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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01M
管理番号 1231335
審判番号 不服2009-5809  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-17 
確定日 2011-02-03 
事件の表示 特願2004-501898「センサーケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月13日国際公開、WO03/93782、平成17年 8月11日国内公表、特表2005-524082〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、平成15年4月23日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 平成14年4月29日、米国(US))を国際出願日とする特許出願(2004年特許願第501898号。以下「本件出願」という。)につき、拒絶査定が平成20年12月16日にされた(発送日:同月18日)ところ、拒絶査定不服審判が平成21年3月17日に請求されるとともに同日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 平成21年3月17日付けの手続補正について
(1)平成21年3月17日付けの手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)の内容は、本件補正前の本件出願当初の特許請求の範囲の請求項1?10のうちの請求項1?6、請求項8?10を削除し、請求項7を新たに請求項1としたものである。

(2) 本件補正の目的について
本件補正前の請求項1?6、請求項8?10は削除されているので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前(以下「平成18年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とする補正に該当する。

第3 本願発明について
(ア)本件補正は、上記のとおり特許請求の範囲の請求項1?10のうちの請求項1?6、請求項8?10を削除し、請求項7を新たに請求項1としたものであり、新たな請求項1は実質的に補正されていないことから、以下に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明が特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(イ)本件出願に係る発明
本件出願の請求項1に係る発明は(以下、「本願発明」という。)、平成21年3月17日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
腐食性の液体の存在を検知するのに適したケーブルであって、
a)少なくとも1つの導電性の層によって包囲された中心導電体を含んでいる第1及び第2の感知ワイヤーと、
b)前記第1及び第2の感知ワイヤーが周囲に巻き付けられているコア部材と、
c)前記第1及び第2の感知ワイヤーと前記コア部材とを封入する少なくとも1つの非導電性表面層と、を含んでいるケーブル。」

第4 引用刊行物記載の発明
(4A) 原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の優先権主張日前に頒布された米国特許第5191292号明細書(以下、「引用刊行物A」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。(下線は、当審で付加した。以下、同様である。)

(4A-1)「Sensor cables made by the method of this invention can be used to detect the presence of electrically conductive liquids. Such liquids are most commonly electrolytes, i.e. liquids in which an electrical connection is made by means of ions. Suitable liquids include water, aqueous acids, aqueous bases, and other ionic solutions in which the charge-carrying entities are ions.
The sensor cable comprises a first elongate conductor and second elongate conductor, each of which has an exposed surface which can be contacted by the electrically conductive liquid when the cable is immersed in the liquid. (日本語訳:この発明によって作られるセンサーケーブルは、電気的に導電性のある液体の存在を検出するために使用される。そのような液体は、最も一般的には、電解質、すなわち電気接続がイオンによって行われる液体です。適切な液体としては電荷を運ぶ実体がイオンであるような、水、水性酸、水性塩基、そして他のイオン溶液が含まれる。
センサー・ケーブルは第1の細長い導体と第2の細長い導電体からなり、それぞれのケーブルは、ケーブルが液体に浸漬されるとき、電気的に導電性の液体によって電気的に接続されるように露出した表面を有している。)」(2欄13?24行)

(4A-2)「Particularly preferred are conductors in which a metal core, e.g. a solid or stranded metal wire or metal braid made from copper, nickel, tin-plated copper, metal alloys such as Copel_(TM), or other suitable material, is electrically surrounded by a conductive polymer. (日本語訳:特に、好ましい導電体としては、例えば、銅、ニッケル、スズ・メッキの銅、Copel_(TM)のような金属合金または他の適当な材料からなる、中実又は撚り合わせた金属ワイヤ、あるいは編み状の金属よりなる金属コアが伝導性のポリマーによって電気的に囲まれているものである。)」(2欄28?32行)

