• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1229656
審判番号 不服2008-23783  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-17 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 特願2006- 18370「キーボードの照明システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月10日出願公開、特開2006-209776〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年1月27日(パリ条約による優先権主張2005年1月27日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成20年6月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成22年4月2日付けで審尋がなされ、これに対して同年7月2日付けで回答がなされたものである。

2.平成20年9月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年9月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正に関する請求人の主張
平成20年9月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)に関する請求人の主張の概要は、平成20年9月17日付けの審判請求書の「請求の理由」の「(IV)補正について」の記載からみて、以下のとおりである。
「(IV)補正について
本出願人は、同時に提出する手続補正書において、請求項2及び10を請求項1に導入しました。以下に、補正前の請求項1?10と、補正後の請求項1?8との関係を示します。
補正前 補正後
請求項1 請求項1
請求項2 削除
請求項3 請求項2
請求項4 請求項3
請求項5 請求項4
請求項6 請求項5
請求項7 請求項6
請求項8 請求項7
請求項9 請求項8
請求項10 削除
補正後の請求項1(以下請求項1)は、「コンピュータ装置の表示部材上に配置された複数の液晶ディスプレイを有するコンピュータ装置と、前記液晶ディスプレイの少なくとも1つの電気的状態を変化させ、当該少なくとも1つの液晶ディスプレイによって所定の照明レベルを提供して前記コンピュータ装置のキーボードの少なくとも一部分を照明する表示コントローラと、前記少なくとも1つの液晶ディスプレイによって放射された光を前記キーボードの方に導く遮蔽板とを含むキーボード照明システム。」(下線部は補正箇所です)と補正しました。
以上のように、本補正は、新規事項の加入をするものではありません。また、本補正は、特許請求の範囲の減縮に相当し、特許法第17条の2の補正制限に反するものでもありません。」

(2)補正の内容について
補正前後の特許請求の範囲の記載及び上記の請求人の主張からみて、本件補正の内容は以下のとおりである。
請求項1は、本件補正により、
「コンピュータ装置の表示部材上に配置された複数の液晶ディスプレイを有するコンピュータ装置と、
前記液晶ディスプレイの少なくとも1つの電気的状態を変化させ、当該少なくとも1つの液晶ディスプレイによって所定の照明レベルを提供して前記コンピュータ装置のキーボードの少なくとも一部分を照明する表示コントローラと、
前記少なくとも1つの液晶ディスプレイによって放射された光を前記キーボードの方に導く遮蔽板と
を含むキーボード照明システム。」
と補正された。なお、下線は、補正箇所を示すための請求人が付与したものである。
また、補正前の請求項2及び請求項10は、本件補正により削除された。
また、補正前の請求項3-9は、本件補正により、補正後の請求項2-8とされた。

(3)補正の目的について
請求項1に係る本件補正は、「前記少なくとも1つの液晶ディスプレイによって放射された光を前記キーボードの方に導く遮蔽板と」の記載を付加する補正事項を含むものであり、「少なくとも1つの液晶ディスプレイによって放射された光をキーボードの方に導く遮蔽板」という発明特定事項を追加するものである。
そして、当該「少なくとも1つの液晶ディスプレイによって放射された光をキーボードの方に導く遮蔽板」は、補正前の請求項1に記載された「コンピュータ装置の表示部材上に配置された複数の液晶ディスプレイを有するコンピュータ装置」又は「前記液晶ディスプレイの少なくとも1つの電気的状態を変化させ、当該少なくとも1つの液晶ディスプレイによって所定の照明レベルを提供して前記コンピュータ装置のキーボードの少なくとも一部分を照明する表示コントローラ」の下位概念ではなく、それらと同位の概念であるので、上記補正事項は、補正前の発明特定事項を限定的に減縮するものとは認められず、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
また、上記補正事項が、改正前特許法第17条の2第4項第1号に掲げられた請求項の削除を目的とするものにも、同項第3号に掲げられた誤記の訂正を目的とするものにも、同項第4号に掲げられた明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは明らかである。
したがって、上記補正事項は、改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反しているので、上記補正事項を含む本件補正は、改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反しており、請求人の上記主張を採用することができない。

