• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1229856
審判番号 不服2009-23970  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-04 
確定日 2011-01-06 
事件の表示 特願2004- 86047「エンジンのEGRクーラー」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月 6日出願公開、特開2005-273512〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年3月24日の出願であって、平成21年4月28日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し同年7月3日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月1日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し同年12月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成22年4月12日付けで書面による審尋がなされ、これに対し同年6月14日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成21年12月4日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年12月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成21年12月4日付けの明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関し、本件補正により補正される前の(すなわち、平成21年7月3日付けで提出された手続補正書により補正された)下記(a)を下記(b)と補正するものを含んでいる。
(a)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
エンジンの排気ガスを吸気通路に再循環するEGR通路に設置され、再循環されるEGRガスを冷却水によって冷却するEGRクーラー(1)において、
前記EGRクーラーは、EGRガスの出入口となるEGR入口管(2)及びEGR出口管(3)と、冷却水の入口管(71)及び出口管(81)と、EGRガスが流れる複数のEGRパイプ(5)と、前記複数のEGRパイプ(5)を収容する外周ケース(4)とを有しており、
前記外周ケース(4)は、その内部に前記複数のEGRパイプ(5)の間を冷却水が流れる冷却水路が形成され、前記冷却水路の中間部の断面がほぼ円形であって、その両方の端部(41,42)は前記中間部よりも径が拡大されており、かつ、前記両方の端部(41,42)の各々には、前記冷却水の入口管(71)又は出口管(81)が外周ケース(4)に対し接線方向に設けられていることを特徴とするEGRクーラー。
【請求項2】
前記外周ケース(4)の前記EGR入口管(2)側の端部(41)には前記冷却水の入口管(71)が、前記EGR出口管(3)側の端部(42)には前記冷却水の出口管(81)が設けられている請求項1記載のEGRクーラー。
【請求項3】
前記冷却水の入口管(71)及び出口管(81)は、前記外周ケース(4)の端部(41,42)の軸方向長さにほぼ相当する径を有する請求項1又は請求項2に記載のEGRクーラー。
【請求項4】
前記冷却水の入口管(71)が取り付けられた端部においては、外周ケース(4)の断面が周方向に徐々に径が拡大する螺旋形状をなし、その最大径の部分に前記冷却水の入口管(71)が設けられている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のEGRクーラー。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
エンジンの排気ガスを吸気通路に再循環するEGR通路に設置され、再循環されるEGRガスを冷却水によって冷却するEGRクーラー(1)において、
前記EGRクーラーは、EGRガスの出入口となるEGR入口管(2)及びEGR出口管(3)と、冷却水の入口管(71)及び出口管(81)と、EGRガスが流れる複数のEGRパイプ(5)と、前記複数のEGRパイプ(5)を収容する外周ケース(4)とを有しており、
前記外周ケース(4)は、その内部に前記複数のEGRパイプ(5)の間を冷却水が流れる冷却水路が形成され、前記冷却水路の中間部の断面がほぼ円形であって、前記外周ケース(4)の両方の端部(41,42)は、中間部の径から徐々に拡大された径を有し、かつ、前記両方の端部(41,42)の各々には、前記冷却水の入口管(71)又は出口管(81)が外周ケース(4)に対し接線方向に設けられていることを特徴とするEGRクーラー。
【請求項2】
前記外周ケース(4)の前記EGR入口管(2)側の端部(41)には前記冷却水の入口管(71)が、前記EGR出口管(3)側の端部(42)には前記冷却水の出口管(81)が設けられている請求項1記載のEGRクーラー。
【請求項3】
前記冷却水の入口管(71)及び出口管(81)は、前記外周ケース(4)の端部(41,42)の軸方向長さにほぼ相当する径を有する請求項1又は請求項2に記載のEGRクーラー。
【請求項4】
前記冷却水の入口管(71)が取り付けられた端部においては、外周ケース(4)の断面が周方向に徐々に径が拡大する螺旋形状をなし、その最大径の部分に前記冷却水の入口管(71)が設けられている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のEGRクーラー。」(アンダーラインは補正個所を示す。)

