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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16G
管理番号 1229035
審判番号 不服2009-20232  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-21 
確定日 2010-12-09 
事件の表示 平成11年特許願第301637号「連結体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年5月8日出願公開、特開2001-124151〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年10月22日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は特許を受けることができないとして、平成21年7月16日付けで拒絶査定がされたところ、平成21年10月21日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成21年6月29日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
弾性体中にチェーンを埋設させ、そのチェーンを構成する各リング同志が接触しないように弛緩させた状態とし、その各リング間にも弾性体を介在させた連結体において、
チェーン周囲の弾性体中に、天然繊維、合成繊維、金属繊維もしくはこれらの混合繊維等による織布や不織布等の布状の抵抗体を弾性体を挟んだ状態で複数層設けて積層配置させたことを特徴とする連結体。」

2.原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物及びその記載事項
(1)刊行物1:実願昭60-175549号(実開昭62-82435号)のマイクロフィルム
(2)刊行物2:特開昭61-36534号公報

(刊行物1)
刊行物1には、「緩衝用ゴム製索条」に関して、図面(特に、第1、2及び6図を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。なお、大文字を小文字で表記した箇所がある。
(a)「本考案は、緩衝用ゴム製索条、殊に消波工における潜入防止用ロープや道路通行区分表示用ロープ等の緩衝手段として好適に使用しうるゴム製索条に関する。」(第1頁第14?17行)
(b)「第6図に例示するごとく、チェーン(C)の各環体(L)の連接面がゴム弾性体(R)で完全に被覆されるようにして該チェーン(C)を埋設したゴム被覆チェーン(実公昭56-18740号参照)が開発されている。
このゴム被覆チェーンは、表面がゴム弾性体で被覆されているから、船体や車体とチェーンとが直接摺擦することがないので擦過傷の発生を防止でき、また複数の環体の連結体である該チェーンは全ゆる方向へ自由に湾曲できる。」(第2頁第13行?第3頁第3行)
(c)「本例索条(1)は、ゴム弾性材により円柱体として形成され、かつ、第2図にさらに詳細に示すごとく、該円柱体の両端部に軸線に沿って埋設されたネジ孔(3a)付きの金属製ソケット(3,3)を備える複数の緩衝性結節体(2,2,2,・・)と、各結節体(2)のソケット(3)に螺合して該結節体(2)を相互に連結する金属製ロッド(4,4,4,・・)とから成る。
各緩衝性結節体(2)は,第2図に示すように、コードが該結節体(2)の軸線に対して斜交するごとく配置された補強布(5)を該結節体(2)の外面付近に埋設されており、また各金属製ロッド(4)は、同図に一部を図示するように金属製本体(4a)の外面をネジ部(4b)を除いてゴム(6)で被覆されている。」(第7頁第8行?第8頁第1行)
したがって、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
【引用発明】
ゴム弾性体R中にチェーンCを埋設させ、そのチェーンCを構成する各環体L同志が接触しないように弛緩させた状態とし、その各環体L間にもゴム弾性体Rを介在させたゴム被覆チェーン。

(刊行物2)
刊行物2には、「Vリブドベルト」に関して、図面とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(d)「本発明は・・・Vリブドベルトに関するものである。」(第1頁左下欄第19行?右下欄第3行)
(e)「本発明に係るVリブドベルトは、図に示すようにポリエステル繊維、ガラス繊維あるいはポリアミド繊維の高強力で低伸度のロープからなる抗張体(3)がクッションゴム層(2)内に埋設され、その上側に複数層のゴム付帆布(1)が積層され、他方抗張体(3)の下側には圧縮ゴム層(4)があって、複数個のリブ(5)(図では3リブ)を具備する構造からなっている。
かかるVリブドベルトにあって圧縮ゴム層(4)は下記第1表に示される種々の配合ゴムが使用され、またゴム付帆布(1)にはゴム付綿織物を2プライそして抗張体(3)にはポリエステル繊維を用いている。」(第3頁右上欄第6?18行)

