ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09J |
---|---|
管理番号 | 1229597 |
審判番号 | 不服2007-14671 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-05-22 |
確定日 | 2011-01-04 |
事件の表示 | 平成7年特許願第180254号「2つの部材の結合方法並びにそのための接着剤、接合部及び接着剤分配装置」拒絶査定不服審判事件〔平成9年3月11日出願公開、特開平9-67547〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年7月17日の出願であって、平成14年7月17日に手続補正書が提出され、平成16年7月13日付けの拒絶理由通知に対して、平成17年1月21日に意見書及び手続補正書が提出され、平成19年2月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月21日に手続補正書が提出されたが、平成20年11月28日付けの審尋に対しては回答書が提出されなかったものである。 2.平成19年6月21日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成19年6月21日付けの手続補正を却下する。 [理 由] (1)補正後の本願発明 平成19年6月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1である、 「第1及び第2の部材から成る2つの金属シートのような非浸透性部材の結合方法において、前記結合方法が、 a)複数の非圧縮性ビーズを接着剤に混入して流体混合物を製造し、 b)前記流体混合物を前記2つの部材の少なくとも一方の接合面に塗布し、しかる後、 c)前記第1及び第2の部材を接合してこれら2つの部材を結合する各ステップから成り、 前記ビーズが、前記第1の部材と第2の部材との間から余分な前記流体混合物が絞り出されることを防止するために前記第1及び第2の部材間に略均一な間隔を維持していることを特徴とする2つの部材の結合方法。」 を、 「第1及び第2の部材から成る2つの金属シートの結合方法において、 前記結合方法が、 a)複数の非圧縮性ビーズを接着剤に混入して流体混合物を製造し、 b)前記流体混合物を前記第1及び第2の部材の少なくとも一方の接合面に塗布した後、 c)前記第1及び第2の部材の一方を折り曲げて接合して前記第1及び第2の部材を結合するステップから成り、 前記非圧縮性ビーズが、前記第1の部材と前記第2の部材との間から余分な前記流体混合物が絞り出されることを防止するとともにスプリングバックによる空気で充填されたギャップの形成を阻止するために前記第1及び第2の部材間に均一な間隔を維持していることを特徴とする2つの部材の結合方法。」 に、補正することを含むものである。 (2)補正の適否について (2-1)新規事項の有無及び補正の目的についての検討 上記請求項1に係る補正は、実質的に 「金属シートのような非浸透性部材」を「金属シート」、「第1及び第2の部材を接合してこれら2つの部材を結合する」を「第1及び第2の部材の一方を折り曲げて接合して前記第1及び第2の部材を結合する」、「ビーズ」を「非圧縮性ビーズ」及び「前記第1及び第2の部材間に略均一な間隔を維持している」を「スプリングバックによる空気で充填されたギャップの形成を阻止するために前記第1及び第2の部材間に均一な間隔を維持している」とするものであって、上記各補正は、願書に最初に添付した明細書の記載からみて新規事項を追加するものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、同各補正は、明りょうでない記載の釈明又は発明特定事項の限定であってその補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、同条第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2-2)独立特許要件の検討 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2-2-1)刊行物の記載事項 (a)原査定で引用例1として引用された引用文献1である 「特開昭49-35439号公報」(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。 a1「・接着剤(1)中に最適な接着力を生ずる膜厚(t)に相当する所定粒度の粒状物(2)を添加し,均一に分散せしめた後、 ・被接着物(A)(B)間にこれを塗布圧着して、被接着物(A)(B)を接着する場合,該添加粒状物(2)はこの圧縮圧力により破壊されることなく ・したがつて被接着物(A)(B)間の間隙(t)は全面均一の厚さに形成できる 浸透性の少ない接着剤を用いた接着法。」