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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1229230
審判番号 不服2008-19961  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-06 
確定日 2010-12-22 
事件の表示 特願2004- 94926「携帯情報機器、プログラム書き換え方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月13日出願公開、特開2005-286502〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成16年3月29日に出願したものであって,平成20年6月27日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成20年8月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり,その請求項7に係る発明は,平成20年1月18日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項7】
入力部と,表示部と,外部装置からのデータを受信するデータ受信部と,プログラムを格納したプログラム格納メモリと,一時記憶メモリと,制御部と,電力を供給する電池とを備えた携帯情報機器におけるプログラム書き換え方法であって,
プログラムの書き換え指示を検出したとき,前記電池の電圧値と,この携帯情報機器に設定されている終端電圧より高い値に設定された閾値とを比較し,前記電池の電圧が前記閾値以上でない場合は前記プログラム格納メモリに格納されているプログラムを前記データ受信部で受信したプログラムデータで書き換えることを禁止する,ことを特徴とするプログラム書き換え方法。」(以下,「本願発明」という。)

2 引用発明
これに対して,原審における,平成19年11月13日付けで通知した拒絶の理由に引用した,特開平8-161088号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の記載がある。

(1)引用発明1
(イ)「【0002】
【従来の技術】内蔵電池を用いてハードディスク等の記憶装置に対してアクセスを行なう情報処理装置は,携帯型情報処理装置(例えば,ノート型パソコン,ワープロ,通信端末等)において幅広く用いられている。かかる情報処理装置では,電池の容量が少なくなると,記憶装置へのアクセスが不充分となり,書き込みや読み出しが不正確となるので,電池が一定以下の残容量になった時点で,ハードディスク等のアクセスを不能とするような構成が採られていた。」(2頁1欄)
(ロ)「【0015】
【実施例】次に,本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は本発明による情報処理装置の一実施例を示す構成ブロック図である。
【0016】一次または二次電池としての電池1からの電源は,給電切替部9a?9dを介して媒体11:ハードディスクドライブ(以下,HDDと略称する)11a,フロッピーディスクドライブ(以下,FDDと略称する)11b(以上は機械的な駆動系を有する記憶装置),機械的な駆動系を有さない記憶装置(例えば,記憶保持機能付メモリ,バックアップ電池付SRAM,EEPROM,フラッシュメモリ)11c及びモデム,LANカード等のI/Oインタフェース11dが装着される装着部10a,10b,10c及び10dに選択的に給電される。
【0017】電池残容量検出部2は,電池1からの電圧または電流に基づいて電池1の残容量を算出する。データ記憶部3は,上記媒体に対する書き込み/読み出しデータを記憶するので,通常,メモリにより構成される。データ容量/アクセス時間認識部4は,データ記憶部3から媒体11a?11dに書き込み,転送するデータ,または媒体11c?11dからデータ記憶部3に読み込むデータ量を,書き込みまたは読み出し動作の前に認識するとともに,上記書き込みまたは読み出しに要する時間を,書き込みまたは読み出し動作の前に確認する。
【0018】データ伝達部5は,データ記憶部3に記憶されているデータを媒体11a?11dに書き込むか,媒体11a?11dからのデータをデータ記憶部3に書き込む動作を実行する。媒体種別認識部6は,装着部10a?10dに装着された媒体11a?11dの種別を認識するか,媒体11a?11dの種別が予め定められている装着部10a?10dに媒体が装着されているか否かを認識する。動作入力認識部8は,節電モードやデータの読み出し・書き込み動作等を指示入力する。
