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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1229722
審判番号 不服2008-29981  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-25 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 特願2003-393906「セキュア移動体無線及びマルチホップデータネットワークのための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月24日出願公開、特開2004-180307〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年11月25日(パリ条約による優先権主張2002年11月25日、2003年6月18日、米国)の出願であって、平成20年6月10日付け拒絶理由通知に対して、同年8月18日付けで手続補正がされたが、同年10月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月25日に拒絶査定不服の審判が請求され、同年12月24日付けで手続補正がされたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年12月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された

「複数の無線クライアント装置と、
無線クライアント装置に無線基幹サービスを提供する無線基幹ネットワークとを有する無線ネットワークであって、
前記無線基幹ネットワークに含まれる移動可能な無線ネットワークノード装置が、通信を制御する内部テーブルを有し、それぞれのカバレッジ領域内で無線クライアント装置に無線ローカルアクセスサービスを提供し、
移動可能な無線ネットワークノード装置が移動したときであっても、その移動に対する自動的かつ動的な調節をすることにより、移動可能な無線ネットワーク装置が、他の無線クライアント装置に、又は前記無線ネットワークと通信する他のネットワークに、マルチホップ方式で、無線クライアント装置の通信データを無線基幹ネットワーク上で転送及び配信することを特徴とする無線ネットワーク。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「複数の無線クライアント装置と、
無線クライアント装置に無線基幹サービスを提供する無線基幹ネットワークとを有する無線ネットワークであって、
前記無線基幹ネットワークに含まれる複数の移動可能な無線ネットワークノード装置が、通信を制御する内部テーブルを有し、それぞれのカバレッジ領域内で無線クライアント装置に無線ローカルアクセスサービスを提供し、
移動可能な無線ネットワークノード装置が移動したときであっても、その移動に対する自動的かつ動的な調節をスパニングツリープロトコルの実行により行い、前記無線基幹ネットワークにおけるスパニングツリーを再構築し、移動可能な無線ネットワーク装置が、他の無線クライアント装置に、又は前記無線ネットワークと通信する他のネットワークに、マルチホップ方式で、無線クライアント装置の通信データを無線基幹ネットワーク上で転送及び配信することを特徴とする無線ネットワーク。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、「移動可能な無線ネットワークノード装置」に関し、「複数の」と限定を付加し、また、「自動的かつ動的な調節」に関し、「スパニングツリープロトコルの実行により行い、前記無線基幹ネットワークにおけるスパニングツリーを再構築し」と限定を付加して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明
原審の拒絶理由に引用された国際公開第02/28026号(以下、「引用例」という。)には、「AN ACCESS POINT FOR MOBILE DEVICES IN A PACKET BASED NETWORK AND A METHOD AND A SYSTEM FOR BILLING IN SUCH A NETWORK 」(訳文:パケット・ベースネットワークでのモバイル装置用アクセス・ポイントと前記ネットワークでの課金方法とシステム)として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「Referring to fig. 1, the environment of the invention will now be described in order to give a clear understanding of the invention. The environment of the invention comprises a network comprising one or more access points 1 (AP), a gateway 2, mobile devices 3 (MD) and a central node 4. The communication between the components in the network is packet based and preferably uses the TCP/IP protocol, but other protocols are also within the scope of the invention, such as IPX, etc.
The access points 1 form a private network, which fully or partly is wireless, hereafter called the"backbone".
This backbone is connected to other networks through access points 1 having a possibility to connect to a gateway 2 which has access to a remote service 5 (shown in fig. 2), such as the Internet or another private network, such as a corporate intranet. This connection is preferably some kind of wired connection, such as ISDN, Tl, etc. Access points having a wired connection 1' to a gateway are indicated as AP+ in the figures. The gateway 2 has at least gateway functionality, but could in one embodiment also comprise functionality for Network Addressing Translation (NAT). In one aspect, the access point 1 could be treated as a foreign agent in a network using the mobile IP protocol and the gateway 2 could then be treated as a home agent. Much of the administration and registration of the components are managed by the central node 4. The mobile devices 3 connect to one of the access points 1 with any type of wireless connection, but preferably wireless LAN, for instance using the standard IEEE 802.11b. However, other potential technologies such as Hiperlan 2 or Bluetooth are also possible. The mobile device 3 can be any type of mobile device such a portable computer, a personal digital assistant (PDA), an IP telephone, although with"mobile" does not only mean lightweight devices that fit into the pocket, since the invention is also applicable to for instance a stationary personal computer having possibilities to connect wirelessly to the access point.
This could be of interest when, for example, setting up a temporary work environment comprising a plurality of stationary computers somewhere at a university campus.
Referring to fig. 2, a communication path using the backbone will now be described. A mobile device 3 connect to the first access point 1 (AP) using wireless LAN.
Then, this AP 1 establishes a path to the gateway 2. This path is preferably tunneled in order to come around addressing problems. Also, this tunnel could be encrypted and take advantage of advanced authorization protocols, such as certificates and digital signatures. Since the AP 1 does not have a direct wired connection to a gateway 2, the path is established via the backbone through another access point 1'having a wired connection to a gateway 2.
Then, in order to overcome addressing problems the other access point 1' also uses a tunnel for transferring data to the gateway 2.
In fig. 3 a more complex network is illustrated. Through this illustration it is apparent that there are often a plurality of routing paths for the communication from a mobile device 3 to a gateway 2. The routing paths are primarily administered by the central node 4. Then, the access points 1 are provided with instructions of how to route packets from a given mobile device 3. The invention provides a convenient way of introducing multi-operator networks. Therefore, the access points 1 and 1'and the gateways 2 and 2' could belong to different operators, and the network in between is probably owned by different operators. Therefore, the routing paths, and which gateway that is used for connection to other networks, such as the Internet, should be dependent on the preferences of the user of the mobile device, the operator of the access point (s), the operator of the gateways, and the provider of the wired connections.
In fig. 4 the difference between the backbone and the communication between the mobile devices 3 and the access points 1 is illustrated. The communication between the mobile devices 3 and the access points 1 is separated from the backbone network. The network between mobile devices 3 and the access point 1 is referenced herein as the access network. Separating the traffic into two or more wireless networks means additional available bandwidth and improved flexibility. As an example the wireless backbone may use a completely different wireless technology and/or different antennas than those for the access network. However, as described above the backbone network uses wireless technology, which for example could be a wireless LAN or HiperLAN. But, in some occasions parts of the backbone network could be wired.
For example, in a facility comprising of several floors whereof one is basement, it could be useful to use a wired connection from an access point, located in the basement not having a direct wired connection to a gateway, to another access point some floors up in the building which has a wireless connection to a gateway or a wireless connection to another access point located for example outdoors. Preferably, the range of the access net for a given access point is smaller than its range for communicating with other access points. Thus, such a backbone network is a truly ad-hoc network, where one access point could be added or removed without any configuration needed in other access points or in any central node in order to integrate and disintegrate, respectively, an access point. 」(10頁22行?13頁12行)

