に記載された第2発明の自動はんだ付け装置の正面断面図であって、同図から、プリント基板が、入口側から出口側にかけて高くなる傾斜を有する矢印A方向に搬送されること、溶融はんだ槽3上を含むチャンバ-6内には多数の窒素ガス供給管7が設けられていること、冷却装置4が溶融はんだ槽3の出口側付近に設けられていること、及び、チャンバー6の入り口側・出口側の端部が図示されていないことを看取することができる。

刊行物2:特開平5-192766号公報
(2a)「【請求項1】ワークを上方に傾斜して搬送するコンベヤと、不活性ガスの注入により不活性雰囲気を形成するためにこのコンベヤに沿って設けられ両端にワーク搬入口およびワーク搬出口が開口されたチャンバと、このチャンバ内でノズルから噴流される溶融はんだによりワークをはんだ付けする噴流式はんだ槽とを有する噴流式はんだ付け装置において、
前記チャンバの下降側端に位置するワーク搬入口の近傍に開口されたチャンバ内気吸引ポートと、
このチャンバ内気吸引ポートに接続されチャンバ内気を外部に吸引する吸引機と
を具備したことを特徴とする噴流式はんだ付け装置。」(【特許請求の範囲】)

(2b)「【従来の技術】従来、図3乃至図5に示されるように、ワーク(プリント配線基板P)を上方に傾斜して搬送するコンベヤ11と、不活性ガスの注入により不活性雰囲気を形成するためにこのコンベヤ11に沿って設けられ両端にワーク搬入口およびワーク搬出口が開口されたチャンバ12と、このチャンバ12内でノズルから噴流される溶融はんだによりワークをはんだ付けする噴流式はんだ槽13とを有する噴流式はんだ付け装置がある。
前記チャンバ12は、両端が開口されかつ上昇傾斜されているので、内部の加熱雰囲気が上部側へ勢い良く移動する所謂「煙突効果」が生ずる。このためチャンバ内不活性雰囲気がワーク搬出口から流出するとともに外気がワーク搬入口から流入し、チャンバ内の酸素濃度が上がりやすい。」(【0002】-【0003】)

(2c)「【作用】本発明は、煙突効果によりチャンバのワーク搬出口から自然に排気される不活性ガスの流れに対し、吸引機によりチャンバのワーク搬入口側の内気吸引ポートから強制的に排気される不活性ガスの流れをチャンバ内に形成して、チャンバ内に注入された不活性ガスがチャンバの両端側にバランス良く分配されるようにする。」(【0011】)

(2d)「図2にも示されるように、前記チャンバ31の下降側端スロート部33に設けられたワーク搬入口35の近傍にはチャンバ内気吸引ポート(以下、バランスポートという)61が開口され、このバランスポート61に吸引パイプ62を介してチャンバ内気を外部に吸引する吸引機としてのブロア63が接続されている。バランスポート61はスロート部33の全幅にわたって細長く設けられているので、吸引パイプ62の接続部64もバランスポート61と適合する形状に設けられ、フランジ部65によりスロート部33に結合される。
前記バランスポート61は、図1に示されるようにスロート部33の上下両面に設けてもよいし、下面のみに設けてもよい。
そして、ワーク搬入側のバランスポート61からチャンバ内気を吸引することにより、煙突効果によりワーク搬出側のみが低圧となる傾向を解消し、チャンバ31の両端部での圧力差をほぼ等しくする。これにより、煙突効果でチャンバ31のワーク搬出口36から自然に排気される不活性ガスの流れに対し、ブロア63によりチャンバ31のワーク搬入口側のバランスポート61から強制的に排気される不活性ガスの流れをチャンバ31内に形成して、チャンバ31内に注入された不活性ガスがチャンバ31の両端側にバランス良く分配され、この両端側からほぼ等しい速度で排気されるようにする。」(【0017】-【0019】)

