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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1230655
審判番号 不服2008-2150  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-28 
確定日 2011-01-19 
事件の表示 特願2004-259060「感情あるエージェントを有するプロアクティブユーザインターフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月31日出願公開、特開2005- 85274〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年9月6日(パリ条約による優先権主張2003年9月5日、米国、2003年12月23日、米国、2004年3月10日、韓国、2004年8月27日、韓国)の出願であって、平成19年2月6日付けの拒絶の理由の通知に対して、同年5月10日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年10月22日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し平成20年1月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年2月27日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成20年2月27日付けの手続補正についての却下の決定
[結論]
平成20年2月27日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成20年2月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、平成19年5月10日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1(以下「補正前の請求項1」という。)は、平成20年2月27日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1(以下「補正後の請求項1」という。)に補正された。
補正前の請求項1及び補正後の請求項1は、以下のとおりである。

補正前の請求項1
「オペレーティングシステムを備え、プロアクティブユーザインターフェースを備えた演算装置において、
a) 使用者と情報交換を可能にするエージェントが提供され、前記使用者と前記オペレーティングシステムとの間の通信のためのインターフェース部と、
b) 前記オペレーティングシステムにより制御される少なくとも一つのソフトウェアアプリケーションと、
c) 前記アプリケーションを支援して、前記オペレーティングシステムを有するホストプラットホームと通信して、前記インターフェース部と前記使用者との相互作用の少なくとも一つのパターンを検出して、前記検出されたパターンに従って、使用者にユーザインターフェースの少なくとも一つの機能を変化させるための選択事項を能動的に提案する人工知能フレームワークと、から構成され、
前記エージェントは、前記提案に対する使用者の反応に従う感情を表現することを特徴とする感情あるエージェントを有するプロアクティブユーザインターフェースを備えた演算装置。」

補正後の請求項1
「オペレーティングシステムを備え、プロアクティブユーザインターフェースを備えた演算装置において、
a) ユーザと情報交換を可能にするエージェントが提供され、前記ユーザと前記オペレーティングシステムとの間の通信のためのインターフェース部と、
b) 前記オペレーティングシステムにより制御される少なくとも一つのソフトウェアアプリケーションと、
c) 前記アプリケーションを支援して、前記オペレーティングシステムを有するホストプラットホームと通信して、前記インターフェース部と前記ユーザとの以前の相互作用のパターンおよび予めプログラムされたパターンのうちの少なくとも一つのパターンを検出して、前記検出されたパターンに従って、ユーザにユーザインターフェースの少なくとも一つの機能を変化させるための選択事項を能動的に提案する人工知能フレームワークと、
から構成され、
前記エージェントは、前記提案に対するユーザの反応に従う感情を表現することを特徴とする感情あるエージェントを有するプロアクティブユーザインターフェースを備えた演算装置。」

本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「相互作用」及び「相互作用のパターン」について「以前の」及び「および予めプログラムされたパターンのうちの」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。なお、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「使用者」を「ユーザ」と変更する補正については、両者は同義であるから、実質的な補正はなされていないと認める。

そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例の記載
(a)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-73233号公報(平成14年3月12日出願公開。以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

A.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は知識ベース及び推論エンジンを用いて、受け付けた入力に対応する処理を行うエージェント機能を備える処理装置及び該処理装置で行われる処理を支援する処理支援装置を用いた処理方法、その方法を適用した処理システム、そのシステムに用いられる処理装置及び処理支援装置、並びにそれらの装置を実現するためのプログラムが記録された記録媒体に関し、特にキャラクタを示す出力情報を含むオブジェクトモジュールにより示されるオブジェクトを、エージェント機能に連動させて出力し、処理装置を操作する操作者の操作を支援するマンマシンインターフェースを提供する処理方法、処理システム、処理装置、処理支援装置、及び記録媒体に関する。」(第4ページ第5欄第3行目?同欄第16行目)

