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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1229191
審判番号 不服2009-13523  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-28 
確定日 2010-12-24 
事件の表示 特願2005-346080「剥離紙付きラベルおよびラベルプリンタ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月14日出願公開、特開2007-144955〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成17年11月30日の出願であって、平成21年4月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年7月28日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に同日付けで手続補正がなされたものである。

2 平成21年7月28日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。
〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】ロール状に巻かれたラベル用剥離紙の一の面に貼着されたラベル個体と、
上記剥離紙の他の面にその始端側から終端に亘り所定間隔で印刷された、上記ラベル個体の関連情報を示す同一パターンのバーコードと、
上記バーコードに先立って、上記バーコードの存在を予め識別させる識別情報とを有し、
上記関連情報には上記剥離紙に貼着された上記ラベル個体の総数の情報が含まれる
ことを特徴とする剥離紙付きラベル。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「剥離紙付きラベル」について「上記バーコードに先立って、上記バーコードの存在を予め識別させる識別情報を有し」との限定事項を付加するものであり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-240121号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ラベルが貼着された前記台紙裏面に、ラベルの残量を表す情報が表示されているラベルロール、および該ラベルロールに貼着されたラベルを用いるラベル印刷機において、台紙裏面に配設された前記ラベルの残量を表す情報を示す前記バーコードをバーコードセンサにより読み取り、ラベルの残量を表示するラベル印刷機に関する。」
「【0027】(第1実施形態)本第1実施形態のラベルロールおよびラベル印刷機は、図1ないし図3に示すように複数のラベル11が貼着されたラベル台紙10がロール状に巻かれ、前記ラベル11が貼着された位置に相当する前記台紙裏面に、ラベルの残量を表す情報を示すバーコード12が、前記台紙に貼着されたラベルの先頭位置を示すバーコード13とともに配設されているラベルロール1であって…
【0028】前記ラベルロール1は、図2に示されるようにラベル11が一定間隔に複数貼着されたラベル台紙10がロール状に巻かれ、前記ラベル11が貼着された位置に相当する前記台紙裏面に、前記台紙に貼着されたラベルの搬送方向の先頭位置に一致させて前記バーコード13が配設され、該バーコード13に対してラベル台紙10の幅方向(搬送方向に直角な方向)にラベルの残量を表す2進数4桁のバーコード12が配設されている。
【0029】例えば、2進数4桁のバーコード12を採用(特に4桁である必要はない)することにより、0ないし15の数字を表すことを可能にし、本第1実施形態においては、実際のラベル枚数を、バーコードによる数字に10をかけた値とし、10枚のラベルを印刷する度に前記バーコードが変わり、新たなラベル残量を表示することになる。」
「【0036】印刷を制御する前記印刷制御装置を構成する前記コントローラ3は、前記バーコードセンサ2の残量センサ22からのラベル残量に変化があった後、前記先頭位置センサ21からの出力に基づき印刷したラベル枚数をカウントすることによって、常に正確な一枚単位のラベル枚数の把握を可能にする構成より成る。」
「【0047】(第2実施形態)第2実施形態のラベル印刷機は、図4ないし図7に示されるようにラベル11の先頭位置を示す前記バーコード14およびラベルの残量の情報を示す前記バーコード15が前記ラベルが貼着された位置に相当する前記台紙10の裏面の長手方向に配設され、前記台紙裏面に長手方向に配設された前記ラベルの先頭位置を示す前記バーコード14およびラベルの残量の情報を示す前記バーコード15をともに読み取る1個のバーコードセンサ23によって構成されている点が、前記第1実施形態との相違点であり…」
「【0049】すなわち、図4および図5に示されるように先頭位置を表す前記バーコード14は、幅広のバーコードによって構成され、ラベルの残量を示す前記バーコード15は、先頭位置を表す前記バーコード14の搬送方向後方に配設される幅の狭い4本のバーコードによって構成され、該幅の狭いバーコードの位置と数によって0ないし15の数字を表すことを可能にし、本第1実施形態と同様に実際のラベル枚数を、バーコードによる数字に10をかけた値とし、10枚のラベルを印刷する度に前記バーコードが変わり、新たなラベル残量を表示することになる。」
以上の記載及び図1ないし図7によれば、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。
「ロール状に巻かれたラベル台紙表面に貼着されたラベルと、
ラベル台紙のラベルが貼着された位置に相当する裏面に配設された、ラベルの先頭位置を示すバーコード及びその搬送方向後方に配設されたラベルの残量の情報を示すバーコードとを有し、
ラベルの枚数が、ラベルの残量の情報を示すバーコードによる数字に10をかけた値であり、10枚のラベル毎にラベルの残量の情報を示すバーコードが異なる、ラベルロール。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-56604号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、プリンタ内蔵型カメラおよび被記録体…に関する。」
「【0040】本発明の請求項36記載のプリンタ内蔵型電子カメラは、……上記プリンタ部によるプリントに適合する被記録体であって、記録テープが巻回されてなるものの残量を、当該被記録体の装填時に設定される所定の初期設定値から減算計数することにより定量的に表示するための残量表示手段を備えてなる。…」
「【0083】…上記プリンタ内蔵型電子カメラに装着可能な被記録体であるテープカセット30の構造について説明する。…
【0084】…カセット本体31の側面の上記カメラ側のカセット情報検出スイッチ25のアクチュエータが接触可能な位置に情報保持手段としての櫛状の凹部31gが設けられている。この凹部31gの有無により収納されている…記録テープ等の固有のカセット情報が4ビットデータとして記録されている。」
「【0087】…装着されたテープカセット30のカセット情報をカセット情報検出スイッチ25を介して読み込む。…記録テープの記録可能枚数情報によりカセット装着時の記録可能枚数を設定する。…」
「【0137】上述の本変形例のプリンタ部によると、予めテープカセットに記録されている記録テープ46の総プリント可能枚数情報をCPU101で取り込み、プリントを行う度にテープカセットに残っている記録テープの残量を残り記録可能枚数として記録紙上にプリントし、その残り枚数を覗き窓1から確認することができる。…」
以上の記載及び図面によれば、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。
「プリント処理の度に、初期設定された記録テープの総記録可能枚数から減算計数して記録テープの残量を表示する、プリンタ内蔵型電子カメラ。」

