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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1230822
審判番号 不服2009-23008  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-25 
確定日 2011-01-20 
事件の表示 特願2005- 51038「リムーバブルストレージシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月 7日出願公開、特開2006-236497〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は、平成17年2月25日に出願したものであって、平成21年7月2日付けの拒絶理由通知に対して同年8月25日付けで手続補正がなされたが、同年9月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月25日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成21年8月25日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
データ転送の主体となるシステム部と、前記システム部からの指示に従ってデータの記録又は再生を行うメディア部とを備えたリムーバブルストレージシステムであって、
前記システム部は、
前記メディア部との間でデータ転送を行うための無線通信部と、
前記メディア部に対して非接触状態で電力を供給する非接触送電部とを備え、
前記メディア部は、
前記システム部との間でデータ転送を行うための無線通信部と、
ハードディスクドライブとして形成され、前記無線通信部を介して授受するデータの記録及び再生を行うためのデータストレージ部と、
前記システム部から非接触状態で電力の供給を受ける非接触受電部とを備え、
前記メディア部は、前記非接触受電部の給電状況を監視し、前記給電状況が悪化した場合に前記ハードディスクドライブの磁気ヘッドの退避命令を実行することを特徴とするリムーバブルストレージシステム。」

3.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-109864号公報(平成14年4月12日公開、以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は、当審で付与した。)。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可搬型の磁気ディスク装置及び磁気記録再生システムに関する。

イ.【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気ディスク装置は、ホスト装置から供給される電力により動作すると共に前記ホスト装置との間でデータ送受信を行うことでデータ記憶及び再生を行う磁気ディスク装置において、前記ホスト装置から電磁誘導方式にて電力の供給を受ける電力入力手段と、前記ホスト装置と無線にてデータの送受信を行う無線データ通信手段とを具備し、前記ホスト装置と非接触で電力供給及びデータ送受信を行うとこと特徴とする。
【0008】これにより、複数のホスト装置と頻繁に接続を繰り返して使用される際の接続が容易で、且つ、ホスト装置と繰り返し接続してもホスト装置との接続が不能となることのない接続安定性に優れた磁気ディスク装置を実現することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0010】図1は、本発明の実施の形態に係る磁気ディスク装置の構成を示す図である。
【0011】図1に示すように、磁気ディスク装置10には、誘導コイル11とデータ通信ユニット12が一体にモールド化された状態で設けられている。また、ホスト装置20には、誘導コイル21とデータ通信ユニット22が設けられている。
【0012】磁気ディスク装置10の誘導コイル11は、ホスト装置20の誘電コイル21から電磁誘導方式にて電力の供給を受ける。すなわち、ホスト装置20では、誘電コイル21に交流電力を加えることで交番磁界を発生させ、その交番磁界を、磁気ディスク装置10の誘電コイル11に供給する。磁気ディスク装置10の誘電コイル11は、ホスト装置20の誘電コイル21から供給される交番磁界を受け交流電力を発生する。磁気ディスク装置10は、誘電コイル11にて発生させた交流電力に基づいて、当該磁気ディスク装置10のその他の図示しない構成であるスピンドルモータ、ボイスコイルモータ、ヘッドアンプ回路等を動作させるための電力を確保する。
【0013】磁気ディスク装置10のデータ通信ユニット12は、ホスト装置20のデータ通信ユニット22との間で無線でのデータ通信を行うものであり、例えば、赤外線通信機能や、近距離無線通信機能(Bluetooth等)などの無線データ通信機能を有する。ホスト装置20のデータ通信ユニット22も同じように、赤外線通信機能や、近距離無線通信機能(Bluetooth等)などの無線データ通信機能を有する。磁気ディスク装置10は、データ通信ユニット12を介してホスト装置20のデータ通信ユニット22との間でデータ送受信を行う。
【0014】図2には本発明の磁気ディスク装置とホスト装置とからなる磁気記録再生システムを示している。図2に示すように、磁気ディスク装置10は、小型で携帯可能な形状を有しており、例えばPCカードと同じサイズとすることも可能である。磁気ディスク装置10は、ホスト装置20のスロット23に挿入され、着脱自在に装着される。磁気ディスク装置10がホスト装置20のスロット23に挿入され装着された状態にあるとき、図1のように、磁気ディスク装置10の誘電コイル11とホスト装置20の誘電コイル21、及び、磁気ディスク装置10のデータ通信ユニット12とホスト装置20のデータ通信ユニット22がそれぞれ互いに対向して位置する。」

上記摘示事項「ア.」「イ.」及び図面の記載を総合勘案すると、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「ホスト装置と、ホスト装置に着脱自在に装着され、ホスト装置とデータ記憶及び再生を行う可搬型の磁気ディスク装置とからなる磁気記録再生システムであって、
前記ホスト装置は、
前記磁気ディスク装置と無線にてデータ送受信を行う無線データ通信手段と
前記磁気ディスク装置と、電磁誘導方式にて磁気ディスク装置へ電力を供給する誘導コイルとを備え、
前記磁気ディスク装置は、
前記ホスト装置と無線にてデータ送受信を行う無線データ通信手段を備え、
前記ホスト装置との間で前記無線データ通信手段を介してデータ送受信を行うことでデータ記憶及び再生を行う磁気ディスク装置であって、
前記ホスト装置から、電磁誘導方式にて磁気ディスク装置へ電力の供給を受ける誘導コイルとを備える、
磁気記録再生システム。」


