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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B21D
管理番号 1229344
審判番号 不服2008-28648  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-10 
確定日 2010-11-24 
事件の表示 特願2003-206518「金属板の曲げ加工方法及び曲げ構造」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月 3日出願公開、特開2005- 52850〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成15年8月7日の出願であって、平成19年8月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月30日に手続補正がなされ、平成20年2月28日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年4月21日に手続補正がなされ、同年10月14日付けで同年4月21日の手続補正を却下するとともに拒絶査定がされ、これに対し、同年11月10日に審判請求がなされ、同年11月10日に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、平成22年3月24日に審尋がなされ、同年5月21日に回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1ないし2、及び関連する発明の詳細な説明について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前(平成19年10月30日手続補正による)
「曲げるべき金属板の曲げ箇所における金属板の表裏2面に折り曲げ線に沿って両面V溝を表裏面から互いにV溝底が対向するように形成し、その両面V溝に沿って金属板を折り曲げることにより、両面V溝の一方のV溝が角度を狭めるように縮閉し、他方のV溝がその角度を拡げるように拡開して所定角度の曲げ加工の角部が形成されるとともに、
前記金属板が90度折り曲げられるときに前記両面V溝のうち角度が広がるように拡開するV溝の曲げ加工完了時の角度が約180度となって、曲げ加工の角部に前記V溝が拡開変形したことによる平面状の面取り部が形成され、
さらに、その拡開したV溝による面取り状の平面に、鏡面仕上げ、つや消し加工、細かいすじ付け加工であるヘアライン加工、着色加工その他適宜の表面加工を施すことを特徴とする金属板の曲げ加工方法。」

(2)補正後
「曲げるべき金属板の曲げ箇所における金属板の表裏2面に折り曲げ線に沿って両面V溝を表裏面から互いにV溝底が対向するように形成し、その両面V溝に沿って金属板を折り曲げることにより、V溝底の部分が変形して両面V溝の一方の裏面側のV溝が角度を狭めて密着もしくは小角度で対峙する角度となるように縮閉し、他方の表面側のV溝がその角度を拡げるように拡開して所定角度の曲げ加工の角部が形成されるとともに、
前記金属板が90度折り曲げられるときに、前記両面V溝のうち角度が広がるように拡開する表面側のV溝の曲げ加工完了時の角度が約180度となっており、前記金属板の曲げ加工による前記角部には、前記V溝が拡開変形したことによる前記V溝の対向する両側面に基づく大きさの平面状の面取り部が形成され、
さらに、その拡開したV溝で形成した前記平面状の面取り部に、鏡面仕上げ、つや消し加工、細かいすじ付け加工であるヘヤライン加工、着色加工その他適宜の表面加工を施すことを特徴とする金属板の曲げ加工方法。」

2.補正の適否
本件補正は、V溝について、「両面V溝の一方のV溝が角度を狭めるように縮閉し、他方のV溝がその角度を拡げるように拡開して所定角度の曲げ加工の角部が形成されるとともに、前記金属板が90度折り曲げられるときに前記両面V溝のうち角度が広がるように拡開するV溝の曲げ加工完了時の角度が約180度となって、曲げ加工の角部に前記V溝が拡開変形したことによる平面状の面取り部が形成され」を、「V溝底の部分が変形して両面V溝の一方の裏面側のV溝が角度を狭めて密着もしくは小角度で対峙する角度となるように縮閉し、他方の表面側のV溝がその角度を拡げるように拡開して所定角度の曲げ加工の角部が形成されるとともに、前記金属板が90度折り曲げられるときに、前記両面V溝のうち角度が広がるように拡開する表面側のV溝の曲げ加工完了時の角度が約180度となっており、前記金属板の曲げ加工による前記角部には、前記V溝が拡開変形したことによる前記V溝の対向する両側面に基づく大きさの平面状の面取り部が形成され」と限定し、「V溝による面取り状の平面」を「V溝で形成した前記平面状の面取り部」と言い換えるものである。

よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
これに対し、原査定の拒絶理由で引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平11-123458号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.段落0001
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に手曲げ加工する場合の金属板の折り曲げ構造に関するものである。」

イ.段落0008?0010
「【0008】図1に示す実施の形態では、金属板1の中央部の折り曲げ位置に、従来と同様に折り曲げ位置に沿って適宜の間隔を隔てて複数の長孔1bが形成されている。そして、金属板1の一方の端縁から他方の端縁にまたがって、金属板1の一方の表面に、図2に示すように、V形状の凹溝からなる罫線1cが折り曲げ位置に沿って形成されている。
【0009】このように折り曲げ位置に沿ってV形状の凹溝からなる罫線1cを形成すると、金属板1を折り曲げるとき、厚みの薄いV形状の凹溝にしたがって金属板1が曲げられ、折り曲げ位置に沿って簡単かつ正確に折り曲げられる。
【0010】金属板1が多少厚いとき、あるいは折り曲げにくい場合には、図3に示すように、金属板1の両側の表面に互いに対向する位置にV形状の凹溝からなる罫線1c,1dを形成すれば折り曲げやすくなる。」

