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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24D |
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管理番号 | 1230802 |
審判番号 | 不服2009-6170 |
総通号数 | 135 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-03-23 |
確定日 | 2011-01-20 |
事件の表示 | 特願2004-199303号「温水マット」拒絶査定不服審判事件〔平成18年1月26日出願公開、特開2006-22983号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成16年7月6日の出願であって平成21年2月18日付け(発送日:同年同月24日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年3月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成21年4月20日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成21年4月20日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年4月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「互いに平行な一対の横辺部、及びこの横辺部と直交する一対の縦辺部を有する四角形のマット本体と、このマット本体に敷設された複数の放熱管とを備え、 上記マット本体が、上記一対の横辺部の近傍において横辺部に沿って分割されるとともに、上記縦辺部に沿って複数に分割されることにより、一方の横辺部の一部をそれぞれ含む複数の第1マット部、他方の横辺部の一部をそれぞれ含む複数の第2マット部、及び互いに対向する第1マット部と第2マット部との各間にそれぞれ存する複数の第3マット部に区分され、 上記複数の第1マット部のうちのいずれか一つの横辺部に切欠き部が設けられ、この切欠き部に、上記放熱管が接続される温水ヘッダが設けられ、 上記放熱管が、上記第3マット部にそれぞれ複数宛敷設されて上記縦辺部と平行に延びる直管部と、上記温水ヘッダを設けた第1マット部を除く第1マット部および上記第2マット部にそれぞれ敷設されて上記直管部の端部どうしを連結する連結管部と、上記温水ヘッダを設けた第1マット部に敷設されて上記直管部に接続されるとともにその端部が上流側端部または下流側端部として上記温水ヘッダに接続される連結管部とを有する温水マットにおいて、 上記温水ヘッダが設けられた第1マット部の上記縦辺部に沿う方向における長さを、他の第1マット部の同方向における長さと同一に設定し、 上記温水ヘッダは、上記マット本体の縦辺部と平行に延びる左右の側縁と、上記マット本体の横辺部と平行に延びる先端縁とを有し、 上記切欠き部は、上記温水ヘッダに対応して、上記マット本体の縦辺部と平行に延びる左右の側縁と、上記マット本体の横辺部と平行に延びる先端縁とを有し、 上記温水ヘッダを設けた第1マット部における放熱管の連結管部の端部が、上記温水ヘッダの左右の側縁のみならず先端縁にも接続され、 上記温水ヘッダの先端縁に接続される連結管部の端部が、上記先端縁に対して傾斜していることを特徴とする温水マット。」(下線部は当審で付与、以下同様。) 2.補正の目的 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「切り欠き部」について、「上記温水ヘッダに対応して、上記マット本体の縦辺部と平行に延びる左右の側縁と、上記マット本体の横辺部と平行に延びる先端縁とを有し」ているとの限定を付加するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか。)について以下に検討する。 3-1.