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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1229699
審判番号 不服2005-3885  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-04 
確定日 2011-01-05 
事件の表示 特願2000-387027「コンピュータ生成文書のフォーマット設定システム、方法、および記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月17日出願公開、特開2001-222524〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成12年12月20日(パリ条約による優先権主張1999年12月30日、米国)の出願であって、平成16年11月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年3月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日に手続補正がなされたところ、当審から平成21年12月16日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成22年4月5日に手続補正がなされたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1?14に係る発明は、平成22年4月5日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1?14に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
コンピュータ・システムでフォーマット設定した文書を生成する方法であって、
データ・ストリーム内の各データ・レコードはライン・データ・レコードを含み、且つ第1のコンピュータでデータ・レコード内に含まれるデータのタイプを指示するレイアウト識別子と関連しているデータ・ストリームを受信するステップと、
各レイアウト識別子を、文書ページ上の各区域を定義する各フォーマット領域に関連づけるステップと、
文書内のデータ・レコードのプレゼンテーションに関係するフォーマット設定情報を含むレイアウトパラメータを受信して、特定のレイアウト識別子が遭遇するたびにフォーマット領域に含まれる固定データを指定するステップであって、各レイアウトパラメータセットは前記各フォーマット領域に対応して、前記文書ページ上の前記各フォーマット領域内にある各データ・レコードの配置を制御するステップと、
第2のコンピュータで対応するフォーマット領域内の各データ・レコードをフォーマットするステップと、そして
前記各レイアウト識別子に対応する前記各レイアウトパラメータセットを前記各レイアウト識別子に関連付けられた各データ・レコードに適用することによって動的に前記文書を作成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。」


第3 通知された拒絶の理由

平成21年12月16日付け拒絶理由通知書における拒絶すべき理由の概要は以下のとおり。
「1)本件出願の下記の請求項1?16に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(1)?(4)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・引用刊行物等
(1)特開平10-171809号公報
(2)特開平7-182315号公報
(3)特開平4-313144号公報
(4)特開平9-212508号公報」


