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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1229187
審判番号 不服2009-12682  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-13 
確定日 2010-12-24 
事件の表示 平成11年特許願第 92814号「物品処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月17日出願公開、特開2000-289852〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本件出願は、平成11年3月31日の出願であって、平成20年10月16日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し同年12月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年4月14日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し同年7月13日に拒絶査定不服審判が請求されたものであって、その請求項1ないし5に係る発明は、平成20年12月12日付けで提出された手続補正書によって補正された明細書及び願書に最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項2に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項2】 物品をランダムに搬送する第1搬送手段と、この第1搬送手段の下流に設けられて、物品を揃えて搬送する第2搬送手段と、上記第1搬送手段によって搬送される物品の位置を検出する位置検出手段と、上記物品を保持するロボットと、上記位置検出手段から入力される検出値に応じて上記ロボットを制御して物品を保持させるとともに、その保持した物品を第2搬送手段に移し替える制御装置とを備えた物品処理システムにおいて、
上記第2搬送手段の搬送速度を変更可能とし、上記制御装置に上記搬送速度を変更する速度設定部を設け、
上記速度設定部は、上記ロボットの第1搬送手段における物品の保持領域を搬送方向に沿って上流区間と下流区間とに区分するとともに、上記保持領域内に位置する次に保持すべき物品が上流区間に位置しているときには、第2搬送手段の搬送速度を低速に制御する一方、上記保持領域内に位置する次に保持すべき物品が下流区間に位置しているときには、第2搬送手段の搬送速度を高速に制御することを特徴とする物品処理システム。」

2.原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-48027号公報(以下、単に「引用文献」という。)
(1)引用文献の記載事項
引用文献には、次の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「【請求項1】 上流側の搬送装置の搬出側部位と、下流側の搬送装置の搬入側部位とが近接配置されてなる搬送経路に設けられ、前記上流側の搬送装置上を搬送される物品を、前記下流側の搬送装置上に移し替える物品移載装置において、
前記両搬送装置のオーバーラップ部位の上方の前記搬送装置の搬送面と平行な二次平面上で移動可能に配置された、前記物品を一時的に保持可能な保持手段と、
前記保持手段を前記搬送装置の搬送方向にそって直線的に前後進移動させる第1の移動手段と、
前記保持手段を前記搬送装置の搬送方向と直交する方向に直線的に前後進移動させる第2の移動手段とを備え、
かつ、前記第1,第2の移動手段の駆動タイミング及びその両移動手段による前記保持手段の停止位置を任意の位置としてなる物品移載装置。
…(中略)…
【請求項4】 前記上流側の搬送装置上を流れる物品を検出する検出手段を備え、
前記検出手段から送られる物品の搬送量情報と、前記下流側の搬送装置上への所定回数前の移載位置に基づいて、前記上流側の搬送装置を流れる物品の保持位置と、前記下流側の搬送装置への前記保持した物品の供給位置を求め、係る求めた各位置に前記保持手段を移動すべく前記両移動手段を制御する制御手段を備えた請求項1?3のいずれか1項に記載の物品移載装置。
【請求項5】 前記上流側の搬送装置上を流れる物品を検出する検出手段を備え、