4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「ホスト装置」は、ホスト装置のスロットに装着された磁気ディスク装置に対して、データ転送の主体となることは明らかであるから、本願発明の「データ転送の主体となるシステム部」に相当する。

(2)引用発明において、磁気ディスク装置が装着された場合、ホスト装置からの指示に従ってデータの記録又は再生を行うことは明らかであるから、引用発明の「ホスト装置に着脱自在に装着され、ホスト装置とデータ記憶及び再生を行う可搬型の磁気ディスク装置」は、本願発明の「前記システム部からの指示に従ってデータの記録又は再生を行うメディア部」に相当する。

(3)引用発明の「磁気記録再生システム」は、「ホスト装置」とホスト装置に着脱自在に装着される可搬型の「磁気ディスク装置」とからなるものであって、本願発明の「リムーバブルストレージシステム」に相当する。

(4)引用発明の「前記磁気ディスク装置と無線にてデータ送受信を行う無線データ通信手段」、「前記磁気ディスク装置と、電磁誘導方式にて磁気ディスク装置へ電力の供給する誘導コイル」は、それぞれ、本願発明の「前記磁気ディスク装置と無線にてデータ送受信を行う無線データ通信手段」、「前記メディア部に対して非接触状態で電力を供給する非接触送電部」に相当する。

(5)引用発明の「前記ホスト装置と無線にてデータ送受信を行う無線データ通信手段」は、本願発明の「前記システム部との間でデータ転送を行うための無線通信部」に相当する。

(6)「磁気ディスク装置」は装置内部に、データの記録及び再生を行うためのデータストレージ部を有するものであるから、引用発明の、「前記磁気ディスク装置」が「前記ホスト装置との間で前記無線データ通信手段を介してデータ送受信を行うことでデータ記憶及び再生を行う磁気ディスク装置」であることは、本願発明の、「前記メディア部」が「前記無線通信部を介して授受するデータの記録及び再生を行うためのデータストレージ部」を備えることに相当する。

(7)引用発明の「前記ホスト装置から、電磁誘導方式にて磁気ディスク装置へ電力の供給を受ける誘導コイル」は、本願発明の「前記システム部から非接触状態で電力の供給を受ける非接触受電部」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は次の点で一致する。

<一致点>
「データ転送の主体となるシステム部と、前記システム部からの指示に従ってデータの記録又は再生を行うメディア部とを備えたリムーバブルストレージシステムであって、
前記システム部は、
前記メディア部との間でデータ転送を行うための無線通信部と、
前記メディア部に対して非接触状態で電力を供給する非接触送電部とを備え、
前記メディア部は、
前記システム部との間でデータ転送を行うための無線通信部と、
前記無線通信部を介して授受するデータの記録及び再生を行うためのデータストレージ部と、
前記システム部から非接触状態で電力の供給を受ける非接触受電部とを備える、
リムーバブルストレージシステム。」

一方、次の点で相違する。

<相違点>

(a) 本願発明は、「データストレージ部」を「ハードディスクドライブとして形成」するのに対し、引用発明は、「ハードディスクドライブとして形成」することについて特定がない点。

(b) 本願発明は、「前記メディア部は、前記非接触受電部の給電状況を監視し、前記給電状況が悪化した場合に前記ハードディスクドライブの磁気ヘッドの退避命令を実行する」のに対し、引用発明はそのような特定がない点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。

(a)一般に、磁気ディスク装置は装置内部にデータストレージ部を有し、当該データストレージ部を「ハードディスクドライブとして形成」することは周知慣用手段であるから、本願発明のように、「データストレージ部」を「ハードディスクドライブとして形成」することに格別の困難性を有しない。

(b)磁気ディスク装置において、電源電圧を監視し、当該電圧が低下した場合にヘッドを退避させることは、例えば、特開2001-307409号公報(段落0006、0030、0035ないし0037)や特開2002-184135号公報(段落0001ないし0002)に記載されているように、周知技術である。
そして、他の装置に対し着脱可能な磁気ディスク装置の電力の供給が、磁気ディスク装置の外部からなされるものである場合、接触端子によって電力が供給されるものであれ、非接触によって電力が供給されるものであれ、いずれの場合であっても、電源電圧の低下は、電力の供給状態が悪化した場合に生じるものであるから、引用発明に前記周知技術を用いて、本願発明のように、「前記メディア部は、前記非接触受電部の給電状況を監視し、前記給電状況が悪化した場合に前記ハードディスクドライブの磁気ヘッドの退避命令を実行する」ことは、当業者が容易に想到し得る事項である。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用例及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-19 
結審通知日 2010-11-24 
審決日 2010-12-08 
出願番号 特願2005-51038(P2005-51038)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山澤 宏  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 石丸 昌平
山田 洋一
発明の名称 リムーバブルストレージシステム  
代理人 黒瀬 泰之  
代理人 鷲頭 光宏  
代理人 三谷 拓也  
代理人 緒方 和文  

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