• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1229618
審判番号 不服2007-31823  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-26 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 平成11年特許願第 85219号「記録装置および記録方法、再生装置および再生方法、並びに記録再生システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月13日出願公開、特開2000-285595〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成11年3月29日に出願したものであって、その請求項1に係る発明は、平成22年10月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
ランダムアクセス可能な記録媒体に、データを記録する記録装置であって、
前記記録媒体に、前記データを記録する記録手段と、
前記記録媒体における所定数のセクタで構成される各クラスタ領域に、データ記録領域とヘッダ領域とを設定し、ユーザの操作に応じて入力される操作入力情報に基づいて、前記クラスタが指定された場合、前記指定されたクラスタの前記データ記録領域に前記データが所定の圧縮率で圧縮された圧縮データを記録し、前記ヘッダ領域に、前記データ記録領域に記録されるデータの圧縮率及び前記データ記録領域の先頭に記録されるデータのタイムコードを記録するように、前記記録手段を制御する制御手段と
を含むことを特徴とする記録装置。」(以下「本願発明」という。)

2.引用例及びその記載

これに対し、当審で通知した平成22年8月16日付けの拒絶理由に引用した特開平6-197306号(平成6年7月15日公開、以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【請求項1】 映像及び音声を所定時間毎のデータ・ブロック化して着脱自在な記録媒体に記録する記録再生装置であって、電源投入動作、及び、スタンバイ状態での当該記録媒体の装着動作に応じて、当該記録媒体のデータ領域の空き領域の先頭にアドレス設定することを特徴とする記録再生装置。」

(2)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、映像及び音声を記録媒体に記録又は再生する記録再生装置及び再生装置に関する。」

(3)「【0020】映像及び音声の記録では、通常、2つのタイムコードを使用する。第1に、記録媒体又は映像音声プログラムの冒頭からの経過時間やカメラ撮影の累積時間であり、第2に、記録又は撮影時の年月日時刻情報である。システム制御回路40は前者のタイムコードをSMPTE形式で発生し、ID発生回路34に印加する。カレンダクロック46が後者のタイムコードを発生し、ID発生回路34に供給する。
【0021】アドレス情報発生回路48は、メモリ制御回路38からのアドレス情報から、記録情報のデータ量や先頭アドレスに関する情報を発生し、ID発生回路34に供給する。
【0022】ID発生回路34は、回路22,30,40,46,48からの情報を所定フォーマットに成形して、データ合成回路32に印加する。データ合成回路32は、一定時間T_(0)(例えば、1秒)内に音声圧縮回路22及び映像圧縮回路30が生成する音声及び映像の圧縮データを合成し、ID発生回路34からのIDデータを付加して、1つのデータ・ブロックとする。
【0023】ID発生回路34の出力データ・フォーマットを図2に示す。図2に示すように、ID発生回路34による合成データ列又はデータ・ブロックは、固定長のIDデータ領域、可変長の音声データ領域及び可変長の映像データ領域からなる。
【0024】IDデータ領域は、ID(番号)、タイムコード、画質のモード、映像データ長、映像先頭番地、音質のモード、音声データ長、音声先頭番地及び削除済みフラグからなる。削除済みフラグは、物理的な記録消去をせずに、論理的に記録を消去するのに使用される。ID(番号)は、図3に示すように、例えば初期値0から始まり、一定時間T_(0)(例えば、1秒)毎にインクリメントされる。図3以降及び以下の説明では、これをIDに続く2桁の数字で表現する。
【0025】音声データ領域は、1秒間の音声信号の圧縮データからなり、具体的には、Lチャンネル及びRチャンネルの初期情報(リセット・データ)と、これに続く可変長符号化された圧縮データとからなる。映像データ領域は、1秒間、即ち30フレームの映像信号の圧縮データからなり、具体的には、例えばフレーム内符号化などによる初期情報(リセット・データ)と、これに続く可変長符号化された圧縮データとからなる。」

