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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1229737
審判番号 不服2009-4156  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-26 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 特願2004-136638号「レンジフード」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月10日出願公開、特開2005-315546号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成16年4月30日の出願であって、平成21年1月26日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、同年2月26日に本件審判が請求されるとともに、同年3月24日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成21年3月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年3月24日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、
「【請求項1】
台所の側壁側に位置する煙吸引排出部と、
その煙吸引排出部から室内側へ片持ち状に延出するとともに、底面がほぼ全体にわたって矩形状に開口しかつグリスフィルタで塞がれる煙導入口を有し、その煙導入口から吸い込まれた煙を前記煙吸引排出部へ導くために延出方向である左右方向に延設される煙吸引導入通路を含むダクト状の煙導入部と、
前記煙吸引導入通路の流れ方向直交断面を区画する形態で前記煙導入部の内部に配置されるとともに、前記煙吸引排出部近傍から左右方向に延設され前記煙導入口の左右方向先端部側に臨む案内ダクトとを備え、
前記案内ダクトは、
前記煙吸引排出部から所定距離以内の基端部側の煙導入口に位置する煙を、そのまま前記煙吸引排出部側へ向かう左右方向の径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第一の流路と、
前記煙吸引排出部から所定距離を超えて先端部側の煙導入口に位置する煙を、自身の内側を通り前記煙吸引排出部側へ向かう左右方向の径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第二の流路と、
に前記煙吸引導入通路を区分するとともに、
前記煙導入口の左右方向基端部側にて前記煙吸引排出部に突入する突入長さL1よりも、前記煙導入口の左右方向先端部側にて当該煙導入口に沿って開口する開口長さL2が大きくなるように配置されていることを特徴とするレンジフード。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「案内ダクト」に関して、「前記煙導入口の左右方向基端部側にて前記煙吸引排出部に突入する突入長さL1よりも、前記煙導入口の左右方向先端部側にて当該煙導入口に沿って開口する開口長さL2が大きくなるように配置されている」と限定するものであって、当該補正箇所は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-318122号公報(以下「刊行物」という。)には、レンジフードに関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 箱状のフード本体があって、このフード本体の下方側に主開口を設け、さらに、上記フード本体の手前側の面を下端部分のみ前方に突出させて外形略L字型となし、このフード本体の突出部分の下方側に補助開口を設けたレンジフードにおいて、この補助開口の上記手前側の下端縁からも油煙が吸引されるように補助ダクトを上記突出部分に設けたことを特徴とするレンジフード。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レンジフードに関し、具体的には、台所に設置されるのに有用なレンジフードに関する。」
