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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C25B
管理番号 1231067
審判番号 不服2008-32303  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-22 
確定日 2011-01-26 
事件の表示 特願2003-146056「電解ガス発生方法及び電解ガス発生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日出願公開、特開2004-346390〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年 5月23日の出願であって、平成20年11月19日付けで拒絶査定され、これを不服として、平成20年12月22日付けで拒絶査定不服の審判が請求され、当審により平成22年 9月15日付けで最初の拒絶理由が通知され、同年11月15日付けで意見書が提出されたものである。

本願の請求項1?8に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その内、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】イオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させ、前記イオン交換膜を固体電解質として電解することにより、陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する電解ガス発生方法において、
陽極側に供給する純水に炭酸ガスを接触し、前記純水を炭酸水として供給することを特徴とする電解ガス発生方法。」


2.引用刊行物及びその摘記事項
当審による平成22年 9月15日付けの最初の拒絶理由通知で引用した本願の出願日前に国内において頒布された下記の刊行物1?4には、次の事項が記載されている。

(1)特開2003-117570号公報(以下、「刊行物1」という。)の摘記事項
(刊1a)「【0002】
【従来の技術】半導体用シリコン基板等の電子材料の表面から異物を取り除くためにウエット洗浄が広く行われており、近年洗浄工程の簡略化、省資源化等の要請から強い酸化力を有するオゾン水がウエット洗浄に用いられるようになってきている。
【0003】このようなオゾン水の製造方法としては、超純水の電気分解により生成するオゾンを超純水に溶解させる方法や無声放電装置で発生するオゾンを超純水に溶解させる方法が知られている。
【0004】この方法では、オゾン水中の溶存オゾンは経時的に分解して酸素ガスとなるため長距離配管による移送は困難であり、このため洗浄装置等の近くにオゾン水の製造装置を配設しなければならず洗浄装置等の設計やレイアウトに制約を受ける上に、複数のユースポイントにオゾン水を供給する必要がある場合にはオゾン水の製造装置を複数設置しなければならないという問題がある。
【0005】この問題の解決方法として、超純水に予め炭酸ガス(CO2 )を溶解させ、この炭酸ガスの溶解した超純水にオゾンを溶解させる方法が提案されている(特開2000-37695)。」

(刊1b)「【0006】図2は、このような方法を示したもので、超純水供給ライン1にオゾン溶解装置2が設置され、このオゾン溶解装置2の前段において炭酸ガスが超純水供給ライン1に注入される。なお、このオゾン溶解装置2に供給されるオゾンは、超純水供給ライン1から超純水の一部を分取ライン3で分取し電解装置4で電気分解した後、気液分離装置5で分離したものである。なお、気液分離装置5の液相と電解装置4の電極槽とは配管によって連通されており、電解装置4の電極槽で消費されただけの超純水が気液分離装置5の液相を介して分取ライン3から供給されている。」

(刊1c)従来のオゾン水製造装置の構成を示す構成図としての図2には、超純水供給ライン1において、超純水にCO_(2)が注入され、その後、超純水供給ライン1が分岐して、分取ライン3となっていること、気液分離装置5から、O_(3)が出ていることが看取できる。

(刊1d)「【0015】・・・第1の超純水供給ラインを流れる超純水への炭酸ガスの溶解は、エジェクタ又は膜を用いて行うことが望ましい。
・・・
【0019】第1の超純水供給ラインに炭酸ガスを溶解させる炭酸ガス溶解手段としては、エジェクタやPTFE製の中空糸膜装置等を使用することができる。」

(刊1e)「【0021】
【式1】 3H_(2)O → O_(3)+6H^(+)+6e^(-) ・・・・(I)
2H_(2)O → O_(2)+4H^(+)+4e^(-) ・・・・(II)」

(2)特開平11-335883号公報(以下、「刊行物2」という。)の摘記事項
(刊2a)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、その両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させた例えばパーフルオロカーボン系陽イオン交換膜を固体電解質とし、陽極側に純水を供給して電解する事により陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する電解ガス発生装置に関し、より詳細には該ガス発生装置を常に陽極側の圧力が陰極側の圧力より適正に大きくなるように自動的に制御する事によりオゾン酸素ガス中の水素ガス濃度の非常に少ない、簡易で、尚かつ高純度なガスの発生装置に関する。」

