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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  A61C
管理番号 1229231
審判番号 無効2009-800182  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-08-20 
確定日 2010-12-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第3442359号発明「携帯型歯面爪面清掃研磨器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯の概要
特許第3442359号(以下、「本件特許」という。)に係る発明についての出願は、平成12年 9月27日に特許出願され、平成15年 6月20日に特許の設定登録がなされたものであって、これに対し平成21年 8月20日付けで請求人から本件無効審判の請求書が提出され、平成21年11月13日付けで被請求人から審判事件答弁書が提出された。
その後、請求人から平成22年 1月19日付けで口頭審理陳述要領書が提出され、被請求人からも平成22年 2月 9日付けで口頭審理陳述要領書が提出され、同日に口頭審理が実施されたものである。

2.本件特許発明
本件特許の請求項1?請求項4、請求項6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明4」、「本件特許発明6」という。)は、本件特許の特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?請求項4、請求項6に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 携帯されるとともに、研磨の使用時に手で把持される本体(ボディ)と、
本体に内蔵され、バッテリを収容するバッテリホルダと、
本体に内蔵され、そのバッテリにより駆動されるモータと、
前記本体に形成され、そのモータにより回転駆動される回転出力部を含む連結部と、
その連結部に着脱可能に装着されるとともに、研磨対象面に接触しつつ回転する研磨ロータを備えたヘッド部材と、
前記本体に形成され、前記連結部から取り外した前記ヘッド部材を格納する格納スペースと、
その格納スペースに格納される前記ヘッド部材を外側から被い隠すように前記本体に着脱可能に装着されるカバーと、
を含むことを特徴とする携帯型歯面爪面清掃研磨器。
【請求項2】 携帯されるとともに、研磨の使用時に手で把持される本体(ボディ)と、
本体に内蔵され、バッテリを収容するバッテリホルダと、
本体に内蔵され、そのバッテリにより駆動されるモータと、
前記本体に形成され、そのモータにより回転駆動される回転出力部を含む連結部と、
その連結部に着脱可能に装着されるヘッドアーム、ヘッドアームの先端側に位置して研磨対象面に接触しつつ回転する研磨ロータ、その研磨ロータに前記連結部の回転出力部から回転を伝達する回転伝達機構を備えたヘッド部材と、
前記本体に形成され、前記連結部から取り外した前記ヘッド部材を格納する格納スペースと、
その格納スペースに格納された前記ヘッド部材を外側から被い隠すように前記本体に着脱可能に装着されるカバーと、
を含むことを特徴とする携帯型歯面爪面清掃研磨器。
【請求項3】 前記本体の格納スペースには、格納すべき前記ヘッド部材を着脱可能に固定するヘッドホルダが形成されている請求項1又は2に記載の携帯型歯面爪面清掃研磨器。
【請求項4】 前記ヘッドアーム及び前記本体の連結部は、その連結部に対するヘッドアームの取付の回転位相が、予め定められた複数の角度位置で選択可能、もしくは任意の角度位置で調節可能な連結構造とされ、その角度位置の選択もしくは調節により前記本体に対する前記研磨ロータの向きが変更される請求項2又は3に記載の携帯型歯面爪面清掃研磨器。
【請求項6】前記研磨ロータの回転数が500?2000rpm、回転トルクが8?30mN・m(ミリニュートン・メータ)の範囲になるように、前記モータの出力、回転数及び前記研磨ロータへの回転伝達系の減速比又は増速比の相互関係が規定されている請求項1ないし5のいずれかに記載の携帯型歯面爪面清掃研磨器。」

なお、本件特許の請求項5に係る発明は無効審判の対象とされていない。

3.請求人の主張
請求人は、本件特許発明1?本件特許発明4、本件特許発明6の特許を無効にするとの審決を求め、その理由として概ね次のように主張するとともに、証拠方法として本件特許発明1?本件特許発明4、本件特許発明6についての特許出願(特願2000-294661号。以下、「本件出願」という。)の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証?甲第6号証を提出している。

本件特許発明1?本件特許発明4、本件特許発明6は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、又は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許発明1?本件特許発明4、本件特許発明6の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。

[証拠方法]
甲第1号証: 特開平9-252842号公報
甲第2号証: 特開平8-80220号公報
甲第3号証: 実用新案登録第2524398号公報
甲第4号証: 登録実用新案第3023607号公報
甲第5号証: 実願昭63-142909号(実開平2-61213号)のマイクロフィルム
甲第6号証: 特表平11-513922号公報
[参考資料]
米国特許第1489971号明細書及びその抄訳
登録実用新案第3037544号公報

4.被請求人の主張
被請求人は、本件無効審判請求は成り立たない、審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求め、概ね次のように主張している。
本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
5.請求人の主張する無効理由に係る刊行物に記載されている事項及び発明

(1)甲第1号証
本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証には、次の(1-a)?(1-f)の事項が記載又は図示されている。

