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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09K
管理番号 1231407
審判番号 不服2007-33635  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-13 
確定日 2011-02-04 
事件の表示 特願2001- 47007「酸化防止剤」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月 6日出願公開、特開2002-249771〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

この出願は、平成13年2月22日の出願であって、平成18年3月22日付けで拒絶理由が通知され、同年5月29日に意見書及び手続補足書が提出され、平成19年7月12日付けで拒絶理由が通知され、同年9月12日に意見書が提出され、同年11月6日に拒絶査定がされ、これに対し、同年12月13日に審判が請求され、平成20年1月9日に手続補正書が提出され、同年2月14日に審判請求書の手続補正書が提出され、平成22年6月29日付けで審尋がされ、同年9月2日に回答書が提出されたものである。


第2 平成20年1月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成20年1月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成20年1月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1である
「ローズマリー水溶性抽出物とビタミンCとを90:10?30:70の重量比で含有することを特徴とする酸化防止剤。」
を、
「ローズマリー水溶性抽出物とビタミンCとを90:10?30:70の重量比で含有し、上記のローズマリー水溶性抽出物が含水率40?60重量%のエタノールを使用して得られる抽出液に水を加えて非水溶性成分を析出させて得た濾液から溶媒を留去乾燥することにより得られたものであることを特徴とする酸化防止剤。」
とする補正を含むものであって、上記請求項1についての補正は、「上記ローズマリー水溶性抽出物が含水率40?60重量%のエタノールを使用して得られる抽出液に水を加えて非水溶性成分を析出させて得た濾液から溶媒を留去乾燥することにより得られたものである」との発明特定事項を追加する補正(以下、「補正A」という。)である。

2 補正の適否
(1)目的要件
補正Aが、平成18年法律第55条改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項の各号に掲げる事項を目的とするものであるかについて以下検討する。
ア 同法第17条の2第4項第1号について
補正Aは請求項を削除したものではない。ゆえに同法第17条の2第4項第1号に掲げる事項を目的とした補正ではない。
イ 同法第17条の2第4項第2号について
補正Aはローズマリー水溶性抽出物の調整手段に係る事項をその内容とするが、補正前の請求項1にはローズマリー水溶性抽出物をその調製手段により特定する事項の記載はないので、上記の補正による追加内容は、補正前の請求項1に記載の発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく、同法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮にはあたらない。
ウ 同法第17条の2第4項第3号について
補正Aの補正前の請求項1に誤記があったとは認められない。ゆえに同法第17条の2第4項第3号に掲げる事項を目的とした補正ではない。
エ 同法第17条の2第4項第4号について
補正Aは、補正前の請求項1における「ローズマリー水溶性抽出物」に対し、該抽出物を調製するに際して当然行うはずである調製方法を明示した内容とも考えられる。しかしながら、当該補正前の「ローズマリー水溶性抽出物」はそれ自体明りょうである。ゆえに上記補正Aは同法第17条の2第4項第4号に掲げる事項を目的とした補正ではない。

したがって、補正Aは、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号で規定する、第36条第5項に規定する請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とする補正のいずれにも該当しないものである。

(2)独立特許要件
以上のとおり、補正Aは、特許法第17条の2第4項第2号を目的とするとはいえないものであるが、たとえ、補正Aである上記請求項1についての補正が、特許法第17条の2第4項第2号を目的とするものといえたとしても、以下の<理由>のとおり、補正後の明細書(以下、「本件補正明細書」という。)の特許請求の範囲における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、上記請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に適合しないものである。

<理由>
本件補正発明は、その出願前に日本国内又は外国において配布された、下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

ア 刊行物
(ア)特開平03-197595号公報(平成19年11月6付け拒絶査定における引用文献2に同じ。以下、「刊行物1」という。)
(イ)特開昭55-018437号公報(平成19年11月6日付け拒絶査定における引用文献1に同じ。以下、「刊行物2」という。)

