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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1229756
審判番号 不服2009-12306  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-06 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 特願2004-178141「トナーの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月 5日出願公開、特開2006- 3513〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年6月16日の出願であって、平成20年6月2日付で通知した拒絶理由通知に対して、平成20年8月7日付で手続補正書が提出され、拒絶査定がなされ、平成21年7月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされ、その後、審判において通知した審尋に対して平成22年1月28日付で回答書が提出されたものである。


2 平成21年7月6日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年7月6日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正事項
平成21年7月6日付の手続補正は、特許請求の範囲の請求項1について、
補正前の「液体媒体中でトナー粒子を形成し、該トナー粒子を濾取してウエットケーキを得、該ウエットケーキを超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有し、かつ該処理工程が、トナーの性能低下成分、水および/または有機溶媒を除去する工程であることを特徴とするトナーの製造方法。」を、
「分散剤の存在下、液体媒体中でトナー粒子を形成し、該トナー粒子を濾取してウエットケーキを得、該ウエットケーキを超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有し、かつ該処理工程が、前記トナー粒子に存在する分散剤を除去する工程であることを特徴とするトナーの製造方法。」
と補正しようとするものである。

この補正は、発明の特定事項である「液体媒体中でトナー粒子を形成し」を、「分散剤の存在下、液体媒体中でトナー粒子を形成し」に変更し、同じく発明の特定事項である「処理工程」について、除去するものを「トナーの性能低下成分、水および/または有機溶媒」から「トナー粒子に存在する分散剤」に変更するものである。

(2)補正の適否について
(a)補正の目的
ここで、「トナーの性能低下成分」を「分散剤」に変更することが適法かどうかが問題になる。
まず、補正前の「トナーの性能低下成分」について、本願明細書には「前記性能低下成分としては、該性能低下成分が、ウエットケーキのトナー粒子表面から除去されなかった場合と、除去された場合とを比較し、前記除去されなかった場合において、トナーの有する性能が低下乃至劣化する成分であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重合性単量体、分散安定剤、遊離脂肪酸、および界面活性剤などが挙げられる。これらの性能低下成分は、例えば、前記トナーの帯電性、環境安定性、流動性などを低下させる他、臭気を発生させるという問題を生ずる。」(段落【0019】)と記載されている。
また、補正後の「分散剤」は、その意味を限定的に解釈する理由はないから、本願明細書の段落【0094】?【0098】で例示されるものを少なくとも含むと解すべきである。
そして、前記「トナーの性能低下成分」と前記「分散剤」の関係は、本願明細書には「前記性能低下成分としては、・・・、例えば、重合性単量体、分散安定剤、遊離脂肪酸、および界面活性剤などが挙げられる。」(段落【0019】)とあるので、各種の「分散剤」の中には、界面活性剤など、「トナーの性能低下成分」に相当するものがあることは一応分かる。
しかし、本願明細書において、難水溶性の無機化合物の「分散剤」として例示する「酸化チタン」や「コロイダルシリカ」(段落【0098】)は、トナー製造時に外添剤として用いられ得るトナーの構成材料であり(例えば、特開平11-327194号公報の【請求項1】及び段落【0004】、特開平7-175273号公報の段落【0020】参照。)、残留してもトナーの性能が低下するとは必ずしもいえないものであり、また、高分子系保護コロイドの「分散剤」として例示する「(メタ)アクリル系単量体」のホモポリマーまたは共重合体(段落【0098】)は、トナー母体の結着樹脂となり得る成分であるから(例えば下記の引用例1:特開2001-296700号公報の段落【0027】等参照)、トナーに残留したときにトナーの性能が低下するとは断定し難いものである。つまり、ある程度残留することを予定しても特に問題ない種類の分散剤を、補正後の「分散剤」は包含しているといえる。
したがって、補正後の「分散剤」であれば全て、補正前の「トナーの性能低下成分」であると解することはできず、補正後の「分散剤」は、界面活性剤のような「トナーの性能低下成分」の外に、酸化チタンやコロイダルシリカなど、「トナーの性能低下成分」でない成分も含むものというべきである。

