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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1229765
審判番号 不服2009-16733  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-09 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 特願2003-382121「半導体複合装置、光プリントヘッド、及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月24日出願公開、特開2004-179646〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年11月12日(優先権主張平成14年11月13日)の出願であって、平成21年3月25日に手続補正がなされたところ、同年6月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月9日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。


第2 平成21年9月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年9月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成21年9月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項2を、以下のように補正することを含むものである。

「基板と、
前記基板の表面の所定領域に密着形成された薄膜の導電性材料層と、
少なくとも一つの半導体素子を有し、前記導電性材料層の表面に貼り付けられた10μm以下の厚さでシート状の第1の半導体薄膜と、
集積回路及び第1の端子領域を有し、前記基板の前記表面に貼り付けられた10μm以下の厚さでシート状の第2の半導体薄膜と、
前記第1の半導体薄膜の前記半導体素子上から前記基板の前記表面を経由して前記第2の半導体薄膜の前記第1の端子領域上に至る領域に形成され、前記第1の半導体薄膜の前記半導体素子と前記第2の半導体薄膜の前記第1の端子領域とを電気的に接続する薄膜の第1の個別配線層と、
前記第1の個別配線層下の前記第1の個別配線層のコンタクト領域以外の部分に備えられた層間絶縁膜とを有し、
前記導電性材料層は前記半導体薄膜を密着接合する接合面を有し、該接合面で前記半導体薄膜を固定するものであり、
前記半導体素子は前記基板上に複数設けられており、
前記第1の端子領域は前記半導体素子と一対一に対向されており、
前記第1の個別配線層は該対向する半導体素子と第1の端子領域の間を接続する
ことを特徴とする半導体複合装置。」

本件補正は、補正前(平成21年3月25日付け手続補正後のもの)の請求項1を削除するとともに、補正前の請求項2において、「半導体素子」について「前記基板上に複数設けられており」との限定を行い、「第1の端子領域」について「前記半導体素子と一対一に対向されており」との限定を行い、「第1の個別配線層」について「該対向する半導体素子と第1の端子領域の間を接続する」との限定を行って、本件補正後の請求項1としたものであるから、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

2 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-68795号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】基板面に対して垂直に発光又は受光を行なう少なくとも1つの面型光素子において、該面型光素子の形成に必要な保持基板となる第1の基板を除去或は薄膜化して機能層および受・発光、電気的制御を行なう為に必要な該機能層の少なくとも一方の表面に形成された電極から成る面型光素子が、該第1の基板とは異なる第2の基板に、該機能層の表面に形成された電極と該第2の基板上に形成された電極とが電気的接触が得られる様に接着されており、且つ該第2の基板上に該面型光素子を独立に駆動、制御する為の電極配線が形成されていることを特徴とする面型光素子。
・・・
【請求項5】該第2の基板には、該面型光素子を駆動、制御する為のSi集積回路のベアチップがフリップチップ実装されて請求項1乃至4の何れかに記載の面型光素子と集積化されていることを特徴とする光電子融合MCM(Multi-Chip-Module)。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、作製が容易で歩留まりの高い2次元アレイ型の構成に適した面型光素子、その製造方法、およびそれをSi集積回路と集積化した光電子融合デバイス、それを用いた光配線装置、光記録装置などに関する。」

ウ 「【0024】本発明による典型的な光素子では、図1の断面斜視図に示すように、光素子の発光または受光層を含む機能層のみを他の基板に転写した構造となっており、転写後に表面電極を形成している。その構造を簡単に説明する。他の基板として例えばAlNセラミック基板1を用い、面発光レーザが実装される領域には電極2が形成されており、共通電極となっている。面発光レーザ3は該電極2上の一部に形成されたAu/Snハンダ(不図示)によって、面発光レーザのp側電極として形成された電極4と加熱により接合されている。n電極9は基板除去後にパターニングにより作製する。」