B.「【0046】
【発明の実施の形態】以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は本発明の処理システムの概念を示す説明図、図2は本発明の処理システムの構成を示すブロック図、そして図3は本発明の処理システムにて用いられる装置を実現するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体を概念的に示す説明図であり、図3(a)が本発明の処理装置を実現するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体を示し、図3(b)が本発明の処理支援装置を実現するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体を示す。
【0047】図中10はパーソナルコンピュータ、携帯電話、及びPDA等のコンピュータを用いた本発明の処理装置であり、処理装置10は操作者100により管理されており、インターネット等の通信ネットワークNWに接続する。なお操作者100は複数の処理装置10,10,…を一人で管理する場合もある。
【0048】通信ネットワークNWには、ショッピング、各種チケットの予約、コンピュータサポート等のサービスを提供するサービス事業体200が管理するサーバコンピュータを用いた処理支援装置20が接続されており、処理支援装置20はサービス事業体200の担当者201が操作する。
【0049】処理装置10は、図3(a)に示す本発明の処理装置用のプログラム及びデータ等の情報を記録したCD-ROM等の記録媒体31からプログラム及びデータ等の情報を読み取るCD-ROMドライブ等の補助記憶手段12、並びに補助記憶手段12により読み取られたプログラム及びデータ等の情報を記録するハードディスク等の記録手段13を備えている。
【0050】そして記録手段13からプログラム及びデータ等の情報を読み取り、情報を記憶する主記憶手段14に記憶してCPU11により実行することで、コンピュータは本発明の処理装置10として動作する。
【0051】記録手段13に記録される本発明のプログラム及びデータ等の情報の一部としては、事実、常識、経験則、及び対処法等の推論を行うための規則をデータベース化した知識ベース、並びに知識ベースを用いて推論を行う推論エンジンがあり、知識ベース及び推論エンジンを用いて、受け付けた入力に対応する処理を行わせるエージェント機能を実現する。
【0052】また記録手段13には本発明のプログラム及びデータ等の情報以外にも、基本ソフトウェアプログラム(以下OS:Operating Systemという)、並びにOS上で処理される電子メール用ソフトウェアプログラム及び閲覧用ソフトウェアプログラム等の応用ソフトウェアプログラム(以下アプリケーションプログラムという)等の各種情報が記録されている。
【0053】主記憶手段14には、本発明のプログラムの一部でありオブジェクトを示す出力情報を含むオブジェクトモジュール等の特に重要なプログラムを格納し、OS上に常駐させるための常駐域14a、及び各種アプリケーションプログラムを必要に応じて格納する非常駐域14bが確保されている。
【0054】ここでいうオブジェクトモジュールとは、エージェント機能と連動し、音声処理、画像処理、及び学習処理等の各種の処理を行うプログラムを示し、人物、動物、及び仮想生物等のキャラクタの画像(動画)及び音声を示すオブジェクトを出力情報として含んでいる。
【0055】例えばタレント及び恋人等の人物の画像をオブジェクトとして出力し、そして受け付けた音声入力に対応する処理を行うエージェント機能と連動させることにより、恰も人物と会話しているかの如く入力処理を行うことができ、またオブジェクトモジュールは、主記憶手段14に常駐しているため、アプリケーションプログラムを限定しない優れたマンマシンインターフェースとなる。
【0056】さらに処理装置10は、キーボード、マウス、及びマイク等の入力手段15、モニタ及びスピーカ等の出力手段16、通信ネットワークNWに接続するモデム及びターミナルアダプタ等の通信手段17、並びにスキャナ及びデジタルスチルカメラ等の画像入力装置40と接続する接続手段18を備えている。
【0057】処理支援装置20は、CPU21、図3(b)に示す本発明の処理支援装置用のプログラム及びデータ等の情報を記録したCD-ROM等の記録媒体32からプログラム及びデータ等の情報を読み取る補助記憶手段22、補助記憶手段22により読み取られたプログラム及びデータ等の情報を記録する記録手段23を備え、記録手段23からプログラム及びデータ等の情報を読み取り、情報を記憶する主記憶手段24に記憶してCPU21により実行することで、サーバコンピュータは本発明の処理支援装置20として動作する。
【0058】記録手段23には、処理装置10と同様に処理支援装置用知識ベース及び推論エンジンが記録されており、処理支援装置用知識ベース及び推論エンジンを用いて処理装置10における処理を支援するためのエージェント機能を実現する。
【0059】さらに記録手段23の記録領域の一部は、処理装置10を管理する操作者100に関する顧客情報を記録する顧客データベース20a、及び処理装置10が備える知識ベースに関する情報を記録する知識ベースデータベース20b等の各種データベースとして用いられており、必要に応じて各種データベースにアクセスし、情報の記録/読取処理が行われる。
【0060】なお記録手段23の記録領域の一部を各種データベースとして用いるのではなく、記録手段を備える他の装置を処理支援装置20に接続し、各種データベースとして用いてもよい。
【0061】また処理支援装置20は、入力手段24、出力手段25、及び通信手段26を備えている。」(第8ページ第13欄第49行目?第9ページ第16欄第1行目)

