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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1229154
審判番号 不服2008-2740  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-07 
確定日 2010-12-24 
事件の表示 特願2001-271599「基板処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月20日出願公開,特開2003- 86479〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成13年9月7日の出願であって,平成19年4月20日付けの拒絶理由通知に対して,同年6月25日に手続補正書及び意見書が提出されたが,同年12月21日に拒絶査定がされ,これに対し,平成20年2月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年3月4日付けで手続補正がされ,平成22年5月28日に審尋がされ,同年7月30日に回答書が提出されたものである。

第2 平成20年3月4日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年3月4日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1の補正を含むものであるところ,本件補正前後の請求項1の記載は次のとおりである。

(1)補正前の請求項1
「基板処理装置と,前記基板処理装置を管理するコンピュータと,前記基板処理装置の部品の発注を受け付ける受注サーバとがネットワークに結合された基板処理システムであって,
前記基板処理装置は,当該基板処理装置の部品の消耗度を計測する消耗度計測手段を備え,
前記消耗度計測手段が計測した消耗度を蓄積する消耗度情報蓄積手段と,
前記消耗度情報蓄積手段に蓄積された消耗度を,前記ネットワークを介して前記コンピュータから閲覧可能にする消耗度情報公開手段と,
を備え,
前記コンピュータは,
前記消耗度情報蓄積手段に蓄積された部品の消耗度が所定の値に到達した時点で,前記受注サーバに当該部品と交換すべき新たな部品についての発注信号を送信する発注信号送信手段を備えることを特徴とする基板処理システム。」

(2)補正後の請求項1
「基板処理工場に備えられた基板処理装置と,基板処理装置のメンテナンスを行う担当者が配置されるサポートセンターに備えられて前記基板処理装置を管理するコンピュータと,基板処理装置の部品を前記基板処理工場に供給する部品センターに備えられて前記基板処理装置の部品の発注を受け付ける受注サーバとがネットワークに結合された基板処理システムであって,
前記基板処理装置は,当該基板処理装置の部品の消耗度を計測する消耗度計測手段を備え,
前記消耗度計測手段が計測した消耗度を蓄積する消耗度情報蓄積手段と,
前記消耗度情報蓄積手段に蓄積された消耗度を,前記ネットワークを介して前記コンピュータから閲覧可能にする消耗度情報公開手段と,
を備え,
前記コンピュータは,
前記消耗度情報蓄積手段に蓄積された部品の消耗度が所定の値に到達した時点で,前記受注サーバに当該部品と交換すべき新たな部品についての発注信号を送信する発注信号送信手段を備えることを特徴とする基板処理システム。」

(3)請求項1の補正内容
上記(1)(2)によれば,特許請求の範囲の請求項1の補正内容(以下「本件補正内容」という。)は,次のとおりである。
・本件補正前の「基板処理装置」を「基板処理工場に備えられた基板処理装置」と補正し,本件補正前の「前記基板処理装置を管理するコンピュータ」を「基板処理装置のメンテナンスを行う担当者が配置されるサポートセンターに備えられて前記基板処理装置を管理するコンピュータ」と補正し,本件補正前の「前記基板処理装置の部品の発注を受け付ける受注サーバ」を「基板処理装置の部品を前記基板処理工場に供給する部品センターに備えられて前記基板処理装置の部品の発注を受け付ける受注サーバ」と補正する。

2 補正目的の適否について
本件補正内容は,本件補正前の請求項1における「基板処理装置」,「前記基板処理装置を管理するコンピュータ」,及び「前記基板処理装置の部品の発注を受け付ける受注サーバ」について,それぞれが備えられる場所を更に限定したものであるから,特許請求の範囲を減縮するものであるといえる。
よって,本件補正内容は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下「特許法第17条の2第4項」という。)第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件の検討
以上で検討したとおり,本件補正内容は,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて,以下で更に検討する。

3-1 本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(上記1(2))。

3-2 引用例に記載された事項と引用発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平10-135094号公報(以下「引用例」という。)には,図1?2とともに,次の記載がある(下線は当審で付加。以下同じ。)。

