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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1229222
審判番号 不服2008-3441  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-14 
確定日 2010-12-22 
事件の表示 特願2002- 20061「画像転送システムおよび画像転送方法並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月22日出願公開、特開2002-334011〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年1月29日(パリ条約による優先権主張2001年2月1日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成19年9月11日付けで拒絶理由通知がなされ、同年11月14日付けで手続補正がなされたが、同年12月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成20年2月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年2月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項6に係る発明
本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項6は、
「画像サーバと、該画像サーバとネットワークを介して接続された表示端末とを有する画像転送システムにおいて、
前記画像サーバは、画像データを分類して管理する少なくとも1つのフォルダを作成可能な機能、および新たな画像データが保管された場合に該新たな画像データの保管を表すフラグを設定可能な機能を有し、
前記表示端末は、所望とする前記フォルダの購読を指定する機能、画像データの検索を行うときに前記画像サーバにアクセスして、前記所望とするフォルダに分類された画像データについての前記フラグの設定の有無を確認する機能、および該フラグが設定されている場合に、前記表示端末において前記新たな画像データの保管の通知および該新たな画像データの取得を行う機能を有することを特徴とする画像転送システム。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項6における「画像サーバにアクセスして、所望とするフォルダに分類された画像データについてのフラグの設定の有無を確認する機能」を「画像データの検索を行うときに画像サーバにアクセスして、所望とするフォルダに分類された画像データについてのフラグの設定の有無を確認する機能」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項6に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例及び周知例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-89991号公報(以下、「引用例」という。)、原査定の備考欄において周知例として引用された特開平11-4253号公報(以下、「周知例1」という。)、前置審査において周知例として引用された特開平7-175874号公報(以下、「周知例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例)
A.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は文書管理システムに関し、特にフォルダ階層を構成するフォルダの複数段数化を可能にするとともに、静止画像などのマルチメディアデータを含む文書を検索可能に登録する文書管理システムに関する。」

B.「【0022】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明の一実施の形態の構成を示す図1を参照すると、文書管理システムは文書管理サーバシステム1及び文書管理クライアントシステム2から構成される。これらサーバシステム1とクライアントシステム2とはLANなどのネットワーク3を通して接続される。文書管理サーバシステム1は制御部4及び複数種の補助記憶用ディスク5を有し、ワークステーションやパーソナルコンピュータ(PC)で構成できる。文書管理クライアントシステム2は制御部6、補助記憶用ディスク7及び入出力部8を有し、PCで構成できる。サーバシステム1及びクライアントシステム2を共にPCで構成する場合、同一体のPCであってもよい。
【0023】文書管理サーバシステム1の制御部4は通信管理部41、データベース管理部42、キーワードサーチプログラム43及び特徴量サーチプログラム44から構成される。文書管理サーバシステム1は補助記憶用ディスク5として、文書の属性情報(属性値・キーワード)及びフォルダ階層情報を管理するための文書情報管理データベース51と、キーワードから文書を検索するためのキーワードインデックスファイル52と、静止画像等のマルチメディアデータを含む文書(マルチメディア文書)を検索するためのマルチメディアインデックスファイル53と、文書そのものである文書実体(特に限定して説明する必要がないときは、単に文書と記載する)を格納するためのサーバ側文書ファイル54とを有する。
【0024】文書管理クライアントシステム2の制御部6は通信管理部61、登録部62、ユーザインタフェース部63、ファイル形式変換プログラム64、特徴量抽出プログラム65及びキーワード抽出プログラム66から構成される。文書管理クライアントシステム2は補助記憶用ディスクとして、予め別の文書作成プログラムで作成した文書を格納しているクライアント側文書ファイル7を有する。また、クライアントシステム2はユーザ9からの処理要求やこの要求に対応する処理結果の可視表示を行う入出力部8を有する。」

C.「【0030】図2は図1に示すシステム構成中の文書情報管理データベース51の構成を示している。文書情報管理データベース51はフォルダ表511、文書表512、フォルダリスト表513、文書リスト表514、キーワード表515、分類ルール表516及び変更通知ルール表517の7つの表から構成されている。図2では、これらの表の要素がそれぞれどの表の要素と関連しているかを示している。例えば、フォルダ表511はフォルダID、フォルダ名、作成者、作成日時、文書リスト、親フォルダ及び子フォルダという列を要素として持つ。各要素から延びた矢印は、その要素がどの表と関連しているかを示している。」

