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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16K
管理番号 1229744
審判番号 不服2009-8458  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-20 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 特願2006-346525「レギュレータ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年7月10日出願公開、特開2008-157350〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成18年12月22日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は特許を受けることができないとして、平成21年3月23日付けで拒絶査定がされたところ、平成21年4月20日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成20年11月17日付け、及び平成22年6月7日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。なお、平成21年3月2日付けの手続補正は、前審において平成21年3月23日付けで決定をもって却下されるとともに、平成21年5月12日付けの手続補正は、当審において平成22年4月23日付けで決定をもって却下された。
「【請求項1】
流体を設定圧力に制御するレギュレータにおいて、
第1圧力室と第2圧力室を有する流路ブロックを備え、
弁体は、前記第1圧力室の壁面との間に空間を有するものであり、
前記弁体が当接又は離間する弁座部の材質が、
硬度がD70以下であり、
引張伸び率が、温度23°Cの条件下で、250%以上である、
フッ素樹脂のPFA又はPTFE材で構成するとともに、
前記弁座部の材質により、前記弁体と前記弁座部との当接により生ずる前記弁座部の摩耗の偏りを小さくして、片当たりを防止すること、及び、
引張伸び率が大きいので、弁体の吸着力が徐々に減少し、摩耗の進行速度が遅いこと、
前記片当たりの防止、及び前記摩耗の進行速度を遅くしたことにより、パーティクルの発生を少なくしたこと、
を特徴とするレギュレータ。」

2.本願の出願前に日本国内において頒布され、当審において平成22年4月23日付けで通知した拒絶理由に引用された刊行物及びその記載事項
(1)刊行物1:特開2005-128697号公報
(2)刊行物2:里川孝臣編、「ふっ素樹脂ハンドブック」、初版第1刷、日刊工業新聞社、1990年11月30日、p.66,67,158?161,289,290,315及び316
(3)刊行物3:特開平10-20942号公報
(4)刊行物4:特開2002-228023号公報
(5)刊行物5:実公昭55-16205号公報

(刊行物1)
刊行物1には、「ガスレギュレータ」に関して、図面(特に、図1及び2を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(a)「本発明は、ガス容器から供給される作用ガスの圧力を必要なガス圧に制御するガスレギュレータに関する。」(第1頁第28?29行、段落【0001】参照)
(b)「ダイアフラム211が振動すると出力圧が不安定となることに加え、弁体209が弁部材208に当接する回数が異常に増加し、パーティクルの発生とシール不良とを起こす恐れがあり、問題であった。(中略)
Oリング等により摺動抵抗を与えると、第1には、パーティクルを発生する問題があり、半導体製造工程等においては、そのようなガスレギュレータを使用することができなかった。(中略)
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、パーティクルを発生することなく、経時的にも変化することのなく安定して振動を防止することができ、ヒステリシスを増加させないガスレギュレータを提供することを目的とする。」(第3頁第17?44行、段落【0005】?【0008】参照)
(c)「ガスレギュレータ1は、例えば、常温で液化する作用ガスを真空引きして気化するシステムに用いられる。ガスレギュレータ1は、作用ガスの流路を形成された流路ブロック2に、第1シリンダ部3と第2シリンダ部4とを連結したシリンダ5が螺合接続されて「ハウジング」を構成され、第2シリンダ部4に調整ハンドル6が回転可能に取り付けられている。流路ブロック2に内設された弁体7は、ダイアフラム8と分離して設けられたフリーポペット構造になっており、調整ハンドル6を回転させることにより調整機構9がダイアフラム8に付加する外圧を調整し、作用ガスの設定圧力を設定できるよう構成されている。
流路ブロック2は、ガス容器に接続される入力ポート11と、真空ポンプ側に接続される出力ポート12とが設けられ、弁体7を収納する第1圧力室13が入力ポート11と連通するよう形成されるとともに、上方に開口する凹部14が第1圧力室13と出力ポート12とを連通するよう形成されている。流路ブロック2の凹部14は、第1圧力室13と連通する部分に、PCTFE(三フッ化塩化エチレン)等の樹脂を材質とする弁座15を配置され、弁座15にシートホルダ16、ダイアフラム8、ダイアフラム押さえ17を順次積層されて、第1シリンダ部3を螺合接続されている。
これにより、ダイアフラム8は、シートホルダ16とダイアフラム押さえ17との間で狭持されて流路ブロック2の凹部14を気密に被覆し、第2圧力室18を形成している。」(第4頁第34?第5頁第2行、段落【0012】?【0014】参照)
(d)図1及び2から、弁体7は、第1圧力室13の壁面との間に空間を有することが看取できる。
したがって、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
【引用発明】
作用ガスを設定圧力に制御するガスレギュレータ1において、
第1圧力室13と第2圧力室18を有する流路ブロック2を備え、
弁体7は、前記第1圧力室13の壁面との間に空間を有するものであり、
前記弁体7が当接又は離間する弁座15の材質が、フッ素樹脂のPCTFE材等で構成されるガスレギュレータ1。