「【0002】
【従来の技術】従来,半導体製造装置においてフィルター等の消耗部品の交換時期,および定期的なクリーニングを必要とする箇所の時期は,オペレーターの記録をもとに,あるいは現品の確認により行なわれている。また,半導体製造には,多数メーカーかつ多種類の装置が使用されているが,消耗部品は装置毎に管理されているため同じ消耗部品が工場全体として多数在庫されており固定費の無駄が発生している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,半導体製造装置に使用される消耗部品は特殊なものが多く,しかも納期に長時間を要するものが多い。そのため,発注タイミングのずれは,直ちに装置の稼動状況を悪化させる。また,半導体製造においては,定期的なクリーニングを怠れば直ちに製品の歩留りに大きく影響を及ぼすため,定期的クリーニングは重要な作業項目である。
【0004】そこで本発明の目的は,上記の従来技術の実情に鑑み,消耗部品の交換時期/定期的クリーニングの時期/消耗部品の発注時期/消耗部品の工場一括管理/自動部品交換/自動クリーニングを,装置が持つ制御用コンピューターまたは,本目的のために付加されたコンピューターを用い装置情報を基にシステマチックな運用を行ない,装置ダウンタイムの低減とメンテナンス時間の低減を図ることが可能な半導体製造装置の自己診断機能を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は,自己診断機能を備える半導体製造装置であって,製造装置本体に備えられたコンピューターへ既知の消耗部品交換サイクル/部品納期の情報を入力する入力部と,製造装置の使用部品における稼動状況を監視し装置稼動情報として記憶する監視手段とを備え,前記コンピューターは前記入力部からの情報と前記装置稼動情報とを自動比較して部品の発注/交換時期・個数を最適時期に知らせることを特徴とするものや,また,自己診断機能を備える半導体製造装置であって,製造装置本体に備えられたコンピューターへ既知のクリーニング箇所・時期の情報を入力する入力部と,製造装置の使用部品における稼動状況を監視し装置稼動情報として記憶する監視手段とを備え,前記コンピューターは前記入力部からの情報と前記装置稼動情報とを自動比較してクリーニング箇所・時期を最適時期に知らせることを特徴とするものである。
【0006】また,上記の何れかの半導体製造装置の各々から収集された消耗部品,及び部品交換時期の情報を基に上位のコンピューターにて部品在庫数/発注時期の総合管理を行ない無駄な消耗部品在庫数を減らし運用資源の節約を計るように構成した半導体製造装置も本発明に含まれる。」
「【0012】すなわち図1に示すように半導体製造装置としてのフォトエッチング処理装置1は,部品ごとの稼動状況をそれぞれ監視し装置稼動情報として随時記憶する監視手段(モニター)2を内蔵する。この装置稼動情報は,基板処理枚数,処理液(例えばエッチング液)の使用量,駆動部の駆動回数,光源(例えばUV光源)の照度,加熱部(例えばベーキング用ヒーター)の通電時間,その他のモニター値(監視値)などである。」
「【0014】また,以上の処理装置1及びその他の処理装置における部品交換時期,クリーニング時期および部品発注時期のデータをオンライン通信で統括して消耗部品の工場内一括管理を行なう工場の管理用コンピューターが備えられている。
【0015】次に,図2のフローチャートに従い,上記の半導体製造装置の自己診断機能の動作を説明する。
【0016】処理装置1の監視手段2は随時,基板処理枚数,処理液(例えばエッチング液)の使用量,駆動部の駆動回数,光源(例えばUV光源)の照度,加熱部(例えばベーキング用ヒーター)の通電時間,その他のモニター値(監視値)を監視している(ステップS1)。このような装置稼動情報は比較処理部5において,入力部4により入力された部品ごとのメーカー推奨値および,実績値より得られた部品ごとの交換時期/クリーニング時期/部品在庫数/納品時期と比較される(ステップS2)。このとき,交換時期/クリーニング時期等が来ていない部品についてはそのまま監視手段2により監視する。一方,交換時期/クリーニング時期等が来た部品については,警告手段6により部品交換/クリ-ニング警告をオペレーターに促したり,自動部品交換手段7又は自動クリーニング手段8により自動部品交換または自動クリーニングを行なう(ステップ3又はステップ4)。また,装置稼動情報と入力部4より入力された部品ごとの部品在庫数/納品時期とによっては警告手段6により部品発注時期の警告をオペレーターに促す(ステップS5)。以上の処理装置1及びその他の処理装置における部品交換時期,クリーニング時期および部品発注時期のデータをオンライン通信で工場の管理用コンピューターに統合し,消耗部品の工場内一括管理へと展開させる(ステップS6)。」