訳文:「図1を参照して、本発明の明確な理解を与えるために本発明の環境を以下に説明する。本発明の環境は、1つ以上のアクセス・ポイント1(AP)、ゲートウェイ2、モバイル装置3(MD)及び中央ノード4を含む網を含む。網の構成部品間の通信はパケット・ベースであり、TCP/IPプロトコルを使用することが望ましいが、IPX、等のようなその他のプロトコルも発明の範囲内である。アクセス・ポイント1は、以後「バックボーン」と呼ばれる、完全にまたは部分的に無線である私的網を形成する。このバックボーンは、会社のイントラネットのような他の私的網またはインターネットのような遠隔サービス5(図2に図示)へのアクセスを有するゲートウェイ2へ接続する可能性を有するアクセス・ポイント1を通して他の網へ接続される。この接続は、ISDN、T1、等のようなある種の有線接続であることが望ましい。ゲートウェイへの有線接続1’を有するアクセス・ポイントは図面ではAP+として図示されている。ゲートウェイ2は少なくともゲートウェイ機能を有するが、1実施例では網アドレス変換(NAT)の機能も含む。ある面では、アクセス・ポイント1は、モバイルIPプロトコルを使用した網の外部エージェントとして取扱可能であり、ゲートウェイ2はホーム・エージェントとして取扱可能である。構成部品の管理及び登録の多くは中央ノード4により管理される。モバイル装置3は、例えば標準のIEEE802.11bを使用した無線LANが望ましいが、何らかの型式の無線接続によりアクセス・ポイント1の1つと接続する。しかしながら、ハイパーラン2またはブルートゥースのようなその他の可能な技術も可能である。モバイル装置3は携帯コンピュータ、個人用ディジタル・アシスタント(PDA)、IP電話のような任意の型式のモバイル装置が可能であるが、「モバイル」はポケットに入る軽量の装置を意味するのみではない、何故なら本発明はまた、例えばアクセス・ポイントへ無線で接続する可能性を有する固定のパーソナル・コンピュータにも適用可能であるからである。これは、例えば、大学のキャンパスのどこかに複数台の固定コンピュータを含む一時的な作業環境を設定する時にも興味ある。
図2を参照すると、バックボーンを使用した通信路がここで記述される。モバイル装置3は無線LANを使用して第1アクセス・ポイント1(AP)に接続する。次いで、このAP1はゲートウェイ2への路を確立する。この路は、アドレシング問題を避けるためトンネル化されることが望ましい。また、このトンネルは暗号化され、証明書やディジタル署名のような進歩した認証プロトコルを利用可能である。AP1はゲートウェイ2への直接有線接続を有していないため、この路は、ゲートウェイ2への有線接続を有するほかのアクセス・ポイント1’を通してバックボーンを介して確立される。次いで、アドレシングの問題を克服するため、他のアクセス・ポイント1’もゲートウェイ2へデータを転送するトンネルを使用する。
図3ではより複雑な網が図示されている。この図から、モバイル装置3からゲートウェイ2への通信用にしばしば複数個の通信路があることが明らかである。ルーティング路は主に中央ノード4により管理される。さらに、アクセス・ポイント1には特定のモバイル装置3からパケットを如何にルートするかの指令が与えられる。本発明は複数事業者網を導入する便利な方法を提供する。それ故、アクセス・ポイント1と1’ゲートウェイ2と2’は異なる事業者に属することも可能であり、その間の網も多分異なる事業者により所有される。それ故、ルーティング路と、インターネットのような他の網への接続用にどのゲートウェイを使用するか、はモバイル装置のユーザー、アクセス・ポイントの事業者、ゲートウェイの事業者、有線接続の提供者の選択に依存する。図4では、モバイル装置3とアクセス・ポイント1との間の通信とバックボーンとの間の差が図示される。モバイル装置3とアクセス・ポイント1との間の通信はバックボーン網から分離される。モバイル装置3とアクセス・ポイント1との間の網は本明細書ではアクセス網として参照される。トラヒックを2つまたはそれ以上の無線網に分離することは、別に利用可能な帯域と改善された柔軟性を意味する。例として、無線バックボーンはアクセス網のそれと完全に異なる無線技術及び/またはアンテナを使用してもよい。しかしながら、上述したようにバックボーン網は、例えば無線LANまたはハイパーLANでありうる無線技術を使用する。しかし、ある場合にはバックボーンの一部は有線化可能である。例えば、何階かを含みその内1つが地下である施設では、ゲートウェイへの直接有線接続を有していない地下に配置したアクセス・ポイントから、ゲートウェイへの無線接続または例えば屋外に配置した他のアクセス・ポイントへの無線接続を有する建物の何階か上のほかのアクセス・ポイントへ、有線接続を使用することが有用である。特定のアクセス・ポイントのアクセス網の範囲は他のアクセス点と通信するその範囲より小さいことが望ましい。従って、このようなバックボーン網は真にアドホックな網であり、この場合アクセス・ポイントを各々統合し統合から外すために他のアクセス・ポイントまたはどこかの中央ノードで必要とされる何らかの構成なしに、あるアクセス・ポイントを追加または削除可能である。」

