ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B |
---|---|
管理番号 | 1231333 |
審判番号 | 不服2009-4864 |
総通号数 | 135 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-03-05 |
確定日 | 2011-02-03 |
事件の表示 | 特願2006-300786「画像読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月 1日出願公開、特開2007- 52462〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成9年6月19日に出願した特願平9-162655号の一部を平成18年11月6日に新たな特許出願としたものであって、平成21年1月27日付けでなされた拒絶査定に対して、同年3月5日付けで審判請求がなされるとともに、同年4月6日付けで手続補正書が提出され、その後、当審において、平成22年8月12日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年10月18日付けで意見書および手続補正書が提出されたものである。 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年10月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 装置本体と、 この装置本体内に設けられ、原稿に光を照射する光源を有する移動自在な第1のキャリッジと、 前記第1のキャリッジの前記光源によって光照射されて前記原稿から反射される光を所定方向に導く光学部材を有する移動自在な第2のキャリッジと、 前記第2のキャリッジの光学部材によって導かれてくる反射光を受光して前記原稿の画像を読取る画像読取手段と、 前記第1及び第2のキャリッジにおいて、前記第1及び第2のキャリッジの移動方向に直交する方向の端部に掛け渡されて、駆動されて走行することにより前記第1及び第2のキャリッジを前記原稿に沿って移動させる走行部材と、 前記装置本体内に設けられ、前記走行部材の走行方向に沿う長孔が形成された長孔形成部と、この長孔形成部に、前記走行部材の走行方向と直交する方向に折曲形成された第1の折曲部とを有することにより断面L字状を成し、前記走行部材の一端部を固定する固定ブラケットと、 この固定ブラケットの前記長孔形成部を載置する載置部と、この載置部に折曲形成され前記第1の折曲部に離間対向する第2の折曲部を有する調整ベースと、 前記長孔内に挿入されて回動操作されることにより、前記調整ベースに螺挿され、前記固定ブラケットの長孔形成部を前記調整ベースの載置部に固定し、或いは、前記長孔に沿って移動可能に保持する固定ネジと、 前記第2の折曲部に挿入され、前記第1の折曲部に螺挿され、前記長孔に挿入された前記固定ネジと共に前記固定ブラケットの移動方向を規制し、前記固定ネジにより前記固定ブラケットが移動可能に保持されている状態で回動操作されることにより、前記固定ブラケットを前記調整ベースの前記載置部に沿って移動させて前記走行部材を介して、前記第2のキャリッジを移動させることにより、原稿の面に沿う方向であってかつ前記第2のキャリッジの移動方向に直交する方向に対する前記第2のキャリッジの傾きを調整する調整ネジと、 を具備したことを特徴とする画像読取装置。」 2.引用刊行物 これに対して、当審における上記拒絶理由通知で引用した、本願出願(遡及日:平成9年6月19日)前に頒布された、 刊行物1:特開平8-179438号公報、 刊行物2:特開平3-142428号公報、 刊行物3:特開平6-142362号公報、 刊行物4:特開平1-104211号公報、 刊行物5:特開平4-364888号公報、 刊行物6:実願昭59-623号(実開昭60-112744号)のマイクロフィルム、 刊行物7:特開平8-330794号公報、 には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。 (1)刊行物1 (1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 移動可能な光学ユニットを有し、ワイヤーによって移動を行う平面走査形読取機構において、原稿を照射する光源とミラーを有する光学ユニットAと、ミラーと両端にプーリーを有する光学ユニットBと、前記光学ユニットAと前記光学ユニットBの両端に取付けられる移動のためのワイヤーと、前記ワイヤーの一端でワイヤーに張力を与える引張コイルスプリングと、前記ワイヤーの他端に固定する調整金具と、前記光学ユニットA、前記光学ユニットB、前記ワイヤー及び前記引張コイルスプリングを保持する筐体とによって構成され、前記調整金具を前記筐体に固着し調整可能とすることを特徴とするブックスキャナーのワイヤー調整機構。 【請求項2】 前記光学ユニットの移動方向に対して直角方向に、前記調整金具を動かすことができるように前記筐体に固着することを特徴とする請求項1記載のブックスキャナーのワイヤー調整機構。」 (1b)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ファクシミリ装置、コピー装置等に関し、特にブックスキャナーのワイヤー調整機構に関する。」 (1c)「【0002】 【従来の技術】従来の技術のブックスキャナーのワイヤー調整機構は、一例として特開平2-248156号公報に開示されている。従来のこの機構は、図3に示すように筐体1の上の原稿2を光源3で照射し、原稿2からの反射をミラーa5、ミラーb7、ミラーc8と折返し、図示しない読取センサーで読取る。ワイヤー15は、ドラム11に複数回巻かれていて、プーリー9a,9b,9c,9dにより保持され、ワイヤー15の両端の一方は、調整金具に固定され、他方は、引張コイルスプリング12を介して固定金具14で固定されている。 【0003】動作は、図示しない駆動部からの駆動をドラム11に伝え、ドラム11の正転及び逆転によるワイヤー15の巻取り、巻出しにより、光学ユニットA4と光学ユニットB6を固定するプーリー付きロッド16が移動し読取る。このときの光学ユニットA4,B6の移動量は、光学ユニットA4が1移動すると、光学ユニットB6が1/2移動し、読取センサーと原稿との距離を一定に保つ。 【0004】このような読取装置の光学ユニットA4や光学ユニットB6の組立調整方法は、次の通りである。光学ユニットA4は、ワイヤー15に図示しないネジなどにより平行度を調整して固定する。光学ユニットB6の平行度の調整は、まず、プーリー付きロッド16を取付け、ワイヤー15の調整金具を動かして平行度を出した後に、光学ユニットB6を組付ける。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】この従来の技術のブックスキャナーのワイヤー調整機構は、ワイヤー張架径路が複雑で、光学ユニットBの平行度の調整金具がブックスキャナー筐体内にあるために、調整が行い難かった。このため、調整を容易に行うために、光学ユニットBとプーリー付きロッドを分割して調整、組立を行わなければならず、調整工程が多く、調整、組立時間が長くかかるという欠点があった。 【0006】そこで、本発明は、前記従来の技術の欠点を改良し、ブックスキャナーの光学ユニットの平行度の調整を容易に行えるようにし、かつ、組立性の向上を図るものである。」 (1d)「【0010】 【実施例】次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例の平面図で、図2は、断面図である。この読取機構は、筐体1の中の光学ユニットA4と光学ユニッB6が移動して原稿2を読取る装置である。読取りは、光学ユニットA4に固定されている光源3により原稿2を照射し、その反射を光学ユニットA4に固定されているミラーa5、光学ユニットB6のミラーb7、ミラーc8で折返し、図示しない読取センサーで読取る。 【0011】動作は、図示しない駆動部よりドラム11,11′に伝達され、ドラム11,11′の駆動をワイヤー15,15′で光学ユニットA4と光学ユニットB6に伝える。このとき、光学ユニットA4と光学ユニットB6の移動量は、2:1で、これにより読取センサーまでの物像間距離を一定に保つ。読取るためには、光学ユニットA4と光学ユニットB6と読取センサーは、平行でなければならない。 【0012】ワイヤー15,15′の両端は、プーリー9,9′を介して一方は、引張りコイルスプリング12,12′に引掛ける。引張りコイルスプリング12,12′の一方の端部は、筐体1に引掛け、引張りコイルスプリング12,12′によってワイヤー15,15′に張力を加える。ワイヤー15,15′の他方は、光学ユニットB6に固定されているプーリー10,10′を介して、筐体1の外の調整金具13,13′に固定される。 