D.「【0037】図5は図1に示すドキュメント管理システムにおける文書管理の概念を説明するための図である。このシステム内では、文書の本体である文書実体をサーバ側文書ファイル54で一括管理し、一意に識別するための文書ID(1001、1002、1003)を各文書実体に付与する。また、フォルダ階層を表現するデータ構造からポインタにより、この文書IDを用いて文書実体を参照する。これを文書実体へのポインタと呼ぶ。
【0038】一つの文書は各フォルダ階層上の任意の複数の位置からポインタを用いて参照することが可能である。同一の文書IDへの参照は同一の文書実体への参照を意味する。フォルダA、B、C、D、E、F、Gのそれぞれは任意の複数の文書へのポインタを格納することができる。また、任意の複数の独立したフォルダ階層を文書情報管理データベース51に保持することができる。ここでは、フォルダ階層(1)及びフォルダ階層(2)の二つのフォルダ階層の例を示している。
【0039】同図に例示するように、同一の文書へのポインタを異なる複数のフォルダに格納することができる。これは、文書をフォルダの階層に分類して管理する場合、一つの文書を複数のフォルダに分類したいことがあり、その文書へのポインタを複数のフォルダに格納することで可能になる。ここでは、例として文書ID1001の文書実体へのポインタを矢印で表している。」

E.「【0058】図16はダウンロード処理の手順を示す。ダウンロードは登録処理と逆の処理である。この処理は、入出力部8から検索要求などによってユーザ9が必要とする文書を選択した後、その文書をクライアント側文書ファイル7に出力する際に行う。ユーザ9は入出力部8を通してダウンロードする文書をフォルダ階層上のフォルダの中から指定する(S131)。この後、ダウンロード要求を行うことで、データベース管理部42はダウンロードに必要な文書の属性値をデータベース51から取得し(S132)、通信管理部41を通して指定された文書をサーバ側文書ファイル54からクライアント側文書ファイル7に複写する(S133)。
【0059】図17は自動分類処理の手順を示す。ユーザ9は自動分類のルールを予め入出力部8により通信管理部61を通してデータベース51の分類ルール表に登録する。この後、ユーザ9は入出力部8を通して自動分類の対象とするフォルダをフォルダ階層の中から指定して通信管理部61を通してサーバ側のデータベース管理部42に自動分類要求を行う。データベース管理部42はユーザ9からの自動分類要求を受け、データベース51から分類ルールを取得する(S141)。また、分類対象となるフォルダ対応の文書を対象に分類ルールを順次適用し、ルールに適合する文書へのポインタを分類先のフォルダ内に作成する(S142)。この処理を分類終了まで繰り返す(S143)。
【0060】図18は変更通知処理の手順を示す。この処理はクライアント側文書ファイル7やデータベース51中のフォルダ階層内の文書へのポインタの変更を監視することにより、新しい文書が登録された場合や、ユーザ9が予め指定した特定のフォルダ内に文書へのポインタが追加されたり削除されるなどの更新が起こった場合、それに伴う処理をルールによってユーザ9が予め定義しておくことを可能にするものである。
【0061】ユーザ9は予めデータベース51の変更通知ルール表に入出力部8を通して変更通知ルールを定義する。定義するルールは、どこのフォルダにどのような変更が起こった場合にどのユーザに通知するか、またそのときに起動する処理がどんなものかを組にしたものである。
【0062】データベース管理部42は予め変更通知ルールをデータベース51から読み出し(S151)、通信管理部41を通してクライアント側文書ファイル7を監視している(S152)。また、データベース51内のフォルダ階層の構造を監視する。これらのものに追加や削除などの変更が発生すると(S153)、その変更を入出力部8を通してユーザ9に通知する(S154)。また、変更発生時に起動すべき処理が変更通知ルール表に定義されている場合はその処理を行う(S155、S156)。」

上記Bの段落【0023】には、引用例のものが扱う文書として静止画像等のマルチメディアデータを含む文書(マルチメディア文書)が示されている。

上記Dの段落【0039】を参照すると、文書を複数のフォルダに分類して管理することが示されていることから、引用例の「文書管理サーバシステム」がフォルダを作成可能とするための機能を有していることは明らかである。