(2)以上を整理すると,引用例には次の事項が記載されている。
ア 引用例には「半導体製造装置」が記載され,その一例として「フォトエッチング処理装置」(「処理装置1」)や「その他の処理装置」が記載されている(段落【0012】,【0014】)。ここで,これらの「処理装置」が基板を処理する装置であり,基板処理工場に備えられるものであることは当業者に明らかなことであるから,引用例には「基板処理工場に備えられた基板処理装置」が記載されているといえる。

イ 引用例の段落【0014】には,「処理装置1及びその他の処理装置における部品交換時期,クリーニング時期および部品発注時期のデータをオンライン通信で統括して消耗部品の工場内一括管理を行なう工場の管理用コンピューター」が記載されている。

ウ 引用例の段落【0016】には「処理装置1の監視手段2は随時,基板処理枚数,処理液(例えばエッチング液)の使用量,駆動部の駆動回数,光源(例えばUV光源)の照度,加熱部(例えばベーキング用ヒーター)の通電時間,その他のモニター値(監視値)を監視している。」と記載されている。

エ 引用例の段落【0006】には「半導体製造装置の各々から収集された消耗部品,及び部品交換時期の情報を基に上位のコンピューターにて部品在庫数/発注時期の総合管理を行な」うことが記載されているから,引用例の「管理用コンピューター」は上記「部品発注時期の総合管理」を行うための手段を備えているものと認められる。

オ 引用例には「処理装置」と「管理用コンピューター」を「オンライン通信で統括」した集合体が記載されており,当該集合体は明らかに基板処理を行うためのものであるから,引用例には「基板処理システム」が記載されているといえる。

(3)上記(2)によれば,引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「基板処理工場に備えられた基板処理装置と,前記基板処理装置における部品交換時期,クリーニング時期および部品発注時期のデータをオンライン通信で統括して消耗部品の工場内一括管理を行なう工場の管理用コンピューターとを備え,
前記基板処理装置は,基板処理枚数,処理液(例えばエッチング液)の使用量,駆動部の駆動回数,光源(例えばUV光源)の照度,加熱部(例えばベーキング用ヒーター)の通電時間,その他のモニター値(監視値)を監視している監視手段を備え
前記管理コンピューターは,半導体製造装置の各々から収集された消耗部品,及び部品交換時期の情報を基に部品発注時期の総合管理を行なう手段を備えることを特徴とする基板処理システム」

3-3 補正発明と引用発明との対比
補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明における「管理用コンピュータ」及び「オンライン通信」は,補正発明における「基板処理装置を管理するコンピュータ」及び「ネットワーク」に,それぞれ相当する。

イ 本願の出願当初の明細書段落【0055】には,「上記実施形態では,消耗度として使用時間を採用するようにしていたが,消耗度として処理枚数を採用するようにしても良い。」と記載されているから,補正発明における「基板処理装置の部品の消耗度を計測する」ことは,例えば基板処理装置の使用時間や処理枚数を計測することを意味するものと理解できる。一方,引用発明における「監視手段」は「基板処理枚数,処理液(例えばエッチング液)の使用量,駆動部の駆動回数,光源(例えばUV光源)の照度,加熱部(例えばベーキング用ヒーター)の通電時間,その他のモニター値(監視値)を監視している」するものであるから,引用発明における「基板処理枚数・・・監視手段」は,補正発明の「当該基板処理装置の部品の消耗度を計測する消耗度計測手段」に相当する。

そうすると,補正発明と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。

<一致点>
「基板処理工場に備えられた基板処理装置と,前記基板処理装置を管理するコンピュータとがネットワークに結合された基板処理システムであって,前記基板処理装置は,当該基板処理装置の部品の消耗度を計測する消耗度計測手段を備えることを特徴とする基板処理システム。」である点。

<相違点1>
補正発明では,「基板処理装置を管理するコンピュータ」が「基板処理装置のメンテナンスを行う担当者が配置されるサポートセンターに備えられて」いるのに対し,引用発明では「管理用コンピューター」が備えられる場所が特定されていない点。