(刊行物2)
刊行物2には、「1.3 PTFEの物性」及び「1.5 PTFEの応用」に関して、図面(図II.1.36)とともに、下記の技術的事項が記載されている。また、「3.2 PFAの構造と物性」、及び「3.4 PFAの応用」に関して、図面(図II.3.4)及び表(表II.3.3)とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(e)図II.1.36には、「PTFE成形品における破壊伸びの温度変化」が記載され、PTFEの伸びが、23℃において約300%となっていることが看取できる。(第66頁)
(f)「(4)バルブ・コック部分としての応用
PTFEの優れた耐薬品性,非粘着性,低摩擦性などを応用して数多くのバルブ,コックが商品化されている。(中略)PTFEは耐薬品性,低摩擦性,適度の弾性を持つなどからバルブシート材として最適の材質とされており」(第158頁第6?13行)
(g)第289頁の「表II3.3 PFAの代表的な機械的性質」には、PFA及びPTFEの硬さ(デュロメーター)が、それぞれ、D-55、D50?55と記載されるとともに、伸び(23℃)が、それぞれ、300、300と記載されている。
(h)図II.3.4には、「PFAの伸びと温度との関係」が記載され、PFAの伸びが、23℃において約300%となっていることが看取できる。(第290頁)
(i)「PFAはすでに3.2節で述べたようにPTFEが持っているすぐれた諸特性,すなわち,耐化学薬品性,電気的特性,低摩擦性,非粘着性,不燃性および耐熱性などの特性をすべて備えており,しかも,FEPと同様に溶融成形可能な樹脂である。(中略)
PFAのもつ優れた特性,すなわち耐化学薬品性,液体を汚染しない性質,耐熱性,非粘着性等が組合わせ利用される。(中略)
(2)ライニングバルブ
接液部にPFAのライニングを施し,他の部分にPTFEが使用されている各種バルブがある。例えば,ボールバルブではシール部分,ダイヤフラムバルブでは膜,チェックバルブではボール材にPTFEが使用されている。」(第315頁下から第7行?第316頁第21行)