【0013】光学ユニットA4の平行度の調整方法は、ワイヤー15,15′に金具を使用してネジ止めするときに調整する。又、光学ユニットB6の平行度の調整方法は、光学ユニットB6の位置がワイヤー15,15′の長さによって決まるため、ワイヤー15,15′を固定する調整金具13,13′をX方向に動かして、調整する。」 (1e)「【0014】 【発明の効果】以上に説明したように、本発明は、ワイヤーの調整金具を筐体の外に出すことにより光学ユニットBの平行度の調整を容易にすることができる。そして、光学ユニットBとプーリーを分割する必要性がなくなるため、一体化が可能となって組立性が向上するという効果を奏する。」 (1f)また、図1,2は次のとおり。 これら記載事項によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「移動可能な光学ユニットを有し、ワイヤーによって移動を行う平面走査形の原稿を読取る装置において、 原稿を照射する光源とミラーを有する光学ユニットAと、 反射光を折返すミラーと両端にプーリーを有する光学ユニットBと、 ミラーで折返された反射光を読み取る読取センサーと、 前記光学ユニットAと前記光学ユニットBの両端に取付けられる移動のためのワイヤーと、 前記ワイヤーの一端でワイヤーに張力を与える引張コイルスプリングと、 前記ワイヤーの他端に固定する調整金具と、 前記光学ユニットA、前記光学ユニットB、前記ワイヤー及び前記引張コイルスプリングを保持する筐体と、 によって構成され、 前記調整金具は、光学ユニットの移動方向に対して直角方向に動かすことができるように、前記筐体の外に固着され、調整金具を動かしてワイヤーの長さを調整して光学ユニットBの平行度を調整することができる、 原稿を読取る装置。」 (2)刊行物2 (2a)「[産業上の利用分野] 本発明は、光学ミラー走査系に関し、1番ミラーと2,3番ミラーの相対位置を調整する手段に関するものである。」(第1頁左下欄) (2b)「[実施例] 以下、本発明を具体化した一実施例を図面を参照して説明する。 第4図においてレンズ共役長の調整は2番ミラー8,3番ミラー9と、1番ミラー4の相対位置を調整することにより実現できることがわかる。 第2図において、ワイヤ調整ネジ18をまわすことにより2,3番ミラー用プーリ3が、1番ミラー4に近づきまたは遠ざかり、効果的に1番ミラー4と2番ミラー8,3番ミラー9の相対位置を変化させられる。 第3図にワイヤ調整金具16部の詳細を示す。ワイヤ調整ネジ18をまわすことにより本体に固定されているワイヤ固定金具17に対しワイヤ調整金具16の位置が変化しワイヤ20を引張ったりゆるめたりする。このワイヤ20はもう一方の終端でワイヤテンションバネ19に接続され、引張られたりゆるめられたりした分を吸収する。 [発明の効果] 以上詳述したことから明らかなように、本発明によれば、極めて容易に1番ミラー4と2,3番ミラー8,9の相対位置調整が可能となり、作業性、信頼性が向上する。」(第2頁右上欄?左下欄) (2c)「【図面の簡単な説明】 第1図は本発明によるワイヤ引き回し状態を示す斜視図、第2図は本発明によるワイヤ:A整部の詳細図、第3図は本発明を適用する光学系の略図、第4図は従来のワイヤ引き回し状態を示す図である。」(第2頁左下欄) (2d)第1図、第2図は次のとおり。 (3)刊行物3 (3a)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、帽子やシャツの袖部等の曲面状の布地に刺繍等の縫製を行う場合に用いるミシンの曲布張枠を駆動する曲布張枠駆動装置に関するものである。」 (3b)「【0020】前記ワイヤ支持体57は、図5及び図6に示すように、ねじ86により前記可動枠11に取付けられるX軸方向に長いワイヤ支持部材87と、この左右両端部にねじ88によりX軸方向へ微動調整可能に支持されたワイヤ掛け部材89とから構成されている。ワイヤ支持部材87の左右両端部には、ねじ91をX軸方向に微動可能とする為の長孔90が形成されている。尚、ワイヤ支持体87のねじ連結孔86aは、図4及び図6に示すように、ワイヤ支持体87が可動枠11に対して容易に着脱できるように、切欠孔とされている。このため、可動枠11に対して前後方向の移動が可能であり、駆動案内体80と枠保持部材56との締め付け後、ワイヤ支持体57のワイヤ支持部材87を可動枠11に固定する。 