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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A22C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A22C
管理番号 1231075
審判番号 不服2009-13043  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-17 
確定日 2011-01-26 
事件の表示 特願2006-182376号「任意の幾何学的外形を有するソーセージ綛を製造する装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月18日出願公開、特開2007- 6892号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、2006年(平成18年) 6月30日(パリ条約による優先権主張 2005年(平成17年) 6月30日、欧州)を出願日とする特許出願であって、平成21年 4月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年 7月17日付けで本件審判請求がなされるとともに、手続補正(前置補正)がなされたものである。

II.平成21年 7月17日付けの手続補正の却下
[補正却下の決定の結論]
平成21年 7月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
ペースト塊からソーセージ綛(1)を製造する装置であって、
ペースト塊とペースト塊を封入するケーシングとを押し出す共押出ヘッド(2)を備えており、
前記共押出ヘッド(2)が、ペースト塊を射出する充填管(21)と、食塩水に曝されることで凝固するケーシング材料を射出する押出用隙間(23)をもたせて前記充填管(21)に割り当てる押出ダイス(22)とを備える、前記装置において、
前記充填管(21)が、少なくとも射出端部(21a)域で、円形状から逸脱した横断面形状を有し、前記押出用隙間(23)が、円形状から逸脱した対応する横断面形状を有し、
前記充填管(21)と前記押出ダイス(22)の壁(24)との間に前記押出用隙間(23)が形成されるように、前記押出ダイス(22)が前記充填管(21)の前記射出端部(21a)のまわりに配置され、
前記壁(24)が開口部を備えており、
前記開口部が、前記充填管(21)の形状に対して実質的に相補的な形状を有すると共に前記充填管(21)を収容でき、
前記充填管(21)と前記壁(24)との間の前記押出用隙間(23)が、周囲全体にわたって同じ幅(b、c)を呈することを特徴とする、装置。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載されていた発明を特定するために必要な事項である「ケーシング材料」を「食塩水に曝されることで凝固するケーシング材料」と限定し、「前記充填管(21)と前記押出ダイス(22)の壁(24)との間」の「前記押出用隙間(23)」を「前記充填管(21)と前記壁(24)との間の前記押出用隙間(23)が、周囲全体にわたって同じ幅(b、c)を呈する」とそれぞれ限定するものであって、この限定した事項は、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載されており、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年法律55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例及びその記載事項
原査定の平成20年 8月26日付けの拒絶理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-33218号公報(以下「引用例1」という。)には、「ペースト状の塊のストランドの製造のための装置および方法と、その装置および方法のための押出しヘッド」に関し、図面とともに以下の事項が記載または示されている。

a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト状の塊、特にソーセージミート、のストランド(1)を製造するための押出しヘッド(2)を備え、該ペースト状の塊とそれをとりまくケーシングとの共押し出し手段(27)、該ケーシングを固化させる固化手段(3)と捩じり切り手段(4)を有する装置であって、
コンベア手段(5)が該捩じり切り手段(4)の下流側に配置されており、該共押し出し手段(27)と、一方に配置された該捩じり切り手段(4)のストランド・ガイド(41)と、他方に配置されたコンベア手段が互いに相対的に回転することを特徴とするペースト状の塊のストランド製造装置。
・・・
【請求項3】
該共押し出し手段(27)が充填チューブ(21)と該充填チューブ(21)に連結した押出しノズル(22)を有し、該充填チューブ(21)と該押出しノズル(22)は、該充填チューブ(21)の長手方向軸(A)の周りに回転することを特徴とする請求項2の装置。
【請求項4】
該押出しノズル(22)が、該充填チューブ(21)の開放端の該押出しノズル(22)の壁(24)と該充填チューブ(21)との間に形成された環状ギャップ(23)を備えていることを特徴とする請求項3の装置。
・・・
【請求項6】
該環状ギャップ(23)が該充填チューブ(21)の長手方向軸(A)に対してほぼ平行に伸び、該壁(24)が該充填チューブ(21)の開放端をかみ込んでいることを特徴とする請求項4の装置。
【請求項7】
該環状ギャップ(23)を調整するために、該壁(24)が軸方向に移動できるように、該押出しヘッド(2)に取り付けられていることを特徴とする請求項6の装置。
・・・
【請求項14】
該固化手段(3)が該押出しヘッド(2)のすぐ下流側に配置された環状シャワー(31)または塩水用の槽(32)を備えることを特徴とする請求項1から13のうちの少なくともいずれか1項による装置。
・・・」

