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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1230946
審判番号 不服2009-11747  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-29 
確定日 2011-01-24 
事件の表示 特願2008-134843「核酸リガンドおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月11日出願公開、特開2008-206524〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯・本願発明
本願は、平成5年9月28日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1992年9月29日 米国、1992年10月21日 米国、1992年11月6日 米国、1993年4月22日 米国)とする特願平6-509298号の一部を、特許法第44条第1項の規定により平成20年5月22日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明は、平成21年7月29日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「ある標的に対する改良された核酸リガンドを製造する方法であって、改良されるべきリガンドは、
(1)核酸の候補混合物を標的分子に接触させ、ここで、候補混合物に比較して標的に対し、ワトソン-クリック結合以外の力に基づく、増大した親和性を有する核酸は候補混合物の残りの物から分画されてもよく;
(2)親和性の増大した核酸を候補混合物の残りのものから分画し;
(3)親和性の増大した核酸を増幅して、核酸のリガンド富化混合物を得;
(4)必要であれば工程(1)-(3)を繰り返して核酸リガンドを同定し、ここで工程(3)で製造された核酸のリガンド富化混合物は工程(1)における候補混合物として用いられるものである;
を含んでなるプロセスによって同定される上記方法において、
改良は、以下の改良された特性:
サイズの減少;安定性の改良;標的への結合の改良;標的の生物学的活性の修飾;クリアランスへの耐性
の少なくとも一つを、改良された核酸リガンドが有するように、核酸リガンドを修飾することを含んでなり、核酸リガンド修飾が、
(a)どのヌクレオチドが標的分子との相互作用にとって重要であるかの決定、
(b)化学修飾実験、及び/又は
(c)該核酸リガンドの構造配置の決定
に基づいて、核酸リガンドの塩基配列における特異的変異又は化学的修飾又は誘導体化の形態を採ることを特徴とする、
上記方法。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された本願優先日前の1992年9月3日に頒布された刊行物である国際公開第92/14843号(以下、「引用例」という。)には、
(i)「標的物に特異的に結合する第二次アプタマーを得る方法であって:
(a)オリゴヌクレオチド配列の混合物とともに該標的分子をインキュベーションする工程であって、該標的分子が該混合物の成分のすべてではなく一部と複合体化して、オリゴヌクレオチド-標的分子複合体を形成する条件の下で行われる工程;
(b)該オリゴヌクレオチド-標的分子複合体を、複合体化していないオリゴヌクレオチドから分離する工程;
(c)該複合体から、複合体化したオリゴヌクレオチドを回収して増幅する工程;
(d)任意に、工程(c)で回収されたオリゴヌクレオチドを用いて、工程(a)から(c)を反復する工程;
(e)該回収されたオリゴヌクレオチドの配列を決定する工程;
(f)該回収されたオリゴヌクレオチドに含有されるコンセンサス配列を決定する工程;および
(g)該コンセンサス配列を有する第二次アプタマーを合成する工程、を包含する方法。」(請求項45)、
(ii)「コンセンサス配列