<相違点2>
補正発明では,「前記消耗度計測手段が計測した消耗度を蓄積する消耗度情報蓄積手段」及び「前記消耗度情報蓄積手段に蓄積された消耗度を,前記ネットワークを介して前記コンピュータから閲覧可能にする消耗度情報公開手段」を備えるのに対し,引用発明では,そのような手段を備えることについて教示がない点。

<相違点3>
補正発明では,「基板処理装置の部品を前記基板処理工場に供給する部品センターに備えられて前記基板処理装置の部品の発注を受け付ける受注サーバ」が「ネットワークに結合され」,「前記コンピュータは,前記消耗度情報蓄積手段に蓄積された部品の消耗度が所定の値に到達した時点で,前記受注サーバに当該部品と交換すべき新たな部品についての発注信号を送信する発注信号送信手段を備える」構成であるのに対し,
引用発明は,「管理用コンピューター」が「半導体製造装置の各々から収集された消耗部品,及び部品交換時期の情報を基に部品発注時期の総合管理を行なう手段」を備えてはいるが,その具体的構成として,補正発明における上記のような構成を備えることは教示されていない点。

3-4 相違点についての判断
(1)相違点1について
複数の製造装置を一元的に管理するコンピューターをどこに設置するかは,当業者が適宜選択する事項であり,また,当該コンピューターを工場から離れた場所に設置して当該複数の製造装置を遠隔管理する技術は,以下の周知例1?2に記載されているとおり,生産管理の技術分野における周知の技術である。

・周知例1:特開平11-15520号公報
本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平11-15520号公報(以下「周知例1」という。)には,図1とともに,次の記載がある。
「【0011】<産業用機器の遠隔保守システムの第1の実施の形態>図1は,本発明の好適な実施の形態に係る産業用機器の遠隔保守システムの概要を示す図である。101は,産業用機器を提供するベンダ(装置供給メーカ)の事業所である。この実施の形態は,産業用機器として,半導体製造工場で使用する半導体製造装置,例えば,前工程用機器(露光装置,塗布現像装置,熱処理装置等)や後工程用機器(組み立て装置,検査装置等)を想定している。
【0012】102?104は,産業用機器のユーザとしての半導体製造メーカの生産工場である。生産工場102?104は,互いに異なるメーカに属する工場であっても良いし,同一のメーカに属する工場(例えば,前工程用の工場,後工程用の工場等)であっても良い。」
「【0015】各工場102?104とベンダ101との間の通信および各工場内のLANでの通信には,インターネットで一般的に使用されているパケット通信プロトコル(TCP/IP)が使用される。
【0016】ベンダ101側のホストコンピュータ108は,インターネット105を介して,ユーザの各工場102?104における産業用機器106の稼動状況を時々刻々把握することができる。また,これらの稼動状況や保守の状況などを示す保守情報は,ベンダ101の各部門,例えば,保守部門の他,製造部門,開発部門のコンピュータ110からも参照可能であり,これにより保守情報を製造,開発部門へフィードバックすることができる。」

・周知例2:特開平5-46233号公報
本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平5-46233号公報(以下「周知例2」という。)には,次の記載がある。
「【0005】
【作用】上記のように本発明は放電加工器とかインジェクションの如き自動機械の各々に,上記自動機械の加工性能に関係する特徴的な変数を検出する検出器と,上記検出器で検出した信号を記憶する第1の記憶装置と,上記第1の記憶装置に記憶された信号を設定基準値等と比較演算処理する処理装置と,上記処理装置の演算値を記憶する第2の記憶装置と,上記第2の記憶装置に記憶された演算値を変調等して発信する発信装置とを上記各自動機械に備え,上記各自動機械の発信装置から発信する信号を有線もしくは無線で伝送する情報伝達手段を設け,上記情報伝達手段によって伝送される信号を遠隔地において受信する受信装置を設けて成るものであるから,上記受信装置によって多数の自動機械を1個所で集中的に監視することができ,各自動機械の稼働状態を遠隔地において診断することができる。」

したがって,引用発明において,「管理用コンピューター」を「基板処理装置のメンテナンスを行う担当者が配置されるサポートセンター」に備えるようにすることは,当業者が適宜なし得たことである。

(2)相違点2について
複数の製造装置をネットワークを介して管理コンピューターにより一元的に管理するシステムにおいて,一元的に管理している各装置の稼働情報を蓄積し,その情報を当該管理コンピューターから閲覧可能にする手段を設けることは,上記周知例1や以下の周知例3?4に記載されているように,複数装置を一元管理するシステムにおける周知の技術である。