(2e)「【発明の効果】本発明によれば、煙突効果によりチャンバの外気入口として作用するワーク搬入口側から、逆にチャンバ内気を吸引機により強制的に吸出すことにより、煙突効果に対抗する負圧をワーク搬入側にも発生させて、チャンバ内に注入された不活性ガスをチャンバの両端側にバランス良く分配でき、チャンバ内に不活性雰囲気を安定的にかつ均一に形成できる。これにより、ワーク搬送角度が水平でないトンネル炉をシンプルな構造で雰囲気炉として使用でき、従来のシャッタが不要であり、コンベヤを分割する必要がなく、酸素濃度の安定度が高い。」(【0024】)

刊行物3:特開2000-208924号公報
(3a)「【発明が解決しようとする課題】ところで、半田付け装置101は、半田付けの効率を向上させるため、チャンバ102内の酸素濃度を更に低くする必要がある。すなわち、半田付け装置101では、チャンバ102内の酸素濃度を更に低くすることで、接続不良を更になくすことができ、また、半田槽103に生じる半田の酸化物の発生を抑えることができ、この酸化物の除去作業の回数を減らし、生産性の向上を図ることができる。」(【0007】)

(3b)「半田付け装置は、更に、ワークを出し入れするためチャンバのワークの搬送方向の壁面に形成された開口部と、この開口部よりワークの搬送方向に延長して上記ンバに設けられる延長カバーとを備え、延長カバーの下側に、ワークの搬送方向と直交する方向に、上記ンバー内の不活性ガスの流出を規制する規制板が設けられてなる。また、延長カバーの上側には、ワークの搬送方向と直交する方向に、チャンバ内の不活性ガスの流出を規制する可撓性を有する規制カーテンが配設されている。これにより、チャンバに設けられた出入口要開口部より不活性ガスが流出することが防止できる。」(【0016】)

(3c)「ここで、チャンバ6内に注入される不活性ガスは、半田が酸化することを防止するために用いられることから、半田と化学反応を起こしにくく、酸化作用の低い気体が用いられる。この不活性ガスは、好ましくは窒素ガスであるが、他にヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、クセノン、ラドン等を用いることも可能であり、また、これらの混合ガスであってもよい。」(【0029】)

(3d)「以上のように構成されるチャンバ6の下部6bには、図3及び図4に示すように、搬送機構4により搬送されるワーク2を出し入れするための入口用開口部48と出口用開口部49とが設けられている。そして、チャンバ6には、入口用開口部48から搬送機構4を覆うように入口側カバー51が一体的に設けられ、出口用開口部49から搬送機構4を覆うように出口用カバー52が設けられている入口用カバー48には、チャンバ6内の窒素ガスが入口用開口部48より流出すること規制する規制カーテン53が配設されている。規制カーテン53は、可撓性を有する耐熱性樹脂シートを略平紐状となるように切れ目を入れて形成されている。この規制カーテン51は、入口用カバー51の上部より吊された際、下端が搬送機構4に接触する長さに形成され、上部より垂下するように取り付けられる。規制カーテン53は、入口用カバー51より複数吊り下げられることで、チャンバ6内の不活性ガスが入口用開口部48より流出することを防止している。また、規制カーテン53は、可撓性を有することから、円滑にワーク2をチャンバ6内に搬送することができる。
また、出口用カバー52には、チャンバ6内の窒素ガスが出口用開口部49より流出すること規制する規制カーテン54が設けられている。規制カーテン54は、可撓性を有する耐熱性樹脂シートを略平紐状となるように切れ目を入れて形成され、出口用カバー52の上部より吊された際、下端が搬送機構4に接触する長さに形成され、上部より垂下するように取り付けられる。規制カーテン54は、出口用カバー52より複数吊り下げられることで、チャンバ6内の不活性ガスが出口用開口部49の上部より流出することを防止している。また、規制カーテン54は、可撓性を有することから、円滑にワーク2をチャンバ6内に搬送することができる。」(【0033】-【0035】)

