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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02G
管理番号 1229178
審判番号 不服2008-29911  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-25 
確定日 2010-12-24 
事件の表示 特願2005-507359「電力送電線により発生された磁場を遮蔽するための方法、並びに、そのように遮蔽された電力送電線」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月10日国際公開、WO2005/013450、平成19年 7月12日国内公表、特表2007-519383〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、平成15年7月30日(外国庁受理 イタリア国(IT))を国際出願日とする特許出願(2005年特許願第507359号。以下「本件出願」という。)につき、平成20年8月27日付けで拒絶査定(発送日:同月29日)がなされたところ、これに対し、同年11月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成20年11月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成20年11月25日付けの手続補正を却下する。

2 補正却下の決定の理由
(1)平成20年11月25日付けの手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)の内容
本件補正は、本件出願明細書の特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり補正することを含むものである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成20年7月14日付け手続補正書)

「【請求項1】
少なくとも1つの電気ケーブル(2)と、
前記ケーブル(2)により発生された磁場を遮蔽するため該少なくとも1つのケーブル(2)に対して径方向外側の位置に配置された少なくとも1つの強磁性材料から作られ、且つ、ベース(10)及びカバー(11)を備える少なくとも1つの遮蔽要素(6)と、
前記遮蔽要素(6)の少なくとも1つの前記ベース(10)に連結された少なくとも1つの支持要素(7)とを備える、電力送電線(1)において、
前記ベース(10)及び前記カバー(11)は、横方向に所定の長さに亘って重ね合わされた各々の側部を備えることを特徴とする電力送電線(1)。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(下線は補正された箇所を示す。)

「【請求項1】
少なくとも1つの電気ケーブル(2)と、
前記ケーブル(2)により発生された磁場を遮蔽するため該少なくとも1つのケーブル(2)に対して径方向外側の位置に配置された少なくとも1つの強磁性材料から作られ、且つ、ベース(10)及びカバー(11)を備える少なくとも1つの遮蔽要素(6)と、
前記遮蔽要素(6)の少なくとも1つの前記ベース(10)に連結された少なくとも1つの支持要素(7)とを備える、電力送電線(1)において、
前記ベース(10)は、底壁(10a)と、一対の側壁(10b、10c)と、前記側壁(10b、10c)の端部から外側に延在する一対のフランジ(10d、10e)とを備え、
前記ベースの一対のフランジ(10d、10e)は、前記カバー(11)の側部と横方向に所定の長さに亘って重ね合わされることを特徴とする電力送電線(1)。」

なお、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の「前記ベースの一つのフランジ(10d、10e)」は、平成21年2月27日付けの審判請求書の請求の理由を補正した手続補正書の「3.補正の概要」の項に記載されているように、「前記ベースの一対のフランジ(10d、10e)」の誤記であるものとして、上記のように本件補正後の特許請求の範囲の請求項1を認定した。(下線は、当審で付与したものである。)

(2) 本件補正の適否について
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明について、「ベース(10)」の構成要件として、「ベース(10)は、底壁(10a)と、一対の側壁(10b、10c)と、前記側壁(10b、10c)の端部から外側に延在する一対のフランジ(10d、10e)とを備え」るという構成を付加することにより、「ベース(10)」の構成要件をさらに減縮するものであり、さらに、「前記ベース(10)及び前記カバー(11)は、横方向に所定の長さに亘って重ね合わされた各々の側部を備える」という構成要件を、「前記ベースの一対のフランジ(10d、10e)は、前記カバー(11)の側部と横方向に所定の長さに亘って重ね合わされる」と補正することにより、ベース(10)とカバー(11)の、横方向に所定の長さに亘って重ね合わされた各々の側部が、「前記ベースの一対のフランジ(10d、10e)」と、「前記カバー(11)の側部」であることを減縮して特定するものである。
そうすると、本件補正は減縮する補正を含む補正であり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前(以下、単に「平成18年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3) 独立特許要件について
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(ア)引用刊行物記載の発明
(A)原査定の拒絶の理由に引用され,本件出願の国際出願日前に頒布された特開2002-261487号公報(以下、「引用刊行物A」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。(下線は当審で付与したものである。以下、同様である。)

