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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B28C
管理番号 1229505
審判番号 不服2008-7195  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-24 
確定日 2011-01-05 
事件の表示 特願2001-228989「細骨材及び水の計量装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月13日出願公開、特開2003- 39421〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年7月30日に特許出願されたものであって、拒絶理由が平成19年8月15日付けで起案され(発送日は同年8月20日)、同年10月18日付けで意見書及び明細書の記載に係る手続補正書が提出され、平成20年2月22日付けで拒絶査定が起案され(発送日は同年2月26日)、それに対し、同年3月24日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、本願の請求項1乃至5に係る発明は、平成19年10月18日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)。
「計量槽本体及びその底部開口を水密性を保持した状態にて閉じることが可能な開閉自在の底蓋からなる計量槽と、該計量槽の質量を計測する質量計測手段と、容積計測手段とを備えるとともに、前記計量槽本体を単一のボックス体で構成するとともに該ボックス体内に下端が前記ボックス体の底部開口と同一高さとなるように所定の間仕切り体を設け、該間仕切り体で仕切られた一方の側に拡がる空間を、計量すべき細骨材全量のうち、一部の細骨材及び水が水浸細骨材として投入される水浸細骨材収容スペースとし、該水浸細骨材収容スペースを除く前記計量槽本体内の空間を、残りの細骨材及び不足分の水が追加投入される追加細骨材収容スペースとし、前記水浸細骨材収容スペースに収容された水浸細骨材の容積を前記容積計測手段で計測できるように構成したことを特徴とする細骨材及び水の計量装置。」

2.引用発明の認定
(1)原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された特開2000-84921号公報(以下、「引用文献1」という。)には次の事項が記載されている。
(ア)「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明に係る細骨材の表面水率測定方法は請求項1に記載したように、湿潤状態の細骨材の質量M_(sw)を計量し、前記細骨材を所定の容器内に水没させ、前記容器内の細骨材及び水の全質量M_(f)と全容積V_(f)とを計量し、前記全質量M_(f)及び前記全容積V_(f)から前記細骨材の容積V_(s)、前記水の質量M_(w)、前記細骨材が表乾状態にあるときの質量M_(s)を、ρ_(s)を表乾状態の細骨材の密度、ρ_(w)を水の密度として
V_(s)=(M_(f)?V_(f)・ρ_(w))/(ρ_(s)?ρ_(w))
M_(w)=(V_(f)?V_(s))ρ_(w)
M_(s)=M_(f)?M_(w)
から算出し、次いで、前記細骨材の質量M_(sw)及び算出されたM_(s)から表面水率(M_(sw)?M_(s))/M_(s)を算出するものである。」(段落【0009】?【0013】)
(イ)「細骨材を水没させる容器は任意であるが、コンクリート材料の計量に用いる容器を用いるようにすれば、コンクリートの配合単位すなわち1バッチに相当する量を一度に計量することができる。
なお、容器内の細骨材や水は、表面水率を測定する過程ですでに計量が終了しているので、あらためて計量することなく、これらの細骨材や水をそのままコンクリート材料として用いることができる。そして、そのときに上述した水の質量M_(w)を用いて水量を補正するようにすれば、示方配合通り若しくはそれに近い現場配合が可能となる。
容器内の細骨材や水の量は、1バッチ若しくはそれに近い量を目安とするのが精度上好ましいしそれが可能であるが、例えば1バッチの半分の量だけ投入するようにしても、従来の表面水率測定方法に比べればはるかに多量の細骨材を対象とすることとなり、十分な精度改善を図ることができる。
容器内の細骨材や水の量は、このように基本的には任意であって、コンクリート配合を行う単位、例えば1バッチに合わせる必要はない。したがって、表面水率を計測するのに使用した細骨材や水だけでは例えば1バッチのコンクリートを配合するのに不足する場合が考えられるが、かかる場合には、不足分の細骨材や水を適宜補充すればよい。」(段落【0039】?【0042】)
