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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C
管理番号 1231077
審判番号 不服2009-17991  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-25 
確定日 2011-01-26 
事件の表示 特願2006-174599「圧縮負荷強化型ローラ式リニアガイドウェイユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月10日出願公開、特開2008- 2638〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
【1】手続の経緯

本願は、平成18年6月23日の出願であって、平成21年5月19日(起案日)付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成21年9月25日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年9月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明

平成21年9月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
ガイドウェイ、スライダ本体、六列型循環ローラ式回転体、複数のローラ保持素子、六つの還流方向転換素子、六つの還流管、二つのエンドカバーおよび複数の締付素子を含む圧縮負荷強化型ローラ式リニアガイドウェイユニットにおいて、
前記ガイドウェイは、長条形の構造で、その断面の腰部が頭部および底部より狭く形成され、頭部の右上方、右下方、左上方、左下方および底部の右上方、左上方のそれぞれにローラが回転するための斜面が設けられ、
また、前記スライダ本体は、少なくとも六つのローラが循環し還流するための上列、中列、および下列の通孔並びに六つのローラを回転させるための斜面を備え、このローラが回転する斜面は、前記ガイドウェイの回転斜面に対応し、前記の各列のローラ環流経路方向はローラの長手方向と垂直であり、前記中列の通孔のローラ環流経路方向と前記下列の通孔のローラ環流経路方向とは交差し、 前記六列型循環ローラは、それぞれ両対応する回転斜面に保持され、また前記ローラ保持素子は、スライダユニットとスライドウェイとを分離する時、ローラがスライダユニットから落ちないように保護し、
前記還流方向転換素子は内方向転換素子および外方向転換素子を含み、該外方向転換素子の外側にそれぞれ円弧状の回転路面を設け、前記外方向転換素子の内側に内方向転換素子に対向する円弧状の回転路面を設け、この還流方向転換素子がそれぞれスライダの両端に設けられ、ローラを案内して回転方向を変更させ、
前記の還流管は、中空の構造で、スライダ本体の通孔中に埋められ、ローラの還流に用いられ、
前記エンドカバーは、前記スライダ本体の両端に接続され、その上に六つの還流方向転換素子に対応する円弧状の曲面が設けられ、さらに
これらの還流方向転換素子、還流管および両エンドカバーによりローラが無限循環の還流運動をする、圧縮負荷強化型ローラ式リニアガイドウェイユニット。」
と補正された。(なお、下線は補正箇所を示す。)

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「少なくとも六つのローラが循環し還流するための通孔」について、「上列、中列、および下列の通孔」との限定を付加するとともに、「前記の各列のローラ環流経路方向はローラの長手方向と垂直であり、前記中列の通孔のローラ環流経路方向と前記下列の通孔のローラ環流経路方向とは交差し」との限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に日本国内において頒布された刊行物は、次のとおりである。