【0021】更に、前記ワイヤ支持部材87の前部には、図5及び図6に示すように、X軸方向に長くレール部材92が固定されている。このレール部材92は、図6及び図9に示すように、その前後部に後述する係合案内体59のローラ95の前後方向(Y軸方向)の抜け出しを防止する為の垂直壁92a,92bが折曲形成され、更に、図6に示すように、左右両端部にローラ95のX軸方向での抜け出しを防止する為のストッパ壁92cが形成されている。前記各ワイヤ掛け部材89は、図5に示すように、正面視L字形に形成され、その内端にねじ97により前記駆動ワイヤ58a,58bの一端が固定され、前記ワイヤ支持部材87の左右両端部の下面に取付けられている。 【0022】前記1対の駆動ワイヤ58a,58bは、図5に示すように、夫々の一端が前記ワイヤ掛け部材89に取付けられ、他端が互いにX状に交差して前記回動枠55の外周面の下端にビス98により取付けられている。従って、ワイヤ支持体57が、図5にて左方向へ移動すれば、ワイヤ支持体57の左端部に取付けられた駆動ワイヤ58aが左方向へ引張られ、回動枠55が左回動し、また、ワイヤ支持体57が、図5にて右方向へ移動すれば、ワイヤ支持体57の右端部に取付けられた駆動ワイヤ58bが右方向へ引張られ、回動枠55が右回動するようになっている。」 (3c)図5,図6は次のとおり。 (4)刊行物4 (4a)「次にフック部73およびワイヤーの引張り長さ調整について説明する。 フック部73には調整ネジ74係合用のネジ穴75が設けてあり、ドライブキャリッジ58にはネジ穴75と同一軸上の中心をもつ係合穴76が開けられており両穴75と76は調整ネジ74で係合している。また、フック部73はドライブキャリッジ58に対しボルト穴78を通したロックボルト77で固定されている。従ってフック部73は上辺73aと下辺73bにて挾持される。 ワイヤー引張り長さを調整する際にはロックボルト77をゆるめた後調整ネジ74を回すだけでドライブキャリッジ58とフック部73の係合位置が摺動自在に移動する。そしてロックボルト78を再びしめてフック部73を固定する。こうしてフック部73と連結しているワイヤーの引張り長さを変えしめるのである。 以上のように本実施例によれば、駆動部とワイヤー等で連結したフック部と、前記フック部と係合する係合穴を設けたドライブキャリッジと、前記フック部には、前記ドライブキャリッジとの係合位置を摺動自在ならしめる前記係合穴と調整ネジで係合するネジ穴を設けたことにより、ワイヤー等の引張り長さを調整ネジによリ微調整ができ、ワイヤーによるカップキャリッジ、フィルターキャリッジ等の相対位置を容易に行うことが可能となった。」(第3頁左下欄第1行?右下欄第7行) (4b)第4図は次のとおり。 (5)刊行物5 (5a)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は被移送体の案内機構に関する。 【0002】 【従来の技術】従来のこの種の案内機構として、例えば家庭用ミシンに着脱する刺繍枠送り装置に適用された案内機構がある(実開昭57-39877号公報,特開平2-80084号公報)。」 (5b)「【0013】図2の平面図に示すように、2本のX案内軸21,23は平行に支持される。X案内軸21は、図3の拡大平面図と、図3をA-A線で切断した断面図である図4とに示すように、底板35に立設したフレーム37に軸止め板41,43によって支持される。また、X案内軸23は、図5の拡大図と、図5をB-B線で切断した断面図である図6とに示すように、底板35に立設したフレーム39に軸の一方の端部が軸止め板45によって支持される。X案内軸23の他方の端部はフレーム39に高さ調節板49を介して支持される。高さ調節板49には、フレーム39に回動自在に支持した調節ネジ47が噛合する。つまり調節ネジ47の回動により高さ調節板49の高さが変更される。高さ調節板49の高さを変更することでX案内軸23の高さ方向の傾きの微調整がなされる。変更された高さ調節板49の位置は締めネジ51の締めつけで固定される。 【0014】(略) 【0015】駆動軸31の両側の駆動プーリ63,65にはタイミングベルト27,29が架けられる。そして、図2に示すように、タイミングベルト27,29はX案内軸21,23の内側に平行に、テンションプーリ75,77との間に架け渡される。テンションプーリ75,77は、図3および図5に示すように、プーリ支持板79,81に支持される。