(ウ)「【0005】ところが、このようなレンジフードにおいては、フード本体(1)の手前側の面(6)を下端部分(8)のみ前方に突出させて突出部分(7)となしていて、同突出部分(7)の高さ寸法が小さく形成された、いわゆる、浅型であるために、一旦フード本体(1)内に入った油煙が、図中の矢印に示されるごとく、うず流になったりして、容易にフード本体(1)外に漏れてしまうものであった。
・・(中略)・・
【0007】本発明は、上述の事実に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、外観上での見栄えが良いものでありながら、ファンの吸引能力を上げる必要なく、油煙もれを少なくすることができるレンジフードを提供することにある。」
(エ)「【0016】上記フード本体(1)は、図1ないし図4に示すごとく、箱状であって、例えば、通常ガステーブルなどの調理機器の上方に設けられているものであるが、その他の場所に設けられていてもかまわず、これに限定されるものではない。このフード本体(1)は、例えば、後側の壁などにネジ、釘などによって、固定されているものである。」
(オ)「【0018】なお、上記フード本体(1)内には、油煙を室外に排出するために、例えば、図1に示すごとく、シロッコファン(18)が設けられていてもかまわないし、図2および図4の(a)、(b)に示すごとく、プロペラファン(4)が設けられていてもかまわない。いずれの場合にしても、油煙を室外に排出する排気口(13)が、図示のごとく設けられているものである。」
(カ)「【0023】本発明は、このような構成をとることによって、フード本体(1)の手前側の面(6)を下端部分(8)のみ前方に突出させて突出部分(7)となしていて、同突出部分(7)の高さ寸法が小さく形成された、いわゆる、浅型であるために、外観上での見栄えは良いものとなっていて、図4の(a)中の矢印に示されるごとく、突出部分(7)での補助ダクト(10)の存在によって、補助ダクト(10)内で真空効果を得ることができるようになり、自ずと吸引速度もアップして、補助開口(9)の手前側の下端縁からも油煙が容易に吸引されるようになるものである。その結果として、従来のように容易に油煙がフード本体(1)外に漏れてしまう恐れがなくなるものとなる。」
(キ)「【0027】さらに、図1ないし図5に示すごとく、上記補助ダクト(10)が、断面略コ字型の板状物(15)で仕切られることによって形成され、さらに、この板状物(15)は、直に固定される取付代(14)を有し、この取付代(14)と上記突出部分(7)とが互いに固定されていると、板状物(15)で補助ダクト(10)を容易に形成することができるものとなる上に、洗ったりするなどの手入れの際などは板状物(15)であることによって、さらに容易なものとすることができるものである。」
(ク)「【0029】そして、図1ないし図3に示すごとく、上記板状物(15)において、上記手前側とは反対側の後端部分(5)を上記主開口(3)の位置まで若干突出させていると、この板状物(15)によって、主開口(3)の周囲に油煙の油分などが付着したりするのを防止でき、仮にフィルター(11)などを設置していても油煙の油分などを捕集できなかったり、このフィルター(11)の外側から回りこんで油煙が、フード本体(1)に入り込むようなこともあるが、そのような場合も、油煙の油分などが板状物(15)で捕らえられたりするものであって、同フード本体(1)内にまで油煙の油分などが到達し難くなるものである。」
(ケ)図1、及び図4には、外形略L字型のフード本体(1)が記載されており、図1のフード本体(1)は、
フード本体(1)の高さ方向上方7割程度の部分(以下、「上方部分」という。)が、フード本体(1)の全奥行き(図4の左右方向の長さ)に対しての半分程度の奥行きの、下方が開放(以下、この開放を「上方部分の下方開放部」という。)した箱体として、奥側(右上側)に記載されており、その部分には排気口(13)やシロッコファン(18)が配されている。
また、フード本体(1)の高さ方向下方3割程度である下端部分(8)が、上記上方部分に対して、手前側(左下側)に突出させた突出部分(7)を有するとともに、その底面は主開口(3)と補助開口(9)とによって、ほぼ全体にわたって矩形状に開口し、
下端部分(8)の内部は前記上方部分の下方開放部と連続する空間となっている。
さらに、下端部分(8)内には、補助開口(9)の左側の手前側下端縁からも油煙が吸引されるように手前側の端部側に臨む補助ダクト(10)を形成する断面略コ字型の板状物(15)が、下端部分(8)の内部を手前から奥に向かう方向(図4の左右方向)に対して直交する断面を区画する形態、かつ、上記上方部分の下方開放部の近傍から手前側(左方向)に延設される形で設けられている。