イ 刊行物に記載された事項
(ア)刊行物1(特開平03-197595号公報)に記載された事項
刊行物1には、以下の事項が記載されている。

A1 「特許請求の範囲
(1)油脂類に界面活性剤を溶解させ、これに水溶性酸化防止剤を含む水溶液を添加し、この混合物を撹拌して可逆性ミセルを形成させることを特徴とする油脂類の酸化抑制方法。
・・・(中略)
(5)水溶性酸化防止剤として、アスコルビン酸及びローズマリー抽出物を共に添加することを特徴とする特許請求の範囲第(1)項記載の油脂類の酸化抑制方法。
(6)酸化防止剤として、アスコルビン酸及びトコフェロールを共に添加することを特徴とする特許請求の範囲第(1)項記載の油脂類の酸化抑制方法。」
(第1頁左下欄4行?同頁右下欄第5行)

A2 「a.産業上の利用分野
本発明は、油脂を保管、貯蔵及び流通する場合に発生する、自動酸化による酸敗を防止する方法に関するもので、とくに水溶性天然酸化防止剤を魚油に溶解させることによって、油脂の貯蔵安全性を向上させる方法に関する。」
(第1頁右下欄第7行?第12行)

A3 「本発明方法は、根本的には界面活性剤及び水の存在下ですべての水溶性酸化防止剤を油脂又は脂肪質に溶解させることができるようにする方法である。したがって本発明によれば、油脂又は脂肪質の酸敗を防止することができるので、油脂食品、油脂、医薬品及び化粧品の安全化方法として利用することができる。」
(第2頁右下欄第13行?第19行)

A4 「本発明において利用する可逆性ミセル内には本質的に殆どすべての水溶性化合物を利用することができる。本発明において油脂類の酸化安定性を向上させるために使用する酸化防止剤は、主に水溶性化合物であり、例えば、アスコルビン酸、ローズマリーやサルビアなどの植用葉の抽出物、各種香辛料の抽出物、プロリンやヒスチジンなどの酸化防止効能があるアミノ酸、クエン酸、琥珀酸、リンゴ酸などの有機酸等の天然酸化防止剤である。また場合によっては、EDTA、Na_(2)EDTAなどの合成酸化防止剤を相乗剤と共に使用することができる。これら酸化防止剤は、単独で又は2種類以上を混合して添加することができる。このときの添加量は、油脂の種類、目的とする酸化防止効果の程度及び2種類以上の酸化防止剤を共に使用するかいなかによって変化するが、法令で許容されている限界以下の濃度になるように添加しなければならない。」
(第3頁左下欄第6行?同頁右下欄第3行)

A5 「本発明において利用する可逆性ミセルの連続相は油脂類であるため、これに脂溶性酸化防止剤を溶解させ、さらに水溶性酸化防止剤を添加すれば、この2種類の化合物の相乗作用による相乗効果を得ることができる。例えば、水溶性酸化防止剤であるアスコルビン酸、イソ-アスコルビン酸、クロロ-イソ-アスコルビン酸等を可逆性ミセルを通じて、油脂類に溶解させ、これに脂溶性天然酸化防止剤であるトコフェロールを添加すれば、各々を別々に使用した場合よりも一層酸化防止効能が向上する。また、アスコルビン酸と植用葉の抽出物であるローズマリー抽出物を共に添加することにより、酸化防止効能の向上を図ることもできる。また、必要に応じて、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、クロロ-イソ-アスコルビン酸、又は有機酸等の水溶性酸化防止剤と、脂溶性合成酸化防止剤例えば、2(3)-ブチル-4-オキシアニソール、ヒドロキシトルエンブチレート、t-ブチルヒドロキシキノン等を共に使用することができる。」
(第3頁右下欄第4行?第4頁左上欄第3行)