(4A-3)「The invention is illustrated by the drawing in which FIG. 1 shows a plan view of a sensor cable 1 made by the method of the invention. A core member 3 is wrapped in a spiral pattern with a first elongate conductor 5 which is a locating wire, a first elongate insulating wire 9 which is a continuity wire, a second elongate conductor 7 which is a source wire, and a second elongate insulating wire 11 which is a signal wire. Each of the wires is embedded into the core member 3 to a depth sufficient to prevent the wires from protruding above the surface of the core member.
FIG. 2 is a cross-sectional view of the sensor cable 1 along line 2--2 of FIG. 1. In this embodiment, deformable polymeric material comprises the core member 3 and surrounds a central support member 13 which comprises a center conductor 15 and an insulating polymeric layer 17. The first conductor 5 and second conductor 7 are embedded into the core member 3. Each conductor 5,7 comprises a center conductor 19, either a solid or a stranded wire, surrounded by a layer of conductive polymer 21. The first insulating wire 9 which is the continuity wire comprises a center conductor 23 surrounded by an insulating polymer layer 25 and the second insulating wire 11 which is the signal wire comprises a center conductor 27 surrounded by an insulating polymer layer 29. (日本語訳:発明が図面によって示されており、図面中、図1は、発明の方法によって製造されるセンサーケーブル1の平面図である。コア部材3は、位置探索ワイヤとなる第1の細長い導電体5と、状態の変化しない第1の細長い絶縁ワイヤ9と、ソースワイヤとなる第2の細長い導電体7と、信号ワイヤとなる第2の細長い絶縁ワイヤ11とにより螺旋パターンに巻き付けられている。各々のワイヤは、ワイヤがコア部材の表面から突出することを防ぐのに十分な深さに、コア部材3に埋設される。
図2は、図1の線2-2に沿ったセンサーケーブル1の断面図である。この具体例では、変形可能なポリマー材料はコア部材3から成り、中心導体15と絶縁重合層17からなる中心支持部材13を囲んでいる。第1の導電体5と第2の導電体7はコア部材3中に埋設されている。各々の導電体5、7は、導電性ポリマーの層21によって囲まれ、中実ワイヤ又は撚り合わされたワイヤである中心導電体19からなる。状態の変化しない第1の絶縁ワイヤ9は、絶縁ポリマー層25で囲まれた中心導電体23からなり、信号ワイヤとなる第2の絶縁ワイヤ11は絶縁ポリマー層29で囲まれた中心導電体27からなる。」(5欄53行?6欄10行)

(4A-4)第1図及び第2図には、第1の細長い導電体5と第2の細長い導電体7とがコア部材3に離間した状態で巻き付けられていることが描かれている。

上記(4A-1)?(4A-4)の記載を参照すると、上記引用刊行物Aには、
「電気的に導電性のある液体の存在を検出するために使用されるセンサーケーブル1であって、
導電性ポリマーの層21で囲まれた中心導電体19からなり、位置探索ワイヤとなる第1の細長い導電体5及びソースワイヤとなる第2の細長い導電体7と、
位置探索ワイヤとなる第1の細長い導電体5及びソースワイヤとなる第2の細長い導電体7が螺旋パターンに離間して巻き付けられているコア部材3とからなるセンサーケーブル。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

(4B)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の優先権主張日前に頒布された、実願昭61-151262号(実開昭63-57548号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物B」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(4B-1)「(産業上の利用分野)
本考案は、硫酸、苛性ソーダなどの液体を輸送するパイプラインや貯蔵タンクなどに破損が生じ、硫酸などの液体の漏洩が生じたとき、それを検知し、且つ漏洩位置を検知する漏液検知線に関する。」(明細書1頁14?19行)

(4B-2)「(作用)
本考案にかかる漏液検知線には、硫酸又は強アルカリ液体に接すると溶解する絶縁体層を導体上に被覆しているので、該検知線をパイプライン、貯蔵タンクなどに添設しておくと、例えば硫酸の漏洩が生じたときは、外装の編組体層がこれを吸収し、吸収された硫酸によって絶縁体層が溶解し、導体間が短絡される。」(明細書4頁17行?5頁4行)

(4B-3)「第1図(A),(B),(C)において、(1)は導体上にエステル結合を有する高分子材料の絶縁体層を被覆した電極線、(2)は導体上に耐酸・耐アルカリ性材料の絶縁体層を被覆した漏液位置検知用心線、(3)は非吸液性の合成繊維糸からなる内部編組体層、(4)は吸液性の糸からなる外部編組体層、(5)は(1)?(4)によって形成される本考案の漏液検知線である。」(明細書5頁16行?6頁3行)

(4B-4)「第2図のように接続された漏液検知線において、A_(1)区域に硫酸漏液を生じさせると、漏液検知線(5)の外層に設けられたポリエステル編組体層がこれを吸収し、直ちにポリエチレン内部編組体層に導入される。導入された硫酸によって電極線(1)、(1’)に被覆されたポリエステルエナメル絶縁体層が溶解し、(1)-(1’)間の絶縁抵抗が著しく低下して漏洩検知の警報が発せられた。」(明細書8頁19行?9頁7行)

