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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01J
管理番号 1229297
審判番号 不服2009-1103  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-13 
確定日 2010-12-27 
事件の表示 平成11年特許願第 66956号「熱処理チャンバ中の物体温度決定装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月16日出願公開、特開平11-316159〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年3月12日(パリ条約による優先権主張1998年3月12日、米国)の出願であって、平成20年5月21日付けで拒絶理由が通知され、平成20年8月25日付けで手続補正がなされたが、平成20年10月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年1月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年2月12日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
さらに、平成22年3月1日付けで審尋がなされ、回答書が平成22年6月4日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成21年2月12日付け手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1と8は、
「【請求項1】 物体の温度を測定するための装置であって、
物体を収容するように適合した処理チャンバと、
この処理チャンバ内に入れられる反射装置であって、前記物体の表面とこの反射装置との間で前記物体により放たれる熱放射エネルギを反射するように形成された反射装置と、
前記物体により放たれて反射した前記物体と前記反射装置との間の前記熱放射エネルギを検出するための放射エネルギ検出装置であって、前記物体の放射率が高まるように前記反射装置は前記物体に隣接して配される放射エネルギ検出装置と、
前記物体に対する反射率の値を決定するために形成された反射計と、 前記物体の温度を決定するために前記放射エネルギ検出装置および前記反射計からの情報を受け取るように形成されたコントローラであって、前記放射エネルギ検出装置および前記反射計から受け取った情報を組み合わせることによって前記物体の温度を決定するように形成されたコントローラと を具えたことを特徴とする装置。
【請求項8】 半導体ウェハの温度を測定するための装置であって、
前記半導体ウェハを収容するように適合した処理チャンバと、
この処理チャンバ内に収容された場合に前記半導体ウェハを加熱するために前記処理チャンバとつながる加熱源と、
前記処理チャンバ内に入れられる反射装置であって、前記半導体ウェハの表面と前記反射装置との間に前記半導体ウェハにより放たれる熱放射エネルギを反射するように形成された反射装置と、
前記半導体ウェハにより放たれて反射した前記半導体ウェハと前記反射装置との間の前記熱放射エネルギを検出するための放射エネルギ検出装置であって、前記半導体ウェハの放射率が高まるように前記反射装置は前記半導体ウェハに隣接して配される放射エネルギ検出装置と、
前記半導体ウェハに対する反射率の値を決定するために形成された反射計と、
前記半導体ウェハの温度を決定するために前記放射エネルギ検出装置および前記反射計からの情報を受け取るように形成したコントローラであって、前記放射エネルギ検出装置および前記反射計から受け取った情報を組み合わせることによって前記半導体ウェハの温度を決定するように形成されたコントローラと
を具えたことを特徴とする装置。」
から
「【請求項1】 物体の温度を測定するための装置であって、
物体を収容するように適合した処理チャンバと、
この処理チャンバ内に入れられて前記物体の表面との間で前記物体により放たれる熱放射エネルギを反射するように形成され、前記物体の放射率が高まるように前記物体から3mmから15mmまでの距離に配される反射装置と、
前記物体により放たれて反射した前記物体と前記反射装置との間の前記熱放射エネルギを検出するための放射エネルギ検出装置であって、前記反射装置はこの放射エネルギ検出装置が前記熱放射エネルギを検出する波長において0.9よりも大きな反射率を有する放射エネルギ検出装置と、
前記物体に対する反射率の値を決定するために形成された反射計と、
前記物体の温度を決定するために前記放射エネルギ検出装置および前記反射計からの情報を受け取るように形成されたコントローラであって、前記放射エネルギ検出装置および前記反射計から受け取った情報を組み合わせることによって前記物体の温度を決定するように形成されたコントローラと
を具えたことを特徴とする装置。
【請求項8】 半導体ウェハの温度を測定するための装置であって、
前記半導体ウェハを収容するように適合した処理チャンバと、
この処理チャンバ内に収容された場合に前記半導体ウェハを加熱するために前記処理チャンバとつながる加熱源と、
前記処理チャンバ内に入れられる反射装置であって、前記半導体ウェハの表面と前記反射装置との間に前記半導体ウェハにより放たれる熱放射エネルギを反射するように形成され、前記半導体ウェハから3mmから15mmまでの距離に配される反射装置と、
前記半導体ウェハにより放たれて反射した前記半導体ウェハと前記反射装置との間の前記熱放射エネルギを検出するための放射エネルギ検出装置であって、前記反射装置はこの放射エネルギ検出装置が前記熱放射エネルギを検出する波長において0.9よりも大きな反射率を有する放射エネルギ検出装置と、
前記半導体ウェハに対する反射率の値を決定するために形成された反射計と、
前記半導体ウェハの温度を決定するために前記放射エネルギ検出装置および前記反射計からの情報を受け取るように形成したコントローラであって、前記放射エネルギ検出装置および前記反射計から受け取った情報を組み合わせることによって前記半導体ウェハの温度を決定するように形成されたコントローラと
を具えたことを特徴とする装置。」
と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