第4 引用例

(1)当審の拒絶の理由に引用された特開平10-171809号公報「文書処理方法および装置」(以下、「刊行物1」という。)には、
ア 「【0002】
【従来技術】文書から目次や索引等を自動的に生成して元の文書と合わせて表示、印刷等の処理を行うのに適した文書フォーマットとしてSGML(Standard Generalized Markup Language)等の標準規格に代表される構造化文書がある。
【0003】構造化文書であるSGMLは、文書自体にはレイアウト情報は記述されておらず、文書の要素(例えば、報告書ならばタイトルや日付、報告先等)ごとに“タグ”と呼ばれる文書要素を識別するための符号を付してある。
【0004】タグは文書要素の開始を示す開始タグ(“<要素名>”と記述)と文書要素の終了を示す終了タグ(“</要素名>”と記述)があり、開始タグと終了タグの間に文書要素を記述する。
【0005】また、SGMLは文書の他に文書型定義(DTD:Document Type Definition)が必要であり、DTDにはタグの定義や文書構造の定義(例えば、報告書ならば日付は1回のみ出現する等、マニュアルなどでは章の中には節が出現し、章の中に章は出現しない等)等が記述されている。
【0006】SGMLは、上述した文書とDTDの他にSGML宣言が必要であり、SGML宣言は、文書に使われているコードや要素名などの最大文字数、“<>”がタグであること等が記述されている。これらの文書、DTD、SGML宣言の3要素がSGMLの構成要素となっている。
【0007】上述したようにSGMLの文書はタグ付けされた文書要素の羅列であり、レイアウト情報や文字の大きさ等は一切記述されていないため、SGML文書の表示や印刷を行うには、別のプログラムが必要である。
【0008】図8は、従来のSGML文書のレイアウトや表示、印刷を行う文書処理装置の文書処理の流れを示すフローチャートである。
【0009】文書処理装置が処理を開始すると(ステップ601)、最初にSGML文書を読込み(ステップ602)、レイアウトを行うのに必要なページ体裁や文書要素体裁(文字サイズやフォント指定等)等のスタイルデータを記述したスタイルファイル(各文書処理装置毎に異なる)を読込み、SGML文書に体裁定義を適用する(ステップ603)。
【0010】SGML文書に体裁定義が適用されると、それに基づき文書のをレイアウトを行い(ステップ604)、文書の表示、印刷を行い(ステップ605)、処理を終了する(ステップ606)。
【0011】また、文書構造を利用した変換処理によって目次や索引等を自動生成したり、文書要素毎に体裁情報(フォント、文字サイズ等)を指定できる装置としては、特開昭64-51567号、特開平2-183861号等が提案されており、これらの装置によって多彩な文書を容易に作成することができる。」(2頁2欄45行?3頁3欄45行)、
イ 「【0035】
【発明の実施の形態】以下、この発明に係わる文書処理方法および装置の一実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0036】図1は、この発明に係わる文書処理方法および装置の一実施例を示したブロック図である。
【0037】図1において、文書処理装置1は、全体を制御する中央制御部10、スタイルデータ2を読込むスタイル読込み処理部11、文書処理の実行経路を制御する実行経路制御部12、外部構造変換を行う外部変換処理部13、内部構造変換を行う内部変換処理部14、文書データ3を読込む文書読込み処理部15、文書要素の体裁等を処理するスタイル適用処理部16、文書レイアウトを決定する文書レイアウト処理部17、スタイル適用やレイアウト等の処理が終わった文書を表示するための処理を行う文書表示処理部18、文書をディスプレイに表示する画面表示処理部19、文書を印刷する文書印刷処理部20を具備して構成される。
【0038】また、スタイルデータ2は、変換定義21、関係定義22、体裁定義23の3ブロックに大別される。
【0039】変換定義21は、外部構造変換処理の対象となる文書を記述した外部変換指定211、内部構造変換処理の対象となる文書を記述した内部変換指定212の他に、読込みの対象となる文書を記述してある。この変換定義21はスタイルデータ2内に存在しなくても良く、変換定義21内では、外部変換指定211と内部変換指定212はいずれか一方が存在しても良く、双方が存在しても良い。
【0040】関係定義22は、文書内の構造部品(文書要素)とスタイル内の体裁情報との関連付けが記述されている。
【0041】体裁定義23は、文書に適用する体裁情報が記述されており、体裁情報はページのサイズや版面等を指定するためのページ体裁指定231と各構造部品毎のフォント情報等を指定するための要素体裁指定232とに大別される。
【0042】ここで、スタイルデータ2の記述例を以下に示す。
【0043】
1<!DOCTYPE StyleRoot PUBLIC ”-//Fuji Xerox//DTD Style 1.00//EN”>
2
3<StyleRoot name=”SampleStyle”>
4 <Styles>
5 <Style name=”Style-A”>
6 <TransSpec>
7 <CategoryEntries>
8 <Entry>目次</Entry>
9 <Entry>表</Entry>
10 </CategoryEntries>
11 <External>
12 mm -a toc
13 mm -a table
14 </External>
15 <Internal>
16 linkSubTree(”CONTENT-LIST”,,”SUP-TOC”,”BODY”,,ECHILD);
17 replaceSubTree(”TABLE”,,”SUP-TABLE”,”TABLE”,);
18 </Internal>
19 </TransSpec>
20 <StyleSpec>
21 <Association>
22 <ElementAssoc>
23 <Elememt gi=”HTML”>
24 <Context>
25 <SubCond>
26 <Ref-PageDirectiveStyle v=”A4”>
27 </SubCond>
28 </Context>
29 </Elememt>
30 <Element gi=”HEAD”>
31 <Context>
32 <SubCond>
33 <Ref-LayoutDirectiveStyle v=”HideAll”>
34 </SubCond>
35 </Context>
36 </Elememt>
37 <Element gi=”BODY”>
38 <Context>
39 <SubCond>
40 <Ref-ParaStyle v=”BodyText”>
41 <Ref-CharStyle v=”FontSize10”>
42 </SubCond>
43 </Context>
44 </Elememt>
45 <Element gi=”H1”>
46 <Context>
47 <SubCond>
48 <Ref-ParaStyle v=”Heading”>
49 <Ref-CharStyle v=”FontSize18-BOLD”>
50 </SubCond>
51 </Context>
52 </Elememt>
53 <Element gi=”B”>
54 <Context>
55 <SubCond>
56 <Ref-LayoutDirectiveStyle v=”InLine”>
57 <Ref-CharStyle v=”BOLD”>
58 </SubCond>
59 </Context>
60 </Elememt>
61 <Element gi=”I”>
62 <Context>
63 <SubCond>
64 <Ref-LayoutDirectiveStyle v=”InLine”>
65 <Ref-CharStyle v=”Italic”>
66 </SubCond>