2.本件補正の適否について
(1)本件補正の目的
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「その両方の端部(41,42)は前記中間部よりも径が拡大されており」を「前記外周ケース(4)の両方の端部(41,42)は、中間部の径から徐々に拡大された径を有し、」と補正するものであって、実質的に「中間部よりも拡大された径」について「中間部の径から徐々に拡大された径」との限定を付加するものであるから、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件違反
上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、次に、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

(2-1)特許法第36条第6項第2号違反
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の上記補正個所である「前記外周ケース(4)の両方の端部(41,42)は、中間部の径から徐々に拡大された径を有し」の記載は、不明りょうである。すなわち、上記記載では、外周ケース(4)の両方の端部(41,42)が、「中間部の径から徐々に拡大された径」のみを有するのか、或いは、それ以外の径も有するのか、不明りょうである。
また、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の上記個所が補正されたことにより、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項3の記載が、不明りょうとなっている。すなわち、請求項3に記載された「前記外周ケース(4)の端部(41,42)」自体が上記と同様な理由で不明りょうとなっているし、さらに、「前記外周ケース(4)の端部(41,42)の軸方向長さ」も、「中間部の径から徐々に拡大された径」の部分の軸方向長さを含むのか、含まないのか、さえ不明りょうである。
したがって、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2-2)特許法第29条第2項違反
(2-2-1)原査定の拒絶の理由に引用された引用例
(2-2-1-1)特開2003-83174号公報(以下、「引用例1」という。)
(2-2-1-1-1)引用例1の記載事項
引用例1には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、アンダーラインは、発明の理解の一助として当審において付したものである。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンの排気通路から吸気通路へ至るEGRガスを冷却するEGRガス冷却技術に関する。」(段落【0001】)
(イ)「【0017】エンジン110は、吸気ガスが流通する吸気通路120、排気ガスが流通する排気通路130を有している。また、エンジン110には、排気通路130の排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路120へ還流させるEGR(イグゾースト・ガス・リサイキュレーション)装置100が設置されている。EGR装置100は、排気還流通路140、EGRバルブ150、EGRクーラー200等によって構成されている。排気還流通路140は、吸気通路120と排気通路130とを連通させることで、EGRガスを吸気通路120へ還流させるようになっている。EGRバルブ150は、排気還流通路140上に配置され、排気還流通路140内を流れるEGRガスの流量を調整する。EGRクーラー200は、冷却水循環通路を循環する冷却水と、排気還流通路140を流れる高温のEGRガスとの間の熱交換によって、このEGRガスの冷却を行う構成となっている。」(段落【0017】)
(ウ)「【0018】図2に示すように、EGRクーラー200は筒状のシェル210を有し、このシェル210にEGRガス入口142、EGRガス出口144、冷却水入口240、冷却水出口250が接続されている。また、図3に示すように、シェル210内には、シェル210の長手方向に沿って延びるチューブ(チューブ配管)230が多数収容されている。シェル210内には、冷却水入口240から冷却水出口250へ至る冷却水の流通経路が形成される。一方、チューブ230内には、EGRガス入口142からEGRガス出口144へ至るEGRガスの流通経路が形成される。…(後略)…」(段落【0018】)
(エ)「【0020】EGRガス入口142からシェル210内に供給されたEGRガスは、チューブ230内を通過した後、EGRガス出口144から排出される。一方、冷却水入口240からシェル210内に供給された冷却水は、シェル210内を通過した後、冷却水出口250から排出される。この際、チューブ230内を流れるEGRガスと、シェル210とチューブ230との隙間を流れる冷却水との間で熱交換が行われ、高温のEGRガスが冷却水によって冷却されることとなる。…(後略)…」((段落【0020】)
(オ)「【0022】また、冷却水入口240および冷却水出口250は、シェル210に対しいずれもシェル210の垂直断面の接線に対応する位置に接続されている。また、冷却水入口240と冷却水出口250とが垂直断面視で平行になるように配置されている。これにより、冷却水入口240から供給される冷却水が、シェル210の垂直断面内における渦流や旋回流のような形態の流れをより形成し易くなる。このように、冷却水入口240の配置が、シェル210内のおける冷却水流れの円滑化に寄与する。…(後略)…」(段落【0022】)
(カ)図2ないし4には、シェル210の内部に形成された冷却水路の断面がほぼ円形として描かれている。
(キ)図2及び3には、シェル210の両方の端部の各々には、冷却水入口240及び冷却水出口250が設けられているように描かれている。