単一の標的分子に対する多数の別個のアプタマー配列が、上述のようにして得られ、配列が決定されると、その配列は「コンセンサス配列」について試験され得る。本明細書中で用いられる「コンセンサス配列」は、ヌクレオチド配列または領域(これらは連続するヌクレオチドで形成され得るまたは形成され得ない)を指し、少なくとも2つのアプタマーの1またはそれ以上の領域で見られ、このコンセンサス配列の存在は、アプタマー標的間結合またはアプタマー構造に相関し得る。
コンセンサス配列は3つのヌクレオチドの長さと同程度の長さであり得る。本配列は、コンセンサス配列の間に散在するヌクレオチド配列または数百塩基の長さを有するポリマーを用いた、1またはそれ以上の連続しない配列でも形成され得る。コンセンサス配列は、個々のアプタマー種類間で配列を比較することにより同定され得、この比較は、配列情報から2次構造または3次構造をモデル化するための、コンピュータープログラムおよび他の手段により補助され得る。一般に、コンセンサス配列は少なくとも約3?20ヌクレオチド、より一般的には6?10ヌクレオチドを含む。 …(途中省略)…
コンセンサス配列が同定されると、その配列を含むオリゴヌクレオチドが、従来の合成法または組換え法を用いて作成され得る。「第二次アプタマー」と称するこれらのアプタマーはまた、本発明の標的特異的アプタマーとして機能し得る。コンセンサス配列が維持される限り、第二次アプタマーは単離されたアプタマーの完全なヌクレオチド配列を維持し得るか、またはアプタマーのヌクレオチド配列中に付加、欠失、または置換を1またはそれ以上で含み得る。第二次アプタマーの混合物もまた、標的特異的アプタマーとして機能し得る。ここで、この混合物は、ランダムあるいは変化したそれらのヌクレオチド配列の一または複数の部分とコンセンサス配列を含む保存領域とを有するアプタマーのセットである。さらに、第二次アプタマーはまた、本明細書に記載の1つまたはそれ以上の改変した塩基、糖、および結合を用いて、従来の方法および本明細書に記載された方法を用いて合成され得る。」(第54頁第12行?第55頁最下行)、
(iii)「個々のアプタマー単離体あるいはHIV感染能を低下させる10?50個の個々のアプタマー種からなる小プールを用いて、gp120とCD4との間の結合の相互作用を妨げることによりHIV感染能をブロックすることに関して最適の種を同定する。この相互作用の攪乱がHIV感染能を低下させることが以前示された(Claphamら,Nature(1989)337:368-370)。最適なCD4アプタマー種の同定後、治療あるいは診断用途に関してアプタマーを更に改良するために、更なる改変が試験される。改変の例としては共有結合的な架橋性塩基アナログ(アジリジニルシトシンなど)、あるいはアプタマーの効力を高めるための他の置換基の導入が挙げられる。HIV感染能をブロックすることに基づいて同定されたリードアプタマー種はまた、末端ヌクレオチド間連結の改変の導入により改変される。この改変は、オリゴヌクレオチドを実質的にヌクレアーゼ耐性にする。オリゴヌクレオチドを安定化させる方法は、国際公開第WO90/15065号に記載され、本明細書中に文献として援用されている。」(実施例4のうち第96頁第29行?第97頁第13行)、と記載されている。
さらに、トロンビンに結合するアプタマーの選択についての実施例6では、得られたアプタマーのコンセンサス配列について
(iv)「32のクローンからランダムに生成された60ヌクレオチドからなる領域のDNA配列を、選択された集団の異質性を調べ、相同配列を特定するために決定した。配列解析は、32のクローンのそれぞれが識別可能であることを示したが、特徴ある配列が保存されていることが判明した。ヘキサマー 5´GGTTGG3´が32のうち31のクローン中のランダム配列内の様々な場所で見出された。6つのヌクレオチドのうち5つが、32の全てのクローン中で完全に保存されており、さらに、32のうち28のクローン中で、第2のヘキサマー 5´GGNTGG3´、Nは通常TでありCではない、が、第1のヘキサマーから2?5ヌクレオチド内に見出される。よって、28のクローンは、コンセンサス配列 5´GGNTGG(N)_(Z)GGNTGG3´、zは2?5の整数、を含んでいる。残りの4つのクローンは、”密接な相違配列”(1つの塩基のみが異なる配列)を含んでいる。相同配列を集めたものを図1に示す。選択されなかったDNA集団から得た、あるいは異なる標的に結合させるために選択されたアプタマーの集団から得た、いくつかのクローンのDNA配列は、トロンビン選択されたアプタマーに対し相同でないことが判明した。