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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B
管理番号 1230798
審判番号 不服2008-32436  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-24 
確定日 2011-01-20 
事件の表示 平成11年特許願第276745号「ソリッドゴルフボール」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月10日出願公開、特開2001- 95948〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年9月29日の出願であって、平成20年9月30日付けで手続補正がなされ、同年11月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月24日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成21年1月22日付けで手続補正がなされ、当審において、平成22年9月2日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)の通知がなされ、同年10月18日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
平成22年10月18日付けの手続補正により補正された明細書の記載からみて、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される、次のとおりのものである。

「コアと、該コアを被覆するカバーからなるゴルフボールにおいて、前記カバーがアイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーとテルペン樹脂および/またはロジンエステル樹脂よりなる粘着付与剤の混合物から構成され、ショア-D硬度が48以上で53以下であり、
カバーを構成するアイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の配合量の合計を100重量部として、アイオノマー樹脂が36?50重量%、熱可塑性エラストマーが30?54重量%、さらに粘着付与剤が10?20重量%配合され、前記カバーを構成する熱可塑性エラストマーが、末端に水酸基が付加した水添SIBSおよびエポキシ化SBSの少なくともいずれかであることを特徴とするソリッドゴルフボール。」

第3 記載不備についての当審拒絶理由の概要
平成14年改正前特許法第36条第4項違反
本願明細書の発明の詳細な説明には、特許請求の範囲の請求項1に示された多数の数値限定及び具体的材料で規定する範囲が発明の解決しようとする課題を達成するために有効であることが、当業者にとって理解できるように記載されていない。また、発明の解決しようとする課題との関係で多数の数値限定の範囲及び具体的材料に設定することの技術的意義及び臨界的意義は、当業者といえども把握できるものでない。

第4 本願の発明の詳細な説明の記載について
1 本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0002】ないし【0007】には、発明の課題に関する記載があり、該記載によれば、従来のソリッドゴルフボールに対して、軟らかく、良好な打球感を有し、かつ飛距離が大きく、さらにラフからのショットや雨天時のショットにもスピン量が大きく、止まりやすいソリッドゴルフボールを提供するという目的に対し、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された構成を採用することにより、上記目的を達成することができたとされることが開示されていると認められる。
しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に示された「コアと、該コアを被覆するカバーからなるゴルフボールにおいて、前記カバーがアイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーとテルペン樹脂および/またはロジンエステル樹脂よりなる粘着付与剤の混合物から構成され、ショア-D硬度が48以上で53以下であり、
カバーを構成するアイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の配合量の合計を100重量部として、アイオノマー樹脂が36?50重量%、熱可塑性エラストマーが30?54重量%、さらに粘着付与剤が10?20重量%配合され、前記カバーを構成する熱可塑性エラストマーが、末端に水酸基が付加した水添SIBSおよびエポキシ化SBSの少なくともいずれかである」(以下「本願発明特定事項」という。)との多数の数値限定で規定する範囲が発明の解決しようとする課題を達成するために有効であることが、当業者にとって理解できるように記載されていない。また、発明の解決しようとする課題との関係で多数の数値限定及び具体的材料で規定する技術的意義は明らかでない。

2 本願の明細書の発明の詳細な説明には、以下の(1)及び(2)の記載がある。
(1) 「 【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明はコアと、該コアを被覆するカバーからなるゴルフボールにおいて、前記カバーがアイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の混合物から構成され、ショア-D硬度が40以上で65以下であることを特徴とするソリッドゴルフボールである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、コアと、該コアを被覆するカバーよりなるソリッドゴルフボールである。」

(2) 「【0044】
【実施例】
実施例1?6、比較例1?4
(1) 内層コアの作製
表1に示した配合のコア用ゴム組成物を混練し、金型内で142℃×16分と168℃×8分間加熱プレスすることにより直径39mmのコアを作製した。
【0045】
(2) カバー用組成物の調製
表2に示すカバー用配合材料を二軸混練押出機によりミキシングし、ペレット状のカバー用組成物を得た。押出条件は、
スクリュー径:45mm
スクリュー回転数:200rpm
スクリューL/D:35
であり、配合物は押出機のダイの位置で200?260℃に加熱された。
【0046】
得られたカバー用組成物を用いて半球殻状のハーフシェルを成形し、これを2枚用いて上記の得られたコアを包み、金型内でプレス熱圧縮成形し、表面にペイントを塗装して、外径42.8mmを有するゴルフボールを作製した。
【0047】
得られたゴルフボールのカバー硬度(ショアD硬度)、飛行性能としてボール初速、スピン量およびキャリー、ならびに打球感を評価しその結果を表2に示す。
【0048】
なおボールの物性評価は次の方法によって行なった。
(1) スピン量
ツルーテンパー社製スイングロボットにSWクラブを取付け、ゴルフボールをヘッドスピード20m/秒で打撃し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン量を求めた。
【0049】
そして測定は通常のドライ条件とボールおよびクラブフェーズを水で濡らしたウエット条件とで測定した。
【0050】
スピン保持率は(ウエット時のスピン量)/(ドライ時のスピン量)×100の値として定義される。
【0051】
(2) 打球感
トッププロ10人による実打テストで評価した。判定基準は以下のとおりとした。
【0052】
判定基準
○:10人中7人以上がソフトなフィーリングでよいと答えた。
【0053】
△:10人中4?6人がソフトなフィーリングでよいと答えた。
×:10人中3人以下がソフトなフィーリングでよいと答えた。
【0054】
表2に実施例1?6、および比較例1?4のゴルフボールの測定結果を示す。実施例のゴルフボールは、比較例のゴルフボールに比べていずれも飛距離、スピン保持率、打球感が優れていることがわかる。
【0055】
比較例1,2は、打球感は良いものの粘着付与剤が含まれていないためにWETスピン量が少なく、その結果スピンの保持率が小さくなる。
【0056】
比較例3は、粘着付与剤を配合したにも関わらず、ゴム成分を有するエラストマーが含まれていないので硬度が低下せず、スピンの保持率も低くなった。また硬度が規定外になり打球感も悪かった。
【0057】
比較例4は、アイオノマーのみの配合でスピンの保持率が低い。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
※1:デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、MI=4.8、曲げ剛性率=約280MPa
※2:デュポン社製の亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、MI=5.2、曲げ剛性率=約220MPa
※3:エクソン社製の亜鉛イオン中和エチレン-アクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
※4:エクソン社製のナトリウムイオン中和エチレン-アクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
※5:三井・デュポン社製の亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸-イソブチルアクリレート三元共重合体系アイオノマー樹脂
※6:(株)クラレ社製の末端に水酸基が付加した水添SIBS(SEEPS-OH)、スチレン含量28wt%、イソプレン/ブタジエン重量比55/45 ※7:ダイセル化学工業(株)社製エポキシ化SBS、エポキシ当量950?1050、ブタジエン/スチレン重量比60/40
※8:ヤスハラケミカル(株)社製の水添テルペン樹脂
※9:荒川化学(株)社製の水添ロジンエステル樹脂
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。」

(3) 上記(1)及び(2)から、本願の発明の詳細な説明には、実施例1ないし6に係る熱可塑性エラストマーの具体例として、「末端に水酸基が付加した水添SIBS(SEEPS-OH)」又は「末端に水酸基が付加した水添SIBS(SEEPS-OH)及びエポキシ化SBS」の具体例が記載されているだけで、それ以外の具体例は記載されていない。
してみれば、特許請求の範囲の請求項1に記載の「末端に水酸基が付加した水添SIBSおよびエポキシ化SBSの少なくともいずれか」のうち、「末端に水酸基が付加した水添SIBS(SEEPS-OH)」又は「末端に水酸基が付加した水添SIBS(SEEPS-OH)及びエポキシ化SBS」以外の「エポキシ化SBS」については、従来のソリッドゴルフボールに比して軟らかく、良好な打球感を有し、かつ飛距離が大きく、さらにラフからのショットや雨天時のショットにもスピン量が大きく、止まりやすいという本願発明の効果が奏されるとは、本願の発明の詳細な説明の記載を以てしては、当業者といえども理解できない。