(1-a)「【発明の属する技術分野】本発明は、歯ブラシが軸を中心として所定の揺動角で揺動運動するようにした電動歯ブラシに関する。
【従来の技術】一般に、電動歯ブラシには、歯ブラシ部分が歯面に対して回転するもの、歯の整列方向に往復動するもの、あるいはブラシの毛を小径の円柱状に束ねた小ブラシを歯ブラシの基板に複数個設け、これら小ブラシをそれぞれ独立に回転させるようにしたもの等がある。
【発明が解決しようとする課題】しかし、これら電動歯ブラシは、一方向に歯を磨いたり、反転しつつ歯を磨いたりするものであり、歯と歯茎の部分を同時に磨く虞れがあるので、最も磨く必要のある歯と歯の間を確実に磨くことができず、磨き易い所のみを磨く傾向があり、しかも磨き過ぎにより歯や歯茎を痛める虞れもある。
また、歯ブラシの基板に複数の小ブラシを設けた電動歯ブラシは、歯と歯の間を比較的確実に磨くことができるが、小ブラシを基板の孔から突出し、該基板の下部に多数の歯車を設けて各小ブラシを回転させるようにしているので、歯磨後に洗浄を怠ると、基板に開設された孔から歯車収納部に水あるいは歯磨剤等が浸入し、ここで歯磨剤等が固化し、回転不能という事態に陥りやすい。
いずれにしても、従来の電動歯ブラシは、歯の理想的な磨き方とは相違し、歯自体のみでなく、歯茎を痛め、歯と歯の間等の歯后の除去も不十分なものとなっている。
ここにおいて、歯の理想的な磨き方とは、上の歯は、歯ブラシを上方から下方に向けて掻き下げるように揺動させ、下の歯は、歯ブラシを下方から上方に向けて掻き上げるように揺動させて歯と歯の間に存在する歯后あるいは食べ滓等の異物を十分除去することである。このような理想的な磨き方をすれば、歯自体のみでなく、歯茎を痛めることはなく、歯と歯の間等の歯后も除去できることから、虫歯等になりにくく、生涯自己の歯を使用して、おいしくものを噛むことができる。
しかし、このような動作を歯ブラシにさせようとすれば、機構が複雑となるのみでなく、耐久性も低下し、コストの高いものとなる虞れがある。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたもので、水や歯磨剤等に対するシール性も高く、簡単な構成で歯の理想的な磨き方を実現できる、コスト的にも優れた電動歯ブラシを提供することを目的とする。」(段落【0001】?【0008】)
(1-b)「【課題を解決するための手段】上述した目的を達成するための請求項1に記載の発明は、モータにより駆動される原動軸と、この原動軸により駆動される従動軸と、この従動軸に軸部が着脱自在に連結される歯ブラシと、該歯ブラシのブラシ面を歯の整列方向に沿うように歯に当てた状態で歯ブラシが該歯ブラシの軸を中心として所定の揺動角で間欠的に揺動するように前記原動軸の回転を前記従動軸に変換する変換機構とを有してなる電動歯ブラシにおいて、前記変換機構は、前記原動軸に対し偏心して設けられた従動軸と、これら原動軸と従動軸のいずれか一方に取付けられた突部を有する円盤部材と、前記原動軸と従動軸のいずれか他方に設けられ前記突部と所定範囲のみ係合する係合部材と、当該係合部材と前記突部の係合が外れると前記係合部材を元の位置の復帰させるばねとを有することを特徴とする。
このようにすれば、歯ブラシを歯に当接するのみで、例えば上の歯に対しては、歯ブラシを上方から下方に向けて掻き下げるように揺動し、下の歯に対しては、歯ブラシを下方から上方に向けて掻き上げるように揺動することになり、歯と歯の間に存在する異物を確実に除去することができる理想的な歯の磨き方を実現できることになる。
しかも、原動軸の回転を簡単な機構で従動軸の揺動運動に変換することができ、耐久性も問題がなく、コスト的にも優れたものとなる。
請求項2に記載の従動軸と歯ブラシとの連結は、モータが収納された本体に下端が螺合され先端から歯ブラシが内部に挿入される先端ハウジング内に、軸受により回動可能に支持された支持筒を設け、変換機構から突出された前記従動軸の先端と、前記歯ブラシ側から突出された軸部の先端とを前記支持筒内に軸方向に伸延して形成された中心孔に挿入することにより連結するようにしたことを特徴とする。
このようにすれば、使用済みの歯ブラシと新規な歯ブラシとの交換を簡単に行なうことができ、また、軸受により支持筒を回動可能に支持するので、原動軸の回転を従動軸の間欠的な揺動運動に円滑に変換することができ、装置全体の運転が円滑で静かなものとなる。」(段落【0009】?【0013】)
(1-c)「図1において、本実施の形態に係る電動歯ブラシは、モータM及び電池Bが収納された本体1の上端に、先端ハウジング2の下端が螺合され、この先端ハウジング2には歯ブラシTを取付けた状態でキャップ3により覆うことができるようになっている。
この先端ハウジング2内には、大径開口部4と小径開口部5が形成され、大径開口部4には後述の変換機構13を支持する内体6が収納され、また小径開口部5には歯ブラシTが内部に挿入される支持筒7が回転可能に設けられている。
・・・
従動軸10とモータMより突出された原動軸12との間には、変換機構13が設けられている。つまり、歯ブラシTのブラシ面を歯の整列方向に沿うように歯に当てた状態で歯ブラシTが該歯ブラシの軸を中心として所定の揺動角θで間欠的に揺動する運動に変換するものである。」(段落【0019】?【0022】)
(1-d)「【発明の効果】以上説明したように、本発明の電動歯ブラシによれば、歯ブラシのブラシ面が歯の整列方向に沿うように歯ブラシを歯に当てた状態で、歯ブラシが所定角度で間欠的に揺動するので、理想的な歯磨きが可能となる。・・・
従動軸と歯ブラシとの連結も支持筒内に両者を挿入することにより行ない、この支持筒を軸受により支持するので、使用済みの歯ブラシと新規な歯ブラシとの交換が容易で、原動軸と従動軸の回転が円滑で、静かな運転が可能となり、連結状態も強固となる。・・・」(段落【0048】?【0050】)
(1-e)【図1】は、本発明の実施の形態を示す断面図である。(【図面の簡単な説明】参照)
(1-f)【図2】は、同実施の形態の分解斜視図である。(【図面の簡単な説明】参照)

