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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1229615
審判番号 不服2007-31215  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-19 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 特願2000-528410号「薄壁管液化器」拒絶査定不服審判事件〔平成11年7月29日国際公開、WO99/37453、平成14年 1月15日国内公表、特表2002-500965号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年1月14日(パリ条約に基づく優先権主張1998年(平成10年)1月26日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成19年7月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年11月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成18年1月16日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項11に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「材料のフィラメントを受容し、溶融状態で堆積するために該材料を液化する液化器であって、該液化器は、
第1材料のフィラメントを受容するための入口端部と、溶融状態の該第1材料を送達するための出口端部とを有する第1薄壁管であって、該入口端部に隣接するキャップゾーンを有する第1薄壁管と、
該第1薄壁管の少なくとも一部を加熱することにより、該キャップゾーンと該出口端部との間の該第1薄壁管に液化ゾーンを形成する加熱手段と、
溶融状態の該第1材料を分配するための該第1薄壁管の該出口端部にあるノズルと、
を備える、液化器。」

3.引用例の記載事項
(1)特開平9-24552号公報(以下、「引用例1」という。)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例1には、「三次元物体の製造方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【発明の属する技術分野】本発明は、三次元物体を製造する方法及び装置に係り、更に詳細にはオーバハング部を有する所定の形状の三次元物体を製造する方法及び装置に係る。」(段落【0001】)
イ.「図3乃至図5に示されている如き三次元物体を製造するために使用される支持構造体形成及び除去装置は種々の型式の原型製造装置との関連で使用されてよい。特に適用可能な原型製造装置は、上記米国特許第5,121,329号に記載された装置の如く、連続的に互いに隣接する複数の層やラミネートを形成することによって三次元物体を形成する装置である。本願に於いて開示される分離層や分離被覆を形成する方法は、最終的に自由空間に突出延在する原型のオーバハング部の下方に原型形成プロセス中に支持構造体が存在する必要があるあらゆる状況に適用可能である。
好ましい材料溶着及び盛り上げプロセスは上記米国特許第5,121,329号に記載された型式のものである。図1及び図2は、本願に於いて開示される如き支持構造体形成及び除去プロセスを実施すべく上述の装置に於いて使用されるよう一対のディスペンサ8及び30が取り付けられた供給ヘッド2を示している。かかる目的で、供給ヘッド2は複数のパス及び層にて材料を溶着し所定形状の物体を形成し得るよう、図6に示されている如く材料を受けるベース56に対し相対的に運動可能に支持されている。かかる相対運動は連続的な層として材料を溶着しこれにより三次元物体を形成し得るようX軸、Y軸、Z軸に沿って行われる。かかる相対運動を達成するために上記米国特許第5,121,329号に記載されている如きステップモータにより駆動されるねじが使用されてよい。供給ヘッド2はX方向及びY方向に運動可能なキャリア4に取り付けられることが好ましく、図1及び図2に示されたリードねじ6がX方向の運動を達成するために使用される。キャリア4はリードねじ6の延在方向に垂直な第二のY方向に第二のリードねじによって駆動されるよう取り付けられている。これらのリードねじはステップモータの如き制御可能なモータにより駆動される。上述の相対運動は形成されるべき物品の設計がまずコンピュータに於いて行われるコンピュータ制御式のCAD/CAM装置によって制御されることが好ましい。供給ヘッド2を所定の運動パターンにて運動させ、これにより材料の層を連続的に溶着し盛り上げて所望の形状に形成し得るよう、コンピュータ内の三次元データを駆動モータの制御された運動に変換するソフトウェアが使用される。図示の実施形態に於いては、ベース56、即ち材料を受ける基体(図6参照)は完全に三次元的な運動を行い得るよう上下方向、即ちZ方向に移動可能である。」(段落【0014】、【0015】)