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開2003-227621号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 平面形状が四辺形で小面積の板状体を複数枚組合せて接合一体化し、大面積とされた放熱板用の基材パネルにおいて、平面形状が四辺形で小面積の板状体の長さ方向の一端または双方の端に、隣接する板状体同士を接合する接合部が設けられてなり、これら接合部を接合して大面積とされた基材パネルの表面に、連続した流体用可撓性チューブを埋設可能な埋設用溝が刻設されてなることを特徴とする、放熱板用の基材パネル。」(【特許請求の範囲】) イ 「【発明の属する技術分野】本発明は、放熱板用の基材パネルに関する。さらに詳しくは、一般住宅、集合住宅、商業ビルまたはホテルなどの建築物の下地材面上に敷設され、表面に刻設された溝に流体用可撓性チューブ(以下、単に流体用チューブともいう)を埋設して床暖房用放熱板(または床暖房用パネル。以下、単に放熱板ともいう)とされる、軽量で、製作、梱包、保管、輸送、敷設作業などが容易な放熱板用の基材パネルに関する。」(段落【0001】) ウ 「板状体(b)は、長さ方向の一方の端に突出部、他方の端に凹部を各二個設けたれた板状体(b)を調製し、板状体(b)の一方の表面に相互に平行な複数本の埋設溝を刻設することによって、製作することができる。板状体(a)は、板状体(b)の幅方向中央部で二つに分割する方法によると、製作する工程が少なくできるので、好ましい。端部に配置される長方形の板状体(b'){後記、図5参照}と正方形の板状体(a'){後記、図3参照}とは、まず長方形の板状体(b')を調製し、これを幅方向中央部で二つに分割して板状体(b')とし、流体用チューブを方向転換させる埋設溝を刻設し、長さ方向の一方の端に凹部を設ける方法によればよい。さらに端部に配置される長方形の板状体の一個には、ヘッダを配置可能な大型の凹部を設け、埋設溝もヘッダに連接可能に刻設するのが好ましい。」(段落【0015】) エ 「図1は本発明に係る放熱板用の基材パネルの一例の平面略図、図2および図3は、正方形の板状体の一例の平面略図、図4および図5は長方形の板状体の一例の平面略図、図6は本発明に係る放熱板用の基材パネルに放熱器を組合せた状態を示す、図1のA-A部分での断面略図である。 図において、1は基材パネル、2は平面形状が正方形の板状体(a)、3は平面形状が長方形の板状体(b)、4は端部に配置される平面形状が正方形の板状体(a')、5は端部に配置される平面形状が長方形の板状体(b')、6はヘッダ配置用の平面形状が長方形板状体、7は突出部、8は凹部、9はヘッダ配置用凹部、10は位置調製用矧状部材、11は流体用可撓性チューブ埋設溝である。 正方形の板状体2は、長さ方向の一方の端であって、板状体の幅方向の中央部に、外側に突出させた突出部7を一個、長さ方向の他方の端であって、板状体の幅方向の中央部に、内側(中央側)に凹ませた凹部8がそれぞれ一個設けられている。長方形の板状体3は、正方形の板状体2を幅方向に二個つないだ大きさにされており、長さ方向の一方の端に突出部7を二個、長さ方向の他方の端に凹部8が二個設けられている。長方形の板状体3に設ける突出部と凹部の位置と間隔は、長方形の板状体3の長さ方向の端に、二枚の正方形の板状体2を密着させて嵌合可能な位置と間隔にされている。正方形の板状体2と長方形の板状体3の一方の面には、長さ方向に沿って流体用可撓性チューブ埋設溝11が刻設されている。 端部に配置される長方形の板状体5は、端部に配置される正方形の板状体4を幅方向に二個つないだ大きさにされている。正方形の板状体4と長方形の板状体5の長さ方向の一端には、内側(中央側)に凹ませた凹部8が設けられている。正方形の板状体4と長方形の板状体5の一方の面には、流体用可撓性チューブを方向転換させる流体用可撓性チューブ埋設溝11が刻設されている。 基材パネル1は、長方形の板状体3を千鳥格子状に配置し幅方向の左右の端部側に交互に正方形の板状体2を配置し、配置する際に、板状体2および板状体3の長さ方向端部に設けられた突出部7を凹部8に嵌合し、複数枚の板状体を組合せて大面積と基材パネル1することができる。