(A-1)「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、通電しているケーブル等から放射される電磁波を遮断して、電子機器類に影響を与えることを防止する電磁波漏洩防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、通電しているケーブルは、周囲に電磁波を放射するものであるが、その電磁波の放射強度は通電している電流値によって異なるものであり、通電中の電流値が大きくなるほど電磁波の放射強度が大となるものである。特に、この通電中のケーブルが電源ケーブルで、大電流(例えば、200A)が流されている場合は、その周辺にかなり強い電磁波が放射されることになる。」

(A-2)「【0007】
【実施例】本発明の実施例を、図を参照して説明する。
図1に参照して、本発明の電磁波漏洩防止装置を説明すると、電磁波漏洩防止装置Aは、上方及び両端が開放した断面が略凹字形に形成された樋状の函体外装3と、函体外装3内に嵌装され、珪素鋼板等の電磁鋼板で形成された1枚または2枚以上の上方開放の略凹字形断面のシールド函体4と、函体外装3とシールド函体4とを結合させる結合ボルト5を備えた電磁遮蔽函体部Bを有している。
【0008】函体外装3の外装側壁3aの上端を開口内方に折曲して外装側端縁3bを形成し、上記側壁3b内側に接するシールド函体4の函体側壁4aの上端を開口内方に折曲して函体側端縁4bを形成する。
【0009】電磁遮蔽函体部Bの上方開口に嵌合してこれを覆い、角筒状の電磁波漏洩防止装置を形成する電磁遮蔽蓋体部Cは、対向する2辺を折曲して縁部6aを有する蓋体外装6と、蓋体外装6の内側に珪素鋼板等の電磁鋼板で形成された1枚または2枚以上のシールド蓋体7とを備えている。
【0010】図2に示すように、電磁遮蔽函体部Bの上方開口に電磁遮蔽蓋体部Cを嵌合させて、所定長さの矩形断面の角筒状電磁波漏洩防止装置Aを形成して、電源ケーブル1の外周を覆い、電磁波の漏洩を防止する。図3において、単数または複数の電源ケーブル1は、吊りボルト2により支持された支持板8の上に載せて配設されており、上記図2に示す電磁波漏洩防止装置Aで覆って電磁波の漏洩を防止する。
【0011】電磁波漏洩防止装置Aは予め設定された長さで形成されており、複数の電磁波漏洩防止装置Aを連結して任意の長さに形成してケーブルを覆うものであるが、図4に示すように、電磁波漏洩防止装置Aの連結部において、函体外装3の一端に段を設けて挿入部3cを形成したもので、他端に隣合った他の函体外装3の挿入部3cを挿入嵌合させるものである。函体外装3の両外装側端縁3b,3bの間の距離を、吊りボルト2,2の間の距離よりも大きくすることにより、電磁波の漏洩箇所を少なくできる。」

(A-3)「【0016】なお、接合蓋体10と接合函体11は、それぞれ内面側に電磁鋼板が設けられてシールド機能を高くしている。ここで、上記実施例においては、函体外装3と、蓋体外装6と、接合蓋体10及び接合函体11は、その材質を特定しておらず、通常の鋼板で形成しても良いものであるが、電磁鋼板で形成することにより、一層のシールド効果が得られるものである。」

(A-4)図1には、函体外装3の外装側壁3aの上端を開口内方に折曲した両側の外装側端縁3bと、蓋体外装6の両側に設けられた縁部6a側のシールド蓋体7の端縁とが重ね合わせられていることが描かれている。