・上記周知例1には,次の記載がある。
「【0016】ベンダ101側のホストコンピュータ108は,インターネット105を介して,ユーザの各工場102?104における産業用機器106の稼動状況を時々刻々把握することができる。また,これらの稼動状況や保守の状況などを示す保守情報は,ベンダ101の各部門,例えば,保守部門の他,製造部門,開発部門のコンピュータ110からも参照可能であり,これにより保守情報を製造,開発部門へフィードバックすることができる。」

・周知例3:特開平9-19853号公報
本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平9-19853号公報(以下「周知例3」という。)には,図1とともに,次の記載がある。
「【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで,上述した生産ラインの各半導体製造装置では,定期的なメンテナンス作業が必要になる。メンテナンス作業の内容は各装置により異なり,例えばCVD装置や拡散炉ではチューブ洗浄や治具洗浄など,洗浄装置では薬液交換などの作業を定期的に行わなければならない。(以下略)」
「【0034】A.実施例の構成
図1はこの発明の一実施例である生産管理システムの概略構成を示すブロック図である。なお,この図に示す実施例は,半導体プロセス工場に適用した場合のシステム構成を示すものである。図において,1はシステム各部を監視および制御するホストコンピュータである。ホストコンピュータ1の内部には,生産指示管理手段2と,メンテナンス管理手段3,ロット情報管理ファイルLf,イベント情報管理ファイルIf,メンテナンス情報管理ファイルMfが存在する。」
「【0037】6は,メンテナンス情報通知手段である。メンテナンス情報通知手段6は,イーサネットENを介してホストコンピュータ1と接続される。」
「【0041】Mfは各半導体製造装置4のメンテナンス情報管理ファイルである。メンテナンス情報管理ファイルには,各半導体製造装置4についての各種のメンテナンス情報が登録されている。各半導体製造装置4では,装置の種類毎に,またメンテナンス作業の種類毎に,処理可能な累積処理ロット数,累積処理時間などの上限値として,メンテナンス管理値が定められている。メンテナンス情報とは,一つは,この各メンテナンス作業毎のメンテナンス管理値のデータであり,もう一つは,各メンテナンス管理項目の現在の実績値のデータである。」
「【0044】メンテナンス管理手段3は,イベント履歴ファイルIfの内容に基づき半導体製造装置4の処理状況を把握すると共に,この把握した処理状況とメンテナンス情報管理ファイルMfの内容とに応じて後述するメンテナンス指示データDmを発生する。
【0045】メンテナンス指示データDmは,メンテナンス情報通知手段6に供給されるものであり,各半導体製造装置4に対してのメンテナンス実施時期の指示を行うものである。すなわち,各半導体製造装置4でメンテナンスを行わなければならないタイミングになった時点で,メンテナンス実施の指示を通知する。また,メンテナンス実施時期に達していない場合でも,あと何時間,あるいはあと何ロット処理が可能かといった情報を通知する。」
「【0083】また,メンテナンス管理手段3では,前述の「メンテナンス管理ルーチン」とは独立して,あるタイミングで現在のメンテナンス管理項目実績値を,メンテナンス情報通知手段6に通知する機能を備えている。この通知されるメンテナンス管理項目実績値も,メンテナンス指示データDmの一つである。通知するタイミングとしては,前述の生産指示管理手段2が生産指示データDsを生産情報通知手段5に通知した時点,およびメンテナンス情報通知手段6から作業者が問い合わせを行った時点である。メンテナンス情報通知手段6では,通知されたメンテナンス管理項目実績値を画面に表示することにより,作業者に対して残り製造処理可能時間,または残り製造処理可能回数,メンテナンス実施予定時期として知らせることができる。(以下略)」

・周知例4:特開2000-263381号公報
本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2000-263381号公報(以下「周知例4」という。)には,次の記載がある。
「【0015】次に,作用及び効果について説明する。通常,プレス生産中には,管理コンピュータ5はプレスラインの各コントローラからそれぞれの稼働データ,停止情報及び故障診断情報等の保全に関する必要情報を所定時間毎に通信ケーブル10を介して入力し,必要があればこれらの情報を画面に表示する。また,故障等が発生して保全作業を行う際,故障個所が管理コンピュータ5から離れている場合には,保全担当者は携帯用入出力端末器11を故障個所近傍のネットワークのコネクタ12に接続する。そして,携帯用入出力端末器11から所定の操作により(閲覧ソフトによる場合には所定の検索コマンドを入力),保全に必要な情報を自由にかつ任意に管理コンピュータ5の中から検索し,これを読み出して携帯用入出力端末器11に表示させる。(以下略)」