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記摘記事項イ.の記載、FIG.3及びFIG.4によれば、パケット・ベースネットワークは、複数のモバイル装置(3)と、無線バックボーンとを有している。ここで、無線バックボーンは、モバイル装置(3)に無線バックボーンサービスを提供することは明らかである。
また、前述の無線バックボーンは、複数のアクセス・ポイント(1)を含んでいる。ここで、複数のアクセス・ポイント(1)は、それぞれのカバレッジ領域内でモバイル装置(3)に無線ローカルアクセスサービスを提供することは明らかである。
また、前述のアクセス・ポイント(1)は、他のモバイル装置(3)に、又は、前述のパケット・ベースネットワークと通信する他のネットワークに、マルチホップ方式で、モバイル装置(3)のパケットを無線バックボーン上で通信していることが読み取れる。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

「複数のモバイル装置(3)と、
モバイル装置(3)に無線バックボーンサービスを提供する無線バックボーンとを有するパケット・ベースネットワークであって、
前記無線バックボーンに含まれる複数のアクセス・ポイント(1)が、それぞれのカバレッジ領域内でモバイル装置(3)に無線ローカルアクセスサービスを提供し、
アクセス・ポイント(1)が、他のモバイル装置(3)に、又は、前記パケット・ベースネットワークと通信する他のネットワークに、マルチホップ方式で、モバイル装置(3)のパケットを無線バックボーン上で通信するパケット・ベースネットワーク。」