上記摘記事項(A-1)?(A-4)の記載を参照すると、上記引用刊行物Aには、
「単数または複数の電源ケーブル1と、
電磁波漏洩防止装置Aとからなり、
前記電磁波漏洩防止装置Aは、上方及び両端が開放した断面が略凹字形に形成され、外装側壁3aの上端を開口内方に折曲して外装側端縁3bが形成され、電磁鋼板で形成された樋状の函体外装3と、函体外装3内に嵌装され、珪素鋼板等の電磁鋼板で形成された1枚または2枚以上の上方開放の略凹字形断面のシールド函体4と、函体外装3とシールド函体4とを結合させる結合ボルト5を備えた電磁遮蔽函体部Bと、
電磁遮蔽函体部Bの上方開口に嵌合してこれを覆い、筒状の電磁波漏洩防止装置を形成するために、対向する2辺を折曲して縁部6aを有し、電磁鋼板で形成された蓋体外装6と、蓋体外装6の内側に珪素鋼板等の電磁鋼板で形成された1枚または2枚以上のシールド蓋体7とを備えた電磁遮蔽蓋体部Cとを有するとともに、
複数の電磁波漏洩防止装置Aを連結して任意の長さに形成され、
函体外装3の外装側壁3aの上端を開口内方に折曲した両側の外装側端縁3bと蓋体外装6の両側に設けられた縁部6a側のシールド蓋体7の端縁とが重ね合わせられているケーブル。」
の発明「以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
(B)原査定の拒絶の理由に引用され,本件出願の国際出願日前に頒布された特開平8-331729号公報(以下、「引用刊行物B」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

(B-1)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、配電盤内の配線や、あるいは配電盤と配電盤とをつなぐために床面に形成した溝から成るケーブルピット内の電線に侵入するノイズを防ぐ収納ダクトに関するものである。

(B-2)「【0011】
【実施例】
実施例1.以下、この発明の実施例1を図に基づいて説明する。図1において1は断面がコの字状となっている配線を収納する長手状の樹脂製ダクト本体、2はダクト本体の開口部2bに蓋をする平板状のダクトカバーである。3はダクト本体に内張りされた導電製のある金属板から成る静電遮へい板、4は上記ダクトカバー2に内張りされた導電製のある金属板から成る静電遮へい板、5は上記静電遮へい板3と電気接続され、ダクト本体1の外面1bに取り付けられた端子である。なお、静電遮へい板3と静電遮へい板4とはダクトカバー2にてダクト本体1に蓋をした状態では電気的に接続されるように接触している。
【0012】よってダクト本体1にダクトカバー2を取り付ける具体的構造は図2に示すとおりであり、この図から明らかなようにダクト本体1の開口端は、内側に変形されて凹部1aが設けられ、ダクトカバー2の外縁板2mに突起2aがプレス変形して設けられ、凹部1aに突起2aが噛み合うことにより、ダクト本体1にダクトカバー2が取り付けられる。このため、上記噛み合いによりダクトカバー2はダクト本体1から容易にはずれることがない。」

(B-3)図2には、ダクト本体1に内張りされた静電遮閉板3の横壁の上端が開口内方に折曲した両側の端縁と、ダクトカバー2に内張りされた静電遮蔽板4の両端とを重ね合わせることが描かれている。

(イ-1)本願補正発明と引用発明とを対比する。
(i)引用発明の「単数または複数の電源ケーブル1」が、その機能・構成からみて、本願補正発明の「少なくとも1つの電気ケーブル(2)」に相当する。

(ii)例えば特開平8-307086号公報の2頁2欄9?11行、又は特開平8-264350号公報の5?9行に記載されているように、珪素鋼板及び電磁鋼板は強磁性材料であるから、引用発明の「電磁鋼板で形成された樋状の函体外装3」、「珪素鋼板等の電磁鋼板で形成されたシールド函体4」、「珪素鋼板等の電磁鋼板で形成されたシールド蓋体7」が強磁性材料であることは明らかである。
そうすると、引用発明の「珪素鋼板等の電磁鋼板で形成された1枚または2枚以上の上方開放の略凹字形断面のシールド函体4」が、本願補正発明の「前記ケーブル(2)により発生された磁場を遮蔽するため該少なくとも1つのケーブル(2)に対して径方向外側の位置に配置された少なくとも1つの強磁性材料から作られ」た「ベース(10)」に相当し、引用発明の「蓋体外装6の内側に珪素鋼板等の電磁鋼板で形成された1枚または2枚以上のシールド蓋体7」が、本願補正発明の「前記ケーブル(2)により発生された磁場を遮蔽するため該少なくとも1つのケーブル(2)に対して径方向外側の位置に配置された少なくとも1つの強磁性材料から作られ」た「カバー(11)」に相当する。
そして、引用発明の「シールド函体4」と「シールド蓋体7」とを有する電磁波漏洩防止装置Aは、連結されて任意の長さに形成されることから、引用発明の「シールド函体4及びシールド蓋体7」は、本願補正発明の「前記ケーブル(2)により発生された磁場を遮蔽するため該少なくとも1つのケーブル(2)に対して径方向外側の位置に配置された少なくとも1つの強磁性材料から作られ、且つ、ベース(10)及びカバー(11)を備える少なくとも1つの遮蔽要素(6)」に相当する。

