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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1229299
審判番号 不服2009-10453  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-01 
確定日 2010-12-27 
事件の表示 特願2003-546142「集光光ファイバ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月30日国際公開、WO03/44567、平成17年 4月14日国内公表、特表2005-509915〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2002年(平成14年)11月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年11月15日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成16年7月12日付けで特許協力条約第34条補正の翻訳文が提出されたが、平成21年2月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成21年6月1日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「光ビームを提供する光源を有する光ファイバ集光システムであって、
光軸を画定している光ファイバ導波管であって、受光端および集光端を有し、該集光端が、表面法線を有する反射表面を画定している光ファイバ導波管と、
前記集光端に結合された集束レンズと、
前記光ビームを受けるための検出器と
を有する光ファイバ集光システムにおいて、
前記光ビームが前記集光端から前記集束レンズに向かって反射されるように前記表面法線が前記光軸に対して所定の角度で配向され、前記ボール・レンズが前記検出器上に前記光ビームを集束させ、前記光ファイバ導波管および集束レンズが、前記検出器に対して自由に位置決めすることのできるアセンブリを形成している光ファイバ集光システム。」

3 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭60-74449号(実開昭61-191642号)のマイクロフィルム(以下「刊行物」という。)には、図とともに次の事項が記載されている(下線は審決で付した。)。

(1)「2.実用新案登録請求の範囲
(1)光を発光又は受光する光素子と、その光素子に対する駆動又は受信回路とが上記光素子の発光又は受光面とほゞ平行する面内で配列され、
これら光素子及び回路が1つにモジュール化され、
そのモジュールには上記平行する面にほゞ平行して光ファイバ又は光コネクタが導出され、
その光ファイバ又は光コネクタと上記光素子の発光又は受光面とを光結合させる光路折曲げ手段が上記モジュール内に設けられている光送受モジュール。」(1頁4行?同頁15行)

(2)「「産業上の利用分野」」
この考案は発光素子又は受光素子と光伝送手段との間を光結合させ、信号光を伝送する光伝送モジュールに関する。」(1頁17行?同頁20行)

(3)「「実施例」
第1図はこの考案による光伝送モジュールの内部構成例で、集積回路素子型のケースにパッケージされた例を示す図、第2図はその要部を示す図である。
・・・
この実施例では、その光ファイバ14はモジュール化された発光素子12の発光面12a及びその駆動回路素子13と平行に配され、・・・
・・・
以上では発光面12aから発光される信号光は拡散投射された散光であり、そのうちの一部の信号光(例えばL_(3))は前記鏡面16に入射するときの入射角が全反射の臨界角を下回り、全反射されずに鏡面16を透過して逃げてゆき、発光素子12と光ファイバ14との光結合の効率が悪くなることがある。
第3図はこのような問題を解決するための例を示す図で、発光素子12と光ファイバ14との光結合の効率を良くするために、発光面12aと光ファイバ14との間にボール・レンズ18を設け、このボール・レンズ18を介して発光面12aからの信号光を光ファイバ14に投射するようにした例である。発光面12aから投射された信号光は発光面12aに対接されたボール・レンズ18の表面からボール・レンズ18内に入り、ボール・レンズ18の対向する表面から出射される。この時、ボール・レンズ18からの出射面は球面状であり、凸レンズの役割をする。つまり、発光素子12の発光面12aから拡り角を持って発光された信号光はボール・レンズ18により屈折され、拡り角の程度が小さくされる。このボール・レンズ18の径を適切に選ぶことにより、ボール・レンズ18からの出射信号光はほゞ全反射角を下回ることのない角度で光路折り曲げ手段16とされる光ファイバ14端部鏡面16に入射され、そこで全反射されファイバ軸14c芯方向に向かうようにされる。このようにほゞ45度に近い角度で端部鏡面16に入射されるため、全反射の臨界角を下回り、ファイバ14端部から外部に抜けて行く信号光L割合が少なくなり、従って、発光素子12と光ファイバ14との光結合の効率が高くなる。
また、この光路折り曲げ手段となる斜め鏡面に金属などの蒸着膜を設け、信号光の反射効率を高めるようにしても良い。」(6頁7行?10頁12行)

(4)「 以上では光素子12として発光素子12の場合について説明してきたが、光素子12が受光素子12の場合でも全く同様に構成されれば良く、光ファイバ又は光コネクタからの信号光はこれまでの説明と全く同様に、但し信号光の伝達する方向のみを逆の向きにして考えれば良く、光ファイバ12(審決注:「光ファイバ14」の誤記と認める。)と受光素子12との間の光結合が果たされる。」(11頁10行?同頁16行)