(刊2b)「【0002】【発明の背景】水を電解する事によりオゾンガスを生成する工夫は古く、100年以上昔より行われている。古くは、高電気陰性度の陰イオンを含む液を電解してオゾンを生成する溶液電解法であったが、近年では、高分子固体電解質の発達に連れ、高分子固体電解質を用いた水電解によるオゾン発生装置が製され、市販されるようになった。
【0003】パーフルオロカーボンスルフォン酸系陽イオン交換膜を固体電解質とし、その両側に陽極、陰極を密着させたいわゆるゼロギャップ方式の水電解は、構造が簡単で取り扱いが容易であり、腐食性もオゾンガス以外は無い為近年の水電解法オゾン発生の殆どを占めるようになった。」

(刊2c)「【0004】オゾンガス濃度は20%前後で、その他は飽和水蒸気を含んだ酸素ガスであり、殆ど不純物を含まないオゾン、酸素の混合ガスである。
【0005】従って、殺菌の分野や最近では半導体の湿式洗浄の分野にもオゾンの利用が広まっている。酸素を原料とし、高周波高電圧をかけることによってオゾンを生成する無声放電法に比べ、消費電力が多少大きくなる欠点はあるが、オゾンガス濃度が高いため超純水への溶解度が高く、高純度で高濃度のオゾン添加超純水を簡単に製造出来る利点があった。」

(3)特開2002-166279号公報(以下、「刊行物3」という。)の摘記事項
(刊3a)「【0002】【従来の技術】水を電解することによりオゾンガスを生成する工夫は古く、100年以上昔より行なわれている。古くは、高電気陰性度の陰イオンを含む液を電解してオゾンを生成する溶液電解法であったが、近年の高分子固体電解質の発達に連れ、高分子固体電解質を用いた水電解によるオゾン発生装置が製造され、市販されるようになった。
【0003】パーフルオロカーボンスルフォン酸系陽イオン交換膜を固体電解質とし、その両側に陽極、陰極を密着させたいわゆるゼロギャップ方式の水電解は、構造が簡単で取り扱いが容易であり、腐食性もオゾンガス以外は無いため、近年の水電解法オゾン発生の殆どを占めるようになった。」

(刊3b)「【0004】オゾンガス濃度は20%前後で、その他は飽和水蒸気を含んだ酸素ガスであり、殆ど不純物を含まないオゾン、酸素の混合ガスである。
【0005】従って、殺菌の分野や最近では半導体の洗浄の分野にもオゾンの利用が広まっている。酸素を原料とし、高周波高電圧をかけることによってオゾンを生成する無声放電法に比べ、消費電力が多少大きくなる欠点はあるが、オゾンガス濃度が高いため超純水への溶解度が高く、高純度で高濃度のオゾンを簡単に製造できる利点があった。」

(刊3c)「【0011】【課題を解決するための手段】この発明の電解ガス発生方法は、イオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させ、このイオン交換膜を固体電解質として電解することにより、陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する電解ガス発生方法において、陽極側に供給する純水から残留している過酸化水素を除去した上で、前記純水を供給することを特徴としている。」

(刊3d)「【0040】図1において、電解ガス発生装置のオゾンガス、水素ガスの発生部1には、イオン交換膜1aが備えられ、このイオン交換膜1aの両側にそれぞれ多孔質の陽極物質1b、及び、陰極物質1cを密着配置させ、このイオン交換膜1aを固体電解質として電解することにより、陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する。
【0041】オゾンガス、水素ガスの発生部1には、純水3が供給される。また、発生部1には電源2が接続されており、電源2からの電流によってガスが生成する。
【0042】発生したオゾン及び水素ガスは、各々ガス分離部4,5により分離されオゾンガス導管9と水素ガス導管10に各々導かれる。」

