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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F16G
管理番号 1230676
審判番号 不服2009-22828  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-24 
確定日 2011-01-19 
事件の表示 特願2006- 67934「タイミングベルト及びその結合構造」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月 7日出願公開、特開2007-139180〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は、平成18年3月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年11月15日 大韓民国)の出願であって、平成21年7月10日(起案日)付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年11月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明

本願の請求項1及び2に係る発明は、平成21年6月2日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認めるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
ベルト本体部に歯形が設けられたタイミングベルトにおいて、前記歯形とベルト本体部が接するコーナー部に歯元部で突き出されて歯形を掘り下げるように溝を設けたことを特徴とするタイミングベルト。」

3.引用刊行物とその記載事項

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物は次のとおりである。

刊行物1 実願昭63-78257号(実開平2-436号)のマイクロフィルム

上記刊行物1には、「歯付きベルト」に関して、図面とともに次の記載がある。

(ア)「2.実用新案登録請求の範囲
長手方向に一定の間隔で歯が設けられると共にプーリと噛み合って動力を伝達する歯付きベルトにおいて、前記歯の両側の歯元部のうち少なくともどちらか一方に該歯の歯すじ方向に沿って溝が形成されたことを特徴とする歯付きベルト。」

(イ)「<考案が解決しようとする課題>
このような従来の伝動装置において、タイミングベルト11の駆動時にこのベルト11のそれぞれの歯18にかかる荷重はその歯毎に異なるものとなる。即ち、第7図(a)に示すように、ベルト11に同図矢印方向の張力が働いたとき、そのベルト11の各歯18にかかる荷重は、第7図(b)に示すように、1番目に噛み合っている歯にかかる荷重が一番大きく、その荷重は順に減少していき最後に噛み合っているN番目の歯にかかる荷重が一番小さいものとなる。また、第8図(a)に示すように、前述とは逆にベルト11に同図矢印方向の張力が働いたとき、そのベルト11の各歯18にかかる荷重の大きさは、第8図に示すように、前述とは逆の関係となる。
このようにベルト11の駆動時、プーリ12,13と噛み合うベルト11の各歯18には均等に荷重がかかることはなく、ベルト11の歯18にかかる荷重の大きさはプーリ20の位置によって異なり、部分的に過大な荷重が作用する。そのため、このベルト11の歯元部20に繰返し大きな荷重がかかることとなり、この歯元部20に次第に割れが生じてベルト11の歯18が欠けてしまったり、あるいはこの割れがゴムベルト層15に派生してベルト11が破断されてしまうという問題を生じてしまう。また、このとき、両者の接触により異音も発生する。」(第3ページ第8行?第4ページ第16行)

(ウ)「本考案はこのような問題点を解決するものであり、歯付きベルトの各歯に作用する荷重を均等化することによりベルトの割れを防止して耐久性の向上を図った歯付きベルトを提供することを目的とする。」(第4ページ第17行?第5ページ第1行)

(エ)「<作用>
ベルトの各歯の歯元部に溝を形成することで各歯の可撓性が増す。そのため歯付きベルトの各歯がプーリの各歯と噛み合って回転するときにベルトにその長手方向の張力が働くと、ベルトの各歯は若干撓んでプーリの各歯に正確に適合して噛み合った状態となり、ベルトの各歯にはほぼ均等に荷重がかかることとなる。」(第5ページ第10?18行)

(オ)「第1図に示すように、本考案の歯付きベルト30の構造は従来と同様に、合成ゴム層15の中に芯線16が挿入され表面に帆布17が貼り付けられてなっている。そして、このベルト30の内側には断面形状が台形をなす複数の歯31がベルト30の長手方向に一定の間隔で並設され、それぞれの歯31の両側の歯元部32にはその歯すじ方向に沿って溝33が形成されている。」(第6ページ第9?17行)

(カ)「このように、歯付きベルト30とプーリ12,13との噛み合い時にベルト30に張力が働いても、このベルト30の各歯31にはそれぞれ、ほぼ等しい大きさの荷重が平均してかかるので一歯当りの荷重が低減されることとなり、従来のように、ベルトの一つの歯に大きな荷重がかかり歯元部に割れが生じてベルトの歯が欠けたり、ベルトが破断したりすることが防止される。」(第8ページ第6?14行)

