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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16F
管理番号 1231440
審判番号 不服2009-17880  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-24 
確定日 2011-02-04 
事件の表示 特願2003-358295「防振装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月12日出願公開、特開2005-121161〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年10月17日の出願であって、平成21年6月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年9月24日に審判請求がなされるとともに、当審において平成22年9月1日付けで拒絶理由が通知されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?3に係る発明(以下、「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、平成20年12月22日付け手続補正、及び平成22年11月4日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。なお、平成21年9月24日付け手続補正は、当審において平成22年9月1日付けで決定をもって却下されている。
「【請求項1】
振動発生部と振動受部の一方にブラケット部材を介して連結され、軸方向外側の他端部に外周側へ延出するフランジ部が形成された略円筒状の外筒と、振動発生部と振動受部の他方に固定プレートを介して連結され、前記外筒の内周側に配置されると共に、軸方向内側の一端部が前記フランジ部と前記外筒の一端部との間に位置する略円筒状の内筒と、前記外筒と前記内筒との間に配置された吸振部及び、径方向に沿って前記吸振部の外周側に位置すると共に、前記外筒の軸方向からみて前記外筒の内周面よりも外側で、軸方向に沿って前記フランジ部に重なり合うように形成されたストッパ部が一体的に形成されたゴム弾性体と、がそれぞれ設けられた一対の防振ゴムを備え、
一対の前記防振ゴムの軸方向一端部どうしを互いに突き合わせつつ、一対の前記フランジ部間にブラケット部材を挟持すると共に、一対の前記防振ゴムを軸方向外側から一対の固定プレートにより挟持し、
一対の前記内筒を挿通した締結部材により一対の固定プレートにそれぞれ連結すると共に、該一対の固定プレートにより前記内筒の軸方向一端部どうしが互いに当接するように前記ゴム弾性体を軸方向へ予備圧縮して組み立てられる防振装置であって、
前記ストッパ部に、前記軸方向に沿って固定プレートに対向すると共に、内周側から外周側へ向って前記固定プレートとの隙間が徐々に広くなり、前記固定プレートへ当接可能なスロープ状のストッパ当接面を径方向の内周端部から外周端部へかけて形成し、
しかも前記ゴム弾性体が予備圧縮された状態で、前記ストッパ当接面と固定プレートとの間に形成される隙間の最大幅を、前記ゴム弾性体の予備圧縮量よりも小さくしたことを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記ストッパ当接面と固定プレートとの間に形成される隙間の幅を、前記ストッパ部の軸方向に沿った圧縮荷重に対する剛性及び前記ゴム弾性体に入力する圧縮荷重の最大値に応じて設定することを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項3】
前記ストッパ当接面を、固定プレート側から前記フランジ部側へ向って徐々に外径が拡大する略円錐曲面により形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の防振装置。」

3.本願発明1についての検討
(1)本願発明1
本願発明1は、上記2.に記載したとおりである。
(2)引用例
(2-1)引用例1
実願昭61-26805号(実開昭62-138942号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。なお、全角半角等の文字の大きさ、促音、拗音、句読点は記載内容を損なわない限りで適宜表記した。以下、同様。
(あ)「第1図ないし第3図に示す第1の実施例において、エンジンマウントは1対のゴム弾性体1を備えている。ゴム弾性体1は全体として円錐台形の台形部10と、台形部10の大径側の端面の中央から突出する筒状端部11からなり、台形部10の軸心には内筒2が貫通設置してある。また、端部11の外周にはこれに嵌着し、一端に形成したフランジ部31にて台形部10の端面を支持する外筒3が設けてある。