(4) 上記(3)から、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

3 まとめ
以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明は、平成14年改正前特許法第36条第4項でいう通商産業省令で定めるところによる記載がされておらず、また、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、本願は、平成14年改正前特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

第5 進歩性について
1 刊行物の記載事項
(1)当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-308708号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のアないしウの事項が図とともに記載されている。

ア 「【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、アイオノマー樹脂の特性、すなわち、優れた反発性能や耐カット性などを低下させることなく、打球感やコントロール性を改善して、プロや上級者をも満足させ得る良好な打球感とコントロール性を有し、かつ飛行性能や耐カット性が優れたゴルフボールを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、優れた打球感やコントロール性と優れた飛行性能や耐カット性とを両立させるべく鋭意検討を重ねた結果、特定の厚みで、かつ特定の曲げ剛性率および硬度を有するカバーを用いるときは、打球感およびコントロール性が良好で、かつ飛行性能および耐カット性が優れたゴルフボールが得られることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0011】すなわち、本発明は、コアと該コアを被覆するカバーを有するゴルフボールにおいて、カバーの厚みが0.4?1.85mmで、かつ曲げ剛性率が100?1500kgf/cm^(2) で、ショアーD硬度が30?65であることを特徴とするゴルフボールである。
【0012】かかる本発明のゴルフボールは、飛距離と重要な係りを有するウッドクラブでのショットにおいて、良好な打球感を有しつつ適度なスピンを生じ、しかも従来の高剛性アイオノマー樹脂を用いたゴルフボールと同等以上の飛行性能を有し、またコントロール性が最も重要となるミドルアイアンショットやショートアイアンショットにおいて、バラタ系カバーの糸巻きゴルフボールと同等以上のコントロール性を有し、しかもソフトな打球感を有している。」

イ 「【0013】
【発明の実施の形態】本発明において、カバーは厚みを従来より薄く0.4?1.85mmにするが、これは良好な打球感やコントロール性を生み出し、かつ飛行性能や耐カット性を低下させず、しかも成形性を確保するためである。すなわち、カバーの厚みが、0.4mmよりも薄い場合は、成形時の不具合や耐カット性の低下が生じ、またスピン量が多くなりすぎるため、飛行性能も低下する。また、カバーの厚みが1.85mmより厚い場合は、スピン量が減少してコントロール性が悪くなり、かつアイオノマー樹脂特有の硬い打球感になる。そして、このカバーの厚みは特に0.5?1.7mmであることが好ましい。
【0014】また、本発明においては、カバーの曲げ剛性率を従来より低く1500kgf/cm^(2) 以下にするが、これは打球感をソフトにし、コントロール性を良くするためである。すなわち、カバーの曲げ剛性率が1500kgf/cm^(2) より高い場合は、打球感が悪くなり、また、スピン量が減少して、コントロール性が悪くなる。このカバーの曲げ剛性率が低いほど打球感やコントロール性は良くなるが、カバーの曲げ剛性率が低くなりすぎると、反発性能が低下し、所望とする飛行性能が得られなくなるので、カバーの曲げ剛性率は100kgf/cm^(2) 以上であることが必要であり、特に500?1200kgf/cm^(2) であることが好ましい。このカバーの曲げ剛性率はカバー用組成物から約2mm厚さの熱プレス成形シートを作製し、それを23℃で2週間保存後にASTM D-747に準じて測定したものである。
【0015】また、本発明においては、カバーを従来より軟らかくし、その硬度をショアーD硬度で30?65にするが、これは優れた反発性能および耐久性を保持しつつ、打球感を良好にするためである。すなわち、カバーのショアーD硬度が30より低い場合は、反発性能や耐カット性の低下が生じ、カバーのショアーD硬度が65より高い場合は、打球感が硬くなって悪くなる。そして、このカバーのショアーD硬度は特に40?55であることが好ましい。このカバーのショアーD硬度はカバー用組成物から約2mm厚さの熱プレス成形シートを作製し、それを23℃で2週間保存後にASTM D-2240に準じて測定したものである。
【0016】上記カバーの基材樹脂としては、例えばアイオノマー樹脂またはアイオノマー樹脂と軟質エラストマーとの混合物を主成分として用いることが好ましい。
【0017】本発明において、カバーの基材樹脂の構成成分として用いるアイオノマー樹脂としては、例えば、α-オレフィンと炭素数3?8のα,β-不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られるもの、またはα-オレフィンと炭素数3?8のα,β-不飽和カルボン酸と炭素数2?22のα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られるものが挙げられる。
【0018】上記のα-オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテンなどが用いられ、特にエチレンが好ましく、炭素数3?8のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などが用いられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。また、炭素数2?22の不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチルエステルなどが用いられ、特にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましい。上記α-オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸との共重合体またはα-オレフィンと炭素数3?8のα,β-不飽和カルボン酸と炭素数2?22のα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、例えばナトリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられる。
【0019】上記のようなアイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、例えば、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7318(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミランAM7315(Zn)、ハイミランAM7317(Zn)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランMK7320(K)や、三元共重合体系アイオノマー樹脂としてのハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミランAM7316(Zn)などが挙げられる。米国デュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、サーリン8920(Na)、サーリン8940(Na)、サーリンAD8512(Na)、サーリン9910(Zn)、サーリンAD8511(Zn)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)や、三元共重合体系アイオノマー樹脂としてのサーリンAD8265(Na)、サーリンAD8269(Na)などが挙げられる。エクソン化学社から市販されているアイオノマー樹脂としては、アイオテック7010(Zn)、アイオテック8000(Na)などが挙げられる。これらのアイオノマー樹脂はそれぞれ単独で用いてもよいし、また2種以上を併用してもよい。なお、上記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、K、Li、Mgなどは、それらの中和金属イオン種を示している。また、アイオノマー樹脂はこれら例示のもののみに限られるものではない。
【0020】また、アイオノマー樹脂と混合する軟質エラストマーとしては、例えば、無水マレイン酸変性のスチレン-ブタジエンブロック共重合体やエチレン-エチルアクリレート共重合体、エポキシ基を有するスチレン-ブタジエンブロック共重合体やエチレン-エチルアクリレート共重合体、OH基を有するスチレン-ブタジエンブロック共重合体やスチレン-イソプレンブロック共重合体などの官能基変性タイプのオレフィン性エラストマー、ポリエーテルエステル、ポリアミド、エチレン-プロピレン-ジエンエラストマーなどが挙げられる。
【0021】上記無水マレイン酸変性タイプの軟質エラストマーの具体例としては、例えば、旭化成工業(株)から「タフテックMシリーズ」の商品名で市販されている水素添加したスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の無水マレイン酸付加物、住友化学工業(株)から「ボンタイン」の商品名で市販されているエチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸三元共重合体、三井デュポンポリケミカル(株)から「ARシリーズ」の商品名で市販されているエチレン-エチルアクリレート共重合体の無水マレイン酸によるグラフト変性物などが挙げられる。
【0022】また、エポキシ基を有するタイプの軟質ポリマーの具体例としては、例えば、ダイセル化学工業(株)から「ESBS AT014」、「ESBS AT015」、「ESBS AT000」などの商品名で市販されているエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するSBS構造(両末端にポリスチレンを持ち、その中間層がエポキシ基を有するポリブタジエン構造)のブロック共重合体や「ESBS AT018」、「ESBS AT019」などの商品名で市販されているエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックの一部に水素添加したSBS構造の共重合体などが挙げられる。
【0023】そして、OH基を有するタイプの軟質エラストマーの具体例としては、例えば(株)クラレから「HG-252」の商品名で市販されている水素添加したスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体で末端にOH基が付加したものなどが挙げられる。
【0024】本発明において用いるカバーには、上記樹脂以外に、必要に応じて、種々の添加剤、例えば顔料、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを添加することができる。カバー用組成物の調製にあたって、基材樹脂の主成分として用いるアイオノマー樹脂同士の混合物やアイオノマー樹脂と軟質エラストマーとの混合物などは、あらかじめ混合しておいてもよいし、また、カバー用組成物の調製時に他の添加剤などと一緒に混合してもよい。なお、上記の主成分とはそれのみで基材樹脂を構成する場合と他の樹脂を一部添加して基材樹脂を構成する場合との両者を意味する。
【0025】そして、上記カバーをコアに被覆することによってゴルフボールが得られるが、コアとしてはソリッドゴルフボール用コア(ソリッドコア)、糸巻きゴルフボール用コア(糸巻きコア)のいずれも使用することができる。ただし、それらのコアは、糸巻き、ソリッドのいかんにかかわらず、初期荷重10kgをかけた状態から終荷重130kgをかけた時までの歪み量が2?4.5mmの範囲にあることが好ましい。
【0026】ソリッドコアとしては、1層構造のものはもとより、2層以上の多層構造のものであってもよく、例えば、ツーピースボール用コアとしては、ポリブタジエン100重量部に対して、アクリル酸、メタクリル酸などのα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸またはその金属塩や、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどの官能性モノマーなどからなる加硫剤(架橋剤)を単独または合計で10?60重量部、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどの充填剤を10?30重量部、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化物を0.5?5重量部配合し、要すれば、さらに老化防止剤を0.1?1重量部配合したゴム組成物をプレス加硫(架橋)により、例えば140?170℃の温度で10?40分間加熱圧縮して、球状加硫物に成形することによって得られたものを用いることができる。」