b:「【技術分野】
【0001】
本発明はペースト状の塊のストランド(棒状につながった材料塊)、具体的にはソーセージミートのストランドを製造するための押出しヘッドを備えた装置に関し、本装置はペースト状の塊とこのペースト状の塊をとりまくケーシング(外膜)の共押し出し手段、該ケーシングを固化する固化手段、および捩じり切り手段を有する。」

c:「【0025】
また別の好適な実施例として、該共押し出し手段は充填チューブと充填チューブに連結された押出しノズルを有し、該充填チューブと該押出しノズルは該充填チューブの長手方向軸に対して回転可能とする。該充填チューブと該押出しノズルが同じ長手方向軸の周りを回転することにより、該ペースト状の塊とこの塊をとりまく該ケーシングに無理な力をほとんどかけずに共押し出しすることができる。
【0026】
他の好適な実施例において、該押出しノズルは、該充填チューブと、該充填チューブの開放端にある該押出しノズルの壁との間に形成された環状ギャップを有する。この環状ギャップを通して、外充填チューブから押し出された該ペースト状の塊の上に、ソーセージの外皮を形成する薄膜の形で該ケーシング材料が使用される。
【0027】
好適な方法として、該環状ギャップは該充填チューブの長手方向軸に対しておおむね半径方向に伸び、該壁はおおむね、該充填チューブの開放端で終わる。このような押出しノズルの付いた押出しヘッドの製作は簡単でコストも安い。
【0028】
また別の好適な実施例として、該環状ギャップは該充填チューブの長手方向軸におおむね平行に伸び、該壁はおおむね、該充填チューブの開放端にかみこんだ形で設けられる。該壁は更に軸方向に移動する形で該押出しヘッドに取り付けることもできる。これにより該環状ギャップの調整が可能となり、そのため、該壁と該充填チューブの端との間の距離を変更することができるという利点を有する。
【0029】
該壁は、該充填チューブを取りまき、材料供給口に接続されたノズル中空スペースを形成する。該ケーシング材料は該材料供給口を通って該押出しノズルの該ノズル中空スペースに導かれ、該充填チューブから該環状ギャップを通って押し出されて出てくるソーセージ上に、そこからスプレーされる。該ノズル中空スペースにより該ケーシング材料を供給する際の圧力変化を補正することが可能となり、そのため用いられる膜の均一性が高められる。
【0030】
該押出しノズルはできれば、該充填チューブに固定して接続し、回転可能な形で設置する。これにより該押出しヘッドの設計を非常にコンパクトにすることができる。また同時にこれにより該押出しノズルと該充填チューブの同期回転が可能となる。」

d:「【0042】
図1に示すように、該装置はタンク11を有し、タンクよりペースト状の塊、例えばソーセージ用ミートが該充填チューブ21に供給される。該ソーセージ用ミートは開口部8を通って圧力をかけて該充填チューブ21の中に押し込まれ、それから該押出しヘッド2に供給される。この構成は図2aの断面図にも示されている。該押出しヘッド2は外部材料、すなわち該ケーシング材料用の供給口26につながれている。
【0043】
内部材料と外部材料両方の材料を共押し出しするために、ソーセージ用ミートは内部材料として、該充填チューブ21を通り矢印Bの方向に押出しヘッド2に供給され、同時にケーシング材料は供給口26を通り矢印Cの方向に押出しヘッド2へと供給される。この構成は図2に詳細が示されている。
【0044】
さらに図1に見られるように、該押出しヘッド2から共押し出しされたソーセージのストランドは、環状シャワー31を通りぬける。この環状シャワー31は該固化手段3の一部を構成し,該押出しヘッド2の下流側に設置される。該環状シャワー31は食塩水の供給口につながれており、食塩水は別のタンク12からポンプを用いて該環状シャワー31に供給される。押し出された該ソーセージが該固化手段3から出た後、ソーセージの該外皮が硬化し、押し出された該ソーセージを部分ごとに捩じり切るときに、外皮が裂けることがないように十分な安定性を得る。」