上記Eの段落【0060】を参照すると、ユーザが予め指定した特定のフォルダ内に文書へのポインタが追加された場合、それに伴う処理を行うことが示されており、上記Eの段落【0061】には、ルールとして、上記特定のフォルダを指定することが示されている。そして、上記Eの段落【0062】を参照すると、文書管理サーバシステム内のデータベース管理部は、上記ルールを読み出し、上記特定のフォルダに文書へのポインタが追加されると、文書管理クライアントシステム内の入出力部に通知し、該入出力部は、ユーザに文書へのポインタが追加されたことを通知することが示されている。
したがって、引用例の「文書管理サーバシステム」は、「ユーザが予め指定した特定のフォルダ内に新しいマルチメディア文書へのポインタが追加された場合にそのことを前記文書管理クライアントシステムに通知する機能」及び「それに伴う処理を行う機能」を有しているといえる。また、引用例の「文書管理クライアントシステム」は、「新しいマルチメディア文書へのポインタが追加されたことをユーザに通知する機能」を有しているといえる。

上記Eの段落【0061】には、「入出力部8を通して変更通知ルールを定義する。定義するルールは、どこのフォルダにどのような変更が起こった場合にどのユーザに通知するか、またそのときに起動する処理がどんなものかを組にしたものである。」と記載されており、上記「入出力部」は、「文書管理クライアントシステム」が有するものであるから、「文書管理クライアントシステム」は、「特定のフォルダを指定する機能」を有しているといえる。

よって、上記A?Eの記載及び関連する図面を参照すると、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例記載の発明」という。)
「文書管理サーバシステムと、該文書管理サーバシステムとネットワークを介して接続された文書管理クライアントシステムとを有する文書管理システムにおいて、
前記文書管理サーバシステムは、マルチメディア文書を分類して管理する少なくとも1つのフォルダを作成可能な機能、ユーザが予め指定した特定のフォルダ内に新しいマルチメディア文書へのポインタが追加された場合にそのことを前記文書管理クライアントシステムに通知する機能、およびそれに伴う処理を行う機能を有し、
前記文書管理クライアントシステムは、上記特定のフォルダを指定する機能、および新しいマルチメディア文書へのポインタが追加されたことをユーザに通知する機能を有する文書管理システム。」

(周知例1)
F.「【0007】次に、ユーザが自分宛ての新着メールの確認をするための手順を示す。なお、ユーザ宛てのメールは、記載されていない他のユーザが使用するコンピュータから送信されると、プロバイダのメールサーバ53に格納される。
(1)パーソナルコンピュータ51の電源を投入し、ルータ52またはターミナルアダプタ56経由でネットワークに接続されているプロバイダのメールサーバ53に接続する。
(2)パーソナルコンピュータ51内にある電子メールアプリケーションプログラムを起動する。
(3)起動されたアプリケーションプログラムが自動的にメール到着確認処理を起動すると、メールサーバ53にメール到着確認指示が送信される。
(4)メールサーバ53は、メール到着確認指示を受け、メールサーバ内にあるメールボックスから指定された宛先のメールの数および送信元およびメールタイトルなどの情報をメール到着確認指示をしたアプリケーションプログラムに通知する。
(5)ユーザは表示されたメールの読み出しを行い、返答を必要とするメールがあるならば返信メールを送る。」

(周知例2)
G.「【0021】患者リスト生成部11は、読影WS6からネットワーク7を介して患者リスト送付の要求を受信すると、配送制御部8で登録された検査状況ファイルデータ12を参照して、このデータ12の中から配送指示済みで且つ未読影と判断されるデータ12を検索し、この検索したデータ12をネットワーク7を介して読影WS6に送信する。」

(3)対比
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)本願補正発明における「画像サーバ」は、本願明細書の段落【0029】を参照すると、サーバコンピュータと記憶媒体とからなるものであるから、サーバシステムであるといえる。一方、引用例の上記Bの段落【0023】を参照すると、引用例における「文書管理サーバシステム」は、静止画像等のマルチメディアデータを含む文書(マルチメディア文書)を扱うものである。
よって、引用例における「文書管理サーバシステム」は、本願補正発明における「画像サーバ」に相当するものである。