(4)独立特許要件について
上記で述べたとおり、上記補正事項が改正前特許法第17条の2第4項補正事項が改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた事項を目的とするものに該当しないことは明らかであるが、仮に、上記補正事項が改正前特許法第17条の2第4項補正事項が改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げたものに該当すると、「コンピュータ装置の表示部材上に配置された」の記載を追加する補正事項は改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げたものに該当するので、請求項1に係る本件補正は、改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた事項を目的とするもの該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(ア)引用例
(A)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-55734号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(a)「【0008】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)以下、図1?図4を参照してこの発明の第1実施形態を説明する。図1は、この実施形態におけるノート型パソコンの全体を示し、一部断面を含む外観斜視図である。このノート型パソコンは、本体ケース1に対して表示ケース2が折り畳み可能に取り付けられているもので、パソコン使用時には本体ケース1に対して表示ケース2を所定角度立ち上げ可能となっており、非使用時には表示ケース2を折り畳み、本体ケース1に重ね合わせ可能な構成となっている。なお、この第1実施形態においては、本体ケース1に対して表示ケース2を立ち上げた際に、その最大立ち上げ角度αは固定され、この最大角度で使用するようにしている。つまり、使用時において本体ケース1に対して表示ケース2の立ち上げ角度αは、一定となっている。
【0009】本体ケース1の上面部には、押しボタン式のキーボード3が配置されている。表示ケース2の前面部(本体ケース1側に対応する面)には、液晶表示パネル4が配置されている。表示ケース2内において、液晶表示パネル4の裏面側には、液晶表示パネルと略同形大の導光板5が配置されている。この液晶表示パネル4の上端部、つまり、本体ケース1に対して表示ケース2を立ち上げた状態における液晶表示パネル4の上端部近傍には、液晶表示パネル4をその背面から照明する為のバックライト(冷陰極管)6が配置されている。なお、バックライト6は、そのケース開口部が導光板5の上端部に接触配置されており、これによってバックライト光は、効果的に導光板5内に案内され、導光板5を通して拡散されて、液晶表示パネル全体を照明する。ここで、バックライト光が導光板5を通して拡散される際に、導光板5の端面(バックライト6に対して反対側の端面)等からは、かなりの光が漏れて表示ケース2内で散乱してしまうが、この実施形態においては、この漏れた光を表示パネル照明以外の目的(キーボード照明用)として有効利用するようにしている。
【0010】図2は、表示ケース2部分を断面した要部断面図である。表示ケース2内の下方には、導光板5の端面等から漏れたバックライト光を反射する為の反射板11が配置されている。反射板11は、長尺状の平面鏡であり、その長は導光板5の横幅に相当し、バックライト光を表示パネル照明以外のキーボード照明用として利用する場合、反射板11は、斜めに傾いた状態となる。表示ケース2の下端部は、スリット状に開口されており、この開口部にはレンズ12が嵌め込まれている。レンズ12は、その表面(外面)全体が粗面加工されており、反射板11によって反射されたバックライト光を拡散してキーボード3方向に案内するもので、本体ケース1に対して表示ケース2を立ち上げた状態において、レンズ12を透して拡散されたバックライト光は、本体ケース1の上面よりもやや斜め上方からキーボード3の上面を照明する。」(第5欄第17行-第6欄第18行)