(2-2-1-1-2)引用例1に記載された発明
上記記載事項(2-2-1-1-1)及び図面の記載を総合すると、引用例1には、
「エンジン110の排気ガスを吸気通路120に再循環する排気還流通路140に設置され、再循環されるEGRガスを冷却水によって冷却するEGRクーラー200において、
前記EGRクーラー200は、EGRガスの出入口となるEGRガス入口142及びEGRガス出口144と、冷却水入口240及び冷却水出口250と、EGRガスが流れる複数のチューブ230と、前記複数のチューブ230を収容するシェル210とを有しており、
前記シェル210は、その内部に前記複数のチューブ230の間を冷却水が流れる冷却水路が形成され、前記冷却水路の断面がほぼ円形であって、前記シェル210の両方の端部の各々には、前記冷却水入口240及び冷却水出口250がシェル210に対し接線方向に設けられているEGRクーラー200。」
の発明(以下、「引用例1に記載された発明」という。)が記載されている。

(2-2-1-2)実願昭60-101135号(実開昭62-13391号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)
(2-2-1-2-1)引用例2の記載事項
引用例2には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、アンダーラインは、発明の理解の一助として当審において付したものである。
(サ)「本考案は以上の事情に基いてなされたもので、伝熱管に流れる流体の流量を均一にすることができ、熱交換効率を向上することができるとともに伝熱管等の温度が均一となり、熱応力を軽減し伝熱管の健全性を確保することができる熱交換器を提供することを目的とする。」(明細書第6ページ8ないし13行)
(シ)「原子炉側から送られる液体ナトリウム等の一次冷却材は一次冷却材入口ノズル112から流入し、一次冷却材流入口117から内側シェル102内に流れ、伝熱管109の外側を流れて一次冷却材流出口ノズル113から外部に流れるように構成されている。」(明細書第10ページ18行ないし第11ページ4行)
(ス)「伝熱管109の外側を流れる一次冷却材と伝熱管109の内側を流れる二次冷却材とはこれら伝熱管109の管壁を介して熱交換される。
上記構成の熱交換器において、一次冷却材入口ノズル112から流入する一次冷却材(ナトリウム)をうず卷曲線状に形成された入口偏流防止ヘッダ115によって、一次冷却材流入口117から流入する流量を均一に配分し、各伝熱管109の間を通し、一次冷却材流出口118より、出口偏流防止ヘッダ116(うず巻曲線型)を通し一次出口ノズル113から一次系へ戻す。
以上によって、一次冷却材流入口117および一次冷却材出口118からの流体(冷却材)流入・流出量が均一に配分され、それによって伝熱管109不均一加熱が防止できる。」(明細書第11ページ11行ないし第12ページ6行)