プーリ支持板79,81は底板35から立設した補助板83,85にX方向にスライド可能に組み付けられる。プーリ支持板79,81には、補助板83,85に回動自在に支持した調節ネジ87,89が噛合する。つまり調節ネジ87,89を回動することでプーリ支持板79,81のX方向の位置が変更される。プーリ支持板79,81の位置変更によりタイミングベルト27,29の張力が調節される。位置変更後のプーリ支持板79,81は締めネジ91,93の締めつけで固定される。」 (5c)図5,図6は次のとおり。 (6)刊行物6 (6a)第3図は次のとおり。ファンベルト35,テンションレバー36,折り曲げ部39,ねじ孔40,調整ボルト41,長孔43,固定ボルト44,ねじ孔45,等について、明細書第8?10頁の説明を参照。 (7)刊行物7 (7a)「【0026】タイミングベルト33は取付板37に回動可能に取り付けられた一対のアイドラ38により図1に示すように入力軸28と隣合うカム軸30との間で押圧され所定のテンションで張られて掛け渡されている。アイドラ38は取付板37が該取付板37に穿設された長穴39にボルト40が挿入され、インデックスユニット24に締めつけられて固定されている。取付板37の一端部にはインデックスユニット24より立ち上がっているボルト取付片41に螺合された調整ボルト42の端部か係合し、アイドラ38がベルト33の張力に抗して図1の上方に該ベルト33を押圧して移動させたり、緩めることにより下方に移動させたりして調整することができる。 ・・・(中略)・・・ 【0031】次に、実際の各カム軸30の回転位相のずれを測定し(このときには、各カム軸30は略正確に位相合わせはなされている。)、一番正確に合わせなければならないカム軸30(例えば、ヘッド15の昇降を行うカム31があるカム軸30)が正確に合うように、ボルト37をゆるめてから一対のアイドラ38の一方を調整ボルト42を調整して下降させ(押し下げ)、他方を同一のテンションでベルト33が張られるように調整ボルト42を調整して上昇させる(押し上げる)。各アイドラの位置があった場合にはボルト37で取付板37を締め付け固定する。尚、ボルト37に沿って長穴39が移動するのでガイドされて取付板37は移動する。このガイドは取付板がガイド板にガイドされて移動するようにしてもよい。このようにして、一番正確に合わせなければならないカム31の位相が入力軸28と合うようになされ、元々略正確に合わせてあるので、他のカム軸30も問題がない精度で位相合わせがなされる。この調整は経時変化により位相が変わってきた時にも行うことができる。」 (7b)図1は次のとおり。 3.対比・判断 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、 刊行物1記載の発明の、 「原稿を照射する光源とミラーを有する光学ユニットA」、 「反射光を折返すミラーと両端にプーリーを有する光学ユニットB」、 「ミラーで折返された反射光を読み取る読取センサー」、 「前記光学ユニットAと前記光学ユニットBの両端に取付けられる移動のためのワイヤー」、 「原稿を読取る装置」は、 それぞれ、 本願発明の、 「原稿に光を照射する光源を有する移動自在な第1のキャリッジ」(なお、実施例ではミラーも具備している。)、 「前記第1のキャリッジの前記光源によって光照射されて前記原稿から反射される光を所定方向に導く光学部材を有する移動自在な第2のキャリッジ」(なお、光学部材は、実施例ではミラーである。)、 「前記第2のキャリッジの光学部材によって導かれてくる反射光を受光して前記原稿の画像を読取る画像読取手段」、 「記第1及び第2のキャリッジにおいて、前記第1及び第2のキャリッジの移動方向に直交する方向の端部に掛け渡されて、駆動されて走行することにより前記第1及び第2のキャリッジを前記原稿に沿って移動させる走行部材」、 「画像読取装置」、 に相当する。 刊行物1記載の発明の「前記光学ユニットA、前記光学ユニットB、前記ワイヤー及び前記引張コイルスプリングを保持する筐体」は、実質的に、本願発明の「装置本体」(すなわち、画像読取装置本体)、あるいは、その筐体に相当する。また、そうすると、刊行物1記載の発明の「光学ユニットA」は、「装置本体内に設けられ」ているといえる。 