(キ)「<考案の効果>
以上実施例を挙げて詳細に説明したように本考案の歯付きベルトによれば、歯付きベルトの歯の両側の歯元部のうち少なくともどちらか一方に溝を形成したので、プーリとの噛み合い時にベルトの各歯は歯元部から撓んでプーリの歯に正確に適合して噛み合うこととなり、ベルトの各歯には局部的に大きな荷重は加わらずほぼ均等な荷重が平均してかかり、ベルトの歯の歯元部にかかる荷重が緩和される。その結果、ベルトの割れは防止され耐久性を向上させることができると共に異音の発生を防止することができる。」(第9ページ第7?19行)

そうすると、上記記載事項(ア)?(キ)及び図面の記載からみて、上記刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「長手方向に一定の間隔で歯が設けられると共にプーリと噛み合って動力を伝達する歯付きベルトにおいて、前記歯の両側の歯元部に該歯の歯すじ方向に沿って溝が形成された歯付きベルト。」

4.発明の対比

(1)一致点
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明における「長手方向に一定の間隔で歯が設けられる」は、その機能からみて、本願発明の「ベルト本体部に歯形が設けられた」に相当し、以下同様に、「プーリと噛み合って動力を伝達する歯付きベルト」ないし「歯付きベルト」は、「タイミングベルト」に相当する。
刊行物1発明における「前記歯の両側の歯元部」は、歯形とベルト本体部が接するコーナー部であると同時に歯元部ともいえるから、実質的に、本願発明の「前記歯形とベルト本体部が接するコーナー部」ないし「歯元部」に相当する。
そうすると、刊行物1発明の「前記歯の両側の歯元部に該歯の歯すじ方向に沿って溝が形成された」は、本願発明が「歯元部で突き出されて歯形を掘り下げるように」溝を設けた点を一応の相違点として別途検討することとすると、少なくとも、本願発明の「前記歯形とベルト本体部が接するコーナー部に溝を設けた」限りにおいて共通するものである。

したがって、両者は、本願発明の表記にならえば、
「ベルト本体部に歯形が設けられたタイミングベルトにおいて、前記歯形とベルト本体部が接するコーナー部に溝を設けたタイミングベルト。」である点において一致している。

(2)相違点
一方、両者の相違点は、以下のとおりである。
本願発明は、「歯元部で突き出されて歯形を掘り下げるように」溝を設けたものであるのに対し、刊行物1発明は、「該歯の歯すじ方向に沿って溝が形成された」ものである点(以下、「相違点1」という)。

5.当審の判断

原査定の理由のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内において、頒布された刊行物である刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、あるいは、その出願前日本国内において頒布された刊行物である刊行物1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。その理由は、以下のとおりである。

5-1.特許法第29条第1項第3号について

上記相違点1について検討するに、本願発明は、歯形とベルト本体部が接するコーナー部に「歯元部で突き出されて歯形を掘り下げるように」溝を設けたものであり、刊行物1発明は、前記歯の両側の歯元部に「該歯の歯すじ方向に沿って溝が形成された」ものであるが、刊行物1発明の溝も歯元部で突き出されて歯形を掘り下げるように設けたものであると捉えることができるから、上記相違点1は実質的な相違点ではないことになる。そうすると、本願発明と刊行物1発明には差異がなく、本願発明は刊行物1に記載された発明であるということができる。
したがって、本願発明は、その出願前に日本国内において、頒布された刊行物である刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