(2-2-1-3)特開昭53-14451号公報(以下、「引用例3」という。)
(2-2-1-3-1)引用例3の記載事項
引用例3には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、アンダーラインは、発明の理解の一助として当審において付したものである。
(タ)「内部円筒1の外周は熱放出流体Hを導びく外側流路を形成するように同心的に空間をおいて外部円筒6によつて囲み、熱吸収流体Oの送出口5側に熱放出流体Hの導入管7と加速ノズル8と旋回室9を備え、熱放出流体Hと熱吸収流体Oが軸方向において対向流となるよう設定する。熱吸収流体Oの導入側の外部円筒6の部分には、熱放出流体Hの放出口10を備え、熱交換を終えた熱放出流体Hが放出される。
熱放出流体Hの旋回室9は外部円筒6より大きな直径とし、加速ノズル8から接線方向に噴出される熱放出流体の噴出速度によつて旋回流を形成し、外側流路に熱放出流体Hの旋回流が供給される。」(第2ページ左下欄7ないし20行)
(チ)「以上に述べた本発明の熱交換装置は、熱放出流体導入管7を高温熱源側に接続し、熱吸収流体導入管3を低温熱源側に接続し、熱放出流体Hと熱吸収流体Oを連続的に供給する。
導入管7から供給される熱放出流体Hは加速ノズル8の部分で加速されて旋回室9に流入する。旋回室9における熱放出流体Hは高速旋回(回転)によつて強い遠心力加速度を受けながら、直径を小さくした外部円筒6による外側流路に旋回流動で導入され、旋回速度と遠心力は強められる。」(第3ページ右上欄2ないし12行)

(2-2-2)対比
本願補正発明と引用例1に記載された発明を対比すると、引用例1に記載された発明における「エンジン110」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「エンジン」に相当し、以下同様に、「吸気通路120」は「吸気通路」に、「排気還流通路140」は「EGR通路」に、「EGRクーラー200」は「EGRクーラー(1)」に、「EGRガス入口142」は「EGR入口管(2)」に、「EGRガス出口144」は「EGR出口管(3)」に、「冷却水入口240」は「冷却水の入口管(71)」に、「冷却水出口250」は「冷却水の出口管(81)」に、「チューブ230」は「EGRパイプ(5)」に、「シェル210」は「外周ケース(4)」に、それぞれ相当する。
してみると、本願補正発明と引用例1に記載された発明は、
「エンジンの排気ガスを吸気通路に再循環するEGR通路に設置され、再循環されるEGRガスを冷却水によって冷却するEGRクーラーにおいて、
前記EGRクーラーは、EGRガスの出入口となるEGR入口管及びEGR出口管と、冷却水の入口管及び出口管と、EGRガスが流れる複数のEGRパイプと、前記複数のEGRパイプを収容する外周ケースとを有しており、
前記外周ケースは、その内部に前記複数のEGRパイプの間を冷却水が流れる冷却水路が形成され、前記冷却水路の中間部の断面がほぼ円形であって、かつ、前記外周ケースの両方の端部の各々には、前記冷却水の入口管又は出口管が外周ケースに対し接線方向に設けられているEGRクーラー。」
の点で一致し、次の[相違点]でのみ相違している。
[相違点]
本願補正発明においては、「外周ケースの両方の端部は、中間部の径から徐々に拡大された径を有し、かつ、前記両方の端部の各々には、冷却水の入口管又は出口管が外周ケースに対し接線方向に設けられている」のに対し、引用例1に記載された発明においては、「シェル210の両方の端部」は、中間部の径と同じ径を有し、かつ、「前記冷却水入口240及び冷却水出口250がシェル210に対し接線方向に設けられている」点(以下、単に「相違点」という。)。