(4)特開昭63-250480号公報(以下、「刊行物4」という。)の摘記事項
(刊4a)「〔産業上の利用分野〕
本発明は水の電気分解によるオゾンの製造方法の改良に関する。
本発明は殊にアノード極とカソード極との間に固体電解質、例えばH-型の陽イオン交換樹脂、OH-型の陰イオン交換樹脂など、を介在させることによって通電可能とした電気分解槽を用いて水を電気分解してオゾンを製造する方法におけるオゾンの生成効率を向上させるための改良に関する。」(1頁右欄4?13行)

(刊4b)「〔発明が解決しようとする問題点〕
電解法によるオゾン発生方法が広く用いられるためには先ず安全性の面から・・・または電解質を用いない電解方法が望ましい。
最近電解質水溶液を用いない電解方法として次のようなものが提案されている。すなわち、アノード極とカソード極との間に固体電解質を介在させることによって通電可能とした電気分解槽を用いて水をアノード極において電気分解してオゾンを発生させるものである。この方法によって純水のように電気伝導度が極めて小さいので通常電解することができないものを電解してオゾンを発生させることができるのである。この電解槽は第1図に示される構成をなしており、図中、1は多孔質アノード電極、2は固体電解質、3は多孔質カソード電極、4は電解槽、5はアノード液入口、6はアノード液出口、7はカソード液入口、そして8はカソード液出口である。」(2頁左下欄13行?右下欄15行)

(刊4c)「このように電解質を含まない水の電気分解によって得られるオゾンを溶存した水溶液は、上、下水道水の殺菌消毒の用途に好適している。更にまた半導体製造用の超純水中の有機物の酸化、微生物細胞の破壊、などの用途に有用であることが期待される。」(2頁右下欄15行?3頁左上欄3行)


3.当審の判断
(1)刊行物1に記載の発明
上記摘記事項(刊1a)?(刊1c)を整理すると、刊行物1には、
「オゾン溶解装置に供給するオゾンを電気分解により生成する方法において、
超純水供給ラインにおいて、超純水にCO_(2)が注入され、その後、超純水供給ラインが分岐した分取ラインで超純水の一部を分取し、電解装置で電気分解した後、気液分離装置でオゾンを分離する方法であって、
前記気液分離装置の液相と前記電解装置の電極槽とは配管によって連通されており、電解装置の電極槽で消費されただけの超純水が気液分離装置の液相を介して分取ラインから供給されている、オゾンを電気分解により生成する方法。」
に関する発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。

(2)対比・判断
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
ア.刊行物1発明の「オゾン」、「オゾンを電気分解により生成する方法」は、本願発明の「オゾンガス」、「電解ガス発生方法」に相当する。

イ.刊行物1発明において、「超純水にCO_(2)が注入され」たものは、「炭酸水」であることは明らかであり、また、「超純水供給ラインにおいて、超純水にCO_(2)が注入され、その後、超純水供給ラインが分岐した分取ラインで超純水の一部を分取」していることから、当該「分取ライン」を流れている物は、前記CO_(2)が注入された超純水、即ち、炭酸水であることは明らかである。

ウ.刊行物1の図2及び刊行物1の摘記事項(刊1b)、(刊1c)を、前記イ.を参酌して、整理すると、分取ラインは、気液分離装置を経由して電解装置と接続されているが、「気液分離装置の液相と前記電解装置の電極槽とは配管によって連通されており、電解装置の電極槽で消費されただけの超純水が気液分離装置の液相を介して分取ラインから供給されている」ことから、電解装置の電極槽には、分取ラインから、炭酸水が供給されていることは明らかである。

そうすると、両者は、
「オゾンガスを生成する電解ガス発生方法において、
電解装置に、純水を炭酸水として供給する電解ガス発生方法」
の点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点1:本願発明では、「イオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させ、前記イオン交換膜を固体電解質として電解することにより、陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する」のに対して、刊行物1発明ではその点が明記されていない点で相違する。

相違点2:本願発明では、「陽極側に供給する純水に炭酸ガスを接触し、前記純水を炭酸水として供給する」のに対して、刊行物1発明では、炭酸ガスが超純水供給ラインに注入しているものの、注入の仕方が特定されておらず、炭酸水の供給先が電解装置の電極槽である点。

