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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F04C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04C
管理番号 1229525
審判番号 不服2009-21887  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-10 
確定日 2011-01-05 
事件の表示 特願2008-114226「マグネットカップリング機構を有するギアポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月24日出願公開、特開2009-299471〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯の概要
本願は、平成20年4月24日の出願であって、平成21年7月14日(起案日)付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年11月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで明細書及び特許請求の範囲の手続補正がなされたものである。

【2】平成21年11月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年11月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
少なくとも一つの吸入口および吐出口を有する一つの密封型のケーシング内に、ポンプ駆動体としてのギア機構と、このギア機構を駆動させるための減速機構と、この減速機構を駆動させるマグネットカップリング機構を配置したものであって、
前記マグネットカップリング機構は、
外周部に円筒状のインナーマグネットが設けられ、中心部に減速機構を駆動させるための駆動シャフトの一端部が連結されたローターが内部に回転自在に配置された有底筒状のマグネット部と、内周部に前記インナーマグネットと相対する円筒状のアウターマグネットが設けられ、前記マグネット部の外周部との間に所要の間隔を存して配置され、かつ外部駆動源によって回転する円筒状の回転部材とからなること
を特徴とするマグネットカップリング機構を有するギアポンプ。」に補正された(なお、下線は補正箇所を示す)。
上記補正は、請求項1についてみると、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「密閉型のケーシング」を、「密封型のケーシング」と、「ポンプ」を「ギアポンプ」と、それぞれ構成を限定するものであるから、新規事項を追加するものではなく、発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更することのない範囲で、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する補正の目的に合致する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか (特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
(刊行物A)
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-52652号公報(以下、「刊行物A」という。)には、「ギアポンプ」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「【0001】
この発明はギアポンプに関し、例えば、液体などの流体を搬送するギアポンプに関する。」

(イ)「【0004】
また、図4に示すマグネットカップリング構造のギアポンプ100では、駆動ギア101の駆動シャフト102と従動ギア103の従動シャフト104が、有底状のケーシング105内に回動自在に支持されており、この状態でパッキン106を介してケーシング105を蓋板107により密閉し、駆動ギア101に取り付けられた駆動シャフト102の基端部をケーシング105の底面から貫通させて外部に突出させ、当該駆動シャフト102の基端部にインナーマグネット108を設け、さらにこのケーシング105およびインナーマグネット108の周囲に、外部と隔離するための隔離壁109を設けている。ここで、ケーシング105,パッキン106および蓋板107は、複数の連動するギアである駆動ギア101と従動ギア103を、外部と隔離した状態で収納する収納体に相当するものである。
【0005】
また、隔離壁109の外部には、インナーマグネット108の外周を囲うようにアウターマグネット110を内周面に備えたカップ状のロータ111と、このロータ111に回転駆動力を与える駆動用モータ112がそれぞれ設けられ、この駆動用モータ112からの回転駆動力をロータ111ひいてはアウターマグネット110に伝えると、アウターマグネット110の回転に基づく磁気誘導によって、隔離壁109内のインナーマグネット108が回転し、駆動ギア101ひいてはこれに噛合する従動ギア103をそれぞれ連動して回転させることで、ケーシング105内において流入経路から吐出経路に流体を搬送している。」

(ウ)図4から、隔離壁109内にマグネットカップリング構造の一部が配置されている点、有底筒状の隔離壁109の一部は、中心部に駆動シャフト102の一端部が連結されたインナーマグネット108が内部に回転自在に配置されてる点、及びカップ状ロータ111は、内周部にインナーマグネット108と相対する円筒状のアウターマグネット110が設けられ、隔離壁109の一部の外周部との間に所要の間隔を存して配置されている点が看取できる。

以上の記載事項及び図面(特に、図4)の記載からみて、刊行物Aには次の発明(以下、「刊行物A記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
[刊行物A記載の発明]
「流入経路及び吐出経路を有する隔離壁109内に、駆動ギア101及び従動ギア103と、この駆動ギア101及び従動ギア103を駆動させるマグネットカップリング構造の一部を配置したものであって、
前記マグネットカップリング構造は、
中心部に駆動ギア101を駆動させるための駆動シャフト102の一端部が連結されたインナーマグネット108が内部に回転自在に配置された有底筒状の隔離壁109の一部と、内周部に前記インナーマグネット108と相対する円筒状のアウターマグネット110が設けられ、前記隔離壁109の一部の外周部との間に所要の間隔を存して配置され、かつ駆動用モータ112によって回転するカップ状のロータ111とからなる
マグネットカップリング構造を有するギアポンプ。」

(刊行物B)
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-155883号公報(以下、「刊行物B」という。)には、「マグネットポンプ及びモータ」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。なお、丸付き数字を括弧付き数字で表記した箇所がある。