ウ 「【0035】
【実施例】つぎに、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0036】実施例1?6および比較例1?3
つぎの〔丸1〕(審決注:丸付き数字は便宜上〔丸1〕などと表記した。以下同じ。)?〔丸3〕に示す工程を経て、実施例1?6および比較例1?2のソリッドゴルフボールを作製した。また、これらの実施例1?6のソリッドゴルフボールの物性をバラタ系カバーの糸巻きゴルフボールの物性と比較するため、比較例3として標準的なバラタ系カバーの糸巻きゴルフボールを準備した。
【0037】〔丸1〕ソリッドコアの作製:ポリブタジエン〔BR-11(商品名)、日本合成ゴム(株)製〕100重量部に対して、アクリル酸亜鉛36重量部、酸化亜鉛20重量部、ジクミルパーオキサイド1.2重量部および老化防止剤〔ヨシノックス425(商品名)、吉富製薬(株)製〕0.5重量部を配合したゴム組成物を160℃で25分間加硫成形することによって、各実施例および比較例に適するように、直径41.9mm、41.6mm、40.8mm、40.4mm、39.8mm、39.6mm、38.5mmおよび37.7mmのソリッドコアを得た。これらのソリッドコアに初期荷重10kgをかけた状態から終荷重130kgをかけた時までの歪み量は2.9mmであった。
【0038】〔丸2〕カバー用組成物の調製:表1?表2に示す組成の配合材料を二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を得た。表1に実施例1?4と後記の実施例7?10のゴルフボールに用いる調製例1?4のカバー用組成物の組成、曲げ剛性率およびショアーD硬度を示し、表2に実施例5?6と後記の実施例11?12のゴルフボールに用いる調製例5?6のカバー用組成物の組成、曲げ剛性率およびショアーD硬度ならびに比較例1?2と後記の比較例4?5のゴルフボールに用いる比較調製例1?2のカバー用組成物の組成、曲げ剛性率およびショアーD硬度を示す。表中の各成分の配合量は重量部であり、これは以後の表においても同様である。また、表中に商品名で表示したものについては、その詳細を表2の後に示す。
【0039】押出条件はスクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は押出機のダイの位置で220?260℃に加熱された。そして、上記曲げ剛性率は、各カバー用組成物から約2mm厚さの熱プレス成形シートを作製し、それを23℃で2週間保存後にASTM D-747に準じて測定されたものである。ショアーD硬度は、各カバー用組成物から約2mm厚さの熱プレス成形シートを作製し、それを23℃で2週間保存後にASTM D-2240に準じて測定されたものである。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】…(略)…
【0042】※1:ハイミラン1555(商品名)
三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和タイプのエチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、曲げ剛性率=2550kgf/cm^(2) 、ショアーD硬度=62
※2:ハイミラン1855(商品名)
三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和タイプのエチレン-ブチルアクリレート-メタクリル酸三元共重合体系アイオノマー樹脂、曲げ剛性率=917kgf/cm^(2) 、ショアーD硬度=56
※3:サーリンAD8511(商品名)
デュポン社製の亜鉛イオン中和タイプのエチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、曲げ剛性率=2240kgf/cm^(2) 、ショアーD硬度=60
※4:サーリンAD8512(商品名)
デュポン社製のナトリウムイオン中和タイプのエチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、曲げ剛性率=2850kgf/cm^(2) 、ショアーD硬度=62
【0043】※5:HG-252(商品名)
(株)クラレ製の末端にOH基が付加した水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、JIS-A硬度=80、スチレン含量=40重量%
※6:ESBS AT014(商品名)
ダイセル化学工業(株)製のエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するSBS構造のブロック共重合体、JIS-A硬度=70、スチレン/ブタジエン=40/60(重量比)、エポキシ含量約0.7?0.9重量%
※7:ESBS AT015(商品名)
ダイセル化学工業(株)製のエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するSBS構造のブロック共重合体、JIS-A硬度=67、スチレン/ブタジエン=40/60(重量比)、エポキシ含量約1.5?1.7重量%
【0044】※8:ESBS AT000(商品名)
ダイセル化学工業(株)製のエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するSBS構造のブロック共重合体、JIS-A硬度=65、スチレン/ブタジエン=40/60(重量比)、エポキシ含量約2.9?3.4重量%
※9:ハイミラン1605(商品名)
三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和タイプのエチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、曲げ剛性率=3770kgf/cm^(2 )、ショアーD硬度=67
※10:ハイミラン1706(商品名)
三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和タイプのエチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、曲げ剛性率=3360kgf/cm^(2) 、ショアーD硬度=66
【0045】〔丸3〕ゴルフボールの作製
上記〔丸2〕のカバー用組成物を射出成形により上記のソリッドコア上に直接被覆し、得られたボールにペイントを塗装して、外径42.7mmのツーピースソリッドゴルフボールを作製した。
【0046】得られたゴルフボールのボール重量、ボールコンプレッション、ボール初速、飛距離(キャリー)およびスピン量を測定し、耐カット性を調べた。
【0047】ボールコンプレッションの測定はPGA方式によるものであり、ボール初速の測定はR&A初速測定法によるものである。飛距離の測定はツルーテンパー社製スイングロボットにウッド1番クラブを取り付け、ボールをヘッドスピード45m/sで打撃し、落下点までの距離を測定することによって行った。
【0048】スピン量は、上記スイングロボットにドライバー(ウッド1番クラブ)、5番アイアンクラブ、9番アイアンクラブをそれぞれ取り付け、それぞれ45m/s、38m/s、34m/sのヘッドスピードで打撃し、打撃されたボールに付された印を高速度カメラで撮影することによって測定した。
【0049】耐カット性は、上記スイングロボットにピッチングウェッジを取り付け、ボールをヘッドスピード30m/sでトップ打ちして、カット傷の発生状況を調べることによって行った。その評価基準は次の通りである。
【0050】評価基準:
○ : カット傷の発生なし
△ : 小さなカット傷の発生あり
× : 大きなカット傷の発生あり
××: 使用に耐えないほどの大きなカット傷の発生あり
【0051】また、得られたゴルフボールについてコントロール性および打球感をトッププロ10人による実打テストで評価した。評価基準は次の通りである。評価結果を表中に表示する際も同様の記号で表示しているが、その場合は評価にあたった10人のうち8人以上が同じ評価を下したことを示している。
【0052】コントロール性:
○ : 良い。アイアンでスピンがかかりやすく、ボールが止まりやすい。
× : 悪い。
【0053】打球感:
○ : 良い。衝撃力が小さく、ソフトなフィーリングである。
× : 悪い。
【0054】表3に実施例1?3のボール重量、ボールコンプレッション、ボール初速、飛距離、スピン量、耐カット性、コントロール性、打球感およびボールの作製にあたって使用したコアの種類、コアの直径、カバーの厚さ、曲げ剛性率およびショアーD硬度と共に示し、表4には実施例4?6のそれらについて示し、表5に比較例1?3のそれらについて示す。
【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】…(略)…
【0058】表3?表4に示す実施例1?6のボール物性と表5に示す比較例1?3のボール物性との対比から明らかなように、実施例1?6のゴルフボールは、飛距離が大きく、かつミドルアイアンショットおよびショートアイアンショットでのスピン量が多く、コントロール性が良好で、かつ打球感が良好で、しかも耐カット性が優れていた。すなわち、カバーの厚みが0.4?1.85mmの範囲内で、カバーの曲げ剛性率が100?1500kgf/cm^(2) の範囲内で、カバーのショアーD硬度が30?65の範囲内にある実施例1?6のソリッドゴルフボールは、ドライバーショットで適度なスピン量を生じ、飛距離が228?229ヤードと大きく、飛行性能が優れ、かつミドルアイアンショットおよびショートアイアンショットで、バラタ系カバーを用いた標準的な糸巻きゴルフボールである比較例3と同程度のスピン量を生じ、コントロール性および打球感が良好で、しかも耐カット性が優れていた。
【0059】これに対し、比較例1?2のソリッドゴルフボールは、飛距離が実施例1?6のソリッドゴルフボールより小さめであり、特にコントロール性や打球感が悪かった。また、比較例3のバラタ系カバーを用いた糸巻きゴルフボールは、飛距離が実施例1?6のゴルフボールより小さく、特に耐カット性が劣っていた。」