e:「【0056】
図1に図示した駆動装置の個別サブアセンブリについて、更に詳細に以下に記述する。
【0057】
図2aに図示下該押出しヘッド2は該充填チューブ21と該押出しノズル22を備える。該充填チューブ21と該押出しノズル22は回転矢印で示したように、該充填チューブ21の長手方向軸Aの周りに回転させることができる。該押出しノズル22は圧入などの方法で充填チューブ21に固定して取り付けてある。もちろん、それ以外の取り付け方法を用いることも可能である。該押出しノズル22はハウジング28内に回転可能な形で取り付けられ、不純物がソーセージ・ストランドに入らないように周辺部を密封されている。
【0058】
該押出しノズル22には同心的に該充填チューブ21をとりまく環状ギャップ23が付いている。この環状ギャップ23は、該充填チューブ21の開放端側に位置する該押出しノズル22の壁24と該充填チューブ21との間に形成されている。
【0059】
ここで環状ギャップ23は、図2aで理解されるように、おおむね該充填チューブ21の長手方向軸Aに対して半径方向に延び、該壁24はおおむね、該充填チューブ21の開放端で終わる。
【0060】
また別の方法として、図2bに図示されているように、該充填チューブ21の開放端を、その内側の周辺でかみこむ環状のディスクとして該壁24を形成する事も可能である。該壁24のかみこみ部分と該充填チューブ21の開放端の間にこのように形成された環状ギャップ23は、図2bに図示されているように、充填チューブの長手方向軸Aに対して平行に延びる。
【0061】
該環状ディスク、すなわち該壁24は該押出しヘッド2の中に軸方向に挿入され、滑らせて移動させることができる。図2bの双方向矢印に示すように、環状ディスクを軸方向に移動させることにより、該環状ギャップは軸方向にも伸び、すなわち該環状ディスクのかみ込み部分と該充填チューブ21の開放端の間の距離を変更することが可能となる。
【0062】
該壁24はケーシング材料の該供給口26につながれたノズル中空スペース25を形成する。該中空スペース25は該壁24よりも厚みの大きい別の壁29により形成される。該充填チューブ21と該押出しノズル22は厚みの大きい壁29の部分で互いに連結されている。該壁29は該押出しノズル22と該充填チューブ21との連結が十分な強度をもっておこなうことができるような寸法を有する。
【0063】
運転時、ペースト状のケーシング材料は該供給口26から、矢印Cの方向に該ノズル中空スペース25に押し込まれ、そこから該環状ギャップ23を通って該押出しノズル22から押し出される。同時に、ソーセージ用ミートなどのペースト状の塊が矢印Bの方向に該充填チューブ21を通って、図2a左の該充填チューブ21の開放端に運ばれる。両材料を共押し出しするため、該充填チューブ21の開放端から出てくるソーセージ用ミートの上に、該押出しノズル22の該環状ギャップ23を通してケーシング材料がスプレーされる。
【0064】
用いるソーセージの外皮の厚さは、該環状ギャップ23のサイズを変えることにより調節することができる。ソーセージ用ミートに対する該ケーシング材料の量の割合は、該押出しノズル22と該充填チューブ21にそれぞれ連結された供給ポンプの供給スピードにより制御することができる。
【0065】
該捩じり切り手段4と該コンベア手段5の間でソーセージ・ストランドを捩じり切る時、該充填チューブ21とそれに固定して取り付けられた該押出しノズル22は、該駆動装置7の働きにより該充填チューブの軸Aの周りを回転する。これにより捩じり切りをおこなう間、該ケーシング材料と該ソーセージ用ミートは同期して回転し、その結果、該ケーシング材料が該ソーセージ用ミートに均一にスプレーされる。
【0066】
該押出しヘッド2の下流側に設置された該固化手段3には、図3に図示のように、該環状シャワー31が取り付けられている。この環状シャワー31はポンプを介して食塩水の供給のためタンクにつながれている。あるいは別の方法で、槽32の食塩水槽を該押出しヘッド2の後ろに設けて、押し出された製品のストランドを通すこともできる。
【0067】
用いるケーシング材料の固化時間が非常に短いため、該固化ラインは図1に図示のように非常に短くすることができる。」

