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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1230783
審判番号 不服2008-7017  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-21 
確定日 2011-01-20 
事件の表示 特願2005-268069「光記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月29日出願公開、特開2007- 80406〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本件審判の請求にかかる特許願(以下、「本願」という)は、平成17年9月15日に出願されたものであって、平成19年10月25日付けで通知した拒絶理由に対して同年12月26日付けで手続補正がなされたが、平成20年2月15日付けで拒絶すべきものである旨の査定がなされ、これに対して、同年3月21日付けで拒絶査定不服審判請求がなされ、同年4月18日付けで特許請求の範囲及び明細書について手続補正がなされた。
その後、平成22年7月9日付けで前置報告書の内容に基づく審尋がなされ、同年9月1日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成20年4月18日付け手続補正についての却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕

平成20年4月18日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理 由〕

1.本件補正

本件補正は、特許請求の範囲及び明細書についてするものであるが、そのうち特許請求の範囲についてするものは、

(1-1)本件補正前に、
「【請求項1】
基板と該基板上に設けられる多層の記録層とを備え、レーザ光の照射により前記記録層に光学的性質の変化を生じさせて情報の記録を行う光記録媒体において、
予め、当該光記録媒体の記録条件に関する判断情報として、記録材料及び記録層の積層数が同じであって製造方法が複数存在する光記録媒体を識別するための当該光記録媒体の製造方法の情報がレーザ光照射により読み取り可能に記録されていることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
前記光記録媒体の製造方法は、逆積層法または2P(フォトポリマ)法であることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記判断情報は、前記光記録媒体の製造方法の情報が記録されていないことにより該光記録媒体の製造方法が2P法であると識別されるものであることを特徴とする請求項2に記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記記録層に情報を記録するときにレーザ光を走査させる案内溝を有する光記録媒体であって、
前記判断情報は、前記案内溝の凹部凸部それぞれの上に設けられる記録層の厚さが前記光記録媒体の製造方法により異なることを示すものであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記記録層は、液体状態の記録層材料が塗布されて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項6】
前記判断情報は、前記記録層に情報を記録するときにレーザ光を走査させる案内溝の蛇行として記録されていることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項7】
前記判断情報は、位相変調された情報として記録されたものであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項8】
前記判断情報は、当該光記録媒体のメーカー情報またはバージョン情報に含まれて記録されたものであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項9】
当該光記録媒体がDVD+R記録媒体またはDVD+RW記録媒体である場合において、
前記判断情報は、当該光記録媒体のリビジョン情報に含まれて記録されたものであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項10】
前記リビジョン情報が1バイトの情報である場合、前記判断情報はこのうち上位5Bit以内で記録されていることを特徴とする請求項9に記載の光記録媒体。」
とあったところ、

(1-2)本件補正後、
「【請求項1】
基板と該基板上に設けられる多層の記録層とを備え、レーザ光の照射により前記記録層に光学的性質の変化を生じさせて情報の記録を行う、DVD+RまたはDVD+RWの光記録媒体において、
予め、当該光記録媒体の記録条件に関する判断情報として、当該光記録媒体の製造方法が逆積層法であるか2P(フォトポリマ)法であるかの情報がレーザ光照射により読み取り可能に記録されていることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
前記判断情報は、前記光記録媒体の製造方法の情報が記録されていないことにより該光記録媒体の製造方法が2P法であると識別されるものであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記記録層に情報を記録するときにレーザ光を走査させる案内溝を有する光記録媒体であって、
前記判断情報は、前記案内溝の凹部凸部それぞれの上に設けられる記録層の厚さが前記光記録媒体の製造方法により異なることを示すものであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記記録層は、液体状態の記録層材料が塗布されて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記判断情報は、前記記録層に情報を記録するときにレーザ光を走査させる案内溝の蛇行として記録されていることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項6】
前記判断情報は、位相変調された情報として記録されたものであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項7】
前記判断情報は、当該光記録媒体のメーカー情報またはバージョン情報に含まれて記録されたものであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項8】
前記判断情報は、当該光記録媒体のリビジョン情報に含まれて記録されたものであることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項9】
前記リビジョン情報が1バイトの情報である場合、前記判断情報はこのうち上位5Bit以内で記録されていることを特徴とする請求項8に記載の光記録媒体。」
とするものである。