エ 以上、摘記アないしウを含む引用例1全体、特に実施例3及び4から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「カバー用組成物を射出成形によりソリッドコア上に直接被覆し、得られたボールにペイントを塗装してなる、外径42.7mmのツーピースソリッドゴルフボールであって、
前記カバー用組成物は、ハイミラン1855[15,0]重量部、サーリンAD8511[15,25]重量部、サーリンAD8512[15,25]重量部、HG-252[10,30]重量部、ESBS AT015[45,20]重量部、二酸化チタン2重量部、硫酸バリウム2重量部を配合した組成の配合材料を二軸混練型押出機によりミキシングしたものであり、
前記カバー用組成物のショアーD硬度は、[53,50]である、
ツーピースソリッドゴルフボール。」
(審決注:上記[]内の数値は、左から順に引用例の実施例3?4に対応するものである。また、略号は、以下の商品名を示す。以下同じ。
※1:ハイミラン1855(商品名)
三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和タイプのエチレン-ブチルアクリレート-メタクリル酸三元共重合体系アイオノマー樹脂、曲げ剛性率=917kgf/cm^(2) 、ショアーD硬度=56
※2:サーリンAD8511(商品名)
デュポン社製の亜鉛イオン中和タイプのエチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、曲げ剛性率=2240kgf/cm^(2) 、ショアーD硬度=60
※3:サーリンAD8512(商品名)
デュポン社製のナトリウムイオン中和タイプのエチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、曲げ剛性率=2850kgf/cm^(2) 、ショアーD硬度=62
※4:HG-252(商品名)
(株)クラレ製の末端にOH基が付加した水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、JIS-A硬度=80、スチレン含量=40重量%
※6:ESBS AT015(商品名)
ダイセル化学工業(株)製のエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するSBS構造のブロック共重合体、JIS-A硬度=67、スチレン/ブタジエン=40/60(重量比)、エポキシ含量約1.5?1.7重量%)

(2)当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-57527号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のアないしオの事項が記載されている。

ア 「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば上記の課題は、(a)α-オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂および、(b)芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックAを1個以上および、共役ジエン化合物からなり、該共役ジエン化合物に由来する炭素-炭素二重結合の70%以上が水素添加された重合体ブロックBを1個以上有し、かつ末端に水酸基を有するブロック共重合体〔以下、これを水添ブロック共重合体(b)と略称する〕からなり、両者の重量比が(a)/(b)=98/2?50/50であることを特徴とするゴルフボールカバー用樹脂組成物を提供することによって解決される。」

イ 「【0009】
【発明の実施の形態】本発明において用いられるα-オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(a)とは、エチレン、プロピレン等のα-オレフィンとアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸とからなる共重合体、またはα-オレフィン、不飽和カルボン酸およびそのエステルからなる共重合体のカルボキシル基の少なくとも1部がナトリウム、カリウム、リチウム、銅、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム等の金属陽イオンとの塩を形成している樹脂のことを意味する。
【0010】本発明にあっては、かかるα-オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂として公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、デュポン社製の「サーリン(SURLYN)」(商品名)、三井デュポンポリケミカル(株)製の「ハイミラン(HIMILAN)」(商品名)、エクソン社製の「イオテック(IOTEK)」(商品名)などの市販のものが好適に使用される。α-オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(a)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」
ウ 「【0011】また、本発明の樹脂組成物を構成するもう一方の成分である水添ブロック共重合体(b)としては、例えば、次の式で示されるものが挙げられる。
(A-B)_(k) -OH
(B-A)_(l )-OH
A-(B-A)_(m) -OH
B-(A-B)_(n) -OH
上記式中、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを表し、k、l、mおよびnはそれぞれ1?5の整数を表し、OHは水酸基を表す。なお、水添ブロック共重合体(b)は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】本発明で使用する水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロックAを構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-,m-またはp-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられるが、これらの中でも、スチレンおよびα-メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。水添ブロック共重合体(b)における芳香族ビニル化合物の含有率は5?75重量%であることが好ましく、10?65重量%であることがより好ましい。
【0013】一方、水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロックBを構成する共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられるが、これらの中でも、イソプレン、1,3-ブタジエンが好ましい。共役ジエン化合物は単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0014】水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロックBの構造は特に限定されず、また、1,2-結合や3,4-結合の含有量についても特に制限はない。
【0015】水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロックAと重合体ブロックBの結合様式は、線状、分岐状あるいはこれらの任意の組合せであってもよい。
【0016】また、水添ブロック共重合体(b)において、水酸基は重合体ブロックAおよび重合体ブロックBの末端のいずれに位置していてもよいが、ハードブロックである重合体ブロックAの末端に位置していることが好ましく、スチレンブロックの末端に位置していることがより好ましい。水酸基の含有量は水添ブロック共重合体(b)1分子当り0.5個以上であることが好ましく、0.6個以上であることがより好ましい。
【0017】本発明において使用される水添ブロック共重合体(b)の数平均分子量は特に制限されないが、通常30,000?1,000,000であり、好ましくは40,000?300,000である。
【0018】水添ブロック共重合体(b)の製造方法としては、公知の方法が特に制限なく利用され、例えば、次のようなアニオン重合法を挙げることができる。すなわち、アルキルリチウム化合物等を開始剤としてn-ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させ、所望の分子構造および分子量に達した時点でエチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド等のオキシラン骨格を有する化合物、あるいはε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン(ピバロラクトン)等のラクトン系化合物などを付加させ、次いでアルコール類、カルボン酸類、水等の活性水素含有化合物を添加して重合を停止し、得られたブロック共重合体をn-ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中でアルキルアルミニウム化合物とコバルト、ニッケル等からなるチーグラーの触媒などの水添触媒の存在下に、反応温度20?150℃、水素圧力1?150kg/cm2 の条件下で水素添加を行う方法である。
【0019】本発明における水添ブロック共重合体(b)は、ゴルフボールカバー用の組成物に使用される関係上、耐熱性および耐候性に優れていることが望まれる。このため、重合体ブロックBの共役ジエン化合物に由来する炭素-炭素二重結合の70%以上が水素添加されていることが必要である。重合体ブロックBにおける共役ジエン化合物に由来する炭素-炭素二重結合は、80%以上が水素添加されていることが好ましく、90%以上が水素添加されていることがより好ましい。
【0020】なお、水添ブロック共重合体(b)の重合体ブロックBにおける炭素-炭素二重結合の水素添加率は、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、核磁気共鳴等により水素添加前後における重合体ブロックB中の炭素-炭素二重結合の量を測定し、その測定値から算出することができる。」