(コ)図1には、補助ダクト(10)を形成する断面略コ字型の板状物(15)が記載されており、板状物(15)は、
上記(ケ)の「下端部分(8)の内部を手前から奥に向かう方向(図4の左右方向)に対して直交する断面を区画する」ものであり、
その上側の区画は、記載事項(カ)の「図4の(a)中の矢印に示されるごとく、突出部分(7)での補助ダクト(10)の存在によって、・・(中略)・・補助開口(9)の手前側の下端縁からも油煙が容易に吸引されるようになる」機能を生ずる補助ダクト(10)となる流路となっている。
その下側の区画は、手前側で補助開口(9)の奥側、若しくは主開口(3)の手前側に面すると共に、奥側で上記上方部分の下方開放部に続いている。
(サ)図1、及び、図3には、板状物(15)が記載されており、板状物(15)は、奥側(図3の右側)の端部が、上記上方部分の下方開放部の内側まで突入する形態で配置され、
また、板状物(15)の手前側(図3の左側)の端部側で、上記矩形状の開口に沿って開口する部分が、上記矩形状の開口の手前側端部との間に隙間として形成されている。

・記載事項(ア)の「レンジフード」は、記載事項(イ)の「台所に設置される」ものであり、かつ、その「フード本体」は、記載事項(エ)の「例えば、後側の壁などにネジ、釘などによって、固定されている」ものであって、台所の後側の壁等の周壁は、側壁といえるものであるので、フード本体は、側壁にネジ、釘などによって、固定されているといえる。
また、記載事項(ケ)の「フード本体(1)」の「奥側(右上側)」には実質的に該側壁が存在すると認識するのが自然であるので、その「奥側(右上側)」に記載されている部位は、台所の側壁側に位置しているともいえる。
・記載事項(コ)の「下側の区画」は、「手前側で補助開口(9)の奥側、若しくは主開口(3)の手前側に面すると共に、奥側で上記上方部分の下方開放部に続いている」ものであって、該開口からの油煙のうち上側の区画を通る油煙以外の油煙を吸引する流路として機能することが自明であるので、主開口(3)及び補助開口(9)の下端縁からの油煙のうち上側の区画を通る油煙以外の油煙を吸引する流路といえる。

すると、特に、図1記載の実施例に着目して、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「箱状のフード本体があって、このフード本体の下方側に主開口を設け、さらに、上記フード本体の手前側の面を下端部分のみ前方に突出させて外形略L字型となし、このフード本体の突出部分の下方側に補助開口を設けたレンジフードにおいて、この補助開口の上記手前側の下端縁からも油煙が吸引されるように補助ダクトを上記突出部分に設けたレンジフードにおいて、
フード本体(1)は、
その上方部分が、フード本体(1)の全奥行きに対して半分程度の奥行きの下方が開放した箱体として、台所の側壁側に位置し、該上方部分には排気口(13)やシロッコファン(18)が配されたものであり、
その下端部分(8)が、上記上方部分に対して、手前側に突出させた突出部分(7)を有するとともに、その底面は主開口(3)と補助開口(9)とによって、ほぼ全体にわたって矩形状に開口し、
その下端部分(8)の内部は上記上方部分の下方開放部と連続する空間となったものであり、
その下端部分(8)内には、補助開口(9)の左側の手前側下端縁からも油煙が吸引されるように手前側の端部側に臨む補助ダクト(10)を形成する断面略コ字型の板状物(15)が、下端部分(8)の内部を手前から奥に向かう方向に対して直交する断面を区画する形態、かつ、上記上方部分の下方開放部の近傍から手前方向に延設される形で設けられており、
上記板状物(15)は、
下端部分(8)の内部を手前から奥に向かう方向に対して直交する断面を上下に区画し、
その上側の区画は、補助開口(9)の手前側の下端縁からも油煙が容易に吸引されるようにする機能を生ずる補助ダクト(10)となる油煙の流路であって、
その下側の区画は、主開口(3)及び補助開口(9)の下端縁からの油煙のうち上側の区画を通る油煙以外の油煙を吸引する流路であって、
板状物(15)の奥側の端部が、上記上方部分の下方開放部の内側まで突入する形態で配置されており、
板状物(15)の手前側の端部側で、上記矩形状の開口に沿って開口する部分が、上記矩形状の開口の手前側端部との間に、隙間として形成されるものである、
レンジフード。」