エ 「【0028】[実施例1]本発明による第1の実施例は、面型光素子として面発光レーザを用い、その発光層およびミラー層を含む機能層のみを熱伝導性の良いセラミック基板(AlNなど)に転写したものである。その断面斜視図を図1に示す。
【0029】AlNセラミック基板1上の面発光レーザ3が実装される領域にはTi/Pt/Auからなる電極2が形成されており、共通電極となっている。面発光レーザ3は、該電極2上の一部に形成されたAu/Snハンダ(不図示)によって、面発光レーザのp側電極として形成されたn/Pt/Au電極4が共通電極2と加熱により接合されている。このとき、接着方法は、ここでの例のように蒸着やメッキにより形成されたハンダを用いてもよいが、ハンダボールを用いる方法、あるいは導電性接着剤を用いる方法、Au同志の圧着による方法などでもよい。
【0030】面発光レーザは、絶縁膜5、p-AlGaAsのAl組成比を1から0.1までの範囲で変えた2種の半導体(例えば、Al組成比が0.1と0.9のAlGaAs)の交互多層膜から成るDBR層6、AlGaAs/GaAsから成る多重量子井戸活性層をAlGaAsスペーサ層でサンドイッチして1波長の厚さとした共振器層7、n-AlGaAs多層膜から成るDBR層8、n側電極となるAuGe/Au層9から成る。・・・また、発光領域となる部分10は15μmφの円筒形としており、p-DBRミラー6側に電流狭窄のためのポリイミド11が埋め込まれている。このような構造の面発光レーザ3は、n-GaAs基板上に機能層をエピタキシャル成長したのちに加工したもので、p側電極4を上記のようにセラミック基板1に接合してから、該GaAs基板を除去して成るものである。
【0031】以上は面発光レーザの構造の一例を示しているが、電流狭窄構造としては、p-DBR層10のAl組成比の高い層のみ横方向に酸化してAlxOyとする選択酸化の手法を用いたり、プロトン注入で機能層の周りに絶縁層を形成したりする構造も採り得る。・・・
【0032】また、図1では4つの面発光レーザ3が2次元アレイ状に実装されているが、もちろん個数に限定はない。また、図7のように1次元アレイとして並べてもよい。この場合、面発光レーザ上を他の面発光レーザからの電気配線が通ることがないので、絶縁層としてのポリイミドはGaAs表面には必要なく、素子の端面に図2(a)の符号19のような絶縁層を形成し、AlN基板1側の電極2との絶縁を保てる膜を形成しておけばよい。
・・・
【0034】n側電極9の配線やSi-IC20との接続の仕方を含めた断面図および平面図を図2に示す。図2(a)は面発光レーザ部分のみを説明するための図であり図2(b)のA-A’断面図である。図1と同じ部分に相当する部分には同じ番号を付している。
【0035】面発光レーザ3の構造についてはすでに説明した通りであり、素子分離溝にはポリイミド12を埋め込んでいる。面発光レーザの最表面には絶縁層として感光性ポリイミド13を形成し、光取り出し部に窓14を電極コンタクト部にホール17をパターニングにより形成する。該ホール17を介して電極コンタクトを取り、電極配線15を介してセラミック基板1上まで引き出す。符号16は電極配線のうち奥に見えているものである。面発光レーザ3のサイドウォールにも絶縁性を保つために、表面上のポリイミドパターニングのときにセルフアラインでポリイミド19を形成している。すなわち、素子表面にポリイミドを塗布して全面を覆った後、O2プラズマなどでエッチングするとセルフアラインで該サイドウォールにポリイミドが残る。
【0036】図2(b)の平面図では、ロジック信号から面発光レーザを駆動させるためのSi-ICのベアチップ20が同一セラミック基板1上にフリップチップ実装されており、配線15(例えばTi/Au)で面発光レーザ3と接続されている。面発光レーザのp側の共通電極となる部分2は配線18を介して電源に接続される。
【0037】このようにして光素子3とSi-IC20が同一基板1上に形成されたMCMを提供することができる。ここで、光素子は成長基板を除去して薄膜化しているので、電気配線を表面プロセスによって形成することができ、歩留まり、小型化、高速性に問題があるワイヤボンディングを用いる必要がなくなる。」

オ 「【0055】[実施例3]これまでの実施例では、1つのMCMのプロセスを中心に述べてきたが、生産性を上げるためにはウエハレベルで一括プロセスができることが望ましい。
【0056】そのための概念図を図8に示す。本実施例では、基板コストの安いSi基板を用いている。Si基板80上に素子の実装される領域81が特定のピッチでアレイ化されている。まず、該Si基板80上の面発光レーザが実装される部分81に実施例1または2のようにウエハ単位で電極を形成し、必要なアレイ数の面発光レーザ84をGaAs基板83から切り出して、ダイボンダ装置により逐次該電極に実装していく。このとき、ホトリソグラフィーにより該電極領域を形成すればホトマスク精度でアレイ化でき、ダイボンダ装置の図形合わせにより精度良く実装できる。よって、その後のマスク合わせ工程も可能である。
【0057】次に、ウエハレベルで面発光レーザのGaAs基板83をエッチングにより除去する。このとき、エッチングしない領域や面発光レーザの端部は損傷を受けないようにレジストで保護しておくとよい。再び、ホトリソグラフィ工程により、実施例1または2のように感光性ポリイミドによるパターニングおよび電極配線の形成を行う。このとき、GaAs基板をエッチングしてSi基板80表面に残っている面発光レーザの機能層の厚さは5μm程度なので、ホトリソグラフィーによる一括表面プロセスが可能となっている。」