上記の記載事項及び図示事項から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「モータM及び電池Bが収納された本体1の上端に、先端ハウジング2の下端が螺合され、この先端ハウジング2に歯ブラシTを取付けた状態でキャップ3により覆うことができる電動歯ブラシにおいて、
モータMにより駆動される原動軸12と、この原動軸12により駆動される従動軸10と、この従動軸10に軸部が着脱自在に連結される歯ブラシと、該歯ブラシのブラシ面を歯の整列方向に沿うように歯に当てた状態で歯ブラシTが該歯ブラシTの軸を中心として所定の揺動角θで間欠的に揺動するように原動軸12の回転を従動軸10に変換する変換機構13とを有し、
従動軸10と歯ブラシTとの連結は、先端ハウジング2内に設けられた支持筒7内に従動軸10と歯ブラシTを挿入することにより行い、
歯ブラシを歯に当接するのみで、上の歯に対しては、歯ブラシを上方から下方に向けて掻き下げるように揺動し、下の歯に対しては、歯ブラシを下方から上方に向けて掻き上げるように揺動することになり、歯と歯の間に存在する異物を確実に除去する歯磨きができる電動歯ブラシ。」

(2)甲第2号証
本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第2号証には、次の(2-a)?(2-c)の事項が記載又は図示されている。

(2-a)「この電動歯ブラシ装置は、電動歯ブラシ1 と、充電器2 を内蔵した収納ケース3 とから構成されている。
電動歯ブラシ1 は、一端側面にブラシ11が植設された歯ブラシ体12と、一端にブラシ体12が着脱自在に装着される駆動軸13を有し他端に充電器2 に電気的に接続し得る被充電側接続部14を有した長尺の駆動本体15とから構成されている。駆動本体15の内部には、駆動軸13を軸線回りの一定角度内で往復回転運動したり軸線方向に往復直線運動する駆動部16と、駆動部16に電気を供給する蓄電池(二次電池)等の被充電部17とが収容されている。」(段落【0014】?【0015】)
(2-b)「一方、収納ケース3 は、一端面に開口部を有した大略矩形状の箱体部31と、開口部を開閉するよう箱体部31に枢着した蓋部32とから構成されており、箱体部31の内部には、2個の歯ブラシ体12と駆動本体15とが所定の箇所に収納できるようになっている。」(段落【0017】)
(2-c)「・・・電動歯ブラシ1 を歯ブラシ体12と駆動本体15とに分割してそれぞれを箱体部31の所定の箇所に収納する・・・」(段落【0019】)

(3)甲第3号証
本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第3号証には、次の(3-a)?(3-b)の事項が記載又は図示されている。

(3-a)「前記筒状容器11内には、歯ブラシ22と歯磨チューブ32が収容できるように形成してある。」(第2頁第4欄第41?42行)
(3-b)「本実施例では、歯ブラシ22を使用しない場合には、第2図に示すように筒状容器11内に歯ブラシ22と歯磨チューブ32とをコンパクトに収納することができる。」(第2頁第4欄第50行?第3頁第5欄第2行)

(4)甲第4号証
本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第4号証には、次の(4-a)?(4-e)の事項が記載又は図示されている。

(4-a)「次に図1乃至図4を参照して携帯時の作用を説明する。
まず、ブラシ体3のブラシ部31を容器体5内に収納するようにしてブラシ体3の周溝35を容器部51の欠切部55aへ挿入する。この状態で蓋部52を閉じることにより、蓋部52側の欠切部55bが容器部51側の欠切部55aと合致して係合孔55が周溝35と係合する。また、蓋部52を閉じたときには嵌合突起部53が嵌合受部54に嵌合して容器部51と蓋部52が確実に嵌着されるので、多少の衝撃を受けた場合であっても蓋部52の開放を防止することができる。これにより、ブラシ体がほぼ密閉状態で容器体内に収容されるので、ブラシ体を清潔に保つことができる。
以上のごとく、その断面形状が矩形状若しくは楕円状に形成された周溝35が同一形状の係合孔55と係合するので、ブラシ体3の回転を確実に防止することができる。このようして、ブラシ体3のブラシ部31を容器体5内に収納した状態では、ブラシ体3の嵌合突起部36のみが容器体5の外側に突出することになる。」(段落【0011】)
(4-b)【図1】は、本考案に係る実施例の斜視図である。(【図面の簡単な説明】参照)
(4-c)【図2】は、ブラシ体に対するキーホルダー付マスコット体の取り付けを示した説明図である。(【図面の簡単な説明】参照)
(4-d)【図3】は、店頭に展示される場合の包装状態を示した説明図である。(【図面の簡単な説明】参照)
(4-e)【図4】は、携帯時の外観を示した斜視図である。(【図面の簡単な説明】参照)