エ 「【0021】本発明の樹脂組成物においてα-オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b)の組成比は、(a)/(b)=98/2?50/50(重量比)の範囲内にあることが必要である。
【0022】本発明の樹脂組成物において、水添ブロック共重合体(b)の割合が上記の範囲より少ない場合には、ゴルフボールカバーとしたときに、柔軟性がほとんど付与されず打球感の改良が認められない。一方、本発明の樹脂組成物において水添ブロック共重合体(b)の割合が上記の範囲より多い場合には、得られるゴルフボールカバーは、充分な柔軟性を有しているが、α-オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂に由来する靱性、耐油性等の特性に劣り好ましくない。
【0023】α-オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b)の組成比は、(a)/(b)=95/5?60/40(重量比)であることが好ましい。
【0024】本発明の樹脂組成物は、染料、二酸化チタン、紫外線吸収剤、酸化防止剤および安定剤などを添加することができる。また、本発明の樹脂組成物は、その特性を損なわない範囲で、可塑剤、ガラス繊維やカーボン繊維等の補強剤などを含有していてもよい。
【0025】さらに、本発明の樹脂組成物は、その特性を損なわない範囲で、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンなどの熱可塑性エラストマーを含有していてもよい。
【0026】本発明の樹脂組成物は、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどの混練機を用いて調製することが出来る。
【0027】この様にして得られた樹脂組成物は、例えば、圧縮成形、射出成形などの公知の成形法によりゴルフボールとすることができる。」

オ 「【0028】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0029】なお、以下の参考例において、重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリスチレン換算の分子量であり、水添ブロック共重合体における芳香族ビニル化合物の含有率、水素添加率および重合体1分子当りの水酸基の含有量は、1 H-NMRスペクトルに基づいて算出したものである。
【0030】また、以下の実施例及び比較例においては、次の方法により、樹脂組成物から得られる成形物の硬度、破断強度、引張弾性率、耐油性の評価を行った。
【0031】(硬度)ASTM D-2240に記載された方法に従い、ASTM D硬度計を用いてシート状の成形物(11cm×11cm×0.2cm)の硬度を測定し、柔軟性の指標とした。
【0032】(破断強度および引張弾性率)JIS K6301に記載された方法に従って測定した。すなわち、JIS3号に規定されたダンベル状の試験片を作製し、インストロン万能試験機を使用して室温下、引張速度5cm/分で引張試験を行い、破断強度(kg/cm^(2) )および引張弾性率(kg/cm^(2) )を測定した。破断強度を力学的強度の指標とし、引張弾性率を靱性の指標とした。
【0033】(耐油性)短冊状の試験片(1cm×6cm×0.3cm)を作製し、該試験片をJIS-1号油に7日間浸漬し、その前後での試験片の重量を測定し、下記式に従って膨潤度(%)を求め、耐油性の指標とした。
【0034】
【数1】(略)
【0035】また、樹脂組成物から以下の方法でゴルフボールを作製し、その性能を評価した。すなわち、樹脂組成物を3cm×10cm程度の短冊状のシートに成形し、得られたシート2枚を130℃で充分加熱し、糸巻き芯(直径28mm)に十文字に巻き付けた後、ゴルフボール成形用金型に入れ、130℃で45秒間予備加熱した後、170kg/cm^(2) の圧力を80秒間かけてプレス成形を行った。充分冷却した後、成形品のバリの部分をグラインダーで削り取りゴルフボールを得た。なお、得られたゴルフボールにおいて、カバーの厚さは1.95?2.05mmであった。
【0036】得られたゴルフボールについて、次の方法により性能の評価を行った。
耐カット性
ゴルフボール用耐カット試験機((株)ダンベル社製)を用いて、2.5kgのVカット方式(高さ80cm)で評価した。評価基準(目視によりカバーの表面を観察)は次のとおりである。
評価基準 ◎:傷なし
○:少し傷が認められる
△:かなりの傷が認められる
【0037】反発性
高さ100cmよりゴルフボールをストーンテーブル上に落下させ、跳ね返った高さ(cm)を測定した。
…(略)…
【0040】参考例2(水添ブロック共重合体の製造)
攪拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサン50kg、充分に脱水したスチレン1400gおよびsec-ブチルリチウム(10重量%、シクロヘキサン溶液)105gを加え、60℃で60分間重合し、次いでイソプレン/ブタジエン=50/50(重量比)の混合物7200gを加えて60分間、さらにスチレンを1400g加えて60分間重合した後、エチレンオキシド14gを加え、最後にメタノールを加えて末端に水酸基を有するスチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン型のブロック共重合体を合成した。得られたブロック共重合体を参考例1と同様の条件で水素添加して水添ブロック共重合体(以下、これをSEEPS-OH-1と略記する)を得た。得られたSEEPS-OH-1は数平均分子量が103,400であり、スチレン含有量が28重量%、1分子当りの末端水酸基の数が0.64個、水素添加率が97.5%であった。
【0041】参考例3 (水添ブロック共重合体の製造)
撹拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサン50kg、十分に脱水したスチレン1350gおよびsec-ブチルリチウム (10重量%、シクロヘキサン溶液)205gを加え、60℃で60分間重合し、次いでイソプレン/ブタジエン=50/50(重量比)の混合物7300gを加えて60分間、さらにスチレンを1350g加えて60分間重合した後、十分に脱水したスチレンオキシドを38g加え、最後にメタノ一ルを加えて反応を停止して末端に水酸基を有するスチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン型のブロック共重合体を合成した。得られたブロック共重合体を参考例1と同様の条件下で水素添加して水添ブロック共重合体(以下、これをSEEPS-OH-2と略記する)を得た。得られたSEEPS-OH-2は数平均分子量が48,000であり、スチレン含有量が27重量%、1分子当りの末端水酸基の数が0.67個、水素添加率が99.1%であった。
…(略)…
【0047】実施例1?8および比較例1?10
α-オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体系アイオノマー樹脂としてハイミラン1652、ハイミラン1557およびハイミラン1601〔いずれも商品名、三井・デュポンポリケミカル(株)社製〕を使用した。表1および表2に示す割合で各成分を配合し、二軸押出機で230℃にて溶融混合して樹脂組成物を得た。
【0048】得られた樹脂組成物から、射出成形機を使用して成形温度230℃にて所定形状の試験片を作製し、各種の物性を評価した。結果を表1および表2に併せて示す。また、得られた樹脂組成物から前記の方法でゴルフボールを作製し、その性能の評価を行った。結果を表1および表2に併せて示す。
【0049】
【表1】…(略)…
【0050】
【表2】

【0051】【発明の効果】本発明により提供される樹脂組成物は、十分な柔軟性を有し、靱性、耐摩耗性、耐油性等に優れるとともに反発性、耐カット性に優れたゴルフボールカバーを与える。本発明の樹脂組成物から得られるゴルフボールカバーは柔軟性と反発性のバランスおよび色調が優れており、良好な打球感を与える。」