カ 「【0063】[実施例5]本発明による第5の実施例は、機能層を転写したMCMを図10のように3次元スタック化したものである。元基板として表面に絶縁層を持つSi基板100を用い、1層目に実施例1のようにSi-ICベアチップ106、面発光レーザ104を実装し、表面を平坦化するために全体を絶縁性の部材101でカバーする。そして、配線のためのコンタクトホールを形成して埋め込み電極材103を形成して、該絶縁層101上に配線パターン102を形成する。ここで、面発光レーザ104は実施例1のようにGaAs基板を除去して5μm程度の機能層のみが実装されており、それに合わせて、Si-IC106もCMPによって5μm程度まで薄膜化した状態で実装されている。」

キ 「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1実施例の面発光レーザアレイの断面斜視図である。
【図2】本発明による光電子融合MCMの断面と平面を説明する図である。
・・・」

ク 上記エを踏まえて図2(a)をみると、面発光レーザは、DBR層6と同じ高さに発光領域となるp-DBR層10を有することが見て取れる。

ケ 上記エを踏まえて図2(b)をみると、Si-ICのベアチップ(Si-IC)20の複数の端子は、それぞれ、配線15によって個々の面発光レーザ3に接続されていること、が見て取れる。

上記摘記事項の記載を総合すると、引用刊行物には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている、と認められる。

「AlNセラミック基板1上の面発光レーザ3が実装される領域にはTi/Pt/Auからなる電極2が形成され、共通電極となっており、面発光レーザ3は、該電極2上の一部に形成されたAu/Snハンダによって、面発光レーザのp側電極として形成されたn/Pt/Au電極4が共通電極2と加熱により接合されており、
面発光レーザは、絶縁膜5、p-AlGaAsのAl組成比を1から0.1までの範囲で変えた2種の半導体の交互多層膜から成るDBR層6、該DBR層6と同じ高さに発光領域となるp-DBR層10、AlGaAs/GaAsから成る多重量子井戸活性層をAlGaAsスペーサ層でサンドイッチして1波長の厚さとした共振器層7、n-AlGaAs多層膜から成るDBR層8、n側電極となるAuGe/Au層9から成り、このような構造の面発光レーザ3は、n-GaAs基板上に機能層をエピタキシャル成長したのちに加工したもので、p側電極4を上記のようにセラミック基板1に接合してから、該GaAs基板を除去して成るものであり、
面発光レーザの最表面には絶縁層として感光性ポリイミド13を形成し、光取り出し部に窓14を電極コンタクト部にホール17をパターニングにより形成し、該ホール17を介して電極コンタクトを取り、電極配線15を介してセラミック基板1上まで引き出し、面発光レーザ3のサイドウォールにも絶縁性を保つために、表面上のポリイミドパターニングのときにセルフアラインでポリイミド19を形成しており、
ロジック信号から面発光レーザを駆動させるためのSi-ICのベアチップ20が同一セラミック基板1上にフリップチップ実装されており、配線15で面発光レーザ3と接続されており、Si-IC20の複数の端子は、それぞれ、配線15によって個々の面発光レーザ3に接続されており、面発光レーザのp側の共通電極となる部分2は配線18を介して電源に接続されており、
このようにして光素子3とSi-IC20が同一基板1上に形成されたMCM(Multi-Chip-Module)を提供することができ、ここで、光素子は成長基板を除去して薄膜化しているので、電気配線を表面プロセスによって形成することができ、歩留まり、小型化、高速性に問題があるワイヤボンディングを用いる必要がなくなる、光電子融合MCM。」

(2)対比、判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「AlNセラミック基板(セラミック基板)1」は、本願補正発明の「基板」に相当する。