(特許請求の範囲) a2「一般に接着層は連続した均一な厚さの膜状になることが強い接着力が得られる条件である。・・・ しかしながらこの場合接着剤を被接着物間に塗布し圧縮することによつて接着がなされるが、圧縮力の大小,圧縮力の部分的不均一などによつて,接着剤膜の厚さが不均一となり,接着強度にムラを生ずる。 また圧力が掛りすぎると,接着剤欠除の状態になり接着力が極端に低下する。・・・ 本発明は以上のような従来技術の欠点を改良したもので,その構成の要旨とする点は,図面において浸透性の少ない接着剤を用いた接着法において, a(注:○中a、以下同様。)・接着剤(1)中に最適な接着力を生ずる膜厚(t)に相当する所定粒度の粒状物(2)を添加し,均一に分散せしめた後, b(注:○中b、以下同様。)・被接着物(A)(B)間にこれを塗布圧縮して、被接着物(A)(B)を接着する場合,該添加粒状物(2)はこの圧縮圧力により破壊されることなく, c(注:○中c、以下同様。)・したがつて被接着物(A)(B)間の間隙(t)は全面均一の厚さに形成できる。」(第1頁左下欄末行?第2頁左上欄8行) a3「実施例 1(注:○中1、以下同様。) 均一に添加分散した粒状物(2)を有する接着剤(1)を被接着物(A)表面に所定量塗布する。 2(注:○中2、以下同様。) 被接着物(B)を重ね合せ,圧縮装置で圧縮を行う。圧縮はロール状のもの,板状のものなどいづれでもよい。 3(注:○中3、以下同様。) 圧縮により被接着物(A)(B)は接着剤を押出しながら圧着されるが、接着剤(1)に含まれる粒状物がある一定間隙以下になることを防ぐ。一種のディスタンスバーの働らきをもつ。 4(注:○中4、以下同様。) その状態で接着剤(1)を硬化させれば求める均一な厚さの接着層が得られる。」(第2頁右上欄15行?左下欄6行) (b)原査定で引用例4として引用された引用文献4である 「特開昭62-43480号公報」(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。 b1「1、自動車用パネルのアウターパネルをインナーパネルの縁部に折り曲げて固定してなるヘミング構造において、アウターパネルのヘミング形成する端縁部に、 (a)常温液状のエポキシ樹脂と常温固形のエポキシ樹脂の混合物、 (b)加熱活性硬化剤、および (c)熱可塑性合成樹脂または合成ゴム からなる常温半固形の80℃以上で流動する熱硬化性接着剤を、加熱式フォロアープレートを有する圧送ポンプにて加熱流動下で吐出、塗布し、次いでこれにインナーパネルを重ね合わせてヘミング形成したことを特徴とする自動車用パネルのヘミング構造。」(特許請求の範囲の請求項1) b2「一般に、自動車のドア、ボンネット、トランクリッドなどのパネル類はアウターパネルとインナーパネルで構成され、アウターパネルの縁部に接着剤またはシール材を挟持し、これにインナーパネルの端縁部を合わせ、そのうえにアウターパネルの縁部を折り返し、プレス成形してヘミング構造となしている。このヘミング構造としたパネル類は仮止め用スポット溶接をして組立て、ついで塗装工程にて塗料焼付炉で接着剤またはシール材を硬化させて固定している。」(第1頁右欄16行?第2頁左上欄5行) (2-2-2)刊行物1に記載された発明 刊行物1には、「・接着剤(1)中に最適な接着力を生ずる膜厚(t)に相当する所定粒度の粒状物(2)を添加し,均一に分散せしめた後、 ・被接着物(A)(B)間にこれを塗布圧着して、被接着物(A)(B)を接着する場合,該添加粒状物(2)はこの圧縮圧力により破壊されることなく ・したがつて被接着物(A)(B)間の間隙(t)は全面均一の厚さに形成できる 浸透性の少ない接着剤を用いた接着法。」(摘記(a1))との記載がある。 ここで、「接着剤(1)中に最適な接着力を生ずる膜厚(t)に相当する所定粒度の粒状物(2)を添加し,均一に分散せしめた」ものは、接着剤(1)と粒状物(2)との混合物であり、摘記(a3)には、混合物を被接着物の一方(被接着物(A))の表面に所定量塗布した後、被接着物(A)(B)を圧着することが記載されている。 そこで、刊行物1に記載された摘記a1の記載事項を本願補正発明に倣って書き換えると、刊行物1には、 「被接着物(A)(B)を塗布圧着する接着法において、 前記接着法が、 圧縮圧力により破壊されることのない膜厚(t)に相当する所定粒度の粒状物(2)を接着剤(1)中に均一に分散せしめた混合物を製造し、 均一に添加分散した粒状物(2)を接着剤(1)に混入した混合物を被接着物(A)又は(B)表面に所定量塗布し、 前記混合物を被接着物(A)(B)間で圧着し、 該添加粒状物(2)はこの圧縮圧力により破壊されることなく、したがって被接着物(A)(B)間の間隙(t)は全面均一の厚さに形成できる被接着物(A)(B)の接着法。」 (以下、「引用発明」という。)という発明が記載されている。 (2-2-3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「接着法」は、接着することによって被接着物(A)及び(B)を結合させるのであるから、本願補正発明の「結合方法」に相当する。また、引用発明の「被接着物(A)(B)」及び「接着剤(1)」は、本願補正発明の「第1及び第2の部材」及び「接着剤」に相当し、引用発明の「混合物」は、被接着物に塗布するのであるから、液状、すなわち、流体であり、本願補正発明の「流体混合物」に相当する。さらに、引用発明の「圧縮圧力により破壊されることのない膜厚(t)に相当する所定粒度の粒状物(2)」は、「被接着物(A)(B)間の間隙(t)は全面均一の厚さに形成できる」のであるから、接着時における圧縮圧力では、非圧縮性であるといえ、本願補正発明の「非圧縮性ビーズ」に相当し、「粒状物(2)」は、「接着剤(1)中に均一に分散せしめ」るものであるから、複数存在するといえる。 そして、引用発明において、「均一に添加分散した粒状物(2)を接着剤(1)に混入した混合物を被接着物(A)又は(B)表面に所定量塗布し、前記混合物を被接着物(A)(B)間で圧着し、」は、混合物を被接着物(A)又は(B)表面に塗布した後、接合して被接着物(A)及び(B)を結合することといえるから、本願補正発明の「前記流体混合物を前記第1及び第2の部材の少なくとも一方の接合面に塗布した後、接合して前記第1及び第2の部材を結合するステップ」に相当し、引用発明における「被接着物(A)(B)間の間隙(t)は全面均一の厚さに形成できる」は、本願補正発明の「第1及び第2の部材間に均一な間隔を維持している」に相当する。 したがって、両者は、 「第1及び第2の部材の結合方法において、 前記結合方法が、 a)複数の非圧縮性ビーズを接着剤に混入して流体混合物を製造し、 b)前記流体混合物を前記第1及び第2の部材の少なくとも一方の接合面に塗布した後、 c)接合して前記第1及び第2の部材を結合するステップから成り、 前記非圧縮性ビーズが、前記第1及び第2の部材間に均一な間隔を維持していることを特徴とする2つの部材の結合方法。」 で一致し、次の点で相違する。 (ア)第1及び第2の部材の材質について本願補正発明では、「第1及び第2の部材から成る2つの金属シート」と特定されているのに対して、引用発明では、特定されていない点(以下、相違点(ア)という。) (イ)第1及び第2の部材を結合するステップにについて本願補正発明では、「前記第1及び第2の部材の一方を折り曲げて」と特定されているのに対して、引用発明では、このような特定がなされていない点(以下、相違点(イ)という。) (ウ)本願補正発明では、「非圧縮性ビーズが、前記第1の部材と前記第2の部材との間から余分な前記流体混合物が絞り出されることを防止するとともにスプリングバックによる空気で充填されたギャップの形成を阻止するために前記第1及び第2の部材間に均一な間隔を維持している」と特定されているのに対して、引用発明では、このような特定がなされていない点(以下、相違点(ウ)という。) (2-2-4)相違点についての判断 (a)相違点(ア)及び(イ)について 刊行物2には、「一般に、自動車のドア、ボンネット、トランクリッドなどのパネル類はアウターパネルとインナーパネルで構成され、アウターパネルの縁部に接着剤またはシール材を挟持し、これにインナーパネルの端縁部を合わせ、そのうえにアウターパネルの縁部を折り返し、プレス成形してヘミング構造となしている。このヘミング構造としたパネル類は仮止め用スポット溶接をして組立て、ついで塗装工程にて塗料焼付炉で接着剤またはシール材を硬化させて固定している。」(摘記(b2))とあり、第1の部材としてのアウターパネルの縁部に接着剤又はシール材を挟持し、第2の部材としてのインナーパネルを合わせ、次いでアウターパネルの縁部を折り返して、プレス成形したのち、接着剤又はシール剤を硬化させて固定することが記載されている。また、本願出願前、アウターパネルとインナーパネルを金属シートとすることは当業界で周知技術である(例えば、特開平6-100852号公報の「この接合部12は、鋼板をプレス加工し形成したアウターパネル1の、はぜ折り形状の溝部分13に、インナーパネル2の端部20を挟み込んだ構造である。」(段落【0003】)、特開平6-312284号公報の「亜鉛めっき鋼板のインナードアパネル1と充填されたシーラ材2を介して亜鉛めっき鋼板のアウタードアパネル3をヘミング加工した」(段落【0010】)参照)。 