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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1229515
審判番号 不服2008-26765  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-17 
確定日 2011-01-05 
事件の表示 特願2004-192096「エレクトロルミネセンス表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月21日出願公開、特開2005-196116〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯

平成16年 6月29日 特許出願(パリ条約による優先権主張2003年12月30日、大韓民国)
平成20年 2月19日 拒絶理由通知(同年2月26日発送)
平成20年 5月23日 意見書・手続補正書
平成20年 7月16日 拒絶査定(同年7月22日発送)
平成20年10月17日 本件審判請求・手続補正書
平成21年12月24日 審尋(平成22年1月5日発送)
平成22年 4月 5日 回答書

2 平成20年10月17日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成20年10月17日付け手続補正を却下する。

[理由]独立特許要件違反

平成20年10月17日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により、本件補正前の請求項は、
「【請求項1】
複数のゲートラインと、
前記複数のゲートラインと交差するように形成された複数のデータラインと、
前記複数のゲートライン及びデータラインの交差部ごとに形成される発光セルと、前記ゲートラインと前記データラインから供給される駆動信号により前記発光セルを駆動する発光セル駆動回路とを含む画素セルと、
各1水平期間にゲート信号を前記複数のゲートラインのそれぞれに順次供給するためのゲートドライバーと、
前記1水平期間の第1期間の間、前記画素セルに電圧信号を供給する電圧駆動部と、前記第1水平期間の第1期間を除いた第2期間の間、前記画素セルから電流信号の供給を受ける電流駆動部とを有する複数のデータ集積回路と
を具備し、
前記電流駆動部は、供給されるデータに対応する電流信号を前記画素セルから供給する電流駆動ブロックと、外部から供給される制御信号の第1極性によってターンオンされる第1スイッチング部とを含み、
前記電圧駆動部は、供給されるデータに対応する電圧信号を生成する電圧駆動ブロックと、前記制御信号の前記第1極性と相反する第2極性によってターンオンされる第2スイッチング部とを含み、
前記発光セル駆動回路は、電圧供給ラインと前記発光セルの間に接続された第1駆動トランジスタと、前記ゲートラインと前記データラインの間に接続された第1スイッチングトランジスタと、前記第1スイッチングトランジスタと前記電圧供給ラインの間に接続されて前記第1駆動トランジスタと電流ミラー回路を形成する第2駆動トランジスタと、前記ゲートラインと前記第2駆動トランジスタの間に接続される第2スイッチングトランジスタと、前記第1駆動トランジスタのゲートと第2駆動トランジスタのゲートの間のノードと前記電圧供給ラインの間に接続されるストレージキャパシターとを含み、前記第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタのゲートには一つのゲートラインから同一であるゲート信号が供給される
ことを特徴とするエレクトロルミネセンス表示装置。
・・・
【請求項3】
前記電圧信号が生成されるように前記電圧駆動部に複数の電圧レベルを有するガンマ電圧値を供給するガンマ電圧部をさらに具備する
ことを特徴とする請求項1記載のエレクトロルミネセンス表示装置。
・・・」から
「【請求項1】
複数のゲートラインと、
前記複数のゲートラインと交差するように形成された複数のデータラインと、
前記複数のゲートライン及びデータラインの交差部ごとに形成される発光セルと、前記ゲートラインと前記データラインから供給される駆動信号により前記発光セルを駆動する発光セル駆動回路とを含む画素セルと、
各1水平期間にゲート信号を前記複数のゲートラインのそれぞれに順次供給するためのゲートドライバーと、
前記1水平期間の第1期間の間、前記画素セルに電圧信号を供給する電圧駆動部と、前記第1水平期間の第1期間を除いた第2期間の間、前記画素セルから電流信号の供給を受ける電流駆動部とを有する複数のデータ集積回路と、
前記電圧信号が生成されるように前記電圧駆動部に複数の電圧レベルを有するガンマ電圧値を供給するガンマ電圧部と
を具備し、
前記電流駆動部は、供給されるデータに対応するように電流ガンマ信号を選択して、選択された電流ガンマ信号を利用して前記画素セルからデータに対応する電流が供給されるように制御する電流駆動ブロックと、外部から供給される制御信号の第1極性によってターンオンされる第1スイッチング部とを含み、
前記電圧駆動部は、供給されるデータに対応するように前記ガンマ電圧部から供給される複数の電圧ガンマ信号の中からいずれかを選択して、選択された電圧ガンマ信号をデータラインに供給することで前記画素セルが予備充電されるように制御する電圧駆動ブロックと、前記制御信号の前記第1極性と相反する第2極性によってターンオンされる第2スイッチング部とを含み、
前記発光セル駆動回路は、電圧供給ラインと前記発光セルの間に接続された第1駆動トランジスタと、前記ゲートラインと前記データラインの間に接続された第1スイッチングトランジスタと、前記第1スイッチングトランジスタと前記電圧供給ラインの間に接続されて前記第1駆動トランジスタと電流ミラー回路を形成する第2駆動トランジスタと、前記ゲートラインと前記第2駆動トランジスタの間に接続される第2スイッチングトランジスタと、前記第1駆動トランジスタのゲートと第2駆動トランジスタのゲートの間のノードと前記電圧供給ラインの間に接続されるストレージキャパシターとを含み、前記第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタのゲートには一つのゲートラインから同一であるゲート信号が供給される
ことを特徴とするエレクトロルミネセンス表示装置。」
に補正された。 (下線は、補正箇所を明示するために請求人が付した。)

そして、この補正は、本件補正前の請求項3を本件補正後の請求項1とし、電流駆動ブロックに関して、「供給されるデータに対応する電流信号を前記画素セルから供給する」なる記載を「供給されるデータに対応するように電流ガンマ信号を選択して、選択された電流ガンマ信号を利用して前記画素セルからデータに対応する電流が供給されるように制御する」と補正し、電圧駆動ブロックに関して、「供給されるデータに対応する電圧信号を生成する」なる記載を「供給されるデータに対応するように前記ガンマ電圧部から供給される複数の電圧ガンマ信号の中からいずれかを選択して、選択された電圧ガンマ信号をデータラインに供給することで前記画素セルが予備充電されるように制御する」と補正することにより、電流駆動ブロックにより供給されるデータに対応する信号が「電流ガンマ信号」として選択されることを限定すると共に、電圧駆動ブロックにより供給されるデータに対応する信号が「ガンマ電圧部から供給される複数の電圧ガンマ信号の中から選択された電圧ガンマ信号」として選択され、「データラインに供給」されることで「前記画素セルが予備充電される」ことを限定するものである。

したがって、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(1)本件補正後の本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面からみて、その請求項1に記載された以下のものと認める。
「複数のゲートラインと、
前記複数のゲートラインと交差するように形成された複数のデータラインと、
前記複数のゲートライン及びデータラインの交差部ごとに形成される発光セルと、前記ゲートラインと前記データラインから供給される駆動信号により前記発光セルを駆動する発光セル駆動回路とを含む画素セルと、
各1水平期間にゲート信号を前記複数のゲートラインのそれぞれに順次供給するためのゲートドライバーと、
前記1水平期間の第1期間の間、前記画素セルに電圧信号を供給する電圧駆動部と、前記第1水平期間の第1期間を除いた第2期間の間、前記画素セルから電流信号の供給を受ける電流駆動部とを有する複数のデータ集積回路と、
前記電圧信号が生成されるように前記電圧駆動部に複数の電圧レベルを有するガンマ電圧値を供給するガンマ電圧部と
を具備し、
前記電流駆動部は、供給されるデータに対応するように電流ガンマ信号を選択して、選択された電流ガンマ信号を利用して前記画素セルからデータに対応する電流が供給されるように制御する電流駆動ブロックと、外部から供給される制御信号の第1極性によってターンオンされる第1スイッチング部とを含み、
前記電圧駆動部は、供給されるデータに対応するように前記ガンマ電圧部から供給される複数の電圧ガンマ信号の中からいずれかを選択して、選択された電圧ガンマ信号をデータラインに供給することで前記画素セルが予備充電されるように制御する電圧駆動ブロックと、前記制御信号の前記第1極性と相反する第2極性によってターンオンされる第2スイッチング部とを含み、
前記発光セル駆動回路は、電圧供給ラインと前記発光セルの間に接続された第1駆動トランジスタと、前記ゲートラインと前記データラインの間に接続された第1スイッチングトランジスタと、前記第1スイッチングトランジスタと前記電圧供給ラインの間に接続されて前記第1駆動トランジスタと電流ミラー回路を形成する第2駆動トランジスタと、前記ゲートラインと前記第2駆動トランジスタの間に接続される第2スイッチングトランジスタと、前記第1駆動トランジスタのゲートと第2駆動トランジスタのゲートの間のノードと前記電圧供給ラインの間に接続されるストレージキャパシターとを含み、前記第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタのゲートには一つのゲートラインから同一であるゲート信号が供給される
ことを特徴とするエレクトロルミネセンス表示装置。」

(2)引用発明
(2A)引用刊行物1
(2A-1)引用刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の2003年4月11日に頒布された刊行物である特開2003-108065号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、「有機電界発光素子表示装置」の発明に関して、以下の事項が記載されている。

<記載事項1>
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機電界発光素子など、電流量により階調表示を行う表示装置に関するものである。」

従来の技術の説明として、以下の事項が記載されている。
<記載事項2>
「【0004】半導体層を有するトランジスタを用いたアクティブマトリクス型表示装置の例を図39に示す。各画素は79に示すように、複数のトランジスタ(スイッチング素子)73と蓄積容量74ならびに有機発光素子72からなる。
【0005】トランジスタ73は1フレームのうち行選択期間(期間A)にはゲートドライバ70からの出力により73a及び73bのトランジスタを導通させ、73dのトランジスタは非導通状態とする。非選択期間(期間B)には、逆に73dのトランジスタを導通状態とし、73a及び73bのトランジスタを非導通状態とする。
【0006】この操作により期間Aにおいて、ソースドライバ71から出力される電流値に応じて、トランジスタ73cを流れる電流量が決められ、トランジスタ73cのソースドレイン間電流とゲート電圧の関係からゲート電圧が決まり、ゲート電圧に応じた電荷が蓄積容量74に蓄積される。期間Bでは期間Aで蓄積された電荷量に応じて、トランジスタ73cのゲート電圧が設定されるため、期間Aでトランジスタ73cに流れた電流と同一の電流が期間Bにおいてもトランジスタ73cを流れ、トランジスタ73dを通じて、有機発光素子72を発光させる。ソース信号線の電流量に応じ、蓄積容量74の電荷量が変わり、有機発光素子72の発光強度が変化する。
【0007】表示パターンとして、あるソース信号線に、点灯、非点灯の順に電流を流した場合と、非点灯、非点灯の順に電流を流した場合で、非点灯時画素の輝度が異なることがわかった。点灯、非点灯の順の場合、非点灯画素は点灯時の輝度を1、非点灯時の輝度を0とすると、0.5程度点灯した。また、1度点灯信号を流した後、残りの同一フレーム期間内で非点灯信号を流し続けた場合、非点灯画素の輝度は0.5から徐々に減少し、フレーム周波数が60Hz、表示行数が220行の場合、6から7行目より輝度は0となることがわかった。
【0008】一方、非点灯の後に点灯信号を流した場合は、点灯輝度ははじめ0.8であったが、3行目より輝度1で表示できた。
【0009】このことは、ソースドライバの出力は表示画素に応じて、電流値を変化させているが、各画素へ供給される電流波形が、ソース信号線の配線抵抗および浮遊容量によりなまり、所望の電流値が各画素へ蓄積容量74の電荷として蓄えられていないことを示す。つまり、所望の電流値を書き込む能力が小さいことがわかった。
【0010】特に、電流値小から電流値大に比べ、電流値大から電流値小への変化は2倍程度かかることがわかった。
【0011】フレーム周波数を遅くし、1行ごとの書き込み時間を多く取ることで、波形なまりの影響が小さくなり、上記課題が改善することを確認した。
【0012】フレーム周波数を遅くすると、トランジスタ73のオフ特性が悪い場合、蓄積容量74の電荷量はトランジスタ73のリークにより変化し、その上、有機発光素子72の電流量も変化することで、フリッカが発生する。
【0013】従って、フリッカのない表示を得るためには、電流波形のなまりを低減し、1つ前に表示される画素に流す電流値によらず、所望の電流値が選択期間内に流れるようにする必要がある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明のアクティブマトリクス型表示装置は、ソース信号線に所定の電圧を印加する手段と、所定の電流量を流す手段と、ソース信号線に前記電圧印加手段、前記電流を流す手段とを切りかえる切り替え手段を具備し、映像信号の変化によりソース信号線に流れる電流量変化を早くしたことを特徴とする。」