【0019】給電状態設定部7は,電池残容量検出部2,データ容量/アクセス時間認識部4,媒体種別認識部6及び動作入力認識部8からの情報を受け,これらの情報に基づいて給電切替部9a?9dを制御し,装着部10a?10dを介しての媒体11a?11dへの給電動作を制御する。尚,図1において,太線ラインは電源ラインを,細線ラインは検出,制御ラインを,点線ラインはデータラインをそれぞれ示す。」(4頁5欄)
(ハ)「【0055】次に,動作制限の節電動作についての実施例を図17のフローチャートを参照しながら説明する。本実施例は,書き込みや読み出し,データの検索や消去等の種類を検出して節電を行なう例である。
【0056】処理が開始されると,動作入力認識部8からの動作入力による節電モードの入力,記憶が行なわれた(ステップS201)後,ユーザの動作入力により動作の入力(データ検索,消去,書き込み,読み出し等)が行なわれ(ステップS202),HDD,FDDのアクセスを制限し(ステップS203),システム電源を遮断する処理(ステップS204)に移行する。尚,ステップS203において,アクセス制限しないときは,ステップS201の処理に戻る。また,ステップS201において,節電モードの入力がなければ,ステップS204の処理に移行する。
【0057】図17のステップS201の処理は,図3と同様な図18のフローチャートに示すように,動作入力認識部8のスイッチ等により,ユーザから節電モードの指示入力が行なわれた(ステップS211)後,節電モードが指示されたか否かを判断し(ステップS212),節電モードのときのみ次の動作入力による節電モードの入力,記憶ルーチンの終了を行ない(ステップS214),節電モードでないときは,システム電源遮断ルーチンへ移行する(ステップS213)。
【0058】図17のステップS203におけるHDD,FDDアクセス制限ルーチンについて図19のフローチャート参照しながら説明する。
【0059】先ず,HDDまたはFDDが接続されているか否かを判断し(ステップS221),どちらも接続されていなければ,ルーチン実行不可能であるから,HDD,FDDアクセス制限ルーチンを終了し(ステップS229),どちらかが接続されていれば,HDDまたはFDDに対する動作入力か否かを判断する(ステップS222)。ここで,HDDまたはFDDに対する動作入力でないと判断されると,上記ステップS229の処理に移行し,HDDまたはFDDに対する動作入力であると判断されると,電池電圧がHDD,FDDアクセス制限電圧V7を下回ったか否かを判断する(ステップS223)。電池電圧がV7を下回っていなければ,ステップS221の処理に戻り,電池の消耗を待ち,V7を下回っていれば,動作入力が検索または消去かを判断する(ステップS224)。
【0060】ステップS224において,動作入力が検索または消去であると判断されると,HDD,FDDに対する動作入力を実行した(ステップS225)後,動作入力が検索または消去でないと判断されると,つまり,データの書き込み,読み出しであるときには,HDD,FDDに対する動作入力を無視(ステップS226)した後に,電池の交換または外部電源の接続がなされたか否かを判断し(ステップS227),接続がなされていれば,メインルーチンへ至り(ステップS228),なされていなければ,HDD,FDDアクセス制限ルーチンを終了する(ステップS229)。
【0061】ステップS224でデータの検索,消去と,書き込み,読み出しの入力があり,ステップS225とS226でデータの検索,消去と,書き込み,読み出しの2つに分かれて実行される。これは,例えば,大容量のデータでは,データの書き込み,読み出しの場合に,ハードディスク,フロッピーディスクが長時間動作することになり,電力消費が大きくなって,電池の残容量が急激に少なくなる。一方,データの検索,消去は幾つかのフラグを書き換えるだけであるため,動作は短時間で済む。したがって,データ量が大きくても小さくとも,検索,消去というのは,ほぼ短時間で終了する。その結果,検索,消去だけは実行を許し,データの書き込み,読み出しは,データ量が多かった場合には時間が長くかかり,例えば,フロッピーだと数十秒乃至は1分近く要することもある。このような動作を行なわせないようにするため,電池の残容量を保持するために書き込み,読み出しを禁止している。
【0062】図17のシステム電源遮断ルーチンは,図8と同様な図20のフローチャートに示すように,電池が消耗され,電池電圧がシステム電源遮断電圧V4を下回ったか否かを判断し(ステップS231),下回るのを待ってシステム電源を遮断する(ステップS232)。」(7頁11?12欄)