前記検出手段から送られる物品の搬送量情報と、前記下流側の搬送装置上への所定回数前の移載位置に基づいて、前記下流側の搬送装置の搬送速度を増減速制御する手段を備えた請求項1?4のいずれか1項に記載の物品移載装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項5】)
(イ)「【0005】さらには、コンピュータ制御によりアーム,マニピュレータの移動経路並びに停止位置等が予め正確に決められているため、以下に示す問題を有する。すなわち、特に製造装置から搬出される物品は、単位時間当たりに流れる(搬送される)量が一定ではないため、上記アーム,マニピュレータの動作を平均値を基準にセットすると、平均よりも大量に物品が流れてきた場合には対応できずに保持できない物品が発生し、その保持できなかった物品を排出してしまうことになる。また、平均よりも小量しか物品が流れない場合には、例えばその保持位置で待機することになり、生産効率がさらに低下してしまう。
【0006】本発明は、上記した背景に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、汎用性が高く、単位時間当たりの処理数が高く高速駆動可能で、しかも、単位時間当たりに流れる物品の量にばらつきがある場合であっても、効率よく移載処理を行うことのできる物品移載装置を提供することにある。」(段落【0005】及び【0006】)
(ウ)「【0009】
【実施例】以下、本発明に係る物品移載装置の好適な実施例について、添付図面を参照にして詳述する。図1?図3に示すように、本実施例の物品移載装置1は、物品2の製造装置(図示省略)の搬出側に設けられた搬出コンベア(上流側の搬送装置)3と、係る物品2を包装するための包装装置4の搬入側の供給搬送コンベア(下流側の搬送装置)5との間に配置されている。そして本例では、係る搬出コンベア3と供給搬送コンベア5は、所定間隔(間隔零も含む)をおいて平行に配置され、しかもその先端部位を所定距離だけオーバーラップさせた状態で配置している。さらに、搬出コンベア3上には、図外の製造装置で製造された物品2がランダムに搬送され、しかも、単位時間あたりの搬送個数が増減してしまうことがある。
【0010】ここで本発明に係る物品移載装置1は、図1,図3に示すように、上記オーバーラップされた両コンベア3,5の上方に、その両コンベア3,5の搬送面と平行な二次平面上で移動可能なマニピュレータ11を備えている。このマニピュレータ11は、物品2を保持可能でかつ回転可能になっており、物品2を保持した状態で回転(自転)することにより物品2の姿勢(方向)を回転させて所望の向きに整列することができるようになっている。
【0011】また、係るマニピュレータ11を二次平面上で移動させる手段としては、本例では、両コンベア3,5の配置方向と平行で、その一方の外側に配置された第1の移動手段たるXレール装置12と、そのXレール装置12と直交方向に伸びるようにしてそのXレール装置12の軸方向に移動自在に配設された第2の移動手段たるYレール装置13とから大略構成され、そのYレール装置13に上記マニピュレータ11がその軸方向に移動可能に装着される。…(後略)… 」(段落【0009】ないし【0011】)
(エ)「【0020】そして、係る両駆動モータ22,33は、図11に示すように制御装置50からの制御信号に基づいて駆動されるようになっており、係る制御装置50は、搬出コンベア3の上方所定位置に配置されたカメラ51により撮象して得られるコンベア3上をランダムに搬送される物品2の状態に基づいて、マニピュレータ11の各コンベア3上での停止位置を決定する。
【0021】また、包装装置4の供給搬送コンベア5上では、一定の間隔で物品2を搬送する必要があるが、本例では供給搬送コンベア5は等速運転されているため、一度物品2をある位置においた後の経過時間から、その物品2の現在の存在位値を算出することができる。従って、マニピュレータ11により物品2を移載した供給搬送コンベア5上の位置(その時のコンベア5上を搬送される物品列の最後端の物品の位置)と、その時からの経過時間に基づいて、そのコンベア5上の次の物品2をおくべき場所(マニピュレータ11の供給搬送コンベア5上での停止位置)を算出することができ、係る算出も制御装置50で行われる。