67 </Context>
68 </Elememt>
69 <Element gi=”SUP”>
70 <Context>
71 <SubCond>
72 <Ref-LayoutDirectiveStyle v=”InLine”>
73 <Ref-CharStyle v=”SuperScript”>
74 </SubCond>
75 </Context>
76 </Elememt>
77 <Element gi=”SUB”>
78 <Context>
79 <SubCond>
80 <Ref-LayoutDirectiveStyle v=”InLine”>
81 <Ref-CharStyle v=”SubScript”>
82 </SubCond>
83 </Context>
84 </Elememt>
85 </ElementAssoc>
86 </Association>
87 <StyleAttrs>
88 <PageStyle>
89 <PageSetStyle name=”PageSizeA4”>
90 <PageSize>
91 <Vertical>
92 <AbsVal>
93 <Value v=”297”>
94 <Unit v=”mm”>
95 </AbsVal>
96 </Vertical>
97 <Horizontal>
98 <AbsVal>
99 <Value v=”210”>
100 <Unit v=”mm”>
101 </AbsVal>
102 </Horizontal>
103 </PageSize>
104 </PageSetStyle>
105 </PageStyle>
106 <ElementStyle>
107 <PageDirectiveStyle name=”A4”>
108 <PageSetSpec>
109 <Ref-PageSetStyle v=”PageSizeA4”>
110 </PageSetSpec>
111 </PageDirectiveStyle>
112 <LayoutDirectiveStyle name=”HideAll”>
113 <ProhibitLayout v=”all-descendant”>
114 </LayoutDirectiveStyle>
115 <LayoutDirectiveStyle name=”HideSelf”>
116 <ProhibitLayout v=”direct-descendant”>
117 </LayoutDirectiveStyle>
118 <LayoutDirectiveStyle name=”InLine”>
119 <Break>
120 <BreakBefore v=”not-break”>
121 <BreakAfter V=”not-break”>
122 </Break>
123 </LayoutDirectiveStyle>
124 <ParaStyle name=”BodyText”>
125 <OuterMargin>
126 <CharDirBefore3>
127 <AbsVal>
128 <Value v=”10”>
129 <Unit v=”mm”>
130 </AbsVal>
131 </CharDirBefore3>
132 </OuterMargin>
133 <FirstLineIndent>
134 <AbsVal>
135 <Value v=”0”>
136 <Unit v=”pt”>
137 </AbsVal>
138 </FirstLineIndent>
139 </ParaStyle>
140 <CharStyle name=”FontSize18-Bold”>
141 <LFontWeight v=”extra-bold”>
142 <JfontWeight v=”extra-bold”>
143 <FontSize>
144 <AbsVal>
145 <Value v=”18”>
146 <Unit v=”pt”>
147 </AbsVal>
148 </FontSize>
149 </CharStyle>
150 <CharStyle name=”FontSize10”>
151 <FontSize>
152 <AbsVal>
153 <Value v=”10”>
154 <Unit v=”pt”>
155 </AbsVal>
156 </FontSize>
157 </CharStyle>
158 <CharStyle name=”Bold”>
159 <LFontWeight v=”extra-bold”>
160 <JfontWeight v=”extra-bold”>
161 </CharStyle>
162 <CharStyle name=”Italic”>
163 <LFontPosture v=”italic”>
164 <JfontPosture v=”itaric”>
165 </CharStyle>
166 <CharStyle name=”SubScript”>
167 <CharPos v=”subscript”>
168 </CharStyle>
169 <CharStyle name=”SuperScript”>
170 <CharPos v=”superscript”>
171 </CharStyle>
172 </ElementStyle>
173 </StyleAttrs>
174 </StyleSpec>
175 </Style>
176 </Styles>
177</StyleRoot>
このスタイルデ-タ2の記述例においては、変換定義21は第6行から第19行に、関係定義22は第21行から第86行に、体裁定義23は第87行から第173行に各々記述されている。
【0044】第6行から第19行に記述される変換定義21には、第11行から第14行に外部変換指定211が、第15行から第18行に内部変換指定212が記述されており、この外部変換指定211、内部変換指定212に基づき、外部構造変換と内部構造変換が行われる。
【0045】外部構造変換とは、主文書を読込み、補文書や変換主文書を生成する処理である。補文書は目次や索引等を記述した文書(レイアウト等の情報が記述されていない文書デ-タ)で、変換主文書は、補文書を生成する際に必要な情報(例えば、目次を生成する際に、第X章は何ペ-ジから始まるかはレイアウト後まで不明であるのでレイアウト後にペ-ジ番号を参照する必要があり、その参照を行うための属性等)が欠落していた場合にそれを補ったり、レイアウトのために必要がある場合には、文書構造を並べ変えたりした文書である。
【0046】また、内部構造変換は、主文書や補文書などの複数の文書を一つの文書に結合する処理であり、この処理により後段でのレイアウトやペ-ジ番号付けの処理が可能となる。
【0047】第21行から第86行で記述される関係定義22では、文書要素と体裁情報との関連付けが記述されており、例えば、第37行から第44行では、“BODY”という要素に対しての体裁情報の関連付けが行われており、第40行で第124行から第139行に記述されている書式情報が、第41行で第150行から第157行に記述されているフォント情報が関連付けられている。
【0048】第87行から第173行で記述される体裁情報23には、第88行から第105行にペ-ジ体裁指定231が、第106行から第172行に要素体裁指定232が記述されている。
【0049】ペ-ジ体裁指定231中では、第91行から第96行で用紙の縦が297mm、第97行から第102行で用紙の横が210mmと指定されている。
【0050】また、要素体裁指定232中では、上述の関係定義22で参照される第124行から第139行の書式情報や第150行から第157行のフォント情報の他にも、ボ-ルド体(太字)の指定(第157乃至161行)、イタリック体(斜体)の指定(第162乃至165行)、足文字の指定(第166乃至168行)、肩文字の指定(第169乃至171行)等が記述されている。」(4頁6欄9行?8頁14欄49行)が記載されている。