(3)対比
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比する。
引用例1記載の発明の「ラベル台紙」、「表面」、「ラベル」、「裏面」、「ラベルの先頭位置を示すバーコード」及び「ラベルロール」は、それぞれ本願補正発明の「ラベル用剥離紙」、「一の面」、「ラベル個体」、「他の面」、「上記バーコードに先立って、上記バーコードの存在を予め識別させる識別情報」及び「剥離紙付きラベル」に相当する。
そして、引用例1記載の発明において、ラベルの枚数が、ラベルの残量の情報を示すバーコードによる数字に10をかけた値であり、10枚のラベル毎にラベルの残量の情報を示すバーコードが異なるから、台紙の始端側から10枚目までの各ラベルが貼着された位置に相当する台紙の裏面に配設された、ラベルの残量の情報を示すバーコードは、同一のパターンのバーコードであって、これらのバーコードには、ラベル台紙表面に貼着されたラベルの総数の情報が含まれていると認められる。
したがって、引用例1記載の発明における「ラベルの残量の情報を示すバーコード」のうち、台紙の始端側から10枚目までの各ラベルが貼着された位置に相当する台紙の裏面に配設された「ラベルの残量の情報を示すバーコード」は、本願補正発明の「ラベル個体の関連情報を示す同一パターンのバーコード」であって、「上記関連情報には上記剥離紙に貼着された上記ラベル個体の総数の情報が含まれる」ものに相当する。
また、引用例1には、ラベル台紙の裏面に配設されたバーコードが印刷により作成されていると、特に記載されてはいないが、台紙にバーコードを印刷により作成することは技術常識であるから、ラベル台紙の裏面にバーコードが印刷されていることは、記載されているに等しい事項と認められる。
そうすると、両者は、
「ロール状に巻かれたラベル用剥離紙の一の面に貼着されたラベル個体と、
上記剥離紙の他の面にその始端側から所定間隔で印刷された、上記ラベル個体の関連情報を示す同一パターンのバーコードと、
上記バーコードに先立って、上記バーコードの存在を予め識別させる識別情報とを有し、
上記関連情報には上記剥離紙に貼着された上記ラベル個体の総数の情報が含まれる剥離紙付きラベル」
である点で一致し、次の点で相違する。
《相違点》
本願補正発明では、剥離紙に貼着されたラベル個体の総数の情報が含まれるラベル個体の関連情報を示す同一パターンのバーコードが、剥離紙の他の面にその始端側から終端に亘り印刷されているのに対して、引用例1記載の発明では、剥離紙に貼着されたラベル個体の総数の情報が含まれるラベル個体の関連情報を示す同一パターンのバーコードが、剥離紙の他の面にその始端側から10枚目までの各ラベルが貼着された位置に相当する箇所に印刷され、それ以降のラベルが貼着された位置に相当する箇所には、ラベル10枚毎に異なるラベルの残量の情報を示すバーコードが印刷されている点。