C.「【0079】次に本発明の処理システムにて用いられる処理装置10のエージェント処理を図7に示すフローチャートを用いて説明する。処理装置10では、主記憶手段14の常駐域14aに常駐したオブジェクトモジュールの出力情報により、操作者100に対し対話形式で入力を要求する(S301)。
【0080】操作者100は、入力の要求に対し、メール用ソフトウェアプログラムの起動及び閲覧用ソフトウェアプログラムを用いた特定のウェブページへのアクセス等の処理を要求する入力を行う。なお処理を要求する入力とは、このようなアプリケーションプログラムを操作する実務的な処理要求だけでなく、「おはよう」等のオブジェクトに対する会話を模倣した処理の要求でもよい。また以降の説明では、音声により入力を行う形態を示すが、キーボードによる文字の入力でもよい。
【0081】処理装置10では、音声情報として入力を受け付け(S302)、受け付けた入力に対して音声認識処理を行い(S303)、受け付けた入力を示す入力情報に変換する。そして入力情報に対応する処理が、知識ベースに記録されているか否かの検索を行い(S304)、対応する処理が記録されている場合(S305:Y)、記録されている対応処理を行う(S306)。このように知識ベースに処理が記録されている場合には、エージェント機能により自律的に処理がなされる。
【0082】ステップS305にて、対応する処理が記録されていない場合(S305:N)、処理支援装置20へ、入力に対する処理の指示を要求する指示要求情報を送信し、送信した指示要求情報に対する指示を示す指示情報を受信して、受信した指示情報に基づく対応処理を行う支援処理がなされる(S307)。
【0083】ステップS301の入力の要求からステップS306又はS307の対応処理実施までの処理に基づいて知識ベースを更新し(S308)、更にオブジェクトモジュールを更新する(S309)。
【0084】知識ベースを更新することにより、エージェント機能を強化する学習処理がなされ、オブジェクトモジュールを更新することにより、オブジェクトの成長を演出することができる。
【0085】またステップS301の入力の要求からステップS306又はS307の対応処理の実施まで処理に基づき、オブジェクトの出力情報を変化させる(S310)。即ち、入力間隔、入力内容、及び処理結果に応じてオブジェクトの画像及び音声を変化させる。
【0086】次に本発明の処理システムにて用いられる処理装置10及び処理支援装置20の支援処理を図8に示すフローチャートを用いて説明する。図7におけるステップS307において、支援処理を行う処理支援装置20は、予めオブジェクトモジュールに登録されており、特にサービス事業体200が管理する処理支援装置20から受信したオブジェクトモジュールを用いている場合、オブジェクトモジュールの送信元である処理支援装置20又は当該サービス事業体200が管理する他の処理支援装置20が支援処理を行う。
【0087】この形態を応用したサービス形態の例としては、サービス事業体200であるコンピュータ関連会社からオブジェクトモジュールを受信し、コンピュータにトラブルが発生した場合に、オブジェクトモジュールを介してサービス事業体200に、トラブル解消のサポート支援を要求する形態がある。
【0088】処理装置10では、エージェント処理中のステップS307の処理として、予め設定されている処理支援装置20との通信を確立し(S401)、ステップS302にて受け付けた入力を示す入力情報に対応する処理の指示を要求する指示要求情報を、処理支援装置20へ送信する(S402)。