これら事項を、技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

「特に手曲げ加工する場合の曲げるべき金属板の曲げ箇所における金属板の表裏2面に折り曲げ位置に沿って複数の長孔1bが形成され、複数の長孔1b間に両側の表面に互いに対向する位置にV形状の凹溝からなる罫線1c,1dを形成し、その両面V形状の凹溝に沿って金属板を折り曲げる
金属板の曲げ加工方法。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「折り曲げ位置」は補正発明の「折り曲げ線」に相当し、同様に、「V形状の凹溝からなる罫線1c,1d」は「両面V溝」に、「両側の表面に互いに対向する位置に」は「表裏面から互いにV溝底が対向するように」に、相当する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。
「曲げるべき金属板の曲げ箇所における金属板の表裏2面に折り曲げ線に沿って両面V溝を表裏面から互いにV溝底が対向するように形成し、その両面V溝に沿って金属板を折り曲げる
金属板の曲げ加工方法。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
相違点1:金属板について、補正発明では、「金属板」であるが、刊行物1発明では、「特に手曲げ加工する場合の」「金属板」である点。
相違点2:両面V溝について、補正発明では、「金属板の表裏2面に折り曲げ線に沿って」形成されるが、刊行物1発明では、「金属板の表裏2面に折り曲げ位置に沿って複数の長孔1bが形成され、複数の長孔1b間に」形成される点。
相違点3:補正発明では「V溝底の部分が変形して両面V溝の一方の裏面側のV溝が角度を狭めて密着もしくは小角度で対峙する角度となるように縮閉し、他方の表面側のV溝がその角度を拡げるように拡開して所定角度の曲げ加工の角部が形成されるとともに、前記金属板が90度折り曲げられるときに、前記両面V溝のうち角度が広がるように拡開する表面側のV溝の曲げ加工完了時の角度が約180度となっており、前記金属板の曲げ加工による前記角部には、前記V溝が拡開変形したことによる前記V溝の対向する両側面に基づく大きさの平面状の面取り部が形成」されるが、刊行物1発明では明らかでない点。
相違点4:補正発明では、「拡開したV溝で形成した前記平面状の面取り部に、鏡面仕上げ、つや消し加工、細かいすじ付け加工であるヘヤライン加工、着色加工その他適宜の表面加工を施す」ものであるが、刊行物1発明では明らかでない点。

(4)相違点の検討
相違点1について検討する。
「金属板」は、「特に手曲げ加工する場合の」「金属板」を含む概念であるから、この点は、実質的相違点ではない。
仮に、相違点であるとしても、「手曲げ」、「折り曲げ加工機による曲げ」、いずれも周知であり、板厚、板の材質等により適宜選択されるものであるから、この点は、設計的事項にすぎない。

相違点2について検討する。
「金属板の表裏2面に折り曲げ線に沿って」形成されることは、「金属板の表裏2面に折り曲げ位置に沿って複数の長孔1bが形成され、複数の長孔1b間に」形成されることを含む概念であるから、この点は、実質的相違点ではない。
仮に、相違点であるとしても、複数の長孔を形成することなく、折り曲げ部の全体にV溝を形成して折り曲げを行うものは、拒絶理由で引用した登録実用新案第3070836号公報の図1、図5、新たに引用する特開2003-138724号公報の図1?3、図8、同特開平11-147253号公報の図1?3、同特開平10-43007号公報の要約にみられるごとく周知である。
複数の長孔を形成するためには、そのための工程が必要であるから、かかる工程を不要とすべく、周知技術を踏まえ、複数の長孔を形成することなく、折り曲げを行うものとすることに困難性は認められない。

相違点3について検討する。
板の両側に略90度のV溝を形成し、略90度折り曲げることにより、「V溝底の部分が変形して」「内側のV溝が角度を狭めて密着もしくは小角度で対峙する角度」となり、「外側のV溝が拡開して略90度の曲げ加工の角部」が形成されるとともに、角部に「外側のV溝の曲げ加工完了時の角度が約180度」、すなわち「V溝の対向する両側面に基づく大きさの平面状部分」が形成されることは、前記登録実用新案第3070836号公報の図1、図5、前記特開2003-138724号公報の図1?3、図8にみられるごとく周知である。
そして、かかる「平面状部分」は「面取り部」ということができる。

請求人は、回答書で、一般に折り曲げ加工機による折り曲げであれば、溝がなくとも折り曲げが可能であるから、補正発明のようにわざわざV溝を形成することはない旨、主張する。
しかし、補正発明は、「折り曲げ加工機による」点が特定されていないから、請求人の主張は根拠がない。
仮に、特定されていたとしても、V溝を形成した場合の折り曲げ後の形状は、上記のとおり周知であるから、かかる形状が必要な場合に、上記周知技術を適用することは、設計的事項にすぎない。
請求人は、また、前記登録実用新案第3070836号公報のものは、歪みが生じ、「面取り部」はできないが、補正発明では、「面取り部」が形成できる旨、主張する。
しかし、「表裏両面のV溝」によって、曲げ外側に「平面状部分」、すなわち「面取り部」が形成できることは、上記のとおり周知であり、かかる手段は、補正発明と同じであるから、請求人の主張は根拠がない。
よって、相違点3は格別なものではない。

相違点4について検討する。
必要な面に、鏡面仕上げを施すことは、拒絶理由で引用した特開2002-162156号公報の段落0011、特開2000-265644号公報の段落0019にみられるごとく周知である。
そして、いかなる面を鏡面仕上げとするかは、美観等を考慮して、適宜選択すべき事項にすぎない。
よって、相違点4は格別なものではない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

以上のことから、補正発明は、刊行物1発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし2に係る発明は、平成19年10月30日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められる。
請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)のとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の拒絶理由にあげられた刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本願発明は、補正発明から、「V溝」についての限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明も、上記第2.2.(4)と同様の理由により、刊行物1発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-29 
結審通知日 2010-09-30 
審決日 2010-10-13 
出願番号 特願2003-206518(P2003-206518)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B21D)
P 1 8・ 121- Z (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 進吾  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 千葉 成就
遠藤 秀明
発明の名称 金属板の曲げ加工方法及び曲げ構造  
代理人 菅原 正倫  

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