さらに、刊行物1記載の発明の 「前記ワイヤーの他端に固定する調整金具と、 前記光学ユニットA、前記光学ユニットB、前記ワイヤー及び前記引張コイルスプリングを保持する筐体と、 によって構成され、 前記調整金具は、光学ユニットの移動方向に対して直角方向に動かすことができるように、前記筐体の外に固着され、調整金具を動かしてワイヤーの長さを調整して光学ユニットBの平行度を調整することができる」と、 本願発明の 「前記装置本体内に設けられ、前記走行部材の走行方向に沿う長孔が形成された長孔形成部と、この長孔形成部に、前記走行部材の走行方向と直交する方向に折曲形成された第1の折曲部とを有することにより断面L字状を成し、前記走行部材の一端部を固定する固定ブラケットと、 この固定ブラケットの前記長孔形成部を載置する載置部と、この載置部に折曲形成され前記第1の折曲部に離間対向する第2の折曲部を有する調整ベースと、 前記長孔内に挿入されて回動操作されることにより、前記調整ベースに螺挿され、前記固定ブラケットの長孔形成部を前記調整ベースの載置部に固定し、或いは、前記長孔に沿って移動可能に保持する固定ネジと、 前記第2の折曲部に挿入され、前記第1の折曲部に螺挿され、前記長孔に挿入された前記固定ネジと共に前記固定ブラケットの移動方向を規制し、前記固定ネジにより前記固定ブラケットが移動可能に保持されている状態で回動操作されることにより、前記固定ブラケットを前記調整ベースの前記載置部に沿って移動させて前記走行部材を介して、前記第2のキャリッジを移動させることにより、原稿の面に沿う方向であってかつ前記第2のキャリッジの移動方向に直交する方向に対する前記第2のキャリッジの傾きを調整する調整ネジと、 を具備した」とは、 「第2のキャリッジの平行度を調整する手段を具備した」点で共通する。 そうすると、両発明の一致点、相違点は次のとおりと認められる。 [一致点] 「装置本体と、 この装置本体内に設けられ、原稿に光を照射する光源を有する移動自在な第1のキャリッジと、 前記第1のキャリッジの前記光源によって光照射されて前記原稿から反射される光を所定方向に導く光学部材を有する移動自在な第2のキャリッジと、 前記第2のキャリッジの光学部材によって導かれてくる反射光を受光して前記原稿の画像を読取る画像読取手段と、 前記第1及び第2のキャリッジにおいて、前記第1及び第2のキャリッジの移動方向に直交する方向の端部に掛け渡されて、駆動されて走行することにより前記第1及び第2のキャリッジを前記原稿に沿って移動させる走行部材と、 第2のキャリッジの平行度を調整する手段と、 を具備した、画像読取装置。」 [相違点] 第2のキャリッジの平行度を調整する手段に関して、 本願発明は、 「前記装置本体内に設けられ、前記走行部材の走行方向に沿う長孔が形成された長孔形成部と、この長孔形成部に、前記走行部材の走行方向と直交する方向に折曲形成された第1の折曲部とを有することにより断面L字状を成し、前記走行部材の一端部を固定する固定ブラケットと、 この固定ブラケットの前記長孔形成部を載置する載置部と、この載置部に折曲形成され前記第1の折曲部に離間対向する第2の折曲部を有する調整ベースと、 前記長孔内に挿入されて回動操作されることにより、前記調整ベースに螺挿され、前記固定ブラケットの長孔形成部を前記調整ベースの載置部に固定し、或いは、前記長孔に沿って移動可能に保持する固定ネジと、 前記第2の折曲部に挿入され、前記第1の折曲部に螺挿され、前記長孔に挿入された前記固定ネジと共に前記固定ブラケットの移動方向を規制し、前記固定ネジにより前記固定ブラケットが移動可能に保持されている状態で回動操作されることにより、前記固定ブラケットを前記調整ベースの前記載置部に沿って移動させて前記走行部材を介して、前記第2のキャリッジを移動させることにより、原稿の面に沿う方向であってかつ前記第2のキャリッジの移動方向に直交する方向に対する前記第2のキャリッジの傾きを調整する調整ネジと、 を具備した」のに対して、 刊行物1記載の発明では、ワイヤーの他端に固定する調整金具は、光学ユニットの移動方向に対して直角方向に動かすことができるように、前記筐体の外に固着され、調整金具を動かしてワイヤーの長さを調整して光学ユニットBの平行度を調整することができるようにしている点。 そこで、相違点について検討する。 (1)まず、第2のキャリッジの平行度を調整する手段の構成に関して検討する。 刊行物2には、光学ミラー走査系において、1番ミラーと2,3番ミラーの相対位置を調整する手段を設ける技術であって、具体的には、「ワイヤ調整ネジ18をまわすことにより本体に固定されているワイヤ固定金具17に対しワイヤ調整金具16の位置が変化しワイヤ20を引張ったりゆるめたり」して、ワイヤ20につながったミラープレート6,11の相対位置を調整するものが記載されている。 