【0089】処理支援装置20では、指示要求情報を受信し(S403)、受信した指示要求情報に対応する指示情報が、処理支援装置用知識ベースに記録されているか否かの検索を行い(S404)、対応する指示情報が記録されている場合(S405:Y)、記録されている指示情報を処理装置10へ送信する(S406)。
【0090】ステップS405において、対応する指示情報が記録されていない場合(S405:N)、担当者201の操作により、送信すべき指示情報を作成する担当者処理がなされる(S407)。
【0091】処理装置10では、指示情報を受信し(S408)、受信した指示情報に基づいて対応処理が行われる(S409)。なおステップS409での対応処理は、指示情報に基づいて自動的に行われるようにしても、操作者100に対して適切な操作を示す音声等の指示情報を出力し、出力した指示情報に基づく操作者100の操作の入力を受け付けて対応処理を行うようにしてもよい。
【0092】また処理支援装置20では、指示要求情報及び指示情報に基づいて、処理支援装置用知識ベースを更新する(S410)。特に処理支援装置用知識ベースに記録されていない指示要求情報を受信し、担当者処理により生成した指示情報を送信した場合、ステップS410での更新処理により、以降には同様の指示要求情報に対して、自律的な処理より、同様の指示情報を送信することができるようになる。
【0093】即ち、サービス事業体200にとっては、サービス開始当初は、担当者処理が中心に行われるが、処理支援装置用知識ベースに指示情報が記録されている場合には、処理支援装置用知識ベースを用いた自動処理が優先されるため、処理支援装置用知識ベースの更新を繰り返すことにより、担当者処理を低減することができ、最終的には完全な自動化を目標とすることができる。
【0094】また処理支援装置20にて支援処理が行われている間、出力情報を考え込んでいる画像に変化させることにより、操作者100に対して、支援処理に要する時間を原因とする不満の発生を抑制することが可能となる。
【0095】次に本発明の処理システムにて用いられる処理支援装置20の担当者処理を図9に示すフローチャートを用いて説明する。図8におけるステップS407において、担当者処理を行う場合、処理支援装置20では、ステップS403で受信した指示要求情報を出力し(S501)、更に顧客データベース20aから当該処理装置10に該当する顧客情報、例えば以前の処理支援の履歴を抽出し(S502)、抽出した顧客情報を出力する(S503)。
【0096】担当者201は、出力された指示要求情報及び顧客情報を確認し、指示情報を処理支援装置20に入力する。この指示情報は、例えば「メールアドレスを確認して下さい」といった音声により行われる。
【0097】処理支援装置20は、指示情報の入力を受け付け(S504)、受け付けた指示情報を、処理装置が備えるオブジェクトのキャラクタの音声に変換する音声変換処理を行い(S505)、音声変化した指示情報を図8に示すステップS406の処理により処理装置10へ送信する。そして受信した指示要求情報に基づいて顧客データベース20aを更新する(S506)。
【0098】処理装置10では、受信した指示情報を出力し、またその画像を、話をしている出力情報に変化させることにより、操作者100に対して、オブジェクトが対応方法を話しているかの如き印象を与えることができ、例えばコンピュータトラブルに対して、操作者100が意識することなく、サービス事業体200の担当者201のサポートを受けることができる。」(第10ページ第18欄第2行目?第11ページ第20欄第32行目)