A6 「実施例4
魚油400gに大豆レシチン1.2gを添加して窒素ガスを流入しながら撹拌した。レシチンが油脂類に溶解されたのち40%(w/w)アスコルビン酸の水溶液0.2mlを添加し、引き続き撹拌した。このとき油脂の可逆性ミセルが形成され、同時にアスコルビン酸が200ppm溶解された。得られた魚油10gをそれぞれ直径11.5cmのペトリ皿に入れて60°Cの恒温器に貯蔵した。
また、アスコルビン酸200ppmが溶解された魚油100gにローズマリー抽出物(日本マコーミック社製品、SP-100)0.2%又はδ-トコフェロール0.5%を添加して撹拌してローズマリー抽出物又はδ-トコフェロールを各々溶解させた。アスコルビン酸200ppmとローズマリー抽出物0.2%が溶解されている魚油及びアスコルビン酸200ppmとδ-トコフェロール0.5%が溶解されている魚油を各々10g直径11.5cmのペトリ皿に入れて60℃の恒温器に貯蔵した。貯蔵42日間の油脂の酸化安定化指標として過酸化物値を測定し、貯蔵期間による過酸化物値の変化を第2図に示した。
第2図に示す結果から明らかなように、アスコルビン酸とローズマリー抽出物又はアスコルビン酸とδ-トコフェロールを共に添加すれば、これらの各々を単独で添加した場合よりも相乗的な酸化防止効果を示す。」
(第5頁右下欄第11行?第6頁左上欄第16行)

A7 「4.図面の簡単な説明
第1図及び第2図はアスコルビン酸、ローズマリー抽出物及びδ-トコフェロール又はこれらの混合物を魚油に添加した場合にこれらの天然酸化防止剤が魚油の自動酸化を抑制する効果を示すグラフである。
第1図において、曲線1は酸化防止剤を全く添加しない魚油、曲線2はローズマリー抽出物を0.2%添加しただけの魚油、曲線3はδ-トコフェロールを0.5%添加しただけの魚油、曲線4は本発明の方法により魚油にアスコルビン酸200ppmを添加した魚油を示すものである。それぞれの曲線はその魚油を30℃にて貯蔵した場合に、過酸化物値が貯蔵日数の経過によってどのように変化するかを示している。
第2図において、曲線1は酸化防止剤が全く添加されていない魚油、曲線2は本発明の方法により魚油にアスコルビン酸200ppmを添加した魚油、曲線3は本発明の方法により魚油にアスコルビン酸200ppmとローズマリー抽出物0.2%を添加した魚油、曲線4はアスコルビン酸200ppmとδ-トコフェロール0.5%を各々添加した魚油を示すものである。それぞれの曲線は、その魚油を30℃にて貯蔵した場合に、過酸化物値が貯蔵日数の経過によってどのように変化するのかを示している。」
(第6頁左上欄第17行?同頁左下欄第1行)

A8 「


(第6頁右下欄)

A9 「


(第7頁)

(イ)刊行物2(特開昭55-018437号公報)に記載された事項
刊行物2には、以下の事項が記載されている。
(刊行物2は、「ろ過」「ろ別」「ろ液」の「ろ」字として、「さんずいに戸」が用いられているが、簡易慣用字体であって使用できない文字であるため、本審決においては、便宜的に以下「ろ」字を用いる。)

B1 「2.特許請求の範囲
1 ローズマリー、セイジまたはそれらの混合物から抽出された水溶性抗酸化剤。
・・・(中略)・・・
8.ローズマリー、セイジまたはこれらの混合物を含水率40?60%のメタノールまたはエタノールで処理してその抗酸化成分を抽出し、得られた抽出液に水を加えて非水溶性抗酸化成分を析出させ、更にこれに活性炭を加えて攪拌した後、この溶液をろ過して得たろ液またはこのろ液に安定化剤を加えたものから溶媒を留去乾燥することを特徴とする水溶性抗酸化剤の製造方法。」
(特許請求の範囲)

B2 「魚介類製品の酸化は魚介類に含まれている油脂中の不飽和脂肪酸の不飽和部分に酸素ラジカルが付加してパーオキサイドを形成し、次にこの部分で分解してアルデヒド、ケトンおよび酸等を生ずるためであり、微量存在する金属が酸化分解を促進すると考えられている。」
(第2頁左上欄第1行?第6行)

B3 「本発明者は天然香辛料中の抗酸化成分について種々研究を重ねた結果、天然香辛料のローズマリーおよびセイジに水溶性の抗酸化成分と非水溶性の抗酸化成分との二種類があることを見出し、またこの水溶性抗酸化成分を安定化する方法を開発した。即ち、本発明は天然香辛料のローズマリー、セイジまたはそれらの混合物から抽出された水溶性抗酸化剤、その組成物およびそれらの製造方法に関するもの・・・である。」
(第2頁右上欄第13行?第2頁左下欄第12行)