【0022】そして本例では、前回に移載した物品の供給搬送コンベア5上への供給位置に基づいて次の物品2の移載位置を算出するようにした(即ち、所定回数前=1)が、本発明では、位置算出するための基準となるそれ以前に移載した物品2は、必ずしも直前のものに限ることなく、所定回数前のものに基づいて行なうものであれば、その数は任意であり、しかも、必ずしも係る所定回数を一定値にする必要もない。
【0023】さらに、この制御装置50は、上記の算出した各位置にマニピュレータ11を移動すべく、各レール装置12,13(第1,第2の駆動モータ22,33)に対して制御信号を出力するようになっている。さらにまた、この制御装置50は、マニピュレータ11のエアシリンダ42並びに駆動モータ46に対しても制御信号出力するようになっている。」(段落【0020】ないし【0023】)
(オ)「【0025】…(中略)…なお、下降移動させるタイミングは、カメラ51にて撮像した画像データから、搬送コンベア3上を移動する先頭の物品2の位置を取得する。すると、搬送コンベア3の移動速度が既知であるため、その撮像した物品がマニピュレータ11の下方位置に移動するまでに要する時間を求めることができる。よって、制御装置50にて係る演算処理を行い、所定のタイミングでマニピュレータ11(エアシリンダ42)に対して下降命令を出力するようになる。」(段落【0025】)
(カ)「【0029】次いで、所定のタイミング(前回おいた物品との間隔が所定の距離になる時)エアシリンダ42を再度作動させて吸引ノズル38を下降させ、吸着した物品2を供給搬送コンベア5上に載置すると共に、吸引を停止する。これにより、物品2の吸引保持力が解除されるため、以後、物品2は、供給搬送コンベア5からの搬送力を受けて前進し、次段の包装装置4により所定の包装処理が施される。」(段落【0029】)
(キ)「【0031】なお、本例では、両コンベア3,5はそれぞれ一定の速度で連続運転しているため、マニピュレータ11で物品2を吸着保持する際(コンベア3側)、並びに保持を解除する際(コンベア5側)には、物品2はマニピュレータからの力とコンベア3,5からの力を受けるため、かかる力の向きの相違から物品2に不必要な応力が加わり損傷を生じるおそれがある。したがって、特に物品2が脆弱なもの等の場合には、吸着保持、並びに係る保持の解除の際にXレール装置12を作動させて、マニピュレータ11を各コンベア3,5と同一方向に同一速度で移動させるようにしてもよい。
【0032】ところで、実際には、搬送コンベア3上を搬送されて来る物品2は、単位時間当たりの搬送個数も増減すると共に、図1に示すように搬送コンベア3の幅方向での位置もランダムとなる。そこで、本例では、カメラ51にて搬送コンベア3上を移動する先頭の物品の位置を検出する。そして、コンベアの幅方向の位置に基づいてYレール装置13による移動台35の停止位置(先頭の物品2の幅方向の位置に一致させる)を決定する。また、係る撮像した画像データに基づいて物品2が平均よりも少量しか送られて来ない場合には、搬送コンベア3を介して送られてくる物品の量が不足するので供給搬送コンベア5に一定量供給するためには、徐々に搬送コンベア3の上流側で物品2を保持する必要がある。そこで、かかる位置を求める。
【0033】そして、Xレール装置12を作動してYレール装置13すなわちマニピュレータ11を上流側に移動し、Yレール装置13を用いて上記した幅方向所定位置にマニピュレータ11を移動する。これにより、搬送コンベア3上の先頭を移動する物品2の存在位置にマニピュレータ11を移動することができ、以後上記した作用と同様の処理により物品2を保持する。そして、Xレール装置12,Yレール装置13を動作させて上記と同様に供給搬送コンベア5上に一定間隔毎に搬送できるように物品2を移載する。
【0034】一方、物品2が平均よりも多量に送られて来た場合には、上記とは逆に供給搬送コンベア5に一定の間隔を保ちつつ一定量を供給するためには、ある物品を移載している間に次の物品が平均値における物品保持位置を通過してしまうため、そのままでは物品を保持できずに無駄となってしまうので搬送コンベア3の下流側にまでマニピュレータ11を移動させて物品2を保持する必要がある。そこで、係る位置を求め、両レール装置12,13を駆動させてマニピュレータ11を係る位置まで移動し、搬送コンベア3上の先頭の物品を保持し、供給搬送コンベア5上に移載することになる。