これに関して、請求人は、審尋の回答書において、分散剤は「トナーの構成成分としての添加でなく、トナーの性能向上に寄与するものではなく、また、トナー製造過程において目的の成分を分散させることができればその役目は終わり、できるだけ除去する方がよいことは当然であるから、“分散剤”は、トナーの性能を低下させる成分である」旨主張をしている(回答書2頁第3段落参照)。
しかし、本願明細書には、「分散剤」が「トナーの構成成分としての添加でない」「役目が終わったら除去が好ましい」ことは、明記されておらず、むしろ、「前記性能低下成分としては、該性能低下成分が、ウエットケーキのトナー粒子表面から除去されなかった場合と、除去された場合とを比較し、前記除去されなかった場合において、トナーの有する性能が低下乃至劣化する成分であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ」(段落【0019】)とされているから、「トナーの性能低下成分」の概念は柔軟であり、「分散剤」の例示としてされる酸化チタンやコロイダルシリカ等が「トナーの性能低下成分」の概念から除外される可能性を否定できない。
よって、補正後の請求項1における「分散剤」は、すべてトナーの性能を低下させる成分であるとする請求人の主張は、妥当でない。

以上のことから、請求項1において「トナーの性能低下成分」を「分散剤」とする変更は、「トナーの性能低下成分」でないものを加える変更である。
したがって、該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
また、該補正は請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものでもない。

(b)独立特許要件
次に、「トナーの性能低下成分」を「分散剤」とする補正が、仮に特許請求の範囲の減縮であるとして、独立特許要件も検討しておくと、補正後の請求項1に記載の「分散剤」に包含される酸化チタン等の「難水溶性の無機化合物」は、超臨界流体または亜臨界流体との接触で除去することができないものであるので(必要なら、前置報告書で引用した特開平11-216437号公報の段落【0010】、特開平10-135170号公報の段落【0007】参照)、補正後の請求項1に係る発明は、分散剤として「難水溶性の無機化合物」を使用したときに、実施すること(超臨界流体または亜臨界流体との接触で除去すること)ができない。また、発明の詳細な説明をみても、当業者がその実施ができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
また、実施できないものを含む補正後の請求項1は、発明が明確でないものでもある。
したがって、本願の特許請求の範囲および発明の詳細な説明の記載は不備があり、補正後の本願の請求項1に係る発明は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第2号に規定する要件を満たさないので、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお、請求人は、審尋の回答書で、分散剤を界面活性剤に限定する補正案を示しており、また、審判請求書では、特に、ウエットケーキで超臨界流体処理すると界面活性剤が除去できた点が予想外のことであった、界面活性剤が水分と共に除去できた等、縷縷説明しているが、出願当初の明細書には、説明がなかったことであり、実施例の評価をみても、界面活性剤が除去されることが確認されていない。
したがって、請求人のこれらの主張は、当初明細書の記載に基づくものではないのでそのまま採用することはできないし、また、補正の機会をさらに付与することは適切でない。

(3) むすび
上記(2)(a)の理由により、平成21年7月6日付の手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同じく同法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、特許請求の範囲の減縮を目的としたものと仮定した場合でも、平成21年7月6日付の手続補正は、上記(2)(b)の理由により、同法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、本件補正は、いずれにしても、却下すべきものである。


3 本願発明について
(1)本願発明
平成21年7月6日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成20年8月7日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりである。

「液体媒体中でトナー粒子を形成し、該トナー粒子を濾取してウエットケーキを得、該ウエットケーキを超臨界流体および亜臨界流体の少なくともいずれかと接触させる処理工程を有し、かつ該処理工程が、トナーの性能低下成分、水および/または有機溶媒を除去する工程であることを特徴とするトナーの製造方法。」

(2)引用刊行物の記載
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開2001-296700号公報(以下、「引用例1」という。)には、下記の事項が記載されている。