2 請求項1の補正について
(1)補正の内容(新規事項)
本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「反射装置」を「前記物体の放射率が高まるように前記物体から3mmから15mmまでの距離に配される」とする補正を含むものである。

該請求項1に係る発明についての補正は、装置の反射装置について物体との位置関係を数値限定をしたものであるが、本願の出願当初の明細書には、「【0065】・・・ウェハ14と反射装置26との間の距離または間隔の選択は、ウェハ14の大きさに依存する。直径が200ミリメートルの大きさのウェハに対し、一般に反射装置26は、ウェハ14からおよそ3ミリメートルからおよそ15ミリメートルまで離して配置可能である。・・・。」と記載されており、ここで「3ミリメートルからおよそ15ミリメートルまで離して配置可能である」と記載されてはいるものの、この配置は、直径が200ミリメートルの大きさのウェハに対するものであり、技術常識からみて同程度の直径のウェハに対する記載とまでいえるものの、ウェハ以外の被測定物に対して上記記載を拡張し、適用できる記載も示唆もされていない。

(2)小括
したがって、上記補正は、本願の出願当初の明細書に記載されていないものも対象に含むものであり、当初明細書の範囲内においてなされたものといえない。

3 請求項8の補正について
(1)請求項8の補正の目的
本件補正は、補正前の請求項8に係る発明を特定するために必要な事項である「反射装置」の配置と、「反射装置」の反射率を、それぞれ「半導体ウェハから3mmから15mmまでの距離に配される」、「この放射エネルギ検出装置が前記熱放射エネルギを検出する波長において0.9よりも大きな反射率を有す」とする特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
したがって、上記補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項8に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物およびその記載事項
ア 本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平8-184496号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「放熱物体の温度測定に使用する角濾波による放射輝度の測定」について、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高速熱処理(RTP)チェンバ中の半導体ウェーハなど、放射環境中の物体の放射輝度の非接触現場測定、ならびに放射輝度の測定および同物体の放射率の非接触現場測定を利用しての同物体の温度測定に関するものである。・・・」

(イ) 「【0010】バッフル・アセンブリの有効性は、代表的なRTP加熱装置の幾何形状を参照して説明することができ、これはたとえば、石英チェンバと、目的のウェーハを所期の温度に加熱するためランプからの放射を石英チェンバに反射する平滑で平坦な反射鏡との間に、加熱ランプの列が置かれている。・・・」