【0035】上記したように、搬送コンベア3上の物品2の単位時間あたりの搬送量が増減し、搬出コンベア3の上を幅方向並びに前後方向の間隔をランダムに搬送されてくる物品2であっても、両レール装置12,13によりマニピュレータ11を二次平面上のいってい任意の位置に移動できるため、確実に搬送コンベア3上の先頭を搬送される物品2を保持し、供給搬送コンベア5上の所定位置に移載できる。しかも、各レール装置12,13では、直線的に移動させるために高速移動可能となる。」(段落【0031】ないし【0035】)
(ク)「【0036】また、何等かの原因により搬送コンベア3を移動する物品2の搬送量の増減量が大きくなり、上記したX,Yレール装置12,13によりマニピュレータ11の二次平面上での移動では対処できなくなるおそれもある。係る場合には、図11中一点鎖線で示すように制御装置50の制御対象を包装装置4並びに供給搬送コンベア5の駆動モータ52も加え、運転速度を可変できるようにすることにより対処できる。
【0037】すなわち、包装装置4は、例えば特開平4-6007等に示すように包装装置4を駆動するサーボモータや供給搬送コンベア5の駆動モータ(サーボモータ)52の回転速度を制御することにより、単位時間あたりの製造個数をスムーズに変えることができる。そこで、搬送コンベア3上を搬送されてくる物品の量に応じて制御装置50から各レール装置12,13への駆動モータ22,33およびまたは包装装置4,供給搬送コンベア5の駆動モータ52へ運転速度の変更の制御信号を送ることにより等速運転する両コンベア3,5(供給搬送コンベア5も速度変更後は等速運転させる)間をスムーズに移載することができる。
【0038】そして、具体的な制御の一例を示すと、例えば搬送装置3上を搬送される物品2の量が極端に少なくなるような場合には、包装装置4,供給搬送コンベア5の速度を低下させたり、逆に搬送装置3上を搬送される物品2の量が極端に多くなるような場合には、包装装置4,供給搬送コンベア5の速度を増加することである。」(段落【0036】ないし【0038】)

(2)上記(1)及び図面からわかること
(サ)上記(1)(ク)及び図11から、図11中の「供給搬送コンベア5」に付随した「M」は、「供給搬送コンベア5の駆動モータ52」であることがわかる。
(シ)上記(1)(ク)及び図11から、「制御装置50」には、「供給搬送コンベア5」の搬送速度を変更する「速度変更手段」が設けられていることがわかる。
(ス)上記(1)(キ)及び上記(シ)並びに図11から、「搬出コンベア3」上を搬送される「物品2」の供給量が平均より少ないときには、「マニピュレータ11」は徐々に「搬出コンベア3」の上流側で「物品2」を保持するようになる、すなわち、「搬出コンベア3」上での「マニピュレータ11」による「物品2」の保持位置は徐々に上流側に移動することがわかる。また、「搬出コンベア3」上を搬送される「物品2」の供給量が平均より多いときには、「マニピュレータ11」は徐々に「搬出コンベア3」の下流側で物品を保持するようになる、すなわち、「搬出コンベア3」上での「マニピュレータ11」による「物品2」の保持位置は徐々に下流側に移動することがわかる。
(セ)上記(1)(キ)及び(ク)並び図11から、「搬出コンベア3」上を搬送される「物品2」の搬送量の増減が極端ではない場合には、「供給搬送コンベア5」の速度は一定であり、「搬出コンベア3」上を搬送される「物品2」の量が極端に少なくなるような場合には、「供給搬送コンベア5」の速度を低下させ、逆に「搬出コンベア3」上を搬送される物品2の量が極端に多くなるような場合には、「供給搬送コンベア5」の速度を増加することがわかる。
(ソ)上記(1)(キ)並びに上記(ス)及び(セ)から、「搬出コンベア3」上を搬送される「物品2」の量が平均より少なくなるにつれて「搬出コンベア3」上での「マニピュレータ11」による「物品2」の保持位置は上流側に移動し、「搬出コンベア3」上を搬送される「物品2」の量が極端に少なくなるような場合には、「供給搬送コンベア5」の速度を低速に制御する一方、「搬出コンベア3」上を搬送される物品2の量が平均より多くなるにつれて「搬出コンベア3」上での「マニピュレータ11」による「物品2」の保持位置は下流側に移動し、「搬出コンベア3」上を搬送される物品2の量が極端に多くなるような場合には、「供給搬送コンベア5」の速度を高速に制御し、「搬出コンベア3」上を搬送される物品2の量が平均的な場合には、「搬出コンベア3」上での「マニピュレータ11」による「物品2」の保持位置は「上流側」及び「下流側」以外の中流区間にあり、「供給搬送コンベア5」の速度は「高速」と「低速」の間の一定の速度、すなわち中速であることがわかる。