ウ.「一方の材料を供給する好ましくは管状部材、即ち導管の形態をなす第一のディスペンサ8が設けられている。可撓性を有するフィラメントやストランドの如き固体の形態にて供給材料が供給される用途に於いては、固体材料を加熱して溶融し、これにより供給材料が吐出チップ14を有する供給ノズル12へ液体状態にて供給されるよう、ディスペンサ8の周りには加熱コイル10が設けられている。チップ14は液体材料を供給する吐出口を郭定している。供給材料は典型的には物体形成工程、即ち原型形成工程が行われる制御された雰囲気温度の如き所定の条件が満たされると凝固する材料である。ディスペンサ8は材料を受ける側の端部にキャップ16を有し、このキャップは取り付けリング18に固定されている。後に説明する理由から、ディスペンサ8は好ましくは取り付けリング18に枢着されることにより所定の上下方向の調節が可能であるよう取り付けられている。かかる目的で一対の実質的に水平に延在する枢軸ピン20がキャップ16の両側部より突出し、取り付けリング18に支持されている。
リフトブラケット22がチップ14に近接してディスペンサ8の他端に取り付けられており、アタッチメントプレート24を担持している。二方向に作動可能なシリンダ28の如きリフト装置がアタッチメントプレート24に固定されたピストン26を有している。シリンダ28は空気圧シリンダ又は油圧シリンダであってよい。またシリンダ28はピストン26を上下方向に往復動させ得るよう流体によって駆動される二方向に往復動可能なシリンダである。図示のディスペンサよりの材料の供給を制御するソフトウェアプログラムの制御により達成される上述の如き往復動により吐出チップ14が昇降される。かくしてチップ14が上下方向に高さ調節されることにより後述の如く第二のディスペンサ30に対する特定の目的が達成される。リフト装置28は、電気的に付勢されると伸張し、ばねによって復帰されることによってピストン26を周期的に往復動させるばね付勢されたソレノイドを含む機構を含んでいてよい。ピストン26は通常時には図6に示されている如くディスペンサ30のチップ36に対し所定の高さ位置にチップ14を保持するよう後退された状態に維持される。またディスペンサ30はその吐出端部にノズル34を担持しており、ノズル34にはチップ36が取り付けられている。ディスペンサ30へ供給される固体の供給材料を溶融するための加熱コイル32が使用されることが好ましく、その場合には供給材料はノズルチップ36を経て液体状態にて供給される。ディスペンサ30は取り付けキャップ31によりキャリア4に固定されている。」(段落【0016】、【0017】)
エ.「チップ14及び36は所定の条件下にて凝固可能であるよう液体状態にて供給される互いに異なる組成の別の材料供給源に個別に接続されている。供給材料は例えばポンプによりリザーバより液体状態にて供給されてもよい。また供給材料は図示の如くまた米国特許第5,121,329号の図5に示されている如く可撓性を有するフィラメントやストランドの如く始めのうちは固体の状態にて供給されてもよい。可撓性を有するストランドは、その凝固温度よりも高い温度に比較的迅速に加熱可能でありしかもベース56上へ供給された後に温度が僅かに低下しても迅速に凝固する固体材料にて形成される。後に説明する種々の材料を含む熱可塑性樹脂、ワックス、金属よりなる可撓性ストランドが使用されてよい。かかるストランド又はフィラメントが図2に於いて符号50にて示されており、適当な材料送給機構により供給スプール(図示せず)より管状の導管及びガイドハウジング54を経て送給される。フィラメント50を挟んで送給する機構として一対のピンチローラ46が効果的に使用可能である。ピンチローラ46を間欠的に制御された状態にて駆動することはステップモータ38及び40によって達成され、各モータは駆動力をローラ46へ伝達する平歯車42及び44を駆動する。
モータ38及び40はピンチローラ46を間欠的に駆動し、これにより特定のディスペンサ8又は30のためのフィラメント材料を選択的に送給すべく適当なソフトウェアによってプログラム式に制御される。ディスペンサ8のためのフィラメント52について上述した材料送給機構と同一の機構が別の供給スプールよりフィラメントをディスペンサ30を送給するために使用されてよい。」(段落【0018】、【0019】)
オ.「一つの供給ヘッド2に担持された二つのディスペンサは図1及び図2に示された細長い管状のディスペンサ及び加熱コイルの形態以外の形態をなしていてもよい。フィラメントや棒体の形態にて溶融可能な固体をディスペンサへ供給する場合以外の状況に於いては、供給されるべき材料はポンプによりリザーバより液体として直接供給され、その場合には加熱コイルを有する細長い管状のディスペンサは不要である。また図5の実施形態に於いては、剥離材料の薄い被覆は吐出チップとして機能する注射針を経て注射器より供給されてもよい。かかる供給装置は供給ヘッド2に取り付けられたディスペンサの一方として機能する。またこれと同一の用途に於いては、物体66との界面70に於ける支持構造体68の上面に液体を塗布する機能を果たす剛毛を有するブラシチップを経て液体の剥離材料が供給されてもよい。物体66の下面の垂直面が支持構造体68の各層の垂直面より分離される場合には、液体の被覆は支持構造体の各層の垂直面にも塗布されてよい。薄い被覆として供給される液体材料は物体66の材料Aの隣接する次の層が適用される前に凝固し、少なくとも部分的に硬化する。