(5)「尚、この考案による光伝送モジュールの光結合効率は従来の光伝送モジュールに比較してやゝ低くなるが、この光伝送モジュールは基板間伝送、装置内伝送或いは通常の装置間伝送において用いられるためのものであり、これらの用途においては実用上十分な光結合が得られ、光伝送モジュールを薄型化した利点は、これらの部分でこそ大きく生かされるもので、この考案の効果は頗る大きい。」(13頁18行?14頁5行)

(6)上記(1)ないし(5)からみて、刊行物には、
「光を発光又は受光する光素子とその光素子に対する駆動又は受信回路とが上記光素子の発光又は受光面とほゞ平行する面内で配列され、これら光素子及び回路が1つにモジュール化され、そのモジュールには上記平行する面にほゞ平行して光ファイバ又は光コネクタが導出され、その光ファイバ又は光コネクタと上記光素子の発光又は受光面とを光結合させる光路折曲げ手段が上記モジュール内に設けられており、発光素子又は受光素子と光伝送手段との間を光結合させ、信号光を伝送する光伝送モジュールであって、
発光素子12の発光面12aから発光される信号光が拡散投射された散光でありそのうちの一部の信号光が鏡面16に入射するとき全反射されずに鏡面16を透過して逃げてゆき発光素子12と光ファイバ14との光結合の効率が悪くなるという問題を解決するために、発光素子12の発光面12aと光ファイバ14との間にボール・レンズ18を設け、このボール・レンズ18を介して発光素子12の発光面12aからの信号光を光ファイバ14に投射するようにした例においては、発光面12aから投射された信号光が、発光面12aに対接されたボール・レンズ18の表面からボール・レンズ18内に入りボール・レンズ18の対向する表面から出射され、ボール・レンズ18からの出射面が、球面状であり凸レンズの役割をし、発光素子12の発光面12aから拡り角を持って発光された信号光が、ボール・レンズ18により屈折され拡り角の程度が小さくされ、このボール・レンズ18の径を適切に選ぶことにより、ボール・レンズ18からの出射信号光が、ほゞ全反射角を下回ることのない角度で光路折り曲げ手段16とされる光ファイバ14端部鏡面16に入射され、そこで全反射されファイバ軸14c芯方向に向かうようにされており、
光素子12が受光素子12の場合でも、光素子12として発光素子12の場合と全く同様に構成されれば良く、光ファイバ又は光コネクタからの信号光は信号光の伝達する方向のみを逆の向きにすれば光ファイバ14と受光素子12との間の光結合が果たされ、
基板間伝送、装置内伝送或いは通常の装置間伝送において用いられる、光送受モジュール。」

の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明は、光を受光する光素子と上記光素子の受光面とは平行する面にほゞ平行して光ファイバが導出され、その光ファイバと上記光素子の受光面とを光結合させ信号光を伝送する光伝送モジュールであってよいことに照らせば、引用発明の「『光ファイバ』ないし『光ファイバ14』」及び「光素子」は、それぞれ、本願発明の「光ファイバ導波管」及び「光ビームを受けるための検出器」に相当するといえる。

(2)引用発明が、光を受光する光素子と上記光素子の受光面とは平行する面にほゞ平行して光ファイバが導出され、その光ファイバと上記光素子の受光面とを光結合させ信号光を伝送する光伝送モジュールであってよく、その場合(以下「場合A」という。)でも、光素子12として発光素子12の場合と全く同様に構成されれば良く、信号光の伝達する方向のみを逆の向きにすれば光ファイバ14と受光素子12との間の光結合が果たされることを踏まえれば、
ア 引用発明は、発光面12aから投射された信号光が、発光面12aに対接されたボール・レンズ18の表面からボール・レンズ18内に入りボール・レンズ18の対向する表面から出射され、ボール・レンズ18からの出射面が、球面状であり凸レンズの役割をし、発光素子12の発光面12aから拡り角を持って発光された信号光が、ボール・レンズ18により屈折され拡り角の程度を小さくされるところ、ボール・レンズ18は、集束レンズとしての作用を有し、場合Aにおいても、ボール・レンズ18の作用が信号光の伝達する方向のみが逆の向きであること以外は同様であるから、引用発明の「ボール・レンズ18」は、本願発明の「集束レンズ」ないし「(前記)ボール・レンズ」に相当するとともに、引用発明は、本願発明の「ボール・レンズが検出器上に光ビームを集束させる」との事項を備えているといえ、
イ 引用発明は、ボール・レンズ18からの出射信号光が、ほゞ全反射角を下回ることのない角度で光路折り曲げ手段16とされる光ファイバ14端部鏡面16に入射され、そこで全反射されファイバ軸14c芯方向に向かうようにされているから、光ファイバ14がファイバ軸14c芯方向に光軸を画定しているものといえ、端部鏡面16が平面であって表面法線を有する反射表面を画定しており、該端部鏡面16をその表面法線に対して上記ファイバ軸14c芯方向の光軸と所定の角度で配置することは当業者に自明であるところ、場合Aにおいては、上記端部鏡面16が集光端といえるから、引用発明の「光ファイバ14」は、本願発明の「光ファイバ導波管」と、「光軸を画定している」点、及び、「集光端を有し、該集光端が、表面法線を有する反射表面を画定している」点で一致するとともに、引用発明は、本願発明の「光ビームが」光ファイバ導波管の「集光端から集束レンズに向かって反射されるように」集光端の「表面法線が」光ファイバ導波管の「光軸に対して所定の角度で配向され」との事項を備えているといえる。