(2)当審の拒絶の理由に引用された特開平7-182315号公報「テキストデ-タ編集処理方法」(以下、「刊行物2」という。)には、
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 編集対象のテキストデ-タを予め定義された書式に従って編集して出力するテキストデ-タ編集処理方法において、
前記書式を定める書式デ-タを、書式識別子,書式イメ-ジおよび編集対象デ-タを埋め込む位置にその種別を指示する記号を行単位で定義した書式イメ-ジデ-タ,この書式イメ-ジデ-タに対する編集形式を行単位で定義した制御デ-タとから構成して書式デ-タファイルに格納しておき、編集対象デ-タには編集書式を示す書式識別子を付し、かつ編集対象デ-タの種別を示す識別子を行単位で付して編集対象デ-タファイルに格納しておき、
編集対象デ-タの前記書式デ-タに従う編集処理に際し、編集対象デ-タに付加された書式識別子を検出し、その書式識別子に対応する書式識別子を有する書式デ-タを前記書式デ-タファイルから検索し、その書式デ-タの中の制御デ-タに従い、前記書式イメ-ジデ-タ中に定義された書式イメ-ジを生成し、かつ編集対象デ-タの種別を示す記号に対応した編集対象デ-タを編集対象デ-タファイルから検索し、その編集対象デ-タを当該記号が定義された位置に埋め込む処理を繰り返すことにより、編集対象デ-タを書式デ-タに従って編集して出力することを特徴とするテキストデ-タの編集処理方法。
【請求項2】 書式イメ-ジデ-タに従って生成される書式イメ-ジの中に編集対象デ-タが埋込可能か否かを判定し、埋込可能でなければ、書式イメ-ジの一部を拡張して埋め込むことを特徴とする請求項1記載のテキストデ-タの編集処理方法。」(2頁1欄1行?30行)、
イ 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、テキストデ-タを予め定義された書式に従ってコンピュ-タ処理し、帳票や画面等に出力するテキストデ-タの編集処理方法に関するものである。
」(2頁1欄32行?36行)、
ウ 「【0010】本発明の目的は、専門的な知識を持たない者でも容易に書式を定義したり、変更することができ、さらに他のデ-タの編集処理にも容易に流用することができる融通性のあるテキストデ-タの編集処理方法を提供することである。
【0011】本発明の他の目的は、各項目デ-タの桁数の増加に対して書式定義を変更することなく対処することができるテキストデ-タの編集処理方法を提供することである。」(2頁2欄26行?34行)、
エ 「【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に従い説明する。
【0020】図1は、本発明の一実施例に係わるシステムの概略構成を示すブロック図であり、編集処理を行う処理装置1、書式に埋め込む編集対象デ-タ(以下、実施例中においては置換デ-タという)を入力するキ-ボ-ド等の入力装置2、書式を定義した書式デ-タを格納する書式デ-タファイル3、書式に埋め込む置換デ-タを格納する置換デ-タファイル4、編集結果を出力する出力装置5、入力した書式デ-タ等を確認するための表示装置6、書式格納エリア7および編集エリア8を備えた主メモリ9とから構成されている。
【0021】図2は、置換デ-タおよび書式デ-タの構成を表すフォ-マット図であり、置換デ-タ21は書式ID210と置換指示デ-タ211により構成される。
【0022】書式ID210は予め定義された書式デ-タから対象の書式を取り出すために使用するものであり、また置換指示デ-タ211は置換すべきデ-タそのものを指示するものである。この置換指示デ-タ211は明細編集の論理的な1行分の編集を指示する複数個の置換行情報212から構成され、更に、置換行情報212は明細編集の論理的な1項目の編集を指示する複数個の置換項目情報213から構成される。
【0023】この置換項目情報213が置換指示デ-タ211の最小単位であり、後述の図6で示すような置換識別子と置換文字列とにより構成される。この場合、置換識別子と置換文字列との間には、これらを区切るため区切文字(本実施例では'#'を使用)が挿入され、置換識別子と置換文字列とを分離できるようになっている。
【0024】一方、書式デ-タ22は、制御部220と書式部221により構成され、制御部220は書式ID2201と各行の種別を表す行識別子2202を組み合わせ(本実施例では'-'で連結)た形態で指示し、置換デ-タ21に指示された書式ID210に対応する書式デ-タ22を取り出し、行の種別編集方法を指示するために使用する。この実施例では、行識別子2202を見出しの編集を表すヘッタ-(’H’)、明細の見出し編集を表すボディ-ヘッタ-(’BH’)、明細の編集時に枠を拡張する部位を表すボディ-ボディ-(’BB’)、フッタ-の編集を表すフッタ-(’F’)の4種類で定義する。また、書式部221はテキストとして書式イメ-ジそのものを定義する。
【0025】図3は、テキストデ-タ編集処理方法の処理手順を示すフロ-チャ-トである。
【0026】まず、置換デ-タ取得処理により置換すべき置換デ-タを置換デ-タファイル4から取得し(ステップ31)、編集対象となる置換デ-タ21の書式ID210を求める。
【0027】次に、書式デ-タ取得処理において書式デ-タファイル3を書式ID210により検索し、書式ID210と対応する書式ID2201を持つ書式デ-タ22を抽出し、書式格納エリア7に各行識別子2202毎に格納する(ステップ32)。
【0028】次に、ヘッタ-編集処理において、各行識別子2202毎に格納された書式デ-タ22に基づき見出しの部分を編集し、主メモリ9の出力エリアに出力する(ステップ33)。
【0029】ヘッタ-編集の後、置換デ-タ21の置換指示211から論理的な1行分のデ-タである置換行情報212を切り出し、対象の置換行情報212が存在すれば、明細編集処理で明細部の編集を行ない、次の置換行情報212を取り出し、明細編集処理を行う(ステップ34,36)。そして、対象の置換行情報がなくなれば、明細編集完了判定処理(ステップ35)を経てフッタ-編集処理へ進み、書式デ-タ22のフッタ-の部分を編集し、出力エリアに出力する。
【0030】図4は、明細編集処理36の詳細を示すフロ-チャ-トであり、書式ボディ-展開処理において書式格納エリア7から明細の部分を編集エリア8に展開した後(ステップ41)、置換項目情報切出処理で論理的な1行分のデ-タとして切り出された置換行情報212から論理的な1項目として置換項目情報213を切り出す(ステップ42)。次に、行編集完了判定処理を行い(ステップ43)、対象の置換項目情報213が存在すれば、置換項目分離処理で、置換識別子214と置換文字列215とを区切り文字で分離する(ステップ44)。
【0031】この後、置換識別子検索処理において、前記分離された置換識別子214にて編集エリア8を検索し、置換対象の項目が残っているかどうかをしらべ、残っていれば、置換制御処理にて文字列の置き換えを行い、次の項目を取得するため置換項目情報切出処理へ戻る(ステップ45,46,47)。
【0032】しかし、置換対象の項目に対する処理が終了していれば、その行の明細編集処理が終了したことになるので、図3の処理に戻る。
【0033】図5は、置換制御処理の詳細を示すフロ-チャ-トであり、置換可能桁数計算処理により編集エリア8の置換識別子214の先頭から枠識別子(文字罫線等のコ-ド)までの置換可能桁数を求める(ステップ51)。
【0034】すなわち、書式部221に定義された書式イメ-ジ中の項目欄に埋込可能な文字列の桁数を求める。
【0035】次に、その桁数と置換文字列の桁数とを比較し(ステップ52)、置換対象の文字列の桁数が大きくて書式部221に定義された書式イメ-ジ中の項目欄に埋め込むことが出来ない場合は、置換文字列計算処理(ステップ52)にて置換文字列の先頭から先に求めた置換可能桁数分の文字列を切り出し、その切り出した文字列を置換処理(1)で埋め込み(ステップ54)、この後に、枠拡張処理により項目枠を拡張する。そして、書式格納エリア7の行識別子が'BB'(ボディ-ボディ-)のもののみ編集エリア9に展開し、残りの置換文字列を埋め込むためにステップ52の置換可能判定処理に戻る。
【0036】このような処理を繰り返し、最終的には置換処理(2)で全ての置換デ-タの置換を行う(ステップ56)。
【0037】ここで、置換処理(1)はステップ53の置換文字列桁調整処理によって求めた桁数を基に、置換文字列の一部を埋め込み、残りの未置換文字そのものを置換文字列とする。一方、置換処理(2)は単純に文字列を置き換える。」(3頁3欄35行?4頁5欄49行)、
オ 「【0046】図8および図9は、1ペ-ジ中に複数の書式を編集する場合の例を示す説明図であり、書式デ-タ22として、複数の書式イメ-ジ221a,221b,221c,221dが定義され、書式イメ-ジ221a,221bに対しては「HED」,221cに対しては「FILE」,221dに対しては「INF」という書式IDを持つ制御部220が定義されている。
【0047】一方、置換デ-タ21として、「HED」,「FILE」,「INF」という書式ID210別に置換対象の文字列が行単位に定義されている。
【0048】このような例においても、前記の例と同様の編集処理によって置換デ-タ21が書式デ-タに従って編集され、図9に示すような編集結果23が得られる。
【0049】すなわち、1ペ-ジ内の部分的な書式を部品のように定義することにより、複数の書式を1ペ-ジ内に配置することができる。従って、表の一部を変更する場合に極めて便利なものとなる。」(4頁6欄45行?5頁7欄12行)、
カ 「【0050】
【発明の効果】以上のように本発明においては、書式を定める書式デ-タを、書式識別子,書式イメ-ジおよび編集対象デ-タを埋め込む位置にその種別を指示する記号を行単位で定義した書式イメ-ジデ-タ,この書式イメ-ジデ-タに対する編集形式を行単位で定義した制御デ-タとから構成し、書式デ-タファイルに格納しておき、編集対象デ-タには編集書式を示す書式識別子を付し、かつ編集対象デ-タの種別を示す識別子を行単位で付して編集対象デ-タファイルに格納しておき、編集対象デ-タの前記書式デ-タに従う編集処理に際し、編集対象デ-タに付加された書式識別子を検出し、その書式識別子に対応する書式識別子を有する書式デ-タを前記書式デ-タファイルから検索し、その書式デ-タの中の制御デ-タに従い、前記書式イメ-ジデ-タ中に定義された書式イメ-ジを生成し、かつ編集対象デ-タの種別を示す記号に対応した編集対象デ-タを編集対象デ-タファイルから検索し、その編集対象デ-タを当該記号が定義された位置に埋め込む処理を繰り返すことにより、編集対象デ-タを書式デ-タに従って編集して出力するようにしたので、書式デ-タを出力イメ-ジのままテキスト形式で表現可能になる。これにより、書式の定義自体が簡単で、ワ-プロ等でユ-ザにも極めて容易に作成することができ、専門的な知識を持たない者でも容易に書式を定義したり、変更することができ、さらに他のデ-タの編集処理にも容易に流用することができる融通性のあるテキストデ-タの編集処理を行うことができる。
【0051】また、1ペ-ジ内に複数のレイアウトをもつ場合も比較的簡単に編集することができる。
【0052】さらに、書式イメ-ジデ-タに従って生成される書式イメ-ジの中に編集対象デ-タが埋込可能か否かを判定し、埋込可能でなければ、書式イメ-ジの一部を拡張して埋め込むようにしたので、各項目デ-タの桁数の増加に対して書式定義を変更することなく対処することができる。
【0053】この結果、編集用のプログラムを書式別に作成する必要がなくなり、作業工数の削減など、ユ-ザの経済的負担を軽減できる。」(5頁7欄13行?8欄12行)が記載されている。