f:図2からみて、押出しノズル22が、充填チューブ21の端部のまわりに配置されていること、および、壁24が開口部を備えていることが看取できる

g:摘記事項eの段落【0056】の記載と図2からみて、環状ギャップ23は同心的に充填チューブをとりまくことから、前記開口部が、充填チューブ21の形状に対して実質的に相補的な形状を有するとともに、充填チューブ21を収容できること、および、環状ギャップ23が充填チューブ21の周囲全体にわたって同じ幅を呈することは明らかである。

これらの記載からみて、上記引用例1には、
「ペースト状の塊のストランド、具体的にはソーセージミートのストランド上にソーセージの外皮を形成する薄膜を製造する装置であって、
ペースト状の塊とこの塊をとりまくケーシング(外膜)を共押し出しする押出しヘッド2を備えており、
前記押出しヘッド2が、ペースト状の塊を共押し出しする充填チューブ21と、環状シャワー31により食塩水を供給することで硬化するケーシングの材料を押し出す環状ギャップ23と、前記充填チューブ21をとりまく前記環状ギャップ23が付いている押出しノズル22とを備える、前記装置において、
前記充填チューブ21と前記押出しノズル22の壁24との間に前記環状ギャップ23が形成されるように、前記押出しノズル22が前記充填チューブ21の端部のまわりに配置され、
前記壁24が開口部を備えており、
前記開口部が、前記充填チューブ21の形状に対して実質的に相補的な形状を有すると共に前記充填チューブを収容でき、
前記充填チューブ21と前記壁24との間の前記環状ギャップ23が、周囲全体にわたって同じ幅を呈する、装置」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

原査定の平成20年 8月26日付けの拒絶理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-231531号公報(以下「引用例2」という。)には、「食料製品の複合押し出し成形方法と、該方法を実現するための複合押し出し成形装置、および、該方法による食料製品」に関し、図面とともに以下の事項が記載または示されている。

h:「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、詰め物をしたタイプの特製食料製品と、そのような製品を作る方法と、その方法を実現する装置に関する。」

i:「【0007】複合充填システム、または充填機を有するその他のシステムが知られている。こうしたシステムを用いると、ソーセージの複合充填が可能になる。得られる結果は、例えば中心部にチーズの入ったソーセージの形になる。このシステムは、後で説明する、乾燥抽出物の割合が大きいチーズに応用するのは難しい。」

j:「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の側面によれば、本発明は、少なくとも1種類の充填物を包む固い包皮を有する食料製品を、その製品の包皮となる、ベースとなる食料品と、少なくとも1種類の充填用食品材料とを基にして、これら包皮材料と充填材料が供給される押し出しダイスを備える複合押し出し成形装置の中で製造する方法に関し、使用する押し出しダイスは、第1の区画の中を長手方向に少なくとも1つの充填材料移送用注入管が貫通しており、その注入管の中を充填材料が通過し、この第1の区画は押し出しダイスの第2の区画に通じており、この第2の区画が始まる部分は、最も短い注入管の出口の端部によって規定されていて、その方法は、
-押し出しダイスの第1の区画において、熱の効果によって固化する包皮を形成するステップと、
-押し出しダイスの第2の区画において、その押し出しダイスの第1の区画で形成された固い包皮の中に、その第1の区画を貫通する注入管から出てくる充填材料を充填するステップと、
-充填材料が中に詰まった包皮を外側に有する製品を押し出しダイスの出口から回収するステップとを含んでいる。ベースとなる食料品は、典型的にはタンパク質であるが、多糖類でもよい。」