B4 「本発明の方法で製造した水溶性抗酸化剤またはその組成物は魚介類製品および食肉製品の酸化防止に顕著な効果があり、安価でしかも天然起源であるから安全性が高い。」
(第2頁左下欄第13行?第16行)

B5 「以下に本発明について更に詳しく説明すると、第1表は種々の含水率のエタノールでローズマリーを抽出して得た抽出液に水を加えて非水溶性の抗酸化成分を析出させ、更にこれに活性炭を加えて攪拌した後、この溶液から非水溶性抗酸化成分と活性炭との混合物をろ別し、得られたろ液から溶媒を留去して得た水溶性抗酸化成分区分につき、その抽出率(出発原料に対する重量%)および電子供与能を示したものである。上記水溶性抗酸化成分区分の調製の具体的データは次のとおりである:ローズマリー100gに40?60%含水エタノール1lを加えて3時間加熱還流し、温時ろ過して抗酸化成分を含むろ液を得る。残渣を600mlの同じ溶媒で同様に処理抽出する操作を更に二回繰返し、夫々得られたろ液を合わせる。この抽出液に水500mlを加えて非水溶性抗酸化成分を析出させ、更に活性炭10gを加えて攪拌し、この溶液を一夜冷所に放置した後、ろ過してろ液を得る。このろ液を減圧下濃縮して水溶性抗酸化成分区分(固体)を得る。この水溶性抗酸化成分区分は淡褐色を呈し、臭いは無くクロロフイル類を含まないが、少し吸湿性である。これはそのまま魚介類製品の抗酸化剤として使用に供することができる。」
(第2頁左下欄第17行?第3頁左上欄第4行)

B6 「また、上記の実験で各区分の抗酸化能は電子供与能の価を指標として比較した。電子供与能はラジカル部分を有する化合物の1,1-ジフエニル-2-ピクリルヒドラジルが還元されると、その還元度合により吸光度が変化することを利用して測定した。電子供与能の価が高い程還元能力が強く、また同一または同種の物質ではその電子供与能は抗酸化能と相関関係がある。」
(第3頁左上欄第5行?第12行)

ウ 刊行物に記載された発明
刊行物1には、「水溶性酸化防止剤として、アスコルビン酸及びローズマリー抽出物を共に添加する」(摘示A1)点が示されており、アスコルビン酸とはビタミンCであることは当業者に明らかであるから、
刊行物1には、
「ローズマリー抽出物とビタミンCとを含有する水溶性酸化防止剤」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

エ 本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、両者は
「ローズマリー抽出物とビタミンCとを含有する酸化防止剤」
の点において一致し、以下の点で相違している。

(相違点1) ローズマリー抽出物が、本件補正発明においてはローズマリーの「水溶性抽出物」であって、それは「含水率40?60重量%のエタノールを使用して得られる抽出液に水を加えて非水溶性成分を析出させて得た濾液から溶媒を留去乾燥することにより得られたもの」であるのに対し、引用発明においては、ローズマリーの「抽出物」であって、「水溶性酸化防止剤」であり、それがどのように得られたものであるかは不明である点

(相違点2) 成分の含有比が、本件補正発明においてはローズマリー水溶性抽出物とビタミンCとを「90:10?30:70の重量比で含有」する点が規定されるのに対し、引用発明においては含有比についての規定がなされていない点