3.当審の判断
3-1.刊行物1に記載の発明
(ア)上記摘記事項(1f)の「チャンバーのスカートを溶融はんだ中に浸漬したのは、チャンバーを上下動させたときに溶融はんだでチャンバー内をエアータイトにするためである。」の「エアータイトにする」との記載に照らして、刊行物1のチャンバーが、プリント基板の出入口以外からは気体が流出入できないようにシールするものであることを理解することができる。

(イ)窒素ガス供給管と、冷却装置は、いずれもチャンバーで覆われた領域に存在するのであるから、該窒素ガス供給管と、該冷却装置に設置された気体吹き出し孔から供給される不活性ガスは、いずれもチャンバー内に流入するものであると理解することができる。

(ウ)上記(ア)、(イ)の理解を踏まえて、上記摘記事項(1a)-(1j)を整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「プリント基板の入口側から出口側にかけて高くなる傾斜が付され、プリヒーター、荒れた波を噴流する一次噴流ノズルと穏やかな波を噴流する二次噴流ノズルが設置されている溶融はんだ槽、冷却装置をチャンバーで覆い、プリント基板の出入口以外からは気体が流出入できないようにシールするとともに、前記溶融はんだ槽上を含む前記チャンバー内には、前記チャンバー内を不活性雰囲気にするための多数の窒素ガス供給管が設けられたプリント基板のはんだ付けを行う自動はんだ付け装置において、
溶融はんだ槽の出口側付近に設けられた冷却装置には、低温の窒素ガスをプリント基板のはんだ付け面に吹き付ける、気体吹き出し孔が設置され、前記チャンバー内の窒素ガスの流入を前記噴流はんだ槽上を含むチャンバー内に設けられた前記多数の窒素ガス供給管と前記冷却装置に設けられた前記気体吹き出し孔から行うようにした自動はんだ付け装置。」

3-2.対比・判断
(a)本願補正発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「荒れた波を噴流する一次噴流ノズルと穏やかな波を噴流する二次噴流ノズルが設置されている溶融はんだ槽」、「窒素ガス供給管」、「気体吹き出し孔」、「窒素ガス」は、本願補正発明1の「噴流はんだ槽」、「不活性ガス流入口」、「吹き出し口」、「不活性ガス」に相当する。

そうすると、本願補正発明1と刊行物1発明は、
「プリント基板の入口側から出口側にかけて高くなる傾斜が付され、プリヒーター、噴流はんだ槽、冷却装置をチャンバーで覆い、プリント基板の出入口以外からは気体が流出入できないようにシールするとともに、前記噴流はんだ槽上には前記チャンバー内を不活性雰囲気にするための不活性ガス流入口が設けられたプリント基板のはんだ付けを行う自動はんだ付け装置において、
噴流はんだ槽の出口側付近に設けられた冷却装置には、低温の不活性ガスをプリント基板のはんだ付け面に吹き付ける吹き出し口が設置され、前記チャンバー内の不活性ガスの流入は、少なくとも前記噴流はんだ槽上に設けられた前記不活性ガス流入口と前記冷却装置に設けられた前記吹き出し口から行うようにした自動はんだ付け装置。」
である点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点1:本願補正発明1が「前記プリヒーター側に吊設された多数の入口側ラビリンス用テープと、前記冷却装置側に吊設された多数の出口側ラビリンス用テープ」を有するのに対して、刊行物1には、ラビリンスについての記載がないこと。

相違点2:本願補正発明1では「前記出口側ラビリンス用テープの噴流はんだ槽付近」に冷却装置が設けられているのに対して、刊行物1には、ラビリンスについての記載がないこと。