(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性懸濁液中にトナー粒子径の重合性単量体及びワックスを含む液滴を形成した後、該重合性単量体を重合せしめてトナー粒子を製造するトナー粒子の製造方法において、
トナー粒子中の溶媒および重合性単量体が1%以下になるまで該水性懸濁液中にあるいは過飽和の水蒸気存在下に保持した後、濾過して水性懸濁液中よりトナー粒子を取り出し、溶媒および/あるいは重合性単量体の低減操作を行うことを特徴とするトナー粒子の製造方法。・・・・・(略)・・・・・、
【請求項4】
該溶媒および/あるいは重合性単量体の低減操作として、水性懸濁液から回収したトナーをメタノール中に分散し、撹拌した後、濾過、乾燥を行なうことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー粒子の製造方法。」、

(b)「【0008】懸濁重合法は、懸濁重合法トナーも含めてその反応形態は重合が進むにつれて重合反応系の粘度が上がり、ラジカル及び重合性単量体の移動が困難になるため重合体中に重合性単量体成分が多く残留しがちである。特に懸濁重合法トナーの場合には、重合性単量体系中に染料、顔料(特にカーボンブラック)、荷電制御剤、磁性体等重合反応を抑制する可能性のある成分が重合性単量体以外に多量に存在するために、なおさら未反応の重合性単量体が残存しやすい。トナー中に重合性単量体に限らず結着樹脂に対して溶媒として働く成分があると、トナーの流動性を低下させ画質を悪くするほか、耐ブロッキング性の低下を招く。トナーとして直接関わりあう性能のほかにも、特に感光体として有機半導体を使用した場合にはドラムヘのトナーの融着現象以外にもメモリーゴーストや画像のボケといった感光体の劣化現象を生じることがある。こうした製品の性能に係わる事項以外にも、定着時に重合性単量体成分等が揮発して悪臭を発したりするという問題点がある。
・・・(中略)・・・
【0010】重合体の粘度を低下させて重合性単量体の移動度を上げる方法として(1)(当審注:これは丸数字の1である。以下、同様。)溶媒を添加する、(2)可塑剤を添加する、(3)連鎖移動剤を添加する、(4)温度を上げる等が考えられる。しかし、(1)(2)は重合終了時のトナーに問題が残る。(3)は粘度に効く高分子側の重合体の生成量を抑制し、同時にラジカルの量は減らさないとするものであるが今のところ充分な結果を得ていない。(4)は熱によって重合体を溶融させるとともに熱重合も起こさせるものであり、このとき高温で分解してラジカル種を発生する重合開始剤を共存させておくと尚一層効果的に重合性単量体を消費出来る。しかしこの方法では、重合トナーの場合には分散の安定と凝集の防止の点で困難がある。
【0011】そこで重合度を上げて重合性単量体を消費することから、重合性単量体蒸気を懸濁液中より回収しトナー中の残存重合性単量体をトナー系外に追い出すことにより残留重合性単量体量を減らすことが考えられるが、水中を通しての有機溶媒の拡散であるので非常に長時間を要する。時間を短縮するために、懸濁系を強く撹拌して拡散面積を増加させようとすると、空気を巻き込み泡を発生し、泡に付着する形でトナー粒子が懸濁液界面に浮上するため、トナー粒子同士の凝集、重合条件の変化等により、不良なトナーが発生する危険がある。
【0012】(略)
【0013】この他製造時間を短縮するための方法として、特開平1-303450号公報においては、懸濁重合法により得られた重合生成物を重合途上で単量体成分は溶解するが、重合体成分は溶解しない揮発性の高い有機溶媒中に浸漬して撹拌した後、該溶媒中から重合生成物を取り出し、乾燥する方法が提案されている。しかし、この方法は有機溶媒に可溶な成分をトナー中に入れることができない欠点を有する。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述のごとき問題を解決したトナー粒子の製造方法を提供することにある。
【0015】本発明の別の目的は、現像性に優れ、残存重合性単量体の少ないトナー粒子の製造方法を提供することにある。
【0016】本発明の他の目的は、粒度分布が狭く、流動性が高く、耐ブロッキング性の良好な、画質の良いトナーを効率よく製造する方法を提供することにある。」

(c)「【0039】
本発明のトナー製造方法では、一般に上述のトナー組成物、すなわち重合性単量体中に着色剤、離型剤、可塑剤、結着剤、荷電制御剤、架橋剤、磁性体等トナーとして必要な成分及びその他の添加剤、例えば重合反応で生成する重合体の粘度を低下させるために入れる有機溶媒、分散剤等を適宜加えて、・・・(略)・・・均一に溶解または分散せしめた単量体系を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。」、