刊行物1:特開2000-346066号公報

上記刊行物1には、「ローラ案内装置」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア) 「【0015】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1
図1乃至図7は、この発明の実施の形態1に係る直線ローラ案内装置を示している。このローラ案内装置1は、図1及び図2に示すように、左右側面に断面円弧状で長手方向に延びる凹部2を備えた軌道レール3と、この軌道レール3の上面と対向する水平部4と、水平部4の幅方向両端部から下方に突出すると共に前記軌道レール3左右側面の凹部2に挿入される凸部5を有する左右一対の垂下部6,6と、を備えた断面コ字形状の移動ブロック7と、前記軌道レール3左右側面の凹部2と移動ブロック7左右垂下部6の凸部5との対向面間に、それぞれ軌道レール3の長手方向に転動自在に介装される多数の樽形ローラ8から構成される上下2列の樽形ローラ列9,10と、を備え、上下2列の樽形ローラ列9,10を軌道レール3の円弧状の凹部2内周円弧面2aに沿ってすべり移動可能としたものである。また、軌道レール3の上面と移動ブロックの水平部4の下面との対向面間にも、多数の樽形ローラ8から構成される左右2列の樽形ローラ列11,11が設けられている。
【0016】上記樽形ローラ列9,10,11は、図3(A)?(C)に示すように、それぞれ移動ブロック7の左右垂下部6,6および水平部4に設けられた無限循環路12に無限循環移動可能に保持されている。各樽形ローラ列9,10,11の無限循環路12は、荷重負荷域の負荷ローラ転走路13と、この負荷ローラ転走路13と所定間隔隔てて平行に設けられる無負荷域の戻し通路14と、負荷ローラ転走路13の両端と戻し通路の両端を接続するU字状の方向転換路15とから構成される。負荷ローラ転走路13は、軌道レール3側のローラ転走面となる軌道レール3の凹部2の内周円弧面2aに対向して形成される移動ブロック7の左右垂下部6,6の凸部5,5に形成されたローラ転走面13a,13aと、このローラ転走面13a,13aを転動移行する樽形ローラ8の軸方向両端を案内する案内壁13bとから構成されている。この実施の形態では、樽形ローラ8はローラ連結体20によって一連に連結されているので、案内壁16bは樽形ローラ8の端面に直接接触せず、ローラ連結体20を介して案内保持される。
【0017】樽形ローラ8は、その中心軸を含む面とローラ外周面との交線が中央が膨らむ円弧形状に成形された球面ローラで、軌道レール3の左右側面の凹部2の円弧及び移動ブロック7側のローラ転走面13aはこの樽形ローラ8の外周円弧とほぼ同一曲率の円弧形状となっている。したがって、樽形ローラ8の外周が凹部2の内周円弧面2aと移動ブロック7側のローラ転走面13aに対して、ローラ軸方向にほぼ全長にわたって線接触状態を保つ。実際には、凹部2の内周円弧面2aおよび移動ブロック7側のローラ転走面13aの曲率半径を樽形ローラ8の外周円弧の曲率半径よりも僅かに大きくしておくことが好ましい。移動ブロック7は、断面コ字形状のブロック本体部16と、このブロック本体部16の軸方向両端面にボルトによって固定される断面コ字形状の側蓋17と、を備え、上記した負荷ローラ転走路13と無負荷域の戻し通路14はブロック本体部16に設けられ、方向転換路15は側蓋17内に形成されている(図2,図3参照)。
【0018】左右側面の樽形ローラ列9,10の戻し通路14は、負荷ローラ転走路13と上下位置が入れ替わっており、上側の負荷ローラ転走路13に対応する戻し通路14が下側に、下側の負荷ローラ転走路13に対応する戻し通路14が上側に位置している。そして、各方向転換路15は、図1の軌道レール3の軸方向に見て十字状に交差している。このように十字状に交差させるために、一方の樽形ローラ列9の方向転換路15をブロック本体部16の端面に近い方に配置し、他方の樽形ローラ列10の方向転換路15をブロック本体部71の端面から遠い方に迂回するように配置し、方向転換路15,15が互いに干渉しないようにしている。ブロック本体部16の端面には一方の樽形ローラ列9の方向転換路15の内周側半部15aがブロック本体部16と一体的に成型され、側蓋17にはこの一方の樽形ローラ列9の方向転換路15の内周側半部15aと対応する外周側半部15bが形成され、さらにこの外周側半部15bの軌道面と直交するように他方の方向転換路15の内周側半部15aが形成されたアーチ状に湾曲した案内ピース18が設けられている(図6,図7参照)。
【0019】ブロック本体部16は、金属ブロック部16aと、上記した無限循環路12を成形するための樹脂部16bとから構成され、樹脂部16bによって樽形ローラ8の無限循環路12の戻し通路14、負荷ローラ転走路13の案内壁13bおよび方向転換路15の内周側半部15aとが構成されている。この樹脂部16bと金属ブロック部16aとは一体的に接合されている(図4参照)。また、ブロック本体部16の水平部4上面には、テーブル取付用のボルト穴16cが幅方向中央部と幅方向両端部付近の3カ所に設けられている。また、軌道レール3の上面には、2条のローラ転走面3aの間にボルト締結用の固定穴3bが開口している。」