図面図8、図9に、1ペ-ジ中に複数の書式を編集する場合の例として、「HED」,「FILE」,「INF」という書式ID210を持つ制御部が、定義されているが、1ペ-ジの上位編集領域に、プログラム名、IDを表す書式ID210の「HED」が、1ペ-ジの中位から下位の編集領域に、項目名、編集方法を表す書式ID210の「FILI」と情報名称を表す書式ID210の「INF」が関連付けられている。即ち、書式ID210毎に書式ID210を1ペ-ジ上の所定の編集領域に関連付けているといえる。
また、書式デ-タ22には、書式ID210の「HED」に関連して、罫線とともに、「プログラム名」、「ID」という固定デ-タが定義され、書式ID210の「FILI」に関連して、罫線とともに、「NO」、「項目名」、「編集方法」という固定デ-タが定義され、書式ID210の「INF」に関連して、罫線とともに、「ID」、「情報名称」という固定デ-タが定義され、これら固定デ-タは、書式ID210により、置換デ-タ21とともに編集結果23に出力されている。
更に、編集結果23を見ると、書式デ-タ22に従い、置換デ-タ21の個々の配置は制御されており、置換デ-タ21の行情報数に応じて、その行数を制御している。

上記記載ア?カ及び図面図1?図9によれば、刊行物2には、
「編集対象のテキストデ-タを予め定義された書式に従ってコンピュ-タで処理し、編集結果を得て、帳票や画面等に出力するテキストデ-タの編集処理方法において、
前記書式を定める書式デ-タを、書式識別子,書式イメ-ジおよび編集対象デ-タを埋め込む位置にその種別を指示する記号を行単位で定義した書式イメ-ジデ-タ,この書式イメ-ジデ-タに対する編集形式を行単位で定義した制御デ-タとから構成して書式デ-タファイルに格納しておき、編集対象デ-タには編集書式を示す書式識別子を付し、かつ編集対象デ-タの種別を示す識別子を行単位で付して編集対象デ-タファイルに格納しておき、
編集対象デ-タの前記書式デ-タに従う編集処理に際し、編集対象デ-タを取得し(ステップ31)、編集対象デ-タに付加された書式識別子を検出し、その書式識別子に対応する書式識別子を有する書式デ-タを前記書式デ-タファイルから検索・抽出し、書式デ-タを取得し(ステップ32)、その書式デ-タの中の制御デ-タに従い、前記書式イメ-ジデ-タ中に定義された書式イメ-ジを生成し、かつ編集対象デ-タの種別を示す記号に対応した編集対象デ-タを編集対象デ-タファイルから検索し、その編集対象デ-タを当該記号が定義された位置に埋め込む処理を繰り返すことにより(ステップ33?37、41?46)、編集対象デ-タを書式デ-タに従って編集して出力する方法であって、
書式識別子(書式ID210)毎に1ペ-ジ上の所定の編集領域に関連付けして、1ペ-ジ内に複数の書式を編集して出力すること、
書式識別子(書式ID210)に関連して、書式デ-タに定義された固定デ-タは編集対象デ-タ(置換デ-タ21)とともに編集結果23に出力されること、
編集対象デ-タ(置換デ-タ21)は書式識別子(書式ID210)と置換指示デ-タ211により構成され、この置換指示デ-タ211は明細編集の論理的な1行分の編集を指示する複数個の置換行情報212から構成され、更に、置換行情報212は明細編集の論理的な1項目の編集を指示する複数個の置換項目情報213から構成されること、
書式デ-タ22により、編集対象デ-タ(置換デ-タ21)の個々のデ-タの配置は制御され、編集対象デ-タ(置換デ-タ21)の置換行情報数に応じて、編集結果23での行数を制御することを特徴とするテキストデ-タの編集処理方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)当審の拒絶の理由に引用された特開平4-313144号公報「文書作成装置」(以下、「刊行物3」という。)には、
ア 「【0009】図1は本発明の一実施例しての文書処理装置において、テキスト差し込みを行なう場合の動作を説明するための説明図である。即ち、テキスト台紙101に基づいてテキストファイル111で定義したテキストを差し込んで新たな文書を作成する様子を示している。
図1において、テキスト台紙101は、作成すべき文書のレイアウトを示すものであり、テキストを差し込む場所102?106に識別子107が記載されている。
【0010】図3は図1の識別子の構成を説明するための説明図である。図3において、401は識別子であることを表す区切り子であり、数字やアルファベット、記号等で表現する。402は識別子を管理するための管理番号であり、数字やアルファベット等で表現する。また、図1において、識別子107の後ろには、テキスト台紙101上で、作成すべき文書のレイアウトイメージになるように、□から成るレイアウト用文字108が記載されている。
【0011】ここで、テキスト台紙101のデータ206について説明する。図4は図2の記憶装置210に記憶されるテキスト台紙のデータ206の構成を示す構成図である。テキスト台紙のデータ206は、まず、余白,文字サイズ,行間,字間など文書全体の書式を表す書式情報501を有し、次に、文字修飾情報としての文字修飾データと、文字修飾データによってその前後を挾まれた識別子とレイアウト用文字列と、を1組として構成されるデータ群等が、順次続いている。
【0012】即ち、1組のデータ群は、識別子503(507)と、レイアウト用文字列504(508)と、識別子503(507)の直前に置かれた文字修飾データ始502(506)と、レイアウト用文字列504(508)の直後に置かれた文字修飾データ終505(509)と、で構成され、文字修飾データは、識別子及びレイアウト用文字列に対して施すべき書体,長体,斜体,文字サイズなどの文字修飾の内容を有している。
【0013】従って、出力装置203によって、テキスト台紙101の内容を表示または印刷する場合には、CPU208が、メモリ207に記憶された動作プログラムに応じて、記憶装置210よりテキスト台紙のデータ206を読み出し、出力制御部204を介して出力装置203に入力し、表示または印刷を行なわせる。
【0014】この時、識別子及びレイアウト用文字は、そのデータ群内の文字修飾データに基づいて、書体や斜体等の文字修飾が施されるため、図1に示した様な完成イメージで表示または印刷される。尚、レイアウト用文字108としては、そこにどのような内容の文字を入れるかを示すためのコメント109を入れておくことも可能である。
【0015】次に、図1において、テキストファイル111は、テキスト台紙101に記載された識別子に対応するテキスト(即ち、差し込まれるテキスト)を定義したものであり、テキスト台紙101に記載された識別子と、それに対応するテキストと、を1組として、1行ずつ記載されている。例えば、テキスト102は、テキスト台紙101に記載された識別子107と対応するようにである。
【0016】尚、図1に示すように、各識別子が数字等によって順序づけられている場合には、テキストファイル111に、改行で区切られたテキストを1行ずつ上から順番に、順序づけられた識別子に対応するよう、記載しても良く、その場合には、テキストファイル111に識別子を記載する必要はない。」(3頁4欄19行?4頁5欄29行)が記載されている。

