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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D
管理番号 1231292
審判番号 不服2010-80  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-04 
確定日 2011-01-14 
事件の表示 特願2002-562494「中空加工部材を変形する方法及び成形機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月15日国際公開、WO02/62500、平成16年 6月24日国内公表、特表2004-518537〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
この出願は、平成13年12月21日(パリ条約による優先権主張2000年12月29日、オランダ王国)を国際出願日とする特許出願であって、平成21年9月1日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年1月4日に拒絶査定を不服とする審判が請求されたものであって、その請求項1乃至11に係る発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「少なくとも1つの開放端部を有する中空加工部材(3)を変形する方法であって、加工部材(3)がクランプ装置(2)内で締め付けられ、少なくとも一つの成形工具(6,6)が加工部材(3)の壁に接触して配置され、該加工部材及び該成形工具は相対的に軸の周りを回転され、加工部材(3)は該成形工具(6,6)によって変形されるところの方法において、該成形工具(6,6)を相対的に動かす手段(8-12)による変形操作の少なくとも一部の間に、軸(5)の周りでの加工部材(3)の変形された部分又は変形されるべき部分の回転周波数あるいはその倍数に実質的に等しい周波数で、該成形工具(6,6)が軸(5)に対して前後に動かされうること、及び加工部材(3)の変形された部分の中心軸が加工されていない部分に対して角度を持って延びるまたは偏心して位置づけられるように加工部材(3)が変形されることを特徴とする方法。」

2.引用例記載事項
これに対して、この出願の優先日前に頒布された刊行物であって原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-64832号公報(以下「引用例」という。)には、以下のとおり記載されている。
(1) 7欄11行-8欄23行
「【0026】触媒容器1は、直径140mm、厚さ1.5mmのステンレスのパイプを成形したものが用いられる。この触媒容器は、軸方向の長さが150mmの本体部11と、この本体部11の両端に軸方向の長さが86mmの偏心したロート状の側端部13が形成されている。この側端部13は、触媒容器1の本体部11と本体部より径の短い排ガス管とが接続できるように排ガス管との接合端15側の内径が短くなるように、徐々に内径が短くなっているとともに、本体部11を形成するパイプの中心軸と、排ガス管との接合端の中心軸が35mmずれている。なお、この側端部13の接合端15は、本体部11の両端において対称な位置に開口している。すなわち、図2に示されるように、本体部11の両端に形成された二つの側端部13の中心軸の延長線が重ならないように形成されている。
【0027】本実施例のモノリス触媒コンバータは、モノリス触媒3を保持する本体部11の端部12が軸方向と直交しているため、触媒容器1に無駄な空間が形成されず、軽量で熱容量が小さくなっている。また、接合端15は本体部11の中心軸の延長線上に形成されていないため、パイプ経路に自由に合わせることができる。
(モノリス触媒コンバータの製造)モノリス触媒コンバータの製造は、モノリス触媒を触媒容器に成形されるステンレスパイプに挿入した後に、このパイプをスピニング絞り加工装置により絞り加工することで製造される。ここで、スピニング絞り加工装置は、図3の模式図に示される構造をしている。すなわち、モーター52と連動して回転するチャック51と、チャック51を垂直方向に移動させる油圧シリンダ53と、チャック51に装着されたパイプ10を変形させる加工ローラー61と、加工ローラー61を軸方向および径方向に移動させる油圧シリンダ62、62と、から構成される。
【0028】すなわち、まず、周面に保持部材とモノリスシール材とが巻き付けられた、直径129mm、軸方向の長さ140mmの丸棒状にあらかじめ形成されたモノリス触媒3を、触媒容器1に成形される内径が137mm、厚さ1.5mmのステンレスパイプ10に挿入した。この模様を図4に示す。つづいて、このモノリス触媒が内部に保持されたステンレスパイプの一端がスピニング絞り加工装置のチャック51にパイプ10の中心軸が水平に保持されるように固定される。この固定に用いられたチャック51は、モーター52の回転軸と連結され、モーター52の回転と連動してチャック51も回転するようになっている。
【0029】つぎに、ステンレスパイプ10がチャック51に固定された状態で、モーター52を700rpmで回転させる。このモーター52の回転にともない、モーター52に連結されたチャック51が回転する。この回転しているパイプ10において側端部13の排ガス管との接合端15に加工される先端部に、加工ローラー61を押しあてて、パイプ10を変形させるへら絞り加工を行った。パイプ10に押しあてられた加工ローラー61は、パイプ10の開放端からチャック51の方向に向かって移動するとともに、パイプ10の中心軸から離れる方向である垂直方向に油圧シリンダ53により移動する。また、パイプ10も加工ローラー61の移動にともない垂直方向に移動する。加工ローラー61およびパイプ10のこの移動を繰り返すことで、徐々にパイプ10を絞り加工していく。ここで、パイプ10の中心軸とチャック51の回転軸が一致している。この加工ローラーの移動は、加工ローラーの取り付けられたブラケットを油圧シリンダ62で制御して行われた。この模様を図5に示した。」
(2) 図2
パイプの側端部(13)の接合端の中心軸が加工されていない部分に対して偏心して位置づけられるようにパイプが変形されていること。
また、上記摘記事項(1)及び図3より、パイプ(10)の中心軸と一致する回転軸でパイプ(10)が回転された状態で、加工ローラ(61)が押しあてられて、回転軸と偏心する中心軸を有する側端部(13)の接合端が形成されるものであり、そして、この接合端は、回転軸の周りに回転された際に垂直方向については回転軸に対して上下動するものであるから、回転軸の周りの接合端の回転周波数で、回転軸と加工ローラ(61)との垂直方向の間隔が制御されなければならないことは、技術常識より明らかである。