k:「【0031】
【発明の実施の形態】本発明のさらに別の目的ならびに利点は、添付の図面を参照した以下の説明の中で明らかになろう。本発明の第1の実施の形態を説明する。製品の製造には、複合押し出し成形装置1を用いる。この装置の押し出しダイス6の中で包皮材料3と充填材料4を複合押し出し成形することにより、複合押し出し成形された製品5を製造することができる。
【0032】包皮材料3は、供給ホッパー7に入れる。この供給ホッパー7の容量の典型的な値は約50リットルである。充填材料4は、ほぼ同じ容量の供給ホッパー8に入れる。包皮材料は、タンパク質性のチーズをベースにしたタイプの材料である。
【0033】供給ホッパー7と8は、出口の位置に、配合量決定手段と、包皮材料および充填材料の温度調節手段とを備えている。供給ホッパー7と8は、それぞれ、供給容器7a、8aに通じている。包皮材料3は、供給容器7aの出口にある第1の移送手段9によって押し出しヘッド11へと運ばれる。同様にして、充填材料4は、第2の移送手段10によって押し出しヘッド11へと運ばれる。第1の移送手段9と第2の移送手段10は、食料品用のパイプである。これらパイプの中の流量は、1時間あたり約50?100kgである。
【0034】複合押し出し成形装置の押し出しヘッド11は、押し出し室12を備えている。包皮材料の移送手段9は、入口領域12aを介して押し出し室12に通じている。充填材料の移送手段10は、入口13の位置で押し出しヘッドに通じている。移送手段10の端部13aは、気密が保たれるようにして注入管14の端部13bに通じている。
【0035】この注入管14は、押し出しヘッド11の押し出し室12の中に位置する第1の部分15と、押し出しヘッド11の外、したがって押し出しダイス6の中に位置する第2の部分16とを備えている。注入管14は、押し出しヘッド11の中にある支持手段17によって支持されている。
【0036】複合押し出し成形装置1は、供給ホッパー7と押し出しヘッド11の間の位置で、移送手段9であるパイプの一部に、包皮材料の温度調節手段18を備えている。複合押し出し成形装置1はまた、供給ホッパー8と押し出しヘッド11の間の位置に、充填材料の温度調節手段19を備えている。
【0037】以下、押し出しダイス6と、複合押し出し成形による製品5の製造とについて、さらに詳しく説明する。押し出しダイス6は、押し出しヘッド11の出口に位置する第1の端部20と、複合押し出し成形された製品が出てくる第2の端部21とを有する。
【0038】押し出しダイス6は、順番に、長さがL1である第1の区画S1と、長さがL2である第2の区画S2とを備えている。長さL1は、押し出しダイス6の端部20が含まれる平面Pから測った距離である。この長さL1は、押し出しダイス6の全長のうち、注入管14が含まれている部分の長さである。この長さL1の全長にわたって、充填材料4が、注入管14の端部22まで詰まっている。
【0039】包皮材料は、押し出しダイス6の中でも押し出しダイス6の内側壁面23と注入管14の外側壁面24の間に挟まれた空間を通過する。熱手段25が、第1の区画S1を通過する包皮材料と充填材料の温度を変える目的で設けられている。この熱手段25は、例えば、二重エンベロープ、電気的抵抗器、油浴、またはその他の流体の浴である。かさばるというのが特に大きな理由だが、熱手段25は押し出しダイス6が始まる部分から長さL'3にわたっては設置しないようにすることができる。
【0040】長さL1の間に、製品の包皮が固化によって形成される。それについて以下に詳しく説明する。熱手段25から供給される温度はT1であり、この熱手段の出口の温度はT'1である。
【0041】押し出しダイス6は、第1の区画S1に続く位置に、長さがL2の第2の区画S2を有する。この第2の区画S2にはもはや注入管14が含まれていない。この第2の区画S2は、第1の熱手段25と同様の熱手段26を備えている。
一実施例によれば、L1=150cm、L=400cmである。別の実施例によれば、L1=30cm、L=250cmである。」