カ 以上、摘記アないしオを含む引用例2全体、特に実施例6及び7から、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「ゴルフボールカバー用樹脂組成物を糸巻き芯に巻き付けた後プレス成形して得られたゴルフボールにおいて、
前記ゴルフボールカバー用樹脂組成物は、アイオノマー樹脂(ハイミラン1557:35重量部とハイミラン1601:35重量部)、水添ブロック共重合体[SEEPS-OH-1:30重量部、SEEPS-OH-2:30重量部]、酸化チタン:10重量部を配合し、二軸押出機で230℃にて溶融混合して得られたものであり、
前記ゴルフボールカバー用樹脂組成物から得られる成形物の硬度は、ASTM D-2240に記載された方法に従い、ASTM D硬度計を用いて測定されたもので、[43,42]である、ゴルフボール。」
(審決注:上記[]内の略号及び数値は、左から順に引用例の実施例7?8に対応するものである。また、略号は、以下の製造法により製造され、以下の物性値を有する水添ブロック共重合体を示す。以下同じ。
*2「SEEPS-OH-1」
攪拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサン50kg、充分に脱水したスチレン1400gおよびsec-ブチルリチウム(10重量%、シクロヘキサン溶液)105gを加え、60℃で60分間重合し、次いでイソプレン/ブタジエン=50/50(重量比)の混合物7200gを加えて60分間、さらにスチレンを1400g加えて60分間重合した後、エチレンオキシド14gを加え、最後にメタノールを加えて末端に水酸基を有するスチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン型のブロック共重合体を合成した。得られたブロック共重合体を参考例1と同様の条件で水素添加して水添ブロック共重合体(以下、これをSEEPS-OH-1と略記する)を得た。得られたSEEPS-OH-1は数平均分子量が103,400であり、スチレン含有量が28重量%、1分子当りの末端水酸基の数が0.64個、水素添加率が97.5%であった。
*3「SEEPS-OH-2」
撹拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサン50kg、十分に脱水したスチレン1350gおよびsec-ブチルリチウム (10重量%、シクロヘキサン溶液)205gを加え、60℃で60分間重合し、次いでイソプレン/ブタジエン=50/50(重量比)の混合物7300gを加えて60分間、さらにスチレンを1350g加えて60分間重合した後、十分に脱水したスチレンオキシドを38g加え、最後にメタノ一ルを加えて反応を停止して末端に水酸基を有するスチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン型のブロック共重合体を合成した。得られたブロック共重合体を参考例1と同様の条件下で水素添加して水添ブロック共重合体(以下、これをSEEPS-OH-2と略記する)を得た。得られたSEEPS-OH-2は数平均分子量が48,000であり、スチレン含有量が27重量%、1分子当りの末端水酸基の数が0.67個、水素添加率が99.1%であった。)

(3)当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-114125号公報(以下「引用例3」という。)には、図とともに、以下のア及びイの事項が記載されている。

ア 「【0004】一方、ゴルフクラブを振り下ろし、クラブヘッドのフェース部でゴルフボールを打撃したとき、両者間の動摩擦係数はクラブヘッドの速さに依存することが知られており、クラブヘッドの速さが速くなればなる程、動摩擦係数が増大する。この動摩擦係数は、打撃後のボールの飛び出し角度とそのスピン量に大きな影響を与え、ボールの飛距離を決定する重要な要因となるものである。従って、プレーヤは、自らが使用しているゴルフクラブの動摩擦係数に関する特性を把握し、これに適合したクラブの振り下ろし動作を会得すれば、ゴルフボールの正確な飛距離を得ることが可能となる。
【0005】ところが、上述のような動摩擦係数に関する特性は、クラブヘッドのフェース面に水が付着していない乾燥状態にあるときのものであって、ここに水が付着していると、ゴルフクラブヘッドの速さと動摩擦係数の関係は全く予測し得ないものとなる。特にフェース面への水の付着量が多くなると、ここに形成された水の膜によって、打球時にハイドロプレーン現象を起こし、打球動作が極めて不安定な状態となる。このため、かなりの塾練者であっても、ゴルフボールの飛距離が不正確となってしまうのである。」

イ 「【0006】【発明が解決しようとする課題】以上説明した全ての不具合は、ゴルフのプレー時に、ゴルフボール外表面に水が付着していることに起因する。
【0007】本発明は、上述した新規な認識に基づきなされたものであり、その目的とするところは、外表面に水が付着せず、或いはその付着量を極めて少なくし、前記不具合の全てを除去することの可能なゴルフボールを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、外表面が、接触角90°以上の撥水性を有する物質から成るゴルフボールを提案する。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【0010】図1はゴルフボール1の正面図であり、図2はその部分拡大断面図であるが、ここに示したゴルフボール1の外表面2は、接触角90°以上の撥水性を有する物質から構成されている。接触角とは、或る物質の表面にたらした水滴と、この物質表面とが接触する角度であり、物質表面の濡れやすさ、ないしは撥水性を示す値として広く一般に用いられている。
【0011】上述のようにゴルフボール1の外表面2を90°以上の接触角を示す高撥水性物質によって構成すれば、雨天時にも、また芝が露で濡れているときも、ボール外表面2は効果的に水を弾くので、この外表面2には全く、或いはほとんど水が付着することはない。
【0012】またボール1の外表面2に多少の水滴が付着していても、図3に示すように、矢印方向に振り下ろされたクラブヘッド5でゴルフボール1を打撃するとき、その打撃直前に、クラブヘッド5のフェース部6とボール1との間に存在する空気の圧力は大きく高まるので、ボール外表面2の撥水性が高いと、ここに付着した水滴Wは、上記圧力で効果的に吹き飛ばされ、フェース部6がボール1に当ったときには両者間に実質的に水が存在しない状態となる。
【0013】このように外表面2への水の付着を防止できるので、この外表面2に砂などを異物が付着することも阻止でき、打球時にクラブヘッドのフェース部に傷が付く不具合を確実に防止することができる。しかも、ゴルフボール1が飛行するときも、その外表面2に異物が付着していないので、ボール1に加わる空気抵抗を低減でき、その飛距離を伸ばすことが可能となる。しかも、外表面2の撥水性を高めると、ゴルフボール1の飛行時に、このボールに対して作用する空気の粘性抵抗を下げることができ、これによってもボール1の飛距離を伸ばすことが可能となる。
【0014】また、ゴルフボール1の外表面2に水が付着していない状態を保つことができるので、ゴルフクラブ5のフェース部6によってこのボール1を打撃したとき、フェース部6とボール1との間の動摩擦係数特性をほぼ一定の関係に保つことができ、天候の良し悪しに関係なく、常に正確なボールの飛距離を得ることができる。」

(4)当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-114129号公報(以下「引用例4」という。)には、以下のア及びイの事項が図とともに記載されている。

ア 「【0004】一方、ゴルフクラブを振り下ろし、フェース面でゴルフボールを打撃したとき、両者間の動摩擦係数はクラブヘッドの速さに依存することが知られており、クラブヘッドの速さが速くなればなる程、動摩擦係数が増大する。この動摩擦係数は、打撃後のボールの飛び出し角度とそのスピン量に大きな影響を与え、ボールの飛距離を決定する重要な要因となるものである。従って、プレーヤは、自らが使用しているゴルフクラブの動摩擦係数に関する特性を把握し、これに適したクラブの振り下ろし動作を会得すれば、ゴルフボールの正確な飛距離を得ることが可能となる。
【0005】ところが、上述のような動摩擦係数に関する特性は、クラブヘッドのフェース面に水が付着していない乾燥状態にあるときのものであって、ここに水が付着していると、ゴルフクラブヘッドの速さと動摩擦係数の関係は全く予測し得ないものとなる。特にフェース面への水の付着量が多くなると、ここに形成された水の膜によって、打球時にハイドロプレーン現象を起こし、打球動作が極めて不安定な状態となる。このため、かなりの塾練者であっても、ゴルフボールの飛距離が不正確となってしまうのである。」

イ 「【0016】また、フェース面2に水が付着していない状態を保つことができるので、雨天時にプレーを行ったときも、フェース面2は乾燥状態のときと同様な状態でボールを打撃することになり、これによりハイドロプレーン現象の発生を阻止できるばかりでなく、フェース面2とボールとの動摩擦係数と、ゴルフクラブヘッドの速さとの関係をほぼ一定の関係に維持することができ、天候の良し悪しに関係なく、常に正確なボールの飛距離を得ることができる。
【0017】またフェース面2の撥水性を高めると、このフェース面2の、ゴルフボールに対する摩擦係数を下げることができる。このようにフェース面2の摩擦係数が下がると、クラブヘッド1によってボールを打撃したとき、そのボールのスピン量、すなわちその回転数(rpm)を下げることができ、ボールの飛び出し角度を適正な角度に定め、ボールの飛距離を一層伸ばすことが可能となる。
【0018】従来のゴルフクラブのフェース面は、一般にABS樹脂、メタル、或いはカーボン繊維入りの合成樹脂などから構成されているが、このようなフェース面は、ボールに対する摩擦係数が大きく、このため、ボールの打撃時に生じるボールのスピン量(回転数)が大きくなりすぎ、ボールの飛び出し角度が過度に小さくなり、ボールの飛距離を伸ばすことが困難であった。これに対し、本発明のようにフェース面2の撥水性を高めると、その摩擦係数も下がるので、打球時のボールの回転数を下げ、ボールの飛び出し角度を従来よりも大きくすることができ、適正な飛び出し角度を得ることができるのである。
【0019】上述した諸効果は、ゴルフクラブヘッドのフェース面2だけでなく、ゴルフボールの外表面についても、接触角が90°以上の撥水性を有するように構成すると、より確実に得ることができる。」