(iii)引用発明のシールド函体4は、函体外装3内に嵌装されるとともに結合ボルト5で函体外装3に結合され、さらに、函体外装3を有する電磁波漏洩防止装置Aは、連結されて任意の長さに形成されることから、引用発明の「函体外装3及び結合ボルト5」が、本願補正発明の「前記遮蔽要素(6)の少なくとも1つの前記ベース(10)に連結された少なくとも1つの支持要素(7)」に相当する。

(iv)引用発明の「ケーブル」は電源ケーブルであることから、引用発明の「ケーブル」と本願補正発明の「電力送電線(1)」とは「電線」である点で共通する。

(v)上記(ii)で検討したように、引用発明の函体外装3は、電磁鋼板で形成されていることから、電源ケーブル1により発生された磁場を遮蔽するために電源ケーブルの径方向外側の位置に配置された強磁性材料から作られるものであり、さらに、この函体外装3は、上方及び両端が開放した断面が略凹字形に形成され、外装側壁3aの上端を開口内方に折曲して外装側端縁3bが形成されており、この外装側端縁3bが、例えば、特開平5-126464号公報の2頁2欄37?40行に記載されているように、フランジであることは明らかであるから、引用発明の函体外装3は、底壁と、一対の側壁と、側壁の端部から延在する一対のフランジとを備えるものである。
そして、引用発明のケーブルでは、函体外装3の外装側壁3aの上端を開口内方に折曲した両側の外装側端縁3bとシールド蓋体7の端縁とが重ね合わせられていることから、函体外装3のフランジに相当する一対の外装側端縁3bは、シールド蓋体7の側部と横方向に所定の長さに亘って重ね合わされていることになる。
よって、引用発明の「函体外装3」と本願補正発明の「ベース(10)」とは、「フランジを有し、カバーとともに磁場を遮蔽する遮蔽部品」である点で共通し、さらに、「フランジを有し、カバーとともに磁場を遮蔽する遮蔽部品は、底壁と、一対の側壁と、前記側壁の端部から延在する一対のフランジとを備え、前記カバーとともに磁場を遮蔽する遮蔽部品の一対のフランジは、前記カバーの側部と横方向に所定の長さに亘って重ね合わされる」点で共通する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「少なくとも1つの電気ケーブル(2)と、
前記ケーブル(2)により発生された磁場を遮蔽するため該少なくとも1つのケーブル(2)に対して径方向外側の位置に配置された少なくとも1つの強磁性材料から作られ、且つ、ベース(10)及びカバー(11)を備える少なくとも1つの遮蔽要素(6)と、
前記遮蔽要素(6)の少なくとも1つの前記ベース(10)に連結された少なくとも1つの支持要素(7)とを備える、電線(1)において、
フランジを有し、カバーとともに磁場を遮蔽する遮蔽部品は、底壁と、一対の側壁と、前記側壁の端部から延在する一対のフランジとを備え、前記カバーとともに磁場を遮蔽する遮蔽部品の一対のフランジは、前記カバーの側部と横方向に所定の長さに亘って重ね合わされる電線。」である点で一致し、次の相違点(あ)及び相違点(い)において相違する。