また、【図39】には、アクティブマトリクス型表示装置の例に関して、以下の事項が図示されている。
<事項1>
・アクティブマトリクス型表示装置は、複数のソース信号線76と、複数のゲート信号線の組と、前記複数のソース信号線76と前記複数のゲート信号線の組の交点に各画素79が形成されている。
・ゲートドライバ70には、複数のゲート信号線の組が接続されている。
・ソースドライバ71には、複数のソース信号線76が接続されている。

実施の形態1の説明として、以下の事項が記載されている。
<記載事項3>
「【0016】(実施の形態1)図2は本発明の第1の実施の形態における1つのソース信号線につながる2画素分の有機発光素子の駆動回路を示した図である。
【0017】本発明では、表示階調に応じた所望の電流を流す電流源10と、所定の電圧を印加するための電圧源18を設け、電源切り替え手段19によりソース信号線に入力する電源を切り替えられるようにしたことが特徴である。
【0018】携帯電話およびモニターなどの表示部の各画素の大きさは横100μm、縦250μm程度であり、100カンデラ/平方メートルの輝度を得るためのソース信号線に必要な電流値は、表示色及び外部量子効率により異なるが、およそ1μA程度である。
【0019】EL素子16に対して1μAを流すには、ソースドライバ側で電源切り替え手段19は電流源10を選択し、電流源10は流れる電流値を1μAとする。
【0020】選択行ではゲート信号線(1)12にトランジスタ17が導通する信号、ゲート信号線(2)13には非導通の信号を印加し、非選択行では逆にゲート信号線(1)12に非導通信号、ゲート信号線(2)13に導通信号を印加する。
【0021】これにより、選択行(この例では1行目とする)においては、ソース信号線11の電流がトランジスタ17b、17cを通じて画素内部に流れる。画素内の電流経路はトランジスタ17aを通してEL電源線15aとつながっているのみであるため、トランジスタ17aにも1μAの電流が流れ、蓄積容量14aにはこの時のゲート電圧分の電荷が蓄積される。非選択期間になると、トランジスタ17dが導通し、トランジスタ17b、17cは非導通となるため、選択期間で蓄積容量14aに蓄積された電荷に基づいてトランジスタ17aに流れる電流が規定され、EL素子16aに1μAの電流が流れる。
【0022】このことからEL素子16aに所望の電流値(例えば1μA)を流すには選択期間において、トランジスタ17aが所望の電流値を流すようなゲート電圧を与えるよう蓄積容量14aに電荷を蓄えさせる必要がある。
【0023】しかしながら、ソース信号線11に浮遊容量20が存在すると、ソース信号線11の配線抵抗と浮遊容量20の時定数で決まる波形のなまりが観測される。電流値により階調表示を行う場合、この波形なまりはソース信号線に流れる電流値によっても異なり、電流値が小さいほど立ち上がり、立ち下がりに時間がかかる。例えば、配線容量が100pF、配線抵抗が500オームの時、電流源10の電流値を変化させた時にソース信号線の電流値及び接点1001の電流値が0.24μAから40nAへ変化するのに必要な時間は300μ秒、40nAから0.24μAへ変化するのに必要な時間は250μ秒であった。
【0024】低電流領域では単位時間あたりの電荷の移動量が少ないため、浮遊容量20にたまった電荷を充放電することが難しいのである。
【0025】例えば、図40に示すように、ゲート信号線(1)12のオン期間を64μ秒、256μ秒と変化させた時、256μ秒では入力電流に対し、ほぼ同一の出力電流が得られたのに対し、64μ秒においては、低電流(0.7μA以下)を中心に、入力に対し、出力電流が異なることがわかった。
【0026】このため、従来の電流による階調表示方法では、1水平走査期間の最小時間は300μ秒必要である。これでは、携帯電話のように走査線数が220本の場合、1フレームは10Hz程度で駆動させる必要があり、トランジスタ17のオフ特性によっては、蓄積容量14の電荷量が変化し、EL素子16に流れる電流が変化することによるフリッカが発生する。
【0027】また、ソース信号線に電圧値を印加する場合には、電圧値によらずソース信号線の配線抵抗と浮遊容量20の時定数のみで決まるため、接点1001の電圧値は1μ秒程度と電流源10により接点1001の電流値に対応する電圧値を決める時に比べ高速である。
【0028】そこで1水平走査期間を短くするために、本発明では電流波形の変化において、低電流(黒表示)から高電流(白表示)へ変化する時の方が、高電流(白表示)から低電流(黒表示)へ変化する時よりもはやいということを利用しようと考えた。
【0029】図3(a)に示すように、1水平走査期間の初めに電源切り替え手段19を電圧源18側に切り替え、この電圧源18を用いて、ソース信号線22aの電圧を黒信号電流値が流れている状態と同じ電圧にする(ディスチャージ電圧印加期間24)。次に、電源切り替え手段19を電流源10側に切り替え、この電流源10により映像信号に応じた所望の電流値をソース信号線22aに流す(映像信号電流印加期間25)。」

実施の形態1の変形例である実施の形態2の説明として、以下の事項が記載されている。
<記載事項4>
「【0036】(実施の形態2)実施の形態1において、ディスチャージ電圧印加期間24を設け、黒信号を表示する電圧を印加することで、ソース信号線が黒を示す電流に容易に変化できるようにした。
【0037】これにより、黒および黒付近の階調は電圧変化量が小さくなったため、1水平走査期間が200μ秒から230μ秒で表示可能であった。また、白表示時は電流量が最大であるため、ソース信号線11に存在する浮遊容量20の電荷の放電速度が速く、変化量が大きいにもかかわらず1水平走査期間が180μ秒程度で、表示可能であった。一方で、白と黒の中間付近より黒よりの階調は、電流量も白表示時の半分以下なので、浮遊容量20の電荷放電速度が半分となるため1水平期間が250μ秒程度と最もかかる。
【0038】そこで、ディスチャージ電圧印加期間24において、黒信号を表示する電圧を印加するのではなく、次に表示する映像信号の階調に応じて、数段階の異なる電圧を印加することを考えた。
【0039】これを実現するための、本発明の表示装置のソースドライバ71の内部ブロックを図5に示す。階調データ検出手段52により入力映像信号の階調を検出し、その検出結果により、ソース信号用電流源53に流れる電流量を制御すると同時に、複数の電圧源54aから54cのうちの1つを選択する。また、水平同期信号によって電圧印加期間制御部51の出力を変化させ、電圧印加期間と電流印加期間を制御する。
【0040】図2において、ソース信号線11から信号を画素に書き込む場合、トランジスタ17b、17cが導通状態、トランジスタ17dが非導通状態であることからこの時の1画素分の等価回路を図6(a)に示す。
【0041】電流源125によって所定の電流Iをソース信号線124に流す場合、トランジスタ121にも電流量がIの電流が流れる。図6(a)でわかるように、トランジスタ121のソースまたはドレインとゲートは同一電位となるため、トランジスタ121のゲート電圧とドレイン電流が図6(b)に示すような関係にある場合、ソース信号線124の電位は、電流値により変化する。
【0042】例えば、ソース信号線124に流れる電流がI1からI2に変化する場合、ソース信号線124の電位はVdd-V1からVdd-V2に変化する。また、電流がI1からI3に変化する場合についても同様である。
【0043】電流値変化に要する時間は図6(c)に示すように、変化後の電流値により異なり、I1からI2へは126の実線で示すようにt4-t1時間かかり、127の点線で示すようにI1からI3へはt3-t1時間かかり、電流値が小さいほど変化に時間がかかることがわかる。これは、ソース信号線124にある浮遊容量123の充放電を低電流を用いて行うと、時間がかかるためである。
【0044】そこで、低電流領域(黒に近い階調)では変化に時間がかかることを考慮し、表示階調ごともしくは複数の表示階調ごとに異なる電圧値を印加するようにして、変化量を少なくし、書き込み時間の短縮を図った。
【0045】例えば、16階調表示の場合は階調1、2、4に対応する電圧を準備し、階調1では対応する電圧を電圧印加期間に印加し、階調2、3では階調2に対応する電圧を印加し、階調4以上の場合では階調4に対応する電圧を印加することで、書き込みに必要な時間、特に時間がかかった低電流領域での書き込み時間が短縮でき、1水平走査期間は表示階調によらず220μ秒あればよい。
【0046】他の階調数の場合でも同様に、図5の複数の電圧源で印加する電圧値はそれぞれ、階調表現に必要な最大電圧値と最小電圧値から電圧源54の数で等間隔に割り振った電圧値よりも、低電流領域よりに、電圧値を設定する方がよい。
【0047】また、用意する電源数はソース信号線124の取り得る電圧振幅にもよるが、ソースドライバの回路規模増大と、電源数増加による画質改善の兼ね合いから多くても5つ程度が望ましい。」

また、【図5】には、ソースドライバ71に関して、以下の事項が図示されている。
<事項2>
・複数の電圧源54a?54cからは、各ソース信号線に設けられた各電圧源に対応する電圧出力端に電圧が供給されている。
・ソース信号線76のそれぞれには、電圧印加期間制御部51、ソース信号電流制御信号56及び電圧源選択制御信号161を出力する階調データ検出手段52、ソース信号電流制御信号56が入力されるソース信号用電流源53、複数の電圧源54a?54cからそれぞれ電圧が供給される複数の電圧出力端、複数の電圧出力端から電圧源選択制御信号161によって1つの電圧出力端を選択するスイッチ、電圧出力端からの電圧を供給する電圧供給端、ソース信号用電流源53からの電流を流す電流通過端、電圧印加期間制御部51の出力信号によって電圧供給端と電流通過端のいずれかを選択するスイッチからなる回路群が設けられている。

また、【図6】には、ソース信号線11から信号を画素に書き込む場合の1画素分の等価回路に関して、以下の事項が図示されている
<事項3>
・ソース信号線124に接続された電流源125は、シンク型である。

本発明の画素構成に関する派生形態の説明として、以下の事項が記載されている。
<記載事項5>
「【0134】また、ダイナミックカレントコピアの画素構成において説明を行ってきたが、図35に示すようなカレントミラー構成の画素においても同様に本発明を実施可能である。カレントミラー構成の場合においても、行選択時にはトランジスタ177dを導通状態、トランジスタ177bを非導通状態にして、電流源170により、EL電源線175、トランジスタ177a、177d、ソース信号線171を通して階調に応じた電流を流すという動作を行うため、ソース信号線171に浮遊容量が存在した場合、電流源170の電流値の変化時に、低電流領域では浮遊容量にたまった電荷の充放電を行うことが難しいという課題は同じである。従って、本発明の実施により、書き込み速度が速くなるという効果を得ることができる。」

また、【図35】には、カレントミラー構成の画素に関して、以下の事項が図示されている。
<事項4>
・カレントミラー構成の画素が、
EL電源線175と、
EL素子176と、
前記EL電源線175と前記EL素子176の間に接続されたトランジスタ177cと、
ゲート信号線(1)172と、ソース信号線171の間に接続されたトランジスタ177dと、
前記トランジスタ177dと前記EL電源線175の間に接続されて前記トランジスタ177cとカレントミラー構成となっているトランジスタ177aと、
ゲート信号線(2)173と前記トランジスタ177aの間に接続されたトランジスタ177bと、
前記トランジスタ177aのゲートと前記トランジスタ177cのゲートの間のノードと前記EL電源線175の間に接続された蓄積容量174とを含んでいる。
・前記トランジスタ177dのゲートには、前記ゲート信号線(1)172が接続されている。
・前記トランジスタ177bのゲートには、前記ゲート信号線(2)173が接続されている。
・前記ソース信号線171には、電流源170と電圧源178が電源切り替え手段179を介して接続されている。