上記台形部10には他方の端面側から順次、内筒を囲む第1の台形部101と、第1の台形部101と同心円状でこれを囲む第2の台形部102と、第2の台形部102と同心円状でこれを囲む第3の台形部103が段状に形成してある。第1の台形部101の径は筒状端部11の径とほぼ同じないしは若干小さく、第2の台形部102の径は外筒3のフランジ部31の径よりも若干小さく、第3の台形部103の径はフランジ部31の径とほぼ同一としてある。
上記のように構成したゴム弾性体1は、第3図に示すようにその1対を筒状端部11を対向せしめ、外筒3にてボデーフレーム9に形成した円形穴を挟むように配し、下面にワッシャ5bを、上面にワッシャ5aおよびエンジン支持フレーム6を当てがつた状態でボルト7を内筒2に貫通せしめ、その先端からナツト8を、内筒2同志が当接するまで締付けることによりエンジンマウントが設置され、エンジン支持フレーム6にエンジンが支持せしめられる。
上記構造のエンジンマウントにおいて、ナット8は、軸心部が移動して内筒2同志が当接し、第1の台形部101と第2の台形部102の断差h_(1)=0となるまで締付けられる(第6図)。この場合、内筒2を備えた軸心部は剪断力のみ作用する(第7図のたわみh_(1))。
次に支持フレーム6にエンジンを載置する(たわみe)。
エンジンが作動し、また車両の発進、停止等によりエンジンマウントに振動が入力すると、ゴム弾性体1は軸心部および第2の台形部102が変形し、振動を緩和する。この場合、軸心部は剪断力が、第2の台形部102は圧縮力が作用する(たわみh_(2))。
振動力が大きく第2および第3の台形部102、103の断差h=0になると、エンジンは更に第3の台形部103によっても支持されるととなり、第3の台形部103がストツパの役割を果してゴム弾性体1の変形を阻止する。」(明細書第6ページ第10行?第8ページ第17行参照)
したがって、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「振動発生部と振動受部の一方にボデーフレーム9を介して連結され、軸方向外側の他端部に外周側へ延出するフランジ部31が形成された略円筒状の外筒3と、振動発生部と振動受部の他方のエンジン支持フレーム6にワツシヤ5a、ワッシャ5bを介して連結され、前記外筒3の内周側に配置されると共に、軸方向内側の一端部が前記フランジ部31と前記外筒3の一端部との間に位置する略円筒状の内筒2と、前記外筒3と前記内筒2との間に配置された第1の台形部101及び第2の台形部102からなる吸振部及び、径方向に沿って前記吸振部の外周側に位置すると共に、前記外筒3の軸方向からみて前記外筒3の内周面よりも外側で、軸方向に沿って前記フランジ部31に重なり合うように形成された第3の台形部103が一体的に形成されたゴム弾性体と、がそれぞれ設けられた一対のゴム弾性体1を備え、
一対の前記ゴム弾性体1の軸方向一端部どうしを互いに突き合わせつつ、一対の前記フランジ部31間にボデーフレーム9を挟持すると共に、一対の前記ゴム弾性体1を軸方向外側から一対のワッシャ5a、ワッシャ5bにより挟持し、
一対の前記内筒2を挿通したボルト7により一対のワッシャ5a、ワツシヤ5bにそれぞれ連結すると共に、該一対のワッシャ5a、ワッシャ5bにより前記内筒2の軸方向一端部どうしが互いに当接するように前記ゴム弾性体1を軸方向へ予備圧縮して組み立てられるエンジンマウントであって、
前記第3の台形部103に、前記軸方向に沿ってワッシャ5a、ワッシャ5bに対向すると共に、内周側から外周側へ向って前記ワッシャ5a、ワツシヤ5bとの隙間を有し、前記ワッシャ5a、ワッシャ5bへ当接可能なストッパ当接面を径方向の内周端部から外周端部へかけて形成したエンジンマウント。」
(2-2)引用例2
特開平9-177888号公報(以下、「引用例2」という。)には、下記の事項が記載されている。
(か)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンを防振支持するエンジン防振支持装置に関するものであり、特に建設機械等のように、上下方向における振動の激しい機械に設けられるエンジン防振支持装置に関するものである。」
(き)「【0015】要するに、ストッパを設けて、ラバーマウント7が過度に圧縮されないように構成するにしても、ストッパにより設定されるラバーマウント7の可圧縮量を規制しただけでは、なおラバーマウントの保護機能としては十分ではない。