オ 判断
(ア)相違点1について検討する。
引用発明の「ローズマリー抽出物」は、「水溶性酸化防止剤」として添加されているものであり(摘示A1)、刊行物1には、「水溶性化合物」として例示されているものの(摘示A4)、その抽出手法に関して具体的な記載はなされていない。
刊行物2には、「天然香辛料のローズマリー」に「水溶性の抗酸化成分と非水溶性の抗酸化成分との二種類があることを見出し」たものであり(摘示B3)、そのうち「ローズマリー」「から抽出された水溶性抗酸化剤」について(摘示B1、B3)、その抽出手法としては、「ローズマリー」を「40?60%含水エタノール」で「処理抽出」し、「この抽出液に水」「を加えて非水溶性抗酸化成分を析出させ」「た後、ろ過して」得た「ろ液を減圧下濃縮して水溶性抗酸化成分区分(固体)を得る」(摘示B5)ものであることが記載されていることから、刊行物2にはローズマリー水溶性抽出物及び該ローズマリー水溶性抽出物が抗酸化物質であることが記載されているといえる。そして刊行物2にはさらに、このローズマリー水溶性抽出物が「酸化防止に顕著な効果があり、安価でしかも天然起源であるから安全性が高い」ものである点(摘示B4)が記載されている。
したがって、引用発明の酸化防止剤であるローズマリー抽出物として、酸化防止に顕著な効果があり且つ安価で安全性の高い刊行物2に記載の抗酸化物質である、ローズマリーを40?60%含水エタノールで処理抽出し、この抽出液に水を加えて非水溶性抗酸化成分を析出させた後、ろ過して得たろ液を減圧下濃縮して得られたローズマリーの水溶性抗酸化成分区分を採用し、本件補正発明の「含水率40?60重量%のエタノールを使用し得られる抽出液に水を加えて非水溶性成分を析出させて得た濾液から溶媒を留去乾燥することにより得られた」「ローズマリー水溶性抽出物」を用いるとすることは、当業者であれば容易になし得たものである。

(イ)相違点2について検討する。
刊行物1の実施例4には「アスコルビン酸200ppmとローズマリー抽出物0.2%」とする点が(摘示A6)、また第2図曲線3にはこれに対応した、「本発明の方法により魚油にアスコルビン酸200ppmとローズマリー抽出物0.2%を添加した魚油」(摘示A7、A9)の貯蔵期間による過酸化物値変化が、それぞれ示されており、これはローズマリー抽出物とアスコルビン酸とを10:1の重量比で添加した例である。すなわち該例において、ローズマリー抽出物とビタミンCとは、90.9:9.1の重量比で含有されている。刊行物1のローズマリー抽出物が本件補正発明のローズマリー水溶性抽出物であるかどうかは不明であるので単純な比較はできないが、刊行物2に記載のローズマリー水溶性抽出物を使用する際に、混合する重量比として、刊行物1の実施例で使用される90%付近を参考にしつつ、この1例に限られることなく、所望の効果の奏される混合比を定めることは当業者であれば容易になし得たものといえる。

(ウ)刊行物1の記載に関する請求人の主張について
請求人は、平成19年9月12日付け意見書において、「(3)先ず、念のため、今回の引用文献2(特開平03-197595号公報)に記載の「ローズマリー抽出物」について意見を述べます。」とし、続く「(ii)」において、「請求項1で『水溶性酸化防止剤』と記載されているにも拘わらず、これに従属する請求項6では『アスコルビン酸』と共に使用する酸化防止剤として明確な脂溶性化合物である『トコフェロール』が記載されている」点及び「引用文献2第(3)頁右下欄4?17行には、可逆ミセルの核を形成する水相に水溶性酸化防止剤を溶解させ、可逆ミセルの連続相の油脂類に脂溶性酸化防止剤を溶解させる好ましい態様について記載され、各種の酸化防止剤の組み合わせの例と共に、あるいは、これらに続いて、『アスコルビン酸』と『ローズマリー抽出物』の組み合わせが記載されている」点からすれば、「引用発明2」の「『ローズマリー抽出物』は脂溶性酸化防止剤の範疇として記載されているとも考えられます」と主張する。
たしかに該「引用文献2」すなわち「刊行物1」には、摘示A1及びA6に出願人が指摘する記載がなされている。しかしながら、特許請求の範囲(摘示A1)の記述を子細に検討するに、請求項1に「水溶性酸化防止剤」が規定され、該請求項1を引用する請求項5において「水溶性酸化防止剤として、アスコルビン酸及びローズマリー抽出物を共に添加」する点が規定されるとともに、脂溶性であることが明らかなトコフェロールの含有を規定する請求項6では水溶性という語が排除された「酸化防止剤として」当該成分含有を規定している。加えて、摘示A5には、「水溶性化合物」の例示化合物群中にローズマリー抽出物が指摘されている。よって、出願人の指摘のとおり摘示A6において「ローズマリー抽出物」は、その溶解性が明記されておらず、また、アスコルビン酸と、明らかに脂溶性の酸化防止剤との組み合わせとの記載に混在した記載がなされているものであっても、刊行物1でいう「ローズマリー抽出物」とは、摘示A1及びA5を含む刊行物1全体の記載を参照すれば、水溶性酸化防止剤との認識のもと添加されているものといえ、脂溶性酸化防止剤の範疇として記載されているとも考えられるとの出願人の主張は当を得たものではない。よって、当該請求人の主張を採用することはできない。