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「ゴム弾性体R」は本願発明の「弾性体」に相当し、以下同様に、「チェーンC」は「チェーン」に、「環体L」は「リング」に、「ゴム被覆チェーン」は「連結体」に、それぞれ相当するから、両者は下記の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
弾性体中にチェーンを埋設させ、そのチェーンを構成する各リング同志が接触しないように弛緩させた状態とし、その各リング間にも弾性体を介在させた連結体。
(相違点)
本願発明は、「チェーン周囲の弾性体中に、天然繊維、合成繊維、金属繊維もしくはこれらの混合繊維等による織布や不織布等の布状の抵抗体を弾性体を挟んだ状態で複数層設けて積層配置させた」のに対し、引用発明は、そのような構成を具備していない点。
そこで、上記相違点について検討する。
(相違点について)
刊行物1には、「各緩衝性結節体(2)は,第2図に示すように、コードが該結節体(2)の軸線に対して斜交するごとく配置された補強布(5)を該結節体(2)の外面付近に埋設されており」(上記摘記事項(c)参照)と記載されている。ここで、刊行物1に記載された補強布5は、本願発明の「天然繊維、合成繊維、金属繊維もしくはこれらの混合繊維等による織布や不織布等の布状の抵抗体」に相当するか、あるいは、少なくともそれらに下位概念として含まれていることは明らかである。
また、弾性体を補強するにあたり、弾性体を挟んだ状態で複数層設けて積層配置することは、従来周知の技術手段(例えば、刊行物2には、「その上側に複数層のゴム付帆布(1)が積層され、・・・ゴム付帆布(1)にはゴム付綿織物を2プライ・・・用いている。」[上記摘記事項(e)参照]と記載されている。)にすぎない。
そして、引用発明のゴム弾性体Rに、刊行物1に記載された補強布5を、上記従来周知の技術手段のように、ゴム弾性体Rを挟んだ状態で複数層設けて積層配置させたものは、補強布5により補強しないものと比較して、初期のばね力が向上することは技術的に自明の事項である。
してみれば、引用発明のゴム弾性体Rに、刊行物1に記載された補強布5を、上記従来周知の技術手段のように、ゴム弾性体Rを挟んだ状態で複数層設けて積層配置させることにより、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。
また、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明、刊行物1に記載された技術的手段、及び従来周知の技術手段が奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、「このような作用によりまして、例えば、中小地震時には抵抗体の破壊までの弾性変位で対応し、大地震時には抵抗体の塑性変形で対応することになり、その破壊荷重を予め決定することが可能になります(図6参照)。これは、この連結体で連結される物と物、例えば橋脚と橋桁の二点間を結ぶ落橋防止用の部材として使用した場合、大地震時に、どこまでが弾性変形で対応でき、次にどこまでが塑性変形によって対応できるかが設計でき、最終的な限界強度はチェーンの引張強度によって決定されます。
これによりまして、本願発明の連結体は、この連結体によって連結される被連結物(例えば、橋脚と橋桁)にかかる衝撃的荷重による破壊に対応する設計が可能となると共に衝撃的荷重に対応する抵抗力も向上させることができる技術であります。」(「3.本願発明が特許されるべき理由」「(c)本願発明と引用文献との対比」の項を参照)と本願発明が奏する作用効果について主張している。
しかしながら、審判請求人が主張する上記「中小地震時には抵抗体の破壊までの弾性変位で対応し、大地震時には抵抗体の塑性変形で対応することになり」、及び「橋脚と橋桁の二点間を結ぶ落橋防止用の部材として使用した場合、大地震時に、どこまでが弾性変形で対応でき、次にどこまでが塑性変形によって対応できるかが設計でき」との本願発明が奏する作用効果については、本願の特許請求の範囲の記載に基づかない主張であるし、上記(相違点について)において述べたように、本願発明は、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、審判請求人が主張する本願発明が奏する作用効果は、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものにすぎず、本願発明の構成を備えることによって、本願発明が、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものとは異なる、相乗的で予想外の作用効果を奏するものとは認められないので、審判請求人の主張は採用することができない。
ちなみに、チェーンを埋設した連結体によって、橋脚と橋桁を連結することは、従来周知の技術手段(例えば、特開平9-151416号公報の図1及び2には、桁4の端部にチェーン3を弾性材2内に埋設した連結材1の端部を固定した構成が記載されている。また、特開平9-242018号公報の図1及び2には、脚1と桁2間にリング6を弾性体7内に埋設した緩衝材5の構成が記載されている。)にすぎない。

また、審判請求人は、審判請求書において、本願発明を「・・、その使用材料および積層数によって所定の破壊荷重で破壊するように設定した・・」と限定する補正案を提示しているが、仮に、上記補正案のように限定したとしても、例えば、上記特開平9-151416号公報の明細書の段落【0009】に記載されているように、抵抗体の使用材料および積層数をどのようにするかは、連結体を使用する条件に応じて適宜決定されるものであり、当業者が適宜なし得る設計変更の範囲内の事項にすぎないことを付記する。

4.むすび
結局、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の請求項2に係る発明について検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-23 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-10-21 
出願番号 特願平11-301637
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 広瀬 功次  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 常盤 務
藤村 聖子
発明の名称 連結体  
代理人 金倉 喬二  

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