(3)引用文献に記載の発明
上記(1)及び(2)並びに図面を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用文献に記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「物品2をランダムに搬送する搬出コンベア3と、この搬出コンベア3の下流に設けられて、物品2を所定の間隔で搬送する供給搬送コンベア5と、上記搬出コンベア3によって搬送される物品2の位置等の搬送量情報を検出するカメラ51と、上記物品2を保持するマニピュレータ11と、上記カメラ51から入力される先頭物品の位置等の搬送量情報に応じてマニピュレータ11を制御して物品2を保持させるとともに、その保持した物品2を供給搬送コンベア5に移載する制御装置50とを備えた物品移載装置1において、
上記供給搬送コンベア5の搬送速度を変更可能とし、上記制御装置50に上記搬送速度を変更する速度変更手段を設け、
上記速度変更手段は、上記マニピュレータ11の搬出コンベア3における物品2の保持領域に搬送方向に沿って上流側と下流側とを設定するとともに、上記マニピュレータ11の搬出コンベア3における物品2の保持領域内に位置する次に保持すべき物品2が上流側に位置しているときには、供給搬送コンベア5の搬送速度を低速に制御する一方、上記保持領域内に位置する次に保持すべき物品2が下流側に位置しているときには、供給搬送コンベア5を高速に制御するようにした物品移載装置1。」

3.当審の判断
(1)本願発明と引用文献に記載の発明との対比
本願発明と引用文献に記載の発明とを対比するに、引用文献に記載の発明における「物品2」、「搬出コンベア3」、「供給搬送コンベア5」、「マニピュレータ11」、「速度変更手段」、及び「物品移載装置1」は、それらの形状、構造及び機能等からみて、それぞれ本願発明における「物品」、「第1搬送手段」、「第2搬送手段」、「ロボット」、「速度設定部」、及び「物品処理システム」に相当する。また、引用文献に記載の発明における「物品を所定の間隔で搬送する」及び「移載する」は、それらの意図する技術内容からみて、それぞれ本願発明における「物品を揃えて搬送する」及び「移し替える」と同義語である。
さらに、引用文献に記載の発明における「物品2の位置等の搬送量情報を検出するカメラ51」は、「搬出コンベア3」によって搬送される先頭物品2の位置等の搬送量情報を検出して、その検出結果を制御装置50に送り、制御装置50においては、その検出結果に応じて搬出コンベア3上での物品2の保持位置及び供給搬送コンベア5への移載位置(解放位置)を算出してマニピュレータ11を制御するものであり、その機能においては、本願発明における「(物品の位置を検出する)位置検出手段」に相当するものである。
そして、引用文献に記載の発明における「上記マニピュレータ11の搬出コンベア3における物品2の保持領域に搬送方向に沿って上流側と下流側とを設定するとともに、上記マニピュレータ11の搬出コンベア3における物品2の保持領域内に位置する次に保持すべき物品2が上流側に位置しているときには、供給搬送コンベア5の搬送速度を低速に制御する一方、上記保持領域内に位置する次に保持すべき物品2が下流側に位置しているときには、供給搬送コンベア5を高速に制御する」は、「上記保持領域内に位置する次に保持すべき物品が上流側に位置しているときには、第2搬送手段の搬送速度を低速に制御する一方、上記保持領域内に位置する次に保持すべき物品が下流側に位置しているときには、第2搬送手段の搬送速度を高速に制御する」という限りにおいて、本願発明における「上記ロボットの第1搬送手段における物品の保持領域を搬送方向に沿って上流区間と下流区間とに区分するとともに、上記保持領域内に位置する次に保持すべき物品が上流区間に位置しているときには、第2搬送手段の搬送速度を低速に制御する一方、上記保持領域内に位置する次に保持すべき物品が下流区間に位置しているときには、第2搬送手段の搬送速度を高速に制御する」に相当する。
したがって、本願発明と引用文献に記載の発明は、
「物品をランダムに搬送する第1搬送手段と、この第1搬送手段の下流に設けられて、物品を揃えて搬送する第2搬送手段と、第1搬送手段によって搬送される物品の位置を検出する位置検出手段と、物品を保持するロボットと、位置検出手段から入力される検出値に応じてロボットを制御して物品を保持させるとともに、その保持した物品を第2搬送手段に移し替える制御装置とを備えた物品処理システムにおいて、