イ 引用発明は、「AlNセラミック基板1上の面発光レーザ3が実装される領域にはTi/Pt/Auからなる電極2が形成され、共通電極となっており、面発光レーザ3は、該電極2上の一部に形成されたAu/Snハンダによって、面発光レーザのp側電極として形成されたn/Pt/Au電極4が共通電極2と加熱により接合されて」いるものであり、前記「『(Ti/Pt/Auからなる)共通電極2』及び『(Au/Snハンダによって前記電極2と加熱接合され、面発光レーザのn/Pt/Au)p側電極4』」は、「AlNセラミック基板1」の表面の所定領域に密着形成された薄膜状のものといえるから、引用発明の「『共通電極2』及び『p側電極4』」は、本願補正発明の「(前記基板の表面の所定領域に密着形成された薄膜の)導電性材料層」に相当する。

ウ 引用発明の「面発光レーザ」は、「・・・2種の半導体の交互多層膜から成るDBR層6、該DBR層6と同じ高さに発光領域となるp-DBR層10、AlGaAs/GaAsから成る多重量子井戸活性層をAlGaAsスペーサ層でサンドイッチして1波長の厚さとした共振器層7、・・・DBR層8、n側電極となるAuGe/Au層9から成」るものであって、「このような構造の面発光レーザ3は、n-GaAs基板上に機能層をエピタキシャル成長したのちに加工したもので、p側電極4を上記のようにセラミック基板1に接合してから、該GaAs基板を除去して成るもの」であるから、前記「『DBR層6』、『発光領域となるp-DBR層10』、『共振器層7』及び『DBR層8』」は、少なくとも一つの半導体素子を有するものであり、しかも、前記「『共通電極2』及び『p側電極4』」の表面に貼り付けられたシート状の半導体薄膜である、といえる。よって、引用発明の「『DBR層6』、『発光領域となるp-DBR層10』、『共振器層7』及び『DBR層8』」は、本願補正発明の「少なくとも一つの半導体素子を有し、前記導電性材料層の表面に貼り付けられた10μm以下の厚さでシート状の第1の半導体薄膜」と、「少なくとも一つの半導体素子を有し、前記導電性材料層の表面に貼り付けられたシート状の第1の半導体薄膜」である点で一致する。

エ 上記イ及びウを踏まえると、引用発明の「『共通電極2』及び『p側電極4』」は、「『DBR層6』、『発光領域となるp-DBR層10』、『共振器層7』及び『DBR層8』」を密着接合する接合面を有するとともに、該接合面で前記「『DBR層6』、『発光領域となるp-DBR層10』、『共振器層7』及び『DBR層8』」を固定するものである、といえるから、引用発明は、本願補正発明の「前記導電性材料層は前記半導体薄膜を密着接合する接合面を有し、該接合面で前記半導体薄膜を固定するものであり」との事項を備える。

オ 引用発明は、「ロジック信号から面発光レーザを駆動させるためのSi-ICのベアチップ20が同一セラミック基板1上にフリップチップ実装されており、配線15で面発光レーザ3と接続されており、Si-IC20の複数の端子は、それぞれ、配線15によって個々の面発光レーザ3に接続されており」、前記「Si-ICのベアチップ20」は、同一セラミック基板1上にフリップチップ実装されており、また、「面発光レーザ3」は、同一セラミック基板1上に複数設けられているといえるから、
(ア)引用発明の「『(Si-IC20の、配線15によって個々の面発光レーザ3に接続される)端子』の設けられた領域」は、本願補正発明の「第1の端子領域」に相当し、
(イ)引用発明の「Si-ICのベアチップ20」は、本願補正発明の「集積回路及び第1の端子領域を有し、前記基板の前記表面に貼り付けられた10μm以下の厚さでシート状の第2の半導体薄膜」と、「(集積回路及び第1の端子領域を有し、前記基板の前記表面に貼り付けられた)第2の半導体薄膜」である点で一致し、
(ウ)引用発明は、本願補正発明の「前記半導体素子は前記基板上に複数設けられており」との事項を備える。