2.本件補正の適否

上記本件補正の請求項1は、本件補正前の請求項1と比較して、

本件補正前の請求項1の発明特定事項である、「情報の記録を行う光記録媒体」、「製造方法が複数存在する光記録媒体を識別するための当該光記録媒体の製造方法の情報」について、それぞれ、「情報の記録を行う、DVD+RまたはDVD+RWの光記録媒体」、「当該光記録媒体の製造方法が逆積層法であるか2P(フォトポリマ)法であるかの情報」と限定するものである。しかしながら、本件補正前の発明特定事項である、「記録材料及び記録層の積層数が同じであって製造方法が複数存在する光記録媒体」については、「当該光記録媒体の製造方法」と補正して、記録媒体の記録層の材料、及び、層数についての発明特定事項を削除するものであって、この点において、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号ないし第4号に規定された目的のいずれにも該当しないものである。


3.補正の目的についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

なお、仮に、本件補正の目的が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、以下、本件補正の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて、検討する。

4.独立特許要件の検討

(1)本願補正発明
本件補正の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、前記1.(1-2)の請求項1のとおりのものである。

(2)引用例及びその記載

これに対して、原査定の拒絶理由で引用された引用例である特開2004-199757号公報(平成16年7月15日公開、以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は、当審で付与した。)

(2-1)
「【0016】
本実施形態では、片面入射型光記録媒体(片面入射型DVD-R)として、例えば2つの記録層を有するデュアルレイヤタイプの片面入射型DVD-Rを例に説明する。
(1)光記録媒体の構造
まず、本実施形態にかかる光記録媒体として、積層構造の異なる2つのタイプの光記録媒体(光ディスク)について説明する。
(A)タイプ1
図1は、本実施形態にかかる光記録媒体(タイプ1)を示す模式的な断面図である。
【0017】
本実施形態にかかるタイプ1の光記録媒体は、ディスク状の透明な(光透過性の)第1基板(第1の基板)1上に、色素を含む第1記録層(第1の記録層)2、半透明の反射層(以下、半透明反射層という)3、中間樹脂層(中間層)4、色素を含む第2記録層(第2の記録層)5、反射層6、接着層7、第2基板(第2の基板)8をこの順に有してなる。 光ビームは第1基板1側から照射され、記録又は再生が行われる。」

(2-2)
「【0049】
中間樹脂層4には凹凸が螺旋状又は同心円状に設けられ、溝及びランドを形成する。通常、このような溝及び/又はランドを記録トラックとして、第2記録層5に情報が記録又は再生される。通常、第2記録層5は塗布形成されるので溝部で厚膜となり記録又は再生に適する。本光記録媒体においては中間樹脂層4の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック12とするのが好ましい。ここで、凹部、凸部はそれぞれ光の入射方向に対する凹部、凸部を言う。通常、溝幅は200?500nm程度であり、溝深さは120?250nm程度である。また記録トラックが螺旋状である場合、トラックピッチは0.1?2.0μm程度であることが好ましい。この他に必要に応じ、ランドプリピット等の凹凸ピットを有してもよい。
【0050】
このような凹凸は、コストの観点から、凹凸を持つ樹脂スタンパ等から光硬化性樹脂などの硬化性樹脂に転写、硬化させて製造するのが好ましい。以下、このような方法を2P法(Photo Polymerization法)と称することがある。
中間樹脂層4の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂(遅延硬化型を含む)等を挙げることができる。」