(5)甲第5号証
本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第5号証には、次の(5-a)?(5-d)の事項が記載又は図示されている。

(5-a)「歯ブラシ長が凡そ6cm程度で毛先反対側から凡そ1cm程度に係止用の張出突起を設けしめてなる請求項1記載の歯磨きセット」(第1頁第10?13行)
(5-b)「第2図は使用状態図であつて、Aは上記各部品を握り手筒体1内へ収納して携帯に便ならしめた格納状態図、Bは歯ブラシ2を筒体1内から取出すと共に歯ブラシ2を先端に取付け、また筒体1の栓体4を外して歯みがきチユーブ3を取出し、該チユーブ3内のクリームgを歯ブラシ2に塗布した使用状態図である。」(第3頁第7?14行)
(5-c)「・・・握り手筒体内に歯ブラシや歯みがきクリームなどを収納した構成となさしめた・・・」(第4頁第11?13行)
(5-d)第1図は分解図(「図面の簡単な説明」参照)

(6)甲第6号証
本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第6号証には、次の(6-a)?(6-d)の事項が記載又は図示されている。

(6-a)「本発明は、電動モータを収容するハンドルを備え、前記電動モータに接続され、駆動され、ブリスタルヘッドが備えられたブラシアタッチメントに結合可能なシャフトを備えた電動歯ブラシに関し、ブリスタルヘッドは、軸を中心として回転し、ブリスタルヘッドの揺動(oscillating)や連続回転運動を発生させる。」(第7頁第3?6行)
(6-b)「歯磨き中、ブラシアタッチメントの当該部分は、練り歯磨き、唾液や水により貫通され、機械的可動部の相対的に早期磨耗に導くのは、特に、研磨剤粒子を有する練り歯磨きである。」(第8頁第4?6行)
(6-c)「大体において、分かってきているのは、ストローク運動および回転運動の、そのような周波数の差が、著しくユーザの歯における洗浄効果を改善するという点である。これは、一方で、ブリスタルヘッドのストローク運動の高い周波数が、ブリスタルの突き掘り運動を強め、そのため、ユーザの歯の表面から一段と高められたプラークの緩みを生み出すせいである。他方では、ふき取り動作(wiping motion)は同一の高い周波数では行われないが、そのため、歯の表面にわたるブリスタルの速すぎるふき取りは避けられる。その代わり、ふき取り動作は、低い周波数で行われ、それが、歯の表面から緩んだプラークの積極的除去を許容し、実際、追加プラークの緩みを助長する。従って、ブリスタルヘッドのストローク運動の高い周波数は、ユーザの歯の表面からプラークを取り易くする点で有利な効果を有するが、ブリスタルヘッドの回転運動の低い周波数は、より多くのプラークを取り易くすることに加え、ふき取りにより緩んだプラークの積極的除去を確実にする。」(第11頁第3?15行)
(6-d)「図1から図3の電動歯ブラシ1のスイッチが入れると、電動モータ8のモータシャフト31は回転運動に設定される。四節リンク30により、この連続した回転は、軸21回りのシャフト20の交互回転運動へと変換される。ブラシアタッチメント3が取り付けられると、この交互回転運動はベベルギアセグメント28,29により、ブリスタルヘッド26へと伝達され、そのため、軸27回りの同様の交互回転運動49に転化する。」(第23頁第2?7行)

6.当審の判断
(1)本件特許発明1について
(1-1)甲1の発明との対比
(ア)本件特許発明1と甲1の発明とを対比すると、甲1の発明の「電池B」は本件特許発明1の「バッテリ」に相当し、以下同様に、「本体1」及び「先端ハウジング2」は「本体」に、「モータM」は「モータ」に、「歯ブラシT」は「ヘッド部材」に、「キャップ3」は「カバー」に、それぞれ相当する。
そして、甲1の発明の「本体1」が「携帯されるとともに、使用時に手で把持される」ことは明らかであって、「本体1にモータM及び電池Bが収納され」ることから、甲1の発明は、「本体に内蔵され、電池B(バッテリ)を収容するバッテリホルダ」を有するとともに、「モータM」は「本体に内蔵され、そのバッテリにより駆動される」といえる。
また、甲1の発明の「従動軸10」の「揺動運動」は、「モータM」の「出力」といえるとともに、甲1の発明の「従動軸10」及び「支持筒7」は、「モータにより駆動される『出力部』を含む『連結部』」を構成するから、甲1の発明の「従動軸10」及び「支持筒7」と本件特許発明1の「連結部」とは、「本体に形成され、そのモータにより駆動される出力部を含む連結部」である点で共通する。
さらに、甲1の発明の「電動歯ブラシ」による「歯磨き」は、歯面を清掃するものであるから、本件特許発明1の「携帯型歯面爪面清掃研磨器」と甲1の発明の「電動歯ブラシ」とは、「歯面の清掃」で「使用」される「携帯型歯面清掃器」である点で共通する。
加えて、甲1の発明の「キャップ3」は、「歯ブラシT」(ヘッド部材)を先端ハウジング2内の「支持筒7」(連結部)に取付けた状態で覆うものだから、本件特許発明1の「カバー」と甲1の発明の「キャップ3」とは、「ヘッド部材を外側から被い隠すように前記本体に着脱可能に装着されるカバー」である点で共通する。