上記(イ)に開示された従来の技術としての携帯型情報処理装置には,装置自体の基本構成として,上記(ロ)に記載されたものと同様の構成を備えているものということができるから,入力部,表示部,外部装置からのデータを受信するデータ受信部,一時記憶メモリ,制御部等は当然に備えている。また,「書き込みや呼び出し」の対象は当然データであり,「書き込みや呼び出し」は何らかの指示を検出したときに実行されるものであり,「アクセスを不能にすること」は書き込みを禁止することである。
したがって,引用文献1には,従来技術として,
「入力部と,表示部と,外部装置からのデータを受信するデータ受信部と,データを格納したハードディスク等と,一時記憶メモリと,制御部と,電力を供給する電池とを備えた携帯型情報処理装置におけるデータ書き込み方法であって,
データ書き込みの指示を検出したとき,電池の容量が少なくなった場合はデータを書き込むことを禁止するデータ書き込み方法。」の発明(以下,「引用発明1」という。)が開示されている。

(2)引用発明2
原審における,拒絶理由通知で引用した,特開2004-15249号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに以下の記載がある。

(ニ)「【0002】
【従来の技術】
携帯端末である携帯電話機の機能は,近年,飛躍的に増加しており,そのために,それを実現するソフトウェアは急激に大規模化している。この様な,ソフトウェアの大規模化に伴ってソフトウェアの修正が必要になったり,また,機能向上に伴ってソフトウェアのバージョンアップが必要になってくる。携帯電話機の出荷後に,この様なソフトウェアの修正やバージョンアップの必要性が生ずると,携帯電話機を使用するユーザに対するソフトウェアの配信を行うことが要求される。
【0003】
図5はこの場合の修正ソフトウェアの配信方式を説明するための図である。図5を参照すると,無線基地局7を介して各携帯電話機5へ修正ソフトウェア1が,無線技術を用いて配信され,携帯電話機5内において,既に搭載されているソフトウェアが,この配信された修正ソフトウェア1により書き換えられることになる。」(2頁45行?3頁7行)

上記引用文献2において「ソフトウェア」はプログラムデータとして配信されているから,上記引用文献2には,携帯端末等の携帯情報機器において,「格納されているプログラムデータを受信したプログラムデータで書き換える発明」(以下,「引用発明2」という。)が示されている。なお,特開平11-239094号公報等にも同様の技術が開示されていることからも明らかなように,周知発明といえるものでもある。

(3)周知技術
原審における,拒絶査定で周知例として例示した特開平9-330277号公報(以下,「周知例」という。)には,図面とともに以下の記載がある。

(ホ)「【0030】実施の形態1.図1は,本発明に係るディスクキャッシュシステムにおける停電処理方式の一実施の形態を示した構成図である。本実施の形態は,ディスク制御装置10の内部にバッテリーユニットを設けてバッテリー・バックアップする方法を用いる。ディスク制御装置10は,従来と同様のチャネルアダプタ11,ディバイスアダプタ12,停電時において少なくともキャッシュメモリ14に電力を一時的に供給するバックアップ用電力供給手段としてのバッテリーユニット18及び上位装置20と磁気ディスク装置30との間で転送されるデータを一次記憶するディスクキャッシュであるキャッシュメモリ14を有している。本実施の形態におけるディスク制御装置10は,更に,リソースマネージャ113,フラッシュメモリ15,電圧チェック回路16及びスイッチ回路17を設けた構成を有する。フラッシュメモリ15は,長期の給電停止に備え,停電時にキャッシュメモリ14に記憶されたデータが待避のために書き込まれる不揮発性記憶手段である。リソースマネージャ113は,キャッシュメモリ14に記憶されるデータの属性の管理を行うデータ属性管理手段であり,キャッシュメモリ14に記憶されているライトデータ属性のデータのフラッシュメモリ15へのデータ待避処理を行うデータ待避手段である。もちろん,従来と同様のキャッシュメモリの管理や磁気ディスク装置30へのデータ転送制御などの機能も有している。電圧チェック回路16は,バッテリーユニット18から電力の供給を受けて停電時においても動作し,バッテリーユニット18の残電力量を監視する電力量監視手段,また,停電時におけるキャッシュメモリ14が記憶するライトデータ属性のデータの数量に基づいて,データ待避処理の実行に必要な待避電力量を求める待避電力量算出手段として動作し,データ待避の指示を行う。スイッチ回路17は,電圧チェック回路16からの指示を受けリソースマネージャ113及びフラッシュメモリ15へバッテリーユニット18からの給電を制御するスイッチ手段である。
【0031】本実施の形態において特徴的なことは,停電時においてバッテリーユニット18の残電力量を計測し,その残電力量がデータ待避処理の実行に必要な待避電力量以下となった時点でデータ待避処理を開始することである。つまり,停電が発生した時点でも即座にデータ待避処理すなわちキャッシュメモリ14の内容のバックアップを開始しないので,瞬時の停電の場合でも元のシステム処理へ直ちに移行することができる。」(5頁7?8欄)