(い)本願補正発明における「表示端末」は、本願明細書の段落【0030】を参照すると、Webブラウザを用いてサーバにアクセスするものであるから、クライアントシステムであるといえる。一方、引用例の上記Bの段落【0024】を参照すると、引用例記載の発明における「文書管理クライアントシステム」は、ユーザからの処理要求や、この処理要求に対応する処理結果の可視表示を行う入出力部を有するものである。
よって、引用例記載の発明における「文書管理クライアントシステム」は、本願補正発明における「表示端末」に相当するものである。

(う)引用例の上記Eの段落【0058】を参照すると、文書管理サーバシステムから文書管理クライアントシステムへ文書を転送することが示されている。ここでいう文書には、静止画像等のマルチメディアデータを含む文書(マルチメディア文書)も含まれることから、引用例記載の発明における「文書管理システム」は、本願補正発明における「画像転送システム」に相当するものである。

(え)引用例記載の発明における「マルチメディア文書」は、本願補正発明における「画像データ」に相当するものである。

(お)引用例記載の発明において、フォルダは、文書を分類して管理するために用いられるものである。そして、引用例の上記Dを参照すると、一つの文書を複数のフォルダに分類するために、文書へのポインタをフォルダに格納することが示されていることから、引用例記載の発明において、フォルダ内に新しい文書へのポインタを追加することは、分類して管理するためのフォルダに、新しい文書を登録しているといえる。
一方、本願補正発明において、新たな画像データを保管することは、新たな画像データを格納し購読可能な状態とすることであるから、新たな画像データを登録することであるといえる。
よって、引用例記載の発明における「ユーザが予め指定した特定のフォルダ内に新しいマルチメディア文書へのポインタが追加された場合にそのことを前記文書管理クライアントシステムに通知する機能」及び「それに伴う処理を行う機能」と、本願補正発明における「新たな画像データが保管された場合に該新たな画像データの保管を表すフラグを設定可能な機能」とは、ともに、「新たな画像データが登録された場合に特定の処理を行う機能」である点で共通するものである。

(か)引用例記載の発明における「特定のフォルダを指定する機能」と、本願補正発明における「所望とするフォルダの購読を指定する機能」とは、ともに、「フォルダを指定する機能」である点で共通するものである。

(き)本願補正発明において、「該フラグが設定されている場合」というのは、「新たな画像データが保管された場合」を意味するものである。
よって、引用例記載の発明における「新しいマルチメディア文書へのポインタが追加されたことをユーザに通知する機能」と、本願補正発明における「該フラグが設定されている場合に、表示端末において新たな画像データの保管の通知および該新たな画像データの取得を行う機能」とは、ともに、「新たな画像データが登録された場合に、表示端末において前記新たな画像データの登録の通知を行う機能」である点で共通するものである。

上記(あ)?(き)の事項を踏まえると、本願補正発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願補正発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「画像サーバと、該画像サーバとネットワークを介して接続された表示端末とを有する画像転送システムにおいて、
前記画像サーバは、画像データを分類して管理する少なくとも1つのフォルダを作成可能な機能、および新たな画像データが登録された場合に特定の処理を行う機能を有し、
前記表示端末は、前記フォルダを指定する機能、および新たな画像データが登録された場合に、前記表示端末において前記新たな画像データの登録の通知を行う機能を有する画像転送システム。」
である点。

(相違点)
相違点1:「フォルダを指定する機能」が、本願補正発明においては、「所望とするフォルダの購読を指定する機能」であるのに対し、引用例記載の発明においては、「特定のフォルダを指定する機能」である点。

相違点2:「新たな画像データが登録された場合」が、本願補正発明においては、「新たな画像データが保管された場合」であるのに対し、引用例記載の発明においては、「新しいマルチメディア文書へのポインタが追加された場合」である点。

相違点3:本願補正発明は、「画像サーバ」に「新たな画像データの保管を表すフラグ」を設定し、「表示端末」は、「画像データの検索を行うときに画像サーバにアクセスして、所望とするフォルダに分類された画像データについての前記フラグの設定の有無を確認」し、「該フラグが設定されている場合に」、「該新たな画像データの取得」を行っているのに対し、引用例記載の発明は、そのようなことを行っていない点。