3.本願補正発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明のフード本体(1)の「上方部分」は、「台所の側壁側に位置」し、その部分に配されるシロッコファン(18)が、記載事項(オ)の「油煙を室外に排出するために、・・(中略)・・設けられ」るものであって、煙を吸引して排出する機能を有するものであるので、本願補正発明の「台所の側壁側に位置する煙吸引排出部」に相当する。
(b)引用発明の「突出部分(7)」の「上方部分に対して、手前側に突出」する構成は、本願補正発明の「煙吸引排出部から室内側へ片持ち状に延出する」構成に相当する。
また、引用発明の「下端部分(8)」の「底面は主開口(3)と補助開口(9)とによって、ほぼ全体にわたって矩形状に開口」する構成は、本願補正発明の「底面がほぼ全体にわたって矩形状に開口」する構成に相当すると共に、該開口が油煙の入口として機能していることが自明であるので「煙導入口」にも相当する。
さらに、引用発明の「下端部分(8)」の「内部は上記上方部分の下方開放部と連続する空間となったもの」である構成は、【図4】の矢印等を見ても、該空間が油煙の通路として機能していることが明らかであるので本願補正発明の「煙導入口から吸い込まれた煙を前記煙吸引排出部へ導くために延出方向」「に延設される煙吸引導入通路」に相当し、かつ、「下端部分(8)」は、全体として、底面の矩形状開口から上方部分の下方開放部に至るダクト形状であるので、「ダクト状」といえるものでもある。
そうすると、引用発明のフード本体(1)の「下端部分(8)」と、本願補正発明の「その煙吸引排出部から室内側へ片持ち状に延出するとともに、底面がほぼ全体にわたって矩形状に開口しかつグリスフィルタで塞がれる煙導入口を有し、その煙導入口から吸い込まれた煙を前記煙吸引排出部へ導くために延出方向に延設される煙吸引導入通路を含むダクト状の煙導入部」とは、煙吸引排出部から室内側へ片持ち状に延出するとともに、底面がほぼ全体にわたって矩形状に開口する煙導入口を有し、その煙導入口から吸い込まれた煙を前記煙吸引排出部へ導くために延出方向である左右方向に延設される煙吸引導入通路を含むダクト状の煙導入部である点で共通する。
(c)引用発明の「板状物(15)」が「下端部分(8)内に」「断面略コ字型の板状物(15)が、下端部分(8)の内部を手前から奥に向かう方向に対して直交する断面を区画する形態、かつ、上記上方部分の下方開放部の近傍から手前方向に延設される形で設けられ」る構成は、本願補正発明の「案内ダクト」が「煙吸引導入通路の流れ方向直交断面を区画する形態で前記煙導入部の内部に配置される」構成に相当する。
また、引用発明の「板状物(15)」の「上方部分の下方開放部の近傍から手前方向に延設される形で設けられ」る構成と、本願補正発明の「案内ダクト」が「前記煙吸引排出部近傍から左右方向に延設され前記煙導入口の左右方向先端部側に臨む」構成とは、煙吸引排出部近傍から前記延出方向に延設され前記煙導入口の前記延出方向先端部側に臨む構成において共通する。
そうすると、引用発明の「板状物(15)」と、本願補正発明の「前記煙吸引導入通路の流れ方向直交断面を区画する形態で前記煙導入部の内部に配置されるとともに、前記煙吸引排出部近傍から左右方向に延設され前記煙導入口の左右方向先端部側に臨む案内ダクト」とは、煙吸引導入通路の流れ方向直交断面を区画する形態で前記煙導入部の内部に配置されるとともに、前記煙吸引排出部近傍から前記延出方向に延設され前記煙導入口の前記延出方向先端部側に臨む案内ダクトである点で共通する。
(d)引用発明の「上側の区画」の「補助開口(9)の手前側の下端縁からも油煙が容易に吸引されるようにする機能を生ずる補助ダクト(10)となる油煙の流路」と、本願補正発明の「前記煙吸引排出部から所定距離を超えて先端部側の煙導入口に位置する煙を、自身の内側を通り前記煙吸引排出部側へ向かう左右方向の径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第二の流路」とは、前者の「補助開口(9)の手前側の下端縁」からの煙が、後者の「前記煙吸引排出部から所定距離を超えて先端部側の煙導入口に位置する煙」に相当するものであり、前者はそれを「補助ダクト(10)となる油煙の流路」で吸引するものであるので、両者は、煙吸引排出部から所定距離を超えて先端部側の煙導入口に位置する煙を、自身の内側を通り前記煙吸引排出部側へ向かう径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する流路である点において共通するものである。