(2-3)
「【0085】
(前略)
(B)タイプ2
図2は本実施形態にかかる光記録媒体(タイプ2)を示す模式的な断面図である。
【0086】
本実施形態にかかるタイプ2の光記録媒体は、ディスク状の透明な(光透過性の)第1基板(第1の基板)21上に、色素を含む第1記録層(第1の記録層)22、半透明の反射層(以下、半透明反射層という)23、透明接着層24、バッファー層28、色素を含む第2記録層(第2の記録層)25、反射層26、ディスク状の透明な第2基板(第2の基板)27をこの順に有してなる。光ビームは第1基板21側から照射され、記録又は再生が行われる。なお、透明であるとは光記録媒体の記録又は再生に用いる光ビームに対して透明であることを言う。
【0087】
第1基板21、第2基板27上にはそれぞれ凹凸が形成され、それぞれ記録トラックを構成する。第1基板21上の記録トラック31は、光の入射方向に対して凸部で構成される。第2基板27上の記録トラック32は、光の入射方向に対して凹部で構成される。
なお、記録トラック31は、光の入射方向に対して凹部で構成し、記録トラック32は、光の入射方向に対して凸部で構成しても良いが、一般には、記録トラック31は、光の入射方向に対して凸部で構成し、記録トラック32は、光の入射方向に対して凹部で構成するのが好ましい。また、この他に必要に応じ凹凸ピットを有することもある。特に断らない限り、本実施形態において凹凸は記録又は再生に用いる光の入射方向に対して定義される。
【0088】
次に、各層について説明する。
本実施形態にかかるタイプ2の光記録媒体の第1基板21,第1記録層22,半透明反射層23,第2記録層25,反射層26は、それぞれタイプ1の光記録媒体の第1基板1,第1記録層2,半透明反射層3,第2記録層5,反射層6と略同様である。」

(2-4)
「【0092】
このような凹凸を有する第2基板27は、コストの観点から、凹凸を持つスタンパから樹脂を用いて射出成形により製造するのが好ましい。ガラス等の基体上に光硬化性樹脂等の放射線硬化性樹脂からなる樹脂層を設ける場合は、樹脂層に記録トラックなどの凹凸を形成してもよい。
なお、ここでは、色素含有記録層を含む追記型光記録媒体(ここではDVD-R)について説明したが、光記録媒体はこれに限られるものではなく、片面側からのレーザ光の照射により情報を記録又は再生しうる複数の記録層を備える光記録媒体であれば良い。例えば、記録層として例えば結晶状態の部分を未記録状態・消去状態とし、非晶質状態の部分を記録状態とする相変化型記録層を含む書換型光記録媒体(例えばDVD-RW,DVD+RW,DVD-RAMなど)や記録層として磁性記録層を含む光磁気型の光記録媒体であっても良い。
【0093】
ここで、光記録媒体をDVD-RWとする場合には、上述のDVD-Rの場合と同様に、アドレス情報をランドプリピットにより予め記録しておけば良い。また、光記録媒体をDVD+RWとする場合には、アドレス情報をウォブルに重畳させて予め記録しておけば良い(これをADIP;Address in Pre-groove,アドレスインプリグルーブという)。」