(イ) 「【0023】本実施の形態1に係るローラ案内装置1によれば、上方からの荷重は、軌道レール3上面側に位置する2列の上面樽形ローラ列11,11と、軌道レール2側面側に位置する下側の側面樽形ローラ列9,9によって支持されるので、上方からの荷重に対する負荷能力が大きい。一方、下方からの浮き上がり荷重は軌道レール3側面側に位置する上側の樽形ローラ列10によって効果的に支持することができる。……
【0024】また、上記各樽形ローラ列9,10,11の各樽形ローラ8はローラ連結体20によって一連に連鎖されているので、樽形ローラ8の中心軸が移動ブロック7の移動方向に対して直交する方向に正確に案内することができる。」

(ウ) 上記記載事項(イ)の「樽形ローラ8の中心軸が移動ブロック7の移動方向に対して直交する方向に正確に案内することができる。」との記載とともに図1?3の記載を参酌すると、樽形ローラ列9,10,11のローラ循環経路方向は樽形ローラ8の中心軸と直交するものと認められる。

上記記載事項(ア)?(ウ)及び図面の記載を総合すると、刊行物1には、
「軌道レール3と、ブロック本体部16と、樽形ローラ列9,10,11を構成する樽形ローラ8と、U字状の方向転換路15と、無負荷域の戻し通路14と、上記ブロック本体部16の軸方向両端面にボルトによって固定される側蓋17と、を備えたローラ案内装置1において、
上記軌道レール3は、左右側面に断面円弧状で長手方向に延びる凹部2を備え、上記凹部2及び上記軌道レール3の上面のそれぞれに樽形ローラ8が転動するための内周円弧面2a及びローラ転走面3aが設けられ、
また、上記ブロック本体部16は、上記樽形ローラ8が無限循環移動するための無負荷域の戻し通路14及び上記樽形ローラ8を転動させるためのローラ転走面13aを備え、この樽形ローラ8が転動するローラ転走面13aは、上記軌道レール3の内周円弧面2a及びローラ転走面3aに対向し、樽形ローラ列9,10,11のローラ循環経路方向は樽形ローラ8の中心軸と直交し、左右側面の樽形ローラ列9,10の戻し通路14は、負荷ローラ転走路13と上下位置が入れ替わっており、上側の負荷ローラ転走路13に対応する戻し通路14が下側に、下側の負荷ローラ転走路13に対応する戻し通路14が上側に位置し、各方向転換路15は、軌道レール3の軸方向に見て十字状に交差し、
上記樽形ローラ列9,10,11を構成する樽形ローラ8は、それぞれ両対向する内周円弧面2a及びローラ転走面3aとローラ転走面13aとの間に保持され、
上記方向転換路15はブロック本体部16と一体的に成型された内周側半部15a及びアーチ状に湾曲した案内ピース18を含み、この方向転換路15は側蓋17内に形成され、
上記戻し通路14は、金属ブロック部16aと一体的に接合された樹脂部16bによって構成され、
上記側蓋17は、上記ブロック本体部16の軸方向両端面にボルトによって固定され、方向転換路15の内周側半部15aと対応する外周側半部15bが形成され、さらに、
これらの方向転換路15、戻し通路14及び側蓋17により樽形ローラ8が無限循環移動する、ローラ案内装置1。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.発明の対比

