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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66B
管理番号 1229137
審判番号 不服2009-15857  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-28 
確定日 2010-12-22 
事件の表示 特願2002-328098「エレベータ設備での人物のセキュリティ管理および/または運搬のためのシステム及びこのシステムを運用するための方法及びこのシステムによってエレベータ設備を改良する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 9日出願公開、特開2003-192247〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成14年11月12日(パリ条約による優先権主張2001年11月26日、欧州特許庁)の出願であって、平成14年11月12日付けで外国語書面が提出され、平成15年1月7日付けで外国語書面の翻訳文が提出され、平成20年5月12日付けで拒絶理由が通知され、これに対し同年8月19日に意見書が提出され、同年9月17日付けで再度拒絶理由が通知され、これに対し平成21年3月18日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月21日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し同年8月28日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2.本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年3月18日付けで提出された手続補正書により補正された明細書及び平成15年1月7日付けで提出された図面の翻訳文からみて、平成21年3月18日付けで提出された手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの以下のものである。
「エレベータ設備による人物のセキュリティ管理および/または運搬のための方法であって、
エレベータ設備の乗り込み扉の近くに取り付けられた認識装置を介して、人物によって、少なくとも1つの識別コードを、エレベータかごの外部の第1の位置において入力および/または送信する工程と、
少なくとも1つの管理装置に、認識装置を介して識別コードを送信する工程と、
エレベータかごの前または内部に取り付けられた認証装置を介して、人物の少なくとも1つの生物測定認証信号を獲得する工程と、
管理装置に、認証装置を介して生物測定認証信号を送信する工程と、
管理装置を介して、前記管理装置に記憶される少なくとも1つのユーザプロフィールを識別コードに割り当てる工程と、
管理装置を介して、ユーザプロフィールを公開する工程と、
生物測定認証信号が公開されたユーザプロフィールの中に記憶された少なくとも1つの参照に対応するかどうかを、管理装置を介してチェックすることにより、人物を生物測定認証信号から認証する工程とを含む、方法。」

なお、請求項1には、「認証コード」と記載されているが、「認証コード」は発明の詳細な説明において使用されておらず、しかも、発明の詳細な説明の段落【0009】に「人物は、識別コードを入力および/または送信し」、同じく段落【0014】に「人物Pは、例えばキーボードを介して識別コードP1を入力し、および/または、例えば無線式トランスポンダを使用して、識別コードP1を送信する。」、同じく段落【0031】に「人物Pは、識別コードP1を認識装置Eへ入力し、および/または識別コードP1を認識装置Eへ送信する。」とあることから、上記「認証コード」は「識別コード」の誤記と認め、本願発明を上記のように認定した。