(2A-2)引用刊行物1に記載された発明
上記引用刊行物1の段落【0134】、【図35】に記載される表示装置に基づいて引用発明1を認定する。なお、認定するに際し、該表示装置は、【0134】に「図35に示すようなカレントミラー構成の画素においても同様に本発明を実施可能である。」と記載されているように、本発明である(実施の形態1)?(実施の形態14)において、1画素分の回路として、図35に記載のカレントミラー構成の画素を採用した表示装置であるから、ここでは、(実施の形態1)の変形例である(実施の形態2)の1画素分の回路として、図35に記載のカレントミラー構成の画素を採用した表示装置として認定する。そして、図5の表示装置は、従来のアクティブマトリクス型表示装置(段落【0004】?【0014】、【図39】)において、ソースドライバ71として、複数の電圧源54a?c、及び、これらの電圧源から1つの電圧源を選択するスイッチと、電圧印加期間と電流印加期間を切り替えるスイッチを付加したものであるから、これらの構成を除く構成については、従来の表示装置についての記載を参酌する。

(2A-2-1)
上記記載事項1には、「【0001】・・・本発明は、有機電界発光素子など、電流量により階調表示を行う表示装置に関するものである。」と記載されている。
この記載によれば、引用刊行物1には、「有機電界発光素子表示装置」の発明が記載されている。

(2A-2-2)
従来の技術を説明する上記記載事項2には、「【0004】・・・半導体層を有するトランジスタを用いたアクティブマトリクス型表示装置の例を図39に示す。各画素は79に示すように、複数のトランジスタ(スイッチング素子)73と蓄積容量74ならびに有機発光素子72からなる。」と記載されており、【図39】から、上記事項1として、「アクティブマトリクス型表示装置は、複数のソース信号線76と、複数のゲート信号線の組と、前記複数のソース信号線76と前記複数のゲート信号線の組の交点に各画素79が形成されている」こと、「ゲートドライバ70には、複数のゲート信号線の組が接続されている」こと、「ソースドライバ71には、複数のソース信号線76が接続されている」ことが読み取れる。
この記載、及び、これらの事項によれば、引用刊行物1に記載された「有機電界発光素子表示装置」は、「複数のゲート信号線の組と、複数のソース信号線76と、前記複数のゲート信号線の組と前記複数のソース信号線76の交点に形成された画素79であって、各画素が複数のトランジスタと蓄積容量ならびに有機発光素子からなるものと、複数のゲート信号線の組が接続されているゲートドライバ70と、複数のソース信号線76が接続されているソースドライバ71」とを備えている。

(2A-2-3)
実施の形態1の変形例である実施の形態2に関して、【図5】から、上記事項2として、「複数の電圧源54a?54cからは、各ソース信号線に設けられた各電圧源に対応する電圧出力端に電圧が供給されている」ことが読み取れる。
この事項によれば、引用刊行物1に記載された「有機電界発光素子表示装置」は、「各ソース信号線に設けられた各電圧源に対応する電圧出力端に電圧を供給する複数の電圧源54a?54c」を備えている。

(2A-2-4)
実施の形態1を説明する上記記載事項3には、「【0029】図3(a)に示すように、1水平走査期間の初めに電源切り替え手段19を電圧源18側に切り替え、この電圧源18を用いて、ソース信号線22aの電圧を黒信号電流値が流れている状態と同じ電圧にする(ディスチャージ電圧印加期間24)。次に、電源切り替え手段19を電流源10側に切り替え、この電流源10により映像信号に応じた所望の電流値をソース信号線22aに流す(映像信号電流印加期間25)。」と、実施の形態1の変形例である実施の形態2を説明する上記記載事項4には「【0038】そこで、ディスチャージ電圧印加期間24において、黒信号を表示する電圧を印加するのではなく、次に表示する映像信号の階調に応じて、数段階の異なる電圧を印加することを考えた。【0039】これを実現するための、本発明の表示装置のソースドライバ71の内部ブロックを図5に示す。階調データ検出手段52により入力映像信号の階調を検出し、その検出結果により、ソース信号用電流源53に流れる電流量を制御すると同時に、複数の電圧源54aから54cのうちの1つを選択する。また、水平同期信号によって電圧印加期間制御部51の出力を変化させ、電圧印加期間と電流印加期間を制御する。」、「【0044】そこで、低電流領域(黒に近い階調)では変化に時間がかかることを考慮し、表示階調ごともしくは複数の表示階調ごとに異なる電圧値を印加するようにして、変化量を少なくし、書き込み時間の短縮を図った。」と記載されている。また、実施の形態2のソースドライバ71に関して、【図5】から、上記事項2として、「ソース信号線76のそれぞれには、電圧印加期間制御部51、ソース信号電流制御信号56及び電圧源選択制御信号161を出力する階調データ検出手段52、ソース信号電流制御信号56が入力されるソース信号用電流源53、複数の電圧源54a?54cからそれぞれ電圧が供給される複数の電圧出力端、複数の電圧出力端から電圧源選択制御信号161によって1つの電圧出力端を選択するスイッチ、電圧出力端からの電圧を供給する電圧供給端、ソース信号用電流源53からの電流を流す電流通過端、電圧印加期間制御部51の出力信号によって電圧供給端と電流通過端のいずれかを選択するスイッチからなる回路群が設けられている」こと、実施の形態2のソースドライバ71に関して、【図6】から、上記事項3として、「電流源125がシンク型である」ことが読み取れる。
ここで、実施の形態1に記載された表示装置において、1水平走査期間の初めに電圧を印加するディスチャージ電圧印加期間24があり、図3に示されているように、1水平走査期間におけるディスチャージ電圧印加期間24に続いた期間に、電流を印加する映像信号電流印加期間25があるから、映像信号電流印加期間25は、1水平走査期間のディスチャージ電圧印加期間を除いた期間である。そして、実施の形態2は、実施の形態1の変形例であって、実施の形態1のディスチャージ電圧印加期間24が、実施の形態2の電圧印加期間に対応し、実施の形態1の映像信号電流印加期間25が、実施の形態2の電流印加期間に対応するものである。よって、実施の形態2に記載された表示装置においても、1水平走査期間の初めに電圧を印加する電圧印加期間があり、1水平走査期間の電圧印加期間を除いた期間に、電流を印加する電流印加期間がある。また、電流印加期間において流れる電流値は「映像信号に応じた所望の電流値」である。
したがって、引用刊行物1に記載された「有機電界発光素子表示装置」の「ソースドライバ71」は、「ソース信号線76のそれぞれに、電圧印加期間制御部51、ソース信号電流制御信号56及び電圧源選択制御信号161を出力する階調データ検出手段52、ソース信号電流制御信号56が入力されるシンク型のソース信号用電流源53、複数の電圧源54a?54cからそれぞれ電圧が供給される複数の電圧出力端、前記複数の電圧出力端から電圧源選択制御信号161によって1つの電圧出力端を選択するスイッチ、電圧出力端からの電圧を供給する電圧供給端、ソース信号用電流源53からの電流を流す電流通過端、電圧印加期間制御部51の出力信号によって電圧供給端と電流通過端のいずれかを選択するスイッチからなる回路群が設けられており、電圧印加期間制御部51の出力信号を変化させ、1水平走査期間の初めである電圧印加期間に、表示階調ごとに、異なる電圧値を有する複数の電圧源54aから54cのうちの1つを選択して、ソース信号線に選択された電圧値を印加し、1水平走査期間の電圧印加期間を除いた期間である電流印加期間に、入力映像信号の階調を検出し、その検出結果により、ソース信号用電流源53に流れる電流量を制御することにより、ソース信号線に映像信号に応じた所望の電流値の電流量を流す」ものである。

(2A-2-5)
本発明の画素構成に関する派生形態を説明する上記記載事項5には、「【0134】・・・カレントミラー構成の場合においても、行選択時にはトランジスタ177dを導通状態、トランジスタ177bを非導通状態にして、電流源170により、EL電源線175、トランジスタ177a、177d、ソース信号線171を通して階調に応じた電流を流すという動作を行う・・・」と記載されており、【図35】から、上記事項4として、「カレントミラー構成の画素が、EL電源線175と、EL素子176と、前記EL電源線175と前記EL素子176の間に接続されたトランジスタ177cと、 ゲート信号線(1)172と、ソース信号線171の間に接続されたトランジスタ177dと、前記トランジスタ177dと前記EL電源線175の間に接続されて前記トランジスタ177cとカレントミラー構成となっているトランジスタ177aと、ゲート信号線(2)173と前記トランジスタ177aの間に接続されたトランジスタ177bと、前記トランジスタ177aのゲートと前記トランジスタ177cのゲートの間のノードと前記EL電源線175の間に接続された蓄積容量174とを含んでいる」こと、「前記トランジスタ177dのゲートには、前記ゲート信号線(1)172が接続されている」こと、「前記トランジスタ177bのゲートには、前記ゲート信号線(2)173が接続されている」ことが読み取れる。
ここで、本発明の画素構成に関する派生形態において、「行選択時にはトランジスタ177dを導通状態、トランジスタ177bを非導通状態にする」ことは、「蓄積容量174に電荷をプログラムする行選択時に、トランジスタ177b、177dのゲートに異なるゲート信号が供給される」ことを意味している。
したがって、引用刊行物1に記載された「有機電界発光素子表示装置」において、「カレントミラー構成の画素が、EL電源線175と、EL素子176と、前記EL電源線175と前記EL素子176の間に接続されたトランジスタ177cと、 ゲート信号線(1)172と、ソース信号線171の間に接続されたトランジスタ177dと、前記トランジスタ177dと前記EL電源線175の間に接続されて前記トランジスタ177cとカレントミラー構成となっているトランジスタ177aと、ゲート信号線(2)173と前記トランジスタ177aの間に接続されたトランジスタ177bと、前記トランジスタ177aのゲートと前記トランジスタ177cのゲートの間のノードと前記EL電源線175の間に接続された蓄積容量174とを含み、前記トランジスタ177dのゲートには、前記ゲート信号線(1)172が接続され、前記トランジスタ177bのゲートには、前記ゲート信号線(2)173が接続され、蓄積容量174に電荷をプログラムする行選択時に、トランジスタ177b、177dのゲートに異なるゲート信号が供給される」ものである。