したがって,複数装置の一元管理を行うシステムである引用発明において,一元的に管理している各装置の稼働情報を蓄積し,その情報を管理コンピューターからネットワークを介して閲覧可能にする手段を備えるようにすることは,引用発明における一元管理の具体的態様として上記周知例1,3?4に示された周知技術から当業者が直ちに思いつくことであり,閲覧可能な稼働情報として「消耗度」を選択することは,当業者の設計事項である。すなわち,引用発明において相違点1に係る構成とすることは,上記周知例1,3?4に示された周知技術に照らし当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
部品発注側に発注信号送信手段を備えたコンピューターを,部品供給側に部品の発注を受け付けるコンピューターをそれぞれ設置し,両者をネットワークで結合した部品の発注・受注システムは,以下の周知例5?6にも記載された,生産管理の技術分野における周知のシステムである。

・周知例5:特開平10-261036号公報
本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平10-261036号公報(以下「周知例5」という。)には,図1とともに,次の記載がある。
「【0016】図1において,4は電子部品実装機であり,当該実装機を構成する部品の一覧を表示する部品リスト表示部(41)と,部品リスト表示部(41)において,部品を選択することで発注部品の一覧を作成し発注を行う部品発注部(42)と,部品発注部(42)より要求された発注情報を後記部品供給元ホスト6の通信部(62)へ通信伝達部5を介して発信し,また,通信部(62)からの受注情報を受け付ける通信部(43)とからなる。なお,前出の部品供給元ホスト6は通信部(62)からの受注情報を受け付ける部品受注部(61)を有し,通信部(62)とからなる。」

・周知例6:特開平4-69138号公報
本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平4-69138号公報(以下「周知例6」という。)には,図1とともに,次の記載がある。
「この発明によれば,車両の生産に必要な部品を各搬入元に発注するホストコンピュータと,このホストコンピュータと回線を介して接続され,各搬入元ごとに設置された端末装置とから構成される同期搬入システムにおいて,生産ラインを管理する手段から供給される情報であって,該生産ラインに投入された各車両の属性を表すライン・オン情報を受信する受信手段と,予め記憶手段に登録しておいた車両機種毎の部品情報を参照し,前記ライン・オン情報を部品発注するための搬入指示情報に展開させる部品展開手段と,前記搬入指示情報を前記各搬入元ごとに設置された端末装置へそれぞれ配信する配信手段と,前記端末装置ごとに設けられ,配信された前記搬入指示情報に応じて搬入指示書を作成する端末処理手段と,前記搬入指示情報に従って搬入されてきた部品を検収すると共に,部品の搬入状況をチェックする搬入管理手段とを具備することを特徴とする。」(第2頁右上欄第12行?左下欄第9行)

よって,引用発明において上記周知のシステムを採用し,「管理コンピューター」を「発注信号送信手段」を備えたものとし,「基板処理装置の部品を前記基板処理工場に供給する部品センター」に「基板処理装置の部品の発注を受け付ける受注サーバ」とを備え,上記「管理コンピューター」と「受注サーバ」とが「ネットワークに結合された」システムとすることは,引用発明における「消耗部品の発注時期の総合管理を行う手段」を具体化するに当たり,当業者が容易に思いつくことである。
また,発注信号送信手段の動作として,部品の消耗度情報からオペレータの判断により発注信号を送信するもの(上記周知例5の以下の記載を参照。),及び消耗度が所定の値(寿命時間)に到達した時点で部品供給元に発注信号を送信するもの(下記周知例7を参照。),がともに周知であり,いずれの動作方法を選択するかは当業者の設計事項であるから,引用発明において「発注信号送信手段」を,「前記消耗度情報蓄積手段に蓄積された部品の消耗度が所定の値に到達した時点で,前記受注サーバに当該部品と交換すべき新たな部品についての発注信号を送信する」ものとすることは,当業者が適宜なし得たことである。