本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「軌道レール3」は、その機能からみて、本願補正発明の「ガイドウェイ」に相当し、以下同様に、「ブロック本体部16」は「スライダ本体」に、「樽形ローラ列9,10,11を構成する樽形ローラ8」は、樽形ローラ列9,10,11が全部で六列あり、樽形ローラ8はローラの一種であるから、「六列型循環ローラ式回転体」に、「ローラ案内装置1」は「ローラ式リニアガイドウェイユニット」に、それぞれ相当する。また、引用発明の「U字状の方向転換路15」も本願補正発明の「六つの還流方向転換素子」も、ともに「六つの還流方向転換手段」といえるものであり、また同様に、「無負荷の戻し通路14」も「六つの還流管」も、ともに「六つの還流手段」といえるものである。さらに、引用発明の「上記ブロック本体部16の軸方向両端面にボルトによって固定される側蓋17」は、図2の記載を参酌すると、ブロック本体部16の軸方向両端に二つあり、複数のボルトによって固定される部材であるから、本願補正発明の「二つのエンドカバーおよび複数の締付素子」に相当する。
また、引用発明の軌道レール3が、「左右側面に断面円弧状で長手方向に延びる凹部2を備え」ることは、本願補正発明のガイドウェイが、「長条形の構造で、その断面の腰部が頭部および底部より狭く形成され」ることに実質的に相当する。さらに、引用発明の「樽形ローラ8が転動するための内周円弧面2a及びローラ転走面3a」も本願補正発明の「ローラが回転するための斜面」も、ともに「ローラが回転するための摺動面」といえるものである。
さらに、引用発明の「上記樽形ローラ8が無限循環移動するための無負荷域の戻し通路14」は、図1及び図3の記載を参酌すると、少なくとも六つの樽形ローラ8が無限循環移動するために、上列、中列、及び下列に設けられた孔状の通路であるから、本願補正発明の「少なくとも六つのローラが循環し還流するための上列、中列、および下列の通孔」に実質的に相当する。また、引用発明の「上記樽形ローラ8を転動させるためのローラ転走面13a,13a」も本願補正発明の「六つのローラを回転させるための斜面」も、ともに「六つのローラを回転させるための摺動面」といえるものである。さらに、引用発明の、この樽形ローラ8が転動するローラ転走面13aは、上記軌道レール3の内周円弧面2a及びローラ転走面3aに「対向」することは、本願補正発明の、このローラが回転する斜面は、前記ガイドウェイの回転斜面に「対応」することに相当し、以下同様に、「樽形ローラ列9,10,11のローラ循環経路方向は樽形ローラ8の中心軸と直交」することは、「前記の各列のローラ環流経路方向はローラの長手方向と垂直」であることに、「左右側面の樽形ローラ列9,10の戻し通路14は、負荷ローラ転走路13と上下位置が入れ替わっており、上側の負荷ローラ転走路13に対応する戻し通路14が下側に、下側の負荷ローラ転走路13に対応する戻し通路14が上側に位置し、各方向転換路15は、軌道レール3の軸方向に見て十字状に交差」することは、「前記中列の通孔のローラ環流経路方向と前記下列の通孔のローラ環流経路方向とは交差」することに、それぞれ実質的に相当する。
さらに、引用発明の「上記側蓋17は、上記ブロック本体部16の軸方向両端面にボルトによって固定され」ることは、本願補正発明の「前記エンドカバーは、前記スライダ本体の両端に接続され」ることに相当する。
さらに引用発明の「樽形ローラ8が無限循環移動する」ことは、本願補正発明の「ローラが無限循環の還流運動をする」ことに相当する。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
[一致点]
「ガイドウェイ、スライダ本体、六列型循環ローラ式回転体、六つの還流方向転換手段、六つの還流手段、二つのエンドカバーおよび複数の締付素子を含むローラ式リニアガイドウェイユニットにおいて、
前記ガイドウェイは、長条形の構造で、その断面の腰部が頭部および底部より狭く形成され、ローラが回転するための摺動面が設けられ、
また、前記スライダ本体は、少なくとも六つのローラが循環し還流するための上列、中列、および下列の通孔並びに六つのローラを回転させるための摺動面を備え、このローラが回転する摺動面は、前記ガイドウェイの回転摺動面に対応し、前記の各列のローラ環流経路方向はローラの長手方向と垂直であり、前記中列の通孔のローラ環流経路方向と前記下列の通孔のローラ環流経路方向とは交差し、
前記六列型循環ローラは、それぞれ両対応する回転摺動面に保持され、
前記エンドカバーは、前記スライダ本体の両端に接続され、さらに
これらの還流方向転換手段、還流手段および両エンドカバーによりローラが無限循環の還流運動をする、ローラ式リニアガイドウェイユニット。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明では、明確には特定されていないが、本願明細書の実施例及び図面を参酌すると、六列型循環ローラ式回転体が、一般的な円筒形のローラであることにより、ガイドウェイ及びスライダ本体に設けられる摺動面が、「斜面」であるのに対して、引用発明では、樽形ローラ8であることにより、軌道レール3及びブロック本体部16に設けられる摺動面が、上記樽形ローラ8の外周円弧とほぼ同一曲率の円弧形状となっている「内周円弧面2a」、「ローラ転走面3a」及び「ローラ転走面13a」である(上記記載事項(ア)の段落【0017】を参照)点。