(へ)「【0037】以上の基本動作中に一次商用電源からの電力供給の停止が発生すると,図4に示した停電時における処理に移行する。図4において,停電が発生すると(ステップ110),バッテリーユニット18は,直ちにキャッシュメモリ14に対して給電を開始する(ステップ111)。これにより,一次商用電源の供給が停止されてもキャッシュメモリ14のデータは一定時間そのままの状態で保持される。図5は,キャッシュメモリ14に記憶されているライトデータ属性のデータの待避処理にかかるバックアップ時間とバッテリーユニット18の放電電圧との関係を示した図であるが,本実施の形態においては,停電が発生しても即座にデータ待避処理を行わずに,バッテリーユニット18の放電電圧が充電時における電圧Vfから待避開始電圧Vsまで降下する間(Tmemory)は,一次商用電源の供給が停止されてもキャッシュメモリ14のデータはすべてそのままの状態で保持しておくことを特徴としている。待避開始電圧Vsの値については後述する。
・・・
【0039】一方,一次商用電源が復旧していない場合には,電圧チェック回路16がバッテリーユニット18の出力電圧を計測し,図5に示した待避開始電圧Vsまで降下したかを監視する(ステップ113)。待避開始電圧Vsとは,キャッシュメモリ14に書き込まれているライトデータ属性の全データのフラッシュメモリ15への待避処理を行うのに足りる電力の限界電圧(待避電力量)である。従って,バッテリーユニット18の出力電圧が電圧Vsまで降下する間は,データ待避処理を開始しなくてもよいことになる。本実施の形態においては,保証限界電圧Veを設定しているので,キャッシュメモリ14に記憶されているライトデータ属性のデータに基づいて算出された計算値に保証限界電圧Veを加えた値を待避開始電圧Vsとしている。このように,本実施の形態においては,キャッシュメモリ14のデータ待避先としてフラッシュメモリ15を用いたので,データ待避処理に要するライトバック時間は,磁気ディスク装置30に書き込むより短くすることができる。また,データ待避処理に要する電力量も削減することができる。
【0040】ここで,電圧チェック回路16が計測しているバッテリーユニット18の出力電圧が電圧Vsまで降下したかを判定し(ステップ114),まだ限界まで降下してない場合にはステップ112へ戻り,一次商用電源の復旧を待つ。バッテリーユニット18の残電力量が電圧Vsまで降下したとき,電圧チェック回路16は,スイッチ回路17に対して起動通知を発行して起動させる(ステップ115)。」(6頁9?10欄)

したがって,上記周知例には,磁気ディスク装置のディスクキャッシュのデータの待避処理に関して,「キャッシュメモリ14に書き込まれているライトデータ属性の全データのフラッシュメモリ15への待避処理を行うのに足りる電力の限界電圧(待避電力量)である待避開始電圧になるとキャッシュメモリからフラッシュメモリへの待避処理を行う」技術が示されており,フラッシュメモリ15へのデータの書き込みに必要な電力量を,書き込みされるデータの数量に応じて,電池の放電特性から逆算して待避開始電圧という閾値で決める技術が開示されており,また,前記磁気ディスク装置のディスクキャッシュ以外にも,例えば情報処理装置に関して,特開平6-175938号公報(段落【0023】?【0026】)に,また,例えば,メモリそのもののバックアップに関して,特開平1-241653号公報(特許請求の範囲)等にも同様の技術が開示されていることから,
「情報機器におけるデータ書き込み方法であって,
前記電池の電圧値と,書き込みされるデータの数量に応じた閾値とを比較し,前記電池の電圧が前記閾値になるとデータを書き込む」技術は周知技術(以下,「周知技術」という。)である。