(4)判断
そこで、上記相違点1?3について検討する。

(相違点1について)
「購読」とは、「書物などを買い求めて読むこと」を意味する単語である。引用例には、文書を購読することについての記載はされていないが、サーバに格納している文書を有料化し、必要な文書を買い求めるようにすることは、ごく普通に行なわれていることであるから、引用例記載の発明において、「所望とするフォルダの購読を指定する」ようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(相違点2について)
情報処理の分野において、データを分類して管理する場合に、データの実体を所定のエリアに移動して管理するのか、データの実体は移動せずにデータへのポインタを所定のエリアに作成して管理するのかは、データを移動するためのコストやデータを参照するためのコストなどを勘案して、適宜選択し得る程度のものにすぎないことから、引用例記載の発明において、新しいマルチメディア文書へのポインタをフォルダに追加することに替えて、新しいマルチメディア文書そのものをフォルダに保管するようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(相違点3について)
周知例1に見られるように、新着メールの確認をするための手順として、パーソナルコンピュータが、メールサーバに対してメール到着確認指示を送信し、メールサーバが、該指示を受けると指定された宛先のメールの数などの情報をパーソナルコンピュータへ通知し、パーソナルコンピュータが、該通知に基づいてメールの読み出しを行うことは、周知技術にすぎない。ここで、上記「指定された宛先のメールの数などの情報」は、新着メールの確認をするための手順の中で通知される情報であるから、該情報は、指定された宛先の「新着メール」の数などの情報を意味するものである。そして、新着メールの確認をするための情報として、新着メールの数に替えて、新着メールの有無を示すフラグを採用することは、必要に応じて適宜なし得る程度のものである。
したがって、サーバに、新着メールが存在することを表すフラグを設定し、クライアントがサーバにアクセスして、指定された宛先についての前記フラグの設定の有無を確認し、該フラグに基づいてメールの読み出しを行うことは、ごく普通になし得ることにすぎないといえる。
また、周知例2に見られるように、送付の要求があった時に、未読影と判断されるデータを検索し、端末に送信することは、周知技術にすぎないことから、引用例記載の発明において、文書管理クライアントシステムへの通知を文書検索時とすることは、当業者が適宜なし得ることである。
よって、引用例記載の発明に、周知例1及び2に見られるような周知技術を参酌して、「画像サーバ」に「新たな画像データの保管を表すフラグ」を設定するようにして、「表示端末」に「画像データの検索を行うときに画像サーバにアクセスして、所望とするフォルダに分類された画像データについての前記フラグの設定の有無を確認」させ、「該フラグが設定されている場合に」、「該新たな画像データの取得」を行わせることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(本願補正発明の作用効果について)
そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記周知技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
よって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成20年2月14日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項6に係る発明は、平成19年11月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項6に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「画像サーバと、該画像サーバとネットワークを介して接続された表示端末とを有する画像転送システムにおいて、
前記画像サーバは、画像データを分類して管理する少なくとも1つのフォルダを作成可能な機能、および新たな画像データが保管された場合に該新たな画像データの保管を表すフラグを設定可能な機能を有し、
前記表示端末は、所望とする前記フォルダの購読を指定する機能、前記画像サーバにアクセスして、前記所望とするフォルダに分類された画像データについての前記フラグの設定の有無を確認する機能、および該フラグが設定されている場合に、前記表示端末において前記新たな画像データの保管の通知および該新たな画像データの取得を行う機能を有することを特徴とする画像転送システム。」

(2)引用例及び周知例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例、原査定の備考欄において周知例として引用された周知例、及び、前置審査において周知例として引用された周知例とその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「画像データの検索を行うときに画像サーバにアクセスして、所望とするフォルダに分類された画像データについてのフラグの設定の有無を確認する機能」の限定を省いて「画像サーバにアクセスして、所望とするフォルダに分類された画像データについてのフラグの設定の有無を確認する機能」としたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知例1,2記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明は、上記特定の限定について参照した周知例2記載の周知技術を参酌するまでもなく、引用例記載の発明及び周知例1記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び周知例1記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-22 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-08-12 
出願番号 特願2002-20061(P2002-20061)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上嶋 裕樹  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 久保 正典
田口 英雄
発明の名称 画像転送システムおよび画像転送方法並びにプログラム  
代理人 佐久間 剛  
代理人 柳田 征史  
代理人 柳田 征史  
代理人 佐久間 剛  

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