(エ)「【0006】3)マグネットポンプの問題点
(1)液温が低い場合にマグネットカップリングの周辺に氷結が生じ、駆動不能(拘束状態)となる可能性がある。
(2)高密度の液で使用する場合に、モータの始動トルクに見合ったマグネットカップリングの駆動トルクを確保して脱調現象が生じないようにする配慮が必要である。
(3)マグネットカップリングが必要な分、特に軸方向の寸法が長くなる。」

(刊行物C)
本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-98750号公報(以下、「刊行物C」という。)には、「液体中の回転物に対する駆動力伝達機構」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。

(オ)「【0002】
【従来の技術】ポンプ、回転翼等液体中において特定の物を回転させる場合、大抵の場合は、駆動源を液体容器又は液体槽外に設け、駆動源の回転力を回転物体に伝達している。」

(カ)「【0012】回転物体4に対し、回転子11のトルクが小さい場合において、液体3内において、減速ギアを連動させて、必要なトルクを発生させることは当然可能である。」

3.対比・判断
本願補正発明と刊行物A記載の発明を対比すると、その機能からみて、刊行物A記載の発明の「流入経路及び吐出経路」は本願補正発明の「少なくとも一つの吸入口および吐出口」に相当し、以下同様に、「駆動ギア101及び従動ギア103」は「ポンプ駆動体としてのギア機構」又は「ギア機構」に、「マグネットカップリング構造」は「マグネットカップリング機構」に、「駆動用モータ112」は「外部駆動源」に、それぞれ相当する。
また、刊行物A記載の発明の「隔離壁109」と本願補正発明の「ケーシング」は、ギア機構を収容している限りにおいて共通している。

したがって、本願補正発明の用語を使用して記載すると、両者は、
「少なくとも一つの吸入口および吐出口を有する一つのケーシング内に、ポンプ駆動体としてのギア機構を配置し、マグネットカップリング機構を配置したものであって、
前記マグネットカップリング機構は、
インナーマグネットが設けられ、中心部に駆動シャフトの一端部が連結されたローターが内部に回転自在に配置された有底筒状のマグネット部と、内周部に前記インナーマグネットと相対する円筒状のアウターマグネットが設けられ、前記マグネット部の外周部との間に所要の間隔を存して配置され、かつ外部駆動源によって回転する円筒状の回転部材とからなるマグネットカップリング機構を有するギアポンプ。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明は、ケーシングが「密封型」であり、その内部に「マグネットカップリング機構」が配置されているのに対し、刊行物A記載の発明の隔離壁109は、密封型であるか不明であり、その内部に配置されているのは「マグネットカップリング構造の一部」である点。

[相違点2]
本願補正発明は、ギア機構を駆動させるための「減速機構」をケーシング内に設け、この「減速機構」をマグネットカップリング機構で駆動しているのに対し、刊行物A記載の発明は、そのような減速機構を有しない点。

[相違点3]
本願補正発明は「外周部に円筒状のインナーマグネットが設けられ、中心部に減速機構を駆動させるための駆動シャフトの一端部が連結されたローター」が、マグネット部の内部に配置されているのに対し、刊行物A記載の発明は、インナーマグネット108が隔離壁109の一部の内部に配置されているものの、その具体的な構成は不明である点。

上記各相違点について以下に検討する。
(相違点1について)
磁気駆動型のギアポンプにおいて、磁気駆動部(本願補正発明の「マグネットカップリング機構」に相当)を密封型のケーシング内に配置することは、従来周知の事項である(例えば、特表2007-531844号公報の段落【0017】には「図1における好ましい実施形態によれば、ポンプ2はハウジング4を有し、ハウジング4には、第1本体部分6、第2本体部分8、第1本体部分6へ接続されたベアリングキャップ10、および第2本体部分8へ接続されたヘッド12が含まれている。…(中略)…エラストマー製Oリング、予備成形されたかあるいは液体のガスケット材料などのような静止用シール22および24を採用して、ハウジングの構成要素どうしの接続を促進することができる。…」と記載されている)。
よって、刊行物A記載の発明において、上記周知の事項を採用し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
ギアポンプは、様々な技術分野において幅広く採用されているものであるから、刊行物A記載の発明のギアポンプにおいても、ポンプが組み込まれる装置や作動流体の性質等に応じて、大きな伝達トルクが要求される場合があり得ることは、当業者であれば容易に理解できることである。
また、刊行物Bには、マグネットカップリングの一般的な問題点として、「高密度の液で使用する場合に、モータの始動トルクに見合ったマグネットカップリングの駆動トルクを確保」する必要があることが記載され(上記記載事項(エ)参照)、刊行物Cには、磁気駆動源(本願補正発明の「マグネットカップリング機構」に相当)において、トルクが小さい場合に必要なトルクを発生させる手段として、減速ギアを連動させることが記載されている(上記記載事項(カ)参照)ことからも分かるように、マグネットカップリングにおいてトルクが小さい場合、必要なトルクを発生させるために減速ギアを連動させることは、従来周知の事項であるといえる。
そうすると、刊行物A記載の発明のギアポンプにおいて、ポンプが組み込まれる装置や作動流体の性質等に関連して、大きなトルクが必要であれば、上記周知の事項を採用して必要なトルクを発生させようと試みることは当業者が容易になし得ることである。その際に、刊行物A記載の発明の駆動ギア101とインナーマグネット108の間に減速ギア(減速機構)を介在させることは、当業者にとって自明の構成であり、減速ギアを採用することによる各ギアの配置や隔離壁109の形状等の変更は、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。
よって、刊行物A記載の発明に従来周知の事項を採用し、適宜設計変更を行うことにより、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(相違点3について)
刊行物A記載の発明の駆動シャフト102とインナーマグネット108の具体的連結構造は不明であるが、マグネットカップリング構造において、外周部に円筒状のインナーマグネットを設け、中心部にシャフトの一端部を連結することは、従来周知の事項である(例えば、特開2000-125541号公報の図1等を参照)から、刊行物A記載の発明に、該周知の事項を採用し、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