上記相違点について検討する。

相違点1について
ア.刊行物1の摘記事項(刊1a)?(刊1c)及び図2の記載等を参酌すれば、刊行物1には、「超純水の電気分解」であることが記載されており、電解質を用いた電気分解については何ら言及していないこと、図2には、電解質の供給・使用に関する構成が図示されていないこと、また、純水に注入する炭酸ガスについては、これを電解質として用いることは何ら触れられておらず、刊行物1の【0005】に記載された特開2000-37695号公報によれば、炭酸ガスの注入について、
「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、オゾン水供給装置に炭酸ガス又は有機化合物を溶解させる添加手段を設け、オゾン水に炭酸ガス又は有機化合物を添加溶解させることにより、オゾン水中のオゾンの自己分解を抑制し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、純水にオゾンを溶解させてオゾン水を生成するオゾン水溶解装置と、生成したオゾン水を移送するオゾン水供給配管を有するオゾン水供給装置であって、純水又はオゾン水に、炭酸ガス又は有機化合物を溶解させる添加手段を設けてなることを特徴とするオゾン水供給装置を提供するものである。」
と説明されており、刊行物1においては、当該解決手段に基づく例として、刊行物1の図2が示されているのであるから、刊行物1発明においても、炭酸ガスを注入することは、これを電解質として用いる目的で行っているのではなく、「オゾンの自己分解を抑制」するために行っていることは、明らかである。

イ.一方、刊行物2の摘記事項(刊2b)、刊行物3の摘記事項(刊3a)には、電解によるオゾンガスの生成方法として、近年、構造が簡単で取り扱いが容易であり、腐食性もオゾンガス以外は無い為、電解によるオゾン発生方法の殆どを、高電気陰性度の陰イオン(電解質)を含む液を電解してオゾンを生成する溶液電解法から、高分子固体電解質を用いた電解によるオゾン発生装置が占めるようになってきていることが説明されており、さらに、刊行物4の摘記事項(刊4b)には、電解法によるオゾン発生方法が広く用いられるためには先ず安全性の面から電解質水溶液を用いない電解方法が望ましいことが説明されている。

ウ.さらに、刊行物1発明と上記刊行物2,3に記載された周知技術はいずれも、半導体の湿式洗浄の分野に用いられるオゾン水を製造するための装置に用いる電気分解によるオゾンガスの製造技術に係るものである。

してみると、炭酸ガス自体は、危険性のある電解質ではないことは明らかであるから、上記ア.の刊行物1の記載内容及び上記イ.のように刊行物2?4に記載されている当時の技術水準を参酌すれば、刊行物1発明における電気分解装置として、高分子固体電解質を用いた電解によるオゾン発生装置を用いていると推認するか、少なくとも当該高分子固体電解質を用いた電解によるオゾン発生装置を採用しようとすることは当業者ならば容易に想到し得たものである。

エ.そして、高分子固体電解質を用いた電解によるオゾン発生装置として、刊行物2?4に記載されているように、「イオン交換膜を固体電解質とし、その両側に多孔質の陽極、多孔質陰極を密着させ、電解させること」、さらに、刊行物2,3に記載されているように「電解することにより陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する」ことは周知の事項である。

オ.加えて、刊行物1の図2には、O_(3)が気液分離装置5から出ているものの、酸素ガス(O_(2))は、図示されていない。一方、図1においても、O_(2)が表示されていないものの、その説明である刊行物1の摘記事項(刊1e)にもあるように、一般的な電気分解においては、オゾンガスと共に酸素ガスが製造されることが説明されていることから、従来例としての図2においても、オゾンガスと共に酸素ガスが製造されているとみるのが相当であり、刊行物1において、これを否定しうる事項も見出せない。

したがって、刊行物1発明の電気分解方法は、実質的に周知の「イオン交換膜を固体電解質とし、その両側に多孔質の陽極、多孔質陰極を密着させ、電解することにより陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する」技術を採用し、「イオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させ、前記イオン交換膜を固体電解質として電解することにより、陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する」ようにさせているか、少なくとも、当業者ならば容易に想到し得たものである。