(4C)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の優先権主張日前に頒布された、特開昭62-161045号公報(以下、「引用刊行物C」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(4C-1)「〔産業上の利用分野〕
この発明は液体を検知するためのセンサに係り、詳しくは、例えば各種強酸やリン酸等の腐食性液を移送するためのパイプライン等における該液体の漏洩や到来等を確実に検知する腐食性液検知用センサに関する。
〔従来の技術〕
従来、塩酸、硝酸等の強酸類や、カセイソーダ水溶液等の強アルカリ類を大量に使用する化学工場等において、パイプラインを通じてそれらの液体を移送することが行なわれている。かかる輸送方式においてパイプから塩酸等の腐食性液の漏洩があった場合、そのまま気が付かずに放置されると、漏洩個所の近傍にある他の装置を腐食させ、場合によっては大事故につながる可能性がある。」(1頁右下欄17行?2頁左上欄11行)

(4C-2)「第2図はこの発明による腐食性液検知用センサの他の実施例を示す端部斜視図である。この腐食性液検知用センサ10は、平行に離間配置された2本の導体11a,llbと、この導体11a,llbを互いに離間せしめて保持する帯状の絶縁性支持体12とから構成され、全体として平形ケーブル状に形成されている。この場合、前記絶縁性支持体12は腐食性液により劣化する充実質の高分子材料からなり、溶融押し出しされた後に、一方の面側の前記導体11a,11b間の表面部には長手方向に沿って二列に多数の孔13が液受部として設けられ、この孔13内に腐食性被検知液が到来すると、この被検知液は孔13内に滞留して絶縁性支持体12を劣化させ、その結果誘電率が変化し導体11a,11b間の特性インピーダンス等の電気特性が変化するので、腐食性漏液を検知することができる。」(3頁左上欄13行?右上欄9行)

第5 対比・判断
(5-1) 本願発明と引用発明との対比
(i)引用発明の「電気的に導電性のある液体の存在を検出するために使用されるセンサーケーブル1」と本願発明の「腐食性の液体の存在を検知するのに適したケーブル」とは、ともに液体の存在を検知するためのケーブルであるから、「液体の存在を検知するのに適したケーブル」である点で共通する。

(ii)引用発明の「位置探索ワイヤとなる第1の細長い導電体5及びソースワイヤとなる第2の細長い導電体7」と本願発明の「第1及び第2の感知ワイヤー」とは、ともに導電性の層で囲まれた中心導電体を含んでいることから、引用発明の「導電性ポリマーの層21で囲まれた中心導電体19からなり、位置探索ワイヤとなる第1の細長い導電体5及びソースワイヤとなる第2の細長い導電体7」が本願発明の「1つの導電性の層によって包囲された中心導電体を含んでいる第1及び第2の感知ワイヤー」に相当する。

(iii)引用発明の「位置探索ワイヤとなる第1の細長い導電体5及びソースワイヤとなる第2の細長い導電体7が螺旋パターンに離間して巻き付けられているコア部材3」は、その機能・構造からみて、本願発明の「前記第1及び第2の感知ワイヤーが周囲に巻き付けられているコア部材」に相当する。
(iv)引用発明の「センサーケーブル」は、その機能・構造からみて、本願発明の「ケーブル」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「液体の存在を検知するのに適したケーブルであって、
a)1つの導電性の層によって包囲された中心導電体を含んでいる第1及び第2の感知ワイヤーと、
b)前記第1及び第2の感知ワイヤーが周囲に巻き付けられているコア部材と、
を含んでいるケーブル。」
である点で一致し、次の相違点(あ)で相違している。

・相違点(あ)
本願発明は、ケーブルが、「腐食性の液体」の存在を検知するのに適したケーブルであり、「前記第1及び第2の感知ワイヤーと前記コア部材とを封入する少なくとも1つの非導電性表面層」を含んでいる対して、引用発明は、ケーブルが、「電気的に導電性のある液体」の存在を検出するために使用されるセンサーケーブルであり、位置探索ワイヤとなる第1の細長い導電体5、ソースワイヤとなる第2の細長い導電体7及びコア部材3を封入する非導電性表面層を含んではいない点。