そうすると、第1の部材としてのアウターパネルの縁部に接着剤を挟持し、第2の部材としてのインナーパネルを合わせ、次いでアウターパネルの縁部を折り返して、プレス成形したのち、接着剤を硬化させて固定することは通常行われることであるから、引用発明の接着法において、被接着物(A)及び(B)に相当する第1及び第2の部材について、「第1及び第2の部材から成る2つの金属シート」とすること及び「第1及び第2の部材の一方を折り曲げ」ることは当業者が容易になし得ることである。 (b)相違点(ウ)について 刊行物1には、「しかしながらこの場合接着剤を被接着物間に塗布し圧縮することによつて接着がなされるが、圧縮力の大小,圧縮力の部分的不均一などによつて,接着剤膜の厚さが不均一となり,接着強度にムラを生ずる。 また圧力が掛りすぎると,接着剤欠除の状態になり接着力が極端に低下する。・・・ 本発明は以上のような従来技術の欠点を改良したもので,その構成の要旨とする点は,図面において浸透性の少ない接着剤を用いた接着法において, a(注:○中a、以下同様。)・接着剤(1)中に最適な接着力を生ずる膜厚(t)に相当する所定粒度の粒状物(2)を添加し,均一に分散せしめた後, b(注:○中b、以下同様。)・被接着物(A)(B)間にこれを塗布圧縮して、被接着物(A)(B)を接着する場合,該添加粒状物(2)はこの圧縮圧力により破壊されることなく, c(注:○中c、以下同様。)・したがつて被接着物(A)(B)間の間隙(t)は全面均一の厚さに形成できる。」(摘記(a2))と記載されている。 「圧力が掛りすぎると,接着剤欠除の状態になり接着力が極端に低下する。・・・添加粒状物(2)はこの圧縮圧力により破壊されることなく,・・・したがつて被接着物(A)(B)間の間隙(t)は全面均一の厚さに形成できる。」との記載からみて、本願補正発明の非圧縮性ビーズに相当する引用発明の添加粒状物が介在することによって、同じく本願補正発明の第1及び第2の部材に相当する引用発明の被接着物(A)(B)間の間隙(t)は全面均一の厚さに形成できるのであるから、添加粒状物は、被接着物(A)(B)間の間隙を維持するとともに、被接着物(A)(B)間に一定の間隙を形成することによって余分に接着剤が絞り出されることが防止されるものであり、さらに添加粒状物が存在しないと、圧力が掛かりすぎた場合に、接着剤欠除の状態になり接着力が極端に低下する、すなわち、被接着物(A)(B)が接着力不足になり、剥離し易くなるのであるから、添加粒状物は、被接着物(A)(B)間のスプリングバックによる空気で充填されたギャップの形成を阻止するといえる。 そうすると、引用発明において、「非圧縮性ビーズが、前記第1の部材と前記第2の部材との間から余分な前記流体混合物が絞り出されることを防止するとともにスプリングバックによる空気で充填されたギャップの形成を阻止するために前記第1及び第2の部材間に均一な間隔を維持している」とすることは当業者が容易に推考し得たものである。 (2-2-5)本願補正発明の効果について 本願補正発明の効果は、「2つの部材間の縁取り作業時、スプリングバックにより空気で充たされたギャップが上記2つの部材間に生じることが回避され、その結果高い接着強度を有する接合部を提供されると言った効果が得られる。」(段落【0048】)というものである。 しかしながら、上記「(b)相違点(ウ)について」で指摘したように、刊行物1には、本願補正発明の非圧縮性ビーズに相当する引用発明の添加粒状物が介在することによって、被接着物(A)(B)間のスプリングバックによる空気で充填されたギャップの形成を阻止するといえるから、本願補正発明の効果については、格別のものとすることはできない。 (2-2-6)まとめ 以上のとおり、本願補正発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (3)補正の却下の決定のむすび 以上のとおりであるから、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、この補正は平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。 したがって、本件補正は、その余の点を検討するまでもなく、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成19年6月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成17年1月21日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、下記のとおりである。 「第1及び第2の部材から成る2つの金属シートのような非浸透性部材の結合方法において、前記結合方法が、 a)複数の非圧縮性ビーズを接着剤に混入して流体混合物を製造し、 b)前記流体混合物を前記2つの部材の少なくとも一方の接合面に塗布し、しかる後、 c)前記第1及び第2の部材を接合してこれら2つの部材を結合する各ステップから成り、 前記ビーズが、前記第1の部材と第2の部材との間から余分な前記流体混合物が絞り出されることを防止するために前記第1及び第2の部材間に略均一な間隔を維持していることを特徴とする2つの部材の結合方法。」 (2)原査定の理由2及び引用文献の記載事項 拒絶査定における拒絶の理由(平成16年7月13日付けの「理由3」)の概要は、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができるものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、拒絶の理由で引用された引用文献1(特開昭49-35439号公報)及び引用文献4(特開昭62-43480号公報)は、それぞれ上記刊行物1及び2であるから、その刊行物の記載事項及び刊行物1に記載された発明は上記の「(2-2-1)刊行物の記載事項」及び「(2-2-2)刊行物1に記載された発明」に記載されたとおりである。 (3)対比 本願発明1は、本願補正発明の2つの部材の結合方法について、実質的に発明特定事項である「金属シート」を「金属シートのような非浸透性部材」に、「第1及び第2の部材の一方を折り曲げて接合して前記第1及び第2の部材を結合する」を「第1及び第2の部材を接合してこれら2つの部材を結合する」に、「非圧縮性ビーズ」を「ビーズ」に及び「スプリングバックによる空気で充填されたギャップの形成を阻止するために前記第1及び第2の部材間に均一な間隔を維持している」を「前記第1及び第2の部材間に略均一な間隔を維持している」にするものであり、特許請求の範囲が拡張されたものに相当する。「第1及び第2の部材を接合してこれら2つの部材を結合する」点については、引用発明においても「粒状物(2)を接着剤(1)に混入した混合物を被接着物(A)又は(B)表面に所定量塗布し、前記混合物を被接着物(A)(B)間で圧着し、」とするものであって、この点においては相違しないから、本願発明1と引用発明との相違点は、以下の2点である。 (ア’)第1及び第2の部材の材質について、本願発明1では「第1及び第2の部材から成る2つの金属シートのような非浸透性部材」と特定されているのに対して、引用発明では、特定されていない点(以下、相違点(ア’)という。) (イ’)本願発明1では、「ビーズが、前記第1の部材と第2の部材との間から余分な前記流体混合物が絞り出されることを防止するために前記第1及び第2の部材間に略均一な間隔を維持している」と特定されているのに対して、引用発明では、このような特定がなされていない点(以下、相違点(イ’)という。) (4)判断 (a)相違点(ア’)及び(イ’)について 本願補正発明は、本願発明1の「第1及び第2の部材から成る2つの金属シートのような非浸透性部材」及び「前記ビーズが、前記第1の部材と第2の部材との間から余分な前記流体混合物が絞り出されることを防止するために前記第1及び第2の部材間に略均一な間隔を維持していること」をそれぞれ「第1及び第2の部材から成る2つの金属シート」及び「前記非圧縮性ビーズが、前記第1の部材と前記第2の部材との間から余分な前記流体混合物が絞り出されることを防止するとともにスプリングバックによる空気で充填されたギャップの形成を阻止するために前記第1及び第2の部材間に均一な間隔を維持していること」に限定したものである。 そうすると、本願発明1の構成要件の全てを含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、前記「(2-2-4)相違点についての判断」に記載したとおり、刊行物1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、刊行物1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明1は、本願出願前に頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできないので、本願は、その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-06-18 |
結審通知日 | 2010-07-13 |
審決日 | 2010-07-27 |
出願番号 | 特願平7-180254 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C09J)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 英一、木村 敏康 |
特許庁審判長 |
原 健司 |
特許庁審判官 |
細井 龍史 橋本 栄和 |
発明の名称 | 2つの部材の結合方法並びにそのための接着剤、接合部及び接着剤分配装置 |
代理人 | 添田 全一 |
代理人 | 本多 弘徳 |
代理人 | 萩野 平 |