また、引用発明の「下側の区画」の「主開口(3)及び補助開口(9)の下端縁からの油煙のうち上側の区画を通る油煙以外の油煙を吸引する流路」と、本願補正発明の「前記煙吸引排出部から所定距離以内の基端部側の煙導入口に位置する煙を、そのまま前記煙吸引排出部側へ向かう左右方向の径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第一の流路」とは、前者の「上側の区画を通る油煙以外の油煙」が、主開口(3)及び補助開口(9)の基端部側から吸引されたものであることが自明であるので、後者の「煙吸引排出部から所定距離以内の基端部側の煙導入口に位置する煙」に相当するものであり、前者はそれを吸引するものであるので、両者は、煙吸引排出部から所定距離以内の基端部側の煙導入口に位置する煙を、そのまま前記煙吸引排出部側へ向かうの径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する流路である点において共通するものである。
また、引用発明の「板状物(15)の奥側の端部が、上記上方部分の下方開放部の内側まで突入する形態で配置されており、
板状物(15)の手前側の端部側で、上記矩形状の開口に沿って開口する部分が、上記矩形状の開口の手前側端部との間に、隙間として形成される」ことと、本願補正発明の「前記煙導入口の左右方向基端部側にて前記煙吸引排出部に突入する突入長さL1よりも、前記煙導入口の左右方向先端部側にて当該煙導入口に沿って開口する開口長さL2が大きくなるように配置されている」こととは、前記煙導入口の基端部側にて前記煙吸引排出部に突入する部分と、前記煙導入口の先端部側にて当該煙導入口に沿って開口する隙間とを生ずるように配置されている点において共通する。
そうすると、引用発明の「板状物(15)は、
下端部分(8)の内部を手前から奥に向かう方向に対して直交する断面を区画し、
その上側の区画は、補助開口(9)の手前側の下端縁からも油煙が容易に吸引されるようにする機能を生ずる補助ダクト(10)となる油煙の流路であって、
その下側の区画は、主開口(3)及び補助開口(9)の下端縁からの油煙のうち上側の区画を通る油煙以外の油煙を吸引する流路であって、
板状物(15)の奥側の端部が、上記上方部分の下方開放部の内側まで突入する形態で配置されており、
板状物(15)の手前側の端部側で、上記矩形状の開口に沿って開口する部分が、上記矩形状の開口の手前側端部との間に、隙間として形成されるものである」ことと、本願補正発明の「前記案内ダクトは、
前記煙吸引排出部から所定距離以内の基端部側の煙導入口に位置する煙を、そのまま前記煙吸引排出部側へ向かう左右方向の径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第一の流路と、
前記煙吸引排出部から所定距離を超えて先端部側の煙導入口に位置する煙を、自身の内側を通り前記煙吸引排出部側へ向かう左右方向の径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第二の流路と、
に前記煙吸引導入通路を区分するとともに、
前記煙導入口の左右方向基端部側にて前記煙吸引排出部に突入する突入長さL1よりも、前記煙導入口の左右方向先端部側にて当該煙導入口に沿って開口する開口長さL2が大きくなるように配置されている」こととは、
「案内ダクトは、
煙吸引排出部から所定距離以内の基端部側の煙導入口に位置する煙を、そのまま前記煙吸引排出部側へ向かう径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第一の流路と、
煙吸引排出部から所定距離を超えて先端部側の煙導入口に位置する煙を、自身の内側を通り前記煙吸引排出部側へ向かう径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第二の流路と、
に前記煙吸引導入通路を区分するとともに、
前記煙導入口の基端部側にて前記煙吸引排出部に突入する部分と、前記煙導入口の先端部側にて当該煙導入口に沿って開口する隙間とを生ずるように配置されている」点で共通する。

(2)両発明の一致点
「台所の側壁側に位置する煙吸引排出部と、
その煙吸引排出部から室内側へ片持ち状に延出するとともに、底面がほぼ全体にわたって矩形状に開口する煙導入口を有し、その煙導入口から吸い込まれた煙を前記煙吸引排出部へ導くために延出方向に延設される煙吸引導入通路を含むダクト状の煙導入部と、