(2A-2-6)
(2A-2-1)?(2A-2-5)によれば、引用刊行物1には、以下の引用発明1が記載されている。
「複数のゲート信号線(1)172とゲート信号線(2)173からなるゲート信号線の組と、
複数のソース信号線171と、
前記複数のゲート信号線(1)172とゲート信号線(2)173からなるゲート信号線の組と前記複数のソース信号線171の交点に形成された画素であって、各画素が複数のトランジスタと蓄積容量ならびに有機発光素子からなる画素と、
前記複数のゲート信号線の組が接続されているゲートドライバ70と、
前記複数のソース信号線171が接続されているソースドライバ71と、
前記ソース信号線171ごとに設けられた後述する各電圧源に対応する電圧出力端に電圧を供給する複数の電圧源54a?54cとを備え、
前記ソースドライバ71は、前記ソース信号線171のそれぞれに、電圧印加期間制御部51、ソース信号電流制御信号56及び電圧源選択制御信号161を出力する階調データ検出手段52、前記ソース信号電流制御信号56が入力されるシンク型のソース信号用電流源53、前記複数の電圧源54a?54cからそれぞれ電圧が供給される複数の電圧出力端、前記複数の電圧出力端から前記電圧源選択制御信号161によって1つの前記電圧出力端を選択するスイッチ、前記電圧出力端からの電圧を供給する電圧供給端、前記ソース信号用電流源53からの電流を流す電流通過端、前記電圧印加期間制御部51の出力信号によって前記電圧供給端と前記電流通過端のいずれかを選択するスイッチからなる回路群が設けられており、電圧印加期間制御部51の出力信号を変化させ、1水平走査期間の初めである電圧印加期間に、表示階調ごとに、異なる電圧値を有する複数の電圧源54aから54cのうちの1つを選択して、ソース信号線に選択された電圧値を印加し、1水平走査期間の電圧印加期間を除いた期間である電流印加期間に、入力映像信号の階調を検出し、その検出結果により、ソース信号用電流源53に流れる電流量を制御することにより、ソース信号線に映像信号に応じた所望の電流値の電流量を流すものであり、
前記画素は、カレントミラー構成の画素であって、EL電源線175と、EL素子176と、前記EL電源線175と前記EL素子176の間に接続されたトランジスタ177cと、 ゲート信号線(1)172と、ソース信号線171の間に接続されたトランジスタ177dと、前記トランジスタ177dと前記EL電源線175の間に接続されて前記トランジスタ177cとカレントミラー構成となっているトランジスタ177aと、ゲート信号線(2)173と前記トランジスタ177aの間に接続されたトランジスタ177bと、前記トランジスタ177aのゲートと前記トランジスタ177cのゲートの間のノードと前記EL電源線175の間に接続された蓄積容量174とを含み、前記トランジスタ177dのゲートには、前記ゲート信号線(1)172が接続され、前記トランジスタ177bのゲートには、前記ゲート信号線(2)173が接続され、前記蓄積容量174に電荷をプログラムする行選択時に、トランジスタ177b、177dのゲートに異なるゲート信号が供給される
有機電界発光素子表示装置。」

(2B)引用刊行物2
(2B-1)引用刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の2003年6月27日に頒布された刊行物である特開2003-177709号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、「有機EL素子表示装置」の発明に関して、以下の事項が記載されている。

<記載事項6>
「【0002】
【従来の技術】近年、有機EL素子(Organic ElectroLuminescent element)を用いた電気光学装置が開発されている。有機EL素子は、自発光素子であり、バックライトが不要なので、低消費電力、高視野角、高コントラスト比の表示装置を達成できるものと期待されている。なお、本明細書において、「電気光学装置」とは、電気信号を光に変換する装置を意味している。電気光学装置の最も普通の形態は、画像を表す電気信号を画像を表す光に変換する装置であり、特に表示装置として好適である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】有機EL素子の画素回路としては、電圧値に応じて発光階調を設定する電圧プログラミング方式の画素回路と、電流値に応じて発光階調を設定する電流プログラミング方式の画素回路とが存在する。なお、「プログラミング」とは、画素回路に発光階調を設定する処理を意味している。電圧プログラミング方式は、比較的高速であるが、発光階調の設定精度があまり良くない場合がある。一方、電流プログラミング方式は、発光階調の設定精度は比較的良好であるが、設定に比較的長時間を要する場合がある。」

<記載事項7>
「【0021】A.第1実施例:図1は、本発明の第1実施例としての表示装置の概略構成を示すブロック図である。この表示装置は、コントローラ100と、表示マトリクス部200(「画素領域」とも呼ぶ)と、ゲートドライバ300と、データ線ドライバ400とを有している。コントローラ100は、表示マトリクス部200に表示を行わせるためのゲート線駆動信号とデータ線駆動信号を生成して、ゲートドライバ300とデータ線ドライバ400にそれぞれ供給する。
【0022】図2は、表示マトリクス部200とデータ線ドライバ400の内部構成を示している。表示マトリクス部200は、マトリクス状に配列された複数の画素回路210を有しており、各画素回路210は有機EL素子220をそれぞれ有している。画素回路210のマトリクスには、その列方向に沿って伸びる複数のデータ線Xm(m=1?M)と、行方向に沿って伸びる複数のゲート線Yn(n=1?N)とがそれぞれ接続されている。なお、データ線は「ソース線」とも呼ばれ、また、ゲート線は「走査線」とも呼ばれる。また、本明細書では、画素回路210を「単位回路」あるいは単に「画素」とも呼ぶ。画素回路210内のトランジスタは、通常はTFT(薄膜トランジスタ)で構成される。
【0023】ゲートドライバ300は、複数のゲート線Ynの中の1本を選択的に駆動して1行分の画素回路群を選択する。データ線ドライバ400は、各データ線Xmをそれぞれ駆動するための複数の単一ラインドライバ410を有している。これらの単一ラインドライバ410は、各データ線Xmを介して画素回路210にデータ信号を供給する。このデータ信号に応じて画素回路210の内部状態(後述する)が設定されると、これに応じて有機EL素子220に流れる電流値が制御され、この結果、有機EL素子220の発光の階調が制御される。
【0024】図3は、第1実施例の画素回路210と単一ラインドライバ410の内部構成を示す回路図である。この画素回路210は、m番目のデータ線とn番目のゲート線Ynとの交点に配置されている回路である。なお、1組のデータ線Xmは2本のサブデータ線U1,U2を含んでおり、1組のゲート線Ynは3本のサブゲート線V1?V3を含んでいる。
【0025】単一ラインドライバ410は、電圧生成回路411と電流生成回路412とを有している。電圧生成回路411は、第1のサブデータ線U1を介して画素回路210に電圧信号Vout を供給する。また、電流生成回路412は、第2のサブデータ線U2を介して画素回路210に電流信号Iout を供給する。
【0026】画素回路210は、電流プログラミング回路240に、2つのスイッチングトランジスタ251,252が追加された構成を有している。電流プログラミング回路240は、第2のサブデータ線U2に流れる電流値に応じて有機EL素子220の階調を調節する回路である。
【0027】図4は、トランジスタ251がオン状態で他のトランジスタ252がオフ状態である場合の画素回路210の等価回路(すなわち電流プログラミング回路240の等価回路)を示している。この電流プログラミング回路240は、有機EL素子220の他に、4つのトランジスタ211?214と、保持キャパシタ230(「保持コンデンサ」あるいは「記憶キャパシタ」とも呼ぶ)とを有している。保持キャパシタ230は、第2のサブデータ線U2を介して供給された電流信号Iout の電流値に応じた電荷を保持し、これによって、有機EL素子220の発光の階調を調節するためのものである。この例では、第1ないし第3のトランジスタ211?213はnチャンネル型FETであり、第4のトランジスタ214はpチャンネル型FETである。有機EL素子220は、フォトダイオードと同様の電流注入型(電流駆動型)の発光素子なので、ここではダイオードの記号で描かれている。
【0028】第1のトランジスタ211のドレインは、第2のトランジスタ212のソースと、第3のトランジスタ213のドレインと、第4のトランジスタ214のドレインと、にそれぞれ接続されている。第2のトランジスタ212のドレインは、第4のトランジスタ214のゲートに接続されている。保持キャパシタ230は、第4のトランジスタ214のソース/ゲート間に接続されている。また、第4のトランジスタ214のソースは、電源電位Vddにも接続されている。第1のトランジスタ212のソースは、第2のサブデータ線U2を介して電流生成回路412に接続されている。有機EL素子220は、第3のトランジスタ213のソースと接地電位との間に接続されている。第1と第2のトランジスタ211,212のゲートは、第2のサブゲート線V2に共通に接続されている。また、第3のトランジスタ213のゲートは、第3のサブゲート線V3に接続されている。
【0029】第1と第2のトランジスタ211,212は、第2のサブデータ線U2を介して保持キャパシタ230に電荷を蓄積する際に使用されるスイッチングトランジスタである。第3のトランジスタ213は、有機EL素子220の発光期間においてオン状態に保たれるスイッチングトランジスタである。また、第4のトランジスタ214は、有機EL素子220に流れる電流値を制御するための駆動トランジスタである。第4のトランジスタ214の電流値は、保持キャパシタ230に保持される電荷量(蓄積電荷量)によって制御される。
【0030】図3に示す画素回路210と図4に示す等価回路との差異は以下の点である。
(1)第2のトランジスタ212のドレインと第4のトランジスタのゲートとの接続点CP1(図4)と、保持キャパシタ230との間に、スイッチングトランジスタ251が追加されている。
(2)保持キャパシタ230とスイッチングトランジスタ251との接続点CP2と、第1のサブデータ線U1との間に、スイッチングトランジスタ252が追加されている。
(3)追加された2つのトランジスタ251,252のゲートに共通に接続されたサブゲート線V1が追加されている。
(4)保持キャパシタ230には、第1のサブデータ線U1を介して電圧生成回路411からの電圧信号Vout が供給可能であり、また、第2のサブデータ線U2を介して電流生成回路412からの電流信号Iout が供給可能である。
【0031】なお、以下では、追加されたトランジスタ251,252を、「電圧プログラミング用トランジスタ251,252」と呼ぶ。図3の例では、第1の電圧プログラミング用トランジスタ251はpチャンネル型FETであり、第2の電圧プログラミング用トランジスタ252はnチャンネル型FETである。
【0032】電流プログラミング回路240の第1と第2のトランジスタ211,212は、電流信号Iout によって保持キャパシタ230に電荷を供給するか否かを制御する機能を有しており、本発明における「第1のスイッチングトランジスタ」に相当する。また、第2の電圧プログラミング用トランジスタ252は、電圧信号Vout によって保持キャパシタ230に電荷を供給するか否かを制御する機能を有しており本発明における「第2のスイッチングトランジスタ」に相当する。さらに、第1の電圧プログラミング用トランジスタ251は、本発明における「第3のスイッチングトランジスタ」に相当する。なお、第1の電圧プログラミング用トランジスタ251は省略することも可能である。
【0033】図5は、画素回路210の動作を示すタイミングチャートである。ここでは、サブゲート線V1?V3の電圧値(以下、「ゲート信号V1?V3」も呼ぶ)と、第2のサブデータ線U2の電流値Iout と、有機EL素子220に流れる電流値IELとが示されている。
【0034】駆動周期Tcは、プログラミング期間Tprと発光期間Telとに分かれている。ここで、「駆動周期Tc」とは、表示マトリクス部200内のすべての有機EL素子220の発光の階調が1回ずつ更新される周期を意味しており、いわゆるフレーム周期と同じものである。階調の更新は、1行分の画素回路群毎に行われ、駆動周期Tcの間にN行分の画素回路群の階調が順次更新される。例えば、30Hzで全画素回路の階調が更新される場合には、駆動周期Tcは約33msである。
【0035】プログラミング期間Tprは、有機EL素子220の発光の階調を画素回路210内に設定する期間である。本明細書では、画素回路210への階調の設定を「プログラミング」と呼んでいる。例えば、駆動周期Tcが約33msであり、ゲート線Ynの総数N(すなわち画素回路マトリクスの行数)が480本である場合には、プログラミング周期Tprは約69μs(=33ms/480)以下になる。
【0036】プログラミング期間Tprでは、まず、第2と第3のゲート信号V2,V3をLレベルに設定して第1と第3のトランジスタ211,213をオフ状態(閉状態)に保つ。そして、第1のゲート信号V1をHレベルに設定して、第1の電圧プログラミング用トランジスタ251をオフ状態(閉状態)に設定するとともに、第2の電圧プログラミング用トランジスタ252をオン状態(開状態)に設定する。このとき、電圧生成回路411(図3)は、発光階調に応じた所定の電圧値の電圧信号Vout を生成する。但し、電圧信号Vout としては、発光階調に依らずに常に一定の電圧値を有する信号を利用することも可能である。この電圧信号Vout が、第2の電圧プログラミング用トランジスタ252を介して保持キャパシタ230に供給されると、保持キャパシタ230には電圧信号Vout の電圧値に応じた電荷が蓄積される。
【0037】こうして電圧信号Vout によるプログラミングが終了すると、第1のゲート信号V1をLレベルに立ち下げて、第1の電圧プログラミング用トランジスタ251をオン状態に設定するとともに、第2の電圧プログラミング用トランジスタ252をオフ状態に設定する。このとき、画素回路210は図4に示した等価回路になる。この状態において、第2のサブデータ線U2上に発光階調に応じた電流値Imを流しながら、第2のゲート信号V2をHレベルに設定して第1と第2のトランジスタ211,212をオン状態にする(図5(b),(e))。このとき、電流生成回路412(図3)は、発光階調に応じた一定の電流値Imを流す定電流源として機能する。図5(e)に示されているように、この電流値Imは、所定の電流値の範囲RI内において、有機EL素子220の発光の階調に応じた値に設定されている。
【0038】この電流値Imによるプログラミングの結果、保持キャパシタ230は、第4のトランジスタ214(駆動トランジスタ)を流れる電流値Imに対応した電荷を保持した状態となる。このとき、第4のトランジスタ214のソース/ゲート間には、保持キャパシタ230に記憶された電圧が印加される。なお、本明細書では、プログラミングに用いられるデータ信号の電流値Imを「プログラミング電流値Im」と呼ぶ。
【0039】電流信号Iout によるプログラミングが終了すると、ゲートドライバ300が第2のゲート信号V2をLレベルに設定して第1と第2のトランジスタ211,212をオフ状態とし、また、電流生成回路412は電流信号Iout を停止する。
【0040】発光期間Telでは、第1のゲート信号V1をLレベルに維持して画素回路210を図4の等価回路の状態に設定する。また、第2のゲート信号V2もLレベルに維持し、第1と第2のトランジスタ211,212をオフ状態に保ったまま、第3のゲート信号V3をHレベルに設定して第3のトランジスタ213をオン状態に設定する。保持キャパシタ230には、プログラミング電流値Imに対応した電圧が予め記憶されているので、第4のトランジスタ214にはプログラミング電流値Imとほぼ同じ電流が流れる。従って、有機EL素子220にもプログラミング電流値Imとほぼ同じ電流が流れ、この電流値Imに応じた階調で発光する。
【0041】以上のように、第1実施例の画素回路210は、電圧信号Vout によるプログラミングを行った後に、電流信号Iout によるプログラミングを行うので、電圧信号Vout のみによるプログラミングに比べて正確に発光階調を設定できる。また、電流信号Iout のみによるプログラミングに比べて高速に発光階調を設定できる。すなわち、この画素回路210は、従来に比べて高速で高精度な発光階調の設定を実現することが可能である。」