基材パネル1の長さ方向の両端部には、端部に配置される長方形の板状体5と、端部に配置される正方形の板状体4とを配置し、隣接する板状体2および板状体3とは、突出部7と凹部8とが対応する部分はこれらを嵌合させ、凹部8同士が対応する部分には、位置調整用矧状部材10を配置する。端部に配置される長方形の板状体5の一枚は、ヘッダ配置用凹部9が設けられたヘッダ配置用の長方形板状体6とされる。」(段落【0021】?【0025】) オ 「図1に示した放熱板用の基材パネルを使用して放熱板とするには、図6に断面略図として示したように、この放熱板用の基材パネルに放熱器を組合せればよい。図4(当審注:図6の誤記と認める。)において、12放熱器、13は可撓性薄板、14は流体用可撓性チューブ、15は流体用可撓性チューブの支持具である。流体用可撓性チューブ14は、アルミニウム箔のような可撓性薄板に、流体用可撓性チューブの支持具15によって固定されている。本発明に係る放熱板用の基材パネルを床上面に配置し、流体用可撓性チューブ埋設溝11に、放熱器12の流体用可撓性チューブ14を埋設して配置することによって、放熱板とすることができる。放熱器12の表面には、表装材を配置するのが好ましいことは、前記したとおりである。」(段落【0027】) そして、記載エに関連して図1には、基材パネル1は四辺形であり、互いに平行な一対の幅方向の辺、及びこの幅方向の辺と直交する一対の長さ方向の辺を有しているとことが示されている。また、基材パネル1は、幅方向の辺に沿って分割され、長さ方向の両端部には、端部に配置される長方形の板状体5と、端部に配置される正方形の板状体4とにより長さ方向に沿って複数に分割され(一方の端部を「第1端部」、他方の端部を「第2端部」という。)、両端部の間(「中間部」という。)には、正方形の板状体2と長方形の板状体3とにより長さ方向に沿って複数に分割されることが示されている。そして、正方形の板状体2と長方形の板状体3の一方の面には、長さ方向に沿って流体用可撓性チューブ埋設溝11が刻設されており、この部分に埋設される流体用可撓性チューブは直管部ということができ、正方形の板状体4と長方形の板状体5の一方の面には、流体用可撓性チューブを方向転換させる流体用可撓性チューブ埋設溝11が刻設されており、この部分に埋設される流体用可撓性チューブは連結管部ということができる。 また、ヘッダ配置用凹部9は、基材パネル1の長さ方向と平行に延びる左右の側縁と、基材パネル1の幅方向と平行に延びる先端縁とを有していることが示されている。さらに、そのヘッダ配置用凹部9には、流体用可撓性チューブ埋設溝11が左右の側縁に向けて刻設されていることが示されている。そして、ヘッダ配置用凹部9の流体用可撓性チューブ埋設溝11は、記載ウによれば、ヘッダに連接可能に設けられ、ヘッダに接続される連結管部ということができる。 これら記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「互いに平行な一対の幅方向の辺、及びこの幅方向の辺と直交する一対の長さ方向の辺を有する四辺形の基材パネル1と、この基材パネル1に敷設された複数の流体用可撓性チューブ14とを備え、 上記基材パネル1が、一対の長さ方向の端部は長方形の板状体5と、正方形の板状体4とにより長さ方向に沿って複数に分割されることにより、一方の幅方向の辺の一部をそれぞれ含む第1端部、他方の幅方向の辺部の一部をそれぞれ含む第2端部と、第1端部と第2端部との間の正方形の板状体2と長方形の板状体3により複数に分割された中間部に区分され、 上記長方形の板状体5の一枚は、ヘッダ配置用凹部9が設けられたヘッダ配置用の長方形板状体6とされ、このヘッダ配置用凹部9に、上記流体用可撓性チューブ14が接続されるヘッダが配置され、 上記流体用可撓性チューブ14が、上記中間部にそれぞれ複数宛敷設されて上記長さ方向に沿う直管部と、上記ヘッダ配置用の長方形板状体6を除く上記第1端部および上記第2端部にそれぞれ敷設されて方向転換される連結管部と、上記ヘッダ配置用の長方形板状体6に敷設されるとともにその端部がヘッダに接続される連結管部及び方向転換される連結管部とを有する床暖房用パネルにおいて、 上記ヘッダ配置用の長方形板状体6の上記長さ方向の辺の長さを、他の第1端部の同方向における長さと同一に設定し、 上記ヘッダ配置用凹部9は、上記基材パネル1の長さ方向と平行に延びる左右の側縁と、基材パネル1の幅方向と平行に延びる先端縁とを有し、 上記ヘッダ配置用の長方形板状体6における流体用可撓性チューブ14の連結管部の端部が、上記ヘッダの左右の側縁にのみ接続される床暖房用パネル。」 