(4)当審の拒絶の理由に引用された特開平9-212508号公報「文書処理装置」(以下、「刊行物4」という。)には、
ア 「【0021】次に、図3を参照して本発明によるテキストファイルの構造化文書化の態様例を示し、本発明の概念について説明する。
【0022】図3(a)は、ひな型文書D10にテキストファイルD11の文字列を流し込むことにより、所望の構造化文書D12を出力する態様を示したものである。
【0023】ひな型文書D10は、複数の見出しと複数の本文段落とから構成され、見出し文字列及び本文段落文字列が空の識別マークI10?I13によって記述されている。
【0024】テキストファイルD11は、空行B10?B12によって分割された見出し文字列あるいは段落文字列を有している。
【0025】流し込み処理部5bは、ひな型文書D10内に空の識別マークI10?I13が出現すると、テキストファイルD11内において空行B10?B12によって分割された文字列を順次ひな型文書D10内に流し込む処理を行う。この流し込み処理の結果の構造化文書D12は、レイアウト処理されて出力部2に表示出力される。従って、テキストファイルD11内において分割された文字列は、ひな型文書D10内に順次出現する空の識別マークI10?I13に対応する順序で分割される必要がある。これにより、ひな型文書D10の識別マークI10の構造位置には、テキストファイルD11内における空行B10までの文字列「はじめに」が流し込まれ、識別マークI11の構造位置には、空行B10から空行B11までの文字列「この文書は、構造化文書に関するものである。」が流し込まれ、識別マークI12の構造位置には、空行B11から空行B12までの文字列「概要」が流し込まれ、識別マークI13の構造位置には、空行B12以降の文字列「構造化文書には以下のような利点がある。文書の論理的な構造を自身の保持するデータ構造に反映させ・・・」が流し込まれた構造化文書D12が生成される。
【0026】図3(b)は、表セルを有するひな型文書に、図3(b)のテキストファイルD11と同じテキストファイルD21の文字列を流し込むことにより、表セルを有した所望の構造化文書D22を出力する態様を示したものである。
【0027】ひな型文書D20は、表セルC10?C13を有し、各表セルC10?C13内には、空の識別マークが記述されている。
【0028】一方、テキストファイルD21は、テキストファイルD11と全く同様の構造、文字列を有している。
【0029】流し込み処理部5bは、ひな型文書D20内に空の識別マークI20?I23が出現すると、テキストファイルD21内において空行B20?B22によって分割された文字列を順次ひな型文書D20内に流し込む処理を行う。この流し込み処理の結果の構造化文書D22は、レイアウト処理されて出力部2に表示出力される。従って、テキストファイルD21内において分割された文字列は、ひな型文書D20内の各表セルC10?C13内に順次出現する空の識別マークI20?I23に対応する順序で分割される必要がある。これにより、ひな型文書D20の表セルC10内の識別マークI10の構造位置には、テキストファイルD21内における空行B20までの文字列「はじめに」が流し込まれ、表セルC11内の識別マークI21の構造位置には、空行B20から空行B21までの文字列「この文書は、構造化文書に関するものである。」が流し込まれ、表セルC12内の識別マークI22の構造位置には、空行B21から空行B22までの文字列「概要」が流し込まれ、表セルC13内の識別マークI13の構造位置には、空行B22以降の文字列「構造化文書には以下のような利点がある。文書の論理的な構造を自身の保持するデータ構造に反映させ・・・」が流し込まれた構造化文書D22が生成される。」(3頁4欄23行?4頁5欄41行)が記載されている。