<記載事項8>
「【0063】E.第5実施例:図12は、第5実施例の画素回路210dと単一ラインドライバ410dの内部構成を示す回路図である。この画素回路210dは、図4に示した回路と同じものである。すなわち、第5実施例では、第1実施例(図3)に設けられていた2つのスイッチングトランジスタ251,252を有していない。また、これらのトランジスタ251,252のためのサブゲート線V1も省略されている。単一ラインドライバ410dや、その内部の回路411d,412dは、図3に示した第1実施例におけるこれらの回路と同じものである。但し、第5実施例では、電圧生成回路411dと電流生成回路412dとが、1本のデータ信号線Xmに共通に接続されている点で第1実施例と異なる。
【0064】図13は、第5実施例の画素回路210dの動作を示すタイミングチャートである。プログラミング期間Tprの前半では電圧生成回路411dから電圧信号Vout (図13(c))がデータ線Xmに供給されて電圧プログラミングが実行され、このとき、データ線Xmの充電または放電と、保持キャパシタ230の充電または放電とが行われる。後半では電流生成回路412dから電流信号Iout(図13(d))が供給されて、保持キャパシタ230が正確にプログラミングされる。第5実施例では、電圧プログラミングと電流プログラミングの両方においてスイッチングトランジスタ211がオン状態に設定されるので、これらの両方においてゲート信号V2がHレベルに保たれる。
【0065】このように、従来と同じ画素回路を用いた場合にも、電圧プログラミングと電流プログラミングとを併用するようにすれば、電圧プログラミングのみの場合に比べて正確に発光階調を設定でき、また、電流プログラミングのみの場合に比べて高速に発光階調を設定できる。特に、第5実施例では、1つのデータ線Xmを用いて電圧プログラミングが行われた後に、同じデータ線Xmを用いて電流プログラミングが実施される。電圧プログラミングでは、データ線Xmと保持キャパシタ230の両方に対して一種のプリチャージが行われ、その後、電流プログラミングが実施される。従って、従来に比べて高速にかつ正確に発光階調を設定することが可能である。
【0066】図14は、第5実施例の変形例を示す回路図である。この変形例では、電圧生成回路411dが、電源電圧Vdd側に配置されている点が図12の構成と異なる。このような回路においても、図12の回路と同様な効果が得られる。
【0067】なお、第5実施例のように、同一のデータ線Xmを用いて電圧プログラミングと電流プログラミングを行う場合に、電圧プログラミング期間と電流プログラミング期間とが部分的に重なり合っていても良い。発光階調を正確に設定するためには、少なくとも電圧プログラミング(電圧信号の供給)が完了した後の期間において、電流プログラミング(電流信号の供給)が行われるように、電圧信号と電流信号のタイミングが調整されていることが好ましい。」

(2B-2)引用刊行物2に記載された発明
上記引用刊行物2の段落【0063】?【0065】、【図12】、【図13】に記載される第5実施例の表示装置に基づいて引用発明2を認定する。なお、認定に際し、【0063】には、「この画素回路210dは、図4に示した回路と同じものである。すなわち、第5実施例では、第1実施例(図3)に設けられていた2つのスイッチングトランジスタ251,252を有していない。また、これらのトランジスタ251,252のためのサブゲート線V1も省略されている。単一ラインドライバ410dや、その内部の回路411d,412dは、図3に示した第1実施例におけるこれらの回路と同じものである。但し、第5実施例では、電圧生成回路411dと電流生成回路412dとが、1本のデータ信号線Xmに共通に接続されている点で第1実施例と異なる。」と記載されており、【0063】?【0065】、【図12】、【図13】に明示されていない事項については、第1実施例を説明する記載事項7に基づいて認定する。

(2B-2-1)
上記記載事項6には、「【0002】・・・近年、有機EL素子(Organic ElectroLuminescent element)を用いた電気光学装置が開発されている。・・・本明細書において、「電気光学装置」とは、・・・特に表示装置として好適である。・・・」と記載されている。
この記載によれば、引用刊行物2には、「有機EL素子表示装置」の発明が記載されている。

(2B-2-2)
第1実施例を説明する上記記載事項7には、「【0022】図2は、表示マトリクス部200とデータ線ドライバ400の内部構成を示している。表示マトリクス部200は、マトリクス状に配列された複数の画素回路210を有しており、各画素回路210は有機EL素子220をそれぞれ有している。画素回路210のマトリクスには、その列方向に沿って伸びる複数のデータ線Xm(m=1?M)と、行方向に沿って伸びる複数のゲート線Yn(n=1?N)とがそれぞれ接続されている。・・・」、「【0027】図4は、トランジスタ251がオン状態で他のトランジスタ252がオフ状態である場合の画素回路210の等価回路(すなわち電流プログラミング回路240の等価回路)を示している。この電流プログラミング回路240は、・・・保持キャパシタ230(「保持コンデンサ」あるいは「記憶キャパシタ」とも呼ぶ)とを有している。・・・」と記載されている。
この記載によれば、引用刊行物2に記載された「有機EL素子表示装置」は、「行方向に沿って伸びる複数のゲート線Yn(n=1?N)と、列方向に沿って伸びる複数のデータ線Xm(m=1?M)と、マトリクス状に配列された複数の画素回路210であって、前記複数のゲート線Yn(n=1?N)と前記複数のデータ線Xm(m=1?M)とに接続され、有機EL素子220と保持キャパシタ230とを有する複数の画素回路210」とを有している。

(2B-2-3)
第1実施例を説明する上記記載事項7には、「【0023】ゲートドライバ300は、複数のゲート線Ynの中の1本を選択的に駆動して1行分の画素回路群を選択する。データ線ドライバ400は、各データ線Xmをそれぞれ駆動するための複数の単一ラインドライバ410を有している。これらの単一ラインドライバ410は、各データ線Xmを介して画素回路210にデータ信号を供給する。・・・」と記載されている。
この記載によれば、引用刊行物2に記載された「有機EL素子表示装置」は、「複数のゲート線Ynの中の1本を選択的に駆動ゲートドライバ300と、各データ線Xmをそれぞれ駆動するための複数の単一ラインドライバ410を有するデータ線ドライバ400」とを有している。

(2B-2-4)
第1実施例を説明する上記記載事項7には、「【0025】単一ラインドライバ410は、電圧生成回路411と電流生成回路412とを有している。電圧生成回路411は、第1のサブデータ線U1を介して画素回路210に電圧信号Vout を供給する。また、電流生成回路412は、第2のサブデータ線U2を介して画素回路210に電流信号Iout を供給する。」、「【0036】プログラミング期間Tprでは、まず、・・・電圧生成回路411(図3)は、発光階調に応じた所定の電圧値の電圧信号Vout を生成する。・・・この電圧信号Vout が、第2の電圧プログラミング用トランジスタ252を介して保持キャパシタ230に供給されると、保持キャパシタ230には電圧信号Vout の電圧値に応じた電荷が蓄積される。」、「【0037】こうして電圧信号Vout によるプログラミングが終了すると、・・・電流生成回路412(図3)は、発光階調に応じた一定の電流値Imを流す定電流源として機能する。図5(e)に示されているように、この電流値Imは、所定の電流値の範囲RI内において、有機EL素子220の発光の階調に応じた値に設定されている。【0038】この電流値Imによるプログラミングの結果、保持キャパシタ230は、第4のトランジスタ214(駆動トランジスタ)を流れる電流値Imに対応した電荷を保持した状態となる。」と記載されている。
これらの記載によれば、引用刊行物2の第1実施例の表示装置は、「プログラミング期間Tprの初めの期間に、発光階調に応じた所定の電圧値の電圧信号Vout を生成することにより、保持キャパシタ230に電圧信号Vout の電圧値に応じた電荷を蓄積する電圧生成回路411と、プログラミング期間Tprにおいて電圧信号Vout によるプログラミングが終了後に、発光階調に応じた一定の電流値Imを流す電流生成回路412とを有する単一ラインドライバ410」を有している。

(2B-2-5)
第5実施例を説明する上記記載事項8には、「【0063】・・・単一ラインドライバ410dや、その内部の回路411d,412dは、図3に示した第1実施例におけるこれらの回路と同じものである。但し、第5実施例では、電圧生成回路411dと電流生成回路412dとが、1本のデータ信号線Xmに共通に接続されている点で第1実施例と異なる。【0064】・・・プログラミング期間Tprの前半では電圧生成回路411dから電圧信号Vout (図13(c))がデータ線Xmに供給されて電圧プログラミングが実行され、このとき、データ線Xmの充電または放電と、保持キャパシタ230の充電または放電とが行われる。後半では電流生成回路412dから電流信号Iout(図13(d))が供給されて、保持キャパシタ230が正確にプログラミングされる。・・・」と記載されている。
(2B-2-4)によれば、引用刊行物2の第1実施例の表示装置において、「電圧生成回路411」は「プログラミング期間Tprの初めの期間に、発光階調に応じた所定の電圧値の電圧信号Vout を生成することにより、保持キャパシタ230に電圧信号Vout の電圧値に応じた電荷を蓄積する」ものであり、「電流生成回路412」は「プログラミング期間Tprにおいて電圧信号Vout によるプログラミングが終了後に、発光階調に応じた一定の電流値Imを流す」ものである。そして、「単一ラインドライバ410dや、その内部の回路411d,412dは、図3に示した第1実施例におけるこれらの回路と同じもので」(【0063】)あって、「プログラミング期間Tprの初めの期間」は「プログラミング期間Tprの前半」であり、「プログラミング期間Tprにおいて電圧信号Vout によるプログラミングが終了後の期間」は「プログラミング期間Tprの後半」である。
したがって、引用刊行物2に記載された「有機EL素子表示装置」は、「プログラミング期間Tprの前半で、発光階調に応じた所定の電圧値の電圧信号Vout を生成することにより、保持キャパシタ230に電圧信号Vout の電圧値に応じた電荷を蓄積する電圧生成回路411dと、プログラミング期間Tprの後半に、発光階調に応じた一定の電流値Imを流す電流生成回路412dとを有する単一ラインドライバ410d」を有している。