前記煙吸引導入通路の流れ方向直交断面を区画する形態で前記煙導入部の内部に配置されるとともに、前記煙吸引排出部近傍から前記延出方向に延設され前記煙導入口の前記延出方向先端部側に臨む案内ダクトとを備え、
前記案内ダクトは、
前記煙吸引排出部から所定距離以内の基端部側の煙導入口に位置する煙を、そのまま前記煙吸引排出部側へ向かう径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第一の流路と、
煙吸引排出部から所定距離を超えて先端部側の煙導入口に位置する煙を、自身の内側を通り前記煙吸引排出部側へ向かう径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第二の流路と、
に前記煙吸引導入通路を区分するとともに、
前記煙導入口の基端部側にて前記煙吸引排出部に突入する部分と、前記煙導入口の先端部側にて当該煙導入口に沿って開口する隙間とを生ずるように配置されていることを特徴とするレンジフード。」

(3)両発明の相違点
ア.本願補正発明は煙吸引排出部の煙導入口が、「グリスフィルタで塞がれる」のものであるのに対して、引用発明は、そうでない点。
イ.本願補正発明は案内ダクトの延出方向が、「左右方向」であり、煙導入口の基端部側が、「煙導入口の左右方向基端部側」であるのに対して、引用発明は、「左右方向」との形で特定されたものでない点。
ウ.本願補正発明は案内ダクトが、「前記煙吸引排出部から所定距離以内の基端部側の煙導入口に位置する煙を、そのまま前記煙吸引排出部側へ向かう左右方向の径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第一の流路と、
前記煙吸引排出部から所定距離を超えて先端部側の煙導入口に位置する煙を、自身の内側を通り前記煙吸引排出部側へ向かう左右方向の径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第二の流路と、
に前記煙吸引導入通路を区分する」ものであるのに対して、引用発明の上側の区画の「油煙の流路」と下側の区画の「油煙の流路」とは、「左右方向の径路」を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入すると特定されていない点。
エ.本願補正発明は案内ダクトが、「前記煙導入口の左右方向基端部側にて前記煙吸引排出部に突入する突入長さL1よりも、前記煙導入口の左右方向先端部側にて当該煙導入口に沿って開口する開口長さL2が大きくなるように配置されている」のに対して、引用発明は、そのように特定したものでない点。

4.容易想到性の検討
(1)相違点ア.について
開口部全面をグリスフィルタで塞いだレンジフードは、例えば、実願平4-74552号(実開平6-40741号)のCD-ROM、実願平4-74553号(実開平6-40743号)のCD-ROM、特開昭59-93136号公報、特開平10-170046号公報に記載されているように従来周知慣用のものであり、引用発明のレンジフードを周知慣用のものとして、相違点ア.に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点イ.ウ.について
引用発明の「手前側に突出させた突出部分(7)」の突出方向、及び「油煙の流路」の方向は、刊行物の【図4】において、手前側が右に、奥側が左に記載されている様に左右方向ともいえるものである。
さらに、方向を表現するにあたり、その座標軸は適宜選択されるものでもあるので、引用発明の突出部分(7)の突出方向を「左右方向」と表現するか、別の座標で表現するかは、単なる表現上の違いであって実質的な相違ではなく、相違点イ.ウ.は、実質的な相違点ではない。
なお、例えば、特開2003-235658号公報【図6】でも、レンジフードのフード延出方向を、(左)(右)としている様に、上記座標自体も既知のものである。

(3)相違点エ.について
まず、引用発明の「上方部分の下方開放部の内側まで突入する」部分が「突入長さ」を有するものであることは自明である。
また、引用発明の「板状物(15)の手前側の端部側で、上記矩形状の開口に沿って開口する部分が、上記矩形状の開口の手前側端部との間に、隙間として形成される」の隙間が、「補助開口の上記手前側の下端縁からも油煙が吸引される」ときの流路となるものであることは、引用発明の全体構成から見て明らかなことである。