分離用の構造材料や剥離材料は一つの供給ヘッドに担持され複数の供給通路を有する一つのノズルチップより供給されてもよい。かかる供給ヘッドの構造が前述の米国特許第5,121,329号の図6に示されており、コラム14の第11行乃至第36行に記載されている。かかる供給ヘッドの実施形態に於いては、フィラメントや棒体を溶融させることにより、或いは液体をリザーバより供給ヘッド内の互いに独立の供給通路を経て供給することにより、互いに異なる材料が液体の状態にて供給される。一方の材料又は他方の材料を選択的に又は間欠的に供給すべく適当な流量制御装置が使用される。」(段落【0033】、【0034】)
カ.図6には、供給ノズル12,34から溶融状態の供給材料が分配されて層状に堆積していく様子が図示されている。
キ.図1及び図2には、ディスペンサ8,30の表面における、キャップ16,31を除いた部分に加熱コイル10,32が螺旋状に巻き付けられている点が図示されている。これら図1,図2から、ディスペンサ8,30の少なくとも一部が加熱コイル10,32によって加熱されることが看取できる。
ク.図1及び図2、並びに上記ウ.の「可撓性を有するフィラメントやストランドの如き固体の形態にて供給材料が供給される用途に於いては、固体材料を加熱して溶融し、これにより供給材料が吐出チップ14を有する供給ノズル12へ液体状態にて供給されるよう、ディスペンサ8の周りには加熱コイル10が設けられている。」との記載からみて、ディスペンサ8,30には、供給材料を受容する入口端部と、溶融状態の供給材料を送達するための出口端部とを有すること、また、加熱コイル10,32がキャップ16,30と該出口端部との間のディスペンサ8,30に液化ゾーンを形成しているということができる。

これらの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「供給材料のフィラメント50を受容し、溶融状態で堆積するために該材料を液化する供給ヘッド2であって、該供給ヘッド2は、
供給材料のフィラメント50を受容するための入口端部と、溶融状態の該供給材料を送達するための出口端部とを有する細い管状のディスペンサ8,30であって、該入口端部に隣接するキャップ16,31を有するディスペンサ8,30と、
該ディスペンサ8,30の表面に螺旋状に巻き付けられ、該ディスペンサ8,30の少なくとも一部を加熱することにより、該キャップ16,31と該出口端部との間の該ディスペンサ8,30に液化ゾーンを形成する加熱コイル10,32と、
溶融状態の該供給材料を分配するための該ディスペンサ8,30の該出口端部にある供給ノズル12,34と、
を備える、供給ヘッド2。」

(2)実願昭63-5177号(実開平1-110913号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例2には、「ノズル用ヒーター構造」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
ケ.「[産業上の利用分野]
本考案はプラスチック成形機械器具分野で利用され、電気ヒーターを有したホットチップノズルの構造にかんする。」(1ページ18行?2ページ1行)
コ.「[従来の技術]
従前のノズルは、ノズルの側面へ細管ヒーターを螺旋状に巻き付けて加熱を可能にした極めて単純な組み立てによっていた。単に該細管ヒーターを巻き付けている状態であるので、そのノズルへの熱伝導が充分で無い部分が有って、特にその部分の細管ヒーターは充分に放熱せずオーバーヒートをして断線、急激な酸化腐食等が激しく発生してその細管ヒーターの寿命が短く安定した作業効率が充分に期待出来ないし、更に該細管ヒーターはノズルの外周面へ溶接等で固着されている場合が多いので該ヒーターの故障が原因の交換はノズルと共に修理交換と成って部品交換コストが高く付く等の場合があった。
[考案の解決しようとする問題点]
前記した様にノズルへ簡単に巻きつけただけでは安定した熱伝導は得られ無くて長時間使用に耐えられ無いし又細管ヒーターをノズルの外周面へ巻きつけ溶接固定をしてしまえばヒーター不良に伴いノズルまるごと交換と成り修理コスト高と成るので、それら要因を可能な限り排除したノズルを提供することを目的として、かゝる細管ヒーターの放熱不良、耐熱不良、極度な熱酸化腐食等を排除すること及びメンテナンス自在等を問題としている。
[問題点を解決しようとする手段]
かゝる問題点を解決する為に、従来はホットチップノズルの外周面へ細管ヒーターをコイル状に巻き付けて金属溶接等をして固定させて該ノズルを加熱していたものを、本願では前記問題の原因の単なる巻き付け(図示せず)をしないで、外周面が雄テーパー部を成しその側壁に締め付け用の摺り割部を形成し該側壁の端部に締め付け螺子部を成して該ホットチップノズルへ挿入し固定する様にした筒状取り付け金具と、前記雄テーパー部へ挿入する内面雌テーパー部を成した筒状の良熱伝導部材の内部に電気発熱体を埋設してその外周面を前記熱伝導部材よりも熱伝導が悪い耐熱性部材で外装を成した発熱部と、で一対の組み立て体を成し締め付け金具で該ノズルへ固着離脱自在に構成させて前記したノズルへの密着した固定又は交換は極めて容易に自在に成って、これら構成はかゝる問題の解決手段と成している。」(2ページ2行?4ページ4行)