同じく原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002-156124号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 基材の上面側に上方に開口した蛇行状のパイプ溝を設け、パイプ溝内に温水循環パイプを収納し、ヘッダーの一次側に熱源からの送り配管と戻り配管とを接続し、ヘッダーの二次側に設けた往路側ニップルと復路側ニップルに温水循環パイプの両端部を各々接続して、送り配管側からの高温水をヘッダーを介して温水循環パイプの一端部に供給すると共に温水循環パイプの他端部からの低温水をヘッダーを介して戻り配管側に戻すようにした温水床暖房装置において、基材の一部を切り欠いて側方に開口したヘッダー収納凹所を設け、ヘッダー収納凹所に収納されるヘッダーの二次側の側面に、往路側ニップルと復路側ニップルとを異なる方向に向けて突設したことを特徴とする温水床暖房装置。」(【特許請求の範囲】) イ 図1及び図5によれば、ヘッダー収納凹所はヘッダーに対応した形状をしていることが見て取れる。 同じく原査定の周知例として引用された、特開2003-194353号公報(以下、「周知例」という。)には、概略、床暖房パネル用ヘッダのパネルの縦辺方向の左右の側縁と先端縁に熱媒流通管を接続することが記載されている(【特許請求の範囲】、図2等参照。)。また、図2、図3によれば、ヘッダ配設空間5はヘッダの本体部分8に対応した形状をしていることが見て取れる。 3-2.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「幅方向の辺」は本願補正発明の「横辺部」に相当し、以下同様に、「長さ方向の辺」は「縦辺部」に、「四辺形」は「四角形」に、「基材パネル1」は「マット本体」に、「流体用可撓性チューブ14」は「放熱管」に、「ヘッダ配置用凹部9」は「切欠き部」に、「ヘッダ」は「温水ヘッダ」に、「床暖房用パネル」は「温水マット」に、それぞれ相当する。 また、引用発明は「一対の長さ方向の端部は長方形の板状体5と、正方形の板状体4とにより長さ方向に沿って複数に分割される」ことで、一対の幅方向の辺の近傍において長さ方向の辺に沿って分割されるとともに、上記長さ方向の辺に沿って複数に分割されているから、本願補正発明の「上記一対の横辺部の近傍において横辺部に沿って分割されるとともに、上記縦辺部に沿って複数に分割される」ことに相当し、「一方の幅方向の辺の一部をそれぞれ含む第1端部」及び「他方の幅方向の辺部の一部をそれぞれ含む第2端部」は「一方の横辺部の一部をそれぞれ含む複数の第1マット部」及び「他方の横辺部の一部をそれぞれ含む複数の第2マット部」に相当する。さらに、引用発明の「第1端部と第2端部との間の正方形の板状体2と長方形の板状体3により複数に分割された中間部」は本願補正発明の「互いに対向する第1マット部と第2マット部との各間にそれぞれ存する複数の第3マット部」に相当する。 さらに、引用発明の「ヘッダ配置用の長方形板状体6」は長方形の板状体5の一枚であるから、引用発明の「長方形の板状体5の一枚は、ヘッダ配置用凹部9が設けられたヘッダ配置用の長方形板状体6とされ、このヘッダ配置用凹部9に、上記流体用可撓性チューブ14が接続されるヘッダが配置され」ることは本願補正発明の「上記複数の第1マット部のうちのいずれか一つの横辺部に切欠き部が設けられ、この切欠き部に、上記放熱管が接続される温水ヘッダが設けられ」ることに相当する。 そして、引用発明の「流体用可撓性チューブ14」と本願補正発明の「放熱管」の配置について対比すると、引用発明の「上記中間部にそれぞれ複数宛敷設されて上記長さ方向に沿う直管部」は、本願補正発明の「上記第3マット部にそれぞれ複数宛敷設されて上記縦辺部と平行に延びる直管部」に相当し、以下同様に、「上記ヘッダ配置用の長方形板状体6を除く上記第1端部および上記第2端部にそれぞれ敷設されて方向転換される連結管部」は「上記温水ヘッダを設けた第1マット部を除く第1マット部および上記第2マット部にそれぞれ敷設されて上記直管部の端部どうしを連結する連結管部」に、「上記ヘッダ配置用の長方形板状体6に敷設されるとともにその端部がヘッダに接続される連結管部」は「上記温水ヘッダを設けた第1マット部に敷設されて上記直管部に接続されるとともにその端部が上流側端部または下流側端部として上記温水ヘッダに接続される連結管部」にそれぞれ相当する。 そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「互いに平行な一対の横辺部、及びこの横辺部と直交する一対の縦辺部を有する四角形のマット本体と、このマット本体に敷設された複数の放熱管とを備え、 上記マット本体が、上記一対の横辺部の近傍において横辺部に沿って分割されるとともに、上記縦辺部に沿って複数に分割されることにより、一方の横辺部の一部をそれぞれ含む複数の第1マット部、他方の横辺部の一部をそれぞれ含む複数の第2マット部、及び互いに対向する第1マット部と第2マット部との各間にそれぞれ存する複数の第3マット部に区分され、 上記複数の第1マット部のうちのいずれか一つの横辺部に切欠き部が設けられ、この切欠き部に、上記放熱管が接続される温水ヘッダが設けられ、 上記放熱管が、上記第3マット部にそれぞれ複数宛敷設されて上記縦辺部と平行に延びる直管部と、上記温水ヘッダを設けた第1マット部を除く第1マット部および上記第2マット部にそれぞれ敷設されて上記直管部の端部どうしを連結する連結管部と、上記温水ヘッダを設けた第1マット部に敷設されて上記直管部に接続されるとともにその端部が上流側端部または下流側端部として上記温水ヘッダに接続される連結管部とを有する温水マットにおいて、 上記温水ヘッダが設けられた第1マット部の上記縦辺部に沿う方向における長さを、他の第1マット部の同方向における長さと同一に設定し、 上記切欠き部は、上記マット本体の縦辺部と平行に延びる左右の側縁と、上記マット本体の横辺部と平行に延びる先端縁とを有している温水マット。」 そして、両者は次の点で相違する(対応する引用発明(引用例記載)の用語を( )内に示す。)。 (相違点1) 本願補正発明は、温水ヘッダは、マット本体の縦辺部と平行に延びる左右の側縁と、マット本体の横辺部と平行に延びる先端縁とを有しており、切欠き部は、温水ヘッダに対応しているのに対し、引用発明は温水ヘッダ(ヘッダ)の形状が明らかでなく、切欠き部との関係が不明である点。 (相違点2) 本願補正発明は、温水ヘッダを設けた第1マット部における放熱管の連結管部の端部が、温水ヘッダの左右の側縁のみならず先端縁にも接続され、温水ヘッダの先端縁に接続される連結管部の端部が、先端縁に対して傾斜しているのに対し、引用発明は、温水ヘッダを設けた第1マット部における放熱管の連結管部の端部(ヘッダ配置用の長方形板状体6における流体用可撓性チューブ14の連結管部の端部)が、温水ヘッダ(ヘッダ)の左右の側縁にのみ接続される点。 3-3.相違点の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) 床暖房用の温水マットにおいて、温水ヘッダを配置するための切欠き(空間、凹所)は温水ヘッダと対応した形状とされるものであり(引用例2,周知例参照。)、すなわち、ヘッダの形状に対応してヘッダ配置用凹部9は形成されるものである。してみると、引用発明において、ヘッダ配置用凹部9は、基材パネル1の長さ方向と平行に延びる左右の側縁と、基材パネル1の幅方向と平行に延びる先端縁とを有しているのであるから、その形状に対応したヘッダとして、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点2について) 引用例2には、「基材の一部を切り欠いて側方に開口したヘッダー収納凹所を設け、ヘッダー収納凹所に収納されるヘッダーの二次側の側面に、往路側ニップルと復路側ニップルとを異なる方向に向けて突設」すること、すなわち、ヘッダーの側面の異なる方向に温水循環パイプを配置することが記載されている。また、このような温水ヘッダと放熱管との連結構成は上記周知例にも記載されているように、特別な連結構造ではない。