(ウ) 「【0014】
【発明の実施の形態】図1は、RTP加熱装置16の石英チェンバ14内に置かれた半導体ウェーハ12の反射率と放射輝度とを同時に測定するための、本発明により作動する装置10を示す。本明細書に記載するRTP装置の構成は、本発明の説明を容易にするための例として用いるものであり、本発明は他の構成の加熱装置、および平坦なウェーハ以外の各種の構成の物体でも実施できることを理解されたい。反射率の測定は反射率測定装置18により行われ、放射輝度の測定は放射輝度測定装置20により行われる。反射率測定装置の出力信号、すなわちライン22上の入射出力とライン24上の反射出力は、信号処理装置28の放射率計算装置26に供給され、ウェーハ12の放射率が計算される。装置26からの放射率と、放射輝度測定装置20からの放射輝度は、信号処理装置28内に設けられた温度計算装置30に供給され、ウェーハ12の温度が決定される。加熱装置16は、加熱フィラメントの部分である1組の加熱ランプ32と、ランプ32に電流を供給する電源34で構成される。
・・・
【0016】上記の例では、本発明はウェーハ12のように、平坦な表面を持つ加工物について、チェンバ14の石英の壁面の透明な赤外線スペクトル領域を、RTP加熱装置16の鏡42および44などの鏡の反射面と併用して、実施される。ウェーハ12は、鏡42および44の2つの対向する内面に平行な、2つの対向する平坦面を有する。
・・・
【0017】上記のウェーハ表面、チェンバの壁面、および鏡が平行な幾何形状により、ランプ32からの放射の反射光線が、すべての光線が鏡42および44の反射面に直角または直角に近い方向への、ランプ32からの光線を除いて上記の平行面に対して角度を持つように分布する。・・・ランプ32Bから任意の角度で(ただし鏡44に直角ではない)鏡44に対して角度を持つ方向に放射される光線60など、他の光線によっては、ウェーハの下面56と鏡44との間で、反射経路の連続した行程中に、入射と鏡44からの反射の角度を同一に維持しながら、一連の反射を生じる。この幾何構成から、図1に示すように、ランプ32から放射される角度を持った光線は、鏡44または鏡42あるいはその両方に対して角度を持った配向により、連続反射によって伝播を続けることは明らかである。・・・。」

そうすると、これらの記載と図面を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

「石英チェンバ14と、平滑で平坦な反射鏡44との間に、加熱ランプの列が置かれているRTP加熱装置16を備えた装置10であって、
反射率の測定を行う反射率測定装置18と、放射輝度の測定を行う放射輝度測定装置20を備え、
反射率測定装置18の出力信号は、信号処理装置28の放射率計算装置26に供給され、半導体ウェーハ12の放射率が計算され、装置26からの放射率と、放射輝度測定装置20からの放射輝度とは、信号処理装置28内に設けられた温度計算装置30に供給され、半導体ウェーハ12の温度が決定される装置10。」(以下、「引用発明」という。)

イ 本願優先日前に頒布された刊行物である特開平9-119868号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(ア) 「【0017】
【好ましい実施形態の説明】RTPシステム内でのパイロメータをキャリブレーションするために使用されるパイロメータキャリブレーションツールの詳細を説明する前に、先ずキャリブレーションされるパイロメータを含むRTPシステムについて説明する。図1及び図2を参照すると、RTPは一般的にディスク形の、直径8インチ(200mm)のシリコン基板10を処理するための処理チャンバ60を含んでいる。基板10は基板支持構造62によってチャンバ60内に保持され、基板の真上に位置する加熱素子70(例えば一連のタングステンハロゲンランプ)によって加熱される。加熱素子70は基板10の約1インチ上方に位置する水冷式クォーツウィンドウ72を通してチャンバ60内に入る放射光を発生する。基板10の下方にはステンレス鋼製のベース65上に実装された反射板20が備えられている。反射板20はアルミニウム製であり、反射率が高い表面被覆24(例えば金合金)を有している。基板10の下面と反射板20の上面とが反射空洞30を形成し、この空洞が基板をより理想的な黒体に見えるようにする。すなわち、これが基板の有効放出率を高める。」