以上のとおりであるので、引用例には、次の事項が記載されていると認める。
「開放端を有するパイプ(10)を変形する方法であって、パイプ(10)がチャック(51)内で締め付けられ、加工ローラ(61)がパイプ(10)の壁に接触して配置され、該パイプ(10)は回転軸の周りを回転され、パイプ(10)は該加工ローラ(61)によって変形されるところの方法において、該加工ローラ(61)とパイプ(10)とを相対的に動かす、モータ(52)、油圧シリンダ(53)及び油圧シリンダ(62、62)等の手段による変形操作の少なくとも一部の間に、回転軸の周りでのパイプ(10)の側端部(13)の接合端の回転周波数で、加工ローラ(61)と回転軸とが垂直方向に相対的に動かされ、回転軸と加工ローラ(61)との垂直方向の間隔が制御されうること、及びパイプ(10)の側端部(13)の接合端の中心軸が加工されていない部分に対して偏心して位置づけられるようにパイプ(10)が変形される方法。」(以下「引用例記載の発明」という。)

3.対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「開放端」は、本願発明の「開放端部」に相当し、以下同様に、「パイプ」は「中空加工部材」に、「チャック」は「クランプ装置」に、「加工ローラ」は「成形工具」に、「回転軸」は「軸」に、「該パイプは回転軸の周りを回転され」は「該加工部材及び該成形工具は相対的に軸の周りを回転され」に、「該加工ローラとパイプとを相対的に動かす、モータ、油圧シリンダ(53)及び油圧シリンダ(62、62)等の手段」は「成形工具を相対的に動かす手段」に、「パイプの側端部の接合端」は「加工部材の変形された部分」に、「垂直方向に」は「前後に」にそれぞれ相当することは明白である。
また、本願発明の「成形工具が軸に対して前後に動かされうること」は、成形工具と軸とが前後に相対的に動かされうるという限りにおいて、引用例記載の発明と一致しており、本願発明の「回転周波数あるいはその倍数に実質的に等しい周波数」は、回転周波数を含むものである限りにおいて、引用例記載の発明と一致している。
(1) 一致点
以上のとおりであるので、両者は、次の方法で一致している。
「少なくとも1つの開放端部を有する中空加工部材を変形する方法であって、加工部材がクランプ装置内で締め付けられ、少なくとも一つの成形工具が加工部材の壁に接触して配置され、該加工部材及び該成形工具は相対的に軸の周りを回転され、加工部材は該成形工具によって変形されるところの方法において、該成形工具を相対的に動かす手段による変形操作の少なくとも一部の間に、軸の周りでの加工部材の変形された部分の回転周波数で、該成形工具と軸とが前後に相対的に動かされうること、及び加工部材の変形された部分の中心軸が加工されていない部分に対して偏心して位置づけられるように加工部材が変形される方法。」
(2) 相違点
そして、両者は、次の点で相違している。
本願発明では、軸の周りでの加工部材の変形された部分の回転周波数あるいはその倍数に実質的に等しい周波数で、成形工具が軸に対して前後に動かされうるのに対し、引用例記載の発明では、軸の周りでの加工部材の変形された部分の回転周波数で、成形工具と軸とが前後に相対的に動かされうる点。

4.相違点についての検討
そこで、上記相違点について、以下検討する。
引用例記載の発明では、成形工具と軸とが前後に相対的に動かされ、成形工具と軸との前後の間隔が制御されうるために、成形工具を前後に動かす油圧シリンダ(62)と軸を前後に動かす油圧シリンダ(53)との二つの駆動装置が用いられている。
しかし、このような二つの部材間の間隔の制御において、一方の部材を固定し、他方の部材のみを駆動装置により動かして二つの部材間の間隔を制御することは、例示するまでもなく従来周知である。
したがって、引用例記載の発明において、油圧シリンダ(53)を駆動せずに軸を固定し、油圧シリンダ(62)のみを駆動して成形工具が軸に対して前後に動かされうるものとすることは、当業者が容易に想到することができたことである。
また、軸に対する成形工具の動きについて、その動きの周波数を、軸の周りでの加工部材の変形された部分の回転周波数の倍数に実質的に等しい周波数とすることは、変形部分に要求される断面形状に応じて適宜なされる設計的事項にすぎない。
さらに、本願発明の奏する作用効果は、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項より当業者が予測できる程度のものであって、格別のものではない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。
したがって、この出願の請求項2乃至11に係る発明について判断するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-13 
結審通知日 2010-08-18 
審決日 2010-09-06 
出願番号 特願2002-562494(P2002-562494)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 進吾高山 芳之  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 遠藤 秀明
菅澤 洋二
発明の名称 中空加工部材を変形する方法及び成形機  
代理人 松井 光夫  

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