(2-5)
「【0094】
ところで、上述のように、複数(ここでは2つ)の記録層2,5(22,25)を有し、片面側からレーザ光を照射することでそれぞれの層2,5(22,25)に情報を記録又は再生する片面入射型光記録媒体(例えばデュアルレイヤタイプの片面入射型DVD-R)では、記録層毎に、例えばトラッキング極性,記録パルスストラテジ,記録パワー,再生パワー等の記録再生条件が大きく異なってしまう。
【0095】
特に、記録条件を最適なものとすることは重要である。これは、再生条件が多少ずれていたとしても再生できないということはあまりないが、記録条件が最適でないと、実際に書き込みが行なえなかったり、書き込みが行なえたとしても、その情報を再生する場合に信号品質が良くなかったりするためである。
このため、情報の記録又は再生を行なおうとする記録層2,5(22,25)に応じた記録再生条件(例えばトラッキング極性,記録パルスストラテジ,記録パワー,再生パワー等)で情報の記録又は再生を正確、かつ、確実に行なえるようにしたい。
【0096】
特に、後述するように、タイプ1の光記録媒体では、第1基板1の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック11とし、中間樹脂層4の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック12とする。このため、第1記録層2と第2記録層5とでは、トラッキング極性は同じにする。これに対し、タイプ2の光記録媒体では、第1基板21の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック31とし、第2基板27の溝部、即ち光の入射方向に対して凹部を記録トラック32とする。このため、第1記録層22と第2記録層25とでは、トラッキング極性を逆にすることになる。
【0097】
このように、第1記録層と第2記録層とで、トラッキング極性を同じにする光記録媒体と、トラッキング極性を逆にする光記録媒体とが混在する場合であっても、光記録媒体の構成に応じたトラッキング極性で情報の記録又は再生を正確、かつ、確実に行なえるようにしたい。 そこで、本実施形態では、光記録媒体に、光記録媒体の各記録層2,5(22,25)の記録再生条件の少なくとも一つを記録している。」

(2-6)
「【0103】
具体的には、記録再生条件は、各記録層2,5(22,25)の記録管理領域(RMA;Recording Management Area,例えばコントロールトラック,最内周部)のいずれかに、例えばプリピット(ランドプリピット)やウォブルによって記録するのが好ましい。 上述のようなトラッキング極性,記録パルスストラテジ,記録推奨パワー,再生推奨パワー等の記録再生条件を記録しておくことは、以下のような構成を有するタイプ2の光記録媒体において有効である。特に、タイプ2の光記録媒体においては、記録再生条件としてトラッキング極性を含ませておくことは重要である。
【0104】
つまり、本発明を適用するのが好ましいタイプ2の光記録媒体は、案内溝を有する第1基板上に、少なくとも、第1の色素を含有する記録層と、半透明反射層とを順次積層させてなる第1の情報記録体と、案内溝を有する第2基板上に、少なくとも、反射層と、第2の色素を含有する記録層とを順次積層させてなる第2の情報記録体とを備え、第1の情報記録体と第2の情報記録体とがそれぞれ記録層が形成された側を対向させて光学的に透明な接着層を介して貼り合わされてなり、第1基板側からレーザ光を入射させることにより光学的に情報の記録又は再生が行なわれるように構成される。」

上記摘示事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「透明基板上に、片面側からのレーザ光の照射により情報を記録又は再生しうる、2つの記録層を備えた、DVD+RWの光記録媒体において、

2P法で製造される光記録媒体(タイプ1)、及び、案内溝を有する第1基板上に、記録層と、半透明反射層とを順次積層させてなる第1の情報記録体と、案内溝を有する第2基板上に、反射層と、記録層とを順次積層させてなる第2の情報記録体とを備え、第1の情報記録体と第2の情報記録体とがそれぞれ記録層が形成された側を対向させて光学的に透明な接着層を介して貼り合わされて製造される光記録媒体(タイプ2)のDVD+RWの光記録媒体に、記録再生条件の1つであるトラッキング極性が、記録層の記録管理領域(RMA;Recording Management Area、例えばコントロールトラック、最内周部)に記録される光記録媒体。」


(3)対比

そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の、「2つの記録層」、「DVD+RWの光記録媒体」は、それぞれ、本願補正発明の、「多層の記録層」、「レーザ光の照射により前記記録層に光学的性質の変化を生じさせて情報の記録を行う、DVD+RまたはDVD+RWの光記録媒体」に相当する。

(イ)引用発明の、「案内溝を有する第1基板上に、記録層と、半透明反射層とを順次積層させてなる第1の情報記録体と、案内溝を有する第2基板上に、反射層と、記録層とを順次積層させてなる第2の情報記録体とを備え、第1の情報記録体と第2の情報記録体とがそれぞれ記録層が形成された側を対向させて光学的に透明な接着層を介して貼り合わされて製造される光記録媒体(タイプ2)」は、本願補正発明の、「光記録媒体の製造方法が逆積層法」であることに相当する。

