• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07D
管理番号 1229772
審判番号 不服2009-18551  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-01 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 特願2000-556343「紙幣取扱い機械」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月29日国際公開、WO99/67750、平成14年 7月 2日国内公表、特表2002-519770〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 出願の経緯・本願発明
本願は、1999年6月10日(パリ条約による優先権主張 1998年6月12日 スウェーデン)を国際出願日とする出願であって、平成21年5月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成21年10月1日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成21年4月24日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1には次のとおり記載されている。

「【請求項1】
投入された紙幣の真偽性、品質および額面値を制御するための、偽紙幣、劣悪な品質の紙幣およびその他の紙幣を区分するように設計されている検知手段(11)と、
偽紙幣および劣悪品質の紙幣を、輸送路(13)に沿ってスタッキング手段(16)および包装手段(18)へ輸送し、そして少なくとも残りの一部の真正の受理された紙幣をそれらの額面値に従って貯蔵しそして包装するために、前記紙幣を第1の貯蔵手段(14)へ輸送するのを制御するように設計されているプロセッサユニット(12)と、を含む外部から投入された紙幣を受入れるための受入れ部(1)と、そして
紙幣注文手段(25)を介して外部から注文された紙幣を第2の貯蔵手段(21)から払出すための払出し部(2)と、
からなる紙幣取扱い機械において、
前記プロセッサユニット(12)は、前記第2の貯蔵手段内に含まれている紙幣の枚数に応じて、紙幣を、受入れ部内の前記第1の貯蔵手段(14)から払出し部内の前記第2の貯蔵手段(21)へ輸送するのを制御することを特徴とする前記紙幣取扱い機械。」(以下、この請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2 引用刊行物及びその記載事項
(1)原審の拒絶の理由に引用された刊行物である、特開昭56-33757号公報(以下「引用例」という。)には、「循環式入出金装置」に関し、次の事項が記載されている。

(ア)「預金処理の場合、投入された紙幣は金種ごとに一旦プール部38A?38Cまたは38Dにプールし、このプール状態およびエリア93の枚数は次の取引(預金あるいは支払)まで維持され、次の取引開始時(たとえばキー入力時あるいはカード挿入時)に収納箱に収納されるとともに、エリア93の枚数も0にクリアされる。これは客との間で金銭トラブルがあった場合、投入紙幣を確認するためである。」(公報9頁右下欄12行ないし末行)

(イ)「長さ異常検知器23は紙幣の二枚連れ出し、二枚重さなり検出器24は紙幣の二枚重さなりをそれぞれチェックし、紙幣判別部25は紙幣の真偽判別、金種判別を行う。」(公報10頁左上欄14行ないし17行)

(ウ)「これらのチェックおよび判別で異常が認められたときはその異常紙幣は放出部37の可動底板40に一旦プールされて、ついで放出駆動回路87が放出部37のキャプスタン41、ピンチローラ42を駆動して異常紙幣を放出する。」(公報10頁左上欄18行ないし右上欄2行)

(エ)「預金の紙幣の取込みが正常であって、紙幣の判定も正常であるときは、紙幣判別部25の金種を示す信号に基づいて各金種の計数を行ない、この計数値はデータメモリ89のエリア94の各金種A、B、Cにストアされ、また合計金額はエリア95にストアされる。
ついで該当金種の金種別収納箱44A?44Cが満杯か否かを収納箱満杯センサ54A?54Cの出力に基づいてチェックする。
該当する金種の収納箱44A?44Cが満杯の場合は一括の一旦プール部38Dにプールする。そのために振分け制御回路90は振分け板36Dを振分け駆動し、紙幣を一旦プール部38Dにプールする。
該当する金種の収納箱44A?44Cが満杯でない場合はその金種に対応する一旦プール部38A?38Cにプールする。そのために振分け制御回路90は振分け板36A?36Cを振分け駆動をして、該当する金種の一旦プール部にプールする。これら一旦プール部38A?38Dにプールされた枚数はエリア93にそれぞれストアされる。」(公報10頁右上欄6行ないし左下欄6行)