(b)「【0025】(第3実施形態)以下、図11?図14を参照してこの発明の第3実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態においては、バックライト光を液晶表示パネルを照明する以外の目的に使用するか否かを選択する手段として、表示ケース2の背面部にスライド可能な切り替えレバー13を設けたが、この第3実施形態においては、液晶表示パネルを照明する以外の目的に使用するためのバックライト光を遮断、透過する液晶シャッタを設けると共に、液晶表示パネルの付近の明るさ検出する光センサを設け、この光センサによって検出された明るさが予め設定されている明るさよりも暗いか否かに応じて液晶シャッタの開閉を制御するようにしたものである。なお、第1実施形態において基本的に同一のものは、同一符号を付して示し、その説明を省略する他、以下、第3実施形態の特徴部分を中心に説明するものとする。
【0026】図11は、この第3実施形態の要部(表示ケース2の側断面部)を示した図である。導光板5の下端面と反射板11との間には、導光板5の下端面に接触配置されている帯状の液晶シャッタ25が設けられている。表示ケース2の上部側には、液晶表示パネル4の付近の明るさ検出する為の光センサ26が設けられている。なお、光センサ26に対向する表示ケース2の部分には、開口部2aが形成されている。この光センサ26によって検出された明るさが予め設定されている明るさよりも暗い場合には、液晶シャッタ25へ供給される電流を遮断することによって液晶シャッタ25を光透過状態にセットし、逆に、明るい場合には、液晶シャッタ25に電流を供給することによって液晶シャッタ25を光遮断状態にセットするようにしている。なお、図11(A)は、光透過状態を示し、(B)は、光遮断状態を示している。
【0027】図12は、この第3実施形態におけるノート型パソコンの全体構成を示したブロック図である。CPU31は、記憶装置32内のオペレーティングシステムや各種アプリケーションソフトにしたがってこのノート型パソコンの全体動作を制御する中央演算処理装置である。記憶装置32は、オペレーティングシステムや各種アプリケーションソフトの他、データベース等が格納され、磁気的、光学的、半導体メモリ等によって構成されている記録媒体やその駆動系を有している。この記録媒体はハードディスク等の固定的な媒体若しくは着脱自在に装着可能なCD-ROM、フロッピィデスク、RAMカード、磁気カード等の可搬型の媒体である。また、この記録媒体内のプログラムやデータは、必要に応じてCPU31の制御によりRAM(例えば、スタティクRAM)33にロードされたり、RAM33内のデータが記録媒体にセーブされる。更に、記録媒体はサーバ等の外部機器側に設けられているものであってもよく、CPU31は伝送媒体を介してこの記録媒体内のプログラム/データを直接アクセスして使用することもできる。
【0028】また、CPU31は記録媒体内に格納されるその一部あるいは全部を他の機器側から伝送媒体を介して取り込み、記録媒体に新規登録あるいは追加登録することもできる。更に、プログラム/データはサーバ等の外部機器側で記憶管理されているものであってもよく、CPU31は伝送媒体を介して外部機器側のプログラム/データを直接アクセスして使用することもできる。一方、CPU31にはその入出力周辺デバイスである通信制御部34、入力部35、表示部36、液晶シャッタ制御部37がバスラインを介して接続されており、入出力プログラムにしたがってCPU31はそれらの動作を制御する。液晶シャッタ制御部37は、光センサ26からの検出信号に応じて液晶シャッタ25の開閉を制御する。
【0029】図13は、液晶シャッタ制御部8の回路構成を示している。光センサ系の回路としては、光センサ26の検出信号を増幅する増幅器41と、その出力をデジタル情報に変換するA/D変換器42と、このデジタル情報が書き込まれるデータバッファ43とを有している。光センサ26、増幅器41、A/D変換器42は、それに対応してCPU31から出力されるタイミング信号t1、t2、t3(on/off信号)にしたがってその駆動が制御されるもので、対応するタイミング信号t1、t2、t3に応答して動作する。CPU31は、データバッファ43の内容を受光情報として取り込み、この受光量が予め決められていいる基準値以下かを判別し、液晶シャッタ25の開閉を制御する。また、液晶シャッタ系の回路としては、CPU31からのタイミング信号t4(on/off信号)にしたがって動作する液晶駆動電圧生成回路44と、この生成回路44からの駆動電圧によって動作する液晶ドライバ45とを有している。液晶ドライバ45は、液晶駆動電圧生成回路44から駆動電圧が印加されたかに応じて液晶シャッタ25への供給電流を制御する。
【0030】次に、この第3実施形態の動作を図14に示すフローチャートを参照して説明する。ここで、これらのフローチャートに記述されている各機能を実現するためのプログラムは、読み取り可能なプログラムコードの形態で記録媒体に格納されており、CPU31はこのプログラムコードにしたがった動作を逐次実行する。また、CPU31は伝送媒体を介して伝送されてきた上述のプログラムコードにしたがった動作を逐次実行することもできる。
【0031】図14は、液晶シャッタを制御する際の動作を示したフローチャートである。先ず、CPU31は、光センサ26、増幅器41を駆動し、光センサ26によって光電変換された信号が増幅器41で増幅されると(ステップS1)、A/D変換器42を駆動させ、その光電変換量をデジタル量に変換させてデータバッファ43に書き込ませる(ステップS2)。そして、このデジタル情報(受光量)を液晶表示パネル4の付近の明るさ情報として取り込み、予め設定されている基準値情報と比較する(ステップS3)。この結果、基準値以下かの明るさかを判別し(ステップS4)、基準値以下であれば、液晶シャッタ25が光透過状態にセットされているかを判別する(ステップS5)。この場合、タイミング信号t4のon/off状態に基づいてその判別を行なう。
【0032】いま、液晶シャッタ25が光透過状態であれば、ステップS1に戻るが、光遮断状態であれば、液晶シャッタ25に電流を供給させて光透過状態に切り替える(ステップS6)。また、上述のステップS4で基準値を超える明るさであることが判別された場合、液晶シャッタ25が光遮断状態セットされているかを判別する(ステップS7)。この場合においても、タイミング信号t4のon/off状態に基づいてその判別を行なう。この結果、液晶シャッタ25が光遮断状態であれば、ステップS1に戻るが、光透過状態であれば、液晶シャッタ25への電流供給をストップさせて光遮断状態に切り替える(ステップS8)。
【0033】以上のように、この第3実施形態においては、液晶表示パネルを照明する以外の目的に使用するためのバックライト光を遮断、透過する液晶シャッタ25を設けると共に、液晶表示パネル4の付近の明るさ検出する光センサ26を設け、この光センサ26によって検出された明るさが予め設定されている明るさよりも暗いか否かに応じて液晶シャッタ25の開閉を制御するようにしたから、上述した第1実施形態と同様の効果を有する他、液晶表示パネル4を照明する以外の目的にバックライト光を使用するか否かを選択する為の操作が一切不要となり、操作性の点で有利となる。
【0034】なお、上述した各実施形態においては、液晶表示パネルを照明する以外の目的として、バックライト光の一部をキーボード照明用として使用するようにしたが、キーボードと共に、その付近の書類等を照明するようにしてもよい。また、上述した各実施形態においては、液晶表示パネルを照明すると同時に、その一部をキーボード照明用として利用するようにしたが、液晶表示パネルを照明する必要がない場合に、バックライト光の全てをその他の目的に使用するようにしてもよい。
【0035】更に、ノート型パソコンに限らず、デイスクトップパソコンやモバイル型の情報処理端末等にも適用可能である。この場合、光ファイバーを使用すれば、本体ケースに対して表示ケースを立ち上げる形式の電子機器に限らない。すなわち、キーボードと液晶表示パネルとが同一平面上に配置されてなる電子機器においては、バックライト光をキーボードの裏面側に案内してキーボード照明するようにしてもよい。」(第10欄第24行-第13欄第22行)