第5 対比

そこで、本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「書式識別子」は、本願発明の「レイアウト識別子」に相当する。
引用発明は「編集対象のテキストデ-タを予め定義された書式に従ってコンピュ-タで処理し、編集結果を得て、帳票や画面等に出力するテキストデ-タの編集処理方法」であるが、引用発明の該「コンピュ-タ」は、その実施例(図1)においてシステムとされていることから、本願発明の「コンピュ-タ・システム」に相当し、引用発明の該「編集結果」は、編集対象のテキスト(文書)デ-タを予め定義された書式(フォ-マット)に従って処理されたものであるから、本願発明の「フォ-マット設定した文書」に相当し、引用発明の「編集結果を得て」は、コンピュ-タで処理して得ていることから、「編集結果」を「生成」しているものといえる。
本願発明の「デ-タ・ストリ-ム」は、上位概念化すると、「編集対象デ-タ」といえる。引用発明の「編集対象デ-タ」の個々のデ-タは「デ-タ・レコ-ド」といえる。また、引用発明では、「編集対象のテキストデ-タ」、「置換デ-タ」は、「編集対象デ-タ」と同義である。
本願発明の「レイアウトパラメ-タ」、「レイアウトパラメ-タセット」は、上位概念化すると、「書式デ-タ」といえる。
本願発明で「受信」は、デ-タを取得する一形態であるから、上位概念化すると「取得」といえる。
引用発明の「置換デ-タ」は、明細編集の論理的な1行分の編集を指示する複数個の置換行情報212を備えていることから、「置換デ-タ」の各デ-タ・レコ-ドは、行を構成する「ライン・デ-タ・レコ-ド」を含むものといえる。
引用発明では、編集対象デ-タに書式識別子が付されているから、編集対象デ-タは、書式識別子と関連しているといえる。
本願発明の「文書ペ-ジ上の各区域を定義する各フォ-マット領域」は、上位概念化すると「1ペ-ジ上の所定の編集領域」といえる。
引用発明の書式デ-タは、編集結果23を参酌すれば、「編集対象デ-タ」の個々のデ-タのプレゼンテ-ションに関係するフォ-マット設定情報を含むものであるといえる。
引用発明は、「編集結果23を見ると、書式デ-タ22により、置換デ-タ21の個々の配置は制御されており、置換デ-タ21の行情報数に応じて、その行数を制御している」のであるから、書式デ-タ22を置換デ-タ21の個々のデ-タに適用することによって「動的に文書を作成」することを特徴としているといえ、この点では、本件発明と引用発明は一致しているといえる。

したがって、本願発明と引用発明は、
「コンピュ-タ・システムでフォ-マット設定した文書を生成する方法であって、
「編集対象デ-タ」内の各デ-タ・レコ-ドはライン・デ-タ・レコ-ドを含み、且つ「編集対象デ-タ」を「取得」するステップと、
文書内のデ-タ・レコ-ドのプレゼンテ-ションに関係するフォ-マット設定情報を含む「書式デ-タ」を「取得」して、特定のレイアウト識別子が遭遇するたびに「1ペ-ジ上の所定の位置の編集領域」に含まれる固定デ-タを指定するステップであって、各「書式デ-タ」は前記各「1ペ-ジ上の所定の編集領域」に対応して、前記文書ペ-ジ上の前記各「1ペ-ジ上の所定の編集領域」内にある各デ-タ・レコ-ドの配置を制御するステップと、
前記各レイアウト識別子に対応する前記各「書式デ-タ」を前記各レイアウト識別子に関連付けられた各デ-タ・レコ-ドに適用することによって動的に前記文書を作成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。」
の点で一致し、以下の点1?3で相違する。

相違点1
本願発明の「編集対象デ-タ」は、「デ-タ・ストリ-ム」であり、「書式デ-タ」は、「レイアウトパラメ-タ」、「レイアウトパラメ-タセット」であり、「取得」は「受信」であるのに対し、引用発明はそれらの特定がない点。

相違点2
本願発明の「1ペ-ジ上の所定の位置の編集領域」は、「文書ペ-ジ上の各区域を定義する各フォ-マット領域」であり、「各レイアウト識別子を、文書ペ-ジ上の各区域を定義する各フォ-マット領域に関連づけるステップ」を含むのに対し、引用発明は、それらの特定がない点。

相違点3
本願発明は、「第1のコンピュ-タ」、「第2のコンピュ-タ」を採用し、「デ-タ・ストリ-ム内の各デ-タ・レコ-ドはライン・デ-タ・レコ-ドを含み、且つ「第1のコンピュ-タ」でデ-タ・レコ-ド内に含まれるデ-タのタイプを指示するレイアウト識別子と関連しているデ-タ・ストリ-ムを受信するステップ」、「「第2のコンピュ-タ」で対応するフォ-マット領域内の各デ-タ・レコ-ドをフォ-マットするステップ」を含むのに対し、引用発明は、それらの特定がない点。


第6 当審の判断

以下、相違点1?3について検討する。

相違点1について
情報処理の技術分野において、編集の対象となるデ-タをデ-タストリ-ムとして送受することは周知な技術事項(例えば、国際公開98/15408号パンフレット(1998年)「MULTIPLE COMPANY INTEGATED DOCUMENTS PRODUCTION」、特開平10-91621号公報「高速印刷システムのための可変デ-タを有する複合レイアウトを作成する方法」、特開平8-115178号公報「ペ-ジ記述言語における可変デ-タフイ-ルド」参照。)である。そして、編集対象のデ-タを取得するため、編集対象のデ-タをキ-ボ-ドなどの入力装置を使用して自システムで作成することも、他システムで作成することも、例えば他システムのデ-タベ-ス上にあるデ-タを取り出し、これを活用すべく、編集システムに送信することも当業者が普通に採用する技術事項であることから、引用発明において、「編集対象デ-タ」を他システムで作成する際、上記の周知な技術事項を採用して、他システムから自システムにデ-タストリ-ムとして送受することに、格別な困難性は認められない。
情報処理の技術分野において、書式のデ-タを「レイアウトパラメ-タ」として構成することは周知な技術事項(例えば、刊行物1、特開平7-85298号公報「文書レイアウト編集装置」、特開平5-342325号公報「文書処理装置およびその装置のためのフォ-ム登録装置」、特開平1-269983号公報「文章レイアウト装置」参照。)である。そして、当業者は、既存のプログラム、パラメ-タ、デ-タを自由に取り扱う知識と経験を有する専門家であるといえるから、引用発明において、情報処理の専門家である当業者が、「書式デ-タ」を「書式イメ-ジデ-タ」に代え、「レイアウトパラメ-タ」として、及び「レイアウトパラメ-タ」の集まりである「レイアウトパラメ-タセット」として構成することに、阻害要因があるとまではいえない。
情報処理の技術分野において、編集対象デ-タ、書式デ-タを生成するシステムをそれぞれ構築すること、これらのシステムから送信された各デ-タを編集システムが「受信」して処理することは普通のこと(例えば、特開平11-328289号公報「クロスメディア帳票発行システム」参照)であるから、該分散して処理する技術を引用発明の「テキストデ-タの編集処理方法」に採用する際、「取得」を「受信」とすることは、当業者が適宜になし得ることである。
してみると、引用発明において、上述した各事項を採用して、「編集対象デ-タ」を「デ-タ・ストリ-ム」とし、「書式デ-タ」を「レイアウトパラメ-タ」、「レイアウトパラメ-タセット」とし、「取得」を「受信」とすることは当業者が、容易に想到できたことである。