5-2.特許法第29条第2項について

(1)相違点1について
上記相違点1についてさらに検討すると、本願発明の「歯形を掘り下げるように溝を設けた」構成が、「歯形のみ」を掘り下げるように溝を設けたものであると捉えられる余地があるとすると、刊行物1発明の「溝」は、歯元部に該歯の歯すじ方向に沿って形成されていることから、歯形のみを掘り下げたものではなく、ベルト本体の一部にも溝を掘り下げていることになり、この点で相違するということもできる。
そこで、本願発明が解決しようとする課題についてみると、発明の詳細な説明には以下の記載がある。
「【0010】
・・・歯形43とベルト本体部42とが接するコーナー部45にスプロケット10,20,30による応力が集中されて、図4に示すようにジャケット(高耐久性のナイロン材質)が相対のスプロケット10,20,30との反復的な接触に起因して磨耗され、図2及び図3に示すようにジャケット下部のゴム材質だけが応力を支持するため、コーナー部45に疲労応力による亀裂発生及びその進展、そして歯形の脱落で急速に限界寿命に至るとの問題点があった。
【0011】
・・・ベルト歯形43とスプロケット10,20,30の歯底部との間の空気排出が円滑でなくて、騒音及び振動が発生するとの問題点があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、タイミングベルトのコーナー部に最適形状の溝を設けることにより、コーナー部に集中される応力を低減させてタイミングベルトの疲労寿命を大きく増加させると共に耐久力を向上させ、また、タイミングベルトの歯形表面またはスプロケットの歯底部に通孔溝を設けることにより、騒音及び振動を最少化させることができるタイミングベルト及びその結合構造を提供することにある。」
すなわち、本願発明は、ジャケットが相対のスプロケット10,20,30との反復的な接触に起因して磨耗することと、ベルト歯形43とスプロケット10,20,30の歯底部との間の空気排出が円滑でなくて、騒音及び振動が発生するという課題を解決するために、コーナー部に集中される応力を低減させてタイミングベルトの疲労寿命を大きく増加させるとともに耐久力を向上させ、また、騒音及び振動を最少化させることを目的として、上記「歯形を掘り下げるように溝を設けた」ものである。
他方、刊行物1発明は、「ベルト11の駆動時、プーリ12,13と噛み合うベルト11の各歯18には均等に荷重がかかることはなく、ベルト11の歯18にかかる荷重の大きさはプーリ20の位置によって異なり、部分的に過大な荷重が作用する。そのため、このベルト11の歯元部20に繰返し大きな荷重がかかることとなり、この歯元部20に次第に割れが生じてベルト11の歯18が欠けてしまったり、あるいはこの割れがゴムベルト層15に派生してベルト11が破断されてしまうという問題を生じてしまう。また、このとき、両者の接触により異音も発生する」(上記記載事項(イ))ことを課題として、歯付きベルトの各歯に作用する荷重を均等化することによりベルトの割れを防止して耐久性の向上を図ることを目的として、上記「歯の歯すじ方向に沿って溝」を形成したものである。
上記両発明は、個々の課題において表現上の相違はあるものの、タイミングベルトの歯形とベルト本体部が接するコーナー部に着目して、該コーナー部に溝を設けることによりタイミングベルトの耐久力又は耐久性を向上させた点で軌を一にするものである。そして、刊行物1発明は、上記「歯の歯すじ方向に沿って溝」を形成したことによって、従来のタイミングベルトが「ベルト11の歯元部20に繰返し大きな荷重がかかることとなり、この歯元部20に次第に割れが生じてベルト11の歯18が欠けて」しまうことやタイミングベルトとプーリの「接触により異音も発生する」(上記記載事項(イ))という課題を解決したものであることから、刊行物1発明の「溝」は、歯付きベルトの各歯に作用する荷重を均等化するのみならず、その構造から見て、タイミングベルトのジャケットが相対のスプロケットとの反復的な接触を回避できる機能を有するものであると同時に、ベルト歯形とスプロケットの歯底部との間の空気排出を円滑にする機能を有しているものである。上記空気排出については、ベルト歯形とスプロケットの歯底部との間に空間を設けて空気排出を円滑にすることが周知事項(例えば、実願昭60-29568号(実開昭61-145147号)のマイクロフィルムの第10ページ第4?7行には「歯条の歯元側面には歯溝側面との間に隙間が形成されるので、噛み合い時この隙間が排気通路となり、高速回転伝動時の異音発生が防止出来、静粛性が発揮され」ることが記載されている。)であることからも容易に理解できる。そうすると、刊行物1発明の上記「溝」について、上記機能に適したように歯形を掘り下げるように溝を設けてその形状を最適化することは、当業者が通常の創作能力を発揮してできる設計変更にすぎない。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の構成は、上記「歯形を掘り下げるように溝を設けた」ことが歯形のみを掘り下げるように溝を設けたものであるとしても、刊行物1発明の上記「溝」に設計変更を加えることにより当業者が容易に想到し得たものである。

(2)本願発明の効果について
本願発明が奏する効果は、いずれも刊行物1に記載された発明または上記周知事項から当業者が予測できるものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び上記周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5-3.審判請求人の主張について