相違点3:本願補正発明1は、「前記入口側ラビリンス用テープ側の前記プリント基板の入口近傍の前記チャンバー外に設置された排気装置とを有し」、かつ、「プリント基板の入口近辺の気体および前記プリント基板の入口側から出口側にかけて高くなる傾斜方向とは逆方向に前記チャンバー内に流入した不活性ガスを前記排気装置で吸引する」のに対して、刊行物1には、チャンバーの入り口側端部が図示されておらず、排気装置を有するか不明である点。

相違点4:本願補正発明1は「前記チャンバー内の不活性ガスの流入を前記不活性ガス流入口と前記吹き出し口から行う」のに対して、刊行物1発明は、チャンバー内の溶融はんだ槽上以外の領域にも「窒素ガス供給管」を具備しており、この「窒素ガス供給管」からも「前記チャンバー内の不活性ガスの流入」が行われている点。

次に、上記相違点1?4について検討する。

(1)相違点1について
刊行物1の上記摘記(1d)の「一般に鉛フリーはんだは、Sn-Pbはんだよりもはんだ付け性に劣るものであるが、大気中ではプリント基板の銅箔が酸化しやすくなるため、はんだ付け性に劣る鉛フリーはんだはさらにはんだ付けが良好に行われない。そこで鉛フリーはんだを使用する場合は、窒素ガスを充填した不活性雰囲気の自動はんだ付け装置の使用が好ましい」、摘記(1e)の「鉛フリーはんだのはんだ付け性を良好にする不活性雰囲気の自動はんだ付け装置では、ファンの冷却装置を使用すると、不活性雰囲気を保持するチャンバー内の雰囲気が乱されて、外部から空気が流入して酸素濃度を高めてしまう」、摘記(1g)の「窒素ガスを窒素ガス供給パイプ7からチャンバー6内に供給してチャンバー内を所定の酸素濃度まで下げる。このようにして溶融はんだ槽3の溶融はんだの温度とチャンバー6内の酸素濃度が所定の値になったならば、図示しないフラクサーでやはり図示しないプリント基板にフラックスを塗布した後、自動はんだ付け装置の搬送装置5でプリント基板を矢印A方向に搬送する」、摘記(1i)の「不活性ガスを使用した場合でも外部から空気を流入させることがないため内部の酸素濃度を安定した低い値に保持できる」との記載に照らして、刊行物1には、チャンバー内に外部から空気を流入させることなく低い酸素濃度に保持することが望ましいという技術課題が開示されているものと認められる。

一方、刊行物3の上記摘記(3a)?(3d)の記載に照らして、刊行物3に記載された半田付け装置の、入口用カバー51、上側カバー26、出口用カバー52等によって構成される構造体は、本願補正発明1の「プリヒーター、噴流はんだ槽を覆うチャンバー」に相当する。また、該入口用カバー51、出口用カバー52の上部より吊され、下端が搬送機構4に接触する長さに形成され、可撓性を有する耐熱性樹脂シートを略平紐状となるように切れ目を入れて形成された、チャンバ6内の不活性ガスが入口用開口部48、及び、出口用開口部49の上部より流出することを防止する規制カーテン53、54は、それぞれ、本願補正発明1の、入口側ラビリンス用テープ、及び、出口側ラビリンス用テープに相当する部材であるといえる。

そうすると、刊行物1及び刊行物3に接した当業者であれば、両者が共に「半田付け装置」という共通する技術分野に属する発明であって、また、チャンバー内外の気体の流出入を防止することが望ましいという共通する解決しようとする課題を有していることから、刊行物1発明に、刊行物3に記載された、「入口用カバー51、出口用カバー52の上部より吊され、下端が搬送機構4に接触する長さに形成され、可撓性を有する耐熱性樹脂シートを略平紐状となるように切れ目を入れて形成された、チャンバ6内の不活性ガスが入口用開口部48、及び、出口用開口部49の上部より流出することを防止する規制カーテン53、54」を付加することで、刊行物1発明の「チャンバー内に外部から空気を流入させることなく低い酸素濃度に保持することが望ましい」という課題を、より効果的に解決しようとすることは当業者が適宜なし得たことと認められる。
してみれば、刊行物1発明において、相違点1に係る構成について、本願補正発明1の構成を採用すること、すなわち、刊行物1発明に、「前記プリヒーター側に吊設された多数の入口側ラビリンス用テープと、前記冷却装置側に吊設された多数の出口側ラビリンス用テープ」を設けて、チャンバー内への外気の侵入を防ぐことは、当業者が適宜なし得た事項といえる。
また、このような構成を採用したことによる効果は当業者が予測し得た範囲内のものであり、刊行物1発明において、このような構造を用いることを阻害する格別の理由が存在するとも認められない。