【0016】本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ラバーマウントの圧縮及び膨張方向の変位量を制限することによって、ラバーマウントを構成する弾性部材及び取付部材に直接当接するフランジ部の保護を図ることにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】前述した目的を達成するために、本発明は、パイプ部材に固着して設けた弾性部材とフランジ部とを有し、フランジ部を取付部材の両側に当接させる状態に組み付けられる一対のラバーマウントに、所定の予圧縮量を持たるようにして、両ラバーマウント間を連結手段で連結するようになし、両ラバーマウントの一方側にエンジンを載置するものであって、これら各ラバーマウントには、取付部材に対して所定の間隔をもって対面するストッパを装着し、エンジンの装着状態で、一方側のラバーマウントに装着されるストッパと取付部材との間隔が、他方側のラバーマウントの予圧縮量以下となるように設定したことをその特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明においては、まずストッパを用いて両ラバーマウントの圧縮量を規制する。これによって、ラバーマウントに亀裂や破損のおそれがある程度まで圧縮されるのを防止する。ただし、ストッパにより規制されるラバーマウントの可圧縮量は、単にラバーマウントが過度に、換言すると、その弾性限度乃至その近くにまで圧縮されないという点だけで設定されるのではなく、ラバーマウントの膨張度合いも規制するように構成する。即ち、一方側のラバーマウントに設けたストッパが取付部材に当接して、このラバーマウントがそれ以上圧縮されない状態になった時に、他側のラバーマウントはなお取付部材に対して予圧縮状態に保持され、そのフランジ部が取付部材から浮き上がらないように設定する。」
(く)「【0023】…両ラバーマウント24が同じ形状,構造のものであるとすると、図2に示したように、金属パイプ27の端面からフランジ28の表面までの間隔をT_(1) とし、また支持ブラケット21の厚み(スぺーサ部材21aの厚みを含む)をT_(2) とした時に、T_(2) >T_(1) とすれば、両ラバーマウント24はそれぞれ自然状態から(T_(2) -T_(1) )/2だけ予め圧縮された状態に組み付けられる。即ち、図1においてPで示した予圧縮量を持たせた状態にして両ラバーマウント24が装着されている。
【0024】…
【0025】以上のことから、弾性部材26の圧縮状態での弾性限界をEとした時に、可圧縮量を構成する間隔Dは、弾性限界Eから予圧縮量Pを引いた値よりも小さくなるように設定するが、これに加えて予圧縮量Pより小さくする。」
(け)「【0029】ここで、建設機械においては、エンジンを防振支持装置に設けた状態で、その上下方向に作用する振動時の荷重はほぼ等しいから、ストッパによる両ラバーマウントの動き量を実質的に同じ状態にするのが好ましい。自然状態においては、エンジンの荷重を直接受承するラバーマウントの方が圧縮量が大きくなる。そこで、上下のラバーマウントにおける弾性部材の材質や形状等を変えて、異なるばね定数を持たせるようにすれば、エンジン載置時における予圧縮量を等しくできるから、両ストッパによるラバーマウントの変位量を実質的に同じにすることができる。また、上下のラバーマウントの弾性部材を同じ材質で同じ形状とする場合には、ストッパの形状を変えて、エンジンを装着した状態での両ラバーマウントにおけるストッパと取付部材との間隔をほぼ等しくすれば良い。
【0030】
【実施例】以下、図3乃至図7に基づいて本発明の好ましい一実施例について説明する。この実施例は、エンジンの重量による荷重を作用させた状態で、上下の可圧縮量を実質的に同じになるように設定したものである。」
(こ)「【0034】ここで、ラバーマウント41U,41Lにおける可圧縮量となる間隔D_(U) ,D_(L) については、間隔D_(U) はラバーマウント41Lの予圧縮量P_(L )より小さく、間隔D_(L) はラバーマウント41U側の予圧縮量P_(U) より小さくなっている。また、それぞれの予圧縮量と可圧縮量と加算した量は、それぞれラバーマウント41U,41Lの弾性部材が弾性限界となる状態までの圧縮量より小さくしている。
【0035】さらに、以上の条件に加えて、ラバーマウント41U,41Lの可圧縮量を規制する両ストッパ47U,47Lは支持ブラケット45の表面からそれぞれ間隔D_(U) ,D_(L) をほぼ等しくしている。このために、ストッパ47U,47Lの外周部を曲成することにより形成される作動部47aU,47aLの長さが異なっている。ここで、作動部47aU,47aLの長さの差は、ラバーマウント41Uに作用するエンジン49の荷重に基づいて決定され、このエンジン49の荷重によるラバーマウント41U側の予圧縮量P_(U )とラバーマウント41Lの予圧縮量P_(L) との差分にほぼ相当する量だけ作動部47aLを作動部47aUより長く設定する。」