[相違点2]
本願補正発明では、ガイドウェイは、「頭部の右上方、右下方、左上方、左下方および底部の右上方、左上方のそれぞれに」ローラが回転するための斜面が設けられるのに対して、引用発明では、軌道レール3は、「上記凹部2及び上記軌道レール3の上面のそれぞれに」樽形ローラ8が転動するための内周円弧面2a及びローラ転走面3aが設けられる点。

[相違点3]
本願補正発明は、「複数のローラ保持素子」を含み、「前記ローラ保持素子は、スライダユニットとスライドウェイとを分離する時、ローラがスライダユニットから落ちないように保護し」ているのに対して、引用発明は、そのような機能を有する「複数のローラ保持素子」に相当する構成を備えているかどうか明らかでなく、実施の形態では、「樽形ローラ8の軸方向両端を案内する案内壁13b」(上記記載事項(ア)の段落【0016】を参照)を備えているにとどまる点。

[相違点4]
「六つの還流方向転換手段」に関し、本願補正発明は、「六つの還流方向転換素子」を含み、「前記還流方向転換素子は内方向転換素子および外方向転換素子を含み、該外方向転換素子の外側にそれぞれ円弧状の回転路面を設け、前記外方向転換素子の内側に内方向転換素子に対向する円弧状の回転路面を設け、この還流方向転換素子がそれぞれスライダの両端に設けられ、ローラを案内して回転方向を変更させ」ているのに対して、引用発明は、「U字状の方向転換路15」を備え、「上記方向転換路15はブロック本体部16と一体的に成型された内周側半部15a及びアーチ状に湾曲した案内ピース18を含み、この方向転換路15は側蓋17内に形成され」ている点。

[相違点5]
「六つの還流手段」に関し、本願補正発明は、「六つの還流管」を含み、「前記の還流管は、中空の構造で、スライダ本体の通孔中に埋められ、ローラの還流に用いられ」るのに対して、引用発明は、「無負荷の戻し通路14」を備え、「上記戻し通路14は、金属ブロック部16aと一体的に接合された樹脂部16bによって構成され」ている点。

[相違点6]
本願補正発明では、エンドカバーは、「その上に六つの還流方向転換素子に対応する円弧状の曲面が設けられ」るのに対して、引用発明では、側蓋17は、「方向転換路15の内周側半部15aと対応する外周側半部15bが形成され」る点。

[相違点7]
本願補正発明は、「圧縮負荷強化型」ローラ式リニアガイドウェイユニットであるのに対して、引用発明は、「圧縮負荷強化型」との特定のないローラ案内装置1である点。