(2B-2-6)
(2B-2-1)?(2B-2-3)、(2B-2-5)によれば、引用刊行物2には、以下の引用発明2が記載されている。
「行方向に沿って伸びる複数のゲート線Yn(n=1?N)と、
列方向に沿って伸びる複数のデータ線Xm(m=1?M)と、
マトリクス状に配列された複数の画素回路210であって、前記複数のゲート線Yn(n=1?N)と前記複数のデータ線Xm(m=1?M)とに接続され、有機EL素子220と保持キャパシタ230とを有する複数の画素回路210と、
複数のゲート線Ynの中の1本を選択的に駆動ゲートドライバ300と、
各データ線Xmをそれぞれ駆動するための複数の単一ラインドライバ410dを有するデータ線ドライバ400とを備え、
前記単一ラインドライバ410dは、プログラミング期間Tprの前半で、発光階調に応じた所定の電圧値の電圧信号Vout を生成することにより、前記保持キャパシタ230に電圧信号Vout の電圧値に応じた電荷を蓄積する電圧生成回路411dと、プログラミング期間Tprの後半に、発光階調に応じた一定の電流値Imを流す電流生成回路412dとを有する
有機EL素子表示装置。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを比較する。

(3-1)
引用発明1の「複数のソース信号線171」は本願補正発明の「複数のデータライン」に相当し、以下同様に、「有機発光素子」、「EL素子176」は共に「発光セル」に、「複数のトランジスタと蓄積容量」は「発光セル駆動回路」に、「画素」は「画素セル」に、「有機発光素子表示装置」は「エレクトロルミネセンス表示装置」に相当する。
また、引用発明1の「複数のゲート信号線(1)172とゲート信号線(2)173からなるゲート信号線の組」と本願補正発明の「複数のゲートライン」は共に、「それぞれが画素セルの1行を規定する、複数の走査線単位」である点で共通する。

(3-2)
引用発明1の「ゲートドライバ70」は「複数のゲート信号線(1)172とゲート信号線(2)173からなるゲート信号線の組」が接続されたものであって、ゲート信号線(1)172とゲート信号線(2)173にはそれぞれ、各画素内のトランジスタ177b、177dが接続されており、蓄積容量174に電荷をプログラムする行選択時に、トランジスタ177b、177dのゲートに異なるゲート信号を供給するものである。ここで、行選択期間は、1水平走査期間であるから、引用発明1の「ゲートドライバ70」は、各1水平走査期間に、複数のゲート信号線(1)172とゲート信号線(2)173からなるゲート信号線の組のそれぞれに、ゲート信号を供給するものである。
そして、(3-1)の相当関係から、引用発明1の「複数のゲート信号線(1)172とゲート信号線(2)173からなるゲート信号線の組」と本願補正発明の「複数のゲートライン」は共に、「それぞれが画素セルの1行を規定する、複数の走査線単位」である点で共通するから、引用発明1の「各1水平走査期間に、複数のゲート信号線(1)172とゲート信号線(2)173からなるゲート信号線の組のそれぞれに、ゲート信号を供給するゲートドライバ70」と、本願補正発明の「各1水平期間にゲート信号を前記複数のゲートラインのそれぞれに順次供給するためのゲートドライバー」は共に、「各1水平期間にゲート信号を、画素セルの1行を規定する複数の走査線単位のそれぞれに順次供給するゲートドライバー」である点で共通する。

(3-3)
引用発明1の「電圧印加期間」は1水平走査期間の初めに電圧を印加する期間であり、本願補正発明の「第1期間」も「前記画素セルに電圧信号を供給する」1水平期間内の期間であるから、引用発明1の「電圧印加期間」は、本願補正発明の「第1期間」に相当する。同様に、引用発明1の「電流印加期間」は、本願補正発明の「第2期間」に相当する。

(3-4)
引用発明1の「ソースドライバ71」内に設けられたソース信号線のそれぞれに設けられた回路群は、「電圧印加期間制御部51の出力信号を変化させ、1水平走査期間の初めである電圧印加期間に、表示階調ごとに、異なる電圧値を有する複数の電圧源54aから54cのうちの1つを選択して、ソース信号線に選択された電圧値を印加」するものであるが、「電圧印加期間」においては、「前記電圧供給端と前記電流通過端のいずれかを選択するスイッチ」は「電圧印加期間制御部51の出力信号」によって「前記電圧供給端」を選択しているものである。
ここで、「ソース信号線に選択された電圧値を印加」することは、「ソース信号線」に接続された画素に選択された電圧値を印加することである。
よって、引用発明1の「ソースドライバ71」内に設けられたソース信号線のそれぞれに設けられた回路群において、「前記複数の電圧源54a?54cからそれぞれ電圧が供給される複数の電圧出力端、前記複数の電圧出力端から前記電圧源選択制御信号161によって1つの前記電圧出力端を選択するスイッチ、前記電圧出力端からの電圧を供給する電圧供給端」は、電圧印加期間に、ソース信号線に接続された画素に選択された電圧値を印加するものである。
また、本願補正発明の「複数のデータ集積回路」内の「電圧駆動部」も「前記1水平期間の第1期間の間、前記画素セルに電圧信号を供給する」ものである。
そして、(3-3)の相当関係から、引用発明1の「電圧印加期間」は、本願補正発明の「第1期間」に相当する。
したがって、引用発明1の「ソースドライバ71」内の回路群の「前記複数の電圧源54a?54cからそれぞれ電圧が供給される複数の電圧出力端、前記複数の電圧出力端から前記電圧源選択制御信号161によって1つの前記電圧出力端を選択するスイッチ、前記電圧出力端からの電圧を供給する電圧供給端」は、本願補正発明の「複数のデータ集積回路」内の「電圧駆動部」に相当する。

(3-5)
同様に、引用発明1の「ソースドライバ71」内の回路群は、「1水平走査期間の電圧印加期間を除いた期間である電流印加期間に、入力映像信号の階調を検出し、その検出結果により、ソース信号用電流源53に流れる電流量を制御することにより、ソース信号線に映像信号に応じた所望の電流値の電流量を流すものである」が、「電流印加期間」においては、「前記電圧供給端と前記電流通過端のいずれかを選択するスイッチ」は「電圧印加期間制御部51の出力信号」によって「前記電流通過端」を選択しているものである。
ここで、シンク型の電流源によって「ソース信号線に映像信号に応じた所望の電流値の電流量を流す」ことは、「ソース信号線」に接続された画素から映像信号に応じた所望の電流値の電流量の供給を受けることである。
よって、引用発明1の「ソースドライバ71」内の回路群において、「前記ソース信号電流制御信号56が入力されるシンク型のソース信号用電流源53、前記ソース信号用電流源53からの電流を流す電流通過端」は、電流印加期間に、ソース信号線に接続された画素から映像信号に応じた所望の電流値の電流量の供給を受けるものである。
また、本願補正発明の「複数のデータ集積回路」内の「電流駆動部」も「前記第1水平期間の第1期間を除いた第2期間の間、前記画素セルから電流信号の供給を受ける」ものである。
そして、(3-3)の相当関係から、引用発明1の「電流印加期間」は、本願補正発明の「第2期間」に相当する。
したがって、引用発明1の「ソースドライバ71」内の回路群の「前記ソース信号電流制御信号56が入力されるシンク型のソース信号用電流源53、前記ソース信号用電流源53からの電流を流す電流通過端」は、本願補正発明の「複数のデータ集積回路」内の「電流駆動部」に相当する。

(3-6)
引用発明1の「ソースドライバ71」内の回路群は「前記複数の電圧源54a?54cからそれぞれ電圧が供給される複数の電圧出力端、前記複数の電圧出力端から前記電圧源選択制御信号161によって1つの前記電圧出力端を選択するスイッチ、前記電圧出力端からの電圧を供給する電圧供給端」、「前記ソース信号電流制御信号56が入力されるシンク型のソース信号用電流源53、前記ソース信号用電流源53からの電流を流す電流通過端」を有するものであり、本願補正発明の「データ集積回路」も「電圧駆動部」、「電流駆動部」を有するものである。
ここで、引用発明1の「ソースドライバ71」内の回路群の「前記複数の電圧源54a?54cからそれぞれ電圧が供給される複数の電圧出力端、前記複数の電圧出力端から前記電圧源選択制御信号161によって1つの前記電圧出力端を選択するスイッチ、前記電圧出力端からの電圧を供給する電圧供給端」は、本願補正発明の「複数のデータ集積回路」内の「電圧駆動部」に相当し、引用発明1の「ソースドライバ71」内の回路群の「前記ソース信号電流制御信号56が入力されるシンク型のソース信号用電流源53、前記ソース信号用電流源53からの電流を流す電流通過端」は、本願補正発明の「複数のデータ集積回路」内の「電流駆動部」に相当するから、引用発明1の「ソースドライバ71」内の1組の回路群は、本願補正発明の「データ集積回路」に相当する。そして、引用発明1の「ソースドライバ71」内の回路群はソース信号線のそれぞれに設けられているから、複数あるものである。

(3-7)
引用発明1の「複数の電圧源54a?54c」は、各ソース信号線に設けられた各電圧源に対応する電圧出力端に電圧を供給するものであり、異なる電圧値を出力するものである。ここで、(3-3)の相当関係から、引用発明1の「各ソース信号線に設けられた各電圧源に対応する電圧出力端」は、本願補正発明の「電圧駆動部」に対応する構成の一部であるから、引用発明1の「各ソース信号線に設けられた各電圧源に対応する電圧出力端に電圧を供給するものであり、異なる電圧値を出力する複数の電圧源54a?54c」と、本願補正発明の「前記電圧信号が生成されるように前記電圧駆動部に複数の電圧レベルを有するガンマ電圧値を供給するガンマ電圧部」は共に、「前記電圧信号が生成されるように前記電圧駆動部に複数の電圧レベルを有する電圧値を供給する電圧部」である点で共通する。

(3-8)
(3-5)で示したように、引用発明1の「前記ソース信号電流制御信号56が入力されるシンク型のソース信号用電流源53、前記ソース信号用電流源53からの電流を流す電流通過端」は、電流印加期間に、ソース信号線に接続された画素から映像信号に応じた所望の電流値の電流量の供給を受けるものである。
ここで、引用発明1の「映像信号」は本願補正発明の「供給されるデータ」に相当するから、引用発明1の「映像信号に応じた所望の電流値」は本願補正発明の「供給されるデータに対応する電流ガンマ信号」に相当する。
そして、本願補正発明の「電流駆動ブロック」も「供給されるデータに対応するように電流ガンマ信号を選択して、選択された電流ガンマ信号を利用して前記画素セルからデータに対応する電流が供給されるように制御する」ものである。
したがって、引用発明1の、電流印加期間に、ソース信号線に接続された画素から映像信号に応じた所望の電流値の電流量の供給を受ける、「前記ソース信号電流制御信号56が入力されるシンク型のソース信号用電流源53、前記ソース信号用電流源53からの電流を流す電流通過端」は、本願補正発明の、供給されるデータに対応するように電流ガンマ信号を選択して、選択された電流ガンマ信号を利用して前記画素セルからデータに対応する電流が供給されるように制御する、「電流駆動ブロック」に相当する。