上記第2搬送手段の搬送速度を変更可能とし、上記制御装置に搬送速度を変更する速度設定部を設け、
上記速度設定部は、上記ロボットの第1搬送手段における物品の保持領域内に位置する次に保持すべき物品が上流側に位置しているときには、第2搬送手段の搬送速度を低速に制御する一方、上記保持領域内に位置する次に保持すべき物品が下流側に位置しているときには、第2搬送手段の搬送速度を高速に制御する物品処理システム。」
の点で一致し、次の〈相違点〉においてのみ相違する。
〈相違点〉
「上記保持領域内に位置する次に保持すべき物品が上流側に位置しているときには、第2搬送手段の搬送速度を低速に制御する一方、上記保持領域内に位置する次に保持すべき物品が下流側に位置しているときには、第2搬送手段の搬送速度を高速に制御する」に関し、本願発明においては、「上記ロボットの第1搬送手段における物品の保持領域を搬送方向に沿って上流区間と下流区間とに区分するとともに、保持領域内に位置する次に保持すべき物品が上流区間に位置しているときには、第2搬送手段の搬送速度を低速に制御する一方、保持領域内に位置する次に保持すべき物品が下流区間に位置しているときには、第2搬送手段の搬送速度を高速に制御する」ようにしているのに対し、引用文献に記載の発明においては、「上記マニピュレータ11の搬出コンベア3における物品2の保持領域に搬送方向に沿って上流側と下流側とを設定するとともに、上記マニピュレータ11の搬出コンベア3における物品2の保持領域内に位置する次に保持すべき物品2が上流側に位置しているときには、供給搬送コンベア5の搬送速度を低速に制御する一方、上記保持領域内に位置する次に保持すべき物品2が下流側に位置しているときには、供給搬送コンベア5を高速に制御するように」はしているものの、そもそも、「上記保持領域内に位置する次に保持すべき物品2」の搬送方向に沿った「上流側」及び「下流側」の定義が明確ではなく、したがって、本願発明のように「マニピュレータ11の搬出コンベア3における物品2の保持領域」を「搬送方向に沿って上流区間と下流区間とに区分」しているか否かが不明である点(以下、単に「相違点」という。)。

(2)相違点についての検討
ここで、本願発明における「物品の保持領域」の「上流区間」及び「下流区間」について検討すると、本願明細書の段落【0017】に「上記第1ないし第4実施例では、速度設定部は、中流区間では上流区間又は下流区間と同じ制御を行なっているがこれに限定されるものではなく、高速と低速の間となる中速で制御するようにしてもよい。」との記載がある。
他方、上記2.(2)(ソ)から、引用文献には、「供給搬送コンベア5」の速度は、「搬出コンベア3」上での「マニピュレータ11」による「物品2」の保持位置が、上流側にあるときには低速に、また、下流側にあるときには高速に、さらに、上流側及び下流側以外の中流区間にあるときには高速と低速の間の一定の速度、すなわち中速に、それぞれ制御していることが記載されているといえる。
してみると、引用文献に記載の発明において、「マニピュレータ11の搬出コンベア3における物品2の保持領域に搬送方向に沿って」設定した「上流側」及び「下流側」にある程度の長さを持たせて「上流区間」及び「下流区間」として、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が格別な創意工夫を要することなく容易に想到し発明しうる程度のものといえる。
しかも、本願発明は、全体構成でみても、引用文献に記載の発明から予測できる作用効果以上の格別な作用効果を奏するものとも認められない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-21 
結審通知日 2010-10-26 
審決日 2010-11-08 
出願番号 特願平11-92814
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 見目 省二  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 西山 真二
金澤 俊郎
発明の名称 物品処理システム  
代理人 神崎 真一郎  

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