(d)「【0041】
本発明の懸濁重合法においては、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機・無機分散剤が使用出来、中でも無機分散剤が有害な超微粉を生じ難く、・・・(略)・・・好ましく使用出来る。・・・・・(略)・・・・・」、

(e)「【0045】
前記重合工程においては、重合温度は40℃以上、一般には50?90℃の温度に設定して重合を行なう。この温度範囲で重合を行なうと、内部に封じられるべき離型剤やワックスの類が、相分離により析出して内包化がより完全となる。・・・・・(略)・・・・・。
【0046】
前記条件下では重合転化率90%まではほぼ直線的に転化率は上がるが、トナーが固形化する90%以上では重合度の上昇が鈍り、重合転化率95%以上では非常に遅くなる。この時点で、トナーとしては既に充分な分子量範囲にあるので、重合性単量体の除去作業を進めるほうが効率的である。最終的には少なくとも1000ppm以下、より望ましくは100ppm以下にする。
【0047】重合転化率、残留重合性単量体量、及び残留有機溶媒量の定量は、ガスクロマトグラフィーにて以下の条件で各物質のピーク面積を求めて測定した。測定は、試料中に重合禁止剤を添加し、芒硝乾燥後0.2gをTHF4mlに溶解して行なった。」、

(f)「【0053】
【実施例】実施例1
イオン交換水709gに、0.1M-Na_(3)PO_(4)水溶液451gを投入し、60℃に加温した後、1.0M-CaCl_(2)水溶液67.7gを徐々に添加してCa_(3)(PO_(4))_(2)を含む水系媒体を得た。
・・・(中略)・・・
【0062】
実施例2
実施例1と同様にして水系媒体を調製した。
【0063】
スチレン 170g
2-エチルヘキシルアクリレート 30g
グラフト化カーボンブラック 10g
スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル
(85:5:10)分子量(Mw=5万8000) 5g
パラフィンワックス(mp.70℃) 15g
ジメチルシリコーンオイル(300cst) 5g
ジ-t-ブチルサリチル酸クロム錯体 5g
上記処方を、コロイドミルにて均一に分散、溶解した。60℃に昇温した後、これに重合開始剤2、2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)[t1/2 =140min.at60℃]10g、及びジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート[t1/2 =1、270min.at60℃、t1/2 =80min.at80℃]1.5gを溶解し、重合性単量体系を調製した。
【0064】
前記水系媒体中に上記重合性単量体系を投入し、60℃,N_(2)雰囲気下においてTK式ホモミキサーにて10、000rpmで20分間撹拌し、トナー粒子サイズの懸濁液滴を造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、60℃で5時間反応させた。この時点での重合添加率は95%であった。その後、水蒸気の還流を止めて、液温を80℃とし更に5時間撹拌を続けた。反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えてCa_(3)(PO_(4))_(2)を溶解し、濾過、水洗、乾燥して重量平均径=8.5μmの重合トナーを得た。この時点で、残留重合性単量体量は7、000ppm(残留溶媒0ppm)であった。次ぎに、このトナーを4倍量のメタノール中に分散し20分間撹拌した後濾過、乾燥した。この時点での残留重合性単量体量は180ppmであった。このトナーを実施例1と同様にして外添トナー、現像剤を調製し、同様に画出しを行なった。鮮映で、濃度の高い画像を得た。定着も良好で、オフセット現象も見られなかった。この現像剤を35℃/80RHの環境に1か月間放置したが、初期と変わらぬ良好な画質であった。」、

なお、上記摘示における下線は当審において引いたものである。

上記摘示(a)(b)及び(c)の記載によれば、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

「水性懸濁液中に重合性単量体及びワックスを含む液滴を形成した後、該重合性単量体を重合せしめてトナー粒子を製造するトナー粒子の製造方法において、
トナー粒子中の溶媒および重合性単量体が1%以下になるまで該水性懸濁液中にあるいは過飽和の水蒸気存在下に保持した後、濾過して水性懸濁液中よりトナー粒子を取り出し、その後、水性懸濁液から回収したトナーをメタノール中に分散し、撹拌した後、濾過、乾燥を行なうことで、トナー粒子に付着する溶媒および/あるいは重合性単量体を低減する操作を行う、トナー粒子の製造方法。」