そして、流体機器の設計において、必要な流量を確保するために流路を充分な断面積とすることが技術常識である以上、必要な流量を確保するために、引用発明の上記「隙間」である「開口」を充分な広さとして、結果として、相違点エ.に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
またさらに、引用発明は、記載事項(ウ)に「レンジフードにおいて・・(中略)・・一旦フード本体(1)内に入った油煙が、図中の矢印に示されるごとく、うず流になったりして、容易にフード本体(1)外に漏れてしまうものであった。・・(中略)・・本発明は、・・(中略)・・油煙もれを少なくすることができるレンジフードを提供することにある。」と記載されている様に、フード部からの油煙もれを少なくすることも意図したものでもあるが、例えば、特開平11-287491号公報の【0019】に「側面側捕集空間22の幅が大きくなり空間容積が大きくなることにより油煙や排ガスを大量に捕集できる」と記載されている様に、引用発明の上記「隙間」の幅が大きいことが、フード部からの油煙もれを少なくするため望ましいことと認識されているものであることからも、フード部からの油煙もれを少なくするために、引用発明の上記「隙間」を充分な幅として、結果として、相違点エ.に係る発明特定事項とすることも当業者が容易に想到し得たことといえることである。

(4)総合判断
そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明、及び当業者に周知の事項から、当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、及び当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成21年3月24日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成20年12月4日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
台所の側壁側に位置する煙吸引排出部と、
その煙吸引排出部から室内側へ片持ち状に延出するとともに、底面がほぼ全体にわたって矩形状に開口しかつグリスフィルタで塞がれる煙導入口を有し、その煙導入口から吸い込まれた煙を前記煙吸引排出部へ導くために延出方向である左右方向に延設される煙吸引導入通路を含むダクト状の煙導入部と、
前記煙吸引導入通路の流れ方向直交断面を区画する形態で前記煙導入部の内部に配置されるとともに、前記煙吸引排出部近傍から左右方向に延設され前記煙導入口の左右方向先端部側に臨む案内ダクトとを備え、
前記案内ダクトは、
前記煙吸引排出部から所定距離以内の基端部側の煙導入口に位置する煙を、そのまま前記煙吸引排出部側へ向かう左右方向の径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第一の流路と、
前記煙吸引排出部から所定距離を超えて先端部側の煙導入口に位置する煙を、自身の内側を通り前記煙吸引排出部側へ向かう左右方向の径路を経て当該煙吸引排出部へ案内・導入する第二の流路と、
に前記煙吸引導入通路を区分することを特徴とするレンジフード。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2 3.」以下に記載したとおり、引用発明、及び当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明を上位概念化した本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明、及び当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-04 
結審通知日 2010-11-05 
審決日 2010-11-18 
出願番号 特願2004-136638(P2004-136638)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F24F)
P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 礒部 賢  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 青木 良憲
中川 真一
発明の名称 レンジフード  
代理人 菅原 正倫  

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