D.「【0116】前記実施の形態では、知識ベースに、受け付けた入力に対応する処理が記録されていない場合、処理支援装置20と通信して処理支援を受ける形態を示したが、本発明はこれに限らず、対応処理を操作者100が入力するようにしてもよく、これにより、本発明の処理システムは、通信ネットワークNWに接続しないスタンドアローンの形態でも実施することが可能となる。」(第12ページ第22欄第43行目?同欄第49行目)

以上の記載によれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「処理装置10において、
処理装置10は、操作者100により管理され、
コンピュータは、記録手段13からプログラム及びデータ等の情報を読み取り、情報を記憶する主記憶手段14に記憶してCPU11により実行することで、処理装置10として動作し、
記録手段13に記録されるプログラム及びデータ等の情報の一部としては、事実、常識、経験則、及び対処法等の推論を行うための規則をデータベース化した知識ベース、並びに知識ベースを用いて推論を行う推論エンジンがあり、知識ベース及び推論エンジンを用いて、受け付けた入力に対応する処理を行わせるエージェント機能を実現し、
記録手段13には、基本ソフトウェアプログラム(OS)及びOS上で処理されるアプリケーションプログラム等の各種情報が記録され、
オブジェクトモジュールとは、エージェント機能と連動し、音声処理、画像処理、及び学習処理等の各種の処理を行うプログラムを示し、人物、動物、及び仮想生物等のキャラクタの画像(動画)及び音声を示すオブジェクトを出力情報として含んでおり、
オブジェクトモジュールは、主記憶手段14に常駐しているため、アプリケーションプログラムを限定しない優れたマンマシンインターフェースとなり、
処理装置10では、主記憶手段14に常駐したオブジェクトモジュールの出力情報により、操作者100に対し対話形式で入力を要求し、
操作者100は、入力の要求に対し、処理を要求する入力を行い、
処理装置10では、入力を受け付け、受け付けた入力を示す入力情報に変換し、入力情報に対応する処理が、知識ベースに記録されているか否かの検索を行い、
対応する処理が記録されている場合、記録されている対応処理を行い、
対応する処理が記録されていない場合、対応処理を操作者100が入力し、
入力の要求から対応処理実施までの処理に基づいて知識ベースを更新し、
入力の要求から対応処理の実施まで処理に基づき、オブジェクトの出力情報を変化させ、つまり、入力間隔、入力内容、及び処理結果に応じてオブジェクトの画像及び音声を変化させる
処理装置10。」

(b)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-249949号公報(平成13年9月14日出願公開。以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

A.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報検索及び提示装置において、ユーザとコンピュータの対話の中で、コンピュータの反応や情報提示に対して感情を伴わせるための、感情生成装置に関する。」(第5ページ第7欄第43行目?同欄第47行目)

B.「【0004】ここで、「エージェント」とは、文字どおり、人の作業を代行するソフトウェアであり、その1つにインタフェースエージェントがある。インタフェースエージェントはシステムから利用者に能動的に働きかけるインタフェースであり、システムと利用者との間でのやさしい対話、必要な情報を絶妙のタイミングでわかりやすく提示してくれる擬人的なインタフェース技術を包括している。インタフェースエージェントの範疇に入る擬人化エージェントは、システムにアニメーションキャラクタの表情や動作などの擬人的な振舞いを付加することで、利用者にシステムの状態(例えば、利用者の質問に対する理解度など)を提示する。すなわち、「擬人化エージェント」はインタフェースエージェントに顔をもたせたものといえる。」(第5ページ第8欄第8行目?同欄第21行目)