4.当審の判断

(1)相違点1について

ローラ式リニアガイドウェイユニットの技術分野において、円筒形のローラ及び樽形ローラは、ともに一般的に用いられる回転体であって、円筒形のローラを用いた場合に、ガイドウェイ及びスライダ本体に相当する部材に設けられる摺動面を、それぞれ斜面とすることは、本願出願前に当業者にとって周知の技術である(例えば、特開昭63-53314号公報(本願明細書中に開示された米国特許第4715729号明細書(特許文献3)のパテントファミリー)の第2図を参照)。
そして、引用発明においては、エッジロードを緩和するために、樽形ローラ8を用いるとともに、特に、ガイドウェイに相当する軌道レール3の凹部2に設けられる摺動面を、内周円弧面2aとしたものであるが、当業者であれば、円筒形のローラを用いるか、又は、樽形ローラを用いるかは、エッジロードの問題を含めて支持する対象物の負荷条件や運転条件を総合的に判断して適宜選択し得るところであるから、引用発明において、樽形ローラ8に代えて円筒形のローラにするとともに、上記周知の技術を適用して、軌道レール3の凹部2及びブロック本体部16に設けられる摺動面を、上記相違点1に係る本願補正発明の構成と同じ「斜面」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。(なお、軌道レール3の上面のローラ転走面3aを斜面とすることについては、下記「(2)相違点2について」で検討する。)

(2)相違点2について

上記「(1)相違点1について」で検討したように、引用発明において、上記周知の技術を適用して、軌道レール3の凹部2に設けられる摺動面を、上記相違点1に係る本願補正発明の構成と同じ「斜面」としたものは、上記相違点2に係る本願補正発明の構成のうちの、ガイドウェイは、「頭部の右下方、左下方および底部の右上方、左上方のそれぞれに」ローラが回転するための斜面が設けられることと実質的に同じ構成になるので、ここでは、上記相違点2に係る本願補正発明の構成のうちの残りの、「頭部の右上方、左上方のそれぞれに」ローラが回転するための斜面が設けられることについて検討する。
回転体としてローラ又はボールを用いた六列型循環回転体を含む回転体式リニアガイドウェイユニットの技術分野において、ガイドウェイに対して六列の回転体を配列する基本的な形式として、ガイドウェイの頭部の右下方、左下方および底部の右上方、左上方に加えて頭部の右上方及び左上方にその摺動面を設けることは、本願出願前に当業者にとって周知の技術である(例えば、米国特許第5672011号明細書(本願明細書中に開示された特許文献5)のFig.1(パテントファミリー:特表平6-510356号公報)、特開平5-99225号公報の図3、を参照)。
そうすると、引用発明において、樽形ローラ8に代えて円筒形のローラを採用するとともに、上記周知の技術に例示した六列の回転体を配列する基本的な形式を適用して、引用発明の軌道レール3の上面に設けられるローラ転走面3aに代えて、ガイドウェイの頭部に相当する部分の右上方、左上方のそれぞれにローラが回転するための斜面を設けることにより上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について

ローラ式リニアガイドウェイユニットは、スライダユニットとスライドウェイとを分離する時、ローラがスライダユニットから落ちてバラバラになったり破損したりすることがないようにしておくことは、当業者が設計上当然考慮すべきことであるというべきところ、ローラ式リニアガイドウェイユニットの技術分野において、「複数のローラ保持素子」を含み、「前記ローラ保持素子は、スライダユニットとスライドウェイとを分離する時、ローラがスライダユニットから落ちないように保護」することは、本願出願前に当業者にとって周知の技術(例えば、特開昭60-143225号公報の第4ページ左下欄第11行?右下欄第5行及び第12図、特開昭62-63216号公報の第4ページ右上欄第1?11行及び第6図、特開昭62-159811号公報の第2ページ右下欄第3?6行及び第1図、を参照)であって、本願補正発明において上記機能を奏する具体的構成も特定されていないことに照らせば、引用発明に上記周知の技術を適用して、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)相違点4について

ローラ式リニアガイドウェイユニットの技術分野において、「還流方向転換素子」を含み、「前記還流方向転換素子は内方向転換素子および外方向転換素子を含み、該外方向転換素子の外側にそれぞれ円弧状の回転路面を設け、前記外方向転換素子の内側に内方向転換素子に対向する円弧状の回転路面を設け、この還流方向転換素子がそれぞれスライダの両端に設けられ、ローラを案内して回転方向を変更させ」ることは、ローラをどのような配列で循環させるかに応じて当業者が適宜採用する周知の技術である(例えば、特開2006-144840号公報の図5、図6記載の内周スペーサ45,46、特開2005-172027号公報の図12、図13記載の第1のリターンガイド60及び第2のリターンガイド70、を参照)から、六つある引用発明のU字状の方向転換路15に上記周知の技術を適用して、上記相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(5)相違点5について