(4)「【0029】マスメモリ36のメモリ空間を図4に示す。このシステムでは、マスメモリ36のメモリ空間を基本的に3つの領域に区分する。第1は、各撮影シーンの最初の記録データのID番号を登録する目次テーブル、第2は、連続する各ID番号のデータ・ブロックの先頭記録アドレスを記憶するIDテーブル、第3は、データを記憶する領域である。更に、目次テーブル上で次の記録を開始する位置を示す数値を記憶するポインタSP、及び次に記録開始する際のID番号を記憶するメモリ・カウンタCCをメモリ空間の所定箇所に設けてある。
【0030】図4では、第1のシーン#1をID0?ID19にわたり記録し、続けて第2のシーン#2をID20?ID44に記録し、第3のシーン#3をID45以降に記録するとしている。目次テーブルの各記憶位置TC(n)には、記録シーン毎にその順番で先頭のID番号が記録され、IDテーブルの各記憶位置ID(n)にはID番号がnのデータ・ブロックが記録されるデータ領域の先頭アドレスX,Yが記録され、データ領域には、図2に示す構造のデータ・ブロックが空き領域に順番に記録される。なお、ID番号がnのデータ・ブロックがデータ領域に記録完了した時点で、ID(n+1)には、次に記録開始するときの、データ領域のアドレスを予め格納する。
【0031】ちなみに、データ領域を論理的に(X,Y)の二次元で表現しているが、一次元で表現してもよいことはいうまでもない。
【0032】シーン#1,#2,#3の記録に対するSP、CC、目次テーブルCT(n)及びIDテーブルID(n)の変化を表として、図5に示す。最初の記録前の記録ポーズ状態では、SP=0、CC=0であり、ID(0)には、データ領域の先頭アドレス(X0,Y0)がセットされている。
【0033】使用者によるシーン#1の記録開始の指示に応じて、システム制御回路40は、ID発生回路34にCC値に応じたID番号(ここでは、0)を発生させる。このID番号は1秒毎にインクリメントされる。データ合成回路32が順次出力するデータ・ブロックは、ID(0)で示されるデータ領域のアドレス、即ち(X0,Y0)から順次書き込まれていく。
【0034】なお、データ領域へのデータ・ブロックの書込みに応じて、IDテーブルには、次のデータ・ブロックの先頭記録アドレスが、そのID番号に相応する記憶位置に書き込まれる。即ち、ID(n)のデータ・ブロックの書込み終了後、IDテーブルのID(n+1)に、次のデータ・ブロックの書込み開始アドレスが書込まれる。
【0035】このようにして、シーン#1の撮影(記録)がID19で終了し、記録ポーズになったとする。この時点で、SPはインクリメントされて1になり、CCには次のID番号である20がセットされる。次のシーンを記録するときには、CCが示すID番号から開始し、SPが示す目次テーブルTC(SP)にそのID番号をセットし、且つ、IDテーブルで、CCが示すID番号に対応する記憶位置に記憶されるアドレスから、データ・ブロックを記録する。
【0036】即ち、次のシーン#2を開始したとき、SP=1でCC=20であるから、目次テーブルのTC(1)にCCが示すID番号(ここでは20)をセットする。ID発生回路34は、20からスタートし、1秒毎にインクリメントするID番号を発生する。IDテーブルの、CCが示すID番号の記憶位置から、データ・ブロックの記録開始アドレスが分かり、データ合成回路32により合成されたデータ・ブロックは、そのアドレスから順にデータ領域に記憶される。IDテーブルには、シーン#1と同様に、各IDの先頭記憶アドレスがセットされる。
【0037】シーン#2の撮影(記録)がID44で終了したとすると、この時点で、SPはインクリメントされて2になり、CCには次のID番号である45がセットされる。」

(5)「【0068】なお、本明細書、特に特許請求の範囲で、記録再生装置は、特に他を排除することが明らかな場合を除き、記録専用装置、再生専用装置及び記録再生兼用装置を包含するものである。
【0069】固体メモリを記録媒体又は記憶媒体とする実施例を説明したが、本発明は、ハード・ディスク装置、光ディスク、光磁気ディスクなどのその他の記録媒体の利用を排除するものではない。」

上記摘示事項(1)ないし(4)及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「音声及び映像を所定時間毎にデータ・ブロック化して記録媒体に記録する記録装置であって、
1つのデータ・ブロックは、IDデータ領域、音声及び映像データ領域からなり、
IDデータ領域は、タイムコード、音質及び画質モード等からなり、
音声及び映像データ領域は、圧縮データからなり、
使用者による記録開始の指示に応じて、データ・ブロックを記録媒体のデータ領域に順番に記録する記録装置。」

同じく、当審で通知した平成22年8月16日付けの拒絶理由に引用した特開平10-269706号公報(平成10年10月9日公開、以下「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

(6)「【0002】
【従来の技術】近年、画像情報や音声情報をなるべく劣化させずに圧縮符号化して、再び再生手段によりその圧縮符号化した情報素材を複合化する技術が発達してきている。その画像情報や音声情報を圧縮符号化して復号化(伸張)する方式としては、例えばMPEG(エムペグ:Motion Picture Experts Group)システム規格で圧縮して多重化されたビデオオーディオ素材等は、図11に示すように複数のクリップから構成されている。このクリップとは、複数個のクラスタ、例えば図11の例では4個のクラスタから構成されている。このクラスタとは、ハードディスク(HD)に形成されている一般にセクタと呼ばれるある単位(例えば512バイト)の整数倍の単位である。図11の例では2つの前のクリップCP1とあるクリップCP2が示されている。」