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「モバイル装置(3)」、「無線バックボーンサービス」、「無線バックボーン」、及び「パケット」は、その機能において、補正後の発明の「無線クライアント装置」、「無線基幹サービス」、「無線基幹ネットワーク」、及び「通信データ」にそれぞれ相当する。
b.引用発明の「アクセス・ポイント(1)」は、その機能において、補正後の発明の「無線ネットワークノード装置」及び「無線ネットワークノード装置」と実質的に同じ「無線ネットワーク装置」にそれぞれ相当する。
c.引用発明の「通信」と、補正後の発明の「転送及び配信」とは、いずれも、「通信」という点で一致する。
d.引用発明の「パケット・ベースネットワーク」は、無線ネットワークである。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)

「複数の無線クライアント装置と、
無線クライアント装置に無線基幹サービスを提供する無線基幹ネットワークとを有する無線ネットワークであって、
前記無線基幹ネットワークに含まれる複数の無線ネットワークノード装置が、それぞれのカバレッジ領域内で無線クライアント装置に無線ローカルアクセスサービスを提供し、
無線ネットワーク装置が、他の無線クライアント装置に、又は前記無線ネットワークと通信する他のネットワークに、マルチホップ方式で、無線クライアント装置の通信データを無線基幹ネットワーク上で通信する無線ネットワーク。」

(相違点1)

「無線ネットワークノード装置」及び「無線ネットワーク装置」に関し、
補正後の発明は、「移動可能」であるのに対し、引用発明は、「移動可能」であるか不明である点。

(相違点2)

「無線ネットワークノード装置」に関し、
補正後の発明は、「通信を制御する内部テーブルを有し」ているのに対し、引用発明は、前記構成を備えているか不明である点。

(相違点3)

「無線ネットワークノード装置」に関し、
補正後の発明は、「移動可能な無線ネットワークノード装置が移動したときであっても、その移動に対する自動的かつ動的な調節をスパニングツリープロトコルの実行により行い、前記無線基幹ネットワークにおけるスパニングツリーを再構築し」ているのに対し、引用発明は、前記構成を備えていない点。

(相違点4)

「通信」に関し、
補正後の発明は、「転送及び配信」であるのに対し、引用発明は、「転送及び配信」であるか不明な点。

そこで、まず、上記相違点1について検討する。
引用例の上記摘記事項イ.における「このようなバックボーン網は真にアドホックな網であり、この場合アクセス・ポイントを各々統合し統合から外すために他のアクセス・ポイントまたはどこかの中央ノードで必要とされる何らかの構成なしに、あるアクセス・ポイントを追加または削除可能である。」との記載を考慮すれば、追加、削除を容易にするため、引用発明の「アクセス・ポイント」を、「移動可能な」とすることは当業者が容易に成し得ることである。

次に、上記相違点2について検討する。
無線ネットワークにおける無線ネットワークノード装置において、通信を制御する内部テーブルを設けることは、例えば、原審の拒絶査定で引用された特開平9-83528号公報(段落22、71、図2、10)に開示されるように周知であるから、引用発明において、「通信を制御する内部テーブルを有す」るようにすることは当業者が容易に成し得ることである。

次に、上記相違点3について検討する。
無線ネットワークにおいて、移動可能な無線ネットワークノード装置が移動したときであっても、その移動に対する自動的かつ動的な調節を行うことは、例えば、原審の拒絶査定で引用された特開2001-237764号公報(段落28、29、図4)、特開2000-252992号公報(段落18?20、図1)に開示されるように周知であり、また、自動的かつ動的な調節をスパニングツリープロトコルの実行により行い、無線ネットワークにおけるスパニングツリーを再構築することは、例えば、特開2000-78147号公報(段落2?5、86、87、図7、8)、特開2000-253037号公報(段落2?13、図7)に開示されるように周知であるから、引用発明において、「移動可能な無線ネットワークノード装置が移動したときであっても、その移動に対する自動的かつ動的な調節をスパニングツリープロトコルの実行により行い、前記無線基幹ネットワークにおけるスパニングツリーを再構築す」ることは当業者が容易に成し得ることである。

次に、上記相違点4について検討する。
通信データをネットワーク上で転送及び配信することは、通信の一形態として、周知であるから、引用発明の「通信」を、「転送及び配信」とすることは、単なる通信形態の具体化にすぎない。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成20年12月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2010-10-27 
結審通知日 2010-11-02 
審決日 2010-11-15 
出願番号 特願2003-393906(P2003-393906)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福岡 裕貴  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 猪瀬 隆広
萩原 義則
発明の名称 セキュア移動体無線及びマルチホップデータネットワークのための方法及び装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 山口 昭則  

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