カ 効果について
(ア)活性酸素除去効果について
(ア-1)本件補正発明の効果について
本件補正明細書の段落【0004】には、「特定のローズマリ抽出物にビタミンCを特定量併用することにより、著しく高い活性酸素除去効果が得られるとの知見を得た」点が指摘されている。
(ア-2)刊行物1?2の効果について
刊行物1及び2には、その「酸化防止剤」が「活性酸素除去効果」を有するものであると記載されてはいない。しかしながら、その酸化防止能について検討するに、刊行物1の酸化防止剤は「油脂を保管、貯蔵及び流通する場合に発生する、自動酸化による酸敗を防止」するものであることが示されている(摘示A2)。そして油脂の自動酸化とは、刊行物2にあるように「・・・油脂中の不飽和脂肪酸の不飽和部分に酸素ラジカルが付加してパーオキサイドを形成し、次にこの部分で分解してアルデヒド、ケトンおよび酸等を生ずるためであり、微量存在する金属が酸化分解を促進すると考えられている」(摘示B2)ものであり、刊行物2にはさらに「抗酸化能は、電子供与能の価を指標」とし「電子供与能はラジカル部分を有する化合物・・・が還元されると、その還元度合により吸光度が変化することを利用して測定した。電子供与能の価が高い程還元能力が強く、また同一または同種の物質ではその電子供与能は抗酸化能と相関関係がある」(摘示B6)点が指摘されている。してみると、自動酸化とは酸素ラジカルの付加によりパーオキサイドが形成される過程を有するものであり、酸化防止剤の抗酸化能はラジカル還元能に相関があることが指摘されているものといえ、酸素ラジカル、パーオキサイドは活性酸素の1種であることは当業者にとって明らかであるから、刊行物1及び2の酸化防止剤の酸化防止能とは、活性酸素除去効果にほかならない。
ゆえに、本件補正発明の活性酸素除去効果は、刊行物1?2に記載の酸化防止剤もすでに有する効果であり予測できるものであって、格別であるとはいえない。

(イ)相乗効果について
(イ-1)本件補正発明の効果について
本件補正明細書の段落【0009】には、「本発明の酸化防止剤は、ローズマリー水溶性抽出物とビタミンCとを90:10?30:70の重量比で含有する。斯かる重量比の範囲外では、後述の試験結果に示す様に、両成分の相乗効果が発現されずに活性酸素除去効果が十分ではない。」と記載される。何をもって「相乗効果」とするか本件補正明細書には定義の記載はなされていないが、酸化防止剤に係る分野で通常に使用される意味での「相乗」効果であると考えられる。
(イ-2)刊行物1?2の効果について
刊行物1には、「アスコルビン酸と植用葉の抽出物であるローズマリー抽出物を共に添加することにより、酸化防止効能の向上を図ることもできる」点(摘示A4)が示される。さらに「第2図に示す結果から明らかなように、アスコルビン酸とローズマリー抽出物・・・を共に添加すれば、これらの各々を単独で添加した場合よりも相乗的な酸化防止効果を示す」点(摘示A6)が明記されており、「第1図」(摘示A8)、「第2図」(摘示A9)及びその説明(摘示A7)を参照すると、ローズマリー抽出物の単独添加による魚油の自動酸化を抑制する効果(第1図の曲線2、摘示A8)、アスコルビン酸の単独添加による魚油の自動酸化を抑制する効果(第1図の曲線4及び第2図の曲線2、摘示A8及びA9)に対して、アスコルビン酸及びローズマリー抽出物の両者の添加による魚油の自動酸化を抑制する効果(第2図の曲線3)は、相乗的な酸化防止効果が示されているといえる。
したがって、ローズマリー抽出物とビタミンCとを共に用いた酸化防止剤により、酸化防止効能の向上を測ることができ、その向上の程度とは相乗的な効果すなわち相乗効果である点は、刊行物1に既に記載されている。
刊行物2には更に、ローズマリー水溶性抽出物が酸化防止剤として「顕著な効果」(摘示B4)を有することが記載されており、刊行物1のローズマリー抽出物として刊行物2のローズマリー水溶性抽出物を適用すれば該顕著な効果が期待できるものであり、刊行物1に記載の相乗効果を損なうものであるとも考えられない。
ゆえに、本件補正発明の相乗効果は、刊行物1?2に既に記載された効果であるか、刊行物1?2に記載の効果を単に足し合わせた程度か、又は刊行物1?2に記載の効果より予測できる程度のものであって、格別ではない。