(2)相違点2について
出口側ラビリンスを設けることは、上記「相違点1について」で検討したように当業者が適宜なし得たことといえる。そして、刊行物1発明においては、噴流はんだ槽の出口側付近に冷却装置が位置するのであるから、刊行物1発明に出口側ラビリンス用テープを設けた場合、「前記出口側ラビリンス用テープの噴流はんだ槽付近」に冷却装置が位置することになるといえる。そして、相違点1が、上記のように当業者が適宜なし得た事項であるといえるのであるから、相違点2についても、同様に当業者が適宜なし得た事項にすぎないものといえる。

(3)相違点3について
刊行物2の上記摘記(2b)には、「ワーク(プリント配線基板P)を上方に傾斜して搬送するコンベヤ11と、不活性ガスの注入により不活性雰囲気を形成するためにこのコンベヤ11に沿って設けられ両端にワーク搬入口およびワーク搬出口が開口されたチャンバ12と、このチャンバ12内でノズルから噴流される溶融はんだによりワークをはんだ付けする噴流式はんだ槽13とを有する噴流式はんだ付け装置がある。
前記チャンバ12は、両端が開口されかつ上昇傾斜されているので、内部の加熱雰囲気が上部側へ勢い良く移動する所謂「煙突効果」が生ずる。このためチャンバ内不活性雰囲気がワーク搬出口から流出するとともに外気がワーク搬入口から流入し、チャンバ内の酸素濃度が上がりやすい。」ことが記載されている。
一方、刊行物1発明は、この刊行物2でいう「ワーク(プリント配線基板P)を上方に傾斜して搬送するコンベヤ11と、不活性ガスの注入により不活性雰囲気を形成するためにこのコンベヤ11に沿って設けられ両端にワーク搬入口およびワーク搬出口が開口されたチャンバ12と、このチャンバ12内でノズルから噴流される溶融はんだによりワークをはんだ付けする噴流式はんだ槽13とを有する噴流式はんだ付け装置」に該当するといえるから、刊行物1と刊行物2に接した当業者であれば、刊行物1発明に、刊行物2において説明されている「煙突効果」が生じる可能性について思い至るものといえる。
ところで、刊行物1の上記摘記(1i)の「また不活性ガスを使用した場合でも外部から空気を流入させることがないため内部の酸素濃度を安定した低い値に保持できるという従来にない優れた効果を奏するものである。」との記載からも明らかなように、刊行物1発明においても、チャンバ内の不活性雰囲気がワーク搬出口から流出するとともに外気がワーク搬入口から流入し、チャンバ内の酸素濃度が上がることが望ましくないことは明らかである。
してみれば、刊行物2の上記摘記(2e)に記載された「本発明によれば、煙突効果によりチャンバの外気入口として作用するワーク搬入口側から、逆にチャンバ内気を吸引機により強制的に吸出すことにより、煙突効果に対抗する負圧をワーク搬入側にも発生させて、チャンバ内に注入された不活性ガスをチャンバの両端側にバランス良く分配でき、チャンバ内に不活性雰囲気を安定的にかつ均一に形成できる。これにより、ワーク搬送角度が水平でないトンネル炉をシンプルな構造で雰囲気炉として使用でき、従来のシャッタが不要であり、コンベヤを分割する必要がなく、酸素濃度の安定度が高い。」との知見に基づいて、刊行物1発明において、酸素濃度の安定度を高めて、内部の酸素濃度を安定した低い値に保持するために、刊行物1発明に、刊行物2に記載された発明を適用して、「煙突効果によりチャンバの外気入口として作用するワーク搬入口側から、逆にチャンバ内気を強制的に吸出す吸引機」を付加することは、当業者が容易に想到し得たことである。なお、その際に、前記吸引機に接続されたチャンバ内気吸引ポートを、プリント基板の入口近傍の前記チャンバーの外に設けるか内に設けるかは、設計事項にすぎないと認められる。
そして、刊行物1発明は、プリント基板の入口側から出口側にかけて高くなる傾斜を有するのであるから、前記チャンバ内気吸引ポートをプリント基板の入口近傍の前記チャンバー外に設けた場合には、その構造から必然的に「プリント基板の入口近辺の気体および前記プリント基板の入口側から出口側にかけて高くなる傾斜方向とは逆方向に前記チャンバー内に流入した不活性ガスを前記吸引機で吸引する」ものになるといえる。
したがって、刊行物1発明において、相違点3について、本願補正発明1の構成を採用することは当業者が容易になし得た事項といえる。
また、このような構成を採用したことによる効果は当業者が予測し得た範囲内のものであり、刊行物1発明において、このような構造を用いることを阻害する格別の理由が存在するとも認められない。

