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審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 B09B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B09B
管理番号 1230533
審判番号 不服2007-26298  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-26 
確定日 2011-01-13 
事件の表示 特願2001-369521「汚染土壌の浄化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月10日出願公開、特開2003-164846〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年12月4日に出願した特許出願であって、平成18年1月27日付けで拒絶理由が通知され、同年3月29日に意見書及び手続補正書が提出され、平成19年5月24日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年7月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付で手続補正書が提出されたものである。その後、平成22年2月1日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が通知されたが、請求人から応答がなかったものである。

2.平成19年9月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年9月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正により、補正後の特許請求の範囲の請求項1は、平成19年7月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の
「【請求項1】 活性炭を分散剤の存在下水中に分散させてなる汚染土壌の浄化用土壌処理剤を、汚染された土壌の表面から土壌中に浸透させ、土壌中の有害汚染物質を上記活性炭に吸着させ、同時に地中に浸透した微細な活性炭の表面でバクテリアを増殖させて上記活性炭に吸着された有害物質を分解することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。」
から
「【請求項1】 活性炭を分散剤の存在下水中に分散させてなる汚染土壌の浄化用土壌処理剤を、汚染された土壌の表面から土壌中に浸透させ、土壌中の有害汚染物質を上記活性炭に吸着させることを特徴とする汚染土壌の浄化方法。」
と補正された。

(2)上記補正は、補正前請求項1の「同時に地中に浸透した微細な活性炭の表面でバクテリアを増殖させて上記活性炭に吸着された有害物質を分解する」ことを削除するものである。かかる補正は、特許請求の範囲を実質拡張するものであって、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正並びに明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明白である。
なお、請求人は、審判請求書において、上記補正は明りょうでない記載の釈明を目的とするものである旨主張しているが、最後の拒絶理由通知の拒絶の理由は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないというものであり、特許請求の範囲の記載が明りょうでないことを指摘したものでないことを付記しておく。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成19年9月26日付けで提出された手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成19年7月30日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明4」という。)。

【請求項1】 活性炭を分散剤の存在下水中に分散させてなる汚染土壌の浄化用土壌処理剤を、汚染された土壌の表面から土壌中に浸透させ、土壌中の有害汚染物質を上記活性炭に吸着させ、同時に地中に浸透した微細な活性炭の表面でバクテリアを増殖させて上記活性炭に吸着された有害物質を分解することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】 活性炭の平均粒子径が100μm以下である請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】 分散液中の活性炭の含有量が1?50重量%である請求項1又は2に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】 分散液中の分散剤の含有量が0.01?20重量%である請求項1?3のいずれか1項に記載の汚染土壌の浄化方法。

4.原査定の拒絶理由の概要
原査定の理由は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていないというものであり、その概要は、請求項には「活性炭に吸着された有害物質を無害の物質に変えること」について発明の詳細な説明において具体的・客観的な裏付けが示されていないとする最後の拒絶理由通知の拒絶の理由は撤回することができない、というものである。

5.当審の判断
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断される(知財高裁平成17年(行ケ)第10042号判決、平成19年(行ケ)10401号判決参照)。
そこで、本願発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲であるものか否か、また、その記載や示唆がなくても当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か検討する。