C.「【0072】次に、図13を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る感情生成装置の構成について詳細に説明する。図示の感情生成装置は、後述するように感情生成部での動作が相違していると共に、エージェント感情モデル記憶部に記憶されている内容(エージェント感情モデル)が相違している点を除いて、図1に示した感情生成装置と同様の構成を有し、動作をする。したがって、感情生成部に参照符号16Aを付し、エージェント感情モデル記憶部に参照符号17Aを付し、そして処理装置に参照符号20Bを付してある。
【0073】感情生成部16Aに対して、自信度計算部14から送出される提案アイテムに対する自信度が入力されるだけではなく、入力部11から送出されるユーザの応答40もが入力されている。
【0074】第4の実施の形態では、自信度に応じた感情を伴って提案されたアイテムに対して、ユーザが肯定や否定などの反応を行うと、これを第二の入力として感情生成が行われる。感情生成部16Aは、自信度計算部14から送出される、提案されていたアイテムの自信度と、入力部11から送出されるユーザ応答という、2つの属性を参照して、エージェント感情を生成する。
【0075】次に、図14のフローチャートを参照して、第4の実施の形態に係る感情生成装置の動作について説明する。図14におけるステップ301から309までの動作は、図2におけるものと同様である。例えば、ユーザが「食事がしたい」等のような条件を入力した場合、自信度計算部14は、ユーザ嗜好の程度と自信度との対応から自信度を計算し、感情生成部16Aは自信度と感情との対応から感情を決定し、出力データ生成部18は「自信満々」などの感情を伴った提案用のセリフ「イタリア料理がお薦めです。どうですか?」等と動作と表情を生成し、出力部19から出力する。
【0076】次に、ユーザが提案されたアイテムに対する応答を入力する場合を考える。ユーザは提案された「イタリア料理」というアイテムに対して、肯定的か否定的な応答を行い、その応答が入力部1から入力される(ステップ1310)。ユーザの応答は、提案アイテム検索部12に送られ、条件に即した検索が新たに行われる(ステップ302)。と同時に、ユーザの応答は、感情生成部16Aに送られ、ユーザの応答に対するエージェントの感情が生成される。
【0077】まず、感情生成部16Aの動作について説明する。感情生成部16Aでは、エージェント感情モデル記憶部17Aに記憶されている、提案されていたアイテムの自信度とユーザ応答という2つの属性とエージェント感情との対応を記述したエージェント感情モデルを参照して、感情を決定する(ステップ1311)。
【0078】例えば図15に示すように、エージェント感情モデル記憶部17Aに記憶されたエージェント感情モデルにおいて、自信度が「自信あり」で提案したアイテムに対して、入力部11から送出されたユーザ応答が「否定」の場合、エージェントの感情を「不平」と対応づける。また、自信度が「自信あり」で提案したアイテムに対して、ユーザ応答が「肯定」の場合、エージェントの感情を「満足」と対応づける。その他、自信度が「普通」で提案したアイテムに対して、ユーザ応答が「否定」の場合エージェントの感情を「落胆」と対応付け、ユーザ応答が「肯定」の場合エージェント感情を「喜び」と対応づける例が考えられ、さらに、自信度が「自信なし」で提案したアイテムに対して、ユーザ応答が「否定」の場合エージェントの感情を「諦め」に対応付け、ユーザ応答が「肯定」の場合エージェント感情を「安堵」に対応づける例などが考えられる。
【0079】感情生成部16Aは、エージェント感情モデル記憶部17Aに記憶されたエージェント感情モデルで決定できる感情に複数の選択肢があるかどうかを判断し(ステップ1312)、図15に示すように、複数の選択肢がない場合は、表に示された感情に決定し、その感情を出力データ生成部18へ送出する。出力データ生成部18は、送出された感情に対して、ユーザ応答に対する反応を行うためのセリフや、動作や表情を生成する(ステップ1314)。
【0080】図16に対話例を示す。「イタリア料理がお薦めです。どうですか?」という「自信満々」の感情を伴った提案、すなわち「自信あり」の提案に対して、ユーザが「イヤだ」等のように否定したとしよう。その場合、感情生成部16Aは、エージェント感情モデル記憶部17Aに記憶されたエージェント感情モデルを参照して、「不平」の感情を生成し、出力データ生成部18は、「不平」に相当する反応文として、「全く気まぐれだよね」のようなセリフと、眉を寄せて口角を下げた表情と、腰に手を当てる動作等の、ユーザの応答に不平を示しているエージェントの反応を生成する。
【0081】同様に、「自信あり」で提案されたアイテムに対して、ユーザが「いいね」等のように肯定したとしよう。その場合、感情生成部16Aは、エージェント感情モデル記憶部17Aに記憶されたエージェント感情モデルを参照して、「満足」の感情を生成し、出力データ生成部18は、満足に相当する反応文として、「そうでしょうとも!」のようなセリフと、片目をつぶってウィンクしている表情と、胸を張っている動作等の、ユーザの応答に満足しているエージェントの反応を生成する。」(第12ページ第21欄第43行目?第13ページ第23欄第35行目)

D.「【0093】また第二の効果は、エージェントが自信度に応じたエージェント感情をもって提案したアイテムに対して、ユーザが肯定や否定の応答をすることによって、さらに別のエージェント感情が生成され反応文として返されるため、ユーザにとってエージェントが自分の応答に対して反応している自然な対話が実現できるように感じさせる点である。」(第14ページ第25欄第36行目?同欄第42行目)