(3)対比、判断
そこで、本願発明1と引用例1記載の発明とを比較すると、
(ア)引用例1記載の発明の「水性懸濁液」、「濾過して水性懸濁液中よりトナー粒子を取り出し」、「トナー粒子に付着する溶媒を低減する」、「トナー粒子中の溶媒」は、それぞれ本願発明1の、その中でトナー粒子が形成される「液体媒体」、「トナー粒子を濾取し」、「有機溶媒を除去する」、「トナーの有機溶媒」に相当すること(なお、引用例1記載の発明の「溶媒」は、引用例1の【0039】【0047】等の記載から、有機溶媒であることは明らかである。)、

(イ)引用例1記載の発明の「重合性単量体」は、本願発明1の「トナーの性能低下成分」に包含されるから(本願明細書の段落【0019】参照)、両者は「トナーの性能低下成分」である点で一致すること、

(ウ)本願発明1は、トナー粒子を形成する過程に限定を設けずトナー粒子が形成されれば何でもよいとするから、引用例1記載の発明におけるような「過飽和の水蒸気存在下に保持」しトナー粒子を製造するものも包含されること、

(エ)引用例1記載の発明において、「回収したトナーをメタノール中に分散し」が、濾取したトナー粒子の処理工程であること、「メタノール」が流体であることは自明であること、
から両者の間には、以下の一致点および相違点がある。

[一致点]
液体媒体中でトナー粒子を形成し、該トナー粒子を濾取し、それを流体で処理する処理工程を有し、かつ該処理工程が、トナーの性能低下成分および有機溶媒を除去する工程であるトナーの製造方法、
である点。

[相違点1]
本願発明1は、トナー粒子を形成後、それを濾取して得たウエットケーキを流体で処理するのに対して、引用例1記載の発明は、水性懸濁液中よりトナー粒子を取り出し、回収したトナーを処理するが、回収したトナーがウエットケーキであるかどうか不明である点(以下「相違点1」という。)。

[相違点2]
本願発明1は、処理工程で濾取したウエットケーキに接触させる流体として超臨界流体および亜臨界流体のいずれかを用いるのに対して、引用例1記載の発明は、流体としてメタノールを用いるもので、回収したトナーの処理に超臨界流体および亜臨界流体のいずれかを用いるものではない点(以下「相違点2」という。)。