・上記周知例5には,次の記載がある。
「【0017】次に図1のオンライン自動発注方法を図2の動作フローチャートにより説明する。電子部品実装機を構成する部品は,その使用期限や使用頻度などにより消耗や疲労するが,その部品を交換する必要性があると人間が判断した場合(ステップ1),オペレータは部品リスト表示部(41)に電子部品実装機を構成する部品リストを表示させ,そのリストの中より交換したい部品を選択し(ステップ2),部品発注部(42)より部品供給元ホスト6へ交換する部品の一覧を発注する(ステップ3)。発注された交換部品の一覧の発注情報は,通信部(43)より,通信伝達部5を介して,部品供給元ホスト6の通信部(62)に伝達され(ステップ4),部品供給元ホスト6の部品受注部(61)で受注される(ステップ5)。部品供給元ホスト6では,受注した部品の発注一覧より必要部品を準備して,部品要求元へ部品の納品を行う(ステップ6)。」
「【0021】部品リスト表示部(41)に表示される全ての部品について,各部品の標準の交換期限を交換期限設定部(44)で設定する(ステップ11)。次に交換期限制御部(45)では,交換期限設定部(44)で設定された交換期限とその部品が電子部品の実装生産において,使用された頻度により実際の交換時期を算出して,部品交換の必要性を顧客に知らせ(ステップ12),交換する部品の一覧を部品リスト表示部(41)に表示する(ステップ13)。部品交換の必要性が発生した場合でも,オペレータが部品の交換をしたくない場合は,交換期限設定部(44)にて交換期限を再設定することで,さらに交換期限制御部(45)にて交換期限を再制御することができる(ステップ14)。部品交換を行う場合は,前記図2の動作(ステップ3?6)と同様に,部品発注部(42)にて交換部品の発注を行うことができる(ステップ15?18)。」

・周知例7:特開平11-250159号公報
本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平11-250159号公報(以下「周知例7」という。)には,次の記載がある。
「【0019】なお,本実施の形態では,駆動用モータ8だけについて述べたが,本発明はこれに限られず,形状測定装置に使われる全ての消耗部品についても,稼働時間をモニターし,総稼働時間と耐久稼働時間との比較を行い,寿命が近い旨の信号を出力するものでも良い。その場合には,各消耗部品の稼働時間を,ソフトウエアにおいて各消耗部品ごとにカウントする。そして消耗部品の稼働時間が,その消耗部品のメーカーが提示する使用可能な寿命時間に近づいたかどうかを調査し,寿命時間を超過した消耗部品があれば,その消耗部品の名称又は種別番号とを含めて保守担当者用端末10に送信する事でも良い。
【0020】また,ただ信号を送信するだけではなく,寿命に近づいている内容の文章を自動作成し,通信手段を通じて保守担当者の使用する保守担当者汎用端末に電子メールにて自動送信する事でも良い。そして,送信先には,保守担当者だけに限られず,その消耗部品のメーカーやその部品の販売代理店にも,自動発信することでも良い。この様に部品の受注先にも通知されることで,部品を迅速に入手することが可能となる。」

したがって,引用発明において相違点3に係る構成とすることは,上記周知例5?7に示された周知技術に照らし,当業者が容易に想到し得たことである。

(4)小括
よって,補正発明は,引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3-5 独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり,本件補正は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

4 補正却下の決定についてのまとめ
以上検討したとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成20年3月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?13に係る発明は,平成19年6月25日付けの手続補正により補正された願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるものであり,その内の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,上記第2,1(1)に本件補正前の請求項1として摘記したとおりのものである。

2 引用発明
引用発明は,上記第2,3-2(3)で認定したとおりのものである。

3 対比・判断
上記第2,2で検討したように,補正発明は,実質的に,本件補正前の請求項1の「基板処理装置」,「前記基板処理装置を管理するコンピュータ」,及び「前記基板処理装置の部品の発注を受け付ける受注サーバ」について,それぞれが備えられる場所を更に限定したものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをより限定したものである補正発明が,上記第2,3において検討したとおり,引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

4 本願発明についての結論
以上検討したとおり,本願発明は,引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 結言
以上のとおりであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-20 
結審通知日 2010-10-26 
審決日 2010-11-08 
出願番号 特願2001-271599(P2001-271599)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大嶋 洋一  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 西脇 博志
小川 将之
発明の名称 基板処理システム  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  

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