なお、審判請求人は、審判の請求の理由の「(b)拒絶理由に対する反論」において、「上述のように、本願発明は、チャンバー内に設置されたラビリンスの効果と協働して、出口側ラビリンスの噴流はんだ槽付近に設けられた冷却装置から低温の不活性ガス吹き付けることにより、エアーカーテンの効果で出口側からの外気進入防止を確実なものとしています。また、装置内で一番高温の場所であり、酸化が激しい場所である噴流はんだ槽上方から不活性ガスを取り入れることにより、必要な箇所の酸素濃度を低く維持しています。
さらに、プリント基板の入口近傍のチャンバー外に排気装置を設けることで、チャンバー内に冷却装置および噴流はんだ槽の上方から噴出した不活性ガスを入口側に誘導することにより、煙突効果による出口側への不活性ガスの流出を回避しています。さらに、排気装置でプリント基板の入口近傍のチャンバー外から吸引することにより、プリント基板の入口近辺の気体を吸引して、この気体がチャンバー内に流入することを阻止して低い酸素濃度を維持させています。これらの内容は、本願発明の「必要部分の酸素低下に効果のある(0015段落)」に示された内容であり、本願発明の最も重要な作用効果であります。 」と主張するので、この点について検討する。
上記で検討したように、刊行物1発明に、刊行物1の上記摘記(1i)等において示されている「また不活性ガスを使用した場合でも外部から空気を流入させることがないため内部の酸素濃度を安定した低い値に保持」するという課題を解決する為に、刊行物2に記載された「煙突効果によりチャンバの外気入口として作用するワーク搬入口側から、逆にチャンバ内気を強制的に吸出す吸引機」を付加すること、及び、刊行物3に記載された「入口用カバー51、出口用カバー52の上部より吊され、下端が搬送機構4に接触する長さに形成され、可撓性を有する耐熱性樹脂シートを略平紐状となるように切れ目を入れて形成された、チャンバ6内の不活性ガスが入口用開口部48、及び、出口用開口部49の上部より流出することを防止する規制カーテン53、54」を付加することは、それぞれ、当業者が容易になし得たことと認められる。
そして、一の課題を解決する為に、公知の複数の手段を併用した場合に、それらの効果が相乗されて、該課題が一層確実に解決される場合があることは、当業者が容易に想像し得たことである。
他方、本願補正発明1における、「ラビリンス」と「冷却装置から低温の不活性ガス吹き付け」の組み合わせが、当業者が予想する範囲を超えた顕著な効果を奏するということを示す記載は、本願の明細書及び図面には認められず、また、自明な事項であるともいえない。
さらに、「排気装置でプリント基板の入口近傍のチャンバー外から吸引することにより、プリント基板の入口近辺の気体を吸引」することが、刊行物2に記載されるようにチャンバー内で吸引する場合に比べて、「低い酸素濃度を維持」するという効果を顕著に生じるということを示す具体的な説明も、審判請求人が主張する「(0015段落)」を含む本願明細書及び図面には記載されておらず、また、当業者にとって自明な事項であるともいえない。
したがって、審判請求人の前記主張は、本願の明細書等の記載に基づく主張であるとはいえないから、採用することができない。