上記摘記事項(b)、第11図(a)、(b)等の記載からみて、引用例1に記載された事項において、「液晶パネル(4)」、「液晶シャッタ(25)」、及び「反射板(11)」は、「表示ケース(2)」の内側の上に配置されていることは明らかである。
また、上記摘記事項(b)、第11図(a)、(b)等の記載からみて、「液晶シャッタ(25)」及び「反射板(11)」からの光は、「キーボード(3)」の少なくとも一部分を照明していることは明らかである。
してみると、引用例1には、
『ノート型パソコンの「表示ケース(2)」上に配置された「液晶パネル(4)」、「液晶シャッタ(25)」、及び「反射板(11)」を有する「ノート型パソコン」と、
前記「液晶シャッタ(25)」の電気状態を変化させて開閉を制御し、当該「液晶シャッタ(25)」及び「反射板(11)」によって所定の照明レベルを提供して前記ノート型パソコンの「キーボード(3)」の少なくとも一部分を照明する「光センサ(26)」及び「液晶シャッタ制御部(37)」と、
前記「液晶シャッタ(25)」及び「反射板(11)」によって放射された光を「キーボード(3)」の方に導く「レンズ(12)」と
を含む「バックライト付き電子機器」。』
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(B)引用例2
当審で新たに引用する特開2001-67145号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(c)「【0022】図1に示すように、この情報処理装置は、本体101と、表示部102と、入力部103と、導光装置104とで構成されている。
【0023】入力部103は、キーボードやスイッチ等を備え、本体101の上部に位置するよう配置されている。本体101は入力部103による操作に該当する処理を行い、表示部102に表示する。導光装置104は導光板等から構成され、表示部102に対して直角よりも鈍角に配置され、表示部102を通常ユーザーが使用する角度にした場合に、導光装置104は入力部103を斜め上より照らすようになる。」(第4欄第4行-同欄第14行)