2 対比・判断
(1)本願発明と引用発明1との対比・判断
ア 対比
(ア)引用発明1の「『カバー用組成物を射出成形によりソリッドコア上に直接被覆』してなる『ツーピースソリッドゴルフボール』」及び「ハイミラン1855、サーリンAD8511及びサーリンAD8512」は、それぞれ、本願発明の「コアと、該コアを被覆するカバーからなるゴルフボール」及び「アイオノマー樹脂」に相当する。

(イ)引用発明1のカバーのショアーD硬度は[53,50]であるから、引用発明1の「カバー」と本願発明1の「カバー」とは、「ショア-D硬度が48以上で53以下」である点で一致する。

(ウ)引用発明1の「ESBS AT015」は、熱可塑性エラストマーであり(例.特開平10-216271号公報「【0023】エポキシ基変性熱可塑性エラストマーは、例えば、…(略)…ダイセル化学工業(株)から「ESBS AT014」、「ESBS AT015」の商品名で市販されている…(略)…」参照。)、かつ、エポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するSBS構造のブロック共重合体(上記1(1)エの※5及び※6参照。)、すなわち、エポキシ化SBSであるから、本願発明の「熱可塑性エラストマーが末端に水酸基が付加した水添SIBSおよびエポキシ化SBSの少なくともいずれかである」構成を備える点で一致する。

(エ)引用発明1の「カバー用組成物」は、「アイオノマー樹脂(『ハイミラン1855』、『サーリンAD8511』及び『サーリンAD8512』)」と、「熱可塑性エラストマー(『ESBS AT015』)」とを配合してなるものであるから、引用発明1の「カバー」と本願発明の「カバー」とは、「アイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーの混合物から構成され」るものである点でも一致する。

(オ)上記(ア)ないし(エ)から、本願発明と引用発明1とは、
「コアと、該コアを被覆するカバーからなるゴルフボールにおいて、前記カバーがアイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーの混合物から構成され、ショア-D硬度が48以上で53以下であり、
前記カバーを構成する熱可塑性エラストマーが、末端に水酸基が付加した水添SIBSおよびエポキシ化SBSの少なくともいずれかであるゴルフボール。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:
前記カバーを構成する混合物が、本願発明では、「テルペン樹脂および/またはロジンエステル樹脂よりなる粘着付与剤」を含有し、「カバーを構成するアイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の配合量の合計を100重量部として、アイオノマー樹脂を36?50重量%、熱可塑性エラストマーを30?54重量%、さらに粘着付与剤が10?20重量%配合され」たものであるのに対して、引用発明1では、粘着付与剤を含有していない点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
(ア)ゴルフボール用カバー材に粘着付与樹脂を配合することは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術1」という。例.特開平10-231400号公報特に「【請求項8】 カバー材に用いる請求項1?7記載のゴルフボール材料。」及び「【0037】本発明のゴルフボール材料には、必要に応じ、他の熱可塑性樹脂、粘着付与樹脂、ワックス、酸化防止剤、耐候安定剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、染料、無機充填剤など各種添加剤等を配合することができる。」、特開平9-227737号公報特に「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、柔軟性、反発弾性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、ゴルフボールのカバー材及び/又はコアー材として、あるいはワンピースボール材料として好適な、射出成形性が優れリサイクル使用が可能な熱可塑性樹脂組成物に関する。」及び「【0028】上記組成物には、必要に応じ、他の熱可塑性樹脂、例えば1価金属アイオノマーや直鎖低密度ポリエチレン、粘着付与樹脂、ワックス、酸化防止剤、耐候安定剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、染料、無機充填剤など各種添加剤を配合することができる。」、特開平9-235432号公報特に「【請求項8】 請求項1乃至7の何れかに記載のアイオノマー組成物からなるゴルフボールカバー材。」及び「【0025】本発明のアイオノマー組成物には、必要に応じ、他の熱可塑性樹脂、粘着付与樹脂、ワックス、酸化防止剤、耐候安定剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、染料、無機充填剤など各種添加剤等を配合することができる。」並びに特開平11-244420号公報特に「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、コントロール性に優れたゴルフボール材料に関する【0002】【従来の技術】ゴルフボールカバー材料として、耐久性が優れているところから種々のアイオノマーが提案され、また使用されてきた。アイオノマーは一般に硬質になるほど反発弾性が優れており、ゴルフボールの飛距離アップの点から硬質アイオノマーの使用が一般的であった。」及び「【0016】ゴルフボール材料として使用するに際し、架橋体アロイ又は架橋体アロイとアイオノマーのブレンドには、必要に応じ他の熱可塑性樹脂、粘着付与樹脂、可塑剤、ワックス、酸化防止剤、耐候安定剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、染料、無機充填剤などの各種添加剤を配合することができる。」参照。)ところ、粘着付与樹脂として何をどの程度用いるかは、当業者が適宜決定すべき設計事項というべきものである。

(イ)粘着付与樹脂としてテルペン樹脂及びロジンエステル樹脂は、本願の出願前に周知である(以下「周知技術2」という。例.特開平6-106682号公報特に「【0015】本発明における粘着剤には、上記したスチレン系ブロック重合体の他に粘着付与樹脂が含まれる。粘着付与樹脂としてはテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、石油樹脂およびこれらの水素添加品が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独又は併用して使用することができる。」、特開昭63-278989号公報特に「3)前記粘着付与樹脂が、水添テルペン樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、石油樹脂、水添石油樹脂、ロジン、水添ロジン、ロジンエステルまたは水添ロジンエステルであることを特徴とする特許請求の範囲第1項または第2項に記載の粘着シート。」(特許請求の範囲)、特開平7-157738号公報特に「【0020】本発明で使用する成分IIの粘着付与剤樹脂は、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂、C_(5) ・C_(9) 共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂等の公知の粘着付与剤樹脂中から選ばれる。…(略)…」参照。)。

(ウ)ゴルフボールのカバーの各成分の具体的な含有量は、当業者が適宜決定すべき設計事項というべきものである。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)から、引用発明1において、カバーをなす混合物の1成分としてテルペン樹脂またはロジンエステル樹脂よりなる粘着付与剤を配合するとともに、前記混合物を、アイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の配合量の合計を100重量部として、アイオノマー樹脂が36?50重量%、熱可塑性エラストマーが30?54重量%、さらに粘着付与剤が10?20重量%配合し、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術1及び2に基づいて容易になし得たことである。