(イ) 図1には、チャンバ60内に保持されたシリコン基板10の真上に位置する加熱素子70によって、該シリコン基板10が加熱される様子が描かれている。

ウ 本願優先日前に頒布された刊行物である特開平3-105223号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(ア) 「(実施例)
以下、本発明の温度測定方法を、半導体ウエハを加熱処理するランプアニール装置における処理中の半導体ウエハの温度測定に適用した実施例を図面を参照して説明する。
チャンバ1は、上面に例えば石英等からなる窓2が形成された横断面ほぼ円形の筒状体3と、この筒状体3の下側開口を気密的に閉塞する如く設けられた円板状のプラテン4とから構成されている。また、プラテン4の上面には、複数例えば3本のピン5が、これらのピン5上に半導体ウエハ6を支持する如く配置されており、これらのピン5は、プラテン4の上面と半導体ウエハ6下面との間隔Dが20?10mm、例えば15mmとなるよう構或されている。 なお、筒状体3およびプラテン4の内側面は、反射効率を高めて半導体ウエハ6が均一かつ効率的に加熱されるよう鏡面状に形成されている。・・・
また、半導体ウエハ6に平行する如く近接して鏡面状に形成された反射体(プラテン4)が設けられ、このプラテン4と半導体ウェハ6との間で多重反射が生じるように構成した場合、半導体ウエハ6のほぼ中央部に向けて斜めに配設された光学ヘッド8に入射する放射I0は、プラテン4の反射率をr(λ)として、・・・
となり、多重反射の効果により、黒体を測定する場合と同等となる。したがって、予めI0と温度の関係を求めておけば、I0の測定を行うことにより、正確な温度を知ることができる。なお、光学ヘッド8を半導体ウエハ6に向けて垂直に配置すると、被測定体が鏡面の場合には、光学ヘッド8に測定部からの放射光のみが入射し、多重反対した赤外線を測定することができないので、前述したように角度θを設けて光学ヘッド8を斜めに配設する必要がある。
・・・
したがって、例えば半導体ウエハ6の半径Rが76.35mm、放射率εが0.7、反射率ρが0.3、半導体ウエハ6の実際の温度が1000℃、測定波長が0.9μmの場合、求められる温度は半導体ウェハ6の鏡面性の度合pと、間隔Dによって表1に示すように変化する。
すなわち、温度測定という観点からは間隔Dは、できるだけ狭くすることが好ましいが、半導体ウエハ6を均一に加熱するためには、間隔Dをある程度拡くする必要がある。このため、間隔Dは、例えば20?l0mm程度とすることが好ましい。」(第2頁右上欄16行?第3頁右下欄18行)

(3) 当審の判断
ア 対比
(ア) 引用発明と補正発明とを対比すると、その構造・機能からみて、引用発明の「石英チェンバ14」、「反射鏡44」、「加熱ランプの列」、「反射率測定装置18」、「半導体ウェーハ12」、および「半導体ウェーハ12の温度が決定される装置10」は、それぞれ、補正発明の「処理チャンバ」、「反射装置」、「加熱源」、「反射計」、「半導体ウェハ」、および「半導体ウェハの温度を測定するための装置」に相当することが明らかである。

(イ) 引用発明の「石英チェンバ14と、平滑で平坦な反射鏡44との間に、加熱ランプの列が置かれているRTP加熱装置16」の「加熱ランプの列」と、
補正発明の「この処理チャンバ内に収容された場合に前記半導体ウェハを加熱するために前記処理チャンバとつながる加熱源」とは、半導体ウェハを加熱するための加熱源という点で共通する。

(ウ) 引用発明の「石英チェンバ14と、平滑で平坦な反射鏡44との間に、加熱ランプの列が置かれているRTP加熱装置16」の「反射鏡」と、
補正発明の「前記処理チャンバ内に入れられる」、「前記半導体ウェハの表面と前記反射装置との間に前記半導体ウェハにより放たれる熱放射エネルギを反射するように形成され、前記半導体ウェハから3mmから15mmまでの距離に配される」、「この放射エネルギ検出装置が前記熱放射エネルギを検出する波長において0.9よりも大きな反射率を有する」反射装置とは、配置関係からみて、半導体ウェハの表面と前記反射装置との間に前記半導体ウェハにより放たれる熱放射エネルギを反射するように形成された反射装置という点で共通する。

(エ) 引用発明の「放射輝度測定装置20」は、測定する放射輝度が、その段落【0032】に記載された定義となる式からみて、放射エネルギーを表すことから、補正発明の「放射エネルギ検出装置」に相当する。