・相違点(あ)
遮蔽要素を備える電線が、本願補正発明では、「電力送電線」であるのに対して、引用発明では「電源ケーブル」である点。

・相違点(い)
本願補正発明では、フランジを有し、カバーとともに磁場を遮蔽する遮蔽部品が「ベース(10)」であり、一対のフランジが「側壁(10b、10c)の端部から外側に延在する一対のフランジ」であるのに対して、引用発明では、フランジを有し、カバーとともに磁場を遮蔽する遮蔽部品が「函体外装3」であり、一対のフランジが「函体外装3の外装側壁3aの上端を開口内方に折曲した両側の外装側端縁3b」である点。

(イ-2)当審の判断
そこで、上記相違点(あ)及び相違点(い)について判断する。
・相違点(あ)について
上記引用刊行物Aの摘記事項(A-1)の段落【0002】に「一般に、通電しているケーブルは、周囲に電磁波を放射するものであるが、その電磁波の放射強度は通電している電流値によって異なるものであり、通電中の電流値が大きくなるほど電磁波の放射強度が大となるものである。特に、この通電中のケーブルが電源ケーブルで、大電流(例えば、200A)が流されている場合は、その周辺にかなり強い電磁波が放射されることになる。」ことが記載されているように、電線に大きな電流が流れると周囲に強い電磁場が放出されることはよく知られた事項である。そして、電線として電力を送電する送電線には大電流が流れ、周囲のものが送電線から発生する磁場の影響を受けることは、例えば、特開平8-191454号公報(2頁1欄13?20行の記載参照)、又は特開2000-120351号公報(2頁1欄42?49行の記載参照)に記載されているごとく周知であることから、大電流が流れる電線として引用発明の電源ケーブルの代わりに、周知の電力を送電し、大電流が流れる送電線、すなわち、本願発明のごとく「電力送電線」を用いた際にも、引用発明と同様に「電力送電線」に電磁波漏洩防止装置としての遮蔽要素を設けることは当業者が容易になし得るものである。

・相違点(い)について
上記(イ-1)の(v)で検討したように、引用発明のケーブルでは、函体外装3のフランジに相当する一対の外装側端縁3bと、シールド蓋体7の側部とが、横方向に所定の長さに亘って重ね合わされているが、ケーブルを遮蔽する際に、ケーブルが配置される函体外装の内側に、側壁の端部から横方向に延在する一対の端縁を形成した遮蔽部材を形成し、この遮蔽部材の一対の端縁と、蓋体外装の内側に形成された遮蔽部材の両端とを横方向に重ね合わせることは、上記引用刊行物Bの摘記事項(B-1)?(B-3)に記載されているように周知(他に、例えば、実願昭59-140283号(実開昭61-55395号)のマイクロフィルムの明細書1頁20行?2頁2行、3頁8?14行、第2図参照)であり、さらに、引用発明も上記周知例もともにケーブルをシールド部材を用いてシールドする点で共通することから、引用発明のケーブルにおいて、函体外装3の一対の外装側端縁3bと、シールド蓋体7の側部とを、横方向に所定の長さに亘って重ね合わせる代わりに、函体外装の3の内に嵌装されたシールド函体4の側壁の端部から横方向に延在する一対の端縁を形成し、このシールド函体4の側壁の端部に形成した一対の端部とシールド蓋体の7の側部とを横方向に所定の長さに亘って重ね合わせるようにすること、すなわち、本願補正発明のごとく、フランジを有し、カバーとともに磁場を遮蔽する遮蔽部品を「ベース(10)」で構成することは当業者が容易になし得るものである。
そして、一方のシールド部材の側壁の端部から横方向に延在する一対の端縁を他方のシールド部材の両端を重ね合わせる際に、シールド部材の側壁の端部から横方向に延在する一対の端縁を、内側に延在することも、外側に延在することもともに周知(例えば、前者について、上記引用刊行物Aの図2、上記引用刊行物Bの図2、後者について、前記周知例として提示した実願昭59-140283号(実開昭61-55395号)のマイクロフィルムの第2図、実願昭58-170544号(実開昭60-79210号)のマイクロフィルムの第3図のダクト本体30とカバー31、参照)であり、一方のシールド部材の側壁の端部から横方向に延在する一対の端縁を他方のシールド部材の両端を重ね合わせる際に、シールド部材の側壁の端部から横方向に延在する一対の端縁を、内側に延在するか、外側に延在するかは当業者が必要に応じて適宜採用する選択事項にすぎないことから、本願補正発明のごとく、一対のフランジが「側壁(10b、10c)の端部から外側に延在する一対のフランジ」となるよう構成することは、当業者が必要に応じてなし得る設計的事項にすぎないものである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知の技術事項から予測される範囲内のものであって、格別のものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4) 補正却下の決定についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下しなければならないものである。