本願発明1の「土壌中の有害汚染物質を上記活性炭に吸着させ、同時に地中に浸透した微細な活性炭の表面でバクテリアを増殖させて上記活性炭に吸着された有害物質を分解すること」について、本願明細書には、次の記載がある。
ア 「【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの方法はいずれの方法も一長一短があり、新たな技術開発が望まれている。例えば、原位置にて浄化する方法は汚染位置で浄化が可能という利点はあるものの、生物的、化学的分解法は分解の反応が徐々に進行するため、その効果が現れるまでに長時間を要すること、また、土壌ガス吸引法は汚染物質の揮発性によりその作業効率が左右され、初期においては比較的揮発性の高い物質が効率よく吸引されるものの、作業の進行に伴い揮発性の低い物質の割合が高まると共に作業効率の低下は避けられず、その他の方法の併用が必要となる。また、掘削・抽出後浄化する方法は、汚染土壌を掘削・抽出する工程が必要となるため、その間はその土地の利用は不可能なことはもとより、地上の建造物や植裁の撤去が必要となり、その復旧作業を含めると多大な費用が必要となる。更に、原位置にそのまま封じ込め或いは掘削・除去した後封じ込め・廃棄する方法は、本質的には汚染物質の浄化はなされず、単に一時的に隔離するだけで次代に負の遺産を残すのみの方法とも云える。」(段落【0005】)
イ 「従って、本発明の目的は、土壌中の汚染物質を容易にかつ低コストで、安全に環境に優しく無害化する新しい技術を提供するものである。」(段落【0006】)
ウ 「【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、活性炭を水中に微細に分散させた分散液が、汚染土壌の浄化用土壌処理剤として優れた効果を発揮することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、活性炭を、分散剤の存在下、水中に分散させてなる汚染土壌の浄化用土壌処理剤である。
本発明によれば、水中に微細に分散され吸着効果が高められた活性炭が、土壌の表面から土壌中に速やかに且つ充分に浸透することにより、土壌中の有害汚染物質をただちに吸着し、その毒性を速やかに軽減することが可能となる。更に地中に浸透した微細な活性炭の表面でバクテリアが増殖し、活性炭に吸着された有害物質を分解し、最終的には完全に無害の物質に変えてしまうことができる。」(段落【0007】?【0008】)
エ 「実施例1
<土壌浸透性試験>本発明の汚染土壌の浄化用土壌処理剤Aの100倍希釈液と、粉末活性炭(商品名:太閤活性炭S ニ村化学工業(株)製品)0.2gに水100gを加え、良く攪拌した液を、それぞれガラス管中に珪砂(6号)を詰めたものの上から添加し、浸透性を比較した。本発明の汚染土壌の浄化用土壌処理剤Aは、速やかに土壌(珪砂)中に浸透するのに対し、粉末活性炭を攪拌した液は土壌表面に活性炭の層を作ってしまい、地中にはほとんど浸透しないことが観察された。」(段落【0017】)
オ 「実施例2
<トリクロロエチレン(TLC)で汚染させた土壌の処理試験>TLCの濃度が1200μg/Lになるよう調整した汚染土壌を用意し、この土壌を深さ30cmの容器に詰め、表面より本発明の汚染土壌の浄化用土壌処理剤A及びBの50倍希釈液を2000ml/m^(2)となるように均一に潅注した後、土壌中のTLC濃度を測定した。また、対照として同量の水を表面から潅注したのち、土壌中のTLC濃度をガスクロにて測定した。結果を表1に示す。」(段落【0018】)
カ 表1(段落【0019】)には次の記載がある。
「 汚染土壌の浄化用土壌処理剤 TLC濃度(μg/L)
処理前 処理後
A 1200 2
B 1200 N.D
水 1200 900 」
キ 「実施例3
<ジクロロメタン(DCM)で汚染させた土壌の処理試験>DCMの濃度が10mg/Lになるよう調整した汚染土壌を用意し、この土壌を深さ30cmの容器に詰め、表面より本発明による汚染土壌の浄化用土壌処理剤A及びCの100倍希釈液を2000ml/m^(2)となるように均一に潅注した後、土壌中のDCM濃度を測定した。また、対照として同量の水を表面から潅注したのち、土壌中のDCM濃度をガスクロ測定した。結果を表2に示す。」(段落【0020】)
ク 表2(段落【0021】)には次の記載がある。
「 汚染土壌の浄化用土壌処理剤 DCM濃度(mg/L)
処理前 処理後
A 10 N.D.
C 10 0.005
水 10 10 」
ケ 「実施例4
土壌200mlに対し本発明の汚染土壌の浄化用土壌処理剤Aの50倍希釈液を50ml表面より散布し、3週間放置した。その後、微生物を含む土壌を水に懸濁し、適当に希釈してその少量を栄養培地に均一に広がるように加え、培養した。生じた同一のコロニーを判別・測定し、棲息する微生物を特定した。結果を表3およびダイアグラムとして図1に示す。本発明の汚染土壌の浄化用土壌処理剤Aは速やかに土壌中に均一に浸透し、土壌中で微生物の住みかとなり、無処理のものに較べ土壌中の微生物が繁殖し、微生物の数が増加し、更に各微生物のバランスも改善された。」(段落【0022】)
コ 表3(段落【0023】)には次の記載がある。
「汚染土壌の浄化用土壌処理剤 土壌1ml中の微生物数
線虫 糸状菌 細菌 放線菌
(×10^(5)) (×10^(6)) (×10^(5))
A 1.78 1.31 1.48 1.09
無処理 1.16 1.29 1.46 0.30」
サ 「【発明の効果】以上の本発明によれば、土壌中の有害汚染物質をただちに吸着し、その毒性を速やかに軽減することができ、更に地中に浸透した微細な活性炭の表面でバクテリアが増殖し、活性炭に吸着された有害物質を分解し、最終的には完全に無害の物質に変えてしまうことができる汚染土壌の浄化用土壌処理剤が提供される。」(段落【0024】)