これらのデータから、このコンセンサス配列は、全部または一部がアプタマーにトロンビン親和性を付与する要因となる配列を含んでいると結論する。 …(途中省略)… トロンビン活性の阻害を、コンセンサス関連配列7マー、5´GGTTGGG3´、または同じ塩基組成を有しているが異なる配列である対照の7マー(5´GGGGGTT3´)を用いて調べた。凝固時間を上述のようにタイマー装置を用いて測定した。本実験におけるトロンビン凝固時間は、トロンビンのみ(10nM)を用いて24秒、トロンビンと20μMの対照配列を用いて26秒、また、トロンビンと20μMのコンセンサス配列を用いて38秒であり、7マーレベルでトロンビン阻害における特異性を示した。」(第116頁第13行?第117第32行)、と記載され、続いて、改変したトロンビンアプタマーについての実施例7では、
(v)「実施例7に記載のトロンビンコンセンサス配列を含むDNA15マー、5´GGTTGGTGTGGTTGG3´、及び密接に関連した17マーの、一本鎖の改良形態を従来技術を用いて合成した。これらアプタマーはほとんどが、従来の核酸と同一のヌクレオチド配列、塩基、糖及びホスホジエステル結合を有しているが、1つ以上の改変された結合基(チオエートまたはMEA)または改変された塩基(ウラシルまたは5-(1-ペンチニル-2´-デオキシ)ウラシル)で置換される。5-(1-ペンチニル)-2´-デオキシウリジンを含むアプタマーが、親アプタマー中のチミジンを置換することにより生成された。5-(1-ペンチニル)-2´-デオキシウリジンを含むトロンビンアプタマーもまた、以下の実施例13及び14に記載の選択により得られた。DNA濃度を様々に変化させてトロンビン阻害の度合を決定することにより、改変しなかった15マーのKiを個々に確認した。データは、導かれたKiとほぼ同じ濃度において、トロンビン活性が50%阻害されたことを示したが、これは結合されたトロンビンのそれぞれが、完全ではないが、大幅に阻害され、しかも結合は1:1の化学量論で生じたことを示唆している。」(第118頁第6行?最下行)、と記載されている。
そして、そのデータである第119頁の表7は、改変したトロンビンアプタマーのうちの1つが、改変していないアプタマーより低い濃度でトロンビン活性を50%阻害したことを示している。また、その後の実施例8?12でも、様々な改変トロンビンアプタマーを作成し、改変していないアプタマーとトロンビン阻害活性を比較した結果が表8?10に表されており、表7と同様に、改変したトロンビンアプタマーのうち1?4つが、改変していないアプタマーより、トロンビン阻害活性に優れることが示されている。

3.対比・判断
本願発明の「(1)核酸の候補混合物を標的分子に接触させ、ここで、候補混合物に比較して標的に対し、ワトソン-クリック結合以外の力に基づく、増大した親和性を有する核酸は候補混合物の残りの物から分画されてもよく;(2)親和性の増大した核酸を候補混合物の残りのものから分画し;(3)親和性の増大した核酸を増幅して、核酸のリガンド富化混合物を得;(4)必要であれば工程(1)-(3)を繰り返して核酸リガンドを同定し、ここで工程(3)で製造された核酸のリガンド富化混合物は工程(1)における候補混合物として用いられるものである;を含んでなるプロセス」とは、本願明細書段落【0001】?【0002】の一部の「本発明に記載されるのは、核酸リガンドを同定および製造するための方法である。核酸リガンドとは、目的の標的分子に特異的に結合する2本鎖または1本鎖DNAまたはRNA種である。この核酸リガンドの同定は、「指数的濃縮のためのリガンドの系統的進化」(Systematic Evolution of Ligands for EXponential enrichment)の頭字語である、セレックス(SELEX)と呼ばれる方法に基づく。本発明の方法は、選択された標的に対して改良された核酸リガンドを創製するために、セレックス法から得た情報を分析、応用することよりなる。これらの方法は、コンピューターモデル化、境界測定方法および化学修飾方法を含む。」という記載及び本願優先日当時の技術常識からみて、以下、「SELEX法」と言い換える。
