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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D |
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管理番号 | 1229131 |
審判番号 | 不服2009-4428 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-03-02 |
確定日 | 2010-12-22 |
事件の表示 | 特願2000-236487「折り畳みコンテナー」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月12日出願公開、特開2002- 46739〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年8月4日の出願であって、平成21年1月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 そして、当審において平成22年7月7日付けで拒絶の理由を通知したところ、同年8月27日付けで明細書を対象とする手続補正がなされたものである。 2.当審の拒絶理由 当審において通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 「1)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2)また、この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開平10-77101号公報」 3.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。 「底部を囲むように配設された4つの側壁が、底部に重なるように折り畳むことができる折り畳みコンテナーにおいて、底部を、帯電防止剤が少なくなっており、且つ、黒色の色素や顔料により、黒色に着色されたリサイクル樹脂材で成形するとともに、全ての側壁を、帯電防止剤が多く含まれているバージン樹脂材で成形したことを特徴とする折り畳みコンテナー。」 4.引用例 4-1.引用例1 当審の拒絶の理由に引用した特開平10-77101号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 (1a)「【0008】 本発明の塵用折り畳み容器は、上部枠体1と、底板2と、上部枠体1及び底板2に対して夫々回動し得るように取り付けられ且つ連結軸3で内側に折り曲がれるように連結された上部側板4と下部側板5とから成る側板6と、上部枠体1に対して回動し得るように取り付けられたあおり板7とを有する塵用折り畳み容器に於いて、底板2が黒色に着色され、且つ上部枠体1、側板6及びあおり板7が収集する分別塵の種類に応じて着色されている。かかる底板2が再製合成樹脂によって成形されており、好ましくは防黴剤が添加されている。」 (1b)「【0009】 また本発明の塵用折り畳み容器は、側板6が再製合成樹脂によって成形されていてもよく、その場合には側板が黒色に着色されている。本発明に係わる塵用折り畳み容器に於いて、上部枠体1、あおり板7、必要に応じて側板6は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂によって形成することができ、ガラス瓶、缶、ペットボトル等の分別塵の種類に応じて無機顔料、有機顔料等によって分別塵の種類を明確に識別できる黄色、青色、緑色、赤色等の如き明彩色に着色されている。」 (1c)「【0010】 本発明に係わる塵用折り畳み容器に於いて、底板2、必要に応じて側板6は、塵用折り畳み容器の如き回収した合成樹脂成形物を粉砕し、ペレット化して得た再製ポリエチレン、再製ポリプロピレン等の再製合成樹脂によって形成することができ、カーボンブラック等によって黒色に着色されている。種々の色の再製合成樹脂が種々の色に着色されていても成形時に黒色に着色されることにより、容易に使用可能となる。尚、塵用折り畳み容器全体を黒色に成形すると、塵を収集する為に塵用折り畳み容器を前日道路端に畳んで放置した際に、夜間歩行者が道路と区別し難く、歩行者の安全性に欠けることになる。」 (1d)「【0013】…(中略)…図1に示す組み立てた状態から、あおり板7を内側に回動させるとともに連結軸3で上部側板4と下部側板5を内側に折り曲げることにより、折り畳むことができる。」 これらの記載事項によると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「上部枠体1と、底板2と、上部枠体1及び底板2に対して夫々回動し得るように取り付けられ且つ連結軸3で内側に折り曲がれるように連結された上部側板4と下部側板5とから成る側板6と、上部枠体1に対して回動し得るように取り付けられたあおり板7とを有し、あおり板7を内側に回動させるとともに連結軸3で上部側板4と下部側板5を内側に折り曲げることにより、折り畳むことができる塵用折り畳み容器において、底板2を、カーボンブラック等によって黒色に着色された、塵用折り畳み容器の如き回収した合成樹脂成形物を粉砕し、ペレット化して得た再製ポリエチレン、再製ポリプロピレン等の再製合成樹脂によって成形するとともに、上部枠体1、あおり板7、側板6を、無機顔料、有機顔料等によって明彩色に着色された、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂によって形成した塵用折り畳み容器。」 4-2.引用例2 本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-214738号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 (2a)「【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、中空成形によるヒンジ付成形品に関する。さらに詳しくは、保冷効果を付加した折りたたみコンテナー、家庭用品および自動車部品などに好適な樹脂ヒンジを有する中空成形品に関する。」 (2b)「【0014】…(中略)…また、該組成物を製造するに当たり、合成樹脂の分野において広く利用されている安定剤、難燃剤、着色剤、滑剤、可塑剤ならびに帯電防止剤のような添加剤を組成物の使用目的に応じて本発明の組成物の特性を本質的に損なわない範囲で添加してもよい。」 4-3.