(3-9)
また、(3-4)で示したように、引用発明1の「前記複数の電圧源54a?54cからそれぞれ電圧が供給される複数の電圧出力端、前記複数の電圧出力端から前記電圧源選択制御信号161によって1つの前記電圧出力端を選択するスイッチ、前記電圧出力端からの電圧を供給する電圧供給端」は、電圧印加期間に、ソース信号線に接続された画素に、表示階調に応じて異なる電圧値を有する複数の電圧源54aから54cのうちの1つを選択して、選択された電圧値を印加するものである。
ここで、引用発明1の映像信号の「表示階調」は本願補正発明の「供給されるデータ」の「表示階調」に相当し、(3-7)の相当関係から、引用発明1の「複数の電圧源54a?54c」と本願補正発明の「ガンマ電圧部」は共に、「前記電圧信号が生成されるように前記電圧駆動部に複数の電圧レベルを有する電圧値を供給する電圧部」である点で共通するから、引用発明1の「表示階調に応じて異なる電圧値を有する複数の電圧源54aから54cのうちの1つを選択」することと本願補正発明の「供給されるデータに対応するように前記ガンマ電圧部から供給される複数の電圧ガンマ信号の中からいずれかを選択」することとは共に、「供給されるデータの表示階調に対応するように前記電圧部から供給される複数の電圧信号のうちの1つを選択」することである点で共通する。
そして、実施の形態2を説明する上記記載事項4には、「そこで、低電流領域(黒に近い階調)では変化に時間がかかることを考慮し、表示階調ごともしくは複数の表示階調ごとに異なる電圧値を印加するようにして、変化量を少なくし、書き込み時間の短縮を図った。」と記載されており、実施の形態2において電流を印加する前に電圧を印加することは、ソース信号線、及び、ソース信号線に接続された画素の予備充電を行うためであることは明らかである。また、(3-1)の相当関係から、引用発明1の「ソース信号線」は本願補正発明の「データライン」に相当する。
したがって、引用発明1の、「ソース信号線に接続された画素に、表示階調に応じて異なる電圧値を有する複数の電圧源54aから54cのうちの1つを選択して、選択された電圧値を印加することにより、画素の予備充電を行う、前記複数の電圧源54a?54cからそれぞれ電圧が供給される複数の電圧出力端、前記複数の電圧出力端から前記電圧源選択制御信号161によって1つの前記電圧出力端を選択するスイッチ、前記電圧出力端からの電圧を供給する電圧供給端」と、本願補正発明の「供給されるデータに対応するように前記ガンマ電圧部から供給される複数の電圧ガンマ信号の中からいずれかを選択して、選択された電圧ガンマ信号をデータラインに供給することで前記画素セルが予備充電されるように制御する電圧駆動ブロック」とは共に、「供給されるデータの表示階調に対応するように前記電圧部から供給される複数の電圧信号のうちの1つを選択して、選択された電圧信号をデータラインに供給することで前記画素セルが予備充電されるように制御する電圧駆動ブロック」である点で共通する。

(3-10)
引用発明1の「前記電圧印加期間制御部51の出力信号によって前記電圧供給端と前記電流通過端のいずれかを選択するスイッチ」は、電圧印加期間制御部51の出力信号によって、ソース信号線に電圧供給端を接続するか、電流通過端を接続するかを択一的に選択するものである。
また、本願補正発明の「第1スイッチング部」も、データラインと電流駆動ブロックを、外部から供給される制御信号の第1極性によってターンオンされている時に接続し、本願補正発明の「第2スイッチング部」も、データラインと電圧駆動ブロックを、前記制御信号の前記第1極性と相反する第2極性によってターンオンされている時に接続するものであり、本願補正発明の「第1スイッチング部」と「第2スイッチング部」は、データラインに電流駆動ブロックを接続するか、データラインと電圧駆動ブロックを接続するかを択一的に選択するものである。
そして、引用発明1の「電圧印加期間制御部51の出力信号」は、本願補正発明の「外部から供給される制御信号」に相当し、(3-8)、(3-9)の相当関係から、引用発明1の「電流通過端」は、本願補正発明の「電流駆動ブロック」に相当する構成の一部であり、引用発明1の「電圧供給端」を含む構成と本願補正発明の「電圧駆動ブロック」とは共に、「供給されるデータの表示階調に対応するように前記電圧部から供給される複数の電圧信号のうちの1つを選択して、選択された電圧信号をデータラインに供給することで前記画素セルが予備充電されるように制御する電圧駆動ブロック」である点で共通する。
したがって、引用発明1の「前記電圧印加期間制御部51の出力信号によって前記電流通過端と前記電圧供給端のいずれかを選択するスイッチ」と、本願補正発明の「外部から供給される制御信号の第1極性によってターンオンされることによりデータラインと電流駆動ブロックを接続する第1スイッチング部、前記制御信号の前記第1極性と相反する第2極性によってターンオンされることによりデータラインと電圧駆動ブロックを接続する第2スイッチング部」とは共に、「外部から供給される制御信号によって、前記データラインと前記電流駆動ブロックを接続するか、前記データラインと前記電圧駆動ブロックを接続するかを択一的に選択するスイッチ」である点で共通する。

(3-11)
引用発明1の「EL電源線175」は、本願補正発明の「電圧供給ライン」に相当し、(3-1)の相当関係から、引用発明1の「EL素子176」、「ソース信号線」はそれぞれ、本願補正発明の「発光セル」、「データライン」に相当し、引用発明1の「複数のゲート信号線(1)172とゲート信号線(2)173からなるゲート信号線の組」と本願補正発明の「複数のゲートライン」は共に、「それぞれが画素セルの1行を規定する、複数の走査線単位」である点で共通する。
よって、引用発明1の「前記EL電源線175と前記EL素子176の間に接続されたトランジスタ177c」は、本願補正発明の「電圧供給ラインと前記発光セルの間に接続された第1駆動トランジスタ」に相当し、
引用発明1の「ゲート信号線(1)172と、ソース信号線171の間に接続されたトランジスタ177d」と本願補正発明の「前記ゲートラインと前記データラインの間に接続された第1スイッチングトランジスタ」とは共に、「画素セルの1行を規定する走査線単位と、データラインの間に接続された第1のスイッチングトランジスタ」である点で共通し、
引用発明1の「前記トランジスタ177dと前記EL電源線175の間に接続されて前記トランジスタ177cとカレントミラー構成となっているトランジスタ177a」は、本願補正発明の「前記第1スイッチングトランジスタと前記電圧供給ラインの間に接続されて前記第1駆動トランジスタと電流ミラー回路を形成する第2駆動トランジスタ」に相当し、
引用発明1の「ゲート信号線(2)173と前記トランジスタ177aの間に接続されたトランジスタ177b」と本願補正発明の「前記ゲートラインと前記第2駆動トランジスタの間に接続される第2スイッチングトランジスタ」とは共に、「画素セルの1行を規定する走査線単位と、前記第2駆動トランジスタの間に接続される第2のスイッチングトランジスタ」である点で共通し、
引用発明1の「前記トランジスタ177aのゲートと前記トランジスタ177cのゲートの間のノードと前記EL電源線175の間に接続された蓄積容量174」は、本願補正発明の「前記第1駆動トランジスタのゲートと第2駆動トランジスタのゲートの間のノードと前記電圧供給ラインの間に接続されるストレージキャパシター」に相当する。

(3-12)
したがって、本願補正発明と引用発明1の両者は、
「それぞれが画素セルの1行を規定する、複数の走査線単位と、
前記複数の走査線単位と交差するように形成された複数のデータラインと、
前記複数の走査線単位及びデータラインの交差部ごとに形成される発光セルと、前記走査線単位と前記データラインから供給される駆動信号により前記発光セルを駆動する発光セル駆動回路とを含む画素セルと、
各1水平期間にゲート信号を、画素セルの1行を規定する複数の走査線単位のそれぞれに順次供給するゲートドライバーと、
前記1水平期間の第1期間の間、前記画素セルに電圧信号を供給する電圧駆動部と、前記第1水平期間の第1期間を除いた第2期間の間、前記画素セルから電流信号の供給を受ける電流駆動部とを有する複数のデータ集積回路と、
前記電圧信号が生成されるように前記電圧駆動部に複数の電圧レベルを有する電圧値を供給する電圧部と、
を具備し、
前記電流駆動部は、供給されるデータに対応するように電流ガンマ信号を選択して、選択された電流ガンマ信号を利用して前記画素セルからデータに対応する電流が供給されるように制御する電流駆動ブロックを含み、
前記電圧駆動部は、供給されるデータの表示階調に対応するように前記電圧部から供給される複数の電圧信号のうちの1つを選択して、選択された電圧信号をデータラインに供給することで前記画素セルが予備充電されるように制御する電圧駆動ブロックを含み、
前記データ集積回路は、外部から供給される制御信号によって、前記データラインと前記電流駆動ブロックを接続するか、前記データラインと前記電圧駆動ブロックを接続するかを択一的に選択するスイッチを含み、
前記発光セル駆動回路は、電圧供給ラインと前記発光セルの間に接続された第1駆動トランジスタと、画素セルの1行を規定する走査線単位と、データラインの間に接続された第1のスイッチングトランジスタと、前記第1スイッチングトランジスタと前記電圧供給ラインの間に接続されて前記第1駆動トランジスタと電流ミラー回路を形成する第2駆動トランジスタと、画素セルの1行を規定する走査線単位と、前記第2駆動トランジスタの間に接続される第2のスイッチングトランジスタと、前記第1駆動トランジスタのゲートと第2駆動トランジスタのゲートの間のノードと前記電圧供給ラインの間に接続されるストレージキャパシターとを含む
エレクトロルミネセンス表示装置」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
画素セルの1行を規定する走査線単位に関し、本願補正発明では「1本のゲートライン」であるのに対し、引用発明1では「ゲート信号線(1)172とゲート信号線(2)173からなるゲート信号線の組」である点。また、これに派生して、第1のスイッチングトランジスタと第2のスイッチングトランジスタに関し、本願補正発明では「前記第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタのゲートには一つのゲートラインから同一であるゲート信号が供給される」のに対し、引用発明1では「トランジスタ177b、177dのゲートにはそれぞれ異なるゲート信号線(2)173とゲート信号線(1)172が接続され、異なるゲート信号が供給される」点。

[相違点2]
電圧部により供給される電圧信号に関し、本願補正発明では「供給されるデータに対応する電圧ガンマ信号」であるのに対し、引用発明1では、単に、「複数の異なる電圧信号」であって、各階調に異なる電圧値の電圧信号であるとも限らない点。

[相違点3]
外部から供給される制御信号によって、データラインと電流駆動ブロックを接続するか、前記データラインと電圧駆動ブロックを接続するかを択一的に選択するスイッチに関し、本願補正発明では「相補的に動作する第1スイッチング部と、第2スイッチング部からなる」のに対し、引用発明1では「1つのスイッチ」である点。また、これに派生して、本願補正発明では、「第1スイッチング部が電流駆動部に含まれ、第2スイッチング部が電圧駆動部に含まれている」のに対し、引用発明1ではそのような構成を採っていない点。

(4)当審の判断
相違点1について
「EL表示装置の駆動制御」の技術分野において、「発光素子と接続された第1の駆動トランジスタ、第1の駆動トランジスタとカレントミラーを構成する第2の駆動トランジスタ、第1の駆動トランジスタ及び第2の駆動トランジスタのゲート電圧を規定する蓄積容量、データ線と第1の駆動トランジスタ、第2の駆動トランジスタ、蓄積容量との接続をオン/オフする第1のスイッチングトランジスタと第2のスイッチングトランジスタからなる画素回路を採用し、第1のスイッチングトランジスタと第2のスイッチングトランジスタのゲートを同一の走査線に接続して、同一のゲート信号を供給する」ことは、例えば、拒絶査定の備考において例示された特開2002-351402号公報(特に、段落【0015】?【0026】、【図13】参照。)、特開2003-195815号公報(特に、段落【0015】?【0023】、【図35】参照。)に記載されているように、周知技術である。
また、「EL表示装置の駆動制御」の技術分野において、配線数を低減することは、周知の課題である。
よって、引用発明1において、カレントミラー構成の画素回路として、発光素子と接続された第1の駆動トランジスタ、第1の駆動トランジスタとカレントミラーを構成する第2の駆動トランジスタ、第1の駆動トランジスタ及び第2の駆動トランジスタのゲート電圧を規定する蓄積容量、データ線と第1の駆動トランジスタ、第2の駆動トランジスタ、蓄積容量との接続をオン/オフする第1のスイッチングトランジスタと第2のスイッチングトランジスタからなる画素回路において、走査線単位の配線として2本の配線を使用しているところ、周知の課題を勘案して、周知技術を適用し、第1のスイッチングトランジスタと第2のスイッチングトランジスタのゲートを同一の走査線に接続して、同一のゲート信号を供給することは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、当業者が引用発明1及び周知技術に基づいて容易に想到し得たことである。