(ウ)「一方、細骨材が不足する場合には、表面水率の測定に用いた細骨材が貯蔵された貯蔵容器から不足分の細骨材を採取して補充するとともに、採取された細骨材に対して上述の表面水率を適用し、水量を補正する(ステップ117)。
このようにすると、あらたに採取された細骨材の表面水率を再度測定することなく、水量補正を行うことができる。
次に、容器内の細骨材及び水並びにそれらの補充分をコンクリート材料としてコンクリートを製造する(ステップ118)。」(段落【0107】?【0109】)
(エ)「また、請求項2及び請求項4に係る本発明のコンクリート材料の計量方法によれば、容器内の細骨材や水は、表面水率を測定する過程ですでに計量が終了しているので、あらためて計量することなく、これらの細骨材や水をそのままコンクリート材料として用いることができる。そして、表面水率の算定過程で得られた水の質量M_(w)を用いて水量を補正するようにすれば、示方配合通りの配合が可能となる。また、細骨材が不足する場合、あらたに採取された細骨材の表面水率を再度測定することなく、水量補正が可能となる。」(段落【0113】)
(2)上記記載事項(ア)には「湿潤状態の細骨材の質量M_(sw)を計量し、前記細骨材を所定の容器内に水没させ、前記容器内の細骨材及び水の全質量M_(f)と全容積V_(f)とを計量し、・・・前記細骨材の容積V_(s)・・・を算出」する「細骨材の表面水率測定方法」が記載され、同(イ)には、「コンクリート材料の計量に用いる容器を用いる」ことが記載され、同(ウ)には、「細骨材が不足する場合には、表面水率の測定に用いた細骨材が貯蔵された貯蔵容器から不足分の細骨材を採取して補充するとともに、採取された細骨材に対して上述の表面水率を適用し、水量を補正する」こと及び「次に、容器内の細骨材及び水並びにそれらの補充分をコンクリート材料と」することが記載されている。
これらを本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、「湿潤状態の細骨材の質量M_(sw)を計量し、前記細骨材をコンクリート材料の計量に用いる容器内に水没させ、容器内の細骨材及び水の全質量M_(f)と全容積V_(f)とを計量し、前記細骨材の容積V_(s)を算出し、細骨材が不足する場合には、表面水率の測定に用いた細骨材が貯蔵された貯蔵容器から不足分の細骨材を採取して補充するとともに、採取された細骨材に対して上述の表面水率を適用し、水量を補正し、次に、容器内の細骨材及び水並びにそれらの補充分をコンクリート材料とする細骨材の表面水率測定方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「コンクリート材料の計量に用いる容器」が、本願発明の「計量槽」に相当することは明らかであり、引用発明においては「容器内の細骨材及び水の全質量M_(f)と全容積V_(f)とを計量」するから、容器の「質量計測」手段及び「容積計測手段」を備えることが実質的に記載されていると認められ、「容器内の細骨材及び水の全質量M_(f)と全容積V_(f)とを計量」することは、本願発明の「計量槽の質量を計測する質量計測手段と、容積計測手段とを備える」に相当すると認められ、引用発明の「細骨材が不足する場合には、表面水率の測定に用いた細骨材が貯蔵された貯蔵容器から不足分の細骨材を採取して補充するとともに、採取された細骨材に対して上述の表面水率を適用し、水量を補正し、次に、容器内の細骨材及び水並びにそれらの補充分をコンクリート材料とする」ことは、本願発明の「計量すべき細骨材全量のうち、一部の細骨材及び水が水浸細骨材として投入され、残りの細骨材及び不足分の水が追加投入され」ることに相当するということができる。また、引用発明の「細骨材の表面水率測定方法」は、細骨材に関して表面水率を計器により測定して必要な水量を決定する方法であるから、本願発明の「計量装置」と「計量」である点で共通する。
したがって、両者は「計量槽と、該計量槽の質量を計測する質量計測手段と、容積計測手段とを備えるとともに、計量すべき細骨材全量のうち、一部の細骨材及び水が水浸細骨材として投入され、残りの細骨材及び不足分の水が追加投入され、前記容積計測手段を、水浸細骨材の容積を計測するように構成した細骨材及び水の計量。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点a:本願発明は、「計量槽本体及びその底部開口を水密性を保持した状態で閉じることが可能な開閉自在の底蓋からなる」計量槽を特定事項とするのに対して、引用発明は、計量槽の底蓋を特定事項とするものでない点。