(2-2-3)判断
引用例2には、上記(2-2-1-2-1)によると、
「伝熱管109の外側を流れる一次冷却材と伝熱管109の内側を流れる二次冷却材とがこれら伝熱管109の管壁を介して熱交換される熱交換器において、一次冷却材入口ノズル112から流入する一次冷却材をうず巻曲線状に形成された入口偏流防止ヘッダ115によって、一次冷却材流入口117から内側シェル102内に導入して各伝熱管109の外側を流し、一次冷却材出口ノズル113から流出する技術。」、すなわち、
「一次冷却材入口ノズル112から流入する一次冷却材を内側シェル102の外周に配置するうず巻曲線状に形成された入口偏流防止ヘッダ115によって内側シェル102内に導入することにより、一次冷却材入口ノズル112から流入する一次冷却材を直接伝熱管109に衝突することなく内側シェル内に導入する技術。」(以下、「引用例2に記載された技術」という。)
が記載されている。
また、引用例3には、上記(2-2-1-3-1)によると、
「熱放出流体導入管7を高温熱源側に接続し、熱吸収流体導入管3を低温熱源側に接続し、熱放出流体Hと熱吸収流体Oを連続的に供給する熱交換装置において、導入管7から供給される熱放出流体Hの旋回室9は外部円筒6より大きな直径とし、加速ノズル8から接線方向に噴出される熱放出流体Hの噴出速度によって旋回流を形成し、直径を小さくした外部円筒6による外側流路に旋回流動で導入する技術。」(以下、「引用例3に記載された技術」という。)
が記載されている。
そして、そもそも、熱交換装置において、「外周ケースの内部に冷却媒体が流れる冷却通路が形成され、前記冷却通路の中間部の断面がほぼ円形であって、その両方の端部は前記中間部よりも径が拡大されており、かつ、前記両方の端部の各々には、前記冷却媒体の入口管及び出口管が設けられている」構成は、周知技術(例えば、実願昭54-56966号(実開昭55-158479号)のマイクロフィルムの第1図従来例記載の外筒c,空気入口管d,空気出口管e,入口マニホールドf,出口マニホールドg、実願昭55-42304号(実開昭56-144981号)のマイクロフィルムの第1図記載の外筒1,冷風ボックス3,熱風ボックス4,冷風入口ダクト9,熱風出口ダクト10、参照。以下、「周知技術1」という。)である。しかも、前記周知技術1を前提とするものにおいて、「冷却媒体の入口管及び出口管を外周ケースの両方の端部において、外周ケースの接線方向に設ける」構成も周知技術(例えば、特開平6-154313号公報の図1,図4,及び段落【0056】の「また、円環状流路の内側に、液体が流通可能な柱状体としてパイプの集合体を配置した熱交換器…(中略)…に適用してもよい。」の記載、参照。以下、「周知技術2」という。)というべきものである。
そうすると、引用例1に記載された発明において、入口管から入った冷却水をEGRパイプに直接衝突することなく外周ケース内に導入することを目的として、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術、並びに周知技術1及び2を適用し、その適用に際して、「外周ケースの両方の端部を、中間部の径から徐々に拡大された径を有する」ように構成することは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術、並びに周知技術1及び2から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術、並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。


第3.本願発明について
平成21年12月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年7月3日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2.[理由]1.(a)の【請求項1】のとおりのものである。

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記第2.[理由](2-2-1)に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記第2.[理由]2.(1)で検討したように、実質的に本願補正発明から「中間部よりも拡大された径」の限定事項である「中間部の径から徐々に拡大された径」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.[理由](2-2-3)に記載したとおり、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術、並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術、並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術、並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。


なお、請求人は、平成22年6月14日付けで提出した回答書において、補正案を提示している。
しかしながら、当該補正案の請求項1の補正個所である「中間部の径から徐々に拡大する拡径部に接続された、所定の軸方向長さを備えた大径部」のうち、「大径部に接続された拡径部を設ける」点は、冷却水の流れ状態などを考慮して当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎず、また、同じく補正個所である「前記冷却水の入口管(71)は、前記外周ケース(4)の前記大径部の軸方向長さにほぼ相当する径を有する」点は、引用例3に相当する構成(熱放出流体Hの導入管7は、外部円筒6より大きな直径とした旋回室9の軸方向長さにほぼ相当する径を有する)が記載されている。
したがって、当該補正案は採用しない。
 
審理終結日 2010-11-05 
結審通知日 2010-11-09 
審決日 2010-11-24 
出願番号 特願2004-86047(P2004-86047)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02M)
P 1 8・ 537- Z (F02M)
P 1 8・ 575- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 大紀  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 金澤 俊郎
西山 真二
発明の名称 エンジンのEGRクーラー  
代理人 飯田 隆  
代理人 小野 尚純  
代理人 奥貫 佐知子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