(4)相違点4について
窒素ガス供給管を配置する位置は設計事項であって、酸素濃度が所定の値以下に維持されるように、その配置を調整することは当業者が当然に考慮すべき事項といえる。
一方、ラビリンスを有する自動はんだ付け装置において、不活性ガスの供給を噴流はんだ槽上のみとすることは、上記刊行物3の図4等にも記載されているように格別のものとは認められない。
してみれば、上記「相違点1について」で検討したように、刊行物1発明に、「前記プリヒーター側に吊設された多数の入口側ラビリンス用テープと、前記冷却装置側に吊設された多数の出口側ラビリンス用テープ」を設けた構造を採用することが、当業者が適宜なし得た事項といえる場合において、チャンバー内の溶融はんだ槽上以外の領域の「窒素ガス供給管」の配置を省略して、「前記チャンバー内の不活性ガスの流入を前記噴流はんだ槽上に設けられた前記不活性ガス流入口と前記冷却装置に設けられた前記吹き出し口から行う」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

以上のように、刊行物1発明において、本願補正発明1との相違点1?4に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるから、本願補正発明1は、刊行物1-3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成21年9月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-3に係る発明は、平成21年4月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。

「プリント基板の入口側から出口側にかけて高くなる傾斜が付され、プリヒーター、噴流はんだ槽、冷却装置をチャンバーで覆い、プリント基板の出入口以外からは気体が流出入できないようにシールするとともに、前記噴流はんだ槽上には前記チャンバー内を不活性雰囲気にするための不活性ガス流入口が設けられたプリント基板のはんだ付けを行う自動はんだ付け装置において、
前記プリヒーター側に吊設された多数の入口側ラビリンス用テープと、
前記冷却装置側に吊設された多数の出口側ラビリンス用テープと、
前記出口側ラビリンス用テープの噴流はんだ槽付近に設けられた冷却装置に設置された低温の不活性ガスをプリント基板のはんだ付け面に吹き付ける吹き出し口と、
前記入口側ラビリンス用テープ側の前記プリント基板の入口近傍の前記チャンバー外に設置された排気装置とを有し、
前記チャンバー内の不活性ガスの流入を前記不活性ガス流入口と前記吹き出し口から行うとともに、プリント基板の入口近辺の気体および前記チャンバー内に流入した不活性ガスを前記排気装置で吸引するようにしたことを特徴とする自動はんだ付け装置。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由に引用された刊行物1-3の主な記載事項は、前記「II.2.」に記載したとおりである。

3.当審の判断
本願発明1を特定するに必要な事項を全て含み、さらに具体的に限定したものに相当する本願補正発明1が、前記「II.3.」に記載したとおり、刊行物1-3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も同様の理由で、刊行物1-3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-12 
結審通知日 2010-10-19 
審決日 2010-11-02 
出願番号 特願2008-286258(P2008-286258)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳本 陽征  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 筑波 茂樹
加藤 浩一
発明の名称 自動はんだ付け装置  
代理人 山口 隆史  
代理人 山口 邦夫  

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