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「基本ソフトウェアプログラム(OS)」は、本願補正発明の「オペレーティングシステム」に相当する。
引用発明において、処理装置10はコンピュータであるから、引用発明の「処理装置10」は、本願補正発明の「演算装置」に相当する。
引用発明において、処理装置10はマンマシンインターフェースを備えており、引用発明の「マンマシンインターフェース」と本願補正発明の「プロアクティブユーザインターフェース」は、「ユーザインターフェース」である点で一致する。
引用発明の「操作者100」は、本願補正発明の「ユーザ」に相当する。
引用発明において、知識ベース及び推論エンジンを用いて、受け付けた入力に対応する処理を行わせるエージェント機能を実現し、オブジェクトモジュールは、エージェント機能と連動し、人物、動物、及び仮想生物等のキャラクタの画像(動画)及び音声を示すオブジェクトを出力情報として含んでおり、また、オブジェクトモジュールは、マンマシンインターフェースとなることから、引用発明において、「エージェント機能」及び「オブジェクトモジュール」によって、本願補正発明の「エージェント」に相当する構成を実現していることは明らかである。
引用発明において、エージェント機能及びオブジェクトモジュールによって操作者100と情報交換を可能としていることは明らかである。また、引用発明において、操作者100の入力によりOS上で処理されるアプリケーションプログラムが入力に対応した処理を行うことは明らかであるから、引用発明は、本願補正発明の「ユーザと情報交換を可能にするエージェントが提供され、前記ユーザと前記オペレーティングシステムとの間の通信のためのインターフェース部」に相当する構成を有している。
引用発明の「OS上で処理されるアプリケーションプログラム」は、本願補正発明の「前記オペレーティングシステムにより制御される少なくとも一つのソフトウェアアプリケーション」に相当する。
引用発明の「知識ベース」及び「推論エンジン」は、本願補正発明の「人工知能フレームワーク」に相当する。また、引用発明の知識ベースにデータベース化された「事実、常識、経験則、及び対処法等の推論を行うための規則」は、本願補正発明の「予めプログラムされたパターン」に相当する。さらに、引用発明において、処理装置10では、入力を受け付け、受け付けた入力を示す入力情報に変換し、入力情報に対応する処理が、知識ベースに記録されているか否かの検索を行い、対応する処理が記録されていない場合、対応処理を操作者100が入力し、入力の要求から対応処理実施までの処理に基づいて知識ベースを更新することから、知識ベースでは、受け付けた入力と操作者100が入力した対応処理という規則が新たに追加される更新が行われることは明らかである。そして、その「受け付けた入力」と「操作者100」が入力した「対応処理」という規則は、本願補正発明の「前記インターフェース部と前記ユーザとの以前の相互作用のパターン」に相当する。加えて、引用発明の「対応する処理」を行う構成と本願補正発明の「提案する」構成は、「処理」する構成である点で一致する。そうすると、引用発明において、処理装置10では、入力を受け付け、受け付けた入力を示す入力情報に変換し、入力情報に対応する処理が、受け付けた入力と操作者100が入力した対応処理という規則が新たに追加される更新が既に行われた知識ベースに記録されているか否かの検索を行い、対応する処理が記録されている場合、記録されている対応処理を行うことから、引用発明と本願補正発明は、「前記インターフェース部と前記ユーザとの以前の相互作用のパターンおよび予めプログラムされたパターンのうちの少なくとも一つのパターンを検出して、前記検出されたパターンに従って、処理する人工知能フレームワーク」に相当する構成を有する点で一致する。

すると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「オペレーティングシステムを備え、ユーザインターフェースを備えた演算装置において、
a) ユーザと情報交換を可能にするエージェントが提供され、前記ユーザと前記オペレーティングシステムとの間の通信のためのインターフェース部と、
b) 前記オペレーティングシステムにより制御される少なくとも一つのソフトウェアアプリケーションと、
c)前記インターフェース部と前記ユーザとの以前の相互作用のパターンおよび予めプログラムされたパターンのうちの少なくとも一つのパターンを検出して、前記検出されたパターンに従って、処理する人工知能フレームワークと、
から構成されることを特徴とするエージェントを有するユーザインターフェースを備えた演算装置。」