ここで、本件特許発明1の用語に従えば、両者は、
「携帯されるとともに、使用時に手で把持される本体(ボディ)と、
本体に内蔵され、バッテリを収容するバッテリホルダと、
本体に内蔵され、そのバッテリにより駆動されるモータと、
前記本体に形成され、そのモータにより駆動される出力部を含む連結部と、その連結部に着脱可能に装着されるヘッド部材と、
前記ヘッド部材を外側から被い隠すように前記本体に着脱可能に装着されるカバーと、
を含む携帯型歯面清掃器。」
である点で一致し、次の相違点1a、相違点1bで相違している。

[相違点1a]
本件特許発明1では、「歯面爪面」の「研磨」に「使用」される「歯面爪面清掃研磨器」が、「前記本体に形成され、そのモータにより回転駆動される回転出力部を含む連結部と、その連結部に着脱可能に装着されるとともに、研磨対象面に接触しつつ回転する研磨ロータを備えたヘッド部材と」を含むのに対して、甲1の発明では、「歯磨き」に使用される「電動歯ブラシ」が、「歯ブラシTのブラシ面を歯の整列方向に沿うように歯に当てた状態で歯ブラシTが該歯ブラシTの軸を中心として所定の揺動角θで間欠的に揺動するようにモータMにより駆動される原動軸12の回転を従動軸10に変換する変換機構13とを有し、従動軸10と歯ブラシTとの連結は、先端ハウジング2内に設けられた支持筒7内に従動軸10と歯ブラシTを挿入することにより行い、歯ブラシを歯に当接するのみで、上の歯に対しては、歯ブラシを上方から下方に向けて掻き下げるように揺動し、下の歯に対しては、歯ブラシを下方から上方に向けて掻き上げるように揺動することになり、歯と歯の間に存在する異物を確実に除去する歯磨きができる」点。

[相違点1b]
本件特許発明1では、「カバー」が、「前記本体に形成され、前記連結部から取り外した前記ヘッド部材を格納する格納スペースと、その格納スペースに格納された前記ヘッド部材を外側から被い隠すように前記本体に着脱可能に装着される」のに対して、甲1の発明では、「キャップ3」が、「歯ブラシTを先端ハウジング2内に設けられた支持筒7に取付けた状態で覆う」点。

(イ)上記の点につき、請求人は、以下のように主張する。
i)モータの回転運動をそのまま回転運動として伝えることは本件特許の出願前において極めて常識的なことであったことを勘案すると、モータMの回転運動を、変換機構13という一工夫をして、揺動運動というかたちで歯ブラシTに伝えている甲第1号証では、その前提としてモータMの回転運動を歯ブラシT側に伝えるという技術、つまり本件特許発明1の「前記本体に形成され、そのモータにより回転駆動される回転出力部を含む連結部」に相当する構成が開示されている。
ii)歯ブラシと研磨ロータは、ともに歯を清掃するツールにすぎず、ブラシ以外の材料を使用し歯面に接触しつつ回転運動するものが本件特許出願前公知であることを勘案すると、甲第1号証には、「研磨ロータを備えたヘッド部材を含む携帯型歯面爪面清掃研磨器」に相当する構成が開示されている。
iii)甲第1号証のキャップ3は、本体側に装着された歯ブラシTを覆い、かつ甲第1号証の図1から明らかなように、本体側との間に、外した歯ブラシTを収容し得るスペースを形成しているから、甲第1号証には、「取り外したヘッド部材を格納する格納スペース」と、「その格納スペースに格納された前記ヘッド部材を外側から被い隠すように前記本体に着脱可能に装着されるカバー」に相当する構成が開示されている。