(d)「【0033】(実施の形態3)図4は本発明の実施の形態3に係る情報処理装置の表示部および導光装置の詳細の構成を示す導光装置が開いている場合の断面図である。
【0034】図4に示すように、この情報処理装置の表示部は、表示装置401と、蛍光管402と、反射板A403と、拡散板404と、導光板A405と、キャビネットA406と、導光板B407と、反射板B408と、キャビネットB409とで構成されている。
【0035】蛍光管402の光は、導光板A405によって表示装置401の全面に行き渡るよう、図においては下方向へと導かれる。導光板A405によって導かれた光は、拡散板404によってむら無く表示装置401を背面から照らすとともに、導光板B407に伝えられる。導光板B407に入った光は、表示装置401の下部より前面を照らすことができる。導光板B407、反射板B408、キャビネットB409で構成されている部分は入力部を照らす導光装置となっており、表示装置401に対して自由な角度が設定可能である。反射板A403と、反射板B408は効率良く光を導くために、不要な部分から光が漏れるのを防ぐ役割をしている。」(第5欄第6行-同欄第26行)

してみると、引用例2には、
『「導光板B(407)」、「反射板B(408)」、「キャビネットB(409)」で構成されている部分は入力部を照らす導光装置となっており、「反射板A(403)」と、「反射板B(408)」は効率良く光を導くために、不要な部分から光が漏れるのを防ぐ役割をしている。』
との事項が記載されている。

(イ)対比
本願補正発明と引用発明を比較すると、引用発明の「ノート型パソコン」は本願補正発明の「コンピュータ装置」に相当し、以下同様に、「表示ケース(6)」は「表示部材」に、「液晶パネル(4)」は「液晶ディスプレイ」に、「光センサ(26)及び液晶シャッタ制御部(37)」は「表示コントローラ」に、「バックライト付き電子機器」は「キーボード照明システム」にそれぞれ、相当する。
また、引用発明の「液晶シャッタ(25)及び反射板(11)」と本願補正発明の「少なくとも1つの液晶ディスプレイ」とは「照明手段」という点で共通する。
また、引用発明の「レンズ(12)」と本願補正発明の「遮蔽板」は、光を所定方向に導く「導光手段」という点で共通する。
これらの点を考慮すると、本願補正発明と引用発明は、
「コンピュータ装置の表示部材上に配置された液晶ディスプレイと照明手段を有するコンピュータ装置と、
前記照明手段の電気的状態を変化させ、当該照明手段によって所定の照明レベルを提供して前記コンピュータ装置のキーボードの少なくとも一部分を照明する表示コントローラと、
前記照明手段によって放射された光を前記キーボードの方に導く導光手段と
を含むキーボード照明システム。」
との一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明では、照明手段が、少なくとも1つの液晶ディスプレイであり、そのため液晶ディスプレイが複数あるのに対して、引用発明では、照明手段が、液晶ディスプレイでなく、液晶シャッタ及び反射板であり、そのため、液晶ディスプレイが一つである点。

(相違点2)
本願補正発明では、導光手段が、遮蔽板であるのに対し、引用発明では、導光手段が、レンズである点。

(ウ)判断
(相違点1について)
液晶ディスプレイがバックライトからの光を放射することは周知事項であり、本願補正発明では、少なくとも1つの液晶ディスプレイは専ら照明手段として用いられていると認められるので、引用発明において、照明手段としてバックライトからの光を放射する液晶シャッタ及び反射板の代わりに少なくとも1つの液晶ディスプレイを用い、液晶ディスプレイを複数とすることは当業者が容易に考えられる事項である。
したがって、相違点1に係る本件補正発明の構成は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

