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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1231273
審判番号 不服2008-6500  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-17 
確定日 2011-02-01 
事件の表示 特願2000-555145「ソフトウェア製品の実行の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月23日国際公開、WO99/66387、平成14年 6月25日国内公表、特表2002-518727〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成10年6月12日を国際出願日とする出願であって、平成19年4月27日付けで拒絶理由通知がなされ、同年11月15日付けで手続補正がなされたが、同年12月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成20年3月17日付けで審判請求がなされるとともに、同年4月15日付けで手続補正がなされたものである。そして、平成21年3月13日付けで審査官から前置報告がなされ、平成22年2月24日付けで当審より審尋がなされたものである。

平成20年4月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされているので、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。
そして、本件補正は、平成19年11月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲についてする補正であって、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)を目的とするものである。

よって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年4月15日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「コンピュータプログラム実行の制御方法であって、
1つのプログラムが公開部分と秘密部分との2つの部分に分割されており、
公開部分は第1の処理手段のメモリ内に置かれており、
秘密部分は、第1の処理手段に接続されるための第2の処理手段の媒体上に置かれている状態において、
前記第2の処理手段とは、マイクロプロセッサと、秘密データを保持する為のメモリ空間とを有する安全モジュールを備えるスマートカードであり、
以下から成るステップを有することを特徴とする、コンピュータプログラム実行の制御方法。
a)第1の処理手段が、ユーザーによって始動される外部信号の関数のパラメータ/変数を、第2の処理手段へ伝送する。
b)第2の処理手段が、受信した前記パラメータ/変数の幾つかを実施することにより、前記プログラムの少なくとも一部を実行する。
c)前項b)の実行の結果を、第2の処理手段が第1の処理手段へ伝送する。
d)第1の処理手段によって実現される実行において、第1の処理手段が前記の結果の幾つかを利用する。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-24639号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「2.特許請求の範囲
CPUとメモリを内蔵し、前もって計算機本体のプログラムの一部分を内部に保存し、計算機本体にセットされた時、本体のプログラムで処理されたデータを受け取り、そのデータを内部で処理し、処理結果を計算機本体に送り、引き続き本体のプログラムがデータを処理して所望の結果を得ることができるプログラム盗用防止カード。」(1頁特許請求の範囲欄)

(イ)「3.発明の詳細な説明
〔発明の技術分野〕
この発明はプログラムの盗用、コピー防止に関するものである。
〔発明の技術的背景とその問題点〕
近年、プログラムをコピーし販売あるいは盗用する事件が多く、ソフト著作権問題を引き起こしている。これは本来、プログラム実装媒体の内部を見れない様にするべきものである。内部の見えない媒体にプログラムを入れ、その媒体内でそのプログラムが実行され結果のみ媒体外に出てくるものが望ましい。かつ、その媒体が個人が保存できるべく十分小さなものであることが望ましい。しかしながら、現在、CPU及びメモリを内蔵したカードが有るものの、記憶容量が小さく、大きなプログラムを保持できない。
〔発明の目的〕
この発明は上記の問題点を解決すべく考案されたもので、計算機本体のプログラムの一部分をカード内に保持させ、全体プログラムのキーとしてカードを用いるものである。
〔発明の概要〕
本体のプログラムの一部分をカード内に保持し、本体のプログラムからデータを受け、カード内で保持されているプログラムで処理し、本体のプログラムに処理結果を返すカードである。
そのカードを持たないとプログラム全体を実行できない。
〔発明の効果〕
カードを持たないとプログラム全体を実行させることができず、かつ、カード内のプログラムを、破壊することなしに見ることは困難である。したがって、カード保管者以外はプログラム実行ができず、また、カード内に暗証check機能を持たせれば、カードを盗まれても,プログラムをコピーされる可能性は殆ど不可能である。
〔発明の実施例〕
以下この発明の一実施例を図面に従い説明する。第1図は1カード基盤であり、カード内には、プログラム部2、メモリー部3、CPU4から成るチップが埋め込まれている。メモリー部には、暗証番号等と供に、カード内でプログラムを実行するために必要なデータが記憶されている。プログラム部2には、本体のプログラムの一部分が保持されている。例えば、本体の画面制御サブプログラムや、入出力サブプログラム等の汎用的サブプログラムをカード内に保持するのが良い。
第2図は本体のブロック図であり、カードをカードリーダー/ライター5にセットしキーボード6から暗証番号等をキーインする。
カード演算部4は、本体CPU7により起動され、メモリー3内の暗証番号などとキーインされたものとのチェックを行う。暗証番号が一致すれば本体からのデータを受けるため待ちの状態となる。本体CPU7はプログラムメモリー8内にある本体プログラムをデータメモリー9のデータを用いながら実行し、カード内プログラムが必要なデータを計算し、カードに送る。カード内ではカード内プログラムが、送られたデータを処理し、処理結果を本体にかえす。本体CPU7はその処理結果を更に処理し、所望の結果を得る。」(1頁左下欄下から9行目?2頁右上欄12行目。)