さらに、連結管部をヘッダに対して傾斜させて接続することも、例えば特開平8-278037号公報(図5参照。)、特許第3447166号公報(図5参照。)に記載されているように、温水ヘッダとパイプとの配置関係に応じて適宜なされる設計事項にすぎない。してみれば、引用発明に、引用例2の記載の事項を適用し、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願補正発明による効果も、引用発明、引用例2に記載された事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.むすび 以上のとおり、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成20年12月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「互いに平行な一対の横辺部、及びこの横辺部と直交する一対の縦辺部を有する四角形のマット本体と、このマット本体に敷設された複数の放熱管とを備え、 上記マット本体が、上記一対の横辺部の近傍において横辺部に沿って分割されるとともに、上記縦辺部に沿って複数に分割されることにより、一方の横辺部の一部をそれぞれ含む複数の第1マット部、他方の横辺部の一部をそれぞれ含む複数の第2マット部、及び互いに対向する第1マット部と第2マット部との各間にそれぞれ存する複数の第3マット部に区分され、 上記複数の第1マット部のうちのいずれか一つの横辺部に切欠き部が設けられ、この切欠き部に、上記放熱管が接続される温水ヘッダが設けられ、 上記放熱管が、上記第3マット部にそれぞれ複数宛敷設されて上記縦辺部と平行に延びる直管部と、上記温水ヘッダを設けた第1マット部を除く第1マット部および上記第2マット部にそれぞれ敷設されて上記直管部の端部どうしを連結する連結管部と、上記温水ヘッダを設けた第1マット部に敷設されて上記直管部に接続されるとともにその端部が上流側端部または下流側端部として上記温水ヘッダに接続される連結管部とを有する温水マットにおいて、 上記温水ヘッダが設けられた第1マット部の上記縦辺部に沿う方向における長さを、他の第1マット部の同方向における長さと同一に設定し、 上記温水ヘッダは、上記マット本体の縦辺部と平行に延びる左右の側縁と、上記マット本体の横辺部と平行に延びる先端縁とを有し、 上記温水ヘッダを設けた第1マット部における放熱管の連結管部の端部が、上記温水ヘッダの左右の側縁のみならず先端縁にも接続され、 上記温水ヘッダの先端縁に接続される連結管部の端部が、上記先端縁に対して傾斜していることを特徴とする温水マット。」 第4 引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2」の「3-1.」に記載したとおりである。 第5 対比・判断 本願発明は、前記「第2」の「1.」の本願補正発明から、「切り欠き部」の限定事項である「上記温水ヘッダに対応して、上記マット本体の縦辺部と平行に延びる左右の側縁と、上記マット本体の横辺部と平行に延びる先端縁とを有し」との事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の「3-3.」に記載したとおり、引用発明、引用例2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明、引用例2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-11-16 |
結審通知日 | 2010-11-24 |
審決日 | 2010-12-07 |
出願番号 | 特願2004-199303(P2004-199303) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F24D)
P 1 8・ 121- Z (F24D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中田 誠二郎 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
長崎 洋一 青木 良憲 |
発明の名称 | 温水マット |
代理人 | 原田 三十義 |
代理人 | 渡辺 昇 |