一方、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明では、人工知能フレームワークが、アプリケーションを支援して、オペレーティングシステムを有するホストプラットホームと通信するのに対し、引用発明では、この構成について明確な記載がない点。
<相違点2>
本願補正発明では、演算装置がプロアクティブユーザインターフェースを備えているのに対し、引用発明では、演算装置が備えるユーザインターフェースがプロアクティブであるとは記載されていない点。
<相違点3>
本願補正発明では、人工知能フレームワークが、検出されたパターンに従って、ユーザにユーザインターフェースの少なくとも一つの機能を変化させるための選択事項を能動的に提案するのに対し、引用発明では、人工知能フレームワークが、検出されたパターンに従って、処理する点。
<相違点4>
本願補正発明では、エージェントは、提案に対するユーザの反応に従う感情を表現する感情あるエージェントであるのに対し、引用発明では、この構成について記載がない点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1についての検討>
引用発明において、知識ベース及び推論エンジンが、アプリケーションプログラムの処理を支援していることは明らかである。
また、本願明細書段落【0052】?【0066】及び【図3】の記載によると、ホストプラットホームは、演算装置における外部からの入力の受取及び外部への出力を行うインターフェースを含むものといえる。一方、引用発明において、処理装置10における外部からの入力の受取及び外部への出力を行うインターフェースを含む構成を備えることは明らかである。さらに、コンピュータにおいて、外部からの入力の受取及び外部への出力を行うインターフェースがOSにより制御されることは、文献を示すまでもなく、優先日前周知であるから、OSを有する引用発明において、上記周知技術を適用し、処理装置10における外部からの入力の受取及び外部への出力を行うインターフェースを含む構成(本願補正発明の「ホストプラットホーム」に相当。)が前記OSを有するようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。その場合に、知識ベース及び推論エンジンが、外部からの入力の受取又は外部への出力を行う際に、OSを有する処理装置10における外部からの入力及び外部への出力を行うインターフェースを含む構成と通信を行うことは、明らかである。
したがって、引用発明において、上記周知技術を適用し、人工知能フレームワークが、アプリケーションを支援して、オペレーティングシステムを有するホストプラットホームと通信するように構成することは、当業者が適宜なし得ることである。

<相違点2及び3についての検討>
ユーザインターフェースにおいて、記憶されているユーザインターフェースの使用履歴に基づいて、特定の状況を検出すると、ユーザインターフェースがユーザに選択事項を能動的に提案する技術は、原査定において示された特開平11-259446号公報(特に、第10ページ【0055】参照。)、及び米国特許第5901246号明細書(特に、第77欄第36行目?同欄第59行目参照。)に記載されているように、本願優先日前周知である。
また、ユーザインターフェースがユーザに能動的に提案する選択事項を、ユーザインターフェースが検出するパターンに対応して行われる処理のうちどのような処理のためのものとするかは、当業者が必要に応じて適宜決定し得る設計的事項である。さらに、ユーザインターフェースが検出するパターンに対応して行われる処理の1つとして、ユーザインターフェースの少なくとも一つの機能を変化させる処理があることは、文献を示すまでもなく、本願優先日前周知である。
加えて、プロアクティブユーザインターフェースとは、ユーザに先回りして行動するユーザインターフェースのことであるから、ユーザに選択事項を能動的に提案するユーザインターフェースは、プロアクティブユーザインターフェースであるといえる。
したがって、引用発明において、上記周知技術を適用して、演算装置がプロアクティブユーザインターフェースを備えるように構成し、また、人工知能フレームワークが、検出されたパターンに従って、ユーザにユーザインターフェースの少なくとも一つの機能を変化させるための選択事項を能動的に提案するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

<相違点4についての検討>
引用例2には、「エージェントの提案についてのユーザの応答に対するエージェントの感情が生成される」技術が記載されている。
そして、引用発明及び引用例2に記載された技術の属する技術分野は、インターフェースエージェントである点で共通する。
したがって、引用発明において、引用例2に記載された技術を適用して、エージェントを、提案に対するユーザの反応に従う感情を表現する感情あるエージェントとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

また、本願補正発明の構成によって生じる効果も、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術から当業者が予測できる程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成20年2月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、補正前の請求項1に記載された事項により特定される、前記2.(1)に記載したとおりのものである。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び引用例2並びにそれらの記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(2)当審の判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「以前の」及び「および予めプログラムされたパターンのうちの」との構成を省き、また、「ユーザ」を「使用者」に戻したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-17 
結審通知日 2010-08-24 
審決日 2010-09-06 
出願番号 特願2004-259060(P2004-259060)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久米 輝代  
特許庁審判長 江嶋 清仁
特許庁審判官 安久 司郎
中野 裕二
発明の名称 感情あるエージェントを有するプロアクティブユーザインターフェース  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
代理人 実広 信哉  

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