サ.第1図には、比較的細い管のノズル1が図示されている。第3図には、外装部3aで覆われている良熱伝導部材3cに電気発熱体3bを埋設した発熱部3が図示されている。この発熱部3は、その形態から、ブロック状のヒーターと呼ぶことができる。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能又は作用等からみて、後者の「供給材料」は前者の「材料」又は「第1材料」に相当し、以下同様に、「供給ヘッド2」は「液化器」に、「キャップ16,31」は「キャップゾーン」に、「加熱コイル10,32」は「加熱手段」に、「供給ノズル12,34」は「ノズル」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「細い管状のディスペンサ8,30」と本願発明の「第1薄壁管」とは、どちらも「管」である点で共通する。

したがって、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致し、
[一致点]
「材料のフィラメントを受容し、溶融状態で堆積するために該材料を液化する液化器であって、該液化器は、
第1材料のフィラメントを受容するための入口端部と、溶融状態の該第1材料を送達するための出口端部とを有する管であって、該入口端部に隣接するキャップゾーンを有する管と、
該管の少なくとも一部を加熱することにより、該キャップゾーンと該出口端部との間の該管に液化ゾーンを形成する加熱手段と、
溶融状態の該第1材料を分配するための該管の該出口端部にあるノズルと、
を備える、液化器。」
そして、次の点で相違する。
[相違点]
本願発明は、管が「薄壁」であるのに対して、引用発明は、管が薄壁かどうか明らかでない点。

5.判断
次に相違点について検討する。
まず、本願発明における「第1薄壁管」とは、壁の厚さがどの程度の厚さを意味するのかを見てみると、本願の請求項11には、「第1薄壁管」の壁の厚さについては何も記載されていない。一方、本願の請求項11を間接的に引用した請求項19において、その厚さがフィラメントの太さとともに記載されている。してみると、請求項11に記載された第1薄壁管の壁厚は、必ずしも請求項19に記載された壁厚に限定されるものではないことは明らかである。
また、本願の明細書の記載を見てみると、その段落【0011】には、「薄壁管は、成型材料のフィラメントを受容するための入口端部および液体状態の材料を送達するための出口端部を有する。入口端に隣接する管の第1の部分は、入口またはキャップゾーンとして機能する。管の第1の部分は、加熱ブロックに対して外側にある。管は、加熱ゾーンを形成する加熱ブロックを通過する第2の部分を有している。ノズルは、管の出口端部に接続する。加熱ブロックは、好適には管の第2の部分に熱交換関係にある加熱要素を含み、それによりフィラメントを凝固温度以上の温度まで加熱する。」と記載され、続けて段落【0012】には、「フィラメントは、好適には極めて小さな半径、すなわち1/16インチのオーダーである。管のキャップゾーンは、加熱ゾーン内に移動中適切な温度で可撓性ストランドを維持するめに急速に熱を分散させなければならない。それによりストランドは、ぐにゃっとなったり、曲がったりしない。0.008?0.015インチの範囲の厚さの壁を有するステンレス鋼管は、この目的に対して適しており、安価である。管の内径は、好適には0.07インチのオーダーである。」と記載されている。また、その【0050】には、「押出ヘッド32は、液化器59、フィラメントドライブ208および安全スイッチ210を保持するエンクロージャ206から形成される。液化器59は、熱伝導性の薄壁管212、加熱ブロック214、押出先端216、先端保持具218、ヒータ220および熱電対222を含む。図9は、液化器59の分解図を示す。図9に示されるように、薄壁管212は、入口端部224、出口端部226を有し、90°曲げられている。好適な実施形態において、先端216は管212の出口端部内にハンダ付けされる。あるいは、先端216は管212に鑞付けまたは溶接されてもよい。または、ノズルが管の出口端部226をスエージ加工することによって管212自身の内部に形成されてもよい。0.070インチのフィラメントを使用する場合、管212は好適には約0.074インチの内径を有する。管212の壁の厚さは好適には0.005?0.015インチの間である。管212からフィラメント40まで最大熱伝導が達成されるように可能な限り管212を薄くすることが望ましい。」と記載されている。これらの記載によれば、薄肉管の壁は、0.005?0.015インチ(0.008?0.015インチ)の範囲の厚さであるいうことができるが、その壁の厚さは、あくまで0.070インチ(1/16インチのオーダー)の太さのフィラメントを用いること、及び、薄壁管が加熱ブロックによって加熱されるように構成されていることを前提とした厚さであるということがわかる。しかし、請求項11には加熱ブロックについて何も記載されていないし、フィラメントの太さが特定されているわけでもない。