カ 引用発明は、「面発光レーザの最表面には絶縁層として感光性ポリイミド13を形成し、光取り出し部に窓14を電極コンタクト部にホール17をパターニングにより形成し、該ホール17を介して電極コンタクトを取り、電極配線15を介してセラミック基板1上まで引き出し、面発光レーザ3のサイドウォールにも絶縁性を保つために、表面上のポリイミドパターニングのときにセルフアラインでポリイミド19を形成しており、ロジック信号から面発光レーザを駆動させるためのSi-ICのベアチップ20が同一セラミック基板1上にフリップチップ実装されており、配線15で面発光レーザ3と接続されて」いるものであって、
(ア)「配線15」は、「『DBR層6』、『発光領域となるp-DBR層の部分10』、『共振器層7』及び『DBR層8』」の半導体素子上から「Si-ICのベアチップ20」の「『端子』の設けられた領域」上に至る領域に形成され、前記「『DBR層6』、『発光領域となるp-DBR層の部分10』、『共振器層7』及び『DBR層8』」の半導体素子と前記「Si-ICのベアチップ20」の「『端子』の設けられた領域」とを電気的に接続する薄膜状のものといえるから、引用発明の「配線15」は、本願補正発明の「前記第1の半導体薄膜の前記半導体素子上から前記基板の前記表面を経由して前記第2の半導体薄膜の前記第1の端子領域上に至る領域に形成され、前記第1の半導体薄膜の前記半導体素子と前記第2の半導体薄膜の前記第1の端子領域とを電気的に接続する薄膜の第1の個別配線層」と、「(前記第1の半導体薄膜の前記半導体素子上から前記第2の半導体薄膜の前記第1の端子領域上に至る領域に形成され、前記第1の半導体薄膜の前記半導体素子と前記第2の半導体薄膜の前記第1の端子領域とを電気的に接続する薄膜の)第1の個別配線層」である点で一致し、
(イ)「(面発光レーザ3のサイドウォールに絶縁性を保つために形成した)ポリイミド19」は、「配線15」下の前記「配線15」の「電気コンタクト部」以外の部分に備えられたものといえるから、引用発明の「ポリイミド19」は、本願補正発明の「前記第1の個別配線層下の前記第1の個別配線層のコンタクト領域以外の部分に備えられた層間絶縁膜」に相当する。

キ 上記オ及びカを踏まえると、引用発明の「『配線15』が個々の『面発光レーザ3』と『(Si-IC20の)端子』を接続する」との事項と、本願補正発明の「前記第1の個別配線層は該対向する半導体素子と第1の端子領域の間を接続する」との事項とは、「前記第1の個別配線層は半導体素子と第1の端子領域の間を接続する」との点で一致する。

ク 引用発明の「光電子融合MCM」は、本願補正発明の「半導体複合装置」に相当する。

したがって、両者は、
「基板と、
前記基板の表面の所定領域に密着形成された薄膜の導電性材料層と、
少なくとも一つの半導体素子を有し、前記導電性材料層の表面に貼り付けられたシート状の第1の半導体薄膜と、
集積回路及び第1の端子領域を有し、前記基板の前記表面に貼り付けられた10μm以下の厚さでシート状の第2の半導体薄膜と、
前記第1の半導体薄膜の前記半導体素子上から前記第2の半導体薄膜の前記第1の端子領域上に至る領域に形成され、前記第1の半導体薄膜の前記半導体素子と前記第2の半導体薄膜の前記第1の端子領域とを電気的に接続する薄膜の第1の個別配線層と、
前記第1の個別配線層下の前記第1の個別配線層のコンタクト領域以外の部分に備えられた層間絶縁膜とを有し、
前記導電性材料層は前記半導体薄膜を密着接合する接合面を有し、該接合面で前記半導体薄膜を固定するものであり、
前記半導体素子は前記基板上に複数設けられており、
前記第1の個別配線層は半導体素子と第1の端子領域の間を接続する
半導体複合装置。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

a 第1の半導体薄膜が、本願補正発明では、10μm以下の厚さであるのに対し、引用発明では、そのような厚さか否か明らかではない点。(以下「相違点1」という。)。

b 第2の半導体薄膜が、本願補正発明では、10μm以下の厚さでシート状のものであるのに対し、引用発明では、そのようなものか否か明らかではない点(以下「相違点2」という。)。

c 第1の半導体薄膜の半導体素子上から第2の半導体薄膜の第1の端子領域上に至る領域に形成される第1の個別配線層が、本願補正発明では、基板の表面を経由して形成されるのに対し、引用発明では、そのように形成されるか否か明らかではない点(以下「相違点3」という。)。

d 本願補正発明は、第1の端子領域が半導体素子と一対一に対向されており、第1の個別配線層が該対向する半導体素子と第1の端子領域の間を接続するのに対し、引用発明は、第1の端子領域が半導体素子と一対一に対向されておらず、第1の個別配線層が該対向する半導体素子と第1の端子領域の間を接続してはいない点(以下「相違点4」という。)。