相違点b:本願発明は、「計量槽本体を単一のボックス体で構成するとともに該ボックス体内に下端が前記ボックス体の底部開口と同一高さとなるように所定の間仕切り体を設け、該間仕切り体で仕切られた一方の側に拡がる空間を、計量すべき細骨材全量のうち、一部の細骨材及び水が水浸細骨材として投入される水浸細骨材収容スペースとし、該水浸細骨材収容スペースを除く前記計量槽本体内の空間を、残りの細骨材及び不足分の水が追加投入される追加細骨材収容スペースと」することを特定事項とするのに対して、引用発明は、容器内における細骨材の収容部位については特定のない点。
相違点c:本願発明は、容積計測手段が「前記水浸細骨材収容スペース内に収容された水浸細骨材の容積を計測する」のに対して、引用発明は、「容器内の細骨材及び水の全質量M_(f)と全容積V_(f)とを計量し、前記細骨材の容積V_(s)を算出」する点。
相違点d:本願発明は、「装置」の発明であるのに対して、引用発明は、「方法」の発明である点。

4.当審の判断
(1)相違点aについて
相違点aについて検討すると、引用文献1には、引用発明が実施される装置については「コンクリート材料の計量に用いる容器」即ち計量槽以外に直接的な記載は認められない。しかしながら、コンクリート材料の計量に用いる容器において、材料の受け入れと排出を行うことは当然の事項であって、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された特開2000-202824号公報(以下、「引用文献2」という。)は「コンクリートの製造方法および秤量器に係わり、特に、正確に骨材と水を所定量ほど量り取るコンクリートの製造方法および秤量器に関する」(段落【0001】)ものであるが、「容器10の下端には、内挿物を排出するための排出口10aと、排出口10aを覆う蓋10bと、内部の水を排出する開閉自在の排水口10cと、をそれぞれ設ける。」(段落【0041】)と記載されているように、正確に骨材と水を秤量した後にそれらを容器の下端から排出する水密状態で内容物を保持する排出口を設けることは、コンクリート材料の計量に用いる容器において周知技術にすぎないということができる。したがって、引用文献2に記載された周知技術を踏まえれば、引用発明において「計量槽本体及びその底部開口を水密性を保持した状態で閉じることが可能な開閉自在の底蓋」を特定事項として付加することは、当業者であれば容易に想到し得る程度の周知技術の付加というべきである。
(2)相違点b、cについて
引用発明は、「細骨材をコンクリート材料の計量に用いる容器内に水没させ、容器内の細骨材及び水の全質量M_(f)と全容積V_(f)とを計量し、前記細骨材の容積V_(s)を算出し、細骨材が不足する場合には、表面水率の測定に用いた細骨材が貯蔵された貯蔵容器から不足分の細骨材を採取して補充する」のである。そして、例えば、特開平10-315222号公報(以下、「周知例」という。)に「砂利及び砂の計量槽の近傍には、セメントサイロ(図示せず)より切り出されるセメントを計量するセメント計量槽5を配設すると共に混練水を計量する一次水計量槽6を配設している。
前記一次水計量槽6の内部は仕切り板7により二室に区画し、左側の一室を超微粒粉体の懸濁液を計量する超微粒粉体懸濁液計量槽6aとして使用できるようにしている。そして、この左側の区画室を超微粒粉体懸濁液計量槽6aとして使用しない場合は左右の二室を一次水計量槽6として使用できるように混練水が右側の区画室から仕切り板7の上方をオーバーフローして左側の超微粒粉体懸濁液計量槽6aに流入できるように仕切り板7の高さを少し低くしている。なお、一次水計量槽6を仕切って超微粒粉体懸濁液計量槽6aを形成することによって装置の低コスト化が図れ、また超微粒粉体懸濁液を使用しない時には槽全体を水計量槽として有効に利用できて好ましいが、それぞれ独立した別個の計量槽を備えるようにしても良い。」(段落【0012】?【0013】)と記載され、

図1に示されるように、計量槽の内部を仕切り板により二室に区画し、仕切った計量槽と槽全体とをそれぞれ計量槽として利用することにより装置の低コスト化を図ることが周知であるといえるから、相違点bに係る「間仕切り体で仕切られた一方の側に拡がる空間を、計量すべき細骨材全量のうち、一部の細骨材及び水が水浸細骨材として投入される水浸細骨材収容スペースとし、該水浸細骨材収容スペースを除く前記計量槽本体内の空間を、残りの細骨材及び不足分の水が追加投入される追加細骨材収容スペースと」することも当業者であれば格別の困難なく想到し得る設計事項にすぎないものであり、さらに、仕切り板により「計量槽本体を単一のボックス体で構成するとともに該ボックス体内に下端が前記ボックス体の底部開口と同一高さとなるように」することも周知例の図1をみれば、普通に採用される設計事項にすぎないものであるから、相違点bは、当業者であれば適宜なし得る設計事項の採用にすぎないものである。