引用例3 本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-268749号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 (3a)「【0012】…(中略)…郵便物搬送用コンテナには、帯電防止能を付与するのが好ましい。コンテナに帯電防止能を付与するには、コンテナ製造用原料樹脂に帯電防止剤を配合するのが好ましい」 (3b)「【0017】 不透明部に帯電防止能を付与する際には、次のいずれかの方法によることができる。…(中略)…不透明部成形用の樹脂材料に帯電防止剤を配合して成形する。」 4-4.引用例4 本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-301222号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 (4a)「【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、使用済み熱可塑性プラスチック製品のリサイクル方法に関する。」 (4b)「【0004】 しかし、製品となって長時間使用された使用済み製品から再生品を製造するリサイクルを行う場合には、回収されたプラスチック素材は熱や光などによるポリマ-自体の劣化が進行し、さらに劣化を防止するために添加されていた各種類の添加剤は消耗し、ブリ-ドアウトしている。このような条件での素材を、加工工程からでた不用品と同じ工程でリサイクルし、ペレット化すると、物性の低い、耐久性の乏しい材料ができてしまう不都合が生じた。 【0005】 物性の低下は、(1)市場におけるポリマ-の酸化劣化、(2)材料を溶融し、再ペレット化する時点における安定剤あるいは添加剤の減少による劣化、(3)溶融、再加工による製品化時における添加剤の減少による劣化、等がある。 上記(1)の物性の低下に関しては、バ-ジン材料との混合によって製品の品質を保持したり、あるいは物性が低下してもかまわない部品へ再生させることにより対処することができる。 また、上記(2)、(3)による物性の低下を最小限におさえる方法として、再生ペレット化する前に添加剤を一定量添加する方法が特開昭58-107314号公報に開示されている。」 5.対比 本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「底板2」、「上部側板4と下部側板5とから成る側板6及びあおり板7」及び「折り畳み容器」は、それぞれ本願発明の「底部」、「4つの側壁」及び「折り畳みコンテナー」に相当する。 引用発明1の「あおり板7を内側に回動させるとともに連結軸3で上部側板4と下部側板5を内側に折り曲げることにより、折り畳むことができる」事項は、あおり板7も上部側板4及び下部側板5も内側に折り畳まれることから、底板2上に重なることが明らかであり、本願発明の「4つの側壁が、底部に重なるように折り畳むことができる」事項に相当する。 引用発明1の「底板2を、カーボンブラック等によって黒色に着色された樹脂によって成形する」事項は、本願発明の「底部を、黒色の色素や顔料により、黒色に着色された樹脂材で成形する」事項に相当する。 引用発明1の「底板2を、塵用折り畳み容器の如き回収した合成樹脂成形物を粉砕し、ペレット化して得た再製ポリエチレン、再製ポリプロピレン等の再製合成樹脂によって成形する」事項は、本願発明の「底部を、リサイクル樹脂材で成形する」事項に相当する。 引用発明1の「あおり板7、側板6を、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂によって形成した」事項は、上記合成樹脂が「無機顔料、有機顔料等によって明彩色に着色」可能であるものであることからも、色の使用が制限される再製合成樹脂ではないことが明らかであり、本願発明の「全ての側壁を、バージン樹脂材で成形した」事項に相当する。 よって、本願発明と引用発明1とは、 「底部を囲むように配設された4つの側壁が、底部に重なるように折り畳むことができる折り畳みコンテナーにおいて、底部を、黒色の色素や顔料により、黒色に着色されたリサイクル樹脂材で成形するとともに、全ての側壁を、バージン樹脂材で成形した折り畳みコンテナー。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点]本願発明は、底部を、帯電防止剤が少なくなったリサイクル樹脂材で成形するとともに、全ての側壁を、帯電防止剤が多く含まれているバージン樹脂材で成形したのに対し、引用発明1は、帯電防止剤を含むことについて特定されていない点。 6.判断 上記相違点について検討する。 コンテナーを、帯電防止剤が含まれている樹脂で成形することは、例えば引用例2及び引用例3に記載されているとおり周知の技術であり、該周知技術を引用発明1に適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 ここで、リサイクル樹脂材は、バージン樹脂材に含有されていた添加剤が減少することは、例えば引用例4に記載されているとおり周知の事項である(該事項については、本願の段落【0007】でも周知の課題として認めるところである。)。 してみれば、引用発明1のコンテナーの成形において、周知の帯電防止剤を含む技術を適用した際、上記周知の「リサイクル樹脂材は、バージン樹脂材に含有されていた添加剤が減少する」事項を考慮すると、当然に、リサイクル樹脂材で成形された底部に含まれる帯電防止剤が、バージン樹脂材で成形された側壁に含まれる帯電防止剤より、相対的に少なくなるものと認められるから、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、本願発明の効果も、引用発明1及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものである。 7.むすび したがって、本願発明は、引用発明1及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本願は、当審で通知した上記拒絶の理由2)によって拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-10-14 |
結審通知日 | 2010-10-19 |
審決日 | 2010-11-01 |
出願番号 | 特願2000-236487(P2000-236487) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高橋 裕一 |
特許庁審判長 |
千馬 隆之 |
特許庁審判官 |
熊倉 強 豊島 ひろみ |
発明の名称 | 折り畳みコンテナー |
代理人 | 平井 保 |