(ウ)含有量比について
(ウ-1)本件補正発明の効果について
本件補正明細書には、「ローズマリー水溶性抽出物とビタミンCとを90:10?30:70の重量比で含有する。斯かる重量比の範囲外では、後述の試験結果に示す様に、両成分の相乗効果が発現されずに活性酸素除去効果が充分ではない」点が段落【0009】に記載されるとともに、活性酸素除去能の測定結果が表1に示される。
ここで本件補正明細書の上記測定結果についてみるに、混合物のIC50値(表1の試験No.2?8)は、全てにおいて、ローズマリー水溶性抽出物100%でのIC50値(表1の試験No.1)とビタミンC100%でのIC50値(表1の試験No.9)とから推測される相和的な値(平成22年9月2日付け回答書の別紙におけるグラフ1の破線)よりも数値が低くなっていることから、本件補正発明で規定される重量比90:10?30:70の範囲内のもののみならず、本件補正発明で規定された範囲から外れたものであっても、相乗効果は見られるというべきものであり、段落【0009】に記載の、所定の重量比の範囲外では相乗効果が発現されないという認識は、試験結果とは合致しないものである。
(ウ-2)刊行物1?2の効果について
上記オ(イ)に指摘したとおり、刊行物1のローズマリー抽出物が本件補正発明のローズマリー水溶性抽出物であるかどうかは不明であるので単純な比較はできないが、刊行物2に記載のローズマリー水溶性抽出物を使用する際に、混合する重量比として、刊行物1の実施例4で使用される90%付近を参考にしつつ、この1例に限られることなく、所望の効果の奏される混合比を定めることは当業者であれば容易になし得たものといえる。また、該刊行物1の実施例4の「アスコルビン酸200ppmとローズマリー抽出物0.2%」を溶解したもの(摘示A6)は、仮に刊行物1のローズマリー抽出物と本件補正発明のローズマリー水溶性抽出物とが同じものであるとすれば、上限90:10を定める本件補正発明の範囲を表現上はわずかに外れたものとなるが、本件補正明細書の表1及び平成22年9月2日付け回答書の別紙におけるグラフ1からみれば、ローズマリー抽出物含有比が90%を若干越えたものも、90:10と大きくは変わらない相乗効果を奏するものであり、本件補正発明において、90:10が臨界的な数値であって予測できない効果を有する範囲を定めたものであるともいえない。

(エ)ローズマリー抽出物の非水溶性成分の阻害効果に関する請求人の主張について
請求人は平成18年5月29日付け意見書及び平成19年9月12日付け意見書において、ローズマリー抽出物の非水溶性成分の阻害効果を主張する。確かに本件補正明細書【0028】及び表2には非水溶性成分に関する記載がある。ここで本件補正明細書【0028】に記載される酵素阻害活性測定方法をみるに、「ローズマリー非水溶性抽出物」を含む「水溶液」を作成して吸光度を測定する方法であるので、該水溶液にはローズマリー非水溶性抽出物が溶解しているものとの前提で該測定はなされていると考えられる。しかしながら、測定対象であるローズマリーの非水溶性抽出物とは、請求人が主張するとおり「非」水溶性の成分であり、非水溶性の成分が水に溶解して水溶液となるとは技術的に考え難い。ゆえに、本件補正明細書【0028】の測定手法にしたがった表2の測定結果が、「ローズマリー非水溶性抽出物」すなわち上記意見書で主張される「ローズマリー抽出物の非水溶性成分」の酵素阻害活性を正しく測定したものであって、阻害効果があるということは、困難であると考える。
よって、当該請求人の主張を採用することはできない。