これらの点について検討する。

(相違点1について)
引用例1の実施例2では、水性懸濁液から取り出したトナー粒子をメタノールで処理する前に乾燥しているが、引用例1の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明ではメタノールでの処理に際し乾燥が必須であるとは記載されてない。このことは、目的が達成できる限りメタノール処理に際しての含水程度は問題にならないことを示していると言える。
また、濾取したトナー粒子の有機溶剤による洗浄処理を、トナー粒子に水分が残っている状態で行なうことは周知である(例えば、本願明細書の従来例である特開平2-64652号公報の7頁左上欄、特開平2-245768号公報6頁右上欄参照。)
したがって、引用例1記載の発明において、トナー粒子が水分を含むウエットケーキの状態のときに流体による洗浄処理をすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点2について)
引用例1において、水性懸濁液から取り出したトナー粒子のメタノール(流体)による洗浄処理は、トナー粒子に残存すると現像性能を低下させたり、不快臭の原因になる重合性単量体(未反応モノマー)を除去するために行われるものである(段落【0008】、【0014】、【0015】)。
そして、技術分野は異なるが、モノマーを重合させて得られる重合物品(例えば、特表平11-500078号公報の13頁「医用のデバイス」等の記載、特開平11-119169号公報の「コンタクトレンズ」の記載参照。)を、超臨界流体で洗浄処理し残存する未反応モノマー(即ち、重合性単量体)等を除去することは、周知である。
未反応モノマーの除去は、超臨界流体が未反応モノマーを溶かすという性質の利用であるから特定の重合物品や材料でないと超臨界流体が使えないというものでなく、周知技術で示される重合物品以外の物品や材料に対しても抽出剤として適用できることは言うまでもない。
したがって、上記周知技術と同様に未反応モノマーを除去する課題がある刊行物1記載の発明において、周知技術の手法を応用することに困難性はないから、
刊行物1記載の発明において、メタノールに換えて周知の超臨界流体を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明1は、トナー粒子のウエットケーキを超臨界流体または亜臨界流体で処理することにより、トナーの性能低下成分(段落【0019】では、重合性単量体、界面活性剤などが例示されている。)、水、有機溶媒が除去されるものであるが、
超臨界流体または亜臨界流体の処理により、重合性単量体(トナー性能低下成分の代表例)と有機溶媒が除去できることについては、周知(例えば、前記の特表平11-500078号公報、特開平11-119169号公報参照。)または技術常識であり、
超臨界流体または亜臨界流体の処理により、水が除去できることについては、まず、本願発明1は、濾取したトナー粒子を完全に除去(含水率が実質的に0%)するものであるとまでは規定しておらず、また、本願明細書の実施例をみても、ほぼ除去(含水率1質量%。段落【0152】参照)したものをあげているにとどまるから、本願発明1では水の除去は完全なものでなくてもよいのである。そして、物体に付着した水が超臨界流体で除去されることも、知られている(必要なら、例えば特開平10-192773号公報参照)。
したがって、トナー粒子のウエットケーキを超臨界流体または亜臨界流体で処理することにより、トナーの性能低下成分(重合性単量体)、水、有機溶媒が除去されることは、十分に予測されることである。

また、超臨界流体または亜臨界流体による処理を、トナー粒子がウエットケーキの状態で行うことについては、上記(相違点1について)で検討したように、有機溶剤による洗浄処理では周知であることに加えて、一般に、溶液中で合成し濾取して得られる固形の含水物を乾燥せずに直ちに次の必要な流体処理ができれば、作業効率が上がるという利点があることは自明であるから、作業効率も考慮して、当業者が容易に採用し得ることである。

以上のことから、刊行物1記載の発明において、相違点2に係る本願発明1のごとくなすことは、当業者が容易になし得ることである。

(請求人の主張について)
請求人は、審判請求書で、トナー粒子のウエットケーキを超臨界流体処理すると、界面活性剤(トナー性能低下成分)が除去できた、予想に反しワックスは除去されなかった、界面活性剤が水分と共に除去できた、等を述べ、本願発明は予期せぬ効果を見出したものである旨説明しているが、当初明細書にはない新たな知見を審判請求書で初めて明らかにしたものであり、そのような説明、主張は採用できない。
なお、一応、界面活性剤について言及しておくと、当初明細書では、界面活性剤がどの程度除去できるかについて、全く記載しておらず、実施例では、「臭気」「画像濃度」「感光体への融着」の評価をしているが、「臭気」低減が未反応の重合性モノマーの除去によることが分かるだけで、界面活性剤の除去に着目して直接的に確認していない。審判請求書の実験結果も、当初明細書で開示した内容でないうえに、トナー粒子における界面活性剤の除去を直接測定していないので、どの程度除去できるか不明である。例えば、超臨界二酸化炭素で処理する前後での「ウェットケーキ水分中の界面活性剤濃度」を比較しているが、処理により水分も除去されるのであるから、界面活性剤の水中への移動が進展しないときでも、処理後の「ウェットケーキ水分中の界面活性剤濃度」が高くなることがあるので、「処理後水分中の界面活性剤濃度が高いということは、それだけ、トナー粒子に存在する界面活性剤が水中に移動し、除去された」とは必ずしもいえない。

(まとめ)
よって、本願発明1は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


(4)むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-27 
結審通知日 2010-11-02 
審決日 2010-11-17 
出願番号 特願2004-178141(P2004-178141)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 536- Z (G03G)
P 1 8・ 572- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
P 1 8・ 537- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 雅雄  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 一宮 誠
伏見 隆夫
発明の名称 トナーの製造方法  
代理人 舘野 千惠子  
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