また、本願補正発明が奏する効果について検討しても、刊行物Aに記載された発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、刊行物Aに記載された発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、「特に、構造上の差異や使用目的など、さらには、引用文献2(審決注:本審決の「刊行物A」、以下同様)の図4の基本構成になぜ減速機構を設ける必要性があるのかも明らかしていない点などを勘案すると、単に前記記載のみを以って、引用文献2の図4に、引用文献3(審決注:本審決の「刊行物B」、以下同様)の前記記載のみを抽出して転用すべき必然性が一切認められない。
しかも、原審は、
-図4のポンプに、インナーマグネット(108)の軸と駆動ギア(101)の軸との問に増減速機構が配置させる場合、隔離壁の外に増減速機構を設けることは不可能であると一方的に認定されている。
しかしながら、前記したように、図4に減速機構を介在させることは、図4に示すギアポンプ装置自体を大型化させるもので、引用文献2に記載の発明思想そのものに反し、本願発明(審決注:本審決の「本願補正発明」、以下同様)と同様に小型化を実現させるものではない。
さらに、先に述べたように、図4のギアポンプは、本来減速機構を必要としない構成であると考えられるため、減速機構を転用すること自体有り得ず、原審の認定は、本願発明の内容を熟知した上で、必要以上に引用文献2,3の記載を上位概念で解釈し、本願発明に当て嵌めようとするもので、かかる事実認定には到底首肯し得ない。」(3.「本願発明が特許されるべき理由」「d)本願発明と引用発明との対比」<d-4>の項を参照。)と主張している。
しかしながら、ポンプが組み込まれる装置や作動流体の性質等に応じて、大きな伝達トルクが要求される場合があり得ること、そしてトルクが小さい場合、必要なトルクを発生させるために減速ギアを設けることが従来周知の事項であることは上記のとおりである。
また、装置の小型化やポンプの要求トルク等といったことは、ポンプが組み込まれる装置等に応じて適宜考慮されるべき事項であるから、必要に応じて当業者が優先すべき事項(小型化など)を決定し得るものであり、減速機構を設けることが装置の大型化につながることをもってただちに阻害事由となるものではない。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。

4.むすび
本願補正発明について以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【3】本願発明について
1.本願発明
平成21年11月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成21年5月12日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも一つの吸入口および吐出口を有する一つの密閉型のケーシング内に、ポンプ駆動体としてのギア機構と、このギア機構を駆動させるための減速機構と、この減速機構を駆動させるマグネットカップリング機構を配置したものであって、
前記マグネットカップリング機構は、
外周部に円筒状のインナーマグネットが設けられ、中心部に減速機構を駆動させるための駆動シャフトの一端部が連結されたローターが内部に回転自在に配置された有底筒状のマグネット部と、内周部に前記インナーマグネットと相対する円筒状のアウターマグネットが設けられ、前記マグネット部の外周部との間に所要の間隔を存して配置され、かつ外部駆動源によって回転する円筒状の回転部材とからなること
を特徴とするマグネットカップリング機構を有するポンプ。」

2.引用刊行物とその記載事項
上記【2】2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記【2】1.の本願補正発明の「密封型のケーシング」を「密閉型のケーシング」と、「ギアポンプ」を「ポンプ」と、構成を拡張したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに構成要件を減縮したものに相当する本願補正発明が、上記【2】に記載したとおり、刊行物Aに記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、刊行物Aに記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物Aに記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明(本願発明)が特許を受けることができないものである以上、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-15 
結審通知日 2010-10-12 
審決日 2010-10-28 
出願番号 特願2008-114226(P2008-114226)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F04C)
P 1 8・ 121- Z (F04C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田谷 宗隆  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 藤村 聖子
常盤 務
発明の名称 マグネットカップリング機構を有するギアポンプ  
代理人 幸田 全弘  
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