ローラ式リニアガイドウェイユニットの技術分野において、「還流管」を含み、「前記の還流管は、中空の構造で、スライダ本体の通孔中に埋められ、ローラの還流に用いられ」ることは、本願出願前に当業者にとって周知の技術である(例えば、上記特開2006-144840号公報の図2記載のパイプ6、特開2005-201361号公報の図1、図5、図6記載のスリーブ11、を参照)から、六つある引用発明の無負荷の戻し通路14に上記周知の技術を適用して、上記相違点5に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(6)相違点6について

上記「(4)相違点4について」で検討したように、六つある引用発明のU字状の方向転換路15に上記周知の技術を適用した場合に、引用発明の側蓋17に六つの還流方向転換素子に対応する円弧状の曲面を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(7)相違点7について

刊行物1の上記記載事項(イ)には、「上方からの荷重に対する負荷能力が大きい。」との記載があり、当該記載の技術的意味は、上記相違点7に係る本願補正発明の「圧縮負荷強化型」と実質的に同じであるといえるから、上記相違点7は、「圧縮負荷強化型」との特定が明示的にあるかないかの差異であり、実質的な相違点ではない。

(8)作用効果について

本願補正発明が奏する作用効果は、いずれも引用発明及び上記各周知の技術から当業者が予測できる程度のものであり、引用発明に上記各周知の技術を寄せ集めたことにより新たな効果が生じたものでもない。

(9)まとめ

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び上記各周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(10)審判請求人の主張について

審判請求人は、平成21年9月25日付けで提出した審判請求書の請求の理由において、本願補正発明は、「ガイドウェイ(スライドウェイ)(1)は、長条形の構造で、その断面の腰部が頭部および底部より狭く形成され、頭部の右上方、右下方、左上方、左下方および底部の右上方、左上方のそれぞれにローラが回転するための斜面(11-16)が設けられていること」によって、「ガイドウェイに垂直方向荷重または水平方向の荷重が作用したときに、斜面に均一に荷重を分布させることができる。」のに対して、刊行物1に記載された発明のローラ案内装置は、「軌道レール3の頭部上面の左右側にローラ8を受ける平面を、軌道レール3の頭部の左右下側にローラ8を受ける曲面を、軌道レール3の底部の左右上側にローラ8を受ける曲面をそれぞれ設けている。」ので、「移動ブロック(スライダ)7が上から下方へ垂直荷重を受けたとき、軌道レール(ガイドウェイ)3の頭部上面の左右側平面(頭部の左右下方の曲面を除く)にはローラを介して反力が発生し、また、底部の左右上方の曲面にはローラを介して反力が発生する。その結果、上列および下列のローラは、不均一な荷重を受けることになる。従って、上下の2列の各ローラは接触応力の疲労による剥離の発生時機が異なり、ローラ案内装置(ガイドウェイユニット)の使用寿命が短縮し、ローラの弾性変形量も大きくなり、ローラの剛性が低下する。
一方、移動ブロック(スライダ)7が左横から水平荷重を受けたとき、軌道レール(ガイドウェイ)3の頭部の左下方の曲面(上面の左右平面を除く)にはローラを介して反力が発生し、底部の左上方の曲面にはローラを介して反力が発生する。軌道レール(ガイドウェイ)3の頭部の左右平面上にあるローラは水平荷重を負担しないので、水平荷重に対する両反力が垂直荷重に対する両反力よりも大きくなり、ローラが受ける荷重も大きくなる。その結果、疲労による剥離の発生時機が大幅に短縮され、軌道レールの使用寿命が低減され、ローラの弾性変形量も大きくなり、剛性が低下する。」(「6.」、「7.」及び「9.」の項参照)ことなどを主張するとともに、当審における審尋に対する平成22年4月28日付けの回答書(受付番号:51000904745)においても同趣旨の主張をしている。
しかしながら、上記主張は、ガイドウェイに対する六列の回転体がどのように配列されているかという形式の違いに基づくものであるところ、ガイドウェイの頭部の右下方、左下方および底部の右上方、左上方に加えて頭部の右上方及び左上方にその摺動面を設けることは、本願出願前に当業者にとって周知の技術であることは上記4.(2)に説示したとおりであって、引用発明に当該周知の技術を適用したことによって、請求人が主張するとおり、本願補正発明が「ガイドウェイに垂直方向荷重または水平方向の荷重が作用したときに、斜面に均一に荷重を分布させることができる。」という効果を奏するものだとしても、当業者が予測できる程度のものである。また、上記相違点(1)?(7)は、周知の技術を寄せ集めたものであって機能的又は作用的に関連して新たな機能を奏するというものではない。
よって、審判請求人の主張は採用できない。