3.対比

引用発明と本願発明とを対比する。
(1)引用発明と本願発明の「記録媒体」及び「記録装置」は共通し、引用発明の「音声及び映像」は、本願発明の「データ」に相当し、そして、引用発明の「記録媒体」は、固体メモリ、ハードディスク装置等のことであるから、ランダムアクセス可能であることは明らかである。
(2)引用発明の「記録装置」は、音声及び映像を記録媒体に記録するものであるから、本願発明の「記録手段」に相当する構成を備えている。
(3)引用発明の「データ・ブロック」は、「記録媒体のデータ領域」に記録されるのであるから、記録媒体上の領域に記録されることは明らかである。
(4)引用発明の「IDデータ領域」「音声及び映像データ領域」「音質及び画質モード」及び「タイムコード」は、本願発明の「ヘッダ領域」「データ記録領域」「圧縮率」及び「タイムコード」にそれぞれ相当する。
(5)引用発明は、「使用者による記録開始の指示に応じて、データ・ブロックを記録媒体のデータ領域に順番に記録する」ものであるから、本願発明の「ユーザの操作に応じて入力される操作入力情報に基づいて、」「前記データ記録領域に前記データが所定の圧縮率で圧縮された圧縮データを記録し、前記ヘッダ領域に、前記データ記録領域に記録されるデータの圧縮率及び前記データ記録領域の先頭に記録されるデータのタイムコードを記録する」に相当する構成を備えている。
(6)引用発明は、「音声及び映像を所定時間毎にデータ・ブロック化して記録媒体に記録する」のであるから、本願発明の「制御手段」に相当する構成を備えている。

そうすると、引用発明と本願発明は次の点で一致する。

<一致点>
「ランダムアクセス可能な記録媒体に、データを記録する記録装置であって、
前記記録媒体に、前記データを記録する記録手段と、
前記記録媒体における各領域に、データ記録領域とヘッダ領域とを設定し、ユーザの操作に応じて入力される操作入力情報に基づいて、前記データ記録領域に前記データが所定の圧縮率で圧縮された圧縮データを記録し、前記ヘッダ領域に、前記データ記録領域に記録されるデータの圧縮率及び前記データ記録領域の先頭に記録されるデータのタイムコードを記録するように、前記記録手段を制御する制御手段と
を含む記録装置。」の点。

そして、次の点で相違する。

<相違点>
本願発明は、所定数のセクタで構成されるクラスタ領域にデータ記録領域とヘッダ領域とを設定し、クラスタを指定し、指定されたクラスタに記録するのに対し、引用発明はデータ・ブロック化して記録媒体のデータ領域に記録する点。

4.判断
引用例2には、画像情報や音声情報を圧縮符号化する際に、セクタの整数倍の単位であるクラスタを単位とすることが従来技術として記載されている。
そうすると、引用発明において、音声及び映像をデータ・ブロック化して記録媒体のデータ領域に順番に記録することに代えて、引用例2に記載された上記技術を適用して、記録媒体にクラスタ領域を設定して記録すること、すなわち、相違点の、所定数のセクタで構成されるクラスタ領域にデータ記録領域とヘッダ領域とを設定し、クラスタを指定し、指定されたクラスタに記録することは当業者が容易に想到できたものである。

なお、審判請求人は、平成22年10月8日付け意見書において、「すなわち、本願発明においては、記録媒体の各クラスタ(最小の記録単位であるセクタを所定数まとめた単位)の先頭セクタに、タイムコードと圧縮率を記録し、その先頭セクタに続くセクタに、圧縮データが記録されるようになっており、データが記録される際には、クラスタ番号などが指定されて、記録媒体中の記録位置を決められて記録されます」旨主張している。
しかしながら、本願発明には、クラスタの各セクタに関する特定事項(「先頭セクタに、タイムコードと圧縮率を記録し、その先頭セクタに続くセクタに、圧縮データが記録される」)を有しておらず、請求人の上記主張は本願発明に基づくものではないので採用することができない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても本願発明が奏する効果は引用例1及び2に基づいて当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-01 
結審通知日 2010-11-02 
審決日 2010-11-15 
出願番号 特願平11-85219
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 達也  
特許庁審判長 小松 正
特許庁審判官 酒井 伸芳
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 記録装置および記録方法、再生装置および再生方法、並びに記録再生システム  
代理人 稲本 義雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