相違点2について
文書上に、ヘッダ、本体(ボディ)、フッタの区域・領域を設けることは、普通に行われていることであり、その際、ヘッダ、本体(ボディ)、フッタの区域・領域にそれぞれ書式を設定することも周知なことである。刊行物2の段落番号0024に「一方、書式デ-タ22は、制御部220と書式部221により構成され、制御部220は書式ID2201と各行の種別を表す行識別子2202を組み合わせ(本実施例では'-'で連結)た形態で指示し、置換デ-タ21に指示された書式ID210に対応する書式デ-タ22を取り出し、行の種別編集方法を指示するために使用する。この実施例では、行識別子2202を見出しの編集を表すヘッタ-(’H’)、明細の見出し編集を表すボディ-ヘッタ-(’BH’)、明細の編集時に枠を拡張する部位を表すボディ-ボディ-(’BB’)、フッタ-の編集を表すフッタ-(’F’)の4種類で定義する。」と記載されている。特開平5-342325号公報「文書処理装置およびその装置のためのフォ-ム登録装置」に各区域毎にレイアウトパラメ-タを設定することが記載されている。
また、文書上に複数の領域を定義し、それぞれに、レイアウト、デ-タを関連付けることことも周知な技術事項(例えば、刊行物4、特開平11-272666号公報「文書編集システム、方法、及び記録媒体」、特開平3-177964号公報「文書整形装置」参照。)である。
更に、引用発明の各レイアウト識別子は、図8,9において、「1ペ-ジ上の所定の位置の編集領域」である「本体を定義しているフォーマット領域」に関連付けられているといえる。刊行物3に記載された文書作成装置においても、各識別子は「1ペ-ジ上の所定の位置の編集領域」である「各フォーマット領域」に関連付けられているといえる。
引用発明は、文書に関する発明であり、上記文書上に、ヘッダ、本体(ボディ)、フッタの区域・領域を設けることは、普通に行われていることを踏まえると、そのフォーマット領域として、本体(ボディ)の区域・領域に、ヘッダ、本体(ボディ)、フッタの区域・領域を加えることに格別困難性は見出せない。
そして、引用発明において、書式データにて、フォーマット識別子がフォーマット領域に関連付けられているのであるから、当業者が、ヘッダ、本体(ボディ)、フッタの区域・領域を備えた書式データを作成する際に、各フォーマット識別子を各フォーマット領域に関連づけるステップを含むこととすることは普通に想到できることといえる。
してみると、上述した各事項を採用して、引用発明の「1ペ-ジ上の所定の位置の編集領域」を、「文書ペ-ジ上の各区域を定義する各フォ-マット領域」とし、「各レイアウト識別子を、文書ペ-ジ上の各区域を定義する各フォ-マット領域に関連づけるステップ」を含むとすることは、当業者が、容易になし得たことである。

相違点3について
情報処理の技術分野において、複数のコンピュータを用いて、分散処理を行うことは普通に行われてることであり、帳票を作成するためのデータを取得するために、データベースを管理するコンピュータを帳票を作成するコンピュータと別に設けることは周知な技術事項(例えば、特開平9-179913号公報「帳票作成システム」参照。)である。そして、複数のコンピュータを用いると「1つのコンピュータを用いた場合の潜在的なセキュリティ・リスク」を回避できることは、当業者が普通に予測できることである。
引用発明は、「編集対象デ-タには編集書式を示す書式識別子を付し」編集対象デ-タファイルに格納しているものであるから、編集対象デ-タファイルに格納する前に、「編集書式を示す書式識別子」を「編集対象デ-タ」に付し関連付ける処理が行われることは普通に想到できることといえる。
そうすると、引用発明において、引用発明に「第1のコンピュ-タ」、「第2のコンピュ-タ」を用い、「第1のコンピュータ」で「編集対象デ-タ」に「書式識別子」関連させる処理を行わせ、「第2のコンピュータ」で「編集対象デ-タ」の「書式デ-タ」に従い領域内の各デ-タ・レコ-ドをフォーマットするなどの編集処理を行わせることは、当業者が困難なく想起し得たものである。
また、「編集対象デ-タ」のデータのタイプを「書式データ」で指示することも普通に行われていることであり(例えば、特開平11-328289号公報図5参照。)、引用発明で、「編集対象デ-タ」のデータのタイプを「書式データ」にも付されている「書式識別子」で指示するとすることは、当業者が、適宜なし得たことである。
そして、引用発明は、上述したように「編集対象デ-タ」内の各デ-タ・レコ-ドはライン・デ-タ・レコ-ドを含み、且つ「編集対象デ-タ」を「取得」するステップを含むものである。
してみると、上述した各事項を採用して、引用発明に「第1のコンピュ-タ」、「第2のコンピュ-タ」を採用し、「デ-タ・ストリ-ム内の各デ-タ・レコ-ドはライン・デ-タ・レコ-ドを含み、且つ「第1のコンピュ-タ」でデ-タ・レコ-ド内に含まれるデ-タのタイプを指示するレイアウト識別子と関連しているデ-タ・ストリ-ムを受信するステップ」、「「第2のコンピュ-タ」で対応するフォ-マット領域内の各デ-タ・レコ-ドをフォ-マットするステップ」を含むとすることは、当業者が、容易になし得たことである。


第7 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1、2、3、4に記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に記載された発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する 。
 
審理終結日 2010-07-26 
結審通知日 2010-08-03 
審決日 2010-08-16 
出願番号 特願2000-387027(P2000-387027)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 真木 健彦
飯田 清司
発明の名称 コンピュータ生成文書のフォーマット設定システム、方法、および記録媒体  
代理人 山川 茂樹  
代理人 山川 政樹  

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