(ウ)引用発明の、光記録媒体に記録する「記録再生条件の1つであるトラッキング極性」は、本願補正発明の、「当該光記録媒体の記録条件に関する判断情報」に相当する。また、引用発明の、記録された「トラッキング極性」は、「記録層の記録管理領域(RMA;Recording Management Area、例えばコントロールトラック、最内周部)に記録され」ることから、「トラッキング極性」は「レーザ光照射により読み取り可能に記録されている」ことは明らかであって、引用発明の、「記録再生条件の1つであるトラッキング極性が、記録層の記録管理領域(RMA;Recording Management Area、例えばコントロールトラック、最内周部)に記録され」ることは、本願補正発明の、「予め、当該光記録媒体の記録条件に関する判断情報」が「レーザ光照射により読み取り可能に記録されている」ことに相当する。

したがって、両発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

[一致点]

「基板と該基板上に設けられる多層の記録層とを備え、レーザ光の照射により前記記録層に光学的性質の変化を生じさせて情報の記録を行う、DVD+RまたはDVD+RWの光記録媒体において、
予め、当該光記録媒体の記録条件に関する判断情報がレーザ光照射により読み取り可能に記録されている光記録媒体。」

[相違点]
当該光記録媒体の記録条件に関する判断情報について、本願補正発明が、「当該光記録媒体の製造方法が逆積層法であるか2P(フォトポリマ)法であるかの情報」を光記録媒体に記録しているのに対して、引用発明では、トラッキング極性を光記録媒体に記録している点

(4)判断
相違点について検討する。

引用例(段落0096、0103、0104)には、タイプ1の光記録媒体は、第1基板1の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック11とし、中間樹脂層4の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部を記録トラック12とするものであって(引用例図1参照)、このために、第1記録層2と第2記録層5とでは、トラッキング極性は同じになることが記載されている。このことは、タイプ1の光記録媒体が2P(フォトポリマ)法で製造されることで、第1記録層が光の入射方向に対して凸部が形成された部分は、第2記録層についても光の入射方向に対して凸部が形成されることによるものであって、トラッキング極性が「同じ」であることは、2P(フォトポリマ)法で製造されることに起因するものである。

一方、タイプ2の光記録媒体は、第1基板21の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部(凹部)を記録トラック31とし、第2基板27の溝部、即ち光の入射方向に対して凹部(凸部)を記録トラック32とするものであって(引用例図2、段落0087(特に括弧書き凹部、凸部について)参照)、このために、第1記録層22と第2記録層25とでは、トラッキング極性は逆であることが記載されている。このことは、タイプ2の光記録媒体が、案内溝を有する第1基板上に、記録層と、半透明反射層とを順次積層させてなる第1の情報記録体と、案内溝を有する第2基板上に、反射層と記録層とを順次積層させてなる第2の情報記録体とを備え、第1の情報記録体と第2の情報記録体とがそれぞれ記録層が形成された側を対向させて光学的に透明な接着層を介して貼り合わされて製造されていること(引用例段落0104参照)、即ち、逆積層法(IS法)で製造されることで、第1基板21の溝部、即ち光の入射方向に対して凸部と、第2基板27の溝部、即ち光の入射方向に対して凹部とが形成されることによるものであって、トラッキング極性は「逆」であることは、逆積層法(IS法)で製造されることに起因するものである。

してみれば、「光記録媒体」に記録されるトラッキング極性が、「同じ」であるか「逆」であるかの情報は、2P(フォトポリマ)法による製造方法、逆積層法(IS法)による製造方法と1対1に対応するものであって、引用発明においても、「光記録媒体」に、トラッキング極性が、「同じ」であるか「逆」であるかの情報を得るために、製造方法の識別情報、すなわち、「2P(フォトポリマ)法」であるか、「逆積層法」であるかを記録して、本願補正発明のように「当該光記録媒体の製造方法が逆積層法であるか2P(フォトポリマ)法であるかの情報」を記録することに、格別の困難性を有しない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、「光記録媒体」についての発明である本願補正発明が奏する効果は引用発明の「光記録媒体」と比較して格別なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)独立特許要件についての結び