また、本願請求項1には、核酸リガンドの改良に関して、改良される特性が「サイズの減少;安定性の改良;標的への結合の改良;標的の生物学的活性の修飾;クリアランスへの耐性の少なくとも一つ」であり、核酸リガンドの修飾が「(a)どのヌクレオチドが標的分子との相互作用にとって重要であるかの決定、(b)化学修飾実験、及び/又は(c)該核酸リガンドの構造配置の決定に基づいて、核酸リガンドの塩基配列における特異的変異又は化学的修飾又は誘導体化の形態を採る」と、どちらも択一的に記載されており、本願発明は、それらの組合わせの様々な態様を包含する。
そこで以下、それら選択肢として記載された本願発明のうち、改良される特性が、安定性の改良である場合(以下、「本願発明A」という。)、及び標的の生物学的活性の修飾である場合(以下、「本願発明B」という。)について、それぞれ進歩性の有無を検討する。

(3-1)本願発明Aについて
本願発明Aは、ある標的に対する改良された核酸リガンドを製造する方法であって、SELEX法によって同定された核酸リガンドに、安定性の改良を有するように、(a)どのヌクレオチドが標的分子との相互作用にとって重要であるかの決定、(b)化学修飾実験、及び/又は(c)該核酸リガンドの構造配置の決定に基づいて、核酸リガンドの塩基配列における特異的変異又は化学的修飾又は誘導体化の核酸リガンド修飾を行う方法に係るものである。
そこで、本願発明Aと引用例に記載された事項を比較すると、引用例記載事項(i)にある工程(a)?(e)により得られるアプタマーは、本願発明AのSELEX法によって同定された核酸リガンドに相当し、引用例記載事項(iii)の「この改変は、オリゴヌクレオチドを実質的にヌクレアーゼ耐性にする。オリゴヌクレオチドを安定化させる方法は、国際公開第90/15065号に記載され」は、本願発明Aの安定性の改良を有する核酸リガンドの修飾に相当する。
そうすると、本願発明Aと引用例に記載された事項は、「ある標的に対する改良された核酸リガンドを製造する方法であって、SELEX法によって同定された核酸リガンドに、安定性の改良を有するように、核酸リガンドの修飾を行う方法」である点で共通するが、核酸リガンド修飾が、前者では、どのヌクレオチドが標的分子との相互作用にとって重要であるかの決定、化学修飾実験、及び/又は該核酸リガンドの構造配置の決定に基づいて、核酸リガンドの塩基配列における特異的変異又は化学的修飾又は誘導体化を行う方法であるのに対して、後者では、参考文献が提示されるにとどまり、具体的な修飾方法は記載されていない点で相違する。
しかしながら、上記参考文献である国際公開第90/15065号にも記載のように、オリゴヌクレオドにエキソヌクレアーゼ耐性を付与するために、5´-または3´-末端のホスホジエステル結合を置換、修飾することは、本願優先日前既に広く行われた周知の手段にすぎず、引用例に記載の核酸リガンドをヌクレアーゼ耐性にする改変として、上記周知の化学修飾実験に基づく核酸リガンド修飾を行うことは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
このように、本願発明Aは、引用例に記載の方法により改変される核酸リガンドの改変方法として、上記周知の化学修飾手段を適用したものにすぎず、一方、本願発明Aにおいて奏される効果も、引用例及び上記周知手段から予測できない程の格別なものとはいえない。
したがって、本願発明Aは、引用例及び上記周知事項から当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3-2)本願発明Bについて
本願発明Bは、ある標的に対する改良された核酸リガンドを製造する方法であって、SELEX法によって同定された核酸リガンドに、標的の生物学的活性の修飾を有するように、(a)どのヌクレオチドが標的分子との相互作用にとって重要であるかの決定、(b)化学修飾実験、及び/又は(c)該核酸リガンドの構造配置の決定に基づいて、核酸リガンドの塩基配列における特異的変異又は化学的修飾又は誘導体化の形態を採る核酸リガンド修飾を行う方法に係るものである。