(3)上記(1)及び(2)から、本願発明と引用発明とは、
「光軸を画定している光ファイバ導波管であって、集光端を有し、該集光端が、表面法線を有する反射表面を画定している光ファイバ導波管と、集束レンズと、前記光ビームを受けるための検出器とを有し、前記光ビームが前記集光端から前記集束レンズに向かって反射されるように前記表面法線が前記光軸に対して所定の角度で配向され、前記ボール・レンズが前記検出器上に前記光ビームを集束させるもの。」
である点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

ア 本願発明は、「光ビームを提供する光源を有する光ファイバ集光システム」であり、光ファイバ導波管が「受光端」を有するのに対し、引用発明は、そうであるかどうか不明である点(以下「相違点1」という。)。
イ 本願発明は、集束レンズが「集光端に結合された」ものであり、「光ファイバ導波管および集束レンズが、検出器に対して自由に位置決めすることのできるアセンブリを形成している」のに対し、引用発明は、そうであるかどうか不明である点(以下「相違点2」という。)。

5 判断
(1)上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明の「光送受モジュール」は、基板間伝送、装置内伝送或いは通常の装置間伝送において用いられるものであり、そのような用途に用いられる光送受モジュールについて、光送受モジュールの一方の端部を信号光の発光部とし他方の端部を信号光の受光部位とすることが極めて一般的であることを踏まえると、引用発明の「光送受モジュール」が、光ファイバからの信号光が端部鏡面16で折り曲げられ受光素子の受光面に伝送されることにより、受光素子と光ファイバとが光結合し信号光を伝送されるものであるとき、引用発明の「光送受モジュール」において、光ファイバの端部鏡面16とは反対の端を受光端として、この受光端に発光素子からの信号光を入射するものとし、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

イ 相違点2について
(ア)光ファイバとレンズを接着剤により固定することは、本願優先日当時に周知(例.特開平8-54541号公報(段落【0031】、【0032】、図3を参照。)、特開平5-241044号公報(段落【0007】、図1を参照)、特開平3-161704号公報(2頁左下欄13行?同頁右下欄9行、第1図を参照。))の技術であるところ、引用発明において、「光ファイバ14」の集光端に「ボール・レンズ18」を接着剤により固定することに格別の困難性があるものとは認められない。
(イ)他方、「光ファイバ導波管および集束レンズが、検出器に対して自由に位置決めすることのできるアセンブリを形成している」ことについて、本願明細書には、明示的に説明されておらず、本願発明の「光ファイバ導波管および集束レンズが、検出器に対して自由に位置決めすることのできるアセンブリを形成している」とは、光ファイバの集光端と集束レンズが結合されて光ファイバ導波管と集束レンズがアセンブリを形成していること以上の格別の構成であるとは解されない。しかるところ、引用発明において、上記(ア)のように、「光ファイバ14」の集光端に「ボール・レンズ18」を接着剤により固定し、「光ファイバ14」と「ボール・レンズ18」とがアセンブリを形成するようにして、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

(2)そして、本願発明の奏する効果が、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測可能な域を超える程の格別顕著なものとは認められない。

(3)したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-30 
結審通知日 2010-08-03 
審決日 2010-08-16 
出願番号 特願2003-546142(P2003-546142)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大石 敏弘  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 稲積 義登
右田 昌士
発明の名称 集光光ファイバ  
代理人 浅村 肇  
代理人 岩本 行夫  
代理人 吉田 裕  
代理人 浅村 皓  

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