キ <理由>のまとめ
したがって、本件補正発明は、刊行物1?2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4 補正の却下の決定のまとめ
以上のとおり、補正Aは、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号で規定する、第36条第5項に規定する請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とする補正ではないと認められるものであり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。また、たとえ補正Aである上記請求項1についての補正が特許法第17条の2第3項の要件を満たすもので、かつ平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号を目的とするものとしても、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、上記請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に適合しないものである。

したがって、補正Aである請求項1についての補正を含む本件補正は、その余を検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明
平成20年1月9日付け手続補正(本件補正)は却下されたから、この出願の発明は、本件補正前の、願書に最初に添付された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されているとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「ローズマリー水溶性抽出物とビタミンCとを90:10?30:70の重量比で含有することを特徴とする酸化防止剤。」


第4 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、「この出願については、平成19年 7月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、上記の「理由」とは、
「 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明・・・(中略)・・・に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1?7
・引用文献等1?2
(後略)・・・ 」

というものである。
その「引用文献等1?2」は、
「 1.特開昭55-018437号公報
2.特開平03-197595号公報 」
である。


第5 当審の判断

当審は、本願発明は、原査定のとおり、下記刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。

1 刊行物
(ア)特開平03-197595号公報(引用文献等の「2.」。第2の2(2)<理由>ア(ア)における「刊行物1」。以下、同様に「刊行物1」という。)
(イ)特開昭55-018437号公報(引用文献等の「1.」。第2の2(2)<理由>ア(イ)における「刊行物2」。以下、同様に「刊行物2」という。)

2 刊行物に記載された事項
刊行物1及び刊行物2に記載された事項は、それぞれ、同<理由>イ(ア)及び(イ)のとおりである。

3 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、同<理由>ウのとおり、
「ローズマリー抽出物とビタミンCとを含有する水溶性酸化防止剤」
の発明(以下、同様に「引用発明」という。)が記載されているということができる。

4 対比判断
本願発明は、本件補正発明の「上記のローズマリー水溶性抽出物が含水率40?60重量%のエタノールを使用して得られる抽出液に水を加えて非水溶性成分を析出させて得た濾液から溶媒を留去乾燥することにより得られたものである」との特定事項がないものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は
「ローズマリー抽出物とビタミンCとを含有する酸化防止剤」
である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1’) ローズマリー抽出物が、本願発明においてはローズマリーの「水溶性抽出物」であるのに対し、引用発明においてはローズマリーは「抽出物」であって「水溶性酸化防止剤」であることが規定されるものの、本願発明でいう「水溶性抽出物」であるかどうか不明である点

(相違点2’) 成分の含有比が、本願発明においてはローズマリー水溶性抽出物とビタミンCとを「90:10?30:70の重量比で含有」する点が規定されるのに対し、引用発明においては含有比についての規定がなされていない点

この相違点1’は、上記特定事項がない以外は同<理由>エの相違点1と同じであり、この相違点2’は同<理由>エの相違点2と同じであるから、同<理由>オにおいて相違点1及び相違点2について述べたのと同じことが相違点1’及び相違点2’についてもいうことができ、その効果についても同<理由>カにおいて述べたとおりであって格別ではない。してみると、本願発明は刊行物1?2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

3 まとめ
したがって、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-26 
結審通知日 2010-11-30 
審決日 2010-12-15 
出願番号 特願2001-47007(P2001-47007)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C09K)
P 1 8・ 121- Z (C09K)
P 1 8・ 572- Z (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小柳 正之中島 庸子  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 齊藤 真由美
東 裕子
発明の名称 酸化防止剤  
代理人 岡田 数彦  
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