(ウ)そこで、請求人の主張i)?iii)について以下検討する。
i)について
甲第1号証の記載事項(1-a)、(1-b)、(1-d)からして、甲1の発明は、従来の電動歯ブラシでは、歯の理想的な磨き方(上の歯は、歯ブラシを上方から下方に向けて掻き下げるように揺動させ、下の歯は、歯ブラシを下方から上方に向けて掻き上げるように揺動させて歯と歯の間に存在する歯后あるいは食べ滓等の異物を十分除去する)ができなかったことを発明が解決しようとする課題とし、モータMにより駆動される原動軸12の回転を、変換機構13により歯ブラシTに連結された従動軸10の揺動運動に変換する構成を採用することにより上記課題を解決し、理想的な歯磨きを実現したものである。
他方、甲1の発明において、モータMにより駆動される原動軸12の回転を、変換機構13により歯ブラシTに連結された従動軸10の揺動運動に変換する構成にかえて、モータの回転運動をそのまま回転運動として伝える構成を採用した場合、上記課題を解決することができず、理想的な歯磨きができなくなることは明らかである。
してみると、仮にモータの回転運動をそのまま回転運動として伝える構成が本件特許の出願前において極めて常識的なことであったとともに、甲1の発明がモータMの回転運動を、変換機構13という一工夫をして、揺動運動というかたちで歯ブラシTに伝えているものであったとしても、甲第1号証の記載に接した当業者が、上記課題を解決することを目的とした甲1の発明の態様として、本件特許発明1の「前記本体に形成され、そのモータにより回転駆動される回転出力部を含む連結部」に相当する構成を有するものを理解するとまではいえない。

ii)について
本件特許明細書の記載を確認すると、「携帯型歯面爪面清掃研磨器」に関し、以下の記載が存在する。
(p-1)「【発明の属する技術分野】この発明は、歯面に付着したたばこのヤニ等の付着物(沈着物)を研磨により除去したり、爪面を研磨してきれいにする清掃研磨器に関する。
【従来の技術】従来、歯面に付着した、一般の歯ブラシや歯磨き粉では除去することができないたばこのヤニ等の付着物(色素沈着等)は、歯科医院の専門家の手によって除去されていた。また、爪面の研磨作業はヤスリ等を用いて行われていた。
【発明が解決しようとする課題】この発明の課題は、簡単に持ち運びができ、またどこでも気軽に歯面や爪面の研磨作業が可能な携帯型歯面爪面清掃研磨器を提供することにある。」(段落【0001】?【0003】)、
(p-2)「・・・この研磨ロータ軸47に固定された研磨ロータ48の端面は、本体21の中心線に対し交差する方向(例えば直角付近又は直角に対し3?30度程度交差する方向)を向き、このロータ端面を歯面、爪面に当てて、それらの面に付着する汚れ層を研磨することができる。研磨ロータ48の外周面もまた研磨面となり得る。」(段落【0013】)

上記記載事項からして、本件特許発明1の「携帯型歯面爪面清掃研磨器」は、「研磨対象面に接触しつつ回転する研磨ロータを備えたヘッド部材」の「研磨ロータ」の端面や外周面を歯面に当てて、歯面に付着した、一般の歯ブラシや歯磨き粉では除去することができないたばこのヤニ等の歯面の付着物(色素沈着等)の層を「研磨」により除去し、歯面を「清掃」するものと解される。
他方、上記i)についての検討結果からして、甲1号証に記載された「電動歯ブラシ」は、歯ブラシを歯に対して掻き上げたり、掻き下げるように揺動させることにより、従来の電動歯ブラシでは不十分であった、歯と歯の間に存在する歯后あるいは食べ滓等の異物の除去効率を改善することを指向するものにすぎず、本件特許発明1の「歯面爪面清掃研磨器」のように、たばこのヤニ等の歯面の付着物(色素沈着等)の層を「研磨」により除去するものとはいえない。
しかも、甲第1号証には、「歯ブラシ」により「爪面」の「研磨」をすることは記載されておらず、そのことが自明であるともいえない。
そして、仮に歯ブラシと研磨ロータがともに歯を清掃するツールといえるとしても、そのことは、両者が結果的に歯を清掃するという点で一致することをいうにとどまり、同様に、仮にブラシ以外の材料を使用し歯面に接触しつつ回転運動するものが本件特許出願前公知であるとしても、そのことは、単に歯ブラシについての従来技術をいうものにとどまり、これらのことは、あくまでも歯と歯の間に存在する歯后あるいは食べ滓等の異物の除去効率を改善することを指向する「電動歯ブラシ」を開示するにすぎない甲第1号証に、「研磨ロータを備えたヘッド部材を含む携帯型歯面爪面清掃研磨器」に相当する構成が開示されていることを裏付けるものとはいえない。
以上によれば、仮に歯ブラシと研磨ロータがともに歯を清掃するツールといえるとともに、ブラシ以外の材料を使用し歯面に接触しつつ回転運動するものが本件特許出願前公知であるとしても、甲第1号証に接した当業者が、甲第1号証に、「研磨ロータを備えたヘッド部材を含む携帯型歯面爪面清掃研磨器」に相当する構成が開示されていることを理解するとはいえない。

iii)について
甲第1号証の図1をみても、キャップ3と本体1及び先端ハウジング2との間のスペースの大きさが、外した歯ブラシTを収容し得るに足りるものである否か不明であって、甲第1号証には、取り外した歯ブラシT(ヘッド部材)をキャップ3(カバー)と本体1及び先端ハウジング2(本体)との間のスペースに格納する旨の記載はないから、甲第1号証に接した当業者が、甲第1号証に、「取り外したヘッド部材を格納する格納スペース」と、「その格納スペースに格納された前記ヘッド部材を外側から被い隠すように前記本体に着脱可能に装着されるカバー」に相当する構成が開示されていることを理解するとはいえない。