審判請求人は、審判請求書の平成22年1月19日付け手続補正書において、
「(1)目的の相違
・・・本願請求項1記載発明の目的が、タイミングベルトのコーナー部に集中される応力分布の最小化にあるが、引用文献1に記載された発明の目的は、歯付きベルトの各歯に作用する荷重の均等化にある。応力と荷重は全く異なる概念である。・・・
(2)構成の相違
(2)-1:請求項1の記載の意味
・・・請求項1記載発明の構成を、図5及び図5に円形をもって記載された一部拡大図を参照して説明すると「ベルト本体部100に歯形200が設けられたタイミングベルトにおいて、前記歯形200とベルト本体部100が接するコーナー部に溝400を形成するにあたって、溝400を、ベルト本体部100に食い込ませることなく、ベルト本体部100の外側に、且つ、歯形200を介して対向する溝400、400がベルト本体部100の下端面と接触する点を結んだ線より下方に形成する」ことを意味する。・・・
(2)-2:溝の位置の相違点
本願請求項1記載発明における溝は、例えば、実施例1を示す図5及び図5に円形をもって記載された一部拡大図を参照すれば明らかな通り、溝400は、ベルト本体部100に食いこんではいない。このことは、図5において、歯形200を介して対向する2つの溝400それぞれと接するベルト本体部100の下端面に直線を引いた場合、溝400は、その下端面より下方(図5において下方、即ち、歯形200の方向)に形成されていることからも明らかである。・・・
他方、引用文献1に記載された「歯付きベルト」では、溝33は、ベルト30の本体に、ある曲率半径をもって、ほぼ円形に食いこんだ位置に形成されている。このことは、引用文献1の第1図、第2図、及び第4図、たとえば、第2図を参照すると、対向する2つの溝33を観察すると、溝33を形成する円形が、溝33と33を結ぶベルト30の下端面より上方(第2図において上方)に形成されていて、ベルト30の内部に食いこんでいることが明らかである。・・・
(2)-3:溝の形状の相違点
本願請求項1記載発明における溝400は、ベルト本体部100に食いこまないように形成されている。・・・
他方、引用文献1記載発明における溝33は、ベルト30の本体に、ある曲率半径をもって、ほぼ円形に食いこんだ位置に形成されているため、第2図に見るとおり、ベルト30の本体内部(第2図において上方)に向かってほぼ垂直に上昇しながらその接線角度を大きくしながらフランク面で終端する形状をとっている。
(3)請求項1に記載した発明の効果
・・・」(審判請求書の手続補正書の「3:請求項1に記載した発明が特許されるべき理由」の項参照)などと述べて、本願は特許されるべき旨主張している。

しかしながら、審判請求人の主張は、以下の理由により、採用できない。
(1’)審判請求人が主張する「タイミングベルトのコーナー部に集中される応力分布の最小化」が力学的観点での応力集中であるのか、ジャケットとスプロケットの接触に起因するものか明りょうではないが、いずれにしても歯形が設けられたベルトの構造から自明の事項(例えば、特開昭61-112842号公報の第2ページ左上欄第14?17行には上記のようなジャケットに応力が作用することが記載され、特開2001-32893号公報の段落【0009】には上記コーナー部に応力が集中することが記載されている。)であるから、当業者がこの部分の疲労強度などに配慮することは基本的な技術事項であるということができる。そうすると、刊行物1発明の「溝」について、応力分布を最小化する観点から上記基本的な技術事項に照らしてその形状を最適化することは設計事項である。
(2’)審判請求人が上記(2)で主張していることは、図5を根拠にするものであるが、本願発明は、特許請求の範囲の請求項1において、単に「歯形とベルト本体部が接するコーナー部に歯元部で突き出されて歯形を掘り下げるように溝を設けた」ことを特定しているにすぎず、溝の具体的形状についての説明やベルト本体部との関連がどのようになっているかについての説明は明細書に記載されていない。また、本願の明細書又は図面には、「溝を設けた」結果としての実験結果は記載されているものの、当該溝の技術的意義について刊行物1発明との違いを認識できるような記載はない。この点について、審判請求人が主張するとおり図面に示唆があるとしても、ベルト歯形とスプロケットの歯底部との間に空間を設けて空気排出を円滑にすることは、上述のとおり、周知事項であり、タイミングベルトのコーナー部に応力分布が集中することは、歯形を有するベルトの構造から自明の事項であることは上述のとおりであるから、刊行物1発明の「溝」をこのような観点から最適化して本願発明のような「溝」とすることは、上記に説示したとおり、当業者が通常の創作能力を発揮してできる設計変更にすぎない。
(3’)本願発明が奏する効果は、いずれも刊行物1発明や上記周知事項から予測できる範囲である。

6.むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。



 
審理終結日 2010-08-10 
結審通知日 2010-08-17 
審決日 2010-08-30 
出願番号 特願2006-67934(P2006-67934)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16G)
P 1 8・ 113- Z (F16G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 広瀬 功次  
特許庁審判長 川上 溢喜
特許庁審判官 川本 真裕
藤村 聖子
発明の名称 タイミングベルト及びその結合構造  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 中馬 典嗣  

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