• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C03B
管理番号 1229164
審判番号 不服2008-9444  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-16 
確定日 2010-12-24 
事件の表示 特願2002-374375「光ファイバ用プリフォームの加工方法、これに用いる装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年7月22日出願公開、特開2004-203670〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成14年12月25日の出願であって、平成19年6月7日付けで拒絶理由が通知され、同年8月10日付けで意見書および手続補正書が提出され、平成20年3月12日付けで拒絶査定され、その後、同年4月16日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成19年8月10日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである(以下、「本願発明1」という)。
「ガラス旋盤を用いての光ファイバ用プリフォームの加工工程において、ガスの流れる管が複数の領域に分けて配設され、各領域の管に供給されるガスの流量が、加工される光ファイバプリフォームの径に応じて制御装置からの指示に基づき、マスフローコントローラー(MFC)を介して自動制御可能な構造を有するバーナーが用いられることを特徴とする光ファイバ用プリフォームの加工方法。」

3 刊行物に記載された発明
(1)引用例1の記載事項
これに対し、本願出願日前に頒布された特開昭64-28239号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「燃焼ガスを噴出する吹出口内に散在配置され、吹出口噴射方向に沿って延設する支燃性ガス噴出用の多数の分岐管を有する外部混合式の石英ガラス製バーナ・・・。」(特許請求の範囲第1項)
(イ)「特許請求の範囲第1項記載の石英ガラス製バーナにおいて、中心軸線上を通る分岐管とこれに対応する支燃性ガス供給管路とが直接的に連接され、一方前記中心分岐管の周囲を囲繞する如く配設された第1の分岐管群と、その外側に位置する第2の分岐管群とが、夫々膨張部位を介して対応する支燃性ガス供給管路に連接されている石英ガラス製バーナ」(特許請求の範囲第2項)
(ウ)「石英ガラスは光学的、熱的、化学的などの緒特性に優れている事から、各種の用途に用いられているが、近年その利用範囲が光ファイバーや半導体工業等のエレクトロニクス分野に拡大するに連れ、一層高純度と高精度化が要求されて来た。そしてこのような石英ガラスの熱処理や加工を行う治具として従来より、金属性の酸水素バーナを用いて加工を行って来た・・・。この為、近年前記金属バーナーの代わりに石英ガラスのバーナーを用いて加工する方法が提案されてきた」(第2頁左上欄16行?同頁右上欄10行)
(エ)「かかる技術手段によれば、中心側に位置する一又は複数の分岐管と、その外側に位置する分岐管群とを夫々異なる支燃性ガス供給管路に連接させた為に、・・・中心側に多くの支燃性ガスを供給させる事が出来、吹出口を大口径化した場合においても円滑に強い火力を得る事が可能となるとともに、その火力強さが均一化し、広域部分の熱処理や熱加工が可能となる。」(第3頁右下欄1?11行)
(オ)「又・・・必ずしも大口径の火炎のみを用いる事なく、部分的な加熱を行う場合には中口径の火炎が、又前記石英ガラス部材等を切断する場合には狭口径の且つ強力な火炎が必要になり、・・・。本発明はこのような場合にも単一のバーナで全て対処が可能である。即ち本発明は例えば中心軸線上を通る分岐管と、その周囲を囲繞する如く配設された第1の分岐管群と、その外側に位置する第2の分岐管群とを夫々異なる支燃性ガス供給管路で連接させたが故に、中心軸線上を通る分岐管と連接する供給管路の元圧のみを開放制御する事により狭口径の火炎が、
又前記分岐管と第1の分岐管群と連接する供給管路の元圧のみを開放制御する事により中口径の火炎が、
更には全ての供給管路の元圧を開放制御する事により大口径の火炎が得られるとともに、而も該実施例においては前記夫々の供給管路の元圧を精度よく調整する事により、火炎強さを半径方向に自在に可変させる事が可能であり、容易に火力調整と火炎分布制御を行う事が出来る。」(第3頁右下欄12行?第4頁左上欄17行)