以上のとおりであるから、本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的としていると仮定しても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項により、なお従前の例によるとされる同法における改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

平成20年4月18日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1乃至10に係る各発明は、平成19年12月26日付け手続補正によって補正された明細書及び図面からみて、その請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は、上記「第2[理由]1.(1-1)」の【請求項1】のとおりである(以下、「本願発明」という。)。

2.引用例及びその記載

原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由]4.(2)引用例及びその記載」に記載したとおりである。

3.対比

本願発明は、上記「第2[理由]4.(3)」で検討した本願補正発明から、光記録媒体について、「DVD+RまたはDVD+RWの」との限定を削除し、また、当該光記録媒体の製造方法の情報が「逆積層法であるか2P(フォトポリマ)法であるか」との限定を削除し、本願発明では「記録材料及び記録層の積層数が同じであって製造方法が複数存在する光記録媒体を識別するための当該光記録媒体の製造方法の情報が」とするものである。

そうすると、本願発明の「記録材料及び記録層の積層数が同じであって」なる発明特定事項を除いて、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する発明が本願補正発明であることを考慮すれば、本願発明と引用発明との対比については、上記「第2[理由]4.(3)」の(ア)ないし(ウ)の記載に、次の(エ)の記載を加えるものである。

(エ)本願発明の「記録層の積層数が同じであって」なる発明特定事項について、引用発明と対比すると、引用発明のタイプ1、タイプ2の光記録媒体は、ともに「2つの記録層」を有するものであるから、本願発明の、「記録層の積層数が同じであ」ることに相当する。

したがって、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

[一致点]
「基板と該基板上に設けられる多層の記録層とを備え、レーザ光の照射により前記記録層に光学的性質の変化を生じさせて情報の記録を行う光記録媒体において、
予め、当該光記録媒体の記録条件に関する判断情報として、記録層の積層数が同じであって当該光記録媒体の情報がレーザ光照射により読み取り可能に記録されている光記録媒体。

[相違点]
(相違点1)本願発明が、「記録材料」が同じ光記録媒体と特定されるのに対して、引用発明では、そのような特定がない点。

(相違点2)当該光記録媒体の記録条件に関する判断情報として、本願発明が、「製造方法が複数存在する光記録媒体を識別するための当該光記録媒体の製造方法の情報」を光記録媒体に記録しているのに対して、引用発明では、トラッキング極性の記録条件を光記録媒体に記録している点。

4.判断
相違点について検討する。

(相違点1について)
引用例(段落0092)には、「DVD+RWの光記録媒体」の記録層の材料について例えば結晶状態の部分を未記録状態・消去状態とし、非晶質状態の部分を記録状態とする相変化型の記録層を用いることが記載されている。そして、引用発明の、タイプ1、及びタイプ2の光記録媒体は、ともにDVD+RWの光記録媒体として用いられるものであって、光記録媒体の製造方法が異なることによって異なる記録材料を選択せざるを得ないものでもないから、引用発明において、本願発明のように「記録材料」が同じ光記録媒体とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。

(相違点2について)
上記「第2[理由]4.(4)判断」に記載したとおりであるから、本願発明のように、「製造方法が複数存在する光記録媒体を識別するための当該光記録媒体の製造方法の情報」を光記録媒体に記録することに、格別の困難性を有しない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、「光記録媒体」についての発明である本願発明が奏する効果は引用発明の「光記録媒体」と比較して格別なものとはいえない。

したがって、本願請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである

5.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について言及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-17 
結審通知日 2010-11-24 
審決日 2010-12-08 
出願番号 特願2005-268069(P2005-268069)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G11B)
P 1 8・ 574- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 573- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中野 浩昌  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 石丸 昌平
山田 洋一
発明の名称 光記録媒体  
代理人 舘野 千惠子  
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