(5-2)当審の判断
そこで、上記相違点(あ)について判断する。
(5-2a)上記引用刊行物Bには、強酸である硫酸、強アルカリの苛性ソーダなどの液体を輸送するパイプラインや貯蔵タンクなどに破損が生じ、硫酸などの液体の漏洩が生じたとき、2本の導電体上に被覆された絶縁層が溶解して導体間が短絡されることを検知する漏液検知線を、パイプラインや貯蔵タンクを添設して、液体の漏洩を検出することが記載されており(摘記事項(4B-1)、(4B-2)、(4B-4)参照)、この硫酸などの液体は、上記引用刊行物Cの摘記事項(4C-1)に記載されているように、腐食性の液体であることは明らかであり、さらに、ケーブルは電線・光ファイバーなどに外被を被せたものを意味する(広辞苑参照)ことから、上記引用刊行物Bに記載された、絶縁層で被覆された導体からなる漏液検知線がセンサケーブルであることは自明な事項である。
そして、例えば、特表平4-501312号公報の2頁右上欄4?8行、及び、3頁左上欄13行?右上欄12行には、それぞれ「本発明は、事象情報を検出するためのセンサアッセンブリに関し、特に複数事象を区別するためのセンサアセンブリに関する。・・・センサアッセンブリを構成するセンサケーブル及びアッセンブリは、周知である。」こと、及び「本発明のセンサアッセンブリは、電解物の存在を伴う第1の事象を検出するのに便利である。・・・“電解物”の語は、例えば液体・・・のような、イオンによって電気的接続を生成する流動体を意味して使用する。適切な流動体は、水、酸性の水、アルカリ性の水、及びその他のイオン溶液である。・・・又、上記センサアッセンブリは、電解物の存在を伴わない第2の事象を検出することもできる。そのような第2の事象の例として、(1)炭化水素のような例えば有機液体である流動体の存在・・・がある。・・・上記センサアッセンブリは、第1及び第2の導電体を備えている。」と記載されているように、2本の導電体を有するセンサーケーブルで検知できる液体としては、引用発明のような電気的に導電性のある液体や、上記引用刊行物B及びCに記載されているような腐食性の液体だけでなく、電解物の存在を伴わない炭化水素のような有機液体があることは周知であるといえる。
そうすると、2本の導電体を有するセンサケーブルにおいて、腐食性の液体の漏洩を検出することは上記引用刊行物B及び上記引用刊行物C(摘記事項(4C-2)参照)に記載されているように周知であり、さらに、引用発明のセンサーケーブルと上記周知のセンサーケーブルとは、ともに2本の導電体を有するセンサーケーブルを用いて、液体の存在を検知する点で共通する。そして、2本の導電体を有するセンサーケーブルを用いてどのような液体の存在を検知するかは当業者が適宜選択しうる事項にすぎないことから、引用発明のコア部材3に巻き付けられている第1の細長い導電体5及び第2の細長い導電体7の2本の導電体を有するセンサーケーブルを、電気的に導電性のある液体の存在を検出するために使用する代わりに、上記周知例のごとく、「腐食性の液体」の存在を検知するのに使用することは当業者が容易になし得たものである。
(5-2b)そして、引用発明のコア部材3に巻き付けられている第1の細長い導電体5及び第2の細長い導電体7の2本の導電体を有するセンサーケーブルを用いて、「腐食性の液体」の存在を検知する構成を採用した際には、上記引用刊行物Bの摘記事項(4B-4)あるいは上記引用刊行物Cの摘記事項(4C-2)に記載されているように、第1の細長い導電体5及び第2の細長い導電体7の周囲を、腐食性の液体により溶解もしくは劣化するような絶縁層で被覆する必要性があることは自明な事項であり、さらに、引用発明のセンサケーブルのように、第1の細長い導電体5と第2の細長い導電体7の2本の導電体とがコア部材3に離間して巻き付けられているセンサケーブルにより、漏洩した液体の存在を検知する際、2本の導電体を絶縁層で被覆する場合の構成としては、例えば、特開昭53-111779号公報の1頁左下欄12?15行に、「裸導線1,2を管3内に離間させて平行に納め、管3の壁部を全長に渉つて全部・・・を油溶融性物質をもって形成する。」と記載されているように、
(a)第1の細長い導電体5、第2の細長い導電体7の2本の導電体、及びコア部材3を腐食性の液体により溶解もしくは劣化するような絶縁層で被覆する構成か、
又は、例えば、実願平4-25442号(実開平5-62839号)のCD-ROMの図1に、2本の導体1にそれぞれ検知対象液に溶解する絶縁層2が被覆されることが示され、さらに、特表平4-501312号公報の3頁左下欄5?6行、及び、5頁左上欄12行?右上欄1行にそれぞれ「絶縁層は、上記導電体の一つあるいは両方を覆い」、及び、「図2は図1のA-A部分における断面図を示している。第1の導電体2及び第2の導電体5は、二つのスペーサロッド9、10と同様に、外部編組み11によって所定位置に保持される。第1の導電体2は導電性ポリマ層4によって覆われる中央の導電体3を備えている。第2の導電体5は、まず導電性ポリマ層7によって、次に編組み6の層によって覆われる中央導電体8を備えている。」と記載されているように、
(b)コア部材3に離間して巻き付けられている第1の細長い導電体5及び第2の細長い導電体7の何れか一方、又は両方を腐食性の液体により溶解もしくは劣化するような絶縁層で被覆する構成か、
のいずれか2通りしかないことは自明な事項である。
そうすると、引用発明のコア部材3に巻き付けられている第1の細長い導電体5及び第2の細長い導電体7の2本の導電体を有するセンサーケーブルを用いて、「腐食性の液体」の存在を検知する構成を採用した際に、上記周知例の第1の細長い導電体5及び第2の細長い導電体7の周囲を、腐食性の液体により溶解もしくは劣化するような絶縁層で被覆する構成として、上記(a)の構成を採用するか、上記(b)の構成を採用するかは当業者が必要に応じて適宜選択する事項にすぎものであるから、引用発明のセンサケーブルを用いて「腐食性の液体」の存在を検知する構成として、本願発明のごとく、ケーブルが、「前記第1及び第2の感知ワイヤーと前記コア部材とを封入する少なくとも1つの非導電性表面層」を含んでいる構成を採用することは当業者が必要に応じて適宜選択する設計的事項にすぎないものである。

そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知の技術事項から予測される範囲内のものであって、格別のものではない。

なお、審判請求人は請求の理由において「本願発明は、『被覆ワイヤ上の応力及び歪みを最少化する』という引用例1に記載の螺旋構造を使用することからは予期できない格別の利点を奏することができます。外被が付けられた又は被覆されたワイヤを使用した腐食性液体検知ケーブルを形成する以前の試みは、設置中にケーブル構造が撓ませられたり曲げられたりしたときに電極ワイヤ上の脆いコーティングに亀裂が入り、疲労による亀裂を受けておりました。これに対して、本願発明は、類似したコーティング材料を使用し且つ螺旋構造を利用しておりますが、引用例1によっては予期できない利点を得ることができます。すなわち、本願発明においては、電極ワイヤが螺旋状に予め巻き付けられて形成された構造を有しており、その結果、ケーブルの設置中に脆いコーティング材料上にかかる応力及び歪みが著しく小さくなります。従って、設置者は、非螺旋構造の同じ電極と比較して、コーティングに対して損傷を受けることなくケーブルを比較的小さな半径に巻くことができます。引用例1の発明は、破壊することなく、比較的大きな応力及び歪みを許容することができる導電性のコーティング材料を使用しております。従って、引用例1の発明者は、螺旋構造が、外被材料上の応力及び歪みを最少にするという付加的な利点を有することを認識しておらず又は知る必要がなかったと考えられます。」旨の主張をしている。
しかしながら、審判請求人の主張する「被覆ワイヤ上の応力及び歪みを最少化する」の効果は、本件出願の明細書の発明の詳細な説明には何ら記載されていないから、請求人の主張は採用できないものである。
また、審判請求人は、「本願発明においては、電極ワイヤが螺旋状に予め巻き付けられて形成された構造を有しており、その結果、ケーブルの設置中に脆いコーティング材料上にかかる応力及び歪みが著しく小さくなります。」と主張していることから、仮に、「前記第1及び第2の感知ワイヤーが周囲に巻き付けられているコア部材」の構成により、審判請求人の主張する「被覆ワイヤ上の応力及び歪みを最少化する」効果が生じるとしても、引用発明のセンサーケーブルにおいても、本願発明と同様に、第1の細長い導電体5及び第2の細長い導電体7の電極ワイヤがコア部材3に螺旋パターンに離間して巻き付けられていることから、審判請求人の主張する効果を生ずるのは明らかである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-08 
結審通知日 2010-09-09 
審決日 2010-09-24 
出願番号 特願2004-501898(P2004-501898)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 裕司  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 石川 太郎
秋月 美紀子
発明の名称 センサーケーブル  
代理人 増井 忠弐  
代理人 富田 博行  
代理人 社本 一夫  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  
代理人 千葉 昭男  

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