(3)対比
本願発明1と引用例1発明とを対比すると、後者の「ボデーフレーム9」は前者の「ブラケット部材」に相当し、以下同様に、後者の「フランジ部31」は前者の「フランジ部」に、後者の「外筒3」は前者の「外筒」に、後者の「エンジン支持フレーム6」は前者の「振動発生部と振動受部の他方」に、後者の「ワッシャ5a、ワッシャ5b」は前者の「固定プレート」に、後者の「内筒2」は前者の「内筒」に、後者の「ゴム弾性体1」は前者の「防振ゴム」に、後者の「ボルト7」は前者の「締結部材」に、後者の「第3の台形部103」が前者の「ストッパ部」に、後者の「エンジンマウント」は前者の「防振装置」にそれぞれ相当する。
以上より、本願発明1の用語に倣って整理すると、両者は、
「振動発生部と振動受部の一方にブラケット部材を介して連結され、軸方向外側の他端部に外周側へ延出するフランジ部が形成された略円筒状の外筒と、振動発生部と振動受部の他方に固定プレートを介して連結され、前記外筒の内周側に配置されると共に、軸方向内側の一端部が前記フランジ部と前記外筒の一端部との間に位置する略円筒状の内筒と、前記外筒と前記内筒との間に配置された吸振部及び、径方向に沿って前記吸振部の外周側に位置すると共に、前記外筒の軸方向からみて前記外筒の内周面よりも外側で、軸方向に沿って前記フランジ部に重なり合うように形成されたストッパ部が一体的に形成されたゴム弾性体と、がそれぞれ設けられた一対の防振ゴムを備え、
一対の前記防振ゴムの軸方向一端部どうしを互いに突き合わせつつ、一対の前記フランジ部間にブラケット部材を挟持すると共に、一対の前記防振ゴムを軸方向外側から一対の固定プレートにより挟持し、
一対の前記内筒を挿通した締結部材により一対の固定プレートにそれぞれ連結すると共に、該一対の固定プレートにより前記内筒の軸方向一端部どうしが互いに当接するように前記ゴム弾性体を軸方向へ予備圧縮して組み立てられる防振装置であって、
前記ストッパ部に、前記軸方向に沿って固定プレートに対向すると共に、内周側から外周側へ向って前記固定プレートとの隙間を有し、前記固定プレートへ当接可能なストッパ当接面を径方向の内周端部から外周端部へかけて形成した防振装置」点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明1は、「前記ストッパ部に、前記軸方向に沿って固定プレートに対向すると共に、内周側から外周側へ向って前記固定プレートとの隙間が徐々に広くなり、前記固定プレートへ当接可能なスロープ状のストッパ当接面を径方向の内周端部から外周端部へかけて形成し」ているのに対して、引用例1発明は、「前記第3の台形部103に、前記軸方向に沿ってワッシャ5a、ワッシャ5bに対向すると共に、内周側から外周側へ向って前記ワツシヤ5a、ワッシャ5bとの隙間を有し、前記ワッシャ5a、ワッシャ5bへ当接可能なストッパ当接面を径方向の内周端部から外周端部へかけて形成した」点。
[相違点2]
本願発明1は、「前記ゴム弾性体が予備圧縮された状態で、前記ストッパ当接面と固定プレートとの間に形成される隙間の最大幅を、前記ゴム弾性体の予備圧縮量よりも小さくした」のに対して、引用例1発明は、「ゴム弾性体1を軸方向へ予備圧縮」された状態における、「第3の台形部103」の「ストッパ当接面」と「ワッシャ5a、ワッシャ5bとの隙間」の最大幅と「予備圧縮」の「量」との関係が不明である点。
(4)判断
上記各相違点について検討する。
(4-1)相違点1について
引用例1発明のストッパ当接面は「第3の台形部103」に形成されているが、その形状は、ストッパとしての所要特性等を勘案して適宜設計する事項にすぎない。そして、一般に、弾性体より形成されるストッパ部材のストッパ当接面が、中心側から外方側へ傾斜する面を備えた形状をなすものは、例えば、特開平9-144737号公報(特に図1)、特開平7-83280号公報(特に図1)に示されているように周知である。引用例1発明と上記周知のものとは技術分野が共通ないし関連すること、また、引用例1発明のゴム弾性体1と上記周知のものとは、全体の形状・構造において、概ね中心側から外方側に延びているという点で類似していることからみて、引用例1発明の「第3の台形部103」に上記周知事項を適用して、引用例1発明の「第3の台形部103」を内周側から外周側へ傾斜する面とすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
(4-2)相違点2について