以上によれば、請求人の主張i)?iii)は採用することはできない。

(1-2)相違点等に係る当審の判断
(ア)[相違点1aについて]
甲第2号証には、本件特許発明1の「ヘッド部材」に相当する「歯ブラシ体12」を有する「電動歯ブラシ」に関し、「駆動部16により歯ブラシ体を駆動軸13の軸線回りの一定角度内で往復回転運動したり軸線方向に往復直線運動すること」(記載事項(2-a))が記載されているとは認められるものの、甲第2号証には、たばこのヤニ等の歯面の付着物(色素沈着等)の層を「研磨」で除去したり、「爪面」を「研磨」してきれいにすることは記載されておらず、「歯ブラシ体」に植設された「ブラシ11」が歯面に接触しつつ回転することも記載されていない。

甲第6号証には、本件特許発明1の「ヘッド部材」に相当する「ブラシアタッチメント3」を有する「電動歯ブラシ」に関し、「本発明は、電動モータを収容するハンドルを備え、前記電動モータに接続され、駆動され、ブリスタルヘッドが備えられたブラシアタッチメントに結合可能なシャフトを備えた電動歯ブラシに関し、ブリスタルヘッドは、軸を中心として回転し、ブリスタルヘッドの揺動(oscillating)や連続回転運動を発生させる。」(記載事項(6-a))ことが記載されており、さらに「研磨剤粒子を有する練り歯磨き」(記載事項(6-b))を使用することも記載されている。
しかしながら、甲第6号証に記載された「電動歯ブラシ」は、記載事項(6-c)に記載されているように、「ブリスタルヘッド」のストローク運動の突き掘り運動と回転運動のふき取り動作により、歯の表面からプラークを取り易くすることに加え、拭き取り動作により緩んだプラークの積極的除去を確実にするものである。
つまり、甲第6号証には、「電動歯ブラシ」に関し、あくまでも歯のプラーク(歯垢)の除去効率を改善することが記載されているにすぎず、たばこのヤニ等の歯面の付着物(色素沈着等)の層を「研磨」で除去したり、「爪面」を「研磨」してきれいにしたりすることは記載されていない。

甲第3証?甲第5号証には、手動の歯ブラシが記載されているにすぎず、たばこのヤニ等の歯面の付着物(色素沈着等)の層を「研磨」で除去したり、「爪面」を「研磨」してきれいにしたりすることは記載されていない。

してみると、甲第1号証?甲第6号証には、そもそも歯面に付着したたばこのヤニ等の歯面の付着物(色素沈着等)の層を「研磨」で除去したり、爪面を「研磨」してきれいにしたりすることは記載されておらず、歯の表面や歯と歯の間に存在する歯后あるいは食べ滓の除去効率を改善することについての技術事項が記載されているにすぎず、甲第1号証?第6号証に記載のものから、本件特許発明1の[相違点1a]に係る発明特定事項の内、少なくとも「歯面」及び「爪面」を「研磨」する「歯面爪面清掃研磨器」とその「研磨対象面に接触しつつ回転する研磨ロータを備えたヘッド部材」を、当業者が容易に想到することができたと解すべき根拠も見出せない。

以上によれば、本件特許発明1の[相違点1a]に係る発明特定事項は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。

[相違点1bについて]
甲第2号証には、ケースに歯ブラシ体12と駆動本体15を収納することが記載され(記載事項(2-b)、(2-c))、甲第3号証には、コンパクトにするために把柄となる筒状容器11に歯ブラシ22を収納することが記載され(記載事項(3-a)、(3-b))、甲第4号証には、小型化するために歯磨き時に把持される容器体5にブラシ体3のブラシ部31を収納することが記載され(記載事項(4-a))、甲第5号証には、コンパクトにするために握り手筒体1の内部に歯ブラシ2を収納することが記載されている(記載事項(5-c))。
そして、甲第2号証?甲第5号証に記載された「歯ブラシ体12」、「歯ブラシ22」、「ブラシ体3のブラシ部31」、「歯ブラシ2」は、本件特許発明1の「ヘッド部材」に相当し、甲第2号証?甲第5号証に記載された「駆動本体15」、「筒状容器11」、「容器体5」、「握り手筒体1」は手で把持する柄の部分といえるとともに、収納は格納ともいえるから、甲第2号証?甲第5号証には、取り外したヘッド部分を手で把持する柄の部分と一緒にケースに格納すること及び小型化のために取り外したヘッド部分を手で把持する柄の部分の内部に格納することが記載されていると認められ、さらに、小型化のために取り外したヘッド部分を手で把持する柄の部分の内部に格納することは周知ともいえる。
なお、甲第6号証には、取り外したブラシアタッチメント3(ヘッド部材)を格納することについての記載はない。

