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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1231427
審判番号 不服2009-4670  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-04 
確定日 2011-02-04 
事件の表示 特願2004- 11000「携帯通信端末」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日出願公開、特開2005-204257〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成16年1月19日の出願であって,平成21年1月23日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成21年3月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,平成21年3月31日付けで手続補正がなさたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年3月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下,「本件補正」という。)は,補正前の平成20年5月28日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「携帯通信端末であって,
信号の送受信を行なう通信手段と,
前記携帯通信端末に対する指示を受け付ける入力手段と,
画面を表示するための画面データを,前記携帯通信端末が有する複数の機能の各々が対応付けられた複数の画像データに関連付けて記憶するための記憶手段と,
前記画面データと前記画像データとに基づいて,画面と画像を表示するための表示手段と,
前記携帯通信端末の動作を制御する制御手段とを備え,
前記複数の画像データは,前記表示手段に表示される画面から実行可能な機能に対応付けられており,
前記制御手段は,
前記画面データと各前記画像データとに基づいて,前記携帯通信端末の状態に応じた第1の画面と,前記第1の画面から実行可能な機能を表わす画像とを,前記表示手段に表示させ,
前記表示手段に表示された画像が選択されると,前記選択された画像に関連付けられた機能を実行する,携帯通信端末。」という発明(以下,「本願発明」という。)を,
「携帯通信端末であって,
信号の送受信を行なう通信手段と,
前記携帯通信端末に対する指示を受け付ける入力手段と,
画面を表示するための画面データを,前記携帯通信端末が有する複数の機能の各々が対応付けられた複数の画像データに関連付けて記憶するための記憶手段と,
前記画面データと前記画像データとに基づいて,画面と画像を表示するための表示手段と,
前記携帯通信端末の動作を制御する制御手段とを備え,
前記複数の画像データは,前記表示手段に表示される画面から実行可能な機能に対応付けられており,
前記制御手段は,
前記携帯通信端末の動作モードが待ち受けモードであるとき,前記画面データと各前記画像データとに基づいて,待ち受け画面と,前記待ち受け画面から実行可能な機能を表わす画像とを,前記表示手段に表示させ,
前記待ち受け画面に表示された画像が選択されると,メニュー画面を前記表示手段に表示させることなく,前記選択された画像に関連付けられた機能を実行する,携帯通信端末。」という発明(以下,「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無,補正の目的要件
本件補正は,補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において,「前記画面データと各前記画像データとに基づいて,前記携帯通信端末の状態に応じた第1の画面と,前記第1の画面から実行可能な機能を表わす画像」を,「前記携帯通信端末の動作モードが待ち受けモードであるとき,前記画面データと各前記画像データとに基づいて,待ち受け画面と,前記待ち受け画面から実行可能な機能を表わす画像」に,より具体的に限定し,「前記表示手段に表示された画像が選択されると,前記選択された画像に関連付けられた機能を実行する」を,「前記待ち受け画面に表示された画像が選択されると,メニュー画面を前記表示手段に表示させることなく,前記選択された画像に関連付けられた機能を実行する」に,より具体的に限定するものであるから,特許請求の範囲を減縮するものであり,平成18年法律第55号改正法の附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正法の附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

[引用発明]
原審の拒絶理由に引用された「“A1303SA 取扱説明書”,KDDI株式会社,2003年 9月,第2版,10-13頁,20頁,21頁,86頁,113頁,114頁,177頁」(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

A.引用例は,「A1303SA」との型番をもった携帯電話に関した取扱説明書であり,携帯電話である以上,信号の送受信を行なう通信手段を備えている。

B.引用例第11頁(参考図1)には,「<13>フレキシブルキー」に始まって,「<24>・・記号省略・・キー」に至る各種キーが明示されているが,これらは携帯通信端末に対する指示を受け付ける入力手段である。なお,引用例原文においては,<13>は丸数字の13で記載されている。以下同様に,丸数字の丸については,<>で表記する。)