(オ)効果について
a 本願発明の「粘着付与剤」に関し、本願の明細書の発明の詳細な説明には、(a)及び(b)の記載がある。
(a)「【0023】
次に本発明のカバーに使用される粘着付与剤はクマロン・インデン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体、フェノール・ホルムアルデヒト系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、石油系樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド系樹脂、ポリブテン等のオリゴマー、液状ポリイソプレンなどの液状ゴム等であるが、特にテルペン樹脂およびロジンエステル系が好適である。
…(略)…
【0031】
これらの粘着付与剤はカバーの基材樹脂に分散混合され、カバーに適度の粘着性を付与し、ゴルフボールの打撃時にクラブフェース面への粘着性を高めスピン保持率を改善する。」
(b) 上記第4 2(2)参照。
b 本願の明細書の発明の詳細な説明の段落【0044】ないし【0060】の記載(上記上記第4 2(2)参照。)から、粘着付与剤を含む実施例1ないし6は粘着付与剤を含まない比較例1、比較例2及び比較例4に比べ、いずれもスピン保持率が改善することが窺える。
してみれば、実施例1及び3ないし6に配合された粘着付与剤は「クリアロンP105(ヤスハラケミカル(株)社製の水添テルペン樹脂)であり、実施例2に配合された粘着付与剤は、「クリアロンP105(荒川化学(株)社製の水添ロジンエステル樹脂)であるから、上記(a)及び(b)の記載から、粘着付与剤であるテルペン樹脂又はロジンエステル樹脂はスピン保持率の改善に効果を奏するものといえる。
c 以下、粘着付与剤であるテルペン樹脂またはロジンエステル樹脂による本願発明1に係るスピン保持率の改善の効果について検討する。
d 引用例3及び4には、ゴルフボールの外表面を高撥水性物質を有する構成となすことにより、ゴルフボールの外表面に水が付着しない状態を保つことができるのでゴルフクラブのフェース面とボールとの間の動摩擦係数特性をほぼ一定の関係に保つことができ、天候の良し悪しに関係なく、スピン量に大きな影響を与えることがない旨記載されている。
e テルペン樹脂及びロジンエステル樹脂はいずれも疎水性が強い樹脂であることが、本願の出願前に周知である(以下「周知事実」という。例.特開平10-84789号公報特に「【0015】…(略)…ロジンエステル、ポリテルペン樹脂、石油樹脂が疎水性が強いため特に好適である。」及び特開平9-67795号公報特に「【0012】…(略)…ロジンエステル、ポリテルペン樹脂、石油樹脂が疎水性が強いため特に好適である。」参照。)。
f 「疎水性」は「撥水性」ともいうことが技術常識である(例.特表2000-504437号公報4頁下から9?8行「…(略)…撥水性(疎水性)…(略)…」及び特開平11-240244号公報【0013】「…(略)…疎水性(撥水性)…(略)…」参照。)。
g 上記dないしfから、粘着付与樹脂としてテルペン樹脂又はロジンエステル樹脂を配合した、ゴルフボールのカバーを構成する上記(ウ)の混合物が、ゴルフボール表面の撥水性を高め、該ゴルフボールのスピン保持率を改善させるであろうことは、当業者が、引用発明1、周知技術1及び周知技術2がそれぞれ奏する効果並びに周知事実、引用例3に記載された事項及び引用例4に記載された事項から予測し得たものである。

(カ)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が、引用例1に記載された発明、引用例3に記載された事項、引用例4に記載された事項、周知技術1、周知技術2及び周知事実に基づいて容易に発明をすることができたものである。

(2)本願発明と引用発明2との対比・判断
ア 対比
(ア)引用発明2の「ゴルフボールカバー用樹脂組成物を糸巻き芯に巻き付けた後プレス成形して得られたゴルフボール」と、本願発明の「『コアと、該コアを被覆するカバー』からなる『ソリッドゴルフボール』」とは、「コアと、該コアを被覆するカバーからなるゴルフボール」である点で一致する。

(イ)引用発明2において、ゴルフボールカバー用樹脂組成物から得られる成形物の硬度は、ASTM D-2240に記載された方法に従い、ASTM D硬度計を用いて測定されたもので、[43,42]であるところ、ショアーD硬度とは、ASTM D-2240に準じて測定された硬度であるから(例.上記(1)イ「【0015】…(略)…このカバーのショアーD硬度はカバー用組成物から約2mm厚さの熱プレス成形シートを作製し、それを23℃で2週間保存後にASTM D-2240に準じて測定したものである。」参照。)、引用発明2の「カバー」と本願発明の「カバー」とは、「ショア-D硬度が所定の値」である点で一致する。

(ウ)引用発明2の「『SEEPS-OH-1』及び『SEEPS-OH-2』」は、上記「*2」及び「*3」から、熱可塑性エラストマーであることが当業者に自明であり、かつ、末端に水酸基を有するスチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン型のブロック共重合体(SIBS構造-OH)を水素添加して得られた水添ブロック共重合体(SEEPS構造-OH)、すなわち、末端に水酸基が付加した水添SIBSであるから、本願発明の「熱可塑性エラストマーが、末端に水酸基が付加した水添SIBSおよびエポキシ化SBSの少なくともいずれかである」構成を備える点で一致する。

(エ)引用発明2の「ゴルフボールカバー用樹脂組成物」は、アイオノマー樹脂と「熱可塑性エラストマー(『SEEPS-OH-1』又は『SEEPS-OH-2』)」とを配合してなるものであるから、引用発明2の「カバー」と本願発明の「カバー」とは、「アイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーの混合物から構成され」るものである点でも一致する。

(オ)上記(ア)ないし(エ)から、本願発明と引用発明2とは、
「コアと、該コアを被覆するカバーからなるゴルフボールにおいて、前記カバーがアイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーの混合物から構成され、ショア-D硬度が所定の値であり、
前記カバーを構成する熱可塑性エラストマーが、末端に水酸基が付加した水添SIBSおよびエポキシ化SBSの少なくともいずれかであるゴルフボール。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2:
前記カバーを構成する混合物が、本願発明では、「粘着付与剤」を含有し、「カバーを構成するアイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の配合量の合計を100重量部として、アイオノマー樹脂を36?50重量%、熱可塑性エラストマーを30?54重量%、さらに粘着付与剤が10?20重量%配合され」たものであるのに対して、引用発明2では、粘着付与剤を含有していない点。

相違点3:
前記ショア-D硬度が、本願発明では、「48以上で53以下」であるのに対して、引用発明2では、「43,42」である点。

相違点4:
前記ゴルフボールが、本願発明では、「ソリッドゴルフボール」であるのに対して、引用発明2では、「糸巻きゴルフボール」である点。

イ 判断
上記相違点2ないし4について検討する。
(ア)相違点2について
上記相違点1について検討した際の理由と同様の理由(上記(1)イ参照。)により、引用発明2において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易になし得たことである。

(イ)相違点3について
引用発明2の「『ゴルフボールカバー用樹脂組成物』の『ショアーD硬度』」は、当業者が適宜決定すべき設計事項というべきものであるから(例.上記1(1)イ「【0015】また、本発明においては、カバーを従来より軟らかくし、その硬度をショアーD硬度で30?65にするが、これは優れた反発性能および耐久性を保持しつつ、打球感を良好にするためである。すなわち、カバーのショアーD硬度が30より低い場合は、反発性能や耐カット性の低下が生じ、カバーのショアーD硬度が65より高い場合は、打球感が硬くなって悪くなる。そして、このカバーのショアーD硬度は特に40?55であることが好ましい。このカバーのショアーD硬度はカバー用組成物から約2mm厚さの熱プレス成形シートを作製し、それを23℃で2週間保存後にASTM D-2240に準じて測定したものである。」参照。)、引用発明2において、上記相違点3に係る本願発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得た設計上のことである。

(ウ)相違点4について
引用発明2の「糸巻きゴルフボール」に代えて、「ソリッドゴルフボール」となすことは当業者が適宜なし得る設計変更であるから(例.上記1(1)イ「【0025】…(略)…そして、上記カバーをコアに被覆することによってゴルフボールが得られるが、コアとしてはソリッドゴルフボール用コア(ソリッドコア)、糸巻きゴルフボール用コア(糸巻きコア)のいずれも使用することができる。…(略)…」参照。)、引用発明2において、上記相違点4に係る本願発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得た設計上のことである。

(エ)効果について
上記相違点1について検討した際の理由と同様の理由(上記(1)イ参照。)により、本願発明の効果は、当業者が、引用発明2、周知技術1及び周知技術2がそれぞれ奏する効果並びに周知事実、引用例3に記載された事項及び引用例4に記載された事項から予測し得たものである。

(オ)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された事項、引用例4に記載された事項、周知技術1、周知技術2及び周知事実に基づいて容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
上記(1)及び(2)のとおり、本願発明は、当業者が、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された事項、引用例4に記載された事項、周知技術1、周知技術2及び周知事実に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
上記第4のとおり、本願は、平成14年改正前特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
また、上記第5のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-22 
結審通知日 2010-11-24 
審決日 2010-12-07 
出願番号 特願平11-276745
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (A63B)
P 1 8・ 121- WZ (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤坂 祐樹  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 菅野 芳男
桐畑 幸▲廣▼
発明の名称 ソリッドゴルフボール  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  
代理人 堀井 豊  
代理人 仲村 義平  
代理人 野田 久登  
代理人 酒井 將行  
代理人 荒川 伸夫  

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