(4)相違点の検討
そこで、上記相違点について検討する。
本願補正発明が上記相違点に係る事項を採用したのは、本願明細書段落【0018】ないし【0020】、【0024】の記載によると、ラベルプリンタにおいて、剥離紙付きラベルをラベルプリンタに装着後印字モードに移行する前に、同一パターンのバーコードに示されたラベル個体の総数の情報を読み取り、ラベル個体への印字処理が終了する度に、減算処理をして残りの印刷可能枚数を表示できるようにするため、さらに、剥離紙付きラベルへのバーコード印刷を輪転式印刷により可能とし印刷コストを安価にするためである。
しかしながら、引用例2には、プリンタ内蔵型電子カメラではあるが、プリント処理の度に、初期設定された記録テープの総記録可能枚数から減算計数して記録テープの残量を表示する技術的事項が記載されており、この引用例2に記載の技術的事項に接した当業者であれば、引用例1記載の発明においても、ラベル個体の総記録可能枚数すなわち総印刷可能枚数がわかっていれば、残りの印刷可能枚数を検知可能であることは、容易に着想できることであるから、引用例1記載の発明において、ラベルの残量の情報を示すバーコードの総てを、ラベル個体の総数の情報が含まれるラベル個体の関連情報を示す同一パターンとし、相違点に係る本願補正発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

しかも、本願補正発明が奏する効果も、引用例1及び引用例2記載の発明から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例1及び引用例2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし請求項4係る発明は、平成21年2月4日の手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】ロール状に巻かれたラベル用剥離紙の一の面に貼着されたラベル個体と、
上記剥離紙の他の面にその始端側から終端に亘り所定間隔で印刷された、上記ラベル個体の関連情報を示す同一パターンのバーコードとを有し、
上記関連情報には上記剥離紙に貼着された上記ラベル個体の総数の情報が含まれる
ことを特徴とする剥離紙付きラベル。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記2(2)に記載したとおりである。

(3)対比・検討
本願発明1は、上記2(1)で検討した本願補正発明から、「剥離紙付きラベル」について限定する「上記バーコードに先立って、上記バーコードの存在を予め識別させる識別情報を有し」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明1を特定する事項を全て含み、さらに他の特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2(4)に記載したとおり、引用例1及び引用例2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例1及び引用例2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-20 
結審通知日 2010-10-26 
審決日 2010-11-09 
出願番号 特願2005-346080(P2005-346080)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 孝明  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 鳥居 稔
佐野 健治
発明の名称 剥離紙付きラベルおよびラベルプリンタ  
代理人 山口 隆史  
代理人 特許業務法人山口国際特許事務所  
代理人 山口 邦夫  

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