第3.原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-297773号公報(以下、「引用文献」という。)
1.引用文献の記載事項
引用文献には、次の事項が図面と共に記載されている。
(ア)「特定の個人を特定できる認識情報により、かご内の個人が既に登録済の誰であるかを識別する個人識別手段と、
前記識別に応じて当該個人に関する情報を所定の場所に表示する表示手段と
を具備することを特徴とするエレベータの表示装置。」(特許請求の範囲の請求項1)
(イ)「第1図は本発明の一実施例のエレベータの表示装置の構成を示すブロック図、第2図はマイクロコンピュータを組込んだ表示装置の構成を示すブロック図である。
図において、(1)はエレベータのかご内の行先釦、(2)は行先釦(1)の表面またはその周辺に配設された指紋検出器、(3)は指紋検出器(2)で検出された指紋が予め登録されているVIPの指紋かどうかを判断する指紋認識装置である。(4)は個人位置認識カード受信機であり、各VIPが携帯する個人位置認識カードから発信される固有の個人信号(例えば、無線電波)を受信することにより所定の認識信号を発信する。(5)は個人認識カード受信機(4)から発信される認識信号により当該個人が誰なのかを識別する個人認識装置、(6)は行先釦(1)の操作によるかご呼びが登録される呼登録装置であり、指紋認識装置(3)からのVIP認識信号か、或いは、個人認識装置(5)からのVIP認識信号のいずれかの信号が入力されることによりかご呼びが登録される。(7)はかご呼登録がされることにより当該行先釦(1)を点灯させる行先釦ランプ、(8)はかご呼登録に応じたエレベータの運転を行なうエレベータ運転装置、(9)は役員室の受付等の所定の位置に設けられた表示装置であり、前記VIPがかご内の行先釦(1)を操作すること等により当該VIPの名前や記号等の各種の情報が表示される。(10)はマイクロコンピュータであり、前記行先釦(1)や指紋認識装置(3)または個人認識装置(5)からの各情報が入力回路(10c)を介して入力され、中央処理装置(CPU),(10a)が各種の演算を行なう。」(公報第2ページ左下欄第3行ないし同ページ右下欄第16行)
(ウ)「この実施例のエレベータの表示装置は上記のように構成されており、指紋検出器(2)及び指紋認識装置(3)を介して入力される指紋情報、または、個人位置認識カード受信機(4)及び個人認識装置(5)を介して入力される個人位置認識情報により、かご内のVIPが既に登録済の誰であるかを識別し、当該個人に関する情報を表示装置(9)に表示する。」(公報第3ページ左上欄第1ないし8行)
(エ)「この発明のエレベータの表示装置の動作について説明をする。第3図はこの発明のエレベータの表示装置の動作例を示すフローチャートである。なお、この動作はマイクロコンピュータ(10)のメモリ(10b)内に格納されているプログラムによる動作である。そして、この動作は、VIPがエレベータのかご内に乗込み役員室階の行先釦(1)を押すことにより開始される。
図において、まず、ステップS1で役員室階の行先釦(1)が押されたか否かが判断される。役員室階の行先釦(1)が押された場合には、ステップS2に進み指紋が検出されたか否かが判断される。この指紋の検出は指紋検出器(2)により行なわれる。指紋が検出された場合には、ステップS3でその指紋が予め登録されているVIPの指紋か否かが判断される。この判断は指紋認識装置(3)による識別によりなされる。当該指紋が登録されているVIPの指紋の1つであると識別された場合には、ステップS4で行先釦(1)の操作による役員室階のかご呼びが登録されるとともに、当該行先釦ランプ(7)が点灯される。そして、ステップS5で上記ステップS3により識別されたVIPの名前や、或いは、その名前に対応した記号等が表示装置(9)である受付の表示灯に表示される。この表示により、この一連の動作は終了する。なお、フローチャートには含めていないが、エレベータ運転装置(8)にも所定の指令が出力され、かごは当該かご呼びに向って所定の運転制御がされる。」(公報第3ぺージ左上欄第20行ないし同ページ左下欄第8行)

2.上記1.及び図面から認定できること
(カ)引用文献には、「エレベータによる人物のセキュリティ管理および/または運搬のための方法」が記載されていることがわかる。
(キ)上記「エレベータによる人物のセキュリティ管理および/または運搬のための方法」は、「エレベータかご内に取り付けられた指紋検出器2を介して、かご内の人物の指紋情報を獲得する工程」及び「指紋認識装置3に、指紋検出器2を介してかご内の人物の指紋情報を送信する工程」を有していることがわかる。
(ク)VIPの指紋情報は指紋認識装置3に予め記憶されていることがわかる。また、「表示装置(9)」には、「指紋検出器(2)及び指紋認識装置(3)を介して入力される指紋情報」により「当該VIPの名前や記号等の各種の情報が表示される」のであるから、VIPの指紋情報を指紋認識装置3に予め記憶させる際に、少なくとも1つのユーザプロフィールとして記憶させていることがわかる。なお、ユーザプロフィールに適宜の識別コードを割り当てることは、情報管理技術において周知慣用である。
(ケ)上記「エレベータによる人物のセキュリティ管理および/または運搬のための方法」は、「指紋情報が登録されているVIPのユーザプロフィールの中に記憶された指紋情報の1つに対応するかどうかを、指紋認識装置3を介してチェックすることにより、VIPを指紋情報から認証する工程」を有していることがわかる。

3.引用発明
上記1.及び2.並びに図面によると、引用文献には、
「エレベータによる人物のセキュリティ管理および/または運搬のための方法であって、
エレベータかご内に取り付けられた指紋検出器2を介して、人物の指紋情報を獲得する工程と、
指紋認識装置3に、指紋検出器2を介してかご内の人物の指紋情報を送信する工程と、
指紋認識装置3を介して、前記指紋認識装置3に記憶されるVIPの少なくとも1つのユーザプロフィールを識別コードに割り当てる工程と、
指紋情報が登録されたユーザプロフィールの中に記憶された指紋情報の1つに対応するかどうかを、指紋認識装置3を介してチェックすることにより、VIPを指紋情報から認証する工程とを含む、方法。」
という発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