第3 本願発明について
1.本願発明 平成20年11月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1?39に係る発明は、同年7月14日付け手続き補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?39に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 2 (1)」の「ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1」に記載したように、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも1つの電気ケーブル(2)と、
前記ケーブル(2)により発生された磁場を遮蔽するため該少なくとも1つのケーブル(2)に対して径方向外側の位置に配置された少なくとも1つの強磁性材料から作られ、且つ、ベース(10)及びカバー(11)を備える少なくとも1つの遮蔽要素(6)と、
前記遮蔽要素(6)の少なくとも1つの前記ベース(10)に連結された少なくとも1つの支持要素(7)とを備える、電力送電線(1)において、
前記ベース(10)及び前記カバー(11)は、横方向に所定の長さに亘って重ね合わされた各々の側部を備えることを特徴とする電力送電線(1)。」

2.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物の記載事項は上記「第2 2 (3)」の(ア)に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比・判断
上記「第2 2 (3)」の(イ)で検討した本願補正発明は、上記本願発明の「ベース(10)」の構成要件として、「ベース(10)は、底壁(10a)と、一対の側壁(10b、10c)と、前記側壁(10b、10c)の端部から外側に延在する一対のフランジ(10d、10e)とを備え」るという構成を付加することにより、「ベース(10)」の構成要件をさらに減縮するものであり、さらに、「前記ベース(10)及び前記カバー(11)は、横方向に所定の長さに亘って重ね合わされた各々の側部を備える」という構成要件を、「前記ベースの一対のフランジ(10d、10e)は、前記カバー(11)の側部と横方向に所定の長さに亘って重ね合わされる」と補正することにより、ベース(10)とカバー(11)の、横方向に所定の長さに亘って重ね合わされた各々の側部が、「前記ベースの一対のフランジ(10d、10e)」と、「前記カバー(11)の側部」であることを減縮して特定するものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2 (3)」の(イ)において検討したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審査官が通知した平成20年1月11日付けの拒絶理由通知書には、〈理由1〉の項に「従って、本願の請求項1に記載された発明は、引用文献1に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができない。」と記載されているが、〈理由2〉の項には、「本願の請求項1に記載された発明は、引用文献1に記載された発明により当業者が容易に想起し得たものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許を受けることができない。」とも記載されており、さらに、同年8月27日付けの拒絶査定には、「1.特許法第29条第1項第3号および特許法第29条第2項について」の項に、「従って、補正後の請求項1に記載された発明は、引用文献1に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項3号の規定により、特許を受けることができない。」と記載されているが、同項には「従って、補正後の請求項1、2に記載された発明は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。」とも記載されていることから、審査官の拒絶査定の理由には、本願発明(特許請求の範囲の請求項1に係る発明)は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないという理由のみならず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという理由を含むことは明らかである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件出願は、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-30 
結審通知日 2010-08-02 
審決日 2010-08-16 
出願番号 特願2005-507359(P2005-507359)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02G)
P 1 8・ 575- Z (H02G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神田 太郎  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 竹中 靖典
秋月 美紀子
発明の名称 電力送電線により発生された磁場を遮蔽するための方法、並びに、そのように遮蔽された電力送電線  
代理人 小林 泰  
代理人 戸塚 清貴  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  
代理人 社本 一夫  

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