(オ) 引用発明では、放射率計算装置26も、温度計算装置30も、信号処理装置28の一部であるから、信号処理装置が受け取る情報は、反射率測定装置の出力信号と放射輝度測定装置20からの放射輝度であり、信号処理装置は、該2つの情報を基にして、半導体ウェーハ12の温度を決定するのであるから、引用発明の「信号処理装置28」 は、本願発明の「コントローラ」に相当する。

そうすると、両者は、
(一致点)
「半導体ウェハの温度を測定するための装置であって、
前記半導体ウェハを収容するように適合した処理チャンバと、
半導体ウェハを加熱するための加熱源と、
半導体ウェハの表面と前記反射装置との間に前記半導体ウェハにより放たれる熱放射エネルギを反射するように形成された反射装置と、
前記半導体ウェハにより放たれて反射した前記半導体ウェハと前記反射装置との間の前記熱放射エネルギを検出するための放射エネルギ検出装置と、
前記半導体ウェハに対する反射率の値を決定するために形成された反射計と、
前記半導体ウェハの温度を決定するために前記放射エネルギ検出装置および前記反射計からの情報を受け取るように形成したコントローラであって、前記放射エネルギ検出装置および前記反射計から受け取った情報を組み合わせることによって前記半導体ウェハの温度を決定するように形成されたコントローラとを具えた装置。」
である点で一致し、以下の点で相違するといえる。

(相違点1)
加熱源の収容場所と処理チャンバとの接続について、補正発明では、「この処理チャンバ内に収容された場合に前記半導体ウェハを加熱するために前記処理チャンバとつながる」のに対して、
引用発明では、加熱源が石英チェンバの外にある点。

(相違点2)
処理チャンバの反射装置について、補正発明では、「前記処理チャンバ内に入れられ」、「前記半導体ウェハの表面と前記反射装置との間に前記半導体ウェハにより放たれる熱放射エネルギを反射するように形成され、前記半導体ウェハから3mmから15mmまでの距離に配され」、「この放射エネルギ検出装置が前記熱放射エネルギを検出する波長において0.9よりも大きな反射率を有する」のに対して、
引用発明では、石英チェンバの外に配置され「平滑で平坦」である点。

イ 相違点についての判断
まず、相違点1を検討する。
刊行物2の記載事項である上記「(2)イ(イ)」に「図1には、チャンバ60内に保持されたシリコン基板10の真上に位置する加熱素子70によって、該シリコン基板10が加熱される様子が描かれている。」と記載したように、「処理チャンバ内に収容された場合に半導体ウェハを加熱するために前記処理チャンバとつながる加熱源」は周知技術である。
してみると、引用発明の処理チャンバの加熱源のとして、上記周知の構成を採用して、相違点1における本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものといえる。

次に、相違点2を検討する。
刊行物3の記載事項である上記「(2)ウ(ア)」に「チャンバ1は、・・・横断面ほぼ円形の筒状体3と、この筒状体3の下側開口を気密的に閉塞する如く設けられた円板状のプラテン4とから構成されている。また、プラテン4の上面には、・・・プラテン4の上面と半導体ウエハ6下面との間隔Dが20?10mm、例えば15mmとなるよう構成されている。
なお、筒状体3およびプラテン4の内側面は、反射効率を高めて半導体ウエハ6が均一かつ効率的に加熱されるよう鏡面状に形成されている。」と記載(なお、鏡面状に形成されているプラテン4が補正発明の反射装置に相当する。)されているように、「処理チャンバ内に入れられ、前記半導体ウェハの表面と反射装置との間に半導体ウェハにより放たれる熱放射エネルギを反射するように形成され、前記半導体ウェハから10mmから15mmまでの距離に配された反射装置」を備える構成は周知技術である。
また、同じく上記「(2)ウ(ア)」に「半導体ウエハ6に平行する如く近接して鏡面状に形成された反射体(プラテン4)が設けられ、このプラテン4と半導体ウェハ6との間で多重反射が生じるように構成した場合、半導体ウエハ6のほぼ中央部に向けて斜めに配設された光学ヘッド8に入射する放射I0は、プラテン4の反射率をr(λ)として、
・・・
となり、多重反射の効果により、黒体を測定する場合と同等となる。したがって、予めI0と温度の関係を求めておけば、I0の測定を行うことにより、正確な温度を知ることができる。」と記載(鏡面状に形成された反射体(プラテン4)の測定対象波長の光に対して鏡面として作用することが明らか。)されているように、「放射エネルギ検出装置が熱放射エネルギを検出する波長において0.9よりも大きな反射率を有すること」も周知技術である。
してみると、引用発明の処理チャンバの反射装置として、上記周知の構成を採用して、相違点2における本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものといえる。