第4.対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明における「エレベータ」は、その形状、構造又は機能からみて、本願発明における「エレベータ設備」に相当し、以下、同様に、「エレベータかご内に取り付けられた指紋検出器2」は「エレベータかごの前または内部に取り付けられた認証装置」に、「指紋情報」は「1つの生物測定認証信号」に、「指紋認識装置3」は「管理装置」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「指紋情報が登録されたユーザプロフィールの中に記憶された指紋情報の1つに対応するかどうかを、指紋認識装置3を介してチェックする」は、本願発明における「生物測定認証信号が公開されたユーザプロフィールの中に記憶された少なくとも1つの参照に対応するかどうかを、管理装置を介してチェックする」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明は、
「エレベータ設備による人物のセキュリティ管理および/または運搬のための方法であって、
エレベータかごの内部に取り付けられた認証装置を介して、人物の1つの生物測定認証信号を獲得する工程と、
管理装置に、認証装置を介して生物測定認証信号を送信する工程と、
管理装置を介して、前記管理装置に記憶される少なくとも1つのユーザプロフィールを識別コードに割り当てる工程と、
生物測定認証信号がユーザプロフィールの中に記憶された1つの参照に対応するかどうかを、管理装置を介してチェックすることにより、人物を生物測定認証信号から認証する工程とを含む、方法。」
の点で一致し、次の(相違点)でのみ相違している。
(相違点)
本願発明においては、「エレベータ設備の乗り込み扉の近くに取り付けられた認識装置を介して、人物によって、少なくとも1つの識別コードを、エレベータかごの外部の第1の位置において入力および/または送信する工程」、「少なくとも1つの管理装置に、認識装置を介して識別コードを送信する工程」及び「管理装置を介して、ユーザプロフィールを公開する工程」を含むのに対して、引用発明においては、本願発明における「認識装置」に相当するものをそもそも有しているか否か不明である点(以下、「相違点」という。)。


第5.当審の判断
上記相違点について、以下に検討する。
ドアによる人物のセキュリティ管理において、「ドア近くに取り付けられた認識装置(無線カードリーダやトランスポンダーを含む識別バッジ)を介して、人物によって、識別コード(識別情報や使用者番号)を、外部の第1の位置において入力および/または送信する工程」、「管理装置(制御部やアクセス制御ユニット(ドア制御器))に、認識装置を介して識別コードを送信する工程」、「管理装置を介して、前記管理装置に記憶されるユーザプロフィール(識別情報に対応する指の特徴情報や指紋データベース)を識別コードに割り当てる工程」及び「管理装置を介して、ユーザプロフィールを公開する工程」を含むことは、周知の技術(以下、「周知技術」という。)である(必要であれば、原査定の拒絶の理由において例示した特開平5-163860号公報及び特開平11-280317号公報を参照されたい。)。
そして、引用発明において、上記周知技術を適用することにより、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得る程度のことは、当業者が容易に想到することができたことである。
ところで、本願明細書の段落【0003】及び【0004】並びに【0039】によれば、本件出願の優先日前に、本願発明における「認識装置」に相当するものを出願人は認識していたものと推察される。
なお、本願発明における「認識装置」に相当するものを「エレベータ設備の乗り込み扉の近くに取り付け」ることは、引用発明において上記周知技術を適用することにより当然の帰結であるが、さらに、必要であれば、特開昭55-66468号公報、実公昭61-41738号公報及び特開昭62-27281号公報を参照されたい。
しかも、本願発明を全体としてみても、その作用効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-20 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-08-09 
出願番号 特願2002-328098(P2002-328098)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 多佳子  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 加藤 友也
八板 直人
発明の名称 エレベータ設備での人物のセキュリティ管理および/または運搬のためのシステム及びこのシステムを運用するための方法及びこのシステムによってエレベータ設備を改良する方法  
代理人 川口 義雄  
代理人 大崎 勝真  
代理人 小野 誠  
代理人 坪倉 道明  

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