l:「【0057】図3は、使用する注入管に応じて極めて多彩な形状の製品が得られることを示している。図3(a)?図3(o)は、複合押し出し成形された製品の一般的な形状の例の概略図であり、(a)は円形、(b)は正方形、(c)は三角形、(d)はハート形、(e)は菱形、(f)は長方形、(g)は楕円形、(h)は丸まった三角形、(i)は八角形、(j)は絞られた形、(k)はひょうたん形、(l)は台形、(m)はトンネルの断面形、(n)は樹木の形、(o)は花の形を示している。
【0058】図4(a)?図4(f)は、複合押し出し成形されて外側に包皮と内側に充填物を有するようになった製品の形状のいくつかを例示し、例えば、図4(c)は押し出しダイスの断面が正方形で、その内部の注入管の断面が円形の場合のものである。」

m:摘記事項lの段落【0058】を参照すると、図4(d)には、押し出しダイスの断面が台形で、その内部の注入管の断面が台形の場合のものが示されている。

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ペースト状の塊のストランド、具体的にはソーセージミートのストランド上にソーセージの外皮を形成する薄膜を製造する装置」は、本願補正発明の「ペースト塊からソーセージ綛を製造する装置」に相当し、以下同様に、「ペースト状の塊」は「ペースト塊」に、「押出しヘッド2」は「共押出ヘッド」に、「充填チューブ21」は「充填管」に、「環状ギャップ23」は「押出用隙間」に、「押出しノズル22」は「押出ダイス」に、「端部」は「射出端部」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「ペースト状の塊とこの塊をとりまくケーシング(外膜)を共押し出しする押出しヘッド2」は、本願補正発明の「ペースト塊とペースト塊を封入するケーシングとを押し出す共押出ヘッド」に相当し、引用発明の「前記押出しヘッド2が、ペースト状の塊を共押し出しする充填チューブ21と、環状シャワー31により食塩水を供給することで硬化するケーシングの材料を押し出す環状ギャップ23と、前記充填チューブ21をとりまく前記環状ギャップ23が付いている押出しノズル22とを備える」は、本願補正発明の「前記共押出ヘッドがペースト塊を射出する充填管と、食塩水に曝されることで凝固するケーシング材料を射出する押出用隙間をもたせて前記充填管に割り当てる押出ダイスとを備える」に相当し、そして、引用発明の「前記充填チューブ21と前記押出しノズル22の壁24との間に前記環状ギャップ23が形成されるように、前記押出しノズル22が前記充填チューブ21の端部のまわりに配置され」は、本願補正発明の「前記充填管と前記押出ダイスの壁との間に前記押出用隙間が形成されるように、前記押出ダイスが前記充填管の前記射出端部のまわりに配置され」に相当する。
そうすると、両者は、
「ペースト塊からソーセージ綛を製造する装置であって、
ペースト塊とペースト塊を封入するケーシングとを押し出す共押出ヘッドを備えており、
前記共押出ヘッドがペースト塊を射出する充填管と、食塩水に曝されることで凝固するケーシング材料を射出する押出用隙間をもたせて前記充填管に割り当てる押出ダイスとを備える、前記装置において、
前記充填管と前記押出ダイスの壁との間に前記押出用隙間が形成されるように、前記押出ダイスが前記充填管の射出端部のまわりに配置され、
前記壁が開口部を備えており、
前記開口部が、前記充填管の形状に対して実質的に相補的な形状を有すると共に前記充填管を収容でき、
前記充填管と前記壁との間の前記押出用隙間が、周囲全体にわたって同じ幅を呈する、装置」の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

<相違点>
開口部が、充填管の形状に対して実質的に相補的な形状を有するものにおいて、本願補正発明では、「充填管が、少なくとも射出端部域で、円形状から逸脱した横断面形状を有し、押出用隙間が、円形状から逸脱した対応する横断面形状を有し」ているのに対して、引用発明では、そのような構成ではない点。