これらの記載ア?サによれば、本願発明は、「原位置にて浄化する方法は汚染位置で浄化が可能という利点はあるものの、生物的、化学的分解法は分解の反応が徐々に進行するため、その効果が現れるまでに長時間を要する」などの課題(記載ア)に対し、「土壌中の汚染物質を容易にかつ低コストで、安全に環境に優しく無害化する新しい技術を提供すること」(記載イ)を目的として、「活性炭を、分散剤の存在下、水中に分散させてなる汚染土壌の浄化用土壌処理剤を土壌の表面から土壌中に速やかに且つ充分に浸透することにより、土壌中の有害汚染物質を吸着し、更に地中に浸透した微細な活性炭の表面でバクテリアが増殖し、活性炭に吸着された有害物質を分解し、最終的には完全に無害の物質に変え」(記載ウ)て課題解決を図ろうとするものといえる。
そして、実施例において実施例2の「トリクロロエチレン(TLC)で汚染させた土壌の処理試験」で「本発明の汚染土壌の浄化用土壌処理剤A」を用いたとき「TLC濃度がガスクロ測定で処理前1200μg/Lから処理後2μg/Lに」(記載オ、カ)、実施例3の「ジクロロメタン(DCM)で汚染させた土壌の処理試験」で、「本発明の汚染土壌の浄化用土壌処理剤A」を用いたとき「DCM濃度がガスクロ測定で処理前10mg/Lから処理後N.D.に」(記載キ、ク)、また、実施例4において「土壌に本発明の汚染土壌の浄化用土壌処理剤Aを散布して3週間放置し、希釈して培養させると、無処理に比して土壌1ml中の微生物数が放線菌で0.30(×10^(5))から1.09(×10^(5))に」(記載ケ、コ)なったことが記載されている。これらの記載から、トリクロロエチレン(TLC)、ジクロロメタン(DCM)濃度が汚染土壌の浄化用土壌処理剤Aを用いると減少することや、一応放線菌が増加することは開示されているといえなくはない。
しかしながら、本願発明1の「土壌中の有害汚染物質を上記活性炭に吸着させ、同時に地中に浸透した微細な活性炭の表面でバクテリアを増殖させて上記活性炭に吸着された有害物質を分解すること」については、本願明細書に実施例の記載はなく、活性炭表面のバクテリアによるトリクロロエチレン(TLC)、ジクロロメタン(DCM)などの有害物質の分解が具体的に裏付けられている訳ではない。そして、上記実施例2や実施例3でトリクロロエチレン(TLC)、ジクロロメタン(DCM)濃度が減少したとしても、これが活性炭に吸着された有害物質の分解によるのか明らかでない上、トリクロロエチレン(TLC)、ジクロロメタン(DCM)以外の、他の難分解物質を含む全ての有害物質で濃度が減少することや、ましてや、分解することも不明であると云わざるを得ない。更に、上記ウ、サの「活性炭に吸着された有害物質を分解し、最終的には完全に無害の物質に変えてしまうことができる」ことが達成できるか否か、その根拠も発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。
また、実施例4において「放線菌が1.09(×10^(5))」となったことが記載されているが、これは培養したコロニーを判別・測定していることから、直ちにこれが土壌の放線菌の数を示しているのか定かでなく、実際に土壌の中で放線菌などの細菌がどの程度であるのか判然としないばかりでなく、土壌の中で微生物の栄養源がどのような状況においても、特定の微生物が増殖する根拠も不明といわざるを得ない。
そして、以上述べた事項が出願当時の技術常識に照らして自明であったという根拠もない。

なお、請求人は、放線菌等が有害物質を分解することが、a特開平06-056616号公報、b特開平06-205974号公報、c特開平07-267766号公報、d特開2000-186270号公報、e特開2004-008900号公報、f特開2005-040775号公報、g特開2006-043674号公報等においてよく知られた事項である旨主張している。
上記文献をみると、出願前公知の文献a?dには、土壌病原菌に対する拮抗微生物としての放線菌を活性炭に担持させること(上記文献a)、放線菌をビスマス酸化物とチタン酸化物とからなる複合酸化物触媒体で分解すること(上記文献b)、放線菌で尿酸を分解させること(上記文献c)、放線菌などの微生物の産出した生理活性物質や他の有効物質を更にオゾン処理した抗酸化物質含有液体でダイオキシンなど有害物質を処理すること(上記文献d)などが開示されているが、放線菌等が有害物質を分解することが出願前常識であったと認識できるものではない。念のために他の文献をみても放線菌等がトリクロロエチレン(TLC)、ジクロロメタン(DCM)などの有害物質を分解することは開示がない。

以上のことから、請求項1には「土壌中の有害汚染物質を上記活性炭に吸着させ、同時に地中に浸透した微細な活性炭の表面でバクテリアを増殖させて上記活性炭に吸着された有害物質を分解すること」が本願発明特定事項として記載されているが、同時に地中に浸透した微細な活性炭の表面でバクテリアを増殖させて上記活性炭に吸着された有害物質を分解することについて実施例の記載がなく、その根拠も明らかでないことから、出願時の技術常識に照らしても、本願発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲であるものではなく、明細書のサポート要件に適合するものとはいえない。

6.むすび
したがって、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、その他の拒絶の理由を検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-05 
結審通知日 2010-11-09 
審決日 2010-11-29 
出願番号 特願2001-369521(P2001-369521)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (B09B)
P 1 8・ 56- Z (B09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 新司星野 紹英斉藤 信人  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 豊永 茂弘
目代 博茂
発明の名称 汚染土壌の浄化方法  
代理人 吉田 勝広  
代理人 近藤 利英子  
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