(2)引用例1に記載された発明
(i)摘記事項(ア)より、引用例1には、燃焼ガスを噴出する吹出口と、当該吹出口内に散在配置された支燃性ガス噴出用の多数の分岐管からなる石英ガラス製バーナーが記載されているといえ、同(ウ)によれば、この石英ガラス製バーナーは、光ファイバーの熱処理や加工を目的の一つとしたものである。
そして、当該分岐管に関しては、同(イ)によれば、中心軸線上を通る中心分岐管、中心分岐管を囲繞する第1の分岐管群およびその外側に位置する第2の分岐管群からなり、それぞれは、対応する支燃性ガス供給管路に連接されている。また、当該供給管路は、同(オ)によれば、元圧を精度よく調整することにより、火炎強さを半径方向に自在に可変させることができる。
さらに、同(エ)(オ)によれば、引用例1に記載された石英ガラス製バーナーによれば、吹出口を大口径化しても強い火力を得ることができ、中口径や狭口径の火炎とする場合でも、火力や火炎分布を調整することが可能となる。
(ii)以上より、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。
「燃焼ガスを噴出する吹出口と、当該吹出口内に散在配置された支燃性ガス噴出用の多数の分岐管とからなる石英ガラス製バーナーを用い、光ファイバーの熱処理・加工を行うに当たり、当該分岐管は、中心軸線上を通る中心分岐管、これを囲繞する第1の分岐管群およびその外側からなる第2の分岐管群からなり、それぞれの分岐管群は対応する支燃性ガス供給管路に連接されており、この連接管路により供給される支燃性ガスの元圧が精度良く制御されることからなる、光ファイバーの熱処理・加工方法。」

4 対比と判断
(1)対比
引用例1発明における光ファイバーの熱処理・加工には、光ファイバープリフォームの加工が包含され、光ファイバープリフォームの加工をガラス旋盤を用いて行うことは、通常行われる周知の技術である。
また、引用例1発明における石英ガラス製バーナーにおいて、支燃性ガス噴出用の分岐管は、中心軸線上、これを囲繞する領域およびその外側領域に配置されているので、複数の領域に分けて配設されているといえる。そして、それぞれに対応して連接される支燃性ガス供給管路では、供給する支燃性ガスの元圧すなわち供給圧力が精度良く調整されているので、供給ガスの流量を調整しているといえる。
これにより、引用例1発明に係る石英ガラス製バーナーは、大口径、中口径および狭い口径の火炎を、火力や火炎分布を調整しつつ発生させることが可能となった。
そこで、引用例1発明における「分岐管」は、本願発明における「ガスの流れる管」に相当するので、本願発明の一致点と相違点は次の通りとなる。
(i)一致点
「ガラス旋盤を用いての光ファイバ用プリフォームの加工工程において、ガスの流れる管が複数の領域に分けて配設され、各領域の管に供給されるガスの流量が制御可能な構造を有するバーナーが用いられる光ファイバ用プリフォームの加工方法。」
(ii)相違点
(a)本願発明においては「加工される光ファイバプリフォームの径に応じて」ガスの流量を制御するのに対し、引用例1発明ではこの点が具体的に示されていない点。
(b)本願発明では「制御装置からの指示に基づきマスフローコントローラー(MFC)を介して自動制御可能な構造を有する」バーナーを用いるのに対し、引用例1発明では「精度良く制御する」とするのみである点。

(2)判断
(i)相違点(a)について
光ファイバープリフォームの加工においては、延伸加工、火炎研磨加工をはじめとして、火炎を用いて種々の加工を行うことは周知の技術であり、それぞれの加工目的に応じて必要とされる火炎の強さや大きさ等が異なることも、当業者にはよく知られたことである。
したがって、引用例1発明に係るバーナーによれば、石英ガラスの加工において火力調整、火炎分布調整および火炎口径調整ができるのであるから、光ファイバーは石英ガラス製品の代表的用途であるので、石英ガラスの加工に関する引用例1発明を光ファイバープリフォームの加工に適用してみようとすることは、当業者であれば当然に考慮することである。
このため、引用例1発明に係るバーナーを光ファイバープリフォームの加工に適用するに当たり、加工される光ファイバプリフォームの径に応じてガスの流量を調整し、様々な加工をしてみようとすることは、当業者が容易に想到しうるところであり、このことによる効果も、格別なものではない。
(ii)相違点(b)について
光ファイバープリフォームの製造に当たり、バーナーに供給するガスの流量を、制御装置からの指示に基づきマスフローコントローラー(MFC)を介して自動制御することは、周知の技術である。この点について、必要があれば下記の刊行物を参照されたい。
・周知例1:特開2000-247673号公報(例えば【0011】)
・周知例2:特開2001-163630号公報(例えば【0020】および【図2】)
これら周知技術を適用して、相違点(b)に係る手段を採用することは、技術的に格別のものとすることはできない。

(iii)まとめ
したがって、引用例1発明において、相違点(i)および(ii)に関する技術事項を採用して本願発明に係る特定事項に想到することは、当業者であれば容易になしうるところであり、その効果も格別に顕著なものであるとすることはできない。

5 結論
以上のとおりであるので、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-15 
結審通知日 2010-10-18 
審決日 2010-11-08 
出願番号 特願2002-374375(P2002-374375)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柿崎 美陶  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 中澤 登
深草 祐一
発明の名称 光ファイバ用プリフォームの加工方法、これに用いる装置  
代理人 河野 尚孝  
代理人 嶋崎 英一郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