(相違点2について)
引用例2には、『「導光板B(407)」、「反射板B(408)」、「キャビネットB(409)」で構成されている部分は入力部を照らす導光装置となっており、「反射板A(403)」と、「反射板B(408)」は効率良く光を導くために、不要な部分から光が漏れるのを防ぐ役割をしている。』との事項が記載されており、引用例2に記載された事項の「反射板B(407)」は、その役割からみて本願補正発明の「遮蔽板」に相当するので、引用発明において、光を所定方向に導く導光手段としてレンズの代わりに引用例2に記載されたような遮蔽板を用いることは当業者が容易に考えられる事項である。
したがって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

そして、本願補正発明の効果も、引用例1、引用例2、及び周知事項に基づいて当業者が容易に予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された事項、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)補正却下についてのまとめ
上記(3)で述べたとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた事項を目的とするものに該当するとしても、上記(4)で述べたとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(6)補正案について
平成22年7月2日付けの回答書において提示された補正案を採用する格別の理由はないが、念のため、当該補正案について以下に検討する。
(ア)補正案発明
補正案の請求項1に係る発明(以下、「補正案発明」という。)は、当該回答書に記載されたとおりの以下のものである。
「コンピュータ装置の表示部材上に配置された複数の液晶ディスプレイを有するコンピュータ装置と、
前記液晶ディスプレイの少なくとも1つの電気的状態を変化させ、当該少なくとも1つの液晶ディスプレイによって所定の照明レベルを提供して前記コンピュータ装置のキーボードの少なくとも一部分を照明する表示コントローラと
を含むキーボード照明システムであって、
前記少なくとも1つの液晶ディスプレイが、前記少なくとも1つの液晶ディスプレイから放射された光の向きの可変制御を可能にする、キーボード照明システム。」

(イ)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は、前記2.(4)(ア)に記載したとおりである。

(ウ)対比
補正案発明と引用発明を比較すると、両者は、上記の一致点で一致し、上記相違点1及び以下の相違点3で相違する。
(相違点3)
補正案発明では、照明手段が、前記照明手段から放射された光の向きの可変制御を可能にするのに対し、引用発明では、照明手段が、前記照明手段から放射された光の向きの可変制御を可能にするかどうか明記されていない点。

(エ)判断
(相違点1について)
上記2.(4)(ウ)で検討したとおりであるから、相違点1に係る補正案発明の構成は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到しえるものである。

(相違点3について)
照明手段から放射された光の向きの可変制御を可能にした照明手段を用いることは周知事項である(例えば、実願昭57-99274号(実開昭59-4493号)のマイクロフィルムの明細書第5頁第4行-第11行等参照)ので、引用発明において、照明手段として、前記照明手段から放射された光の向きの可変制御を可能にするものを用いることは当業者が容易に考えられる事項である。
したがって、相違点3に係る補正案発明の構成は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

そして補正案発明の効果も、引用例1、及び周知事項に基づいて当業者が容易に予測できる範囲のものである。
したがって、補正案発明は、引用発明、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(オ)まとめ
以上のとおり、補正案発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、補正案を採用することができない。

3.本願発明について
平成20年9月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数の液晶ディスプレイを有するコンピュータ装置と、
前記液晶ディスプレイの少なくとも1つの電気的状態を変化させ、当該少なくとも1つの液晶ディスプレイによって所定の照明レベルを提供して前記コンピュータ装置のキーボードの少なくとも一部分を照明する表示コントローラと
を含むキーボード照明システム。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、引用例2、および、その記載事項は、前記2.(4)(ア)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.(4)で検討した本願補正発明から「前記少なくとも1つの液晶ディスプレイによって放射された光を前記キーボードの方に導く遮蔽板」との構成及び「コンピュータ装置の表示部上に配置された」との構成を省いたものである。
そこで、本願発明と引用発明を比較すると、両者は、上記相違点1で相違し、その他の点で一致する。
そして、上記相違点1については上記2.(4)(ウ)で検討したとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-04 
結審通知日 2010-08-06 
審決日 2010-08-18 
出願番号 特願2006-18370(P2006-18370)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣瀬 文雄篠塚 隆  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 山本 章裕
松田 直也
発明の名称 キーボードの照明システムおよび方法  
代理人 河村 英文  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