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「作用ガス」は本願発明の「流体」に相当し、以下同様にして、「ガスレギュレータ1」は「レギュレータ」に、「第1圧力室13」は「第1圧力室」に、「第2圧力室18」は「第2圧力室」に、「流路ブロック2」は「流路ブロック」に、「弁体7」は「弁体」に、「弁座15」は「弁座部」に、それぞれ相当するので、両者は下記の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
流体を設定圧力に制御するレギュレータにおいて、
第1圧力室と第2圧力室を有する流路ブロックを備え、
弁体は、前記第1圧力室の壁面との間に空間を有するものであり、
前記弁体が当接又は離間する弁座部の材質が、フッ素樹脂で構成されるレギュレータ。
(相違点)
本願発明は、「弁座部の材質が、
硬度がD70以下であり、
引張伸び率が、温度23°Cの条件下で、250%以上である、
フッ素樹脂のPFA又はPTFE材で構成するとともに、
前記弁座部の材質により、前記弁体と前記弁座部との当接により生ずる前記弁座部の摩耗の偏りを小さくして、片当たりを防止すること、及び、
引張伸び率が大きいので、弁体の吸着力が徐々に減少し、摩耗の進行速度が遅いこと、
前記片当たりの防止、及び前記摩耗の進行速度を遅くしたことにより、パーティクルの発生を少なくした」のに対し、引用発明は、フッ素樹脂のPCTFE材等で構成され、本願発明の上記構成を具備していない点。
そこで、上記相違点について検討する。
(相違点について)
刊行物2には、PTFE及びPFA材の物性について記載され、上記摘記事項(e)、(g)及び(h)から、PTFE及びPFA材は、「硬度がD70以下であり、引張伸び率が、温度23°Cの条件下で、250%以上である」という特性を備えていることが明記されているとともに、刊行物2には、PTFE及びPFA材の応用についても記載され、上記摘記事項(f)及び(i)から、PTFE又はPFA材は、バルブシート材として最適の材質であることが記載又は示唆されている。
また、PTFE又はPFA材を弁座部の材料として用いることは、例えば、刊行物3に「圧力調整器においては、その弁機構を構成するノズルとシートの接触面の少なくとも一方が、弾力性を有する樹脂にて形成され、この弁機構の高いシール性が得られるようになっている。(中略)前記樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン(略称:PTFE)を用いることが一般的である。」(段落【0013】参照)と記載され、刊行物4に、「弁座が硬度D50-65のテフロン樹脂からなり、弁座の半径方向厚さが弁体の直径の4-30%の厚さであることが好ましい(中略)上記構成によれば、弁座は適度の剛性を発揮する。」(段落【0012】及び【0013】参照)と記載され、また、刊行物5に、「PTFEはその公知の化学的不活性および低摩擦係数のために、この種の予じめ形成した外被の好ましい材料である。」(第3頁第5欄第14?16行)と記載されていることからも明らかなように、従来周知の技術手段にすぎない。
刊行物1の図1及び2に記載されたガスレギュレータ1のように、弁体7が復帰バネ19に載せられていて摺動部を備えていない場合には、弁体7が不安定で傾きやすく、その場合、弁体7が弁座15に片当たりをすれば、弁座15の摩耗が進行し、弁座15の摩耗が進行すれば、弁体7が更に片当たりすることになり、弁座15が次第に劣化して、パーティクルが発生したり、ひいては漏れにつながる原因となることは、技術的に自明の事項にすぎない。
一方、刊行物1には、「ダイアフラム211が振動すると出力圧が不安定となることに加え、弁体209が弁部材208に当接する回数が異常に増加し、パーティクルの発生とシール不良とを起こす恐れがあり、問題であった。(中略)Oリング等により摺動抵抗を与えると、第1には、パーティクルを発生する問題があり、半導体製造工程等においては、そのようなガスレギュレータを使用することができなかった。(中略)本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、パーティクルを発生することな(中略)いガスレギュレータを提供することを目的とする。」(上記摘記事項(b)参照)と記載されていることから、半導体製造工程等において、パーティクルの発生の少ないガスレギュレータを開発することが、技術的課題(動機付け)となっていることが記載又は示唆されている。
してみれば、引用発明における弁座15(本願発明の「弁座部」に対応する。以下同様。)に、上記刊行物2に記載又は示唆されるとともに、従来周知の技術手段であるPTFE又はPFA材を弁座部の材料として用いることは当業者が容易に想到し得ることであり、PTFE又はPFA材を弁座部の材料として用いた場合、PTFE又はPFA材は、他の材料(例えば、フッ素樹脂のPCTFE材)と比較して、硬度が低いため、弁体7と弁座15との当接により生ずる弁座15の摩耗の偏りが小さくなって片当たりしにくいし、また、引張伸び率が大きいことにより、弁体7の吸着力が徐々に減少し、摩耗の進行速度が遅くなることは、明らかである。
したがって、引用発明に、刊行物2に記載又は示唆された技術的事項及び従来周知の技術手段を適用することにより、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。
また、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明、刊行物2に記載された発明、及び従来周知の技術手段が奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明、並びに従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、当審における拒絶理由に対する平成22年6月7日付けの意見書において、「引用文献2(審決注:本審決の「刊行物2」に対応する。)を含むすべての引用文献に、請求項1の技術的本質である、前記片当たりの防止、及び前記摩耗の進行速度を遅くしたことにより、パーティクルの発生を少なくしたことについて、全く記載されていませんし、全く示唆もされていません。
パーティクルの発生を少なくすることにより、半導体の歩留まりを向上させることは、周知の技術であります。しかし、前記片当たりの防止、及び前記摩耗の進行速度を遅くしたことにより、パーティクルの発生を少なくすることについては、周知技術ではありません。特に、具体的手段として、前記弁座部の材質により、前記弁体と前記弁座部との当接により生ずる前記弁座部の摩耗の偏りを小さくして、片当たりを防止すること、及び、引張伸び率が大きいので、弁体の吸着力が徐々に減少し、摩耗の進行速度が遅いことにより、前記片当たりの防止、及び前記摩耗の進行速度を遅くしたことについては、現在挙げられている引用文献1乃至5(審決注:本審決の「刊行物1乃至5」に対応する。)には、全く記載されていませんし、また全く示唆されていません。」(「2.意見の内容」「(3)請求項1に係る発明の進歩性について」の項参照)と主張している。
しかしながら、上記(相違点について)において述べたように、本願発明は、引用発明に、刊行物2に記載された発明、及び従来周知の技術手段を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、本願発明の構成を備えることによって、本願発明が、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものとは異なる、相乗的で、当業者が予測できる範囲を超えた作用効果を奏するものとは認められないので、審判請求人の主張は採用することができない。

4.むすび
結局、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1及び2に記載された発明、並びに従来周知の技術手段に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の請求項2に係る発明について検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-12 
結審通知日 2010-08-17 
審決日 2010-11-16 
出願番号 特願2006-346525(P2006-346525)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 竜一細川 健人  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 藤村 聖子
常盤 務
発明の名称 レギュレータ  
代理人 特許業務法人コスモス特許事務所  
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