(オ)「つぎに支払処理について第12図を参照して述べると、支払処理は支払キー7の操作によって支払取引であることが入力され、続いてカードが挿入されるとともにキーボード84から秘密番号が入力され、対応が検査される。
次に客はキーボード84で支払いの請求金額を金種A、B、Cを指定して行ない、これらの金種の各枚数データや金額はデータメモリ89のエリア96,97にストアされるとともに、センター交信により支払取引の可否がセンターから指示される。支払取引可のとき搬送駆動回路86は各搬送ベルトを駆動して搬送の準備を行ない、操出し制御回路92は前述の金種枚数のデータに基づいて金種Aより順次B、Cについて操出すべく操出しローラ46A?46Cを駆動する。」(公報10頁右下欄9行ないし11頁左上欄3行)

(カ)「操出し紙幣を放出してもよいときは、放出駆動回路87は放出部37のキャプスタン41、ピンチローラ42を駆動して、この放出部37にプールしていた紙幣を出金口13に放出して支払処理を終了する。」(公報11頁左下欄4行ないし8行)

(キ)「ついで紙幣の補充処理について第13図を参照して述べると、各金種別収納箱44A?44Cの収納紙幣が残少となって収納箱残少センサ57A?57Cが残少信号を出力すると、制御部81は待機ルーチンにおいてこれを検出し、このデータはデータメモリ89のエリア99の該当金種に残少フラグとしてセットされ、このフラグに基づいて一括収納箱44Dから該当金種の紙幣が補充される。
そしてこの補充はその収納箱44A?44Cが満杯になるまで行なわれる。」(公報11頁左下欄12行ないし右下欄2行)

上記記載事項から次のことが明らかである。
・記載事項(イ)より、「紙幣判別部25」は、紙幣の真偽判別、金種判別を行うものである。
・記載事項(ウ)より、異常紙幣は、放出部37から放出される。
・記載事項(ア)、(エ)より、正常と判定された紙幣は、該当する金種の収納箱44A?44Cが満杯の場合は一括の一旦プール部38Dにプールし、該当する金種の収納箱44A?44Cが満杯でない場合はその金種に対応する一旦プール部38A?38Cにプールし、次の取引開始時にそれぞれの収納箱44A?44Dに収納される。即ち、正常紙幣は、いずれもまず一旦プール部38A?38Dのいずれかにプールされるものの、最終的にはそれぞれ収納箱44A?44Dに収納される。
・記載事項(オ)、(カ)より、支払取引のときは、請求された金額の金種紙幣を該当する金種の収納箱44A?44Cより出金口13に放出する。
・記載事項(キ)より、補充処理は、各金種別収納箱44A?44Cの収納紙幣が残少となると、収納箱44Dから該当金種の紙幣がその収納箱44A?44Cが満杯になるまで行われる。

上記記載事項及び図面によれば、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「投入された紙幣の真偽判別、金種判別を行う紙幣判別部25を有し、異常紙幣は、放出部37から放出され、正常紙幣は、該当する金種の収納箱44A?44Cが満杯の場合は一括の一旦プール部38Dにプールし、該当する金種の収納箱44A?44Cが満杯でない場合はその金種に対応する一旦プール部38A?38Cにプールし、次の取引開始時にそれぞれの収納箱44A?44Dに収納され、支払取引のときは、請求された金額の金種紙幣を該当する金種の収納箱44A?44Cより出金口13に放出する、循環式入出金装置において、補充処理は、各金種別収納箱44A?44Cの収納紙幣が残少となると、収納箱44Dから該当金種の紙幣がその収納箱44A?44Cが満杯になるまで行われる循環式入出金装置。」

3 対比
(1)本願発明と引用発明とを比較すると、次のことが明らかである。

(ア)本願発明の「投入された紙幣の真偽性、品質および額面値を制御するための、偽紙幣、劣悪な品質の紙幣およびその他の紙幣を区分するように設計されている検知手段(11)」と、引用発明の「投入された紙幣の真偽判別、金種判別を行う紙幣判別部25」とはともに、「投入された紙幣の真偽性および額面値を制御するための、偽紙幣およびその他の紙幣を区分するように設計されている検知手段」との概念で共通する。