相違点2について
(2B-2-6)で述べたように、引用刊行物2には、以下の引用発明2が記載されている。
「行方向に沿って伸びる複数のゲート線Yn(n=1?N)と、
列方向に沿って伸びる複数のデータ線Xm(m=1?M)と、
マトリクス状に配列された複数の画素回路210であって、前記複数のゲート線Yn(n=1?N)と前記複数のデータ線Xm(m=1?M)とに接続され、有機EL素子220と保持キャパシタ230とを有する複数の画素回路210と、
複数のゲート線Ynの中の1本を選択的に駆動ゲートドライバ300と、
各データ線Xmをそれぞれ駆動するための複数の単一ラインドライバ410dを有するデータ線ドライバ400とを備え、
前記単一ラインドライバ410dは、プログラミング期間Tprの前半で、発光階調に応じた所定の電圧値の電圧信号Vout を生成することにより、保持キャパシタ230に電圧信号Vout の電圧値に応じた電荷を蓄積する電圧生成回路411dと、プログラミング期間Tprの後半に、発光階調に応じた一定の電流値Imを流す電流生成回路412dとを有する
有機EL素子表示装置。」

引用発明2の「複数のゲート線Yn(n=1?N)」は、本願補正発明の「複数のゲートライン」に相当し、以下同様に、「複数のデータ線Xm(m=1?M)」は「複数のデータライン」に、「有機EL素子220」は「発光セル」に、「画素回路210」のうち「有機EL素子220」を除いた回路は「発光セル駆動回路」に、「保持キャパシタ230」は「ストレージキャパシター」に、「画素回路210」は「画素セル」に、「駆動ゲートドライバ300」は「ゲートドライバー」に、「有機EL素子表示装置」は「エレクトロルミネセンス表示装置」に相当する。

また、引用刊行物2の第1実施例を説明する上記記載事項7には、「【0034】駆動周期Tcは、プログラミング期間Tprと発光期間Telとに分かれている。ここで、「駆動周期Tc」とは、表示マトリクス部200内のすべての有機EL素子220の発光の階調が1回ずつ更新される周期を意味しており、いわゆるフレーム周期と同じものである。階調の更新は、1行分の画素回路群毎に行われ、駆動周期Tcの間にN行分の画素回路群の階調が順次更新される。例えば、30Hzで全画素回路の階調が更新される場合には、駆動周期Tcは約33msである。【0035】プログラミング期間Tprは、有機EL素子220の発光の階調を画素回路210内に設定する期間である。本明細書では、画素回路210への階調の設定を「プログラミング」と呼んでいる。例えば、駆動周期Tcが約33msであり、ゲート線Ynの総数N(すなわち画素回路マトリクスの行数)が480本である場合には、プログラミング周期Tprは約69μs(=33ms/480)以下になる。」と記載されている。
ここで、駆動周期は、フレーム周期と同じものであり、プログラム期間Tprの長さは、駆動周期Tcをゲート線Ynの総数で割った時間以下であり、プログラム期間Tprの長さは、1水平期間に略等しいものである。
したがって、引用発明2の「プログラミング期間Tpr」は、本願補正発明の「1水平期間」に相当する。

そして、引用発明2の「単一ラインドライバ410d」は、プログラミング期間Tprの前半で、発光階調に応じた所定の電圧値の電圧信号Vout を生成することにより、保持キャパシタ230に電圧信号Vout の電圧値に応じた電荷を蓄積する電圧生成回路411dと、プログラミング期間Tprの後半に、発光階調に応じた一定の電流値Imを流す電流生成回路412dとを有するものである。すなわち、引用発明2の「単一ラインドライバ410d」は、プログラミング期間Tprの前半に、画素回路210内の保持キャパシタ230に電圧を供給する電圧生成回路411dと、プログラミング期間Tprの後半に、画素回路210内の保持キャパシタ230に対して電流を流す電流生成回路412dとを有するものである。
ここで、引用発明2の「プログラミング期間Tpr」は、本願補正発明の「1水平期間」に相当するから、引用発明2の「プログラミング期間Tprの前半に、画素回路210内の保持キャパシタ230に電圧を供給する電圧生成回路411d」は、本願補正発明の「前記1水平期間の第1期間の間、前記画素セルに電圧信号を供給する電圧駆動部」に相当し、引用発明2の「プログラミング期間Tprの後半に、画素回路210内の保持キャパシタ230に対して電流を流す電流生成回路412d」は、本願補正発明の「前記第1水平期間の第1期間を除いた第2期間の間、前記画素セルから電流信号の供給を受ける電流駆動部」に相当する。
そして、引用発明2の「電圧生成回路411d」と「電流生成回路412d」を有する「単一ラインドライバ410d」は、本願補正発明の「電圧駆動部」と「電流駆動部」を有する「データ集積回路」に相当する。
また、引用発明2の「階調」は、本願補正発明の「供給されるデータ」に相当するから、引用発明2の「発光階調に応じた所定の電圧値の電圧信号Vout」は、本願補正発明の「供給されるデータに対応する電圧ガンマ信号」に相当する。

してみると、引用刊行物2には、
「複数のゲートラインと、
前記複数のゲートラインと交差するように形成された複数のデータラインと、
前記複数のゲートライン及びデータラインの交差部ごとに形成される発光セルと、前記ゲートラインと前記データラインから供給される駆動信号により前記発光セルを駆動する発光セル駆動回路とを含む画素セルと、
各1水平期間にゲート信号を前記複数のゲートラインのそれぞれに順次供給するためのゲートドライバーと、
前記1水平期間の第1期間の間、前記画素セルに電圧信号を供給する電圧駆動部と、前記第1水平期間の第1期間を除いた第2期間の間、前記画素セルから電流信号の供給を受ける電流駆動部とを有する複数のデータ集積回路とを具備したエレクトロルミネセンス表示装置において、
前記電圧駆動部で供給されるデータに対応して電圧ガンマ信号を生成するエレクトロルミネセンス表示装置」の発明、すなわち、引用発明2が記載されている。

そして、引用発明2を説明する引用刊行物2の上記記載事項7には「【0041】・・・また、電流信号Iout のみによるプログラミングに比べて高速に発光階調を設定できる。すなわち、この画素回路210は、従来に比べて高速で高精度な発光階調の設定を実現することが可能である。」と記載されており、画素回路内への蓄積容量へのプログラミングの高速化を課題としている。
一方、引用発明1を説明する引用刊行物1の上記記載事項4には「【0044】そこで、低電流領域(黒に近い階調)では変化に時間がかかることを考慮し、表示階調ごともしくは複数の表示階調ごとに異なる電圧値を印加するようにして、変化量を少なくし、書き込み時間の短縮を図った。」と記載されており、同じく、画素回路内への蓄積容量へのプログラミングの高速化を課題としている。
また、引用発明1と引用発明2とは共に、1水平期間の初めの期間に画素回路内への蓄積容量へ電圧によるプログラムを行った後、1水平期間の初めの期間に続く期間において画素回路内への蓄積容量へ電流によるプログラムを行うものである。
よって、引用発明1で行う1水平期間の初めの期間に画素回路内への蓄積容量へ電圧によるプログラムにおける、供給されるデータに対応して与える電圧信号として、引用発明2の技術を適用し、供給されるデータのそれぞれに対応したガンマ電圧信号を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、当業者が引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に想到し得たことである。

なお、引用発明1を説明する引用刊行物1の上記記載事項4には、「【0047】また、用意する電源数はソース信号線124の取り得る電圧振幅にもよるが、ソースドライバの回路規模増大と、電源数増加による画質改善の兼ね合いから多くても5つ程度が望ましい。」と記載されており、一見すると、表示階調ごとに異なる電源を設けること、すなわち、引用発明1に引用発明2を組み合わせることを阻害する記載があるとも考えられる。
しかしながら、【0047】の上記記載にもあるように、表示階調ごとに異なる電源を設けて電源数を増加させることは、画質の改善、プログラム時間の短縮というプラスの側面を持つ一方、回路規模の増大というマイナスの側面を持っている。
そして、回路設計において、要求されるスペックに応じて、例えば、画質が余り要求されず、回路規模の増大が厳しく制限される携帯機器などにおける表示装置であれば、電源数を少なくし、逆に、高画質が要求され、大画面でプログラム時間の制限が厳しく、周辺回路に対するスペースに比較的余裕のあるテレビなどにおける表示装置であれば、電源数を最大限に持たせるようにすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない。
したがって、引用刊行物1の上記記載は、引用発明1に引用発明2を組み合わせることを阻害する記載ではない。

相違点3について
2つの選択先から1つを選択するスイッチとして、1つのスイッチで2つの選択先のどちらか一方を選択する構成、及び、2つの相補的にオン/オフするスイッチで一方の選択先のスイッチのみがオンすることによりどちらか一方を選択する構成は、いずれも周知の事項である。
よって、引用発明1において、ソ-ス信号線に接続するように電圧供給端と電流通過端のいずれか一方を選択しているところ、周知の事項を勘案し、1つのスイッチで行う構成に代えて、2つの相補的にオン/オフするスイッチで一方の選択先のスイッチのみがオンすることによりどちらか一方を選択する構成を採用することは、当業者が適宜選択し得る事項に過ぎない。そして、かかる適用に応じて、2つにスイッチを、それぞれの選択先である、電圧供給端側に含まれた構成、すなわち、電圧駆動部に含まれた構成、及び、電流通過端側に含まれた構成、すなわち、電流駆動部に含まれた構成とすることに、格別の困難性は見受けられない。
したがって、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項は、当業者が引用発明1及び周知の事項に基づいて容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明1、引用発明2、並びに、周知の事項及び周知技術から想定することができない格別のものと認めることもできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2、並びに、周知の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について

平成20年10月17日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年5月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、請求項1に記載されたとおりのものと認める。(前記「2」の項参照。)

4 引用刊行物

引用刊行物1に記載された引用発明1は、前記「2 (2A-2-6)」に記載されたとおりである。

5 対比・判断

本願発明は、前記「2」で検討した本願補正発明から、実質的に、「前記電圧信号が生成されるように前記電圧駆動部に複数の電圧レベルを有するガンマ電圧値を供給するガンマ電圧部」の発明特定事項を省くと共に、「電流駆動ブロック」と「電圧駆動ブロック」についての限定事項である、電流駆動ブロックにより供給されるデータに対応する信号が「電流ガンマ信号」であることと、電圧駆動ブロックにより供給されるデータに対応する信号が、「ガンマ電圧部から供給される複数の電圧ガンマ信号の中から選択された電圧ガンマ信号」であるとの発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明1とを比較すると、両者は検討済みの相違点1、3において相違し、その余の点で一致する。
したがって、本願発明は、前記「2 (4)当審の判断」の「相違点1について」及び「相違点3について」において示した理由により、引用発明1、並びに、周知の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、並びに、周知の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-29 
結審通知日 2010-08-03 
審決日 2010-08-23 
出願番号 特願2004-192096(P2004-192096)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 575- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 直行西島 篤宏  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 後藤 亮治
山川 雅也
発明の名称 エレクトロルミネセンス表示装置  
代理人 上田 俊一  
代理人 古川 秀利  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 曾我 道治  
代理人 梶並 順  

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