また、本願発明の容積計測手段が「前記水浸細骨材収容スペース内に収容された水浸細骨材の容積を計測する」ことの技術的意義は、「例えば貧配合であるために水よりも細骨材の方が相対的に多く、細骨材の全量を水浸細骨材として計量できない場合であっても、水浸細骨材の計量で算出された表面水率を用いることによって、水浸細骨材として計量できなかった残りの細骨材とその表面水とを十分な精度で計量することが可能となる。」(本願明細書段落【0018】)というものであって、そのために「容積計測手段は、計量槽内の水浸細骨材を計測できる限り、いかなる手段で構成してもかまわないが、例えば超音波センサーで構成することが考えられる。
計量槽本体は、水浸細骨材を収容する水浸細骨材収容スペースが形成されている限り、どのような構成とするかは任意であるとともに、底蓋についても計量槽本体の底部開口を水密性を保持した状態にて開閉自在に閉じることができるのであれば、どのような構成でもかまわない。」(本願明細書段落【0030】?【0031】)と記載されている。そして、引用発明においても「細骨材をコンクリート材料の計量に用いる容器内に水没させ、容器内の細骨材及び水の全質量M_(f)と全容積V_(f)とを計量し」「容器内の細骨材及び水並びにそれらの補充分をコンクリート材料とする」のであって、「容器内の細骨材や水は、表面水率を測定する過程ですでに計量が終了しているので、あらためて計量することなく、これらの細骨材や水をそのままコンクリート材料として用いることができる。そして、表面水率の算定過程で得られた水の質量M_(w)を用いて水量を補正するようにすれば、示方配合通りの配合が可能となる」(記載事項(エ))から、引用発明において細骨材を追加する場合は、細骨材が相対的に多いという貧配合の場合も実質的に開示されているといえるから、相違点cは実質的なものでない。
(3)相違点dについて
相違点aで検討したように引用文献1には、計量槽以外に直接的な記載はないものの、計量槽は、通常、容器内に収容される材料の重量及び体積の測定を行うものであるところ、同文献の記載事項(ア)に「容器内の細骨材及び水の全質量M_(f)と全容積V_(f)とを計量し」と記載されるように、その計量機能が明記されることからも、それら各測定手段をはじめとして、相違点a及びbにおける検討も含めて計量槽の構成事項の存在は十分に推認され、装置の発明として認定することは可能である。
(4)本願発明の奏する効果について
本願発明の「本発明に係る細骨材及び水の計量装置によれば、例えば貧配合であるために水よりも細骨材の方が相対的に多く、細骨材の全量を水浸細骨材として計量できない場合であっても、水浸細骨材の計量で算出された表面水率を用いることによって、水浸細骨材として計量できなかった残りの細骨材とその表面水とを十分な精度で計量することが可能となる。」という効果も、引用発明において達成された「容器内の細骨材や水は、表面水率を測定する過程ですでに計量が終了しているので、あらためて計量することなく、これらの細骨材や水をそのままコンクリート材料として用いることができる。」(記載事項(エ))という効果を考慮すれば、格別顕著であるとすることはできない。さらに、平成20年5月12日付け手続補正書で主張する「水浸細骨材収容スペースに水浸細骨材を先行投入して該水浸細骨材収容スペース内の水浸細骨材の表面水率を予め計測算出しておき、次いで、計量槽本体に追加投入された非水浸細骨材に上述した表面水率を適用することにより、非水浸細骨材に対しても一定の精度で表面水の影響を考慮することができるという」効果についても同様な理由により、格別顕著であるとすることはできない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び周知例に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願は、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-08 
結審通知日 2010-11-09 
審決日 2010-11-24 
出願番号 特願2001-228989(P2001-228989)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B28C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 相田 悟  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 中澤 登
深草 祐一
発明の名称 細骨材及び水の計量装置  
代理人 久寶 聡博  
代理人 久寶 聡博  
代理人 久寶 聡博  

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