他方、甲1の発明は、「歯ブラシTを先端ハウジング2内に設けられた支持筒7に取付けた状態でキャップ3により覆う」ものであるから、あえて歯ブラシTを支持筒7から取り外して格納しなくても歯ブラシTが他の物に触れたりせず清潔に保たれるとともに、歯ブラシTを支持筒7から取り外して「電動歯ブラシ」の内部に格納しても、「電動歯ブラシ」の大きさは変わらず「電動歯ブラシ」を直ちには小型化することはできない。
このように、そもそも、甲第1号証の記載を検討しても、甲1の発明には、歯ブラシT(ヘッド部材)を支持筒7(連結部)から取り外して格納すべき必然性はなく、甲第2号証?甲第5号証に記載されたヘッド部材を格納することに係る上記技術事項や上記周知技術を適用すべき根拠は見出せない。

加えて、仮に甲第2号証?甲第5号証に記載された上記技術事項や上記周知技術を甲1の発明に適用することができたとしても、甲1の発明に係る電動歯ブラシの本体1及び先端ハウジング2(本体)内に取り外した歯ブラシT(ヘッド部材)を格納する格納スペースを形成したものにとどまり、[相違点1b]のような(本体に形成された)格納スペースに格納された歯ブラシT(ヘッド部材)をキャップ3(カバー)により外側から被い隠す構成まで当業者が容易に想到できたと解すべき根拠は見出せない。

以上によれば、本件特許発明1の[相違点1b]に係る発明特定事項は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえず、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到することができたものともいえない。
(イ)上記の点につき、請求人は、以下のように主張する。
iv)甲第2号証?甲第5号証に記載されているように、携帯時には歯ブラシをコンパクトにしたいという課題とその解決手段である、歯ブラシ部分を外して利用できるスペースに収納するという構成は周知であり、甲第1号証の電動歯ブラシにおいて、コンパクト化するという周知の課題を達成するために上記周知の構成を適用し、取り外した歯ブラシ部分を、利用可能なスペースであるキャップ3の内側のスペースに格納する構成とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

(ウ)そこで、請求人の主張iv)について以下検討する。
本件特許発明1の[相違点1b]に係る発明特定事項は、「カバー」が、「前記本体に形成され、前記連結部から取り外した前記ヘッド部材を格納する格納スペースと、その格納スペースに格納された前記ヘッド部材を外側から被い隠すように前記本体に着脱可能に装着される」という、「ヘッド部材を格納する格納スペース」が「本体に形成され」ることを前提としたものであって、「ヘッド部材」を単に「カバー」の内側の「スペース」に格納するというものではない。
他方、仮に、歯ブラシ部分を外して利用できるスペースに収納するという構成が周知であって、該周知の構成を甲1の発明に適用したとしても、歯ブラシT(ヘッド部材)をキャップ3(カバー)の内側のスペースに格納する構成にとどまり、「ヘッド部材を格納する格納スペース」が「本体に形成され」る構成まで当業者が容易に想到できたと解すべき根拠は見出せない。
してみると、請求人の主張iv)は、本件特許発明1の[相違点1b]に係る発明特定事項の容易想到性を示したものとはいえないから、採用することはできない。

(エ)本件特許発明1によって奏される、本件特許明細書に記載された、歯面に付着した、一般の歯ブラシや歯磨き粉では除去することができないたばこのヤニ等の歯面の付着物(色素沈着等)の層を「研磨」により除去し、歯面を「清掃」する「携帯型歯面爪面清楚研磨器」において、「このように研磨ヘッドを本体に格納できるようにしたことで、携帯時や保管時に、全体が大幅にコンパクトになり、鞄(洗面用具入れ等も含んで)に入れた際にもかさばらない。また研磨ヘッドはカバーで被われて、研磨ヘッドが他の物に触れたりしないので、鞄に入れるのに抵抗感がなく、かつ清潔である。」(【0005】)という効果は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得ない、顕著なものである。

(1-3)本件特許発明1に対する無効理由に関するむすび
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、請求人が主張する本件特許発明1に対する無効理由は理由がない。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の「ヘッド部材」が「ヘッドアーム」、「回転伝達機構」に係る構成を備える点でより限定したものであって、本件特許発明1が甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件特許発明1の発明特定事項を全て具備した本件特許発明2は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

よって、請求人が主張する本件特許発明2に対する無効理由は理由がない。

(3)本件特許発明3、本件特許発明4、本件特許発明6
本件特許発明3、本件特許発明4、本件特許発明6は、いずれも本件特許発明1又は本件特許発明2を引用し、さらにその構成を限定したものである。
本件特許発明1及び本件特許発明2が甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件特許発明1又は本件特許発明2の発明特定事項を全て具備した本件特許発明3、本件特許発明4、本件特許発明6は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

7.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許発明1?本件特許発明4、本件特許発明6を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
 
審理終結日 2010-03-15 
結審通知日 2010-03-17 
審決日 2010-03-30 
出願番号 特願2000-294661(P2000-294661)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (A61C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 生越 由美  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 豊永 茂弘
鈴木 洋昭
登録日 2003-06-20 
登録番号 特許第3442359号(P3442359)
発明の名称 携帯型歯面爪面清掃研磨器  
代理人 村林 隆一  
代理人 光石 忠敬  
代理人 光石 俊郎  
代理人 松元 洋  
代理人 佐藤 潤  
代理人 井上 裕史  
代理人 田中 康幸  
代理人 光石 春平  

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