上記相違点1につき検討する。
上記(1)オ(【0057】)及びカ(【0063】)によれば、引用刊行物には、面発光レーザの機能層の厚さを5μm程度とすることが記載されているから、引用発明において、「『DBR層6』、『発光領域となるp-DBR層の部分10』、『共振器層7』及び『DBR層8』」の厚さを10μm以下として、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。
上記相違点2につき検討する。
上記(1)カ(【0063】)によれば、引用刊行物には、Si-ICをCMPによって5μm程度まで薄膜化した状態で実装することが記載されているから、引用発明において、「Si-ICのベアチップ20」を、厚さを10μm以下のシート状のものとして、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。
上記相違点3につき検討する。
引用発明の「配線15」は、「面発光レーザ3」の「電極コンタクト部」と「Si-ICのベアチップ20」の「複数の端子」とを接続するものであり、該「Si-ICのベアチップ20」は「AlNセラミック基板1」上にフリップチップ実装されたものであるから、引用発明において、前記「配線15」を、「『DBR層6』、『発光領域となるp-DBR層の部分10』、『共振器層7』及び『DBR層8』」からなる面発光レーザ(半導体素子)上から「Si-ICのベアチップ20」の「端子の設けられた領域」上に至る領域に形成する際に、当該「配線15」を、「AlNセラミック基板1」の表面を経由して形成されるようになすことは、当業者が必要に応じて適宜になし得ることである。
上記相違点4につき検討する。
上記(1)エ(【0032】)によれば、引用刊行物には、複数の面発光レーザ3を1次元アレイとして並べても良いことが記載されているから(図7参照。)、引用発明において、複数の面発光レーザを1次元アレイとして並べ、Si-IC20の端子の設けられた領域と個々の面発光レーザとを1対1に対向させるようになし、その結果、配線15が該対向する面発光レーザとSi-IC20の端子の設けられた領域の間を接続するようになして、上記相違点4に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用刊行物の記載事項から予測し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明及び引用刊行物の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年3月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?26に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明は次のとおりのものである。

「基板と、
前記基板の表面の所定領域に密着形成された薄膜の導電性材料層と、
少なくとも一つの半導体素子を有し、前記導電性材料層の表面に貼り付けられた10μm以下の厚さでシート状の第1の半導体薄膜と、
集積回路及び第1の端子領域を有し、前記基板の前記表面に貼り付けられた10μm以下の厚さでシート状の第2の半導体薄膜と、
前記第1の半導体薄膜の前記半導体素子上から前記基板の前記表面を経由して前記第2の半導体薄膜の前記第1の端子領域上に至る領域に形成され、前記第1の半導体薄膜の前記半導体素子と前記第2の半導体薄膜の前記第1の端子領域とを電気的に接続する薄膜の第1の個別配線層と、
前記第1の個別配線層下の前記第1の個別配線層のコンタクト領域以外の部分に備えられた層間絶縁膜とを有し、
前記導電性材料層は前記半導体薄膜を密着接合する接合面を有し、該接合面で前記半導体薄膜を固定するものである
ことを特徴とする半導体複合装置。」(以下「本願発明」という。)

2 刊行物記載の発明
原審における拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用刊行物及び引用発明は、上記第2の2(1)のとおりである。

3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明は、上記第2の2(2)で検討した本願補正発明において、「半導体素子」に関する「前記基板上に複数設けられており」との限定を省き、「第1の端子領域」に関する「前記半導体素子と一対一に対向されており」との限定を省き、「第1の個別配線層」に関する「該対向する半導体素子と第1の端子領域の間を接続する」との限定を省いたものである。そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2の2(2)で検討したとおり、引用刊行物に記載された発明及び引用刊行物の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物に記載された発明及び引用刊行物の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用刊行物の記載事項から当業者が予測し得る程度のものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び引用刊行物の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-21 
結審通知日 2010-10-26 
審決日 2010-11-08 
出願番号 特願2003-382121(P2003-382121)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 謙仁瀬川 勝久  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 杉山 輝和
稲積 義登
発明の名称 半導体複合装置、光プリントヘッド、及び画像形成装置  
代理人 前田 実  
代理人 山形 洋一  
代理人 山形 洋一  
代理人 篠原 昌彦  
代理人 篠原 昌彦  
代理人 前田 実  

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