5.むすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【3】本願発明について

1.本願発明

平成21年9月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成21年4月24日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ガイドウェイ、スライダ本体、六列型循環ローラ式回転体、複数のローラ保持素子、六つの還流方向転換素子、六つの還流管、二つのエンドカバーおよび複数の締付素子を含む圧縮負荷強化型ローラ式リニアガイドウェイユニットにおいて、
前記ガイドウェイは、長条形の構造で、その断面の腰部がその頭部および底部より狭く形成され、頭部の右上方、右下方、左上方、左下方および底部の右上方、左上方のそれぞれにローラが回転するための斜面が設けられ、
また、前記スライダ本体は、少なくとも六つのローラが循環し還流するための通孔及び六つのローラを回転させるための斜面を備え、このローラが回転する斜面は、前記ガイドウェイの回転斜面に対応し、
前記六列型循環ローラは、それぞれ両対応する回転斜面に保持され、また前記ローラ保持素子は、スライダユニットとスライドウェイとを分離する時、ローラがスライダユニットから落ちないように保護し、
前記還流方向転換素子は内方向転換素子および外方向転換素子を含み、該外方向転換素子の外側にそれぞれ円弧状の回転路面を設け、前記外方向転換素子の内側に内方向転換素子に対向する円弧状の回転路面を設け、この還流方向転換素子がそれぞれスライダの両端に設けられ、ローラを案内して回転方向を変更させ、
前記の還流管は、中空の構造で、スライダ本体の通孔中に埋められ、ローラの還流に用いられ、
前記エンドカバーは、前記スライダ本体の両端に接続され、その上に六つの還流方向転換素子に対応する円弧状の曲面が設けられ、さらに
これらの還流方向転換素子、還流管および両エンドカバーによりローラが無限循環の還流運動をする、圧縮負荷強化型ローラ式リニアガイドウェイユニット。」

2.引用刊行物とその記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1とその記載事項は、上記【2】2.に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、上記【2】で検討した本願補正発明から、少なくとも六つのローラが循環し還流するための通孔についての限定事項である「上列、中列、および下列の通孔」との事項を省くとともに、「前記の各列のローラ環流経路方向はローラの長手方向と垂直であり、前記中列の通孔のローラ環流経路方向と前記下列の通孔のローラ環流経路方向とは交差し」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、審判請求時の手続補正によってさらに構成を限定的に減縮した本願補正発明が、上記【2】3.及び【2】4.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び上記各周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び上記各周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、刊行物1に記載された発明及び上記各周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2010-08-17 
結審通知日 2010-08-24 
審決日 2010-09-13 
出願番号 特願2006-174599(P2006-174599)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16C)
P 1 8・ 121- Z (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西尾 元宏岡▲さき▼ 潤鳥居 稔  
特許庁審判長 川上 溢喜
特許庁審判官 大山 健
常盤 務
発明の名称 圧縮負荷強化型ローラ式リニアガイドウェイユニット  
代理人 下坂 スミ子  

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