引用例2には、上記(き)(こ)に摘記したとおり、ラバーマウントを構成する弾性部材等の保護を図るため、「防振支持装置」において「エンジンの装着状態で、一方側のラバーマウントに装着されるストッパと取付部材との間隔が、他方側のラバーマウントの予圧縮量以下となるように設定」すること、ないし、「ラバーマウント41U,41Lにおける可圧縮量となる間隔D_(U) ,D_(L) については、間隔D_(U) はラバーマウント41Lの予圧縮量P_(L )より小さく、間隔D_(L )はラバーマウント41U側の予圧縮量P_(U) より小さく」することが示されている。また、上記に摘記した【0029】、【0030】、【0035】には、上下の可圧縮量を同じに設定することが示されており、さらに、図1、3にもおおよその寸法関係が記載されている。
引用例1発明においても、ゴム弾性体1等の保護を図ることが望ましいことは明らかであるから、引用例1発明に引用例2の上記事項を適用することは当業者が容易に想到し得たものと認められる。このようにしたものは、実質的にみて、相違点2に係る本願発明1の上記事項を具備しているということができる。
そして、本願発明1による作用効果は、引用例1、2に記載された発明及び周知事項に基づいて予測し得る程度のものである。

なお、請求人は、平成22年11月4日付け意見書において、「しかしながら、特開平9-144737号公報には、山型形状とすることによって『衝撃や打音の発生を防止する』『ゴム弾性体上に液体が溜まらずゴム弾性体の劣化が抑制される』との記載はありません。引用文献1の第3台形部103をこのような形状とすることの動機付けはありません。また、補正後の本願請求項1のストッパ部の形状は、吸振部から続くスロープ状なのであって、山型ではありません。仮に、…特開平9-144737号公報に示されるような周知の山型のストッパ部を引用文献1に適用するのであれば、ストッパ部である第3台形部103の部分全体が山型となるのであって、第3台形部103の径方向の中央部が頂点となるような形状となります。このような山型であれば、確かに、衝撃や打音の発生を防止することはできるかもしれませんが、ストッパ当接面に液体が溜まってしまいます。」(ここでの「引用文献1」は本審決の「引用例1」に相当する。)と主張する。確かに、「特開平9-144737号公報」に示されている形状のものをそっくりそのまま引用例1発明に設ければ、「第3台形部103の部分全体が山型となる」ことになろうが、引用例の各発明の組合わせにあたっては、当業者は、それぞれの事項の技術的意義、作用、形状・構造の対応関係などを検討して、各事項に、組合わせるために必要な適宜の改変を施したり、あるいは適宜の取捨選択を行いつつ技術合理的に適用するのであって、各発明の事項すべてをそのまま重畳して寄せ集めるだけに終始するものではない。そして、引用例1発明の「第3の台形部103」を内周側から外周側へ傾斜する面とすることは当業者が容易に想到し得たものと認められることは、上述したとおりである。
請求人は、同じく、「引用文献2には、…が示されています。しかしながら、予圧縮量Plと間隔Dlの関係、予圧縮量Puと間隔Duの関係は不明です。」、「引用文献2には、…が示されていますが、間隔Du、Dl分の荷重が入力される以前からストッパ部が機能し始める旨の記載はありません。」(ここでの「引用文献2」は本審決の「引用例2」に相当する。)と主張する。しかし、上記に摘記した引用例2の【0029】、【0030】、【0035】には、上下の可圧縮量を同じに設定することが示されており、さらに、図1、3にもおおよその寸法関係が記載されていることは、上述のとおりである。また、引用例2に、間隔分の荷重が入力される以前からストッパ部が機能し始める旨の記載がないことは、その限りではそのとおりであるが、本願発明1による作用効果が引用例1、2に記載された発明及び周知事項に基づいて予測し得る程度のものであることは、上述のとおりである、

(5)むすび
したがって、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.結語
以上のとおり、本願発明1が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである以上、本願発明2、3について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-25 
結審通知日 2010-11-30 
審決日 2010-12-14 
出願番号 特願2003-358295(P2003-358295)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長屋 陽二郎  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 大山 健
常盤 務
発明の名称 防振装置  
代理人 福田 浩志  
代理人 西元 勝一  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  

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