(ウ)第1図には、カードが演算部(CPU)とメモリー部とプログラム部とを備えることが記載されている。

(エ)第2図には、計算機本体が、本体CPUとカードリーダ/ライタとキーボードとプログラムメモリーとデータメモリーとを備えることが記載されている。

(イ)における記載「〔発明の技術的背景とその問題点〕
近年、プログラムをコピーし販売あるいは盗用する事件が多く、ソフト著作権問題を引き起こしている。これは本来、プログラム実装媒体の内部を見れない様にするべきものである。内部の見えない媒体にプログラムを入れ、その媒体内でそのプログラムが実行され結果のみ媒体外に出てくるものが望ましい。…しかしながら、現在、CPU及びメモリを内蔵したカードが有るものの、記憶容量が小さく、大きなプログラムを保持できない。
〔発明の目的〕
この発明は上記の問題点を解決すべく考案されたもので、計算機本体のプログラムの一部分をカード内に保持させ、全体プログラムのキーとしてカードを用いるものである。」、及び(イ)における記載「本体のプログラムの一部分をカード内に保持し、本体のプログラムからデータを受け、カード内で保持されているプログラムで処理し、本体のプログラムに処理結果を返すカードである。」からすると、引用文献にはコンピュータプログラム実行の制御方法であって、1つのプログラムを、カード内に保持したプログラムの一部分(以下、「カード内プログラム」という)であって、外部から見ることが困難なカード内プログラムと計算機本体に保持した、前記カード内プログラムを除いた残りのプログラム(以下、「計算機本体内プログラム」という)との2つの部分に分割することが記載されていると解される。

(イ)における記載「本体CPU7はプログラムメモリー8内にある本体プログラムをデータメモリー9のデータを用いながら実行し」からすると、前記計算機本体内プログラムは計算機本体のプログラムメモリー内に置かれていると解される。

(イ)における記載「カード内には、プログラム部2、メモリー部3、CPU4から成るチップが埋め込まれている。メモリー部には、暗証番号等と供に、カード内でプログラムを実行するために必要なデータが記憶されている。プログラム部2には、本体のプログラムの一部分が保持されている。」からすると、前記カード内プログラムは、計算機本体に接続されるためのカードのプログラム部上に置かれていると解される。

(イ)における記載「カード保管者以外はプログラム実行ができず、」、(イ)における記載「カード内には、プログラム部2、メモリー部3、CPU4から成るチップが埋め込まれている。メモリー部には、暗証番号等と供に、カード内でプログラムを実行するために必要なデータが記憶されている。プログラム部2には、本体のプログラムの一部分が保持されている。」及び(イ)における記載「カード演算部4は、本体CPU7により起動され、メモリー3内の暗証番号などとキーインされたものとのチェックを行う。暗証番号が一致すれば本体からのデータを受けるため待ちの状態となる。」からすると、前記カードとは、CPUと、暗証番号を保持する為のメモリー部と、プログラムを保持するプログラム部とを有し、キーインされた暗証番号と前記メモリー部に保持する暗証番号とが一致する場合に、前記プログラム部に保持するカード内プログラムを実行可能とする手段(以下「カード内プログラム保護手段」という)を備えるカードであると解される。