参考図1

C.同第12頁の右上写真(参考図2)には,待ち受け状態での画面が示されており,同写真下部には,
a)白色の背景系で,カメラらしき図柄/ビデオカメラらしき図柄が記載された長方形の囲み部が,同様に,
b)メインメニューと記載された囲み部が,
c)ミラーとの記載/電球らしき図柄の囲み部が,
d)SUBと記載された囲み部,が描かれている。

参考図2

また,これらの囲み部に関して,同第13頁の第3番目の囲み記事(参考図3)によれば,
前記a),c)の各囲みの内容は<13>フレキシブルキーで実行できると開示され,
前記b)の各囲み部に記された「メインメニュー」は<24>中央キー(キーの名称が記載されていないため,以下「中央キー」と称する。)で実行できると開示され,
前期d)の各囲み部に記された内容が「サブメニュー」であり,<23>SUBキーで呼び出すことができると開示されている。

参考図3

さらに,同第113頁右欄(参考図4)及び第114頁左欄(参考図5)の記載を参照すると,
前記a)の「カメラらしき図柄」がフォト撮影を意味し,「ビデオカメラらしき図柄」がムービー撮影を意味していることが読み取れる。

参考図4

参考図5

また,同第177頁の記載(参考図6)を参照すると,
前記c)の「ミラーとの記載」はメインディスプレイを手鏡として利用することを意味し,「電球らしき図柄」は「カメラ撮影時のライトを,野外のガレージやキャンプ場,夜帰宅時の玄関の鍵穴などを照らすライトとして利用すること」を意味していることが読み取れる。

参考図6

上記Cによれば,待ち受け状態で表示される各囲み部が,例えば,カメラ撮影や手鏡といった機能に対応付けられ複数の画像であり,<13>フレキシブルキー等によって,メインディスプレイに表示される画面から実行可能な機能に対応していること,前記画像が選択されると,メニュー画面をメインディスプレイに表示させることなく,選択された画像に関連付けられた機能が実行されることも,実質的に開示されている。
そして,これらの機能を実行する以上,前記「画面」を表示するための画面データや前記「画像」に対応した画像データの存在は自明であり,画面データと携帯電話が有する複数の機能の各々が対応付けられた複数の画像データに関連付けて記憶するための記憶手段も当然に備わっているものといえる。
また,待ち受け状態とは,動作モードが待ち受けモードのことであり,携帯電話である以上,携帯電話の動作を制御する制御手段を有することも自明である。

したがって,上記A?Bの事項及びこの分野の技術常識より,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「携帯電話であって,
信号の送受信を行なう通信手段と,
前記携帯電話に対する指示を受け付ける入力手段と,
画面を表示するための画面データを,前記携帯電話が有する複数の機能の各々が対応付けられた複数の画像データに関連付けて記憶するための記憶手段と,
前記画面データと前記画像データとに基づいて,画面と画像を表示するためのメインディスプレイと,
前記携帯電話の動作を制御する制御手段とを備え,
前記複数の画像データは,前記メインディスプレイに表示される画面から実行可能な機能に対応付けられており,
前記携帯電話の動作モードが待ち受けモードであるとき,前記画面データと各前記画像データとに基づいて,待ち受け画面と,前記待ち受け画面から実行可能な機能を表わす画像とを,前記メインディスプレイに表示させ,
前記待ち受け画面に表示された画像が選択されると,メニュー画面を前記メインディスプレイに表示させることなく,前記選択された画像に関連付けられた機能を実行する,携帯電話。」

[対比]
補正後の発明と引用発明を対比すると,
引用発明の「携帯電話」は携帯通信端末の一種であり,引用発明の「メインディスプレイ」は表示手段であるから,以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「携帯通信端末であって,
信号の送受信を行なう通信手段と,
前記携帯通信端末に対する指示を受け付ける入力手段と,
画面を表示するための画面データを,前記携帯通信端末が有する複数の機能の各々が対応付けられた複数の画像データに関連付けて記憶するための記憶手段と,
前記画面データと前記画像データとに基づいて,画面と画像を表示するための表示手段と,
前記携帯通信端末の動作を制御する制御手段とを備え,
前記複数の画像データは,前記表示手段に表示される画面から実行可能な機能に対応付けられており,
前記携帯通信端末の動作モードが待ち受けモードであるとき,前記画面データと各前記画像データとに基づいて,待ち受け画面と,前記待ち受け画面から実行可能な機能を表わす画像とを,前記表示手段に表示させ,
前記待ち受け画面に表示された画像が選択されると,メニュー画面を前記表示手段に表示させることなく,前記選択された画像に関連付けられた機能を実行する,携帯通信端末。」