そこで、本願発明Bと引用例に記載された事項を比較すると、上記(3-1)に記載のように、引用例に記載のアプタマーは、本願発明BのSELEX法によって同定された核酸リガンドに相当し、引用例記載事項(v)に記載の、標的分子がトロンビンであるアプタマーのコンセンサス配列を含むDNA15マー、5´GGTTGGTGTGGTTGG3´及び1つ以上の改変された結合基または改変された塩基で置換した改良された核酸リガンドは、本願発明Bの「どのヌクレオチドが標的分子との相互作用にとって重要であるかの決定に基づいて、核酸リガンドの塩基配列における特異的変異又は化学的修飾又は誘導体化の形態を採る核酸リガンド修飾した改変コンセンサスアプタマー」に相当する。また、引用例記載事項(v)にあるように、標的分子であるトロンビンの生物学的活性である血液凝固に対する修飾に相当する血液凝固阻害効果を、コンセンサス配列を含むDNA15マー及び各改変アプタマーの全てについて測定し、結果を示している。
そうすると、本願発明Bと引用例に記載された事項は、「ある標的に対する改良された核酸リガンドを製造する方法であって、SELEX法によって同定された核酸リガンドに、どのヌクレオチドが標的分子との相互作用にとって重要であるかの決定に基づいて、核酸リガンドの塩基配列における特異的変異又は化学的修飾又は誘導体化の形態を採る核酸リガンド修飾を行う方法」である点で共通するが、前者では、核酸リガンドの修飾が、標的の生物学的活性の修飾を有するように行うのに対して、後者では、修飾した核酸リガンドが標的の生物学的活性を修飾するかを測定している点で相違する。
しかしながら、そもそも改変とは、より活性の優れた誘導体を得ることを目的とするものであり、引用例記載事項(iii)にもアダプターの効力を高めるための改変が示されている。また、オリゴヌクレオチドを改変する際、ある程度ランダムに改変させたもののうちから優れた活性を有するものを選択することは常套手段であり、引用例に記載の標的の生物学的活性の修飾を測定後、その中から優れた活性を有するものを選択して、標的の生物学的活性の修飾を有するような修飾を特定することは、当業者が当然行う手順にすぎない。
そして、本願発明Bにおいて奏される効果も、引用例から予測できない程の格別なものとはいえない。
したがって、本願発明Bは、引用例の記載から当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.審判請求人の主張
審判請求人は、平成22年5月24日に提出した回答書において、「引用例の記載はコンセンサス配列を見出し、そして一次構造に基づくコンセンサス配列を保持したまま誘導体を作成することを記載しているにすぎず、核酸リガンドの種々の特性を改良するために、(a)標的配列への結合に重要なヌクレオチドの予めの決定、(b)化学修飾実験、あるいは、(c)核酸リガンドの構造配置の決定、という具体的な情報に基づいて修飾を行う、という本願発明の本質的な技術的思想を示唆するものではありません。」と主張している。
しかしながら、引用例の実施例においても、トロンビンアプタマーのコンセンサス配列の改変体を複数製造して、その標的であるトロンビンの生物学的活性である血液凝固に対するその改変体の阻害活性を測定しているのは、上記(3-2)で記載のとおりであり、改変体製造の目的がより優れた活性を有する誘導体の製造であることは、当業者にとって自明のことであり、測定結果から阻害活性に優れた改変体を選択することは当然のことであるから、請求人の上記主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-27 
結審通知日 2010-08-30 
審決日 2010-09-10 
出願番号 特願2008-134843(P2008-134843)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高堀 栄二  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 鵜飼 健
吉田 佳代子
発明の名称 核酸リガンドおよびその製造方法  
代理人 泉谷 玲子  
代理人 富田 博行  
代理人 小林 泰  
代理人 社本 一夫  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小野 新次郎  

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