4 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
本願発明の「プログラム」はデータの一種である。
引用発明1の「ハードディスク等」と,本願発明の「プログラム格納メモリ」は,共にデータを格納する「記憶装置」で一致する。
引用発明1の「携帯型情報処理装置」は,本願発明の「携帯情報機器」に相当する。
ハードディスク等における「書き込み」は,通常,データを新たに書き込むことの他に新たなデータへ書き換えることも意味しているから,引用発明1の「書き込み」は本願発明の「書き換え」に相当する。
本願発明の「電池の電圧値と,この携帯情報機器に設定されている終端電圧より高い値に設定された閾値とを比較し,前記電池の電圧が前記閾値以上でない場合」における,「電池の電圧値」は残っている電池の容量の指標を意味しているから,引用発明1の「電池の容量が少なくなった場合」に含まれるものである。

したがって,両者は,
「入力部と,表示部と,外部装置からのデータを受信するデータ受信部と,データを格納した記憶装置と,一時記憶メモリと,制御部と,電力を供給する電池とを備えた携帯情報機器におけるデータ書き換え方法であって,
データの書き換え指示を検出したとき,電池の容量が少なくなった場合はデータの書き換えを禁止するデータ書き換え方法。」である点で一致し,以下の点で相違する。
[相違点1]
データとして,本願発明は「プログラム(データ)」を対象としているのに対し,引用発明1はプログラム(データ)を対象としているのか不明である。
[相違点2]
記憶装置が,本願発明は「プログラム格納メモリ」であるのに対し,引用発明1は「ハードディスク等」である点。
[相違点3]
「電池の容量が少なくなった場合」について,本願発明は「電池の電圧値と,この携帯情報機器に設定されている終端電圧より高い値に設定された閾値とを比較し,前記電池の電圧が前記閾値以上でない場合」と規定されているが,引用発明1はそのような構成がない。

5 当審の判断
[相違点1]について検討する。
引用文献1は,携帯型情報処理装置の具体例として,「ノート型パソコン,ワープロ,通信端末等」が挙げられており,これらの装置において,プログラムデータの受信は極めて普通のことであり,事実,同様の装置である引用発明2は,プログラムデータの受信,プログラムデータで書き換えに関したものであるから,引用発明1のデータを「プログラム(データ)」とする程度のことは,単なる選択の域を出ない。
[相違点2]について検討する。
「ハードディスク等」にプログラムを格納することは最も普通に行われていることであり,また,同様の装置である引用発明2には,「プログラム格納メモリ」を用いて,プログラムデータ,あるいは受信したプログラムデータでの書き換えるがなされているから,引用発明1の「ハードディスク等」を,引用発明2中の「プログラム格納メモリ」に変更することは,当業者が容易に想到し得ることである。
[相違点3]について検討する。
上記周知技術によれば,データ書き込みに際しては,書き込みされるデータの数量に応じた閾値以下になる前に,データの書き込みを開始しており,このことを逆に言えば,閾値以下になると,書き込みが正常に行えないことを示している。
一方,電池の容量の評価に,その電池の電圧を利用することは,引用文献1の摘記事項(ロ)(段落【0017】),あるいは周知例等に開示されているように,もっと標準的な手法である。
してみると,引用発明1の「電池の容量が少なくなった場合」を,より具体化するために,標準的な,電池の電圧を利用した評価手法を採用し,その上で,「書き込みされるデータの数量に応じた閾値」の点も考慮して,「終端電圧より高い値に設定された閾値」としても,これらの技術的事項は前記周知技術を加味すれば,当然に導きうる事項でしかない。したがって,引用発明1の「電池の容量が少なくなった場合」を「電池の電圧値と,この携帯情報機器に設定されている終端電圧より高い値に設定された閾値とを比較し,前記電池の電圧が前記閾値以上でない場合」と規定することは,当業者であれば,容易になし得る設計的な具体化にすぎない。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明1,2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

6 むすび
したがって,本願発明は,引用発明1,2及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-06 
結審通知日 2010-09-28 
審決日 2010-10-13 
出願番号 特願2004-94926(P2004-94926)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金沢 仁稲葉 和生  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 松元 伸次
萩原 義則
発明の名称 携帯情報機器、プログラム書き換え方法、及びプログラム  

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