(イ)本願発明の「受入れ部(1)」が「偽紙幣および劣悪品質の紙幣を、輸送路(13)に沿ってスタッキング手段(16)および包装手段(18)へ輸送し、少なくとも残りの一部の真正の受理された紙幣をそれらの額面値に従って貯蔵しそして包装するために、前記紙幣を第1の貯蔵手段(14)へ輸送するのを制御するように設計されているプロセッサユニット(12)と、を含む外部から投入された紙幣を受入れる」点と、引用発明の「異常紙幣は、放出部37から放出され、正常紙幣は、該当する金種の収納箱44A?44Cが満杯の場合は一括の一旦プール部38Dにプールし、該当する金種の収納箱44A?44Cが満杯でない場合はその金種に対応する一旦プール部38A?38Cにプールし、次の取引開始時にそれぞれの収納箱44A?44Dに収納」される点とについて、「第1の貯蔵手段」と「収納箱44D」とは、貯蔵手段という点では対応関係にあるから、両者はともに、「真正の受理された紙幣をそれらの額面値に従って、第1の貯蔵手段へ輸送する」点において共通する概念を有する。

(ウ)本願発明の「払出し部(2)」が「紙幣注文手段(25)を介して外部から注文された紙幣を第2の貯蔵手段(21)から払出す」点と、引用発明の「支払取引のときは、請求された金額の金種紙幣を該当する金種の収納箱44A?44Cより出金口13に放出する」点とについて、「第2の貯蔵手段」と「収納箱44A?44C」とは、貯蔵手段という点では対応関係にあるから、両者はともに、「外部から注文された紙幣を第2の貯蔵手段から払出す」との点で概念上共通する。

(エ)本願発明の「プロセッサユニット(12)」の制御について「前記第2の貯蔵手段内に含まれている紙幣の枚数に応じて、紙幣を、受入れ部内の前記第1の貯蔵手段(14)から払出し部内の前記第2の貯蔵手段(21)へ輸送する」点と、引用発明の「補充処理は、各金種別収納箱44A?44Cの収納紙幣が残少となると、収納箱44Dから該当金種の紙幣がその収納箱44A?44Cが満杯になるまで行われる」点とはともに、「第2の貯蔵手段内に含まれている紙幣の枚数に応じて、紙幣を、第1の貯蔵手段から第2の貯蔵手段へ輸送する」点で概念上共通する。

そして、引用発明の「循環式入出金装置」は、本願発明の「紙幣取扱い機械」に相当する。

すると両者の一致点、相違点は次のとおりである。
(2)一致点
「投入された紙幣の真偽性および額面値を制御するための、偽紙幣およびその他の紙幣を区分するように設計されている検知手段と、真正の受理された紙幣をそれらの額面値に従って、第1の貯蔵手段へ輸送し、外部から注文された紙幣を第2の貯蔵手段から払出す、紙幣取扱い機械において、第2の貯蔵手段内に含まれている紙幣の枚数に応じて、紙幣を、第1の貯蔵手段から第2の貯蔵手段へ輸送する紙幣取扱い機械。」

(3)相違点
(ア)本願発明の検知手段が「偽紙幣、劣悪な品質の紙幣およびその他の紙幣」を検知し、「額面値」を検知するのに対して、引用発明は「紙幣の真偽判別、金種判別」を判定するものである点。

(イ)本願発明が「外部から投入された紙幣を受入れる」「受入れ部(1)」を有し、「偽紙幣および劣悪品質の紙幣を、輸送路(13)に沿ってスタッキング手段(16)および包装手段(18)へ輸送し、少なくとも残りの一部の真正の受理された紙幣をそれらの額面値に従って貯蔵しそして包装するために、前記紙幣を第1の貯蔵手段(14)へ輸送するのを制御するように設計されているプロセッサユニット(12)」を含むものであるのに対して、引用発明は「受入れ部」と称されるべき部分は明確には記載されておらず、上記のような機能を有する「プロセッサユニット(12)」を有していない点。

(ウ)本願発明が「払出し部(2)」を有し、「紙幣注文手段(25)を介して外部から注文された紙幣を第2の貯蔵手段(21)から払出す」ものであるのに対して、引用発明は「払出し部」と称されるべき部分は明確には記載されていない点。

(エ)本願発明の「プロセッサユニット(12)」の制御が「前記第2の貯蔵手段内に含まれている紙幣の枚数に応じて、紙幣を、受入れ部内の前記第1の貯蔵手段(14)から払出し部内の前記第2の貯蔵手段(21)へ輸送する」ものであるのに対して、引用発明は、「補充処理」として、「各金種別収納箱44A?44Cの収納紙幣が残少となると、収納箱44Dから該当金種の紙幣がその収納箱44A?44Cが満杯になるまで行われる」ものである点。