したがって、請求項11に記載された「第1薄壁管」の壁厚は、請求項19や段落【0012】、【0050】に記載された厚さに限定されるものではなく、従来の管に比べて相対的に薄いものであればよいという程度の意味であると解するのが妥当である。
ところで、引用発明は、細い管状のディスペンサ8,30の表面にヒーターを螺旋状に巻き付けたもの(加熱コイル10,32)である。一方、引用例2には、プラスチック成形分野において、管(ノズル)の側面にヒーターをらせん状に巻き付けて溶接した構成では、管への熱伝導が充分でない場合があるという課題、及び修理コスト高になってしまうという課題があり、それらの課題を解決するために、螺旋状に巻き付けたヒーターに代えてブロック状のヒーターを採用するという発明が記載されている(上記コ.参照)。
そうすると、引用発明及び引用例2に記載された発明に接した当業者であれば、引用発明に引用例2に記載された発明を適用し、ヒーターの構造を螺旋状に代えてブロック状とすることは、格別の創意を要することなく容易に想到し得たことである。
そして、引用発明においては、管(細い管状のディスペンサ8,30)の表面にヒーター(加熱コイル10,32)を螺旋状に巻き付けているが、引用例2に記載された発明においては、管(ノズル)の表面にヒーターを螺旋状に巻き付けずに、ヒーターを良熱伝導部材に埋設してブロック状のヒーターとしているので、引用例2に記載された管(ノズル)は、引用発明の管(ディスペンサ10,32)に比べて、その径を相対的に小さくすることができ、壁厚も薄くすることができることは明らかである。
してみると、引用発明に引用例2に記載された発明を適用して、上記相違点に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明による効果も、引用発明及び引用例2に記載された発明から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、平成19年12月19日付けで補正された審判請求書の請求の理由において、「請求項11にかかる発明たる液化器は、請求項11に明記されているように、『第1材料のフィラメントを受容するための入口端部と、溶融状態の該第1材料を送達するための出口端部とを有する第1薄壁管であって、該入口端部に隣接するキャップゾーンを有する第1薄壁管と、該第1薄壁管の少なくとも一部を加熱することにより、該キャップゾーンと該出口端部との間の該第1薄壁管に液化ゾーンを形成する加熱手段と、』を備えるものです。
本願明細書において詳細に述べているように、薄壁管212の第1部分は、液化器59用のキャップゾーンを形成しており、当該第1部分は加熱ブロックの外部にあります(本願明細書の段落0051)。
従って、請求項1にかかる発明につき既に詳述した内容から明らかなように、本願請求項11における『第1材料のフィラメントを受容するための入口端部と、溶融状態の該第1材料を送達するための出口端部とを有する第1薄壁管であって、該入口端部に隣接するキャップゾーンを有する第1薄壁管と、該第1薄壁管の少なくとも一部を加熱することにより、該キャップゾーンと該出口端部との間の該第1薄壁管に液化ゾーンを形成する加熱手段と、』に相当する部分についての開示・示唆が引用文献1(審決注:本審決記載の引用例1に相当する。)によってされていないのは明らかです。」(「(2-3)請求項11?15にかかる発明と引用文献に記載された発明との対比」の項参照)と主張する。
この主張は、本願発明の「キャップゾーン」とは、薄壁管における「加熱ブロックの外部」にある部分を意味するのであるから、引用例1におけるキャップ16,31を設けた部分はキャップゾーンに相当するものではないという主張である。
しかし、本願請求項11には、「加熱ブロック」について何も記載されていないし、キャップゾーンは「入口端部に隣接する」と記載されているだけであって、加熱ブロックの外部にあることについては何ら特定されていないのであるから、審判請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張と言わざるを得ない。
そして、引用発明において、キャップ16,31が設けられている部分には加熱コイル10,32が巻き付けられていないところからみて、キャップ16,31が設けられている部分がキャップゾーンとして機能することは明らかである。
よって、審判請求人の主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
また、本願は、本願発明即ち請求項11に係る発明が特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-28 
結審通知日 2010-08-03 
審決日 2010-08-17 
出願番号 特願2000-528410(P2000-528410)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 晋也  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 川上 溢喜
大山 健
発明の名称 薄壁管液化器  
代理人 名古屋国際特許業務法人  

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