なお、刊行物1の図2に示された装置においては、電解装置と気液分離装置との間に循環路が形成されているように見受けられるが、上記周知の「イオン交換膜を固体電解質とし、その両側に多孔質の陽極、多孔質陰極を密着させ、電解することにより陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する」技術分野においては、陽極からの気液分離部で分離された残りの水を再度電解装置へ循環させることは下記周知文献1、2のように周知の技術であり、適宜必要に応じて設けられるものであるから、循環路の有無により刊行物1発明への刊行物2,3に記載された周知技術の適用を阻害するものでもない。

<周知文献の記載事項>
周知文献1:特開2001-104995号公報
「【0025】超純水は、浄水部1のポストフィルタ18から供給された純水をイオン交換フィルタ20に通水することで得られる。・・・超純水(電解原料水)にまで精製する。電解セル30は、フッ素樹脂系イオン交換膜を固体電解質としたPEM31を多孔質チタンに二酸化鉛を担持させた陽極32と同じく多孔質チタンに白金メッキを施した陰極33とで挟持した構成をなしている。なお、陰極33はPEM31に圧接されている。
【0026】上記電解セル30の陽極32側に超純水を供給して電気分解すると、陽極32側に酸素とオゾンとが9:1程度の割合で発生する。本実施例では、イオン交換フィルタ20からの超純水を気液分離器40に導入するとともに気液分離器40からの後段に電解セル30に案内する経路を継続させ、ここで発生したオゾン含有酸素ガスやそのガスを含んだ気液混合水を気液分離器40内に循環させている。・・・」

周知文献2:特開平11-264090号公報
「【0004】通常、この電気分解によるオゾンの生成には、イオン交換水の入った電解槽をアノード室とカソード室とに固体電解質膜で仕切り、その固体電解質膜の両側に通気性のある多孔質状の陽電極と陰電極を圧着させたゼロギャップ電解槽を使用する。」
「【0043】循環タンク19は電解槽2の上部開口部32とガス排出管33により結ばれ、電解槽2の下部開口部29とも循環パイプ34により連結されている。」
「【0045】39はアノード室4の電解により発生する酸素ガスまたはオゾンガスの吐出口である。」
「【0057】・・・満たされた源水は、フィルターA25,イオン交換樹脂26,フィルターB27を通りぬけ・・・
【0058】・・・イオン交換水は排出口28より、通常は停止状態である可逆ポンプ14を通り電解槽2の下部開口部29からアノード室4に流れ込み、さらに上部開口部32よりガス排出管33より、または循環パイプ34より循環タンク19にPの水位になるまで注入される。・・・」


相違点2について
刊行物1の図1としての実施例に係る説明である摘記事項(刊1d)には、炭酸ガスを超純水に溶解させるための手段として、エジェクタやPTFE製の中空糸膜装置等を用いていることが記載されており、これら各装置は、超純水に炭酸ガスを接触させることで、炭酸ガスを超純水に溶解させるものであるから、実質的に、純水に炭酸ガスを接触させて炭酸水とすることが記載されているものである。
してみると、当業者ならば、刊行物1発明における超純水への炭酸ガスの注入方法として、前記エジェクタやPTFE製の中空糸膜装置等の接触による方法を実質的に用いていると推認し得るものであり、少なくとも、刊行物1発明に、当該手段を採用することは、当業者ならば、容易に想到し得たことである。
また、上記相違点1での検討のように、刊行物1発明に、周知の「イオン交換膜を固体電解質とし、その両側に多孔質の陽極、多孔質陰極を密着させ、電解することにより陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する」技術を採用する際には、純水を炭酸水として、陽極側に供給することになるのは、明らかである。

そして、上記相違点1、2に係る本願発明の構成に相乗的な格別な効果も見いだせず、本願発明は、上記刊行物1に記載された発明及び刊行物2?4、周知文献1、2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許を受けることができないものであり、本願の請求項2?8については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-29 
結審通知日 2010-12-01 
審決日 2010-12-14 
出願番号 特願2003-146056(P2003-146056)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福島 和幸鈴木 正紀  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 川端 修
筑波 茂樹
発明の名称 電解ガス発生方法及び電解ガス発生装置  
代理人 鶴若 俊雄  
代理人 鶴若 俊雄  

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