4.相違点の検討・当審の判断
摘記事項h?mからみて、上記引用例2の摘記事項mには、
「ソーセージの複合充填が可能な複合充填システムにおいて、充填物を含む硬い包皮を有する食料製品を、包皮材料と充填材料が供給される押し出しダイスを備える複合押し出し成形装置の中で製造するものであって、充填材料が通過する注入管の断面形状を台形とし、包皮材料を押し出す押し出しダイスの断面の内側と注入管の外面の間を台形に対応する形状として、押し出しダイスの開口部が注入管の形状に対して実質的に相補的な形状を有するもの」が記載されているものと認められる。
そして、上記引用例2に記載された事項の「注入管」は、本願補正発明の「充填管」に相当し、以下同様に、「押し出しダイスの断面の内側と注入管の外面の間」は「押出用隙間」に、「断面形状を台形」は「円形状から逸脱した横断面形状」にそれぞれ相当するから、上記引用例2には、
「ソーセージの複合充填が可能な複合充填システムにおいて、充填物を含む硬い包皮を有する食料製品を、包皮材料と充填材料が供給される押し出しダイスを備える複合押し出し成形装置の中で製造するものであって、充填材料が通過する充填管が円形状から逸脱した断面形状とし、包皮材料を押し出す押出用隙間が、円形状から逸脱した対応する横断面形状を有して、開口部が充填管の形状に対して実質的に相補的な形状を有しているもの」が開示されているものと認められる。
そうすると、上記相違点でいう本願補正発明の構成については、上記引用例2に開示された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の奏する作用効果について検討してみても、引用発明、上記引用例2に開示された事項から当業者が予測し得たものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明、上記引用例2に開示された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

III.本願発明について
1.本願発明の記載事項
平成21年 7月17日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成20年11月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】
ペースト塊からソーセージ綛(1)を製造する装置であって、
ペースト塊とペースト塊を封入するケーシングとを押し出す共押出ヘッド(2)を備えており、
前記共押出ヘッド(2)が、ペースト塊を射出する充填管(21)と、ケーシング材料を射出する押出用隙間(23)をもたせて前記充填管(21)に割り当てる押出ダイス(22)とを備える、前記装置において、
前記充填管(21)が、少なくとも射出端部(21a)域で、円形状から逸脱した横断面形状を有し、前記押出用隙間(23)が、円形状から逸脱した対応する横断面形状を有し、
前記充填管(21)と前記押出ダイス(22)の壁(24)との間に前記押出用隙間(23)が形成されるように、前記押出ダイス(22)が前記充填管(21)の前記射出端部(21a)のまわりに配置され、
前記壁(24)が開口部を備えており、
前記開口部が、前記充填管(21)の形状に対して実質的に相補的な形状を有すると共に前記充填管(21)を収容できることを特徴とする、装置。」(以下「本願発明」という。)

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は前記II.2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記II.1.で検討した本願補正発明の「食塩水に曝されることで凝固するケーシング材料」の「食塩水に曝されることで凝固する」という限定を削除し、さらに「前記充填管(21)と前記壁(24)との間の前記押出用隙間(23)が、周囲全体にわたって同じ幅(b、c)を呈する」とした限定を削除するものである。
そうすると、本願発明の構成よりも更に限定した構成を備える本願補正発明が前記II.4.に記載されたとおり、引用発明、上記引用例2に開示された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も本願補正発明と同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、上記引用例2に開示された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-17 
結審通知日 2010-08-24 
審決日 2010-09-09 
出願番号 特願2006-182376(P2006-182376)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A22C)
P 1 8・ 575- Z (A22C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 康  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 藤井 昇
田口 傑
発明の名称 任意の幾何学的外形を有するソーセージ綛を製造する装置および方法  
代理人 城戸 博兒  
代理人 野田 雅一  
代理人 山田 行一  
代理人 池田 正人  
代理人 池田 成人  
代理人 松澤 寿昭  

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