(相違点)
補正後の発明では,「携帯通信端末の動作を制御する制御手段」が「携帯通信端末の動作モードが待ち受けモードであるとき,画面データと各画像データとに基づいて,待ち受け画面と,前記待ち受け画面から実行可能な機能を表わす画像とを,表示手段に表示させ,
前記待ち受け画面に表示された画像が選択されると,メニュー画面を前記表示手段に表示させることなく,前記選択された画像に関連付けられた機能を実行する」が,引用発明の「携帯通信端末(携帯電話)の動作を制御する制御手段」は「携帯通信端末(携帯電話)の動作モードが待ち受けモードであるとき,画面データと各画像データとに基づいて,待ち受け画面と,前記待ち受け画面から実行可能な機能を表わす画像とを,表示手段に表示させ,
前記待ち受け画面に表示された画像が選択されると,メニュー画面を前記表示手段に表示させることなく,前記選択された画像に関連付けられた機能を実行する」か不明である。

[判断]
相違点について検討する。
携帯電話の分野に関わらず,一般的に,装置で各種の動作を制御する場合,それぞれの動作に対応させた複数の制御手段を設けて個々に制御するか,1つの制御手段で全体を制御するかは,必要に応じて,当業者が行っている技術常識であるから,「携帯通信端末(携帯電話)の動作モードが待ち受けモードであるとき,画面データと各画像データとに基づいて,待ち受け画面と,前記待ち受け画面から実行可能な機能を表わす画像とを,表示手段に表示させ,
前記待ち受け画面に表示された画像が選択されると,メニュー画面を前記表示手段に表示させることなく,前記選択された画像に関連付けられた機能を実行する」ための制御手段を「携帯通信端末(携帯電話)の動作を制御する制御手段」に持たせる程度のことは,当業者が容易に想到し得ることである。

そして,補正後の発明が奏する効果も引用発明から容易に予測出来る範囲内のものである。

したがって,補正後の発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお,請求人は,回答書において『これに対して,本願発明は,「画面を表示するための画面データを,前記携帯通信端末が有する複数の機能の各々が対応付けられた複数の画像データに関連付けて記憶するための記憶手段」との構成からも明らかなように,「複数の」画像データを有します。そのため,「複数の」画像データの各々を組み合わせることにより,一定のパターンに限られることなく様々な画像(アイコン)を表示することができます。その結果,本願発明によれば,待受画面の時に表示される画像を変更させることができるという,引用例に開示の技術では達成できない顕著な作用効果を奏します。』と主張しているが,補正後の発明には,「複数の」画像データの各々を組み合わせることにより,一定のパターンに限られることなく様々な画像(アイコン)を表示する構成は示されていないので,上記主張を採用することはできない。

3.結語
以上のとおり,本件補正は,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,平成18年法律第55号改正法の附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって,本件補正は,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成21年3月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は,上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は,前記「第2.補正却下の決定」の項の「2.補正の適否」の項の「(1)新規事項の有無,補正の目的要件」で検討したように,上記補正後の発明から当該補正に係る構成の限定を省いたものであるから,本願発明の構成要件にさらに限定要件である上記構成を付加したものに相当する補正発明が,上記「(2)独立特許要件」の項中の「(4)判断」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである以上,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして,本願発明に関する作用・効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-25 
結審通知日 2010-11-30 
審決日 2010-12-20 
出願番号 特願2004-11000(P2004-11000)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 義仁  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 宮田 繁仁
萩原 義則
発明の名称 携帯通信端末  
代理人 森田 俊雄  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 深見 久郎  
代理人 仲村 義平  
代理人 酒井 將行  
代理人 野田 久登  
代理人 堀井 豊  

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