ここで、刊行物2の「ワイヤ調整金具16」「ワイヤ調整ネジ18」「ワイヤ固定金具17」は、それぞれ、詳細な形状の違いはさておき、本願発明の「固定ブラケット」「調整ネジ」「調整ベース」に相当する。 そして、刊行物2の光学ミラー走査系は、画像読取装置に適用可能であることは明らかであり、また、刊行物2の1番ミラーと2,3番ミラーの相対位置を調整する手段は、ワイヤ調整金具16の位置を変化させてワイヤ20を引張ったりゆるめたりするものであり、これは、刊行物1の「光学ユニットB6の平行度の調整方法は、光学ユニットB6の位置がワイヤー15,15′の長さによって決まるため、ワイヤー15,15′を固定する調整金具13,13′をX方向に動かして、調整する。」という調整方法と、ワイヤを引張ったりゆるめたりしてワイヤにつながった光学ユニットの位置を調整する点で共通する技術といえる。したがって、刊行物1記載の発明のワイヤの長さ調整手法に代えて、刊行物2のワイヤの位置調整方法の技術を適用することは、当業者であれば容易に着想することである。 ただ、刊行物2の「ワイヤ調整金具16」(固定ブラケット)には、本願発明にあるような、「長孔」や、固定ブラケットを調整ベース(ワイヤ固定金具17)の載置部に固定する「固定ネジ」は、備わっていない。 しかし、一般に、部材の取り付け位置を調整可能とする固定装置において、長孔内に配置したネジにより固定・固定解除を行い、別途設けたネジにより長孔に沿って移動させて位置調整を行うことは、例えば、刊行物3?7に記載されているように本願出願前において周知である。 特に、刊行物3,5には 、本願発明でいう、L字状の固定ブラケット、L字状の調整ベース、固定ネジ、調整ネジに相当する部材が設けられたものが記載されている。ここで、刊行物3のものは、長孔の形成位置が調整ベースであり、本願発明の固定ブラケットに形成されるものとは異なるが、長孔をどちらに設けるかは、設計的事項に属する。 そして、刊行物3?7に記載された固定手段は、画像読取装置におけるものではないが、類似の固定手段は、画像読取装置における刊行物2にも示されているのであり、刊行物3?7に接した当業者、あるいは上記周知技術を知る当業者であれば、その固定手段を刊行物2の手段の改良として、刊行物1記載の発明において応用可能であることを、難なく発想することができるというべきである。 (2)次に、第2のキャリッジの平行度を調整する手段を設ける位置に関して検討する。 刊行物1記載の発明は、調整金具(第2のキャリッジの平行度を調整する手段)は、光学ユニットの移動方向に対して直角方向に動かすことができるように、筐体の外に固着されており、「ワイヤーの調整金具を筐体の外に出すことにより光学ユニットBの平行度の調整を容易にすることができる」というものである。 しかし、一般に、原稿画像読取装置において、2つの光学ユニット(光学部材を有するキャリッジ)を移動させるためのベルトまたはワイヤの長さを微調整する調整手段を、原稿画像読取装置の本体内または複写機本体内に設けることは、本願出願前に周知の技術である。例えば、特開昭59-146045号公報(第3頁右上欄第10行?同左下欄第1行、第4図)、実願平1-114728号(実開平3-54926号公報)のマイクロフィルム(第1,2図)を参照されたい。また、刊行物1の従来技術でも同様であり、さらに、刊行物2のものも、原稿画像読取装置の本体内または複写機本体内に設けられていると推認される。 そして、刊行物1記載の発明は、筐体(装置本体)の外から調整作業ができることを目的としたものである(上記(1c)(1e)等)にしても、当業者は、上記周知技術を知っているのであるから、筐体(装置本体)の内に、調整金具(第2のキャリッジの平行度を調整する手段)を設ける変更態様があり得ることを、当然に想起するものであり、また、それを想起することを阻害する要因はない。 (3)以上により、刊行物1記載の発明において、刊行物2の技術とともに、刊行物3?7記載の周知又は公知の技術、上記周知技術を適用して、本願発明1のごとくなすことに、困難性はないものである。 (効果について) 請求人は、本願発明の効果として、審判請求書で、 「本願発明は、調整ベースの第2の折曲部に調整ネジを挿入して固定ブラケットの第1の折曲部に螺挿することにより、固定ブラケットの長孔に挿入された固定ネジと共に固定ブラケットの移動方向を規制し、固定ネジにより固定ブラケットが移動可能に保持されている状態で、調整ネジを回動操作することにより、固定ブラケットを調整ベースの載置部に沿って移動させて走行部材を介して、第2のキャリッジを移動させ、これにより、原稿の面に沿う方向であってかつ第2のキャリッジの移動方向に直交する方向に対する第2のキャリッジの傾きを調整することを特徴とするものであります。即ち、本願発明によれば、画像読取手段に原稿からの反射光を導く第2のキャリッジについて、原稿の面に沿う方向であってかつ第2のキャリッジの移動する方向と直交する方向に対する傾きを、正確かつ微調整することができる。」と主張する。 しかし、本願発明については、上記のとおり、構成の容易想到性が十分に論理付けられるものであり、しかも、刊行物1には、第2のキャリッジの平行度を調整するという課題が示されているのであるから、 全体としてみて、請求人の主張する上記効果は、刊行物1,2に記載された事項、および刊行物3?7記載の周知又は公知の技術から当業者が予測し得る程度のものであって、格別なものとはいえない。 次に、第2のキャリッジの平行度を調整する手段を設ける位置に関して、請求人は、意見書で、 「A.本願発明 本願発明は、第2のキャリッジの傾き調整手段を構成する固定ブラケット62、調整ベース65、及び調整ネジ66を装置本体内に配設することを特徴とするものであります。 即ち、本願発明は、第2のキャリッジの傾き調整手段が装置本体から外部に大きく突出するものではなく、傾き調整手段にオペレータがぶつかって怪我したり、傾き調整手段が装置本体から取り外れてしまうといった虞がないという利点を有するものであります。 B.引用文献 これに対し、刊行物1では、調整金具13,13′を筐体1の外部に設けています。 従って、貴審判官がご指摘されるように刊行物1の調整金具13,13′を刊行物2のワイヤ調性金具16、ワイヤ調整ネジ18、ワイヤ固定金具17に代えた場合には、ワイヤ調性金具16、ワイヤ調整ネジ18、ワイヤ固定金具17が、光学ユニットの移動方向(ワイヤ20の走行方向)に沿って配設されることから、筐体1から外部に大きく突出した状態となります。 このため、ワイヤ調性金具16、ワイヤ調整ネジ18、ワイヤ固定金具17にオペレータがぶつかって怪我したり、筐体1から取り外れてしまうといった虞があります。 また、刊行物2のワイヤ調整金具16、ワイヤ調整ネジ18、ワイヤ固定金具17を刊行物3?7の固定手段に代えたとしても、刊行物2の場合と同様に固定手段が筐体1から外部に大きく突出した状態となり同様な問題を生じてしまいます。」 とも主張する。 しかし、刊行物1記載の発明では、「調整金具は、光学ユニットの移動方向に対して直角方向(すなわち、刊行物1の実施例でいうX方向)に動かすことができるように」しており、「刊行物1の調整金具13,13′を刊行物2のワイヤ調性金具16、ワイヤ調整ネジ18、ワイヤ固定金具17に代えた場合」においても、ワイヤ調整ネジ18が、光学ユニットの移動方向に対して直角方向に動くように設計すれば、突出量は抑えられるので、「ワイヤ調性金具16、ワイヤ調整ネジ18、ワイヤ固定金具17にオペレータがぶつかって怪我したり、筐体1から取り外れてしまうといった虞」は、かなり軽減できるものであるから、請求人の主張する効果は格別なものとはいえない。また、上記のとおり、筐体(装置本体)の内に、調整金具(第2のキャリッジの平行度を調整する手段)を設けることは周知技術であることからしても、請求人の主張する効果は、当業者が予測し得る程度のものであって、格別なものではない。 (まとめ) したがって、本願発明は、刊行物1、2に記載の発明、刊行物3?7記載の周知又は公知の技術、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-11-29 |
結審通知日 | 2010-11-30 |
審決日 | 2010-12-14 |
出願番号 | 特願2006-300786(P2006-300786) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡戸 正義 |
特許庁審判長 |
木村 史郎 |
特許庁審判官 |
一宮 誠 伏見 隆夫 |
発明の名称 | 画像読取装置 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 中村 誠 |