4 相違点についての検討
(1)相違点(ア)について
引用発明の判別部は「紙幣の真偽判別、金種判別」を判定するものであるが、この種の紙幣取扱い機械において、紙幣の真偽、正損状態或いは金種を判別することは周知の技術である(例えば、特開平4-291486号公報など参照)。
すると引用発明において、真偽判別、金種判別に加えて、正損ないしは劣悪な品質の紙幣をも判別するように構成し、これを受入れ側に配置することは格別のことではない。

(2)相違点(イ)について
一般に紙幣の取扱い機械において、紙幣を放出するに際し、紙幣をスタッカなどに収納し、必要により施封(包装)してから放出するよう構成することは周知の技術である(例えば、実願昭62-171289号(実開平1-76664号)のマイクロフィルム(正券及び損券を帯封すると記載)、特開平3-276386号公報(正券を施封すると記載)など参照)。
引用発明は、異常紙幣については、これを放出部37から放出するが、このような異常紙幣については、直ちに放出するもの、一旦収納しておくもの、何れも周知であって(例えば一旦収納しておくものとして、特開平9-81836号公報、特開平6-345308号公報など参照)、引用発明において、異常紙幣を一旦収納しておくようにすることも格別ではない。
また、引用発明は、判定結果が正常とした紙幣について、収納箱44A?44Cが満杯でなければ金種別に収納箱44A?44Cに収納するのであるが、それが満杯であれば、一括して収納箱44Dに収納する。即ち、引用発明のものも、正常紙幣ないしは正券を、場合により収納箱44Dに収納する構成ともなっている。
この引用発明の収納箱44Dは、引用発明において紙幣を受け入れる側に存在するか否かは明らかではないが、例えば、原審査定時に慣用技術として提示された特開昭60-241189号公報には、入金された正券が入出金ボックス内の正券収納部にまず収納され、これとは別に、出金の場合には金種別出金貯留部から出金されるものが記載されている。このような構成の紙幣出金機によれば、受入れ側に正券収納部が存し、払出し側に出金貯留部が存在するということができる。
そうすると、引用発明において、正券以外の異常紙幣、例えば偽紙幣或いは劣悪品質の紙幣については、放出することなく、一旦収納しておく構成を採用して出金側とは別ルートにてスタッカなどに収納するようにし、必要により帯封ないし包装を施すことができる構成とすること、正券については、その収納箱44Dを受入れ側の収納として配置し、また収納箱44A?44Cを払出し側の収納として配置し、収納箱44A?44Cにて収納するものにあっては、適宜にこれを包装できるよう構成し、そのように制御するように設計されているプロセッサユニットを設けること、すなわち、本願発明の相違点(イ)に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

(3)相違点(ウ)について
本願発明は、「払出し部(2)」を有し、「紙幣注文手段(25)を介して外部から注文された紙幣を第2の貯蔵手段(21)から払出す」ものである。
引用発明は「払出し部」という部分は明確には記載されてはいないが、「支払取引のときは、請求された金額の金種紙幣を該当する金種の収納箱44A?44Cより出金口13に放出する」という本願発明と同様の機能を有するものであるから、収納箱44A?44Cを含む構成を払出し部として配置すること何ら困難性は認められず、当業者が容易になし得ることである。

(4)相違点(エ)について
引用発明の「金種別収納箱44A?44C」、「収納箱44D」はその機能を考慮すれば、それぞれ、本願発明の「第2の貯蔵手段」、「第1の貯蔵手段」に対応するものであるから、引用発明における「補充処理」は、本願発明の「プロセッサユニット」が制御して行う処理と同様の処理を行うものである。
そして、引用発明において、「補充処理」を行うための制御をするプロセッサユニットを設けることは当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明が奏する効果も、引用例に記載の発明及び周知慣用の技術から当業者が予測し得たものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用例に記載の発明及び周知慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-26 
結審通知日 2010-08-03 
審決日 2010-08-17 
出願番号 特願2000-556343(P2000-556343)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門前 浩一  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 小関 峰夫
田口 傑
発明の名称 紙幣取扱い機械  
代理人 赤岡 迪夫  
代理人 赤岡 和夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