そして、本願明細書に記載された効果も、引用発明および周知技術から、当業者が予測し得る範囲のものであり、格別顕著なものといえない。

(4)小括
したがって、補正発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法改正前の特許法第17条の2第3項の規定及び第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなるので、本願の請求項1?24に係る発明は、平成20年8月25日付けで手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?24に記載された事項により特定されたものであって、その請求項8に係る発明は、次のとおりであると認める。
「【請求項8】 半導体ウェハの温度を測定するための装置であって、
前記半導体ウェハを収容するように適合した処理チャンバと、
この処理チャンバ内に収容された場合に前記半導体ウェハを加熱するために前記処理チャンバとつながる加熱源と、
前記処理チャンバ内に入れられる反射装置であって、前記半導体ウェハの表面と前記反射装置との間に前記半導体ウェハにより放たれる熱放射エネルギを反射するように形成された反射装置と、
前記半導体ウェハにより放たれて反射した前記半導体ウェハと前記反射装置との間の前記熱放射エネルギを検出するための放射エネルギ検出装置であって、前記半導体ウェハの放射率が高まるように前記反射装置は前記半導体ウェハに隣接して配される放射エネルギ検出装置と、
前記半導体ウェハに対する反射率の値を決定するために形成された反射計と、
前記半導体ウェハの温度を決定するために前記放射エネルギ検出装置および前記反射計からの情報を受け取るように形成したコントローラであって、前記放射エネルギ検出装置および前記反射計から受け取った情報を組み合わせることによって前記半導体ウェハの温度を決定するように形成されたコントローラと
を具えたことを特徴とする装置。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物およびその記載事項
本願優先日前に頒布された刊行物1?3およびその記載事項は、上記「第2 3(2)」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は、反射装置について、補正発明の「前記半導体ウェハから3mmから15mmまでの距離に配される反射装置」、「反射装置はこの放射エネルギ検出装置が前記熱放射エネルギを検出する波長において0.9よりも大きな反射率を有する」から「前記半導体ウェハの放射率が高まるように前記反射装置は前記半導体ウェハに隣接して配される」と数値限定に代えて、「半導体ウェハの放射率が高まるように」、「半導体ウェハに隣接して」として各々の限定を除いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含む補正発明が、上記「第2 3(3)」において検討したとおり、引用発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

なお,請求人は,回答書において「反射装置であって・・・物体からの距離が200mmの直径の前記物体の場合に3mmから15mmまでの範囲に配され」るとの構成を付加した補正案を提示しているが、データの開示もなく技術的根拠がないので、これらの数値限定による格別な効果を見出すことはできない。
したがって、上記補正案によってもその進歩性があるといえず、請求人の補正案は採用できない。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項について言及するまでもなく、本願出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-28 
結審通知日 2010-07-30 
審決日 2010-08-11 
出願番号 特願平11-66956
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G01J)
P 1 8・ 121- Z (G01J)
P 1 8・ 575- Z (G01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼場 正光  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 信田 昌男
居島 一仁
発明の名称 熱処理チャンバ中の物体温度決定装置および方法  
代理人 谷 義一  
復代理人 梅田 幸秀  
復代理人 伊藤 勝久  
代理人 阿部 和夫  

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