(イ)における記載「例えば、本体の画面制御サブプログラムや、入出力サブプログラム等の汎用的サブプログラムをカード内に保持するのが良い。」からすると、前記カード内プログラムは、計算機本体の入出力サブプログラムである態様を含む。

(イ)における記載「本体CPU7はプログラムメモリー8内にある本体プログラムをデータメモリー9のデータを用いながら実行し、カード内プログラムが必要なデータを計算し、カードに送る。カード内ではカード内プログラムが、送られたデータを処理し、処理結果を本体にかえす。本体CPU7はその処理結果を更に処理し、所望の結果を得る。」からすると、前記プログラム実行の制御は、以下のステップ、すなわち、計算機本体が、データを、カードへ伝送するステップと、カードが、受信した前記データを処理することにより、前記プログラムの少なくとも一部(すなわち、入出力サブプログラム)を実行するステップと、前記ステップの実行の処理結果を、カードが計算機本体へ伝送するステップと、計算機本体によって実現される実行において、計算機本体が前記の処理結果を更に処理し、所望の結果を得るステップと、を含むと解される。

よって、(ア)及び(イ)における記載及びその関連する図面からすると、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。

コンピュータプログラム実行の制御方法であって、
1つのプログラムが、カード内に保持したプログラムの一部分(以下、「カード内プログラム」という)であって、外部から見ることが困難なカード内プログラムと計算機本体に保持した、前記カード内プログラムを除いた残りのプログラム(以下、「計算機本体内プログラム」という)との2つの部分に分割されており、
計算機本体内プログラムは計算機本体のプログラムメモリー内に置かれており、
カード内プログラムは、計算機本体に接続されるためのカードのプログラム部上に置かれている状態において、
前記カードとは、CPUと、暗証番号を保持する為のメモリー部と、プログラムを保持するプログラム部とを有し、キーインされた暗証番号と前記メモリー部に保持する暗証番号とが一致する場合に、前記プログラム部に保持するカード内プログラムを実行可能とする手段(以下「プログラム保護手段」という)を備えるカードであり、
前記カード内プログラムは、計算機本体の入出力サブプログラムであって、
以下から成るステップを有することを特徴とする、コンピュータプログラム実行の制御方法。
a)計算機本体が、データを、カードへ伝送する。
b)カードが、受信した前記データを処理することにより、前記プログラムの少なくとも一部(すなわち、入出力サブプログラム)を実行する。
c)前項b)の実行の処理結果を、カードが計算機本体へ伝送する。
d)計算機本体によって実現される実行において、計算機本体が前記の処理結果を更に処理し、所望の結果を得る。

3.対比
ここで、本願発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「カード内プログラム」は、外部から見ることが困難なことから、本願発明の「秘密部分」に相当する。
引用発明の「計算機本体内プログラム」は、計算機本体に保持していることから、本願発明の「公開部分」に相当する。
引用発明の「計算機本体」及び「プログラムメモリー」は、それぞれ本願発明の「第1の処理手段」及び「メモリ」に相当する。
引用発明の「カード」、「プログラム部」、及び「CPU」は、それぞれ本願発明の「第2の処理手段」、「第2の処理手段の媒体」、及び「マイクロプロセッサ」、に相当する。
引用発明の「暗証番号」は一種の秘密鍵であり、「カード内プログラム」は外部から見ることが困難なものであるから、引用発明の「暗証番号とカード内プログラム」は、本願発明の「秘密データ」に相当する。
引用発明の「暗証番号を保持する為のメモリー部と、プログラムを保持するプログラム部」は、本願発明の「秘密データを保持する為のメモリ空間」に相当する。
引用発明の「プログラム保護手段」は、CPUと、暗証番号を保持する為のメモリー部と、プログラムを保持するプログラム部とを有し、キーインされた暗証番号と前記メモリー部に保持する暗証番号とが一致する場合に前記カード内プログラムを実行可能とすることから、本願発明の「安全モジュール」に相当する。
引用発明の「処理する」、及び「処理結果」は、それぞれ本願発明の「実施する」、及び「結果」に相当する。
引用発明の「計算機本体が前記の処理結果を更に処理し、所望の結果を得る」ことは、本願発明の「第1の処理手段が前記の結果の幾つかを利用する」に相当する。

引用発明の「カード」はCPUとメモリー部とプログラム部とを備えたものであるから、本願発明の「スマートカード」に相当する。
引用発明の「データ」と本願発明の「ユーザーによって始動される外部信号の関数のパラメータ/変数」とは、ともに、第1の処理手段が、第2の処理手段へ伝送するデータであって、第2の処理手段が、受信した前記データを実施することにより、前記プログラムの少なくとも一部を実行する、データである点で共通する。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また一応相違している。

(一致点)
コンピュータプログラム実行の制御方法であって、
1つのプログラムが公開部分と秘密部分との2つの部分に分割されており、
公開部分は第1の処理手段のメモリ内に置かれており、
秘密部分は、第1の処理手段に接続されるための第2の処理手段の媒体上に置かれている状態において、
前記第2の処理手段とは、マイクロプロセッサと、秘密データを保持する為のメモリ空間とを有する安全モジュールを備えるカードであり、
以下から成るステップを有することを特徴とする、コンピュータプログラム実行の制御方法。
a)第1の処理手段が、データを、第2の処理手段へ伝送する。
b)第2の処理手段が、受信した前記データを実施することにより、前記プログラムの少なくとも一部を実行する。
c)前項b)の実行の結果を、第2の処理手段が第1の処理手段へ伝送する。
d)第1の処理手段によって実現される実行において、第1の処理手段が前記の結果の幾つかを利用する。

(相違点)
第1の処理手段が、第2の処理手段へ伝送する「データ」について、本願発明は、「ユーザーによって始動される外部信号の関数のパラメータ/変数」であるのに対して、引用発明の「データ」はユーザーによって始動される外部信号の関数のパラメータ/変数であるかどうか、不明な点。

4.判断
上記相違点について判断する。
入出力サブプログラムが、ユーザによるマウス、キーボード等の入力装置の操作やデータ入力を受けて、該入力情報をアプリケーションに渡すものであることは、当業者にとって周知の事項(以下、「周知技術」という)である。(例えば、特開平4-238534号公報の段落【0026】における記載「ここで項目単位の画面入出力制御を実現するために、画面の入出力を実際に行う画面入出力プログラム105は、入力装置204からの操作やデータ入力により、カーソルが項目の入力領域を抜けたとき、または入力データが対応する項目の入力領域の全てに入力された場合、項目に入力されたデータと入力された項目名称402を画面制御部品101に引き渡す…。また、画面へデータを出力する際には、項目名称402を指定することによってこの項目のフィールドがある位置にカーソルを位置付けることができる。」、及び特開平6-289982号公報の段落【0012】における記載「本発明によって構成された描画入出力プログラムは、マウス、キーボード、あるいは、タブレットからの情報を受け付け、イベント情報としてアプリケーションへ受け渡す。」等参照。)
してみると、引用発明の「カード内プログラム」は、計算機本体の入出力サブプログラムであることから、計算機本体から、前記カード内プログラムに渡されるデータを、ユーザによるマウス、キーボード等の入力装置の操作やデータ入力によるデータとすること、すなわち、ユーザーによって始動される外部信号の関数のパラメータ/変数とすることは、当業者であれば、容易に想到し得たことである。
よって、相違点は格別のものではない。

上記で検討したごとく、相違点は格別のものではなく、そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

したがって、本願発明は、引用文献に記載された発明及び前記周知技術に基づいて、容易に発明できたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-13 
結審通知日 2010-08-24 
審決日 2010-09-07 
出願番号 特願2000-555145(P2000-555145)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩崎 志保鳥居 稔  
特許庁審判長 赤川 誠一
特許庁審判官 吉岡 浩